(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】電気錠
(51)【国際特許分類】
E05B 47/00 20060101AFI20220610BHJP
E05B 55/00 20060101ALI20220610BHJP
E05B 59/00 20060101ALI20220610BHJP
E05B 65/06 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
E05B47/00 J
E05B55/00
E05B59/00
E05B65/06 C
(21)【出願番号】P 2018075035
(22)【出願日】2018-04-09
【審査請求日】2021-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000131511
【氏名又は名称】株式会社シブタニ
(74)【代理人】
【識別番号】100117260
【氏名又は名称】福永 正也
(72)【発明者】
【氏名】福井 昭浩
(72)【発明者】
【氏名】中 利友
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-046884(JP,A)
【文献】特表2007-510077(JP,A)
【文献】特開平01-203578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠筐体内に、
サムターンの動きと連動してデッドボルトがフロント板から突出す
るデッドボルトユニットと、
ラッチボルトがフロント板から突出する方向に付勢されたラッチボルトユニットと、
錠筐体の側板に垂直な方向を中心軸として回転することが可能に取り付けられている内側操作軸及び外側操作軸と、
電気的手段を有するロックユニットに連結され、前記デッドボルトのロック解除を制御するために摺動するロックプレートと、
前記外側操作軸と係合する外側ハンドルカムと、
前記内側操作軸と係合する内側ハンドルカムと
を備え、
前記外側ハンドルカム及び前記内側ハンドルカムは、前記デッドボルトユニットと連結されているハンドルカムユニットと連結されており、前記ラッチボルトユニットが前記ハンドルカムユニットの動作によりロック解除を制御される電気錠であって、
前記ロックプレートは前記外側ハンドルカムにのみ係合しており、前記ロックプレートの摺動により前記外側ハンドルカムが前記ロックプレートにかみ合うか否かを制御し、前記外側ハンドルカムと前記ロックプレートとがかみ合う場合に前記外側操作軸がロックされ
、
前記内側ハンドルカム及び前記外側ハンドルカムを取り換えて、それぞれ反対側に取り付けることが可能であることを特徴とする電気錠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施解錠操作用の各操作軸を同軸にして錠筐体をコンパクト化した電気錠に関する。
【背景技術】
【0002】
電気錠は、解錠信号を受信して通電された、例えばソレノイド等の電磁アクチュエータによって筐体内の錠止機構を解錠方向に駆動し、扉を扉枠に錠止しているデッドボルト及び/又はデッドボルトを兼ねたラッチボルトを、室外側に設けられたハンドル、ノブ等の外側操作部材により、電気錠の筐体内に没入する方向に駆動して解錠する。
【0003】
また、通常、室内側に設けられたハンドル、ノブ等の内側操作部材によって、電磁アクチュエータによる施錠機構の制御にかかわらず、何時でも施解錠操作ができるようになっている。さらに、電気錠は、停電になった場合、あるいは暗証符号を忘れた場合等に備えて、通常はシリンダ錠を備えている。室外側から合鍵を操作してシリンダ錠を施解錠し、シリンダ錠の内筒によっても施解錠操作ができるようになっている。
【0004】
加えて、室内側にはシリンダ錠に対応してサムターンが設けられており、サムターンを操作することによっても電気錠の施解錠が可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-046884号公報
【文献】特開2005-042300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
外側操作部材の操作軸と内側操作部材の操作軸とは、同軸に配置する設計もあれば異なる軸に配置する設計もある。また、シリンダ錠の回動軸線とサムターンの操作軸とについても同様である。
【0007】
外側操作部材と内側操作部材とを同軸に配置する場合、従来の構造では、扉の厚みの大小に応じて複数の操作軸を準備する必要があるとの指摘もあった。また、電気錠の筐体内において通常は離れた場所に設置されているデッドボルト及びラッチボルトを同時に解錠方向に駆動するための機構が複雑になるという問題点もあった。
