IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三機工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-冷却装置 図1
  • 特許-冷却装置 図2
  • 特許-冷却装置 図3
  • 特許-冷却装置 図4
  • 特許-冷却装置 図5
  • 特許-冷却装置 図6
  • 特許-冷却装置 図7
  • 特許-冷却装置 図8
  • 特許-冷却装置 図9
  • 特許-冷却装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】冷却装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20220610BHJP
   F25B 41/31 20210101ALI20220610BHJP
【FI】
F25B1/00 304G
F25B1/00 304W
F25B41/31
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018045804
(22)【出願日】2018-03-13
(65)【公開番号】P2019158241
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090985
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100093388
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 喜三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206302
【弁理士】
【氏名又は名称】落志 雅美
(72)【発明者】
【氏名】永田 淳一郎
(72)【発明者】
【氏名】福森 幹太
(72)【発明者】
【氏名】安藤 祐馬
(72)【発明者】
【氏名】山本 健嗣
【審査官】関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/043060(WO,A1)
【文献】特開昭62-268970(JP,A)
【文献】特開2010-032100(JP,A)
【文献】特開2006-200843(JP,A)
【文献】特開2012-137281(JP,A)
【文献】特開2009-008305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F25B 41/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機(1)、凝縮器(2)、膨張弁(4)、蒸発器(5)および蒸発圧力調整弁(13)を配管で順次接続して冷凍サイクルを構成し、
前記蒸発器(5)は熱負荷変動がある空間への送風系に位置して該送風との熱交換を行うよう配置され、
前記蒸発圧力調整弁(13)の開度を該蒸発圧力調整弁(13)と前記蒸発器(5)との間を連結する第1の吸入管(12)に設けられた第2の圧力検知器(20)により検知された第1の吸入管(12)内の圧力と第2の圧力検知部設定圧力との偏差に基づいて制御し、且つ、前記送風系の蒸発器(5)の出口側に設置される第3の温度検出器(29)で検出した送風温度に基づいて演算された前記第2の圧力検知部設定圧力値を、前記蒸発圧力調整弁の開度制御の設定圧力として更新するカスケード制御を行うことで、前記熱負荷変動がある空間の温度設定や熱負荷に応じて、モリエル線図上の気液と気との間の飽和線から前記蒸発器(5)の出口冷媒状態を離しつつ、前記蒸発器(5)の圧力を保つとともに、
上記膨張弁(4)の開度を、前記蒸発圧力調整弁(13)と圧縮機(1)との間を連通する第2の吸入管(15)の温度を検出する第1の温度検出器(16)の検出値と、第2の吸入管(15)の圧力を検知する第1の圧力検知器(17)の検出値とに基づいて比エンタルピを演算し、熱負荷変動がある空間の負荷に応じて設定された正の値の比エンタルピ設定値との偏差に基づいて制御する制御装置(18)とからなることを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
圧縮機(1)、凝縮器(2)、膨張弁(4)、蒸発器(5)および蒸発圧力調整弁(13)を配管で順次接続して冷凍サイクルを構成し、
前記蒸発器(5)は熱負荷変動がある空間への送風系に位置して該送風との熱交換を行うよう配置され、
前記蒸発圧力調整弁(13)の開度を該蒸発圧力調整弁(13)と前記蒸発器(5)との間を連結する第1の吸入管(12)に設けられた第2の圧力検知器(20)により検知された第1の吸入管(12)内の圧力と第2の圧力検知部設定圧力との偏差に基づいて制御し、且つ、前記送風系の蒸発器(5)の出口側に設置される第3の温度検出器(29)で検出した送風温度に基づいて演算された前記第2の圧力検知部設定圧力値を、前記蒸発圧力調整弁の開度制御の設定圧力として更新するカスケード制御を行うことで、前記熱負荷変動がある空間の温度設定や熱負荷に応じて、モリエル線図上の気液と気との間の飽和線から前記蒸発器(5)の出口冷媒状態を離しつつ、前記蒸発器(5)の圧力を保つとともに、
