(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
H05B 33/02 20060101AFI20220610BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220610BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20220610BHJP
H05B 33/12 20060101ALI20220610BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
H05B33/02
H05B33/14 A
H01L27/32
H05B33/12 C
G09F9/30 349Z
G09F9/30 365
(21)【出願番号】P 2018092303
(22)【出願日】2018-05-11
【審査請求日】2021-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】軍司 雅和
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/186825(WO,A1)
【文献】特表2020-520040(JP,A)
【文献】特開2008-055760(JP,A)
【文献】特開2005-085710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/02
H01L 51/50
H01L 27/32
H05B 33/12
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された電流に応じて光を放射する発光層と、
前記光の経路上に配置され、第1屈折率を有する第1
無機絶縁層と、
前記第1
無機絶縁層に対して前記発光層とは反対側において当該第1
無機絶縁層と接して配置され、前記第1
無機絶縁層から離れるにつれて第2屈折率から第3屈折率まで増加する第1部分、および
前記第1部分よりもさらに前記第1
無機絶縁層から離れ
た位置で、前記第1無機絶縁層から離れるにつれて当該第3屈折率から第4屈折率に減少する第2部分を含み、前記第1部
分および前記第2部
分において連続的に屈折率が変化する第2
無機絶縁層と、
を備える、表示装置。
【請求項2】
前記第1屈折率と前記第2屈折率との差は、前記第1屈折率と前記第3屈折率との差より小さい、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記第1屈折率は前記第2屈折率よりも低い、請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記第1部分は、酸窒化シリコンを含み、
前記第1部分は、前記第1
無機絶縁層から離れるほど、酸素に対する窒素の割合が増加する、請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記第2部分は、酸窒化シリコンを含み、
前記第2部分は、前記第1
無機絶縁層から離れるほど、酸素に対する窒素の割合が減少する、請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
前記第2
無機絶縁層は、前記第1部分と前記第2部分との間において、窒化シリコンを含む第3部分を有する、請求項1に記載の表示装置。
【請求項7】
前記第3部分の厚さは、前記第1部分の厚さと前記第2部分の厚さとの合計よりも厚い、請求項6に記載の表示装置。
【請求項8】
前記第2屈折率は、前記第4屈折率よりも低い、請求項1に記載の表示装置。
【請求項9】
前記第2屈折率は、前記第4屈折率と同じ、請求項1に記載の表示装置。
【請求項10】
前記第1
無機絶縁層に対して前記第2
無機絶縁層とは反対側において当該第1
無機絶縁層と接して配置され、前記第3屈折率よりも高い屈折率を有する第3絶縁層を備える、請求項1に記載の表示装置。
【請求項11】
前記発光層は、供給された電流に応じて第1光を放射する第1発光層と、供給された電流に応じて前記第1光とは異なる色の第2光を放射する第2発光層と、を含み、
前記第1
無機絶縁層は、前記第1光および前記第2光の経路上に配置され、
前記第1光が通過する領域における前記第3絶縁層の厚さは、前記第2光が通過する領域における前記第3絶縁層の厚さとは異なる、請求項10に記載の表示装置。
【請求項12】
前記第2
無機絶縁層に対して前記
第1
無機絶縁層とは反対側において当該第2
無機絶縁層と接して配置され、第5屈折率を有する第4絶縁層を備え、
前記第5屈折率と前記第4屈折率との差は、前記第5屈折率と前記第3屈折率との差よりも小さい、請求項1に記載の表示装置。
【請求項13】
前記第5屈折率は、前記第4屈折率よりも高い、請求項12に記載の表示装置。
【請求項14】
前記第4絶縁層は、有機絶縁層である、請求項12に記載の表示装置。
【請求項15】
前記第4絶縁層に対して前記第2
無機絶縁層とは反対側に配置され、前記第2
無機絶縁層から離れるほど屈折率が増加する第4部分、およびさらに前記第2
無機絶縁層から離れるほど屈折率が減少する第5部分を含み、前記第4部
分および前記第5部
分において連続的に屈折率が変化する第5
無機絶縁層をさらに備える、請求項14に記載の表示装置。
【請求項16】
供給された電流に応じて光を放射する発光層と、