【0008】
一方、外側操作部材と内側操作部材とを異なる軸に配置する場合、どうしても電気錠の筐体をコンパクトにすることが困難になる。また、扉の加工工程の増加、外部操作部材及び内部操作部材の構造の複雑化等、電気錠全体としてコストダウンが困難であるという問題点もあった。
【0009】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、筐体をコンパクト化するとともに、内部構造を簡素化することが可能な電気錠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために第1発明に係る電気錠は、錠筐体内に、サムターンの動きと連動してデッドボルトがフロント板から突出するデッドボルトユニットと、ラッチボルトがフロント板から突出する方向に付勢されたラッチボルトユニットと、錠筐体の側板に垂直な方向を中心軸として回転することが可能に取り付けられている内側操作軸及び外側操作軸と、電気的手段を有するロックユニットに連結され、前記デッドボルトのロック解除を制御するために摺動するロックプレートと、前記外側操作軸と係合する外側ハンドルカムと、前記内側操作軸と係合する内側ハンドルカムとを備え、前記外側ハンドルカム及び前記内側ハンドルカムは、前記デッドボルトユニットと連結されているハンドルカムユニットと連結されており、前記ラッチボルトユニットが前記ハンドルカムユニットの動作によりロック解除を制御される電気錠であって、前記ロックプレートは前記外側ハンドルカムにのみ係合しており、前記ロックプレートの摺動により前記外側ハンドルカムが前記ロックプレートにかみ合うか否かを制御し、前記外側ハンドルカムと前記ロックプレートとがかみ合う場合に前記外側操作軸がロックされ、前記内側ハンドルカム及び前記外側ハンドルカムを取り換えて、それぞれ反対側に取り付けることが可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、同一の回動軸上に内側ハンドルカムと外側ハンドルカムを設け、ロックプレートにより外側ハンドルカムによるロック解除のみを制御することができるので、構造をコンパクトにすることができ、部品点数を減じることで電気錠全体を小型化することが可能となる。また、内側ハンドルカム及び外側ハンドルカムを取り換えて、それぞれ反対側に取り付けることができるので、最小限の部品の交換でどちら向きに開く扉にでも取り付けることができ、部品管理が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態に係る電気錠の筐体カバーを外した構成を示す模式斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る電気錠の筐体カバーを外した構成を示す模式正面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る電気錠のロックユニットの構成を示す、フロント板に直交する鉛直面における断面図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る電気錠のロックプレートの形状を示す正面図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る電気錠の外側ハンドルカムの構成を示す二面図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る電気錠の外側ハンドルカムの構成を示す二面図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る電気錠の内側ハンドルカムの構成を示す二面図である。
【
図8】本発明の実施の形態に係る電気錠の内側ハンドルカムの構成を示す二面図である。
【
図9】本発明の実施の形態に係る電気錠のハンドルカムユニットの構成を示す二面図である。
【
図10】本発明の実施の形態に係る電気錠の連結カムユニットの構成を示す二面図である。
【
図11】本発明の実施の形態に係る電気錠の連結プレートユニットの構成を示す二面図である。
【
図12】本発明の実施の形態に係る電気錠のサムターンカムユニットの構成を示す平面図である。
【
図13】本発明の実施の形態に係る電気錠の外側ハンドルカムがロックされた状態を示す斜視図である。
【
図14】本発明の実施の形態に係る電気錠の外側ハンドルカムのロックが解除された状態を示す斜視図である。
【