上記膨張弁(4)の開度を、前記蒸発圧力調整弁(13)と前記圧縮機(1)との間を連結する第2の吸入管(15)の温度を検出する第1の温度検出器(16)の検出値と、
第2の吸入管(15)の圧力を検知する第1の圧力検知器(17)の検出値とに基づいて比エンタルピを演算し、熱負荷変動がある空間の負荷に応じて設定された正の値の比エンタルピ設定値との偏差に基づいて比例制御するとともに、上記膨張弁(4)の開度を、比エンタルピ設定値から同じ所定量離れた上限比エンタルピと下限比エンタルピを設定し、上限比エンタルピと下限比エンタルピとの間を不感帯として設定し、該不感帯に比エンタルピ演算値がある場合開度を変化させないよう制御する制御装置(18)とからなる
ことを特徴とする冷却装置。
【請求項3】
圧縮機(1)、凝縮器(2)、膨張弁(4)、蒸発器(5)および蒸発圧力調整弁(13)を配管で順次接続して冷凍サイクルを構成し、
前記蒸発器(5)は熱負荷変動がある空間への送風系に位置して該送風との熱交換を行うよう配置され、
前記蒸発圧力調整弁(13)の開度を該蒸発圧力調整弁(13)と前記蒸発器(5)との間を連結する第1の吸入管(12)に設けられた第2の圧力検知器(20)により検知された第1の吸入管(12)内の圧力と第2の圧力検知部設定圧力との偏差に基づいて制御し、且つ、前記送風系の蒸発器(5)の入口側に設置される第3の温度検出器(29)で検出した送風温度に基づいて演算された前記第2の圧力検知部設定圧力値を、前記蒸発圧力調整弁の開度制御の設定圧力として更新するカスケード制御行うことで、前記熱負荷変動がある空間の温度設定や熱負荷に応じて、モリエル線図上の気液と気との間の飽和線から前記蒸発器(5)の出口冷媒状態を離しつつ、前記蒸発器(5)の圧力を保つとともに、
上記膨張弁(4)の開度を、前記蒸発圧力調整弁(13)と圧縮機(1)との間を連通する第2の吸入管(15)の温度を検出する第1の温度検出器(16)の検出値と、第2の吸入管(15)の圧力を検知する第1の圧力検知器(17)の検出値とに基づいて比エンタルピを演算し、熱負荷変動がある空間の負荷に応じて設定された正の値の比エンタルピ設定値との偏差に基づいて制御する制御装置(18)とからなることを特徴とする冷却装置。
【請求項4】
圧縮機(1)、凝縮器(2)、膨張弁(4)、蒸発器(5)および蒸発圧力調整弁(13)を配管で順次接続して冷凍サイクルを構成し、
前記蒸発器(5)は熱負荷変動がある空間への送風系に位置して該送風との熱交換を行うよう配置され、
前記蒸発圧力調整弁(13)の開度を該蒸発圧力調整弁(13)と前記蒸発器(5)との間を連結する第1の吸入管(12)に設けられた第2の圧力検知器(20)により検知された第1の吸入管(12)内の圧力と第2の圧力検知部設定圧力との偏差に基づいて制御し、且つ、前記送風系の蒸発器(5)の入口側に設置される第3の温度検出器(29)で検出した送風温度に基づいて演算された前記第2の圧力検知部設定圧力値を、前記蒸発圧力調整弁の開度制御の設定圧力として更新するカスケード制御を行うことで、前記熱負荷変動がある空間の温度設定や熱負荷に応じて、モリエル線図上の気液と気との間の飽和線から前記蒸発器(5)の出口冷媒状態を離しつつ、前記蒸発器(5)の圧力を保つとともに、、
上記膨張弁(4)の開度を、前記蒸発圧力調整弁(13)と前記圧縮機(1)との間を連結する第2の吸入管(15)の温度を検出する第1の温度検出器(16)の検出値と、
第2の吸入管(15)の圧力を検知する第1の圧力検知器(17)の検出値とに基づいて比エンタルピを演算し、熱負荷変動がある空間の負荷に応じて設定された正の値の比エンタルピ設定値との偏差に基づいて比例制御するとともに、上記膨張弁(4)の開度を、比エンタルピ設定値から同じ所定量離れた上限比エンタルピと下限比エンタルピを設定し、上限比エンタルピと下限比エンタルピとの間を不感帯として設定し、該不感帯に比エンタルピ演算値がある場合開度を変化させないよう制御する制御装置(18)とからなる
ことを特徴とする冷却装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機、凝縮器、(電子式)膨張弁、蒸発器および蒸発圧力調整弁(冷媒流量制御弁)を配管で順次接続して冷凍サイクルを構成した冷却装置に関し、特に冷却対象空間に恒温が要求されるにもかかわらず熱負荷変動の大きい環境試験室、部品試験装置や保管庫に使用する高精度の温度制御を可能とした冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷却装置における冷凍サイクルによる冷却方式は、圧縮機、凝縮器、膨張弁、蒸発器とこれらを接続する冷媒配管で構成される。
