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特許7085945シース接続口成形用挿入具及びコンクリートセグメントの形成方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】シース接続口成形用挿入具及びコンクリートセグメントの形成方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 23/00 20060101AFI20220610BHJP
   B28B 7/10 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
B28B23/00
B28B7/10 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018157696
(22)【出願日】2018-08-24
(65)【公開番号】P2020029075
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-08-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山口 統央
(72)【発明者】
【氏名】山中 大明
(72)【発明者】
【氏名】阪井 光尚
(72)【発明者】
【氏名】久保 政照
(72)【発明者】
【氏名】和田 健
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-277237(JP,A)
【文献】特開平5-116126(JP,A)
【文献】特開平11-10629(JP,A)
【文献】実開平7-34117(JP,U)
【文献】特開平4-315661(JP,A)
【文献】特許第6751694(JP,B2)
【文献】特許第6871189(JP,B2)
【文献】特許第3784923(JP,B2)
【文献】登録実用新案第3192711(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 23/00 - 23/22
B28B 7/00 - 7/46
E04C 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
型枠を介して突き合わされた状態で成形される一対のコンクリートセグメントの端面において、対向する位置に埋め込まれる一対のシース接続管の開口端の内部に挿入されるシース接続口成形用挿入具であって、
上記一対のシース接続管の開口端の内径よりも小さな外径を有し、該一対のシース接続管の開口端に外周が弾性部材で覆われた状態で挿入される芯材と、
上記芯材に連結され、上記一対のシース接続管の開口端の外径よりも大きな外径を有し、上記型枠に当接する拡径フランジとを備えており、
上記弾性部材は、円筒部と該円筒部の外周から半径方向外側へ延びる少なくとも1つの鍔部とを有し、
上記鍔部の1つは、上記シース接続管の接続時に該開口端に当接するように構成されている
ことを特徴とするシース接続口成形用挿入具。
【請求項2】
型枠を介して突き合わされた状態で成形される一対のコンクリートセグメントの端面において、対向する位置に埋め込まれる一対のシース接続管の開口端の内部に挿入されるシース接続口成形用挿入具であって、
上記一対のシース接続管の開口端の内径よりも小さな外径を有し、該一対のシース接続管の開口端に外周が弾性部材で覆われた状態で挿入される芯材と、
上記芯材を上記型枠に固定する固定部材とを備えており、
上記弾性部材は、円筒部と該円筒部の外周から半径方向外側へ延びる少なくとも1つの鍔部とを有し、
上記鍔部の1つは、上記シース接続管の接続時に該開口端に当接するように構成されている
ことを特徴とするシース接続口成形用挿入具。
【請求項3】
一対のシース接続管の開口端の内径よりも小さな外径を有する芯材を備えたシース接続口成形用挿入具及び上記シース接続口成形用挿入具の上記芯材の外周を覆う円筒部と該円筒部の外周から半径方向外側へ延びる少なくとも1つの鍔部とを有する弾性部材を用意する工程と、
上記シース接続口成形用挿入具の上記芯材の外周を上記弾性部材で覆う工程と、
シース接続口に対応する位置にシースを配管する工程と、
上記シース接続口成形用挿入具を型枠の上記シース接続口に対応する位置に固定する工程と、
上記型枠の両側のシース接続管の開口端を上記鍔部の1つに当接させるように上記シース接続口成形用挿入具に対して接続する工程と、
上記型枠の両側にコンクリートを打設して一対のコンクリートセグメントを成形する工程とを含む
ことを特徴とするコンクリートセグメントの形成方法。
【請求項4】