図15】本発明の実施の形態に係る電気錠の外側ハンドルカムのロックが解除された状態を示す模式正面図である。
【
図16】本発明の実施の形態に係る電気錠の扉が内観から開かれる状態を示す斜視図である。
【
図17】本発明の実施の形態に係る電気錠の扉が開かれる状態を示す模式正面図である。
【
図18】本発明の実施の形態に係る電気錠の内側ハンドルカムと外側ハンドルカムの取付方向を説明するための簡易断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態に係る電気錠の筐体カバーを外した構成を示す模式斜視図であり、
図2は、本発明の実施の形態に係る電気錠の筐体カバーを外した構成を示す模式正面図である。(なお、
図1は筐体カバーを外した状態を、バネ等の付勢部材を省いて図示したものであり、
図2は、外側ハンドルカム33の動作がわかりやすいように、自由に回転することが可能な内側ハンドルカム32を取り外した状態を示している。)
【0016】
図1及び
図2に示すように、本実施の形態に係る電気錠は、筐体1内にて、上から順に、デッドボルト2、ラッチボルト3が、筐体1のフロント板100に垂直な前後方向(
図2の左右方向)に摺動することが可能に取り付けられている。ラッチボルト3は、ラッチボルトユニット30を付勢しているラッチバネ31により、フロント板100から突出する方向、すなわち
図1及び
図2の左方向へと付勢されている。
【0017】
ラッチボルト3の下方には外側操作軸60及び内側操作軸70が同軸になるように配設されており、それぞれ筐体1の側板に垂直な方向を中心軸として回動することが可能に取り付けられている。外側操作軸60の室外側の端部、すなわち扉面から室外側に突出した部分には、ノブ、ハンドル等の外側操作部材が、内側操作軸70の室内側の端部には、ノブ、ハンドル等の内側操作部材が、それぞれ取り付けられている。
【0018】
ラッチボルト3の動作から説明する。内側操作部材によりいつでも扉は開閉できるようにする必要がある。したがって、内側操作軸70は、回転動作を制約されることなく操作できるような機構にする必要がある。そして、内側操作部材により、ラッチボルト3及びデッドボルト2がフロント板100の内側へと引き込まれる必要がある。
【0019】
一方、外側操作部材による操作は、ラッチボルト3のロックを解除している状態でのみ扉を開閉できるよう制御する必要がある。ラッチボルト3のロックの解除は、カードキー等の電気的手段による。
【0020】
ロックユニット8は、電気的手段として電動モータを内蔵している。
図3は、本発明の実施の形態に係る電気錠のロックユニット8の構成を示す、フロント板100に直交する鉛直面における断面図である。
図3(a)は、ロック部材81が本体側へ引き込まれた状態を、
図3(b)は、ロック部材81が本体から突き出ている状態を、それぞれ示している。
【0021】
図3(a)に示すように、ロック部材81はロックユニット8の本体側へ引き込まれた状態となっている。バネ92は、モータシャフト91の付け根側(
図3(a)におけるモータシャフト91の左端)に設けられたコイルバネであり、コイルバネのバネ間の隙間をモータシャフト91の中途に存在する突起部93が回転しながら移動する。
【0022】
カードキー等による外部スイッチにより、電動モータ9を回転させる。電動モータ9の回転によりモータシャフト91が回転し、突起部93の移動に伴ってバネ92が
図3の右方向へと押し出され、
図3(b)の状態となる。
【0023】
ロック部材81の連結ピン82は平板上のロックプレート26と連結されている。したがって、ロック部材81の摺動に伴って、ロックプレート26も
図3(b)の右方向へと摺動する。
【0024】
図4は、本発明の実施の形態に係る電気錠のロックプレート26の形状を示す正面図である。
図4に示すようにロックプレート26は、第1の穴部261で、ロック部材81と連結ピン82を介して取り付けられている。
【0025】
また、第2の穴部262により、ロックプレート26の摺動範囲を制限している。これにより、ロックプレート26は、
図3の右方向へと直線運動をすることができる。
【0026】
ロックプレート26は、一方側に突出部263が形成されている。突出部263が、内側操作軸70に取り付けられた外側ハンドルカム33(
図2)と係合することにより板カム機構として機能し、外側ハンドルカム33の動きが制限されてラッチボルト3が固定される。内側ハンドルカム32は、
図1及び
図2に示すように外側ハンドルカム33の手前側に配置されており、ロックプレート26の厚みも外側ハンドルカム33のみに係合することができる厚みで、奥側に配置されている。
【0027】