冷凍サイクルでは、蒸発器で発生した低温低圧の気体冷媒を、(1)圧縮機で圧縮して高温高圧の気体にし、(2)凝縮器で放熱するとともに液化し、(3)膨張弁で減圧して低温低圧の液体とし、(4)蒸発器で気化させて気化熱で熱を奪い取るという、圧縮、凝縮、膨張、蒸発というサイクルにより、冷媒を気体から液体、液体から気体へと相変化を繰り返すことにより、高い温度場にある凝縮器で凝縮熱により外気へ廃熱を捨てながら、低い温度場の蒸発器で低温且つ冷熱量の大きな気化熱を得るヒートポンプを形成して、蒸発器で空気を冷却する。
このような冷凍サイクルは、「直接膨張冷却方式(直膨式)」と呼ばれ冷媒配管で接続し、冷却対象となる空間の近くで冷媒を膨張して熱交換を行い直接空気を冷却するものであり、蒸発器で水などの冷熱媒を冷却し、冷却した冷熱媒をポンプ移送し冷却コイルで冷熱媒と熱交換して空気を冷却する「間接膨張冷却方式(間膨式)」と比べると、構成がシンプルでエネルギー効率が高いとされている。
図10は、直接膨張冷却方式による、冷却対象空間へ送風する空気を蒸発器で冷却する冷凍サイクルを示す図であり、圧縮機1、凝縮器2、膨張弁4、蒸発器5、蒸発圧力調整弁13が冷媒配管で接続されている。
該冷凍サイクルでの制御は、膨張弁4が蒸発器5出口(5)の過熱度(冷媒の流体の温度と蒸発温度の差)制御を行うことで、蒸発器5の冷媒流量を制御し、蒸発圧力調整弁13が蒸発器5出口(5)の圧力制御を行うことで、蒸発器5の冷媒温度を制御する。
圧縮機1は圧縮機1入口(1)の圧力制御を行うことで、負荷の増減に応じて出力を増減させている。
また、蒸発器5の冷媒温度の適正値は、送風温度設定や負荷状況によって変動するので、送風温度による蒸発器5出口(5)の圧力設定値の制御を行っている。
一般的な冷凍サイクルでは、蒸発圧力調整弁13がない場合もあり、この場合、圧縮機1の圧力制御により蒸発器5の冷媒温度が定まる。しかし、圧縮機1の保護から圧縮機1入口(1)の圧力設定範囲には制限があるため、これより高い蒸発温度を再現する場合、蒸発圧力調整弁13等による圧力制御が必須となる。
特に環境試験室、部品試験装置や発熱体のアイドリング保管庫など、冷却対象空間に恒温が要求されるにもかかわらず熱負荷変動の大きい対象空間に対し、蒸発器5で精密な温度制御を行うには、送風温度とある程度近い温度である高い蒸発温度でないと温度制御がうまくいかない。モリエル線図において、熱のやり取りをして飽和線間を移動する蒸発器や凝縮器内の圧力は温度と深い相関があることから判るとおり、圧力制御が重要となる。
【0003】
上記一般的な冷凍サイクルにおいて、圧縮機1に液体が吸い込まれる液バックを防止するために、過熱度の設定値はゼロからかなり離れて大きく取られるが、過熱度が大きいほど冷媒の比体積が大きくなり圧縮機1の効率が低下するという問題がある。
また、過熱度が大きいほど加熱源となる空気と冷媒温度との間に温度差を持っていないと過熱度が取れなく、逆に空気から見ると、空気中の水分飽和線よりも低い冷媒温度となって、冷媒と空気との熱交換器である蒸発器表面における空気の除湿量が増えることになり、冷却対象空間を恒温恒湿に保つには再加湿する必要が生じて、エネルギー損失を招くという問題もある。
このような問題に対し、圧縮機への液バッグ防止、過熱運転防止を目的とした冷却装置として、例えば、特許第265329号が開示されている。
【0004】
図7は、前記特許第265329号で開示されている冷蔵庫内に設けられた冷却装置の回路構成を示す図である。該冷却装置は図7に示すように、圧縮機1、凝縮器2、受液器3、電子式膨張弁4、蒸発器5、冷媒流量制御弁13を連通管11、吸入管12及び吸入配管15で連接して冷凍サイクルを構成している。冷媒流量制御弁13は蒸発圧力調整弁である。
このように構成された冷凍サイクルにおいて、圧縮機1により吐き出された冷媒ガスは凝縮器2に導かれ、ここで液化して受液器3に溜められる。この冷媒は電気信号に基づいて減圧率が可変な電子式膨張弁4により減圧され、低温、低圧の液となって連通管11を経て蒸発器5に入る構成となっている。そして、蒸発器5で冷蔵庫内の空気より熱を奪い、冷媒液はガス化して吸入管12を通り圧縮機1に戻る。
上記冷凍サイクルには、蒸発器5で冷却された空気の温度を検出する第1の温度検出器14、吸入配管15の温度を検出する第2の温度検出器16、吸入配管15の圧力を検出する圧力検知器17及び該圧力検知器17で検出された圧力に基づき、その圧力に相当する飽和温度に換算し、この換算された温度と第2の温度検出器16で検出された温度との差が所定の値になるように電子式膨張弁4を制御する制御装置18が設けられている。つまり過熱度により電子膨張弁4を制御しているのである。
なお、蒸発器5と圧縮機1との間に接続される冷媒流量制御弁13は、蒸発器5で冷却された空気の温度を検出する第1の温度検出器14の検出値に基づいて制御装置18により開度が制御される。
【0005】
