(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】分電盤ハウジング
(51)【国際特許分類】
H02B 1/40 20060101AFI20220610BHJP
E05D 5/12 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
H02B1/40 B
E05D5/12 G
(21)【出願番号】P 2018130154
(22)【出願日】2018-07-09
【審査請求日】2021-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】服部 太輔
(72)【発明者】
【氏名】大庭 進一
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3009356(JP,U)
【文献】実開昭57-095003(JP,U)
【文献】実開昭61-070984(JP,U)
【文献】特開2016-073123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 1/00 - 7/08
E05D 1/00 - 13/00
H05K 5/00 - 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングの前面に設けられた開口部を閉塞する扉板を有し、前記扉板は開閉可能に前記ハウジングに上部が蝶着されて成る分電盤ハウジングであって、
前記扉板の上端には、前記ハウジングに蝶着するための回転軸が一体に形成される一方、前記ハウジングには、前記回転軸を軸止する軸穴を備えた軸止部が一体に設けられ、
更に前記扉板には、前記扉板が特定の角度まで開操作されたら、前記ハウジングに係止して開状態を保持する係止手段が設けられ
、
前記ハウジングは、前面が開放された箱状のハウジング本体と、前記開口部を有して前記開放された前面を閉塞する前面板とを有し、
前記軸止部は、前記前面板の背面に形成されて成ることを特徴とする分電盤ハウジング。
【請求項2】
前記係止手段が前記扉板の上辺に突設された係止舌片であると共に、係止対象の前記ハウジングに形成された係止部が係止溝であり、
前記係止溝は、前記係止舌片を係止する部位から前記ハウジングの内部に向けて前記係止舌片のスライドを可能とする傾斜面を有し、
前記係止溝に係止している前記扉板が閉操作を受けたら、係止が解除されて前記係止舌片が前記傾斜面上をスライドし、閉動作することを特徴とする請求項1記載の分電盤ハウジング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーカ等を収納する分電盤のハウジングに関し、特に前面に扉板を備えた分電盤ハウジングに関する。
【背景技術】
【0002】
主幹ブレーカや分岐ブレーカ等の多数のブレーカを収容する分電盤ハウジングは、ブレーカの操作がし易いようにハウジングから操作ハンドルを露出させているものが多い。このような分電盤ハウジングは、ブレーカの周囲に配設されている充電部や電線に塵等が付着して漏電等発生しないように閉塞する必要があるため、操作ハンドルのみ露出させるための開口部をハウジング前面に設けている。
【0003】
そのため、このような前面に操作ハンドルを露出させた分電盤は、外観上を考慮して操作ハンドルを含む開口部全体を閉塞するために、分電盤の前面に更に扉板を設けたものが普及している。その際、壁面の上方に設置された分電盤を操作する際に扉板が邪魔にならないように、扉板は上方に開くよう構成され(例えば、特許文献1参照)、更に上方に開操作した際に、開放された状態が維持されるようにロック機構が設けられ、分電盤の操作をし易いよう構成されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-11559号公報
【文献】特開平9-271112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記蝶番部にロック機構が設けられている構造は、扉を開けた状態で手を離しても扉が下がることが無いため、点検作業等がし易い。しかしながら、このような蝶番は軸やカム部材等の金属から成る部材が扉及びハウジングに組み付けられて形成されるため、コスト高な構造となっていた。
【0006】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、上方に開操作でき、且つ開状態で保持できる扉板を備えても、蝶番部に別途部材の組み付け等を必要としない分電盤ハウジングを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、ハウジングの前面に設けられた開口部を閉塞する扉板を有し、扉板は開閉可能にハウジングに上部が蝶着されて成る分電盤ハウジングであって、扉板の上端には、ハウジングに蝶着するための回転軸が一体に形成される一方、ハウジングには、回転軸を軸止する軸穴を備えた軸止部が一体に設けられ、更に扉板には、扉板が特定の角度まで開操作されたら、ハウジングに係止して開状態を保持する係止手段が設けられ、
ハウジングは、前面が開放された箱状のハウジング本体と、開口部を有して開放された前面を閉塞する前面板とを有し、軸止部は、前面板の背面に形成されて成ることを特徴とする。