請求項3のコンクリートセグメントの形成方法であって、
上記シース接続口成形用挿入具は、上記芯材に連結され、一対のシース接続管の開口端の外径よりも大きな外径を有し、型枠に当接する拡径フランジを備え、
上記弾性部材で上記芯材を覆う工程において、上記鍔部を上記拡径フランジに当接させる
ことを特徴とするコンクリートセグメントの形成方法。
【請求項5】
請求項3又は4のコンクリートセグメントの形成方法であって、
上記鍔部は複数設けられており、
上記シース接続管の開口端を上記シース接続口成形用挿入具に対して接続する工程において、
複数の上記鍔部のうちの1つの鍔部を上記シース接続管の開口端に当接させ、
他の鍔部を該開口端の内周に当接させる
ことを特徴とするコンクリートセグメントの形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シース接続口成形用挿入具及びコンクリートセグメントの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プレキャスト工法として、予め工場でコンクリートセグメントを製造し、これを現場で組み立て、接合するものが知られている。特に橋梁の場合、現場で組み立てた複数のコンクリートセグメントにPCケーブルを挿通し、引っ張ってストレスを与えた状態で接合される。
【0003】
このとき、各コンクリートセグメントには、PCケーブル挿通用のシースが埋設される。PCケーブルは、コンクリートセグメントを貫通するので、上記シースは開口端がコンクリートセグメントの端面に臨むように埋設される。そして、一対のコンクリートセグメントを、それぞれの端面のシース開口端が互いに連続するように配置し、連結されたシース内部にPCケーブルを挿通してグラウトを充填して一体化する。
【0004】
そして、仕切板等を仕切面として、この仕切面の両側の空間域にポストテンションブロック桁を成形する際における、ブロック桁接合面に設けられるシース接続口の成形方法が知られている。
【0005】
従来の方法では、仕切面に開口する導通孔のブロック桁成形空間域に配管されるシース接続管の開口端に、円柱状の中実ゴム部材を挿入し、この状態でコンクリートを打設するようにしている。ブロック桁成形の設計上、シースを斜めに設置する必要があり、コンクリート硬化後にブロック桁を仕切面から分離する際には、各コンクリートセグメントの重量が重く水平方向に分離することになる。すると、型枠に対して傾いて固定された中実ゴム部材と、水平に動くコンクリートの導通孔周縁とが干渉し、導通孔周縁に無理な力が加わって剥がれ損傷が発生し、補修の手間が生じるという問題がある。
【0006】
そこで、例えば、特許文献1のように、仕切面に開口する導通孔のブロック桁成形空間域に配管されるシース接続管の開口端に、接続シースを介して先端にシース外径よりも大きい広口部をもった接続管を接続し、この接続管の広口部内に内周面がリングにより補強された弾性体からなる環状圧着部材を挿着して、所定長さのガイドパイプを、一端が環状圧着部材の内側を通してシース内へ挿入されると共に、他端が仕切面における導通孔外側へ突出するように挿通配管し、接続管を仕切面方向へ移動して、環状圧着部材の開口端を仕切面に圧着保持させた状態で、仕切面の両側のブロック桁成形空間域にコンクリートを打設する方法が知られている。これにより、コンクリート硬化後にブロック桁を仕切面から分離する際に、仕切面と環状圧着部材開口端及びリングとの分離を円滑に行うことができ、ブロック桁の端面に、従来のこの種の方法によるようなコンクリートの剥がれ損傷のない美麗なシース接続導通口を形成することができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第3784923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1のものでは、管状圧着部材が仕切面に押し付けられているだけで十分に固定されておらず、コンクリート打設の際など、力がかかるとずれやすい。特にシースの内部にガイドパイプを通さない場合には、シースの経路が途切れ、コンクリート打設後に、一部がコンクリートで塞がり、そのままではPC鋼線を挿通できなくなるという問題がある。
【0009】
一方で、確実にコンクリートの流入を防ぐために、シース接続管の開口端と、環状圧着部材との間をテープ等で封止することがある。
【0010】