前記光の経路上に配置された第1
無機絶縁層と、
前記第1
無機絶縁層に対して前記発光層とは反対側において当該第1
無機絶縁層と接して配置され、前記第1
無機絶縁層から離れるにつれて酸素に対する窒素の割合が増加する第1部分、および
前記第1部分よりもさらに前記第1
無機絶縁層から離れ
た位置で、前記第1無機絶縁層から離れるにつれて酸素に対する窒素の割合が減少する第2部分を含み、前記第1部
分および前記第2部
分において連続的に前記割合が変化する第2
無機絶縁層と、
を備え
、
前記第1部分および前記第2部分は、酸窒化シリコンを含む、表示装置。
【請求項17】
前記第2
無機絶縁層は、前記第1部分と前記第2部分との間において、窒化シリコンを含む第3部分を有する、請求項
16に記載の表示装置。
【請求項18】
前記第3部分の厚さは、前記第1部分の厚さと前記第2部分の厚さとの合計よりも厚い、請求項
17に記載の表示装置。
【請求項19】
前記第1
無機絶縁層に対して前記第2
無機絶縁層とは反対側において当該第1
無機絶縁層と接して配置され、前記第1
無機絶縁層よりも高い屈折率を有する第3絶縁層を備え、
前記発光層は、供給された電流に応じて第1光を放射する第1発光層と、供給された電流に応じて前記第1光とは異なる色の第2光を放射する第2発光層と、を含み、
前記第1
無機絶縁層は、前記第1光および前記第2光の経路上に配置され、
前記第1光が通過する領域における前記第3絶縁層の厚さは、前記第2光が通過する領域における前記第3絶縁層の厚さとは異なる、請求項16に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置は、光透過性を有する複数の膜が積層された構造を含む。互いに異なる屈折率を有する膜が積層されると、その界面において光が反射する。この反射光を効率的に外部に取り出すためには、積層構造が適切に設計される必要がある。特に、積層される膜の特性(膜厚、屈折率等)は重要な要素である。特許文献1には、封止層と樹脂層との界面において光の反射を抑えるため、封止層の屈折率と樹脂層の屈折率との差が小さくなるように積層構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、OLED(Organic Light Emitting Diode)等の発光素子を備える表示装置の場合、光の干渉を利用するように積層構造が適切に設計されることによって、光取出効率をより高めることが試みられている。このような場合には複雑な積層構造が用いられるため、積層構造の設計が非常に難しくなる。また、発光素子を劣化させる要因の一つとなる水分の侵入を抑制するための層など、積層構造に含まれなくてはならない層もある。このような層の存在により、さらに、積層構造の設計が難しくなる。
【0005】
本発明の目的の一つは、隣接する膜の界面での反射を低減するための設計を容易にするための構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、供給された電流に応じて光を放射する発光層と、前記光の経路上に配置され、第1屈折率を有する第1絶縁層と、前記第1絶縁層に対して前記発光層とは反対側において当該第1絶縁層と接して配置され、前記第1絶縁層から離れるにつれて第2屈折率から第3屈折率まで増加する第1部分、およびさらに前記第1絶縁層から離れるにつれて当該第3屈折率から第4屈折率に減少する第2部分を含み、前記第1部分の少なくとも一部および前記第2部分の少なくとも一部において連続的に屈折率が変化する第2絶縁層と、を備える、表示装置が提供される。
【0007】
また、本発明の一態様によれば、供給された電流に応じて光を放射する発光層と、前記光の経路上に配置された第1絶縁層と、前記第1絶縁層に対して前記発光層とは反対側において当該第1絶縁層と接して配置され、前記第1絶縁層から離れるにつれて酸素に対する窒素の割合が増加する第1部分、およびさらに前記第1絶縁層から離れるにつれて酸素に対する窒素の割合が減少する第2部分を含み、前記第1部分の少なくとも一部および前記第2部分の少なくとも一部において連続的に前記割合が変化する第2絶縁層と、を備える、表示装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態における表示装置の構成を説明する図である。
【
図2】本発明の第1実施形態における表示装置の断面構成を示す模式図である。
【
図3】本発明の第1実施形態における光学調整層の構造を説明する図である。
【
図4】本発明の第1実施形態における第1無機封止層の特性を説明する図である。
【
図5】本発明の第2実施形態における第1無機封止層の特性を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0010】
さらに、本発明の詳細な説明において、ある構成物と他の構成物の位置関係を規定する際、「上に」「下に」とは、ある構成物の直上あるいは直下に位置する場合のみでなく、特に断りの無い限りは、間にさらに他の構成物を介在する場合を含むものとする。
【0011】
<第1実施形態>
[概略構成]
本発明の一実施形態における表示装置は、OLEDを用いた表示装置である。この例での表示装置は、それぞれ異なる色を放出する複数のOLEDを用いて、カラー表示を実現する。この例では、赤色(R)の光を放出するOLED、緑色(G)の光を放出するOLED、および青色(B)の光を放出するOLEDが用いらる。なお、白色(W)の光を放出するOLEDなど、他の色の光を放出するOLEDが、さらに用いられてもよい。