図8は、上記のように構成された冷却装置の動作中の冷媒状態を示すモリエル線図で圧縮機1より吐き出された冷媒ガスは凝縮器2に導かれて液化し(図中a)、この液冷媒は制御装置18によって制御される電子式膨張弁4によって減圧され(図中b)、蒸発器5に導入され蒸発する(図中c)。そして、蒸発器5を出た後、制御装置18によって制御される流量制御弁13で減圧され(図中d)、圧縮機1に吸入され圧縮仕事でエネルギーを与えられる(図中e)。電子式膨張弁4の開度は、吸入配管15の温度と吸入配管15の圧力に相当する飽和温度との差(図中SH1 )が所定の値になるように制御される。図8中、線分dとeの交点を(1)、線分eとaの交点を(2)、線分aとbの交点を(3)、線分bとcの交点を(4)、線分cとdの交点を(5)として、従来の冷凍サイクルの状態を以降に示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第265329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1の従来技術においては、前記蒸発器5で冷却される空気の温度に第1の所定目標範囲とこの第1の所定目標範囲より範囲の小さい第2の所定目標範囲を設け、第1の所定目標範囲内で、第2の所定目標範囲より上記冷却される空気温度が高くかつ、冷却される空気温度の時間に対する変化係数(微分係数)がマイナスである時、および第1の所定目標範囲内で、第2の所定目標範囲より上記冷却される空気温度が低くかつ、冷却される空気温度の時間に対する変化係数(微分係数)がプラスである時は、上記冷媒流量制御弁13の開度を変更しないように制御する制御装置を備えて、被冷却対象物の乾燥を防止するとともに冷却温度を木目細かく制御している。
【0008】
しかし、図9に示すように負荷が増加した場合(制御する還風温度が高くなった場合)、それに引きずられて破線の状態から実線の状態へ冷媒(4)-(5)の蒸発器5内の冷媒温度も引きずられて上昇するので、冷媒流量制御弁13出口(1)の温度(温度検出器16で検出された温度)が上昇する(空気側の温度に引きずられて冷媒の温度も上昇)。このとき上昇した温度を制御するのは冷媒流量制御弁13で、温度を下げるために冷媒流量制御弁13は開いてくる。冷媒流量制御弁13が開いてくると冷媒(5)-(1)の圧力差が小さくなるため、温度の不変な凝縮機の(2)点からの圧縮機仕事によって遡る状態により(5)の圧力および温度が下がってくるが、それと同時に(1)の圧力は上がってくる。
なお、蒸発温度としては上がってくる(図9の(4)-(5)の線が上に行くほど温度が高くなる)ので(5)の比エンタルピ値が動かなければ、冷媒流量制御弁13出口(1)過熱度は、気液-気飽和線が傾いていることから(5)点が飽和線に近づき小さくなってくる。
過熱度は、式1、式2により求められる。式1及び式2に示すように過熱度は温度と圧力によって求まり温度上昇によって大きくなり、圧力上昇によって小さくなる。このため冷媒流量制御弁13出口(1)の過熱度は、負荷が増加した場合に大きくなることも小さくなることもあり得る。
このように負荷の増減と冷媒流量制御弁13出口の過熱度の増減が一致しないことがある。これは、過熱度が負荷の大小だけでなく、その圧力場によっても変化するのが原因である。
仮に負荷が増加した場合に過熱度が小さくなると膨張弁4は閉方向に動作し流量を絞ることになる。このように負荷の増加に対し膨張弁4の動作が逆行することになり、冷却装置全体の制御が安定しないか、もしくは安定するのに時間がかかる要因となる。
負荷が減少した場合も同様である。

Te(蒸発温度)=f(P)=Ap6+Bp5+Cp4+Dp3+Ep2+FP+G 式1
Te:蒸発温度[℃] P:圧力[MPa] A~G=近似定数

Ts(過熱度)=T(温度)-Te=T―f(P) 式2
Ts:過熱度[℃] T:温度[℃] P:圧力[MPa]

本発明は、上記のような問題点を解消し、膨張弁が負荷の増減に合った動作となるように制御し、制御の安定性を向上させた冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を下記の手段により解決した。
〔1〕圧縮機(1)、凝縮器(2)、膨張弁(4)、蒸発器(5)および蒸発圧力調整弁(13)を配管で順次接続して冷凍サイクルを構成し、前記蒸発器(5)は熱負荷変動がある空間への送風系に位置して該送風との熱交換を行うよう配置され、前記蒸発圧力調整弁(13)の開度を該蒸発圧力調整弁(13)と前記蒸発器(5)との間を連結する第1の吸入管(12)に設けられた第2の圧力検知器(20)により検知された第1の吸入管(12)内の圧力と第2の圧力検知部設定圧力との偏差に基づいて制御し、且つ、前記送風系の蒸発器(5)の出口側に設置される第3の温度検出器(29)で検出した送風温度に基づいて演算された前記第2の圧力検知部設定圧力値を、前記蒸発圧力調整弁の開度制御の設定圧力として更新するカスケード制御を行うとともに、
上記膨張弁(4)の開度を、前記蒸発圧力調整弁(13)と圧縮機(1)との間を連通する第2の吸入管(15)の温度を検出する第1の温度検出器(16)の検出値と、第2の吸入管(15)の圧力を検知する第1の圧力検知器(17)の検出値とに基づいて比エンタルピを演算し、熱負荷変動がある空間の負荷に応じて設定された比エンタルピ設定値との偏差に基づいて制御する制御装置(18)とからなることを特徴とする冷却装置。