しかし、1つのセグメントにおいて環状圧着部材の使用箇所が数十箇所と非常に多い上、シース取付工程においては、鉄筋が先に組まれ、その鉄筋の隙間から人の手によってテープを貼り付ける必要があり、非常に手間がかかるという問題がある。さらに、セグメントを引き離した後に、テープがセグメント側に残ってしまうと、1つ1つ人の手で除去する必要があり、これも非常に手間がかかる。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、容易且つ確実にコンクリートの剥がれ損傷のないシース接続口を形成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、この発明では、シース接続管の接続時に該開口端に当接する鍔部を有する弾性部材で芯材の外周が覆われたシース接続口成形用挿入具に上記開口端を接続するようにした。
【0013】
具体的には、第1の発明では、型枠を介して突き合わされた状態で成形される一対のコンクリートセグメントの端面において、対向する位置に埋め込まれる一対のシース接続管の開口端の内部に挿入されるシース接続口成形用挿入具を対象とし、
上記シース接続口成形用挿入具は、
上記一対のシース接続管の開口端の内径よりも小さな外径を有し、該一対のシース接続管の開口端に外周が弾性部材で覆われた状態で挿入される芯材と、
上記芯材に連結され、上記一対のシース接続管の開口端の外径よりも大きな外径を有し、上記型枠に当接する拡径フランジとを備えており、
上記弾性部材は、円筒部と該円筒部の外周から半径方向外側へ延びる少なくとも1つの鍔部とを有し、
上記鍔部の1つは、上記シース接続管の接続時に該開口端に当接するように構成されている。
【0014】
上記の構成によると、芯材の外周を弾性部材の円筒部で覆い、その円筒部から延びる鍔部にシース接続管の開口端を当接させて封止することができるので、シース接続口成形用挿入具とシース接続管の開口端との間からコンクリートが流れ込みにくい。このため、シースと芯材との間の隙間を埋めるようにテープを巻いてコンクリートの流れ込みを規制する必要がなく、作業が極めて容易になる。また、コンクリートの打設後に型枠からコンクリートセグメントを外す際に弾性部材がコンクリートセグメント側に残ったとしても、弾性部材そのものには粘着力はなく、また、テープに比べるとコンクリートとの接触面積が狭くなりやすいので、テープに比べて取り外しが容易である。また、拡径フランジにより、シース接続口周縁の内径を拡げることができ、コンクリートの打設後にシース接続口成形用挿入具がシース接続口周縁に引っ掛からずに外れやすく、また、弾性部材のクッション作用、芯材から弾性部材が滑って外れる作用等により、シース接続口周縁のコンクリートが剥がれない。また、シース接続口周縁の内径を拡げることで、コンクリートセグメントの突き合わせ時に中子を取り付けてシース接続管を接続しやすくなる。さらに、拡径フランジを斜め加工すれば、シース接続管側は斜め加工しなくて済むように構成可能である。
【0015】
第2の発明では、型枠を介して突き合わされた状態で成形される一対のコンクリートセグメントの端面において、対向する位置に埋め込まれる一対のシース接続管の開口端の内部に挿入されるシース接続口成形用挿入具を対象とし、
上記シース接続口成形用挿入具は、
上記一対のシース接続管の開口端の内径よりも小さな外径を有し、該一対のシース接続管の開口端に外周が弾性部材で覆われた状態で挿入される芯材と、
上記芯材を上記型枠に固定する固定部材とを備えており、
上記弾性部材は、円筒部と該円筒部の外周から半径方向外側へ延びる少なくとも1つの鍔部とを有し、
上記鍔部の1つは、上記シース接続管の接続時に該開口端に当接するように構成されている。
【0016】
上記の構成によると、芯材の外周を弾性部材の円筒部で覆った状態で、その円筒部から延びる鍔部にシース接続管の開口端を当接させて封止することができるので、シース接続口成形用挿入具とシース接続管の開口端との間からコンクリートが流れ込みにくい。このため、シースと芯材との間の隙間を埋めるようにテープを巻いてコンクリートの流れ込みを規制する必要がなく、作業が極めて容易になる。また、コンクリートの打設後に型枠からコンクリートセグメントを外す際に弾性部材が、コンクリートセグメント側に残ったとしても、粘着力はないのでテープに比べて取り外しが容易である。さらに固定部材を用いることで、芯材をより堅固に型枠に固定できるので、コンクリート打設時にコンクリートが芯材と型枠との間からもシース接続管に流れ込みにくくなる。
【0017】
第3の発明では、一対のシース接続管の開口端の内径よりも小さな外径を有する芯材を備えたシース接続口成形用挿入具及び上記シース接続口成形用挿入具の上記芯材の外周を覆う円筒部と該円筒部の外周から半径方向外側へ延びる少なくとも1つの鍔部とを有する弾性部材を用意する工程と、
上記シース接続口成形用挿入具の上記芯材の外周を上記弾性部材で覆う工程と、
シース接続口に対応する位置にシースを配管する工程と、