【0012】
表示装置は第1基板と第2基板とが貼り合わせ材によって貼り合わされた構成である。第1基板には、OLEDの発光状態を制御するための薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)等の駆動素子が配置されている。第2基板は、第1基板上に形成された素子を保護するカバーとなる基板である。なお、第1基板上に形成された素子を覆うようにカバー層を直接形成すれば、カバーとしての第2基板は存在しなくてもよい。
【0013】
第1基板に配置されたOLEDからの光は、第1基板側とは反対側に放出され、第2基板を通してユーザに視認されるトップエミッション方式が用いられる。すなわち、第2基板側が表示面となる。表示装置は、表示面側における接触を検知するタッチセンサ機能を備えている。
【0014】
OLEDからの光は、表示装置内において、光透過性材料で形成された複数の層を通過する。各層の屈折率の違いから、各層の界面において、OLEDからの光が反射する。以下に詳述する表示装置には、この光をできるだけ多く表示装置の外部に取り出すための積層構造が配置されている。
【0015】
[表示装置の構成]
図1は、本発明の第1実施形態における表示装置の構成を説明する図である。表示装置1000は、第1基板1、第1基板1に貼り合わされた第2基板2、および第1基板1の端子領域199に接続されたFPC(Flexible printed circuits)950を備える。端子領域199は、複数の接続端子が並んで配置されている。FPC950には、ドライバIC901が実装されている。
【0016】
表示装置1000の第1基板1は、表示領域D1および駆動回路107が配置される領域を含む。表示領域D1には、x方向に延在する走査線101、およびx方向とは異なるy方向に延在するデータ信号線103が配置されている。走査線101は、y方向に並んで配置されている。データ信号線103は、x方向に並んで配置されている。
【0017】
この例では、x方向とy方向とは垂直に交差している。走査線101とデータ信号線103との交差部に対応する位置には、画素105が配置されている。画素105は、x方向とy方向とに沿って並んで配置されている。なお、
図1においては、1つの画素105に対して、x方向およびy方向に沿って延びる信号線は、それぞれ1本で示しているが、それぞれ2本以上であってもよい。また、表示領域D1には電源線等の所定の電圧を供給する配線が配置されてもよい。
【0018】
駆動回路107は、表示領域D1の周囲に配置され、走査線101に所定の信号を供給する。この例では、ドライバIC901は、外部のコントローラから入力される信号に基づいて駆動回路107を制御すると共に、データ信号線103に映像信号等を供給する。なお、表示領域D1の周囲に、その他の駆動回路がさらに設けられていてもよい。
【0019】
各画素105には、画素回路と、発光素子(OLED)を含む表示素子とが配置されている。画素回路は、例えば、薄膜トランジスタおよびキャパシタを含む。発光素子は、画素回路の制御によって発光する発光領域を含む。この例では各画素105の発光領域は、赤色、緑色または青色に発光する。
【0020】
画素回路は、走査線101に供給される制御信号、およびデータ信号線103に供給される映像信号等の各種信号によって、発光素子の発光を制御する。この発光の制御によって、表示領域D1に画像が表示される。発光素子からの光は第2基板2を通過することによって、表示面側において画像としてユーザに視認される。
【0021】
また、表示領域D1には、タッチセンサ800が配置されている。
図1においては、他の構成との関係の説明を容易にするために、タッチセンサ800の一部のみを示している。タッチセンサ800は、画素105の発光領域よりも第2基板2側に配置されている。そのため、発光素子からの光は、後述する第1無機封止層620、タッチセンサ800が設けられた層など複数の層を通過した後、上述のように第2基板2を通過することによって、表示面においてユーザに視認される。取出配線880は、第1センサ電極801および第2センサ電極803を端子領域199の接続端子に接続するために用いられる。
【0022】
第1センサ電極801および第2センサ電極803は、それぞれ、x方向およびy方向を対角線とした略正方形の外縁に沿った外形を有する電極であるが、発光領域に対応した位置に開口部を有する。そのため、第1センサ電極801および第2センサ電極803は、それぞれ、発光領域以外に対応した位置において配置されることによって、いわゆるメッシュ状の導電体を有している。そのため、遮光性を有する金属により第1センサ電極801が形成されていても、発光領域からの光は開口部を介して表示面に向けて通過することができる。なお、第2センサ電極803については、第1センサ電極801と同様の構成を有し、すなわち、メッシュ状の導電体を有している。
【0023】
[表示装置の断面構成]
続いて、
図1に示す表示領域D1から端子領域199までの領域を含む範囲における表示装置1000の断面構成について説明する。
【0024】
図2は、本発明の第1実施形態における表示装置の断面構成を示す模式図である。以下に説明する断面構成は、