図5は、本発明の実施の形態に係る電気錠の外側ハンドルカム33の構成を示す正面図、側面図、及び裏面図である。
図5(a)は、外側ハンドルカム33の正面図を、
図5(b)は、外側ハンドルカム33の側面図を、
図5(c)は、外側ハンドルカム33の裏面図を、それぞれ示している。
【0028】
図5(a)乃至
図5(c)に示すように、外側ハンドルカム33は、左右方向に突出部が設けてあり、突出部の下側の当接面331a、331bにおいて、ロックプレート26に当接する。また、ハンドルカムユニット4の円形の穴部に嵌合する突起部333が、内側ハンドルカム32と嵌合する凹部332の反対側、すなわち扉の外側方向に設けてある。
【0029】
図6は、本発明の実施の形態に係る電気錠の外側ハンドルカム33とロックプレート26との関係を示す二面図である。
図6(a)は、外側ハンドルカム33の裏面図側から見た構成図を、
図6(b)は、側面図を、それぞれ示している。
【0030】
図6からもわかるように、外側ハンドルカム33の当接面331aが、ロックプレート26の突出部263と当接することにより、外側ハンドルカム33が回転することができないようになり、ラッチボルト3が固定される。したがって、外側操作軸60に取り付けられた外側操作部材では、扉を開閉することができなくなっている。
【0031】
図7は、本発明の実施の形態に係る電気錠の内側ハンドルカム32の構成を示す正面図、側面図、及び裏面図である。
図7(a)は、内側ハンドルカム32の正面図を、
図7(b)は、内側ハンドルカム32の側面図を、
図7(c)は、内側ハンドルカム32の裏面図を、それぞれ示している。
【0032】
図7(a)乃至
図7(c)に示すように、内側ハンドルカム32も外側ハンドルカム33と同様に、左右方向に突出部が設けてある。ただし、外側ハンドルカム33の当接面331に相当する面が存在しない。そして、ハンドルカムユニット4の円形の穴部と嵌合することが可能な突起部323が、外側ハンドルカム33と嵌合する凸部322の反対側、すなわち扉の内側方向に設けてある。内側ハンドルカム32の突起部323は、外側ハンドルカム33の突起部333がハンドルカムユニット4の円形の穴部と嵌合している場合には、何も嵌合されていない。
【0033】
図8は、本発明の実施の形態に係る電気錠の内側ハンドルカム32とロックプレート26との関係を示す二面図である。
図8(a)は、内側ハンドルカム32の裏面図側から見た構成図を、
図8(b)は、側面図を、それぞれ示している。
【0034】
図8からもわかるように、内側ハンドルカム32は、ロックプレート26の突出部263と当接しないので、内側ハンドルカム32は自由に回転することができる。したがって、内側操作軸70に取り付けられた内側操作部材では、扉を自由に開閉することができる。
【0035】
外側操作軸60が回転可能である場合、すなわち、ロックプレートが
図2の右方向へ押し出されて外側ハンドルカム33がロックプレート26と係合していない状態では、ハンドルカムユニット4によりラッチボルトユニット30が動作する。ハンドルカムユニット4は、内側ハンドルカム32及び外側ハンドルカム33の両方に、カム軸(後述する第2の連結軸)を介して係合されている。
図9は、本発明の実施の形態に係る電気錠のハンドルカムユニット4の構成を示す二面図である。
図9(a)は側面図を、
図9(b)は平面図を、それぞれ示している。
【0036】
図9に示すように、ハンドルカムユニット4の穴部43は、外側ハンドルカム33の突起部333が嵌合し、内側操作軸70及び外側操作軸60と同軸に回転することができる。そして、ハンドルカムユニット4の第1の連結軸41は連結カムユニット5と連結されている。第2の連結軸42は、内側ハンドルカム32及び外側ハンドルカム33と係合することで板カム機構として機能し、それぞれ回転することによりラッチボルト3をフロント板100の内側へと引き込む。これにより、電気錠が取り付けられている扉を開くことができる。
【0037】
搖動することが可能な連結カムユニット5は、
図2に示すように付勢部材54により
図2の時計回りに付勢されている。
図10は、本発明の実施の形態に係る電気錠の連結カムユニット5の構成を示す二面図である。
図10(a)は側面図を、
図10(b)は平面図を、それぞれ示している。
【0038】
図10に示すように連結カムユニット5は、回転軸51を回転中心として搖動する。穴部52には、ハンドルカムユニット4の第1の連結軸41が連結されている。穴部53は、
図2の上下方向へ摺動する連結プレートユニット6と連結されており、内側ハンドルカム32及び外側ハンドルカム33がそれぞれ回転することにより、付勢部材54による付勢力に抗して