上記シース接続口成形用挿入具を型枠の上記シース接続口に対応する位置に固定する工程と、
上記型枠の両側のシース接続管の開口端を上記鍔部の1つに当接させるように上記シース接続口成形用挿入具に対して接続する工程と、
上記型枠の両側にコンクリートを打設して一対のコンクリートセグメントを成形する工程とを含む構成とする。
【0018】
上記の構成によると、芯材の外周を弾性部材の円筒部で覆い、その円筒部から延びる鍔部にシース接続管の開口端を当接させて封止することができるので、シース接続口成形用挿入具とシース接続管の開口端との間からコンクリートが流れ込みにくくなる。このため、シースと芯材との間の隙間を埋めるようにテープを巻いてコンクリートの流れ込みを規制する必要がなく、作業が極めて容易になる。なお、型枠の両側から一対のコンクリートセグメントを取り外したときに、同時にシース接続口成形用挿入具がコンクリートセグメントから外れてもよい。一方、弾性部材がコンクリートセグメント側に残ったとしても、粘着力はないのでテープに比べて取り外しが容易である。
【0019】
第4の発明では、第3の発明において、
上記シース接続口成形用挿入具は、上記芯材に連結され、一対のシース接続管の開口端の外径よりも大きな外径を有し、型枠に当接する拡径フランジを備え、
上記弾性部材で上記芯材を覆う工程において、上記鍔部を上記拡径フランジに当接させる。
【0020】
上記の構成によると、鍔部を拡径フランジに当接させることにより、拡径フランジと鍔部との間からコンクリートが流れ込みにくくなる。拡径フランジにより、シース接続口周縁の内径を拡げることができ、コンクリートの打設後にシース接続口成形用挿入具がシース接続口周縁に引っ掛からずに外れやすく、また、弾性部材のクッション作用、滑って外れる作用等により、シース接続口周縁のコンクリートが剥がれない。また、シース接続口周縁の内径を拡げることで、コンクリートセグメントの突き合わせ時に中子を取り付けてシース接続管を接続しやすくなる。さらに、拡径フランジを斜め加工すれば、シース接続管側は斜め加工しなくて済むように構成可能である。
【0021】
第5の発明では、第3又は第4の発明において、
上記鍔部は複数設けられており、
複数の上記鍔部のうちの1つの鍔部を上記シース接続管の開口端に当接させ、
他の鍔部を該開口端の内周に当接させる構成とする。
【0022】
上記の構成によると、開口端に当接する鍔部と、開口端との間が封止されるので、コンクリートが開口端から入り込みにくくすることができる。また、開口端に当接する鍔部以外は開口端の内部に入り込ませて芯材外周と開口端内面との間の隙間を確実に塞いでコンクリートがさらに内部に流れ込みにくくすることができる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、芯材の外周を、円筒部と、この円筒部の外周から半径方向外側へ延びる少なくとも1つの鍔部とを有する弾性部材で覆い、鍔部の1つをシース接続管の開口端に当接させることで、容易且つ確実にコンクリートの剥がれ損傷のないシース接続口を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A】本発明の実施形態1に係るシース接続口成形用挿入具が挿入された状態でコンクリートを打設した状態を示す断面図である。
図1B】芯材及び弾性部材を拡大して示す正面図である。
図1C】一方のシース接続口に中子が挿入された状態で他方のコンクリートセグメントに引き寄せる状態を示す断面図である。
図1D】シース接続口に中子が挿入された状態で一対のコンクリートセグメントが突き合わせされた状態を示す断面図である。
図1E】本発明の実施形態1の変形例1に係るシース接続口成形用挿入具が挿入された状態でコンクリートを打設した状態を示す断面図である。
図2A】本発明の実施形態2に係るシース接続口成形用挿入具が挿入された状態でコンクリートを打設した状態を示す断面図である。
図2B】本発明の実施形態2に係るシース接続口成形用挿入具が型枠に固定された状態の概略を示す斜視図である。
図3A】本発明の実施形態3に係るシース接続口成形用挿入具が挿入された状態でコンクリートを打設した状態を示す断面図である。
図3B】本発明の実施形態3に係るシース接続口成形用挿入具が型枠に固定された状態の概略を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
(実施形態1)
-シース接続口成形用挿入具の構造-