図1に示すA-A’断面線における端面図として表している。第1基板1における第1支持基板10および第2基板2は、フレキシブル性を有する有機樹脂基板である。なお、第1支持基板10および第2基板2の一方または双方が、ガラス基板であってもよい。
【0025】
第1支持基板10上に、酸化シリコン、窒化シリコン等の絶縁層201を介して薄膜トランジスタ110が配置されている。薄膜トランジスタ110は、アモルファスシリコンまたは結晶性シリコンを半導体層として用いている。なお、半導体層は、InGaZnOなどの透明金属酸化物半導体であってもよい。
【0026】
薄膜トランジスタ110を覆うように、絶縁表面を有する層間絶縁層108、200が配置されている。層間絶縁層200上には画素電極300が配置されている。この例では、層間絶縁層200は、アクリル樹脂等の有機絶縁層210、および窒化シリコン(SiN)等の無機絶縁層220を含む積層構造である。無機絶縁層220は、有機絶縁層210よりも画素電極300側に配置されている。
【0027】
画素電極300は、画素105のそれぞれに対応して配置され、層間絶縁層200に設けられたコンタクトホール250を介して導電層115に接続されている。導電層115は、層間絶縁層108を介して薄膜トランジスタ110に接続し、例えば、アルミニウム(Al)をチタン(Ti)で挟んだ積層構造で形成される。画素電極300は、OLEDのアノード電極として用いられる。表示装置1000はトップエミッション方式で画像を表示するため、画素電極300は光透過性を有しなくてもよい。この例では、画素電極300は、OLEDが放出した光を反射する層(例えば、銀を含む金属)およびOLEDと接触する面に光透過性を有する導電性金属酸化物(例えば、ITO:Indium Tin Oxide)の層を含んでいる。
【0028】
バンク層400は、画素電極300の端部および隣接する画素間を覆い、画素電極300の一部を露出する開口部を備えている。この例では、バンク層400は、アクリル樹脂等の有機絶縁材料で形成されている。
【0029】
発光部510は、OLEDであり、画素電極300および一部のバンク層400を覆って、これらの構成と接触する。発光部510は、複数種類の有機材料を積層した積層構造を有している。この例では、発光部510は、ホール注入層/輸送層511、発光層513および電子注入層/輸送層515を含む積層構造を有している。発光層153は、供給された電流に応じて光を放射する。発光層513は、発光色のそれぞれ(赤色、緑色および青色)に対応して、異なる組成を有している。異なる色に対応した隣接する画素においては、発光層513がバンク層400上において分離されている。
【0030】
光透過性電極503は、発光部510を覆い、OLEDのカソード電極(画素電極300に対する対向電極)を形成する。光透過性電極503は、OLEDからの光を透過する電極であり、例えば、光が透過する程度に薄い金属層等または透明導電性金属酸化物が適用される。画素電極300、発光部510および光透過性電極503によって、発光領域LAを有する発光素子500が形成される。この発光領域LAは、バンク層400によって露出された画素電極300の領域に対応する。
【0031】
光学調整層601は、発光層513からの光の取出効率を向上させつつ、水分、ガス等の発光部510を劣化させる成分が発光部510へ到達するのを抑制するための層である。この例では、光学調整層601は、発光素子500を覆いつつ、表示領域の全体を覆って配置される。光学調整層601は、高屈折率層611、低屈折率層613、第1無機封止層620を含む(
図3参照)。主として、第1無機封止層620が、発光部510を劣化させる成分が発光部510へ到達することを抑制する機能を有する。一方、高屈折率層611および低屈折率層613が光の取出効率を向上させる機能を有する。光学調整層601の詳細の構成については、後述する。
【0032】
有機封止層603は、光学調整層601上に配置されたアクリル樹脂等の有機絶縁層である。第2無機封止層605は、有機封止層603上に配置された窒化シリコン等の無機絶縁層である。有機封止層603および第2無機封止層605は、第1無機封止層620とともに、発光部510を劣化させる成分の到達を抑制するための層として機能する。有機絶縁層650は、第2無機封止層605を覆う。
【0033】
導電部811は、有機絶縁層650上に配置される。導電部811は、例えば、アルミニウム(Al)をチタン(Ti)で挟んだ積層構造で形成される。なお、導電部811は、遮光性を有する金属で形成されているが、金属よりも遮光性が低い材料(光透過性が高い材料)、例えば、導電性金属酸化物で形成されていてもよい。
【0034】
上述したように、導電部811は、第1センサ電極801および第2センサ電極803を構成するメッシュ状に配置された導電体部分である。絶縁層850は、導電部811を覆う。絶縁層850は、酸化シリコンまたは窒化シリコン等の無機絶縁層を含む。
【0035】
接続電極805は、絶縁層850上に配置され、絶縁層850に形成されたコンタクトホール858を介して、導電部811と接続している。接続電極805は、隣接する第1センサ電極801をつなぐように、導電部811の一部と接続している。取出配線880は、絶縁層850上に配置され、絶縁層850に形成されたコンタクトホール859を介して、導電部811と接続している。なお、導電部811と接続電極805については、その上下関係は逆であってもよい。
【0036】