この構成によれば、扉板をハウジングに蝶着するための部材は、扉板及びハウジングにそれぞれ一体に形成されているため、別途蝶番を形成する部材が必要なく、安価に構成できる。そして、開状態にある扉板は、その状態が保持されるので別途保持手段を組み付ける必要もない。
また、軸止部は、前面板に一体形成されても前面板の背部に形成されているため、前方からは隠れることで外観上好ましい。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、係止手段が扉板の上辺に突設された係止舌片であると共に、係止対象のハウジングに形成された係止部が係止溝であり、係止溝は、係止舌片を係止する部位からハウジングの内部に向けて係止舌片のスライドを可能とする傾斜面を有し、係止溝に係止している扉板が閉操作を受けたら、係止が解除されて係止舌片が傾斜面上をスライドし、閉動作することを特徴とする。
この構成によれば、開状態が保持されている扉板を閉操作すれば、係止舌片の係止が解除されて閉動作するため、別途係止解除操作する必要がないし、スライドして係止が解除されるため係止舌片が破損するようなことがない。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、扉板をハウジングに蝶着するための部材は、扉板及びハウジングそれぞれに一体形成されているため、別途蝶番を形成する部材が必要なく、安価に構成できる。そして、開状態にある扉板は、その状態が保持されるので別途保持手段を組み付ける必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る分電盤ハウジングの一例を示す斜視図であり、(a)は扉板を閉じた状態、(b)は扉板を開いた状態を示している。
【
図3】
図2のA-A線断面図であり、(a)は主要部、(b)はC部拡大図を示している。
【
図4】扉板を閉じた状態のA-A線断面図であり、(a)は主要部、(b)はD部拡大図を示している。
【
図5】扉板と前面板を分離した斜視説明図であり、(a)前面板、(b)は扉板である。
【
図7】
図5のF部の拡大図であり、背面から見た斜視図である。
【
図9】収容した回転軸を軸着したF部の背面図である。
【
図10】
図2のB-B線断面図であり、(a)は主要部、(b)はG部拡大図を示している。
【
図11】扉板を閉じた状態のB-B線断面図であり、(a)は主要部、(b)はH部断面図を示している。
【
図12】扉板を閉じる途中の状態を示すB-B線断面図であり、(a)は主要部、(b)はI部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る分電盤ハウジングの一例を示す斜視図であり、(a)は扉板を閉じた状態、(b)は扉板を開いた状態を示している。また、
図2は扉板を開いた状態の分電盤ハウジングの正面図を示している。
分電盤ハウジング(以下、単に「ハウジング」と称する。)1は、背面及び周囲側面を有して前面が開放された箱状のハウジング本体2と、ハウジング本体2の前面に配置されてハウジング本体2の開放された前面を閉塞する前面板3とを有し、前面板3には上端が蝶着されて開閉操作が可能な扉板4が設けられている。
【0013】
ブレーカ等の分電盤機器はハウジング本体2に組み付けられ、側面の一部を成す天面等にはノックアウト21が設けられ、内部に収容されたブレーカ等に接続する電線を入出する穴を形成可能としている。
前面板3の上下2カ所には、一段落とし込んだ凹状エリア32が形成され、その内部にハウジング本体2に収容されたブレーカの操作ハンドル(図示せず)を露出させるための開口部31が形成されている。この凹状エリア32は、開口部31から露出させた操作ハンドルの収容空間を形成し、扉板4は上下2段で形成された開口部31を含む凹状エリア32全体を閉塞するよう設けられている。
【0014】
図3,4は
図2のA-A線断面を示している。但し、
図3は扉板4を開いた
図2の状態を示し、
図3(a)は主要部、
図3(b)はC部拡大図である。一方
図4は、扉板4を閉じた状態を示し、
図4(a)は主要部、
図4(b)はD部拡大図である。
また、
図5~9は前面板3と扉板4の連結構造、即ち蝶番構造の説明図であり、
図5は前面板3と扉板4を分離した全体説明図、
図6は
図5のE部拡大図、
図7はF部を背部から見た斜視図、
図8は回転軸5を収容したF部の背面図、
図9は収容した回転軸5を軸着して扉板4をハウジング本体2に取り付けたF部の背面図をそれぞれ示している。
【0015】
図5に示すように、扉板4の上辺の左右2カ所には前面板3に蝶着部の一方を構成する回転軸5が設けられ、扉板4の上辺には、中央付近に係止舌片4aが帯状に設けられている。そして、前面板3には、回転軸5が挿入される一対の挿入口33が形成され、中央に係止舌片4aが挿入される係止孔34が形成されている。また、
図7に示すように前面板3の背部には、蝶番部の他方を構成する軸止部6が形成されている。
【0016】
以下、蝶番部を具体的に説明する。回転軸5は、
図6に示すように、前面板3の軸止部6に連結される連結軸5aを端部に有し、連結軸5aと同一軸上に連続して一体形成されて、連結軸5aを補強する延長軸5bを有している。
この回転軸5は、
図6に示すように連結部材7を介して扉板4に連結され、扉板4と一体に形成される。連結部材7は、