図1Aは、本発明の実施形態1に係るシース接続口成形用挿入具10が挿入された状態でコンクリートを打設した状態を示す。シース接続管3は、コンクリートセグメント2の端面2aに例えば円形の第1ボルト挿通孔1a’が臨むように埋設される。すなわち、型枠1を介して突き合わされた状態で成形される一対のコンクリートセグメント2の端面2aにおいて、一対のシース接続管3が型枠1の第1ボルト挿通孔1a’を挟んで対向する位置に埋め込まれる。このシース接続管3の上記端面2aと反対側には、同様にコンクリートセグメント2に埋設される長尺の被接続シース(図示せず)を差し込むための螺旋状の凹凸が形成された螺旋部3bが形成されている。このシース接続管3は、例えば、ポリ塩化ビニル等の樹脂成形品よりなるが、金属成形品等でもよい。図1Aに示すように、コンクリート打設前のシース接続管3は、長尺の被接続シースが鉄筋枠に必要に応じて勾配をもって固定されるので、コンクリートセグメント2の端面2aに対して垂直ではなく傾斜して埋め込まれることが多い。
【0027】
そして、シース接続口成形用挿入具10は、コンクリートを打設する前に、一対のシース接続管3の開口端3aの内部に設けられる。図1Bにも一方の芯材11及び弾性部材13を拡大して示すように、シース接続口成形用挿入具10は、一対のシース接続管3の開口端3aの内径よりも小さな外径を有し、これら一対のシース接続管3の開口端3aに後述する弾性部材13で覆われた状態で挿入される芯材11を有する。芯材11は、例えば一対の有底の円筒部材であり、一対の有底の円筒部材が型枠1に対して締付可能に構成されている。具体的には、この芯材11には、一対のシース接続管3の開口端3aの外径よりも大きな外径を有し、型枠1に当接する拡径フランジ11aが一体に成形されている。また、カップ状の芯材11底面の中心には、第2ボルト挿通孔11bが開口されている。図1Bに示すように、この拡径フランジ11aを予め設定された角度に斜め加工すれば、シース接続管3側は斜め加工しなくて済むように構成できる。この芯材11は、ポリ塩化ビニル等の樹脂成形品でもよいし、金属製でもよい。
【0028】
本実施形態では、図1Aに示すように、第1ボルト挿通孔1a’及び第2ボルト挿通孔11bに固定部材12の固定用ボルト12aを挿通し、締付ナット12b,12cをテーパワッシャ12dを仕切板に当接させた状態で締結するように構成されている。これにより、芯材11をより堅固に型枠1に固定できるようになっている。
【0029】
この芯材11は、外周が弾性部材13で覆われた状態で一対のシース接続管3の開口端3aに接続される。弾性部材13は、例えば図1Bに示すように、ゴム部材よりなり、円筒部13aと、この円筒部13aの外周から半径方向外側へ延びる例えば2つの外側鍔部13b及び内側鍔部13cを有する。弾性部材13は、円環状の形状に一体成形してもよいし、板状のものに成形してから円筒部13aに巻き付けてテープ等により固定するようにしてもよい。そして、外側鍔部13bは、シース接続管3の接続時に、この開口端3aに当接するように構成されている。外側鍔部13bは、内側鍔部13cよりも円筒部13aからの半径方向の長さが長い。なお、弾性部材13において、内側鍔部13cが複数設けられていてもよいし、外側鍔部13bのみが設けられていてもよい。図1Bに拡大して示すように、内側鍔部13cは、シース接続管3の開口端3a側の面が円筒部13aから離れる方向に向かって、この開口端3aと反対側へ傾斜するテーパ面13dを有する。
【0030】
-シース接続口成形用挿入具の使用方法-
次いで、このシース接続口成形用挿入具10を用いてコンクリートセグメント2を成形した後、設置場所にて設置する方法について説明する。
【0031】
まず、準備工程において、上述したシース接続口成形用挿入具10及び弾性部材13を用意する。
【0032】
次いで、図1Bに示すように、シース接続口成形用挿入具10の芯材11の外周を弾性部材13で覆う。弾性部材13は、ゴム部材よりなるので、変形させて芯材11に嵌め込みやすい。このとき、外側鍔部13bを拡径フランジ11aに当接させるまで押し込むとよい。
【0033】
次いで、詳しくは図示しないが、所定の間隔で鉄筋が配筋された型枠1の設置を行う。この型枠1に配筋した後、シース接続口20に対応する位置にシース接続管3を含むシースを配管する。
【0034】
次いで、シース接続口成形用挿入具10を型枠1のシース接続口20に対応する位置に固定する。具体的には、芯材11を固定部材12を用いて第1ボルト挿通孔1a’に固定する。
【0035】