取出配線880は、層間絶縁層200に形成されたコンタクトホール258を介して、保護電極308に覆われた端子配線119と電気的に接続する。保護電極308は、画素電極300と同一の材料で形成されていてもよい。端子配線119は、端子領域199においてコンタクトホール259によって露出された部分が、保護電極309で覆われている。この部分が端子領域199における接続端子の一部となる。FPC950は、異方性導電層909を介して、接続端子に電気的に接続される。
【0037】
有機保護膜700は、第1基板1と第2基板2との間に充填されて、これらを貼り合わせる材料であり、例えば、光透過性を有するアクリル樹脂である。この例では、第2基板2と有機保護膜700との間には、円偏光板900が配置されている。円偏光板900は、1/4波長板910と直線偏光板920とを含む積層構造を有している。この構成により、発光領域LAからの光が第2基板2の表示面DSから外部に放出される。以上が、表示装置1000の断面構成についての説明である。
【0038】
[光学調整層の構成]
続いて、光学調整層601の詳細の構成について説明する。
【0039】
図3は、本発明の第1実施形態における光学調整層の構造を説明する図である。
図3は、発光領域LAにおける光学調整層601だけではなく、光学調整層601の下層に配置された構成(画素電極300、発光部510および光透過性電極503)および上層に配置された構成(有機封止層603)についても示している。発光部510(発光層513)からの光は、光透過性電極503、光学調整層601、有機封止層603の順に通過していく。すなわち、光学調整層601は、この光の経路上に配置されている。
【0040】
光学調整層601は、高屈折率層611、低屈折率層613、第1無機封止層620を含む。高屈折率層611は、光透過性電極503上に配置された有機材料である。高屈折率層611の屈折率は、1.8~2.1となる材料を用いることが望ましい。高屈折率層611の膜厚は、50nm~200nm程度であり、発光層513からの光が呈する色に応じて異なっている。例えば、発光層513から放射される光の波長が短いほど、その光の経路上の高屈折率層611の膜厚は小さくなるように設定される。
図3に示すように、青色(B)に対応する高屈折率層611の厚さをt1bとし、緑色(B)に対応する高屈折率層611の厚さをt1gとし、赤色(R)に対応する高屈折率層611の厚さをt1rとした場合に、t1b<t1g<t1rの関係を満たす。なお、この例では、
図3に示すように、ホール注入層/輸送層511についても、高屈折率層611と同じ関係を有している。すなわち、青色(B)に対応するホール注入層/輸送層511の厚さをt2bとし、緑色(B)に対応するホール注入層/輸送層511の厚さをt2gとし、赤色(R)に対応するホール注入層/輸送層511の厚さをt2rとした場合に、t2b<t2g<t2rの関係を満たす。
【0041】
低屈折率層613は、高屈折率層611上に接して配置された無機絶縁層である。この例では、低屈折率層613は、フッ化リチウム(LiF)である。低屈折率層613の屈折率は、1.3~1.4であり、高屈折率層611の屈折率より低い。低屈折率層613の膜厚は80~100nmである。高屈折率層611と低屈折率層613との屈折率の差を大きくすることで、この界面での光の反射を大きくする。反射光の光路に応じて、高屈折率層611から低屈折率層613へ入射する光の特定の波長が干渉により強調される。この強調効果を得るため、上述したように、発光層513から放射される光の波長が短いほど、その光の経路上の高屈折率層611およびホール注入層/輸送層511の厚さが薄くなるように設定される。
【0042】
第1無機封止層620は、低屈折率層613上に配置された無機絶縁層である。言い換えると、第1無機封止層620は、低屈折率層613に対して発光層513とは反対側において、低屈折率層613に接して配置されている。第1無機封止層620の構成の詳細は後述する。有機封止層603は、第1無機封止層620上に配置されている。有機封止層603の屈折率は1.4~1.6である。
【0043】
[第1無機封止層の構成]
第1無機封止層620は、第1低屈折率部分621、第1傾斜部分623、高屈折率部分625、第2傾斜部分627および第2低屈折率部分629を含む。この例では、第1低屈折率部分621および第2低屈折率部分629は、酸化シリコン(SiO)である。高屈折率部分625は、窒化シリコン(SiN)である。第1傾斜部分623は、酸窒化シリコン(SiON)である。第1傾斜部分623では、第1低屈折率部分621から高屈折率部分625に向けて酸素(O)に対する窒素(N)の割合が連続的に増加している。一方、第2傾斜部分627は、酸窒化シリコン(SiON)である。第2傾斜部分627では、高屈折率部分625から第2低屈折率部分629に向けて酸素(O)に対する窒素(N)の割合が連続的に減少している。
【0044】
この例では、第1低屈折率部分621、第1傾斜部分623、第2傾斜部分627および第2低屈折率部分629のそれぞれの膜厚は50nmである。また、高屈折率部分625の膜厚は800nmである。このように、第1無機封止層620では、高屈折率部分625の膜厚が、他の部分(第1低屈折率部分621、第1傾斜部分623、第2傾斜部分627および第2低屈折率部分629)の膜厚の合計よりも厚い。このように高屈折率部分625の割合を大きくすることで、窒化シリコンとしての封止効果を高めることが望ましい。また、窒化シリコンは酸化シリコンよりもドライエッチングの加工性がよい。そのため、他の部分に対する窒化シリコンの割合を大きくすることで、第1無機封止層620の全体としての加工性もよい。