図2の反時計回りに搖動し、連結プレートユニット6を押し上げる。
【0039】
図11は、本発明の実施の形態に係る電気錠の連結プレートユニット6の構成を示す二面図である。
図11(a)は側面図を、
図11(b)は平面図を、それぞれ示している。
【0040】
図11に示すように連結プレートユニット6は、断面形状がコの字状をしており、連結軸61が連結カムユニット5の穴部53と連結している。連結カムユニット5の搖動により、連結プレートユニット6は
図2の上方へと押し上げられる。
【0041】
連結プレートユニット6の穴部62には、カム穴に沿って
図2の鉛直方向へ移動することが可能な移動軸63が連結されている。移動軸63は、筐体1に形成されている鉛直方向(
図2の上下方向)の穴部と係合しており、連結プレートユニット6の移動方向を鉛直方向に抑制することができる。
【0042】
また、連結プレートユニット6の移動に伴って、移動軸63がサムターンカムユニット7の突出部71を押し上げる。すなわち移動軸63とサムターンカムユニット7の突出部71とがカム機構として機能し、サムターンカムユニット7を回転させ、デッドボルト2をフロント板100の内側へと引き込む。これにより、たとえデッドボルト2がフロント板100よりも突出している状態、すなわちサムターン、あるいは錠により、扉にロックをかけている状態であっても、確実に解錠することができ、扉を開けることができる。
【0043】
図12は、本発明の実施の形態に係る電気錠のサムターンカムユニット7の構成を示す平面図である。サムターンカムユニット7の突出部71は、連結プレートユニット6と連結されている移動軸63で押し上げられる。元の状態に戻る付勢力は、バネ73により付与されている。
【0044】
カム軸72は、デッドボルト2と一体形成されているデッドボルトユニット22のカム穴21に係合している。したがって、突出部71が押し上げられ、
図2の反時計回りにサムターンカムユニット7が回転するとともに、カム穴21の左下方向へとカム軸72が移動することにより、デッドボルト2がフロント板100の内側へと引き込まれる。
【0045】
以下、電気錠全体の動きを説明する。
図13は、本発明の実施の形態に係る電気錠の外側ハンドルカム33がロックされた状態を示す斜視図である。
図13は、
図2に示す模式正面図の状態に相当する。
【0046】
図13に示すように、内側操作部材によりいつでも扉は開閉できるように、内側操作軸70は、回転動作を制約されない。したがって、内側ハンドルカム32は自由に回転できることを示すように、取付前の取り外された状態として図示している。(以下、
図14、
図16も同様である。)
【0047】
一方、外側操作部材による操作は、ラッチボルト3のロックを解除している状態でのみ扉を開閉できるよう制御する。カードキー等により、ロックユニット8に電気的信号として動作指示を与えた場合、ロックユニット8に内蔵されている電動モータが回転し、平板上のロックプレート26が右方向へと摺動する。これにより、ロックプレート26の突出部263が外側ハンドルカム33と係合しない位置となり、ロックが解除される。
【0048】
図14は、本発明の実施の形態に係る電気錠の外側ハンドルカム33のロックが解除された状態を示す斜視図である。
図15は、本発明の実施の形態に係る電気錠の外側ハンドルカム33のロックが解除された状態を示す模式正面図である。
【0049】
図14及び
図15に示すように、ロックプレート26は、ロックユニット8の反対側に突出部263が形成されている。ロックプレート26の摺動により、内側操作軸70に取り付けられた外側ハンドルカム33と係合していた突出部263が、係合しない位置まで移動する。これにより、外側ハンドルカム33も内側ハンドルカム32と同様に自由に回転することができるようになり、外側操作軸60に取り付けられた外側操作部材を操作することにより、扉を自由に開閉することができる。
【0050】
図16は、本発明の実施の形態に係る電気錠の扉が内観から開かれる状態を示す斜視図である。
図17は、本発明の実施の形態に係る電気錠の扉が開かれる状態を示す模式正面図である。
【0051】
外側操作部材の操作により、外側操作軸60を
図16の時計回りに回転させた場合、ハンドルカムユニット4と連動している外側ハンドルカム33が
図16の時計回りに回転する。それに伴い、ラッチボルト3をフロント板100の内側へと引き込むので、扉を開くことができる。
【0052】
ハンドルカムユニット4は、連結カムユニット5とも連結されている。ハンドルカムユニット4が
図17の時計回りに回転することにより、連結カムユニット5は
図17の反時計回りに、