次いで、型枠1の両側のシース接続管3の開口端3aをシース接続口成形用挿入具10に接続する。このとき、型枠1の両側のシース接続管3の開口端3aを外側鍔部13bに当接させるようにシース接続口成形用挿入具10に対して接続する。ここで、外側鍔部13bの円筒部13aからの半径方向の長さを長くし、開口端3aの内径よりも大きくしているので、外側鍔部13bが開口端3aの内部に入り込んでしまわない。一方、内側鍔部13cに傾斜を有するテーパを設けることで、開口端3aに当接する外側鍔部13b以外は、開口端3aの内部に入り込ませやすく、入り込ませることで、密閉性を確保でき、シース接続管3が保持されて抜けにくくなる。なお、内側鍔部13cは、複数あってもよい。
【0036】
次いで、図1Aに示すように、型枠1の両側にコンクリートを打設して一対のコンクリートセグメント2を成形する。このとき、外側鍔部13bの円筒部13aからの半径方向の長さを開口端3aの内径よりも長くしているので、外側鍔部13bと開口端3aとの間が封止され、コンクリートが開口端3aから入り込みにくい。さらに、外側鍔部13bを拡径フランジ11aに当接させれば、拡径フランジ11aと外側鍔部13bとの間からもコンクリートが流れ込みにくくなる。また、開口端3aに内側鍔部13cを入り込ませることで、芯材11外周と開口端3a内面との間の隙間を確実に塞いでコンクリートが内部に流れ込みにくくなる。また固定部材12を用いることで、芯材11をより堅固に型枠1に固定できるので、コンクリート打設時にコンクリートが芯材11と型枠1との間からもシース接続管3に流れ込みにくくなる。なお、外側鍔部13bと内側鍔部13cの円筒部13aからの半径方向の長さは、同程度でもよい。
【0037】
次いで、型枠1の両側から一対のコンクリートセグメント2を取り外す。本実施形態では、型枠1に芯材11が固定されているので、そのときに、シース接続口成形用挿入具10がコンクリートセグメント2から外れる。拡径フランジ11aの作用により、シース接続口20周縁の内径がラッパ状に拡がっているため、シース接続口成形用挿入具10がシース接続口20周縁に引っ掛からずに外れやすい。しかも、弾性部材13を外れやすくしておけば、弾性部材13のクッション作用も手伝ってシース接続口20周縁のコンクリートが剥がれにくい。弾性部材13が、コンクリートセグメント2側に残ったとしても、粘着力はなく、形状も整っているので、テープに比べて取り外しが容易である。
【0038】
次いで、シース接続口成形用挿入具10を取り外してできた一方のコンクリートセグメント2におけるシース接続口20に中子14を挿入する。このとき、シース接続口20周縁の内径が拡がっているので、中子14を挿入しやすい。
【0039】
次いで、図1Cに示すように、一対のコンクリートセグメント2の端面2aに接着剤15を塗る。接着剤15の種類は特に限定されないが、例えばエポキシ樹脂系の接着剤、モルタル等である。
【0040】
次いで、図1Dに示すように、中子14を他方のコンクリートセグメント2のシース接続口20に挿入するように、一対のコンクリートセグメント2を突き合わせる。このとき、拡径フランジ11a’によってシース接続口20周縁が拡径されているので、中子14が引っ掛からず、コンクリートが損傷しない。なお、一対のコンクリートセグメント2が突き合わされる際のシース接続口20周縁等の隙間は、この接着剤15で満たされる。
【0041】
このように、芯材11の外周を弾性部材13の円筒部13aで覆い、その円筒部13aから延びる外側鍔部13bにシース接続管3の開口端3aを当接させて封止することができるので、シース接続口成形用挿入具10とシース接続管3の開口端3aとの間からコンクリートが流れ込みにくい。このため、シースと芯材11との間の隙間を埋めるようにテープを巻いてコンクリートの流れ込みを規制する必要がなく、作業が極めて容易になる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態によれば、芯材11の外周を、上記弾性部材13で覆い、外側鍔部13bをシース接続管3の開口端3aに当接させることで、コンクリート打設時にコンクリートがシース接続管3に流れ込みにくくなり、容易且つ確実にコンクリートの剥がれ損傷のないシース接続口20を形成することができる。
【0043】
-変形例1-
図1Eは、本実施形態の変形例1に係るシース接続口成形用挿入具10’を示し、コンクリートセグメント2内に埋め込まれる一対のシース接続管3が直線状に延びている点のみが上記実施形態1と異なる。なお、以下の変形例及び各実施形態では、図1A図1Dと同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0044】
すなわち、本変形例では、拡径フランジ11a’を傾斜させて形成する必要はない。この場合でも、シース接続口20の拡径により、シース接続口成形用挿入具10’の取り外しが容易となり、中子14を嵌めたコンクリートセグメント2の突き合わせも容易となる。
【0045】