〔2〕圧縮機(1)、凝縮器(2)、膨張弁(4)、蒸発器(5)および蒸発圧力調整弁(13)を配管で順次接続して冷凍サイクルを構成し、前記蒸発器(5)は熱負荷変動がある空間への送風系に位置して該送風との熱交換を行うよう配置され、前記蒸発圧力調整弁(13)の開度を該蒸発圧力調整弁(13)と前記蒸発器(5)との間を連結する第1の吸入管(12)に設けられた第2の圧力検知器(20)により検知された第1の吸入管(12)内の圧力と第2の圧力検知部設定圧力との偏差に基づいて制御し、且つ、前記送風系の蒸発器(5)の出口側に設置される第3の温度検出器(29)で検出した送風温度に基づいて演算された前記第2の圧力検知部設定圧力値を、前記蒸発圧力調整弁の開度制御の設定圧力として更新するカスケード制御を行うとともに、
上記膨張弁(4)の開度を、前記蒸発圧力調整弁(13)と前記圧縮機(1)との間を連結する第2の吸入管(15)の温度を検出する第1の温度検出器(16)の検出値と、第2の吸入管(15)の圧力を検知する第1の圧力検知器(17)の検出値とに基づいて比エンタルピを演算し、熱負荷変動がある空間の負荷に応じて設定された比エンタルピ設定値との偏差に基づいて比例制御するとともに、上記膨張弁(4)の開度を、比エンタルピ設定値から同じ所定量離れた上限比エンタルピと下限比エンタルピを設定し、上限比エンタルピと下限比エンタルピとの間を不感帯として設定し、該不感帯に比エンタルピ演算値がある場合開度を変化させないよう制御する制御装置(18)とからなることを特徴とする冷却装置。
〔3〕圧縮機(1)、凝縮器(2)、膨張弁(4)、蒸発器(5)および蒸発圧力調整弁(13)を配管で順次接続して冷凍サイクルを構成し、前記蒸発器(5)は熱負荷変動がある空間への送風系に位置して該送風との熱交換を行うよう配置され、前記蒸発圧力調整弁(13)の開度を該蒸発圧力調整弁(13)と前記蒸発器(5)との間を連結する第1の吸入管(12)に設けられた第2の圧力検知器(20)により検知された第1の吸入管(12)内の圧力と第2の圧力検知部設定圧力との偏差に基づいて制御し、且つ、前記送風系の蒸発器(5)の入口側に設置される第3の温度検出器(29)で検出した送風温度に基づいて演算された前記第2の圧力検知部設定圧力値を、前記蒸発圧力調整弁の開度制御の設定圧力として更新するカスケード制御を行うとともに、
上記膨張弁(4)の開度を、前記蒸発圧力調整弁(13)と圧縮機(1)との間を連通する第2の吸入管(15)の温度を検出する第1の温度検出器(16)の検出値と、第2の吸入管(15)の圧力を検知する第1の圧力検知器(17)の検出値とに基づいて比エンタルピを演算し、熱負荷変動がある空間の負荷に応じて設定された比エンタルピ設定値との偏差に基づいて制御する制御装置(18)とからなることを特徴とする冷却装置。
〔4〕圧縮機(1)、凝縮器(2)、膨張弁(4)、蒸発器(5)および蒸発圧力調整弁(13)を配管で順次接続して冷凍サイクルを構成し、前記蒸発器(5)は熱負荷変動がある空間への送風系に位置して該送風との熱交換を行うよう配置され、前記蒸発圧力調整弁(13)の開度を該蒸発圧力調整弁(13)と前記蒸発器(5)との間を連結する第1の吸入管(12)に設けられた第2の圧力検知器(20)により検知された第1の吸入管(12)内の圧力と第2の圧力検知部設定圧力との偏差に基づいて制御し、且つ、前記送風系の蒸発器(5)の入口側に設置される第3の温度検出器(29)で検出した送風温度に基づいて演算された前記第2の圧力検知部設定圧力値を、前記蒸発圧力調整弁の開度制御の設定圧力として更新するカスケード制御を行うとともに、
上記膨張弁(4)の開度を、前記蒸発圧力調整弁(13)と前記圧縮機(1)との間を連結する第2の吸入管(15)の温度を検出する第1の温度検出器(16)の検出値と、第2の吸入管(15)の圧力を検知する第1の圧力検知器(17)の検出値とに基づいて比エンタルピを演算し、熱負荷変動がある空間の負荷に応じて設定された比エンタルピ設定値との偏差に基づいて比例制御するとともに、上記膨張弁(4)の開度を、比エンタルピ設定値から同じ所定量離れた上限比エンタルピと下限比エンタルピを設定し、上限比エンタルピと下限比エンタルピとの間を不感帯として設定し、該不感帯に比エンタルピ演算値がある場合開度を変化させないよう制御する制御装置(18)とからなることを特徴とする冷却装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明の冷却装置によって下記の効果が発揮される。
〈1〉負荷の増減と蒸発圧力調整弁出口の比エンタルピの増減は必ず一致することから、膨張弁の制御を過熱度から比エンタルピに変更することで、膨張弁が負荷の増減に合った動作となり、冷却装置の制御の安定性を向上することができる。