図10の回転軸51を回転中心として搖動する。
【0053】
連結カムユニット5は、連結プレートユニット6と連結されているので、連結カムユニット5の搖動により、連結プレートユニット6は
図14の上方へと摺動する。連結プレートユニット6の上方への摺動により、移動軸63も上方へと摺動し、移動軸63と係合しているサムターンカムユニット7の突出部71を押し上げる。これにより、サムターンカムユニット7は、反時計回りに回転する。
【0054】
サムターンカムユニット7の回転により、カム穴21の左下方向へとカム軸72が移動する。これにより、デッドボルト2がフロント板100の内側へと引き込まれる。したがって、デッドボルト2で扉が施錠されている場合であっても解錠することができる。
【0055】
上述した実施の形態では、室外から見て右側に電気錠が配置される扉を前提に説明している。本実施の形態では、ハンドルカムユニット4は、一対の内側ハンドルカム32及び外側ハンドルカム33と第2の連結軸42を介して係合しているので、内側ハンドルカム32と外側ハンドルカム33とを入れ替えることにより、室外から見て左側に電気錠が配置される電気錠に変更することができる。
【0056】
図18は、本発明の実施の形態に係る電気錠の内側ハンドルカム32と外側ハンドルカム33の取付方向を説明するための簡易断面図である。
図18(a)は、室外から見て左側に電気錠が配置される扉の場合を、
図18(b)は、室外から見て右側に電気錠が配置される扉の場合を、それぞれ示している。
【0057】
図5乃至
図8からもわかるように、内側ハンドルカム32及び外側ハンドルカム33の左右方向における突出部の形状は、ほぼ左右対称となる形状をしている。また、
図5(a)乃至
図5(c)に示すように、外側ハンドルカム33は、ハンドルカムユニット4の穴部43に嵌合する突起部333が、内側ハンドルカム32と嵌合する凹部332の反対側、すなわち扉の外側方向に設けてある。
【0058】
一方、
図7(a)乃至
図7(c)に示すように、内側ハンドルカム32は、ハンドルカムユニット4の穴部43と嵌合する突起部323が、外側ハンドルカム33と嵌合する凸部322の反対側、すなわち扉の内側方向に設けてある。これが反転するので、外側ハンドルカム33の突起部333が開放され、内側ハンドルカム32の突起部323が、ハンドルカムユニット4の穴部43に嵌合する。したがって、内側ハンドルカム32及び外側ハンドルカム33を、奥側と手前側とで反対に取り付けた場合であっても、そのままカム機構として機能させることができる。
【0059】
そこで、
図18(a)の例では、筐体カバー151内において、ラッチボルト3の斜め傾斜側と反対側の面側に内側ハンドルカム32を配置している。それに対して、
図18(b)では、ラッチボルト3の取付方向を反対にするとともに、内側ハンドルカム32と外側ハンドルカム33とを入れ替えている。しかし、
図18(a)と同様に、ラッチボルト3の斜め傾斜側と反対側の面側に内側ハンドルカム32を配置している点で一致している。
【0060】
このように、扉をどちら側に開閉可能となるように取り付ける場合であっても、ラッチボルト3を取り付ける方向及び内側ハンドルカム32と外側ハンドルカム33とを取り付ける方向を変更し、それに合わせてシリンダ、サムターン等も向きを反対になるよう交換することにより、部品の構成を大きく変更することなく電気錠として使用することができる。したがって、扉の開閉方向ごとに別途異なる部品を製造する手間を最小限にとどめることができ、製造コストの低減を図ることができる。
【0061】
以上のように、本実施の形態に係る電気錠は、同一の回動軸上に内側ハンドルカム32と外側ハンドルカム33を設け、ロックプレート26により外側ハンドルカム33によるロック解除のみを制御することができるので、構造をコンパクトにすることができ、部品点数を減じることで電気錠全体を小型化することが可能となる。
【0062】
また、ラッチボルト3を取り付ける方向及び内側ハンドルカム32と外側ハンドルカム33とを取り付ける方向だけを変更することにより、どちらの方向に開閉する扉にでも対応可能な電気錠を提供することができ、別途専用の部品を製造する工程が必要なく、製造コストの低減に寄与する。
【符号の説明】
【0063】
1 筐体
2 デッドボルト
3 ラッチボルト
4 ハンドルカムユニット
5 連結カムユニット
6 連結プレートユニット
7 サムターンカムユニット
8 ロックユニット
22 デッドボルトユニット
26 ロックプレート
30 ラッチボルトユニット
32 内側ハンドルカム
33 外側ハンドルカム
60 外側操作軸
70 内側操作軸
100 フロント板