したがって、この変形例においても、芯材11の外周を、弾性部材13で覆い、外側鍔部13bをシース接続管3の開口端3aに当接させることで、コンクリート打設時にコンクリートがシース接続管3に流れ込みにくくなり、容易且つ確実にコンクリートの剥がれ損傷のないシース接続口20を形成することができる。
【0046】
-変形例2-
詳しくは図示しないが、本発明の実施形態2に係るシース接続口成形用挿入具は、芯材の形状が異なる点で上記実施形態1と異なる。
【0047】
本実施形態において、型枠1の仕切板には、実施形態1と同様に第1ボルト挿通孔が貫通形成されている。芯材は、一対の有底の円筒部材であり、一対の有底の拡径フランジのない円筒部材が型枠1に対して締付可能に構成されている。具体的には、カップ状の芯材底面の中心には、第2ボルト挿通孔が開口されている。
【0048】
本実施形態の芯材は、上記実施形態における芯材の拡径フランジのない形状を有するが、そのような場合であっても、弾性部材の形状を適切に設定することで、コンクリートがシース接続管3に流れ込みにくくすることができる。
【0049】
(実施形態2)
図2A及び図2Bは本発明の実施形態2に係るシース接続口成形用挿入具210を示し、芯材211の形状及び型枠1への固定方法が異なる点で上記実施形態と異なる。
【0050】
本実施形態でも、図2Aに示すように、型枠1の仕切板には、小さな第1ボルト挿通孔1a’のみが設けられている。そして、本実施形態のシース接続口成形用挿入具210は、フランジ部211aが第1ボルト挿通孔1a’と同程度の第2ボルト挿通孔211bのみが開口された板状となっている。芯材211は、例えば、金属製とする。
【0051】
これら第1ボルト挿通孔1a’及び第2ボルト挿通孔211bに固定用ボルト212を挿通してナットで締め付けることで、一対の芯材211が型枠1に堅固に固定される。本実施形態でも、中央で固定用ボルト212で堅固に固定を行っているので、木ネジ等による固定は必要ない。コンクリート打設後の型抜き時には、型枠1にシース接続口成形用挿入具210が残り、コンクリートセグメント2が損傷することはない。
【0052】
なお、図2Aに示すように接続管3の開口端3aを斜めに加工したり、図示しないがフランジ部211aの厚さを調整したりして、開口端3aとフランジ部211aとの間の隙間を無くすようにしてもよい。
【0053】
したがって、本実施形態においても、芯材211の外周を、弾性部材13で覆い、外側鍔部13bをシース接続管3の開口端3aに当接させることで、コンクリート打設時にコンクリートがシース接続管3に流れ込みにくくなり、容易且つ確実にコンクリートの剥がれ損傷のないシース接続口20を形成することができる。
【0054】
(実施形態3)
図3A及び図3Bは本発明の実施形態3に係るシース接続口成形用挿入具310を示し、芯材311の形状及び型枠1への固定方法が異なる点で上記各実施形態と異なる。
【0055】
本実施形態でも、シース接続管3は、コンクリートセグメント2の端面2aに開口端3aが臨むように埋設される。すなわち、型枠1を介して突き合わされた状態で成形される一対のコンクリートセグメント2の端面2aにおいて、一対のシース接続管3が型枠1の例えば円形の開口1aを挟んで対向する位置に埋め込まれる。開口1aは、開口端3aよりも小さく、上記実施形態1及び2の第1ボルト挿通孔1a’よりも大きい。
【0056】
このシース接続口成形用挿入具10の芯材311は、一対のシース接続管3の開口端3aの内径よりも小さな外径を有し、円筒部材、例えば板厚の薄い金属パイプで構成されている。この円筒部材の端面の開口端にはフランジ部311aが形成されている。フランジ部311aは、例えば外形が矩形板状のもので溶接により芯材311の端面に固定されている。そして、このフランジ部311aが型枠1に当接した状態で固定部材としての木ネジ312により固定される。本実施形態では、固定部材は、木ネジ312で構成されているが、クギ、ボルト、接着剤等でもよく、フランジ部311aの形状は、リング状でもよい。
【0057】
-シース接続口の成形方法-
次いで、型枠1の両側にコンクリートセグメント2を成形する際のコンクリートセグメント2にシース接続口20を成形する、シース接続口20の成形方法について説明する。
【0058】
まず、準備工程において、シース接続口成形用挿入具310及び弾性部材13を用意する。
【0059】
次いで、芯材311の外周を弾性部材13で覆う。このときには、外側鍔部13bとフランジ部311aとの間に隙間ができないように差し込むのが望ましい。
【0060】
次に、所定の間隔で鉄筋が配筋された型枠1の設置を行う。このとき、型枠1の開口1aの両側にシース接続口成形用挿入具310をそれぞれ固定する。例えば、木ネジ312やクギなどの固定部材で開口1aの周縁にシース接続口成形用挿入具310を固定する。
