(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】感震装置
(51)【国際特許分類】
G01V 1/00 20060101AFI20220610BHJP
【FI】
G01V1/00 D
(21)【出願番号】P 2018074942
(22)【出願日】2018-04-09
【審査請求日】2021-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】石原 孝一
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-166832(JP,A)
【文献】特開2016-211920(JP,A)
【文献】特開平09-215178(JP,A)
【文献】特開2006-208163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加速度センサが出力する加速度情報を基に揺れの速度を算出する揺れ速度演算部と、
外部に信号を出力する出力部と、
算出した
揺れの速度と設定されている速度閾値とを比較して地震のレベルを判定
し、算出した揺れの速度が前記速度閾値以上であったら前記出力部から所定の信号を出力させるレベル判定部と、
前記出力部が出力する前記所定の信号を遅延させる出力遅延部とを有し、
前記出力遅延部は、前記レベル判定部が前記所定の信号を出力させると判定しても、前記揺れの速度が前記速度閾値より下回るのを待ち、下回ったら一定時間のカウントを開始し、前記一定時間が経過したら前記出力部から前記所定の信号を出力させることを特徴とする感震装置。
【請求項2】
前記一定時間を設定する遅延時間設定部を有することを特徴とする請求項
1記載の感震装置。
【請求項3】
前記速度閾値を設定するレベル設定部を有することを特徴とする請求項1
又は2の何れかに記載の感震装置。
【請求項4】
前記出力部は、所定の電路に漏電を擬似発生させるための擬似漏電発生端子を有し、
前記所定の信号が前記擬似漏電発生端子を介して漏電を擬似発生させる信号であることを特徴とする請求項1乃至
3の何れかに記載の感震装置。
【請求項5】
前記加速度センサが出力する加速度情報を基に地震の震度を算出する震度算出部を有し、
前記レベル判定部は、算出された震度が所定の震度閾値以上であったら、前記出力部から所定の信号を出させることを特徴とする請求項1乃至
4の何れかに記載の感震装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震の揺れが一定のレベルを超えたら電源の遮断等に活用できる信号を出力する感震装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より感震装置が組み付けられた分電盤がある。このような分電盤に組み付けられた従来の感震装置は、感知震度が例えば震度5強に設定されており、震度5強以上の地震が発生したら信号を出力し、その信号により主幹ブレーカの遮断等を実施した。
ただし、従来の感震装置は地表の揺れに対してその大きさを検知するものであるため、高層マンション等の高層階の建物で発生する長周期地震動には対応しておらず、高層階の分電盤に組み付けた場合には想定外の振動で動作する場合があったし、家具の倒壊等の被害が発生しても動作しない場合もあった。
これは、例え地上階の地震波が小さい場合でも、地震波周期と建物の共振周波数が一致した場合に、高層階では長周期地震動の大きな揺れとなるためで、地上階の振動の大きさと高層階で発生する長周期地震動の大きさが比例しないことによるものであった。
そのため、感震震度を変更可能として、高層の住戸での頻繁な遮断動作を低減できるよう構成された感震装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、感震震度を変更して対応させても、上述したように高層階の揺れは地上階の揺れに比例するわけではないため、良好な感知動作を実施させるのは難しく、高層階の居住者は採用を躊躇する傾向にあり、更に高層階での使用に好ましい感震装置が求められていた。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、長周期地震動の大きさを判定でき、高層階の住居等で発生する長周期地震動が一定のレベルを超えたら電源の遮断等を実施できる感震装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明に係る感震装置は、加速度センサが出力する加速度情報を基に揺れの速度を算出する揺れ速度演算部と、外部に信号を出力する出力部と、算出した揺れの速度と設定されている速度閾値とを比較して地震のレベルを判定し、算出した揺れの速度が速度閾値以上であったら出力部から所定の信号を出力させるレベル判定部と、出力部が出力する所定の信号を遅延させる出力遅延部とを有し、出力遅延部は、レベル判定部が所定の信号を出力させると判定しても、揺れの速度が速度閾値より下回るのを待ち、下回ったら一定時間のカウントを開始し、一定時間が経過したら出力部から所定の信号を出力させることを特徴とする。