〈2〉上記〈1〉に加え、膨張弁(4)の開度を、比エンタルピ設定値から同じ所定量離れた上限比エンタルピと下限比エンタルピを設定し、上限比エンタルピと下限比エンタルピとの間を不感帯として設定し、該不感帯に比エンタルピ演算値がある場合開度を変化させないよう制御するため、負荷の急増・急減においても無駄なオーバーシュートが防止でき冷却装置の制御精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例1における冷却装置の制御フロー(回路構成)を示す図である。
図2図1における冷却装置の動作中の冷媒の状態を示すモリエル線図である。
図3】膨張弁の制御動作として、実施例1と実施例2とを表す図である。
図4】本発明の実施例2における送風温度ごとの、上限比エンタルピ及び下限比エンタルピの設定値との関係式を表す図である。
図5】膨張弁の一般的な制御を行った時の制御精度を表す図である。
図6】本実施例2の制御を行った時の制御精度を表す図である。
図7】従来の冷却装置の制御フロー(回路構成)を示す図である。
図8図7における冷却装置の動作中の冷媒の状態を示すモリエル線図である。
図9図7に示す冷却装置の稼働中に負荷が増加した時の冷媒状態を示すモリエル線図上の変動を示す図である。
図10】従来の直接膨張冷却方式による冷凍サイクルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施例を図に基づいて説明する。
【実施例
【0013】
〔実施例1〕
以下、本発明に係る冷却装置の実施例を図について説明する。
図1はこの発明の実施例における冷却装置の制御フロー(回路構成)を示す図、図2は冷却装置の動作中の冷媒の状態を示すモリエル線図である。図1において、圧縮機1、凝縮器2、膨張弁4、蒸発器5を連通管11及び第1の吸入管12及び第2の吸入管15を連接して冷凍サイクルを構成している。
13は蒸発器5と圧縮機1との間に接続される蒸発圧力調整弁であり、後述のように制御される第1のPID制御部(圧力調節計、制御装置)21により開度が制御される。
15は蒸発圧力調整弁13と圧縮機1との間を連通する第2の吸入管である。
なお、前記連通管11、第1の吸入管12、第2の吸入管15に記載されている(1)から(5)は、前記連結管11、第1の吸入管12、第2の吸入管15内における位置を表し、(1)は圧縮機入口(蒸発圧力調整弁出口)、(2)は凝縮器入口(圧縮機出口)、(3)は膨張弁入口(凝縮器出口)、(4)は蒸発器入口(膨張弁出口)、(5)は蒸発圧力調整弁入口(蒸発器出口)であり、それぞれの位置での冷媒の状態を後述に示す。
16は前記第2の吸入管15の温度を検出する第1の温度検出器、17は第2の吸入管15の圧力を検知する第1の圧力検知器である。18は制御装置(比エンタルピ演算装置)であり、第1の温度検出器16の検出値及び第1の圧力検知器17の検出値に基づいて比エンタルピを演算し比エンタルピ測定値相当値に応じた信号を出力するとともに、該比エンタルピ測定値相当値に基づいて後述の第2のPID制御部22へ入力させ、第2のPID制御部22に設定された比エンタルピ設定値との偏差に応じて膨張弁4の開度を制御する。
19は第1の吸入管12の温度を検出する第2の温度検出器、20は第1の吸入管12の圧力を検知する第2の圧力検知器である。
21は第1のPID制御部(圧力調節計、制御装置)、22は第2のPID制御部(比エンタルピ調節計、制御装置)、23は第3のPID制御部(圧力調節計、制御装置)、24は第4のPID制御部(温度―圧力調節計、制御装置)、25はインバータ、26は比率設定器(レシオバイアス)、27は蒸発器5に通風する送風機、28は該送風機に接続された送風ダクト、29は第3の温度検出器である。
【0014】
なお、第1の温度検出器16、第1の圧力検知器17及び第2のPID制御部22は制御装置18と、膨張弁4は第2のPID制御部22と、第2の圧力検知器19と蒸発圧力調整弁13は第1のPID制御部21と、第1の圧力検知器17とインバータ25は第3のPID制御部23と、比率設定器26と第3の温度検出器29は第4のPID制御部24と、また比率設定器26は第1のPID制御部21とが、それぞれが制御線で接続されている。
【0015】
このように構成された冷却装置の制御フローにおいて、前記第1の圧力検知器17で第2の吸入管15内の圧力を検出しその検出値を圧力調節計である第3のPID制御部23で、設定された比例帯(P)積分時間(I)微分時間(D)に応じて演算した結果として信号出力するPID制御し、出力された信号に基づいてインバータ25を制御し圧縮機1から凝縮器2に送る圧縮機出口圧力、ひいては冷媒流量を変えている。