【0061】
次いで、シース接続口20に対応する位置にシースを配管する。
【0062】
次いで、シースの端部にシース接続管3を接続する。又は配管前にシースの端部にシース接続管3を接続しておく。
【0063】
次いで、シース接続管3の開口端3aを、対応するシース接続口成形用挿入具310に接続する。弾性部材13は適度な弾性を有するので、シース接続口成形用挿入具310を開口端3aに圧入しやすい。このとき、上記実施形態1と同様に、内側鍔部13cが開口端に入り込み、外側鍔部13bに開口端が当接するようにする。
【0064】
次いで、シース内部にPC鋼線のスペースを確保するためのガイドパイプ4を挿入する。このガイドパイプ4は、例えば、架橋ポリエチレン管よりなり、その外径がシース接続管3の内径と近いときには、弾性部材13の厚さをできるだけ薄くしてガイドパイプ4が通過しやすいようにするとよい。
【0065】
次いで、型枠1にコンクリートを打設する。
【0066】
そして、コンクリートが固まった後、型枠1からコンクリートセグメント2を取り外す。
【0067】
このように、本実施形態では、フランジ部311aを利用して型枠1に固定することができるので、型枠1との間を塞ぐことができ、シース接続口成形用挿入具310が型枠1に対してずれず、また、弾性部材13の作用により、コンクリート打設時にコンクリートがシース接続管3により流れ込みにくくなる。
【0068】
したがって、本実施形態においても、芯材311の外周を、弾性部材13で覆い、外側鍔部13bをシース接続管3の開口端3aに当接させることで、コンクリート打設時にコンクリートがシース接続管3に流れ込みにくくなり、容易且つ確実にコンクリートの剥がれ損傷のないシース接続口20を形成することができる。
【0069】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0070】
すなわち、芯材11と弾性部材13との間には、両者の摩擦抵抗を低減する、洗剤、油、グリースなどの摩擦低減手段としての潤滑剤が塗布されていてもよい。なお、摩擦低減手段として、潤滑剤以外で弾性部材13が芯材11から抜けやすくする工夫を加えてもよい。例えば、接触面積の低減のため弾性部材13の内径を芯材11の外径に対し若干大きく設定してもよい。また、摩擦係数の低い弾性部材13又は芯材11を使用したり、弾性部材13又は芯材11に摩擦を低減するコーティング等の表面修飾を行ったりしてもよい。弾性部材13で覆われた状態のシース接続口成形用挿入具10,10’,210,310の外径は、シース接続管3の内径よりも若干小さいようにすると、シース接続管3に挿入しやすい。
【0071】
また、上記実施形態では、シース接続管3の開口端3aの内径を他の部位に対して大きくしていないが、例えば、ラッパ形状に外径を徐々に大きくするようにしてもよい。そうすれば、コンクリートセグメント2の引き離し時に、よりシース接続口成形用挿入具10,10’,210,310が抜きやすくなる。また、コンクリートセグメント2を工事現場で設置する場合にも、シース接続管に内挿する接続具が嵌めやすくなって施工が容易となる。
【0072】
上記実施形態1では、固定部材12を用いて芯材11を型枠1に固定するようにしているが、実施形態3のようにガイドパイプ4を挿通する実施形態にも応用可能である。その場合には、固定部材12とは異なる別の方法、例えば、木ネジ312、ビス、クギ等で拡径フランジ11a’を型枠1に固定すればよい。
【0073】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0074】
1 型枠
1a 開口
1a’ 第1ボルト挿通孔
2 コンクリートセグメント
2a 端面
3 シース接続管
3a 開口端
3b 螺旋部
4 ガイドパイプ
10,10’ シース接続口成形用挿入具
11 芯材
11a,11a’ 拡径フランジ
11b 第2ボルト挿通孔
12 固定部材
12a 固定用ボルト
12b,12c 締付ナット
12d テーパワッシャ
13 弾性部材
13a 円筒部
13b 外側鍔部
13c 内側鍔部
13d テーパ面
14 中子
15 接着剤
20 シース接続口
210 シース接続口成形用挿入具
211 芯材
211a フランジ部
211b 第2ボルト挿通孔
212 固定用ボルト(固定部材)
310 シース接続口成形用挿入具
311 芯材
311a フランジ部
312 木ネジ(固定部材)
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図3A
図3B