この構成によれば、加速度情報から速度を算出することで、長周期地震動の大きさに比例する情報を得ることができる。そして、この速度が設定された閾値以上であったら所定の信号を出力するため、この信号を利用することにより、一定の大きさ以上の長周期地震動が発生したら電源の遮断等を実施することができる。よって、高層階の住居等で発生する長周期地震動に対応でき、安全確保に有効である。
【0007】
加えて、所定の信号は、揺れが小さくなり更に一定時間が経過したら出力されるため、居住者の避難が終了した頃をみはからって電源を遮断操作するのに好適であり、居住者の安全確保に活用できる。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、一定時間を設定する遅延時間設定部を有することを特徴とする。
この構成によれば、遅延時間を設定できるため、設置環境に応じて或いは利用者の要求に応じて変更でき、利便性が良い。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の構成において、速度閾値を設定するレベル設定部を有することを特徴とする。
この構成によれば、速度閾値を設定できるため、設置環境に応じて或いは利用者の要求に応じて変更でき、利便性が良い。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の構成において、出力部は、所定の電路に漏電を擬似発生させるための擬似漏電発生端子を有し、所定の信号が擬似漏電発生端子を介して漏電を擬似発生させる信号であることを特徴とする。
この構成によれば、漏電を擬似発生させるため、漏電遮断器を遮断動作させることができる。よって、専用の遮断器を設けることなく既存の漏電遮断器を使用して、所定震度以上の地震が発生したら電路の遮断ができ、利便性が良い。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れかに記載の構成において、加速度センサが出力する加速度情報を基に地震の震度を算出する震度算出部を有し、レベル判定部は、算出された震度が所定の震度閾値以上であったら、出力部から所定の信号を出させることを特徴とする。
この構成によれば、揺れの速度による判断に加えて震度によっても判断するため、震度と長周期地震動の双方による判断ができ、双方の判断が必要な高層ビルの中層階等に対して好適で有り、高さによらず地震の発生を受けて電源の遮断等に利用できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、加速度情報から速度を算出することで、長周期地震動の大きさに比例する情報を得ることができる。そして、この速度が設定された閾値以上であったら所定の信号を出力するため、この信号を利用することにより、一定の大きさを超える長周期地震動が発生したら電源の遮断等を実施することができる。よって、高層階の住居等で発生する長周期地震動に対応でき、安全確保に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る感震装置の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る感震装置のブロック図を示し、1は加速度センサ、2は設定部、3は表示部、4は報知部、5は記憶部、6は電路の遮断等に使用される警報信号(所定の信号)を出力する出力部、7は各種演算を実施すると共に感震装置の各部を制御するCPUを備えた演算制御部である。
尚、この感震装置は、分電盤内に設置され、地震発生を受けて電路の遮断に使用されるものとして説明する。
【0015】
加速度センサ1は、水平方向の加速度に加えて垂直方向の加速度を検知する3次元の加速度センサであり、発生した地震の加速度に応じた信号を出力する。
【0016】
設定部2は、例えばテンキーを有して構成され、この設定部2により警報信号を出力する揺れの閾値等が設定される。具体的に震度閾値及び長周期地震動の大きさに比例する揺れ速度の閾値、更には後述する遅延時間が設定される。
例えば震度5、震度5強、震度6等の震度閾値が設定されるし、速度閾値(例えば、50cm/s)が設定される。更に、5分等の遅延時間が設定される。
【0017】
尚、設定操作はテンキーでなくても良く、例えばセレクトスイッチを使用しても良い。また、設定された閾値のうち震度閾値、速度閾値のどちらを使用するか、或いは双方とも使用するかの設定もこの設定部2で行われる。
【0018】
表示部3は、例えば液晶表示部により構成され、閾値等の設定内容を表示するし、演算結果に基づき感知した揺れの震度や速度が表示される。尚、表示部3はLEDを用いた簡易な構成として、その発光形態の変化で表示させても良い。
【0019】
報知部4は、スピーカ等の報音部、発光通知するLED等の発光部を有し、演算結果が設定された閾値或いは閾値を上回る数値であったら、即時に警報音を報音するし発光部の点滅等を実施する。
【0020】
記憶部5は、設定された震度閾値、速度閾値、遅延時間が保存される。
【0021】