【0045】
図4は、本発明の第1実施形態における第1無機封止層の特性を説明する図である。
図4においては、第1無機封止層620(第1低屈折率部分621、第1傾斜部分623、高屈折率部分625、第2傾斜部分627、第2低屈折率部分629)の厚さt方向に対して、屈折率n、窒素濃度Dn、酸素濃度Doの変化を表している。
【0046】
屈折率nは、以下の傾向を示す。屈折率nは、第1無機封止層620のなかで、第1低屈折率部分621および第2低屈折率部分629において最も低い屈折率nL(1.4~1.5)を示し、高屈折率部分625において最も高い屈折率nH(1.7~1.9)を示す。第1傾斜部分623では、第1低屈折率部分621から高屈折率部分625に向けて(低屈折率層613から離れるにつれて)、屈折率がnLからnHまで連続的に増加する。一方、第2傾斜部分627では、高屈折率部分625から第2低屈折率部分629に向けて(低屈折率層613から離れるにつれて)、屈折率がnHからnLまで連続的に減少する。
【0047】
窒素濃度Dnおよび酸素濃度Doの変化は上述した通りである。すなわち、窒素濃度Dnは、第1無機封止層620のなかで、第1低屈折率部分621および第2低屈折率部分629において最も低い濃度a1を示し、高屈折率部分625において最も高い濃度a2を示す。第1傾斜部分623では、第1低屈折率部分621から高屈折率部分625に向けて、窒素濃度Dnがa1からa2まで連続的に増加する。一方、第2傾斜部分627では、高屈折率部分625から第2低屈折率部分629に向けて、窒素濃度Dnがa2からa1まで連続的に減少する。なお、この例では、第1低屈折率部分621および第2低屈折率部分629は、後述する製造方法に起因して少量の窒素が含まれているが、酸化シリコンとして称している。この少量の窒素を含む部分は、
図4からも示されるように、少なくとも他の部分の窒素濃度Dnに比べて最も低くなっている。
【0048】
酸素濃度Doは、第1無機封止層620のなかで、第1低屈折率部分621および第2低屈折率部分629において最も高い濃度b2を示し、高屈折率部分625において最も低いb1を示す。高屈折率部分625が窒化シリコンであり、b1は、原理的には「0」となるが、微量の酸素が含まれていてもよい。第1傾斜部分623では、第1低屈折率部分621から高屈折率部分625に向けて、酸素濃度Doがb2からb1まで連続的に減少する。一方、第2傾斜部分627では、高屈折率部分625から第2低屈折率部分629に向けて、酸素濃度Doがb1からb2まで連続的に増加する。なお、高屈折率部分625が酸窒化シリコンであってもよいが、第1無機封止層620において、最も酸素濃度Doが低く、窒素濃度Dnが高いことが望ましい。
【0049】
低屈折率層613の屈折率をn1、有機封止層603の屈折率をn2とした場合、光学調整層601における各層の屈折率の関係は、以下の条件を満たすことが望ましい。
(1)nH > nL
(2)nH-n1 > |nL-n1|
(3)nH-n2 > |nL-n2|
さらに、以下の条件を満たしてもよい。
(4)nH-nL > |nL-n1|
(5)nH-nL > |nL-n2|
この例では、n1はnLより小さく、n2はnLより大きいが、n1およびn2は、nL以上であってもnL以下であってもよい。また、n2がn1より大きくてもよいし、n1とn2とが同じであってもよい。なお、高屈折率層611の屈折率をn3とした場合、n3は、nHより大きいが、nH以下であってもよい。この場合には、n3は、nL以上であってもよいし、n2以上であってもよい。
【0050】
低屈折率層613と第1無機封止層620における高屈折率部分625とが接した構成よりも、低屈折率層613と第1無機封止層620における第1低屈折率部分621とが接する構成において、界面を形成する2つの層の屈折率の差が低減される(条件(2))。したがって、低屈折率層613から第1無機封止層620に入射する際の界面における反射を抑えることができる。上述した高屈折率層611と低屈折率層613との関係のように、積極的に反射を起こさせる必要のある界面以外においては、できるだけ光の反射を抑えることで、光学的な設計が容易になる。
【0051】
また、第1無機封止層620は、高屈折率部分625において、大きな封止効果を得ることができる。一方、低屈折率層613に対して大きく屈折率が異なる高屈折率部分625があっても、第1無機封止層620においては第1低屈折率部分621から高屈折率部分625に向けて屈折率が連続的に変化する。したがって、第1無機封止層620に入射した光は、内部においてほとんど反射が生じずに第1無機封止層620と有機封止層603との界面に到達する。
【0052】
また、有機封止層603と第1無機封止層620における高屈折率部分625とが接した構成よりも、有機封止層603と第1無機封止層620における第1低屈折率部分621とが接する構成において、界面を形成する2つの層の屈折率の差が低減される(条件(3))。したがって、第1無機封止層620から有機封止層603に入射する際の界面における反射を抑えることができる。
【0053】
[第1無機封止層の製造方法]