第4のPID制御部24(温度―圧力調節計)は、熱負荷変動が大きいにもかかわらず恒温を要求される対象空間へ温調空気を供給する送風ダクト28の、蒸発器5出口側に配置される第3の温度検出器29で検出した送風温度測定値を、対象空間の温度条件に応じて設定される送風温度を外部から入力される送風温度設定値に基づき偏差として演算し、比例帯(P)積分時間(I)微分時間(D)に応じて演算した結果として信号出力するPID制御をおこなって送風温度信号を出力し、該出力された送風温度(信号)を比率設定器26に入力する。該比率設定器26は前記入力された送風温度信号を圧力信号に変換し前記第1のPID制御部21へ圧力設定値として送る。つまり、前記送風系の蒸発器5の出口側に設置される第3の温度検出器29で検出した送風温度に基づいて演算された第2の圧力検知部設定圧力値を、蒸発圧力調整弁13の開度制御の設定圧力として更新するカスケード制御を行う。これに基づき、前記第1のPID制御部21は前記第2の圧力検知器20により検知された第1の吸入管12内の圧力測定値と、前記比率設定器26から送られてきた送風設定温度に基づいて変換された圧力設定値(変換圧力)との偏差に基づいて前記蒸発圧力調整弁13の開度を制御する。
このように、蒸発圧力調整弁13の開度は、送風ダクト28が温調空気を送風する対象空間の温度設定や熱負荷に応じて、圧縮機1への液バックを防止するよう、モリエル線図上の気液と気との間の飽和線から出口冷媒状態を離しつつ、蒸発器5の圧力、ひいては蒸発温度を保ちながら圧縮機1と連携して、第1の吸入管12内の圧力と、第2の吸入管15内の圧力を制御する。
【0016】
上記蒸発圧力調整弁13の開度の制御を詳細に説明すると、第4のPID制御部は、第3の温度検出器29で検出した温度を、対象空間の温度条件に応じて設定される送風温度を外部から入力される送風温度設定値に基づき偏差として演算し、比例帯(P)積分時間(I)微分時間(D)に応じて演算した結果として信号出力するPID制御をおこなって送風温度信号を出力し、該演算した送風温度信号を比率設定器26に入力する。該比率設定器26は前記入力された送風温度信号を圧力信号に変換し前記第1のPID制御部21の設定値入力部へ送り、該第1のPID制御部21は前記第2の圧力検知器20により検知された第1の吸入管12内の圧力と、前記比率設定器26から逐時送られてくる圧力設定値との偏差に基づいて、比例帯(P)積分時間(I)微分時間(D)に応じて演算した結果として信号出力する圧力信号に基づき前記蒸発圧力調整弁13の開度を制御する。
【0017】
膨張弁4の開度は、第1の温度検出器16の検出値と第1の圧力検知器17の検出値とに基づいて制御装置18で演算された比エンタルピ測定値相当値に基づいて第2のPID制御部22によって、比例帯(P)積分時間(I)微分時間(D)に応じて演算した結果として出力された信号に基づき制御される。
上記膨張弁4の開度制御を詳細に説明すると、制御装置18で、第1の温度検出器16の検出値と第1の圧力検知器17の検出値に基づいて式(3)から比エンタルピを演算し、その演算結果(比エンタルピ)を第2のPID制御部21を介して膨張弁4の開度を制御する。
式3は、日本冷凍空調学会公開の冷凍サイクル計算プログラムソフトを使用し算出した各温度及び各圧力と比エンタルピとの関係を基に重回帰分析により立式した。

h(P,T)=AP3T3+BP3T2+CP3T+DP3+EP2T3+FP2T2+GP2T+HP2+IPT3+JPT2+KPT+LP+MT3+NT2+OT+P 式3
h:比エンタルピ[kJ/kg] T:温度[℃] P:圧力[MPa] A~P=近似定数
【0018】
〔実施例2〕
実施例2の冷却装置の制御フローは、実施例1と同様である。
実施例1との違いは、前記膨張弁4の開度を、第2の吸入管15の温度を検出する第1の温度検出器16の検出値と第2の吸入管15の圧力を検知する第1の圧力検知器17の検出値に加え、送風温度を計測する第3の温度検出器29の測定値にも基づいて上限比エンタルピと下限比エンタルピを演算し、比エンタルピ設定値から同じ所定量離れた上限比エンタルピと下限比エンタルピを設定し、上限比エンタルピと下限比エンタルピとの間を不感帯として設定し、該不感帯に比エンタルピ演算値がある場合開度を変化させないよう制御するところにある。
これは、膨張弁4は流量制御を、蒸発圧力調整弁13は温度制御を目的とした弁であるが、膨張弁4の動作は温度変動を、蒸発圧力調整弁13の動作は流量変動を伴い互いに制御が干渉しあうため膨張弁4の動作が過敏だと干渉が大きくなりハンチングを起こすことから膨張弁4の動作に不感帯を設けて開度を制御する。
図3は、実施例2の膨張弁の制御動作を表す図であり、(A)は膨張弁の開度を過熱度で制御する一般的な制御動作を表す図で、(B)は比エンタルピに上限・下限の比エンタルピを設け、該上限・下限の比エンタルピで膨張弁の開度を制御する本実施例の制御動作を示す図である。
(B)に示すように蒸発圧力調整弁13出口部の比エンタルピを一定制御とし、設定値に上限SP(上限セットポジション)と下限SP(下限セットポジション)を設けこの間を膨張弁の開度変更動作をさせない不感帯とし、この間の比エンタルピの変動を許容することで、膨張弁の開度変更動作をさせないことで、冷凍サイクルの圧力変動を小さくするようにした。
【0019】
図4は、送風温度ごとの比エンタルピ設定を表す図である。制御装置18には、この関係式が記憶され、図1に図示されない制御線により、送風温度を計測する第3の温度検出器29の測定値を制御装置18に入力され演算される。