出力部6から出力される警報信号は、分電盤の主幹電路或いは分岐電路、更には分岐先の特定の電源コンセントを遮断操作するために使用される。例えば、この警報信号により電路に擬似漏電を発生させれば、電路が接続されている漏電遮断器が遮断動作する。そして、遮断対象の漏電遮断器を分電盤の主幹ブレーカ(図示せず)とすれば、警報信号により主電路を遮断して住戸全体の電源を遮断させることができる。
【0022】
また、出力部6から伝送線を延設して分電盤の外部に出力しても良く、地震の発生を受けて停止させたい電気機器が分電盤外にあれば、それを停止(遮断動作)させることができる。
【0023】
演算制御部7は、加速度センサ1からの加速度情報を基に地震の震度を算出する震度演算部7a、加速度センサ1の加速度情報から速度を演算する揺れ速度演算部7b、算出された震度或いは速度の計測値が設定された閾値以上であるか判定するレベル判定部7c、レベル判定部7cが計測値が閾値以上であると判断した際に、出力部6からの警報信号の出力を遅延させる出力遅延部7d等を備えている。
【0024】
ここで、出力遅延部7dの動作を具体的に説明する。出力遅延部7dはレベル判定部7cの判定結果を受けて遅延動作する。即ち、震度演算部7aが演算した震度、或いは揺れ速度演算部7bが演算した速度が、設定された閾値に達したら或いは超えたと判定したら、まず閾値以上となっている演算結果が閾値より下がるのを待ち、その間出力部6から警報信号を出力しない。
そして、閾値を下回ってから、更に予め設定されている時間、例えば5分等をカウントし、その時間が経過したら出力部6に起動信号を出力して出力部6から警報信号を出力させる。
【0025】
このように、加速度情報から速度を算出することで、長周期地震動の大きさに比例する情報を得ることができる。そして、この速度が設定された閾値以上であったら警報信号を出力するため、この信号を利用することにより、一定の大きさ以上の長周期地震動が発生したら電源の遮断等を実施することができる。よって、高層階の住居等で発生する長周期地震動に対応でき、安全確保に有効である。
また、警報信号は、揺れが小さくなり更に一定時間が経過したら出力されるため、居住者の避難が終了した頃をみはからって電源を遮断操作するのに好適であり、居住者の安全確保に活用できる。
加えて、震度閾値、速度閾値、遅延時間を設定できるため、設置環境に応じて或いは利用者の要求に応じて変更でき、利便性が良い。
更に、揺れの速度による判断に加えて震度によっても判断するため、震度と長周期地震動の双方による判断ができ、双方の判断が必要な高層ビルの中層階等に対して好適で有り、高さによらず地震の発生を受けて電源の遮断等に利用できる。
【0026】
尚、上記実施形態では、震度と揺れの速度の双方で揺れの大きさを判断しているが、高層住宅の高層部で使用する感震装置の場合は、長周期地震動の大きさを判定できる揺れ速度の判断みで警報信号を出力しても良く、震度演算部等の震度による判定部は無くても良い。
また、震度及び速度の閾値と遅延時間の双方を設定する設定部2を備えているが、震度閾値或いは速度閾値のみ設定可能として、遅延時間は固定としても良いし、逆に遅延時間のみ可変として閾値は固定値としても良い。
【0027】
図2は感震装置の他の例を示すブロック図であり、上記
図1とは出力部6の構成が異なっている。以下、共通する構成要素の説明は省略し、出力部6を具体的に説明する。
出力部6a(6)は、漏電を擬似発生させるために2つの端子(擬似漏電発生端子)12,12を有し、その間にリレー11が配置されている。このリレー11は、出力遅延部7dの起動信号によりオン動作する。
擬似漏電発生端子12、12を、漏電遮断動作させたい漏電遮断器の特定の1次側端子と2次側端子に接続することで、漏電遮断器を跨いだ電路を形成する。こうすることで、リレー11のオン動作により擬似漏電発生端子12が接続された電路が閉状態になると、通電状態となり漏電を擬似発生した状態が形成される。この結果、漏電遮断器が遮断動作する。即ち、出力部6aから出力される警報信号が漏電遮断器を遮断動作させる擬似漏電発生信号となる。
【0028】
このように、漏電を擬似発生させるため、漏電遮断器を遮断動作させることができる。よって、専用の遮断器を設けることなく既存の漏電遮断器を使用して、所定震度以上の地震が発生したら電路の遮断ができ、利便性が良い。
また、遮断させたい特定の漏電遮断機能を備えた分岐ブレーカに対して出力部6aを接続すれば、特定の分岐電路のみ遮断操作できる。
【0029】
尚、上記実施形態では、震度演算部7aが算出した震度に基づく警報信号と、揺れ速度演算部7bが算出した速度の大きさに基づく警報信号とが同一の出力部6から出力される構成であるが、出力部を独立させても良く、使用する信号に応じて出力部を選択するよう構成しても良い。
【符号の説明】
【0030】
1・・加速度センサ、2・・設定部(遮断レベル設定部、遅延時間設定部)、6,6a・・出力部、7・・演算制御部、7a・・震度演算部(震度算出部)、7b・・揺れ速度演算部、7c・・レベル判定部、7d・・出力遅延部、12・・擬似漏電発生端子。