第1無機封止層620は、この例では、CVDによって成膜される。このとき、第1傾斜部分623および第2傾斜部分624については、成膜に用いるガスの流量を変化させていくことにより、窒素と酸素の割合を変化させる。以下、第1無機封止層620の製造方法の一例について説明する。
【0054】
この例では、窒素(N2)ガス、モノシラン(SiH4)ガス、亜酸化窒素(N2O)ガスおよびアンモニア(NH3)ガスを用いる。以下の表1に示すとおり、これらのガス流量を制御することによって、第1無機封止層620を成膜する。以下に説明する流量は、相対的な値であるため、単位は示していないが、当業者によれば、他の様々な製造パラメータとの関係において、適切にガス流量を設定することにより、第1無機封止層620を製造することは可能である。
【0055】
【0056】
ステップ1~5は、それぞれ、第1低屈折率部分621(酸化シリコン)、第1傾斜部分623(酸窒化シリコン)、高屈折率部分625(窒化シリコン)、第2傾斜部分624(酸窒化シリコン)、第2低屈折率部分629(酸化シリコン)の成膜に対応する。
【0057】
ステップ1では、窒素ガスを0、モノシランガスを0.09、亜酸化窒素ガスを1.3、アンモニアガスを0にするように、各ガスの流量が制御される。これによって、第1低屈折率部分621となる酸化シリコンが形成される。
【0058】
ステップ2では、ステップ1の状態からガス流量を変化させていく。具体的には、窒素ガスを0から20に増加させ、モノシランガスを0.09から1.3に増加させ、亜酸化窒素ガスを1.3から0に減少させ、アンモニアガスを0から2に増加させるように、各ガスの流量が制御される。これによって、第1傾斜部分623は、酸化シリコン(第1低屈折率部分621)から、酸窒化シリコンを経て、窒化シリコン(高屈折率部分625)になるまで、連続的に組成が変化する。
【0059】
ステップ3では、ステップ2での制御後の状態を維持し、窒素ガスを20、モノシランガスを1.3、亜酸化窒素ガスを0、アンモニアガスを2にするように、各ガスの流量が制御される。このステップの期間において、水素(H2)ガスを導入してもよい。この場合には流量を4とすればよい。これによって、高屈折率部分625となる窒化シリコンが形成される。
【0060】
ステップ4では、ステップ3の状態からガス流量を変化させていく。具体的には、窒素ガスを20から0に減少させ、モノシランガスを1.3から0.09に減少させ、亜酸化窒素ガスを0から1.3に増加させ、アンモニアガスを2から0に減少させるように、各ガスの流量が制御される。これによって、第2傾斜部分627は、窒化シリコン(高屈折率部分625)から、酸窒化シリコンを経て、酸化シリコン(第2低屈折率部分629)になるまで、連続的に組成が変化する。
【0061】
ステップ5では、ステップ2での制御後の状態を維持し、窒素ガスを0、モノシランガスを0.09、亜酸化窒素ガスを1.3、アンモニアガスを0にするように、各ガスの流量が制御される。このようにして、第2低屈折率部分629となる酸化シリコンが形成される。これによって、低屈折率層613上に第1無機封止層620が形成される。
【0062】
<第2実施形態>
第1実施形態では、第1無機封止層620の第1低屈折率部分621と第2低屈折率部分629とは同じ屈折率nLを有していたが、互いに異なる屈折率を有していてもよい。
【0063】
図5は、本発明の第2実施形態における第1無機封止層の特性を説明する図である。
図5は、第1実施形態において説明した
図4に対応している。第2実施形態における第2低屈折率部分629の屈折率nL2は、第1低屈折率部分621の屈折率nL1よりも高い。nL2がnHよりも低いことは、第1実施形態の場合と同じである。
【0064】
そのため、第2低屈折率部分629を構成する酸窒化シリコンは、第1低屈折率部分621を構成する酸窒化シリコンよりも窒素が多く、酸素が少ない膜である。
図5の記載でいえば、第2低屈折率部分629における窒素濃度Dnがa3であり、酸素濃度Doがb3である。a3は、a1より大きく、a2より小さい。b3は、b2より小さくb1より大きい。第1実施形態における第2傾斜部分627を形成する過程の途中段階(ステップ4からステップ5に移行する前の状態)でガス流量を固定することによって、このような膜を形成することができる。
【0065】
上述したように、この例では、第1無機封止層620の第2低屈折率部分629側には、有機封止層603が配置されている。有機封止層603の屈折率は、低屈折率層613および第1低屈折率部分621のそれぞれの屈折率よりも大きい。したがって、第2低屈折率部分629の屈折率nL2を、第1実施形態の場合における第2低屈折率部分629の屈折率nLよりも大きくすることで、有機封止層603の屈折率n2に近づけることもできる。なお、第1無機封止層620の上層および下層の組み合わせによっては、nL1がnL2よりも大きくなるようにしてもよい。
【0066】
このように、第1低屈折率部分621の屈折率nL1と第2低屈折率部分629の屈折率nL2とを異ならせることで、第1無機封止層620の上層の屈折率と下層の屈折率とが異なっていても、第1無機封止層620の上下の界面での光の反射を抑制することができる。
【0067】
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、上述した各実施形態は、互いに組み合わせたり、置換したりして適用することが可能である。また、上述した各実施形態では、以下の通り変形して実施することも可能である。