図3、4の断面図に示すように、扉板4の背面から上方に向けてU字状の外形を有して形成されており、回転軸5が前面板3の背部に入り込み易いよう形成されている。
【0017】
他方の軸止部6は、前面板3の背面に形成されており、
図8に示すように回転軸5を収容する箱状の収容部6aを有し、収容部6aの側面には連結軸5aを挿入して軸止する軸穴6bが設けられている。そして、回転軸5を挿入する挿入口33は、
図7に示すように軸止部6の直下に設けられており、この挿入口33の奥部から軸止部6に向けて、挿入された回転軸5を案内する案内路8が形成されている。
【0018】
案内路8は、
図7に示すように円弧状に形成され、挿入された回転軸5を上方の軸止部6に案内するよう形成されている。連結部材7がU字状に形成されていることで、挿入口33に挿入された回転軸5は、案内路8に案内されてスムーズに軸止部6まで移動できる。
こうして、収容部6aに配置された回転軸5は、連結軸5aが軸穴6bの近傍に配置され、
図8に示す状態となる。
【0019】
図10~12は開状態の扉板4の角度を保持する係止構造の説明図であり、この図を参照して係止構造を具体的に説明する。
図10は
図2のB-B線断面図であり、(a)は主要部、(b)はG部拡大図を示している。
図11は扉板4を閉じた状態のB-B線断面図であり、(a)は主要部、(b)はH部拡大図を示している。
図12は扉板4を閉じる途中の状態を示すB-B線断面図であり、(a)は主要部、(b)はI部拡大図である。
扉板4の上辺に形成されている係止舌片4aは、
図10~12の断面で示すように、基部は扉板4の後方に向けて形成され、途中から折り曲げられて先端が斜め上方を向くよう形成されている。尚、
図10~12に示すMは、扉板4の回転中心(回転軸5の位置)を示している。
【0020】
一方、前面板3に形成された係止孔34はスリット状に形成され、係止孔34の下辺には、係止舌片4aの先端が係止する係止溝9が形成されている。係止溝9は係止孔34の左右方向全体に形成され、この係止溝9の奥側は扉板4を閉操作、即ち下方へ回動操作した際に、ハウジングの内部方向へ係止舌片4aがスライドして移動するよう傾斜面9aを設けて形成されている。そして、係止孔34の内部には係止舌片4aを収容する収容空間が設けられている。
【0021】
上記の如く形成された扉板4の前面板3への取り付け、及び開閉操作は以下のように実施される。扉板4の取り付けは、まず扉板4を略水平にして回転軸5を挿入口33に合わせ、同時に係止舌片4aを係止孔34に合わせて、斜め上方に押し込むよう挿入操作することで、
図3に示すように回転軸5が軸止部6に配置され、同時に
図12に示すように係止舌片4aが係止孔34に挿入される。
【0022】
挿入後、扉板4を回動して下ろし、閉操作すると回転軸5は
図8に示すように軸止部6の軸穴6bの近傍に配置され、この状態で扉板4を右にスライドさせると
図9に示すように軸穴6bに連結軸5aが入り込み、軸着されて蝶着部が形成される。即ち、扉板4の取り付けが成される。尚、
図8,9は前面板3の背面図であるため、扉板4のスライドは左方向となる。
【0023】
連結された扉板4は、上方に回動して開放操作し、水平な状態から更に上方へ回動操作すると、係止舌片4aの先端が前方に移動し、やがて
図10に示すように係止舌片4aが係止溝9に係止する。この係止状態は扉板4の自重で解除されることが無く、この開放角度が保持される。そして、扉板4を下方に押下操作すれば、この係止状態が解除されて扉板4は回動して閉動作する。
【0024】
このように、扉板4をハウジング1に蝶着するための部材は、扉板4及びハウジング1それぞれに一体に形成されているため、別途蝶番を形成する部材が必要なく、安価に構成できる。そして、開状態にある扉板4は、その状態が保持されるので別途保持手段を組み付ける必要がない。
また、開状態が保持されている扉板4を閉操作すれば、係止舌片4aの係止溝9への係止が解除されて閉動作するため、別途係止解除操作する必要がないし、スライドして係止が解除されるため係止舌片4aが破損するようなこともない。
更に軸止部6は、前面板3に一体形成されても前面板3の背部に形成されているため、前方からは隠れることで外観上好ましい。
【0025】
尚、上記実施形態では、係止舌片4aを扉板4の上部中央に帯状に形成しているが、左右の回転軸5の近傍に分割して複数形成しても良い。
また、ハウジング1を前面が開放された箱状のハウジング本体2と、この開放された前面を閉塞する前面板3とで構成し、機器を組み付ける部位を箱状に形成しているが、機器を組み付ける部位を板状に形成して前側に配置されて扉板4が取り付けられる部材を箱状に形成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0026】
上記実施形態は、主に分岐回路を形成するためのブレーカを収納する分電盤について説明したが、情報機器を収納する情報分電盤にも適用できるものである。
【符号の説明】
【0027】
1・・ハウジング、2・・ハウジング本体、3・・前面板、4・・扉板、4a・・係止舌片(係止手段)、5・・回転軸、5a・・連結軸、5c・・突起、6・・軸止部、6a・・収容部、6b・・軸穴、7・・連結部材、9・・係止溝(係止部)、9a・・傾斜面、31・・開口部、33・・挿入口、34・・係止孔。