実施例2の冷却装置は、膨張弁の制御を過熱度から比エンタルピに変更するとともに、比エンタルピの設定値に上限・下限の比エンタルピを設定しこの間を膨張弁を動作させない不感帯とし、この間の変動を許容する。このように、膨張弁を過度に動作させないよう制御することで、装置全体の制御の安定性を向上させるものである。
実施例2において、上限・下限の比エンタルピを設定する一例を説明する。
例えば、過熱度の設定値は10℃を目安とする場合に、比エンタルピで制御する場合は、過熱度相当にして5℃~15℃程度となるように比エンタルピの下限と上限を設定する。
線図イは、下限SPで過熱度5℃相当を下限とした場合の送風温度ごとの比エンタルピを表し、線図ロは、上限SPで過熱度15℃相当を上限とした場合の送風温度ごとの比エンタルピを表し、線図イと線図ロとの間が不感帯(膨張弁の開度が一定)である。
このように過熱度5℃相当を下限に、過熱度15℃相当を上限とし、過熱度10℃±5℃位は、不感帯として膨張弁の開度が動かない領域として、比エンタルピが下の線図イを下まわると膨張弁を絞り(開度を小さくする)、逆に上の線図ロを上まわると膨張弁を開いて(開度を大きくする)膨張弁4の開度を制御する。
すなわち、送風設定温度毎に比エンタルピを上下の線図のように設定しておけば、過熱度10℃相当の設定になる。
なお、過熱度は、蒸発温度によって変わるため、送風温度の設定値に応じて比エンタルピの設定値も変化するように制御を持たせている。
【0020】
本実施例2の冷却装置の性能評価を次のように行った。
1)試験条件
表1は、試験条件であり、一般的な制御方式と本実施例の制御方式にて、送風温度をパラメータとし、-15℃から30℃まで段階的に設定する。
【表1】
2)試験方法
制御が安定している状態から負荷を25%から100%に急増または急減させ、再び安定するまでを一つの試験とし、この間の送風温度の変動を確認した。
3)試験結果
図5は、膨張弁の一般的な制御を行った時の制御精度を表す図で、(A)は発熱負荷急増時、(B)は熱負荷急減時、図6は、本実施例2の制御を行った時の制御精度を表す図で、(A)は発熱負荷急増時、(B)は熱負荷急減時を表す。
図5及び図6において横軸に時間を縦軸に温度偏差(送風温度の設定値と実測値の差)を示す。
また、線図により設定した送風温度を-15℃、0℃、15℃、30℃で表す。
一般的な制御は、図5に示すように低温(-15℃、0℃)設定時の送風温度は比較的安定しているが、高温(15℃、30℃)設定時は制御機器の出力が安定せずに大きくハンチングをしている。
一方、本実施例2の制御は、図6に示すようにいずれの設定温度でも送風温度は安定しており、負荷が±0.3℃程度、負荷急変時でも±1.5℃程度の変動に抑えられた。これは膨張弁は負荷急変時でもほとんど動作しておらず、制御機器間に干渉が抑えられたためであると考えられる。
本実施例の冷却装置によれば-15℃から+30℃の送風温度設定を、負荷が25%から100%に急増・急減する条件にて±1.5℃程度の精度で制御できる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の冷却装置は、低温や高温場などさまざまな温度に設定して実験が行われるエンジン試験室など恒温が要求される環境試験室、部品試験装置や、発熱体がアイドリングしたり静止したりする保管庫に使用できる。
なお、実施例1や実施例2については、熱負荷変動がある冷却対象空間への送風系に蒸発器を送風との熱交換ができるよう配置した送風ダクトにおいて、送風系の蒸発器5の出口側に第3の温度検出器29を設置し、この第3の温度検出器29で検出した送風温度に基づいて演算された前記第2の圧力検知部設定圧力値を、蒸発圧力調整弁13の開度制御の設定圧力として更新するカスケード制御をすることで、冷却対象空間の温度設定値や熱負荷状態をとりこんでいる。
これに対して、送風ダクトにおいて送風系の蒸発器5の入口側に第3の温度検出器29を設置し、この第3の温度検出器29で検出した送風温度に基づいて演算された前記第2の圧力検知部設定圧力値を用いても、送風ダクトの蒸発器入口空気が還気などであり、熱負荷変動がある対象空間の温度状態に対応していれば、出口側に設置の温度検出器との代替としてよい。
【符号の説明】
【0022】
1 圧縮機
2 凝縮器
4 膨張弁
5 蒸発器
11 連通管
12 第1の吸入管
13 蒸発圧力調整弁
15 第2の吸入管
16 第1の温度検出器
17 第1の圧力検知器
18 制御装置(比エンタルピ演算装置)
19 第2の温度検出器
20 第2の圧力検知器
21 第1のPID制御部(圧力調節計、制御装置)
22 第2のPID制御部(比エンタルピ調節計、制御装置)
23 第3のPID制御部(圧力調節計、制御装置)
24 第4のPID制御部(温度-圧力調節計、制御装置)
25 インバータ
26 比率設定器(レシオバイアス)
27 送風機
28 送風ダクト
29 第3の温度検出器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10