【0068】
(1)上述した実施形態においては、第1無機封止層620は、酸化シリコン、酸窒化シリコン、窒化シリコンによって形成されていたが、別の材料で形成されていてもよい。第1無機封止層620は、発光層513からの光に対して透過性を有し、絶縁性を有していればよい。第1傾斜部分623および第2傾斜部分627を容易に形成するため、酸素と窒素との組み合わせのように、2つの成分比を調整することによって屈折率が変化する材料を、第1無機封止層620に用いられればよい。なお、他の成分に対して少なくとも1つの成分の割合を調整することによって屈折率が変化する材料が、第1無機封止層620に用いられてもよい。
【0069】
(2)第1無機封止層620は、第1低屈折率部分621から第2低屈折率部分629までを連続して成膜することによって形成されていたが、連続で成膜されていなくてもよい。例えば、高屈折率部分625の途中まで成膜し、別の処理を行った後、再び高屈折率部分625の途中から成膜を開始してもよい。発光領域LAにおいて
図3に示す第1無機封止層620の構造が実現されれば、別の処理によって発光領域LA以外に配線等の構造体が第1無機封止層620の間の層として配置されてもよい。
【0070】
(3)第1無機封止層620のうち、第1傾斜部分623および第2傾斜部分627において、少なくとも一部において屈折率が連続的に変化していれば、非連続に変化する位置を含んでいてもよい。この場合には、第1傾斜部分623および第2傾斜部分627において、窒素濃度Dnおよび酸素濃度Doが非連続に変化する位置を含むことになる。このとき、非連続に変化する位置での屈折率の変化量が、上述したn1とnLとの差より小さいことが望ましい。
【0071】
(4)上述した実施形態では第2無機封止層605は、窒化シリコンで形成されていたが、第1無機封止層620と同様の構成で形成されていてもよい。すなわち、第2無機封止層605は、有機封止層603側から順に、第1低屈折率部分621、第1傾斜部分623、高屈折率部分625、第2傾斜部分627および第2低屈折率部分629に相当する積層構造(以下、それぞれ第1低屈折率部分621A、第1傾斜部分623A、高屈折率部分625A、第2傾斜部分627Aおよび第2低屈折率部分629Aという)を有していればよい。
【0072】
この例では、第2無機封止層605の下層は有機封止層603であり、第2無機封止層605の上層は有機絶縁層650である。したがって、第1低屈折率部分621Aを有機封止層603に近い屈折率を有する材料で形成し、第2低屈折率部分629Aを有機絶縁層650に近い屈折率を有する材料で形成すればよい。例えば、第1低屈折率部分621Aおよび第2低屈折率部分629Aが、酸化シリコンであってもよいが、所望の屈折率を有するように窒素と酸素との割合が設定された酸窒化シリコンであってもよい。
【0073】
なお、絶縁層850において、第1無機封止層620と同様の構成で形成されていてもよい。このように、第1無機封止層620の構成は、発光層513からの光が通過する領域に存在する他の層に対して適用することもできる。
【0074】
(5)上述した実施形態において、第2基板2が用いられなくてもよい。この場合には、第1無機封止層620における第2低屈折率部分629が最表面となってもよい。空気の屈折率は低いため、高屈折率部分625が最表面になるよりは、界面の反射を抑えることができる。
【0075】
(6)上述した実施形態において、タッチセンサ800が用いられなくてもよい。
【0076】
(7)第1無機封止層620、有機封止層603および第2無機封止層605は、発光部510を劣化させる成分の到達を抑制するための層として機能していたが、第2無機封止層605が無くてもよいし、さらに有機封止層603が無くてもよい。
【0077】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。例えば、前述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0078】
1…第1基板、2…第2基板、10…第1支持基板、101…走査線、103…データ信号線、105…画素、107…駆動回路、110…薄膜トランジスタ、115…導電層、119…端子配線、199…端子領域、200…層間絶縁層、210…有機絶縁層、220…無機絶縁層、250…コンタクトホール、258…コンタクトホール、259…コンタクトホール、300…画素電極、308…保護電極、309…保護電極、400…バンク層、500…発光素子、503…光透過性電極、510…発光部、511…ホール注入層/輸送層、513…発光層、515…電子注入層/輸送層、601…光学調整層、603…有機封止層、605…第2無機封止層、611…高屈折率層、613…低屈折率層、620…第1無機封止層、621…第1低屈折率部分、623…第1傾斜部分、625…高屈折率部分、627…第2傾斜部分、629…第2低屈折率部分、650…有機絶縁層、700…有機保護膜、800…タッチセンサ、801…第1センサ電極、803…第2センサ電極、805…接続電極、811…導電部、850…絶縁層、858…コンタクトホール、859…コンタクトホール、880…取出配線、900…円偏光板、909…異方性導電層、910…波長板、920…直線偏光板、950…FPC、1000…表示装置