(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】超電導ケーブルの終端接続部および超電導ケーブルシステム
(51)【国際特許分類】
H02G 15/34 20060101AFI20220610BHJP
【FI】
H02G15/34
(21)【出願番号】P 2018182622
(22)【出願日】2018-09-27
【審査請求日】2021-05-27
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)ウェブサイトの掲載アドレス http://www.swcc.co.jp/cs/index.htm 掲載日 平成30年3月 (2)ウェブサイトの掲載アドレスhttp://www.swcc.co.jp/company/review/review63.html 掲載日 平成30年3月 (3)集会名 第12回IEEE国際会議(12th International Conference on the Properties and Applications of Dielectric Materials) 開催日 平成30年5月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】306013120
【氏名又は名称】昭和電線ケーブルシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】足立 和久
(72)【発明者】
【氏名】菅根 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】瀬間 信幸
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-129888(JP,A)
【文献】実開昭49-079791(JP,U)
【文献】実開昭49-079793(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 15/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導導体層およびシールド層を有する超電導ケーブルの端末部を収容するための超電導ケーブルの終端接続部であって、
前記超電導ケーブルの端末部を冷却する冷媒が満たされる内側収容管と、前記内側収容管を囲むように配置される外側収容管と、
前記内側収容管および前記外側収容管の双方を軸方向で分割するように配設され、かつ、前記内側収容管の内部で段剥ぎされた前記超電導ケーブルの前記超電導導体層およびシールド層にそれぞれ接続されて、前記外側収容管の外部に電気的に接続されるリード電極およびシールド電極とを、有しており、
前記内側収容管と前記外側収容管との間の空間部には、大気圧の状態で固体絶縁体が充填されている、超電導ケーブルの終端接続部。
【請求項2】
前記固体絶縁体は、多孔質材料からなり可撓性を有する多孔質絶縁シートである、請求項1記載の超電導ケーブルの終端接続部。
【請求項3】
前記固体絶縁体は、グラスウールである、請求項1記載の超電導ケーブルの終端接続部。
【請求項4】
前記固体絶縁体は、互いに対向する前記リード電極および前記シールド電極、または互いに対向する前記リード電極同士のそれぞれに接続される金属製真空体と、前記金属製真空体の対向する突出端部同士の間に介設され当該突出部同士を絶縁する絶縁部とを、有する絶縁ユニットを含む、請求項1記載の超電導ケーブルの終端接続部。
【請求項5】
前記固体絶縁体は、前記絶縁ユニットと、前記空間部を充填する断熱材とを、有する、請求項4記載の超電導ケーブルの終端接続部。
【請求項6】
超電導導体層およびシールド層を有する超電導ケーブルと、
前記超電導ケーブルの端部が挿通されこれを収容する請求項1~5のいずれか一項記載の超電導ケーブルの終端接続部とを、有する超電導ケーブルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導ケーブルの終端接続部および超電導ケーブルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、超電導ケーブルの終端接続部として、複数の超電導導体層を同軸に構成した「多相同軸型」の超電導ケーブルの端末構造体を開発し、先に出願している(特願2017-126667)。
【0003】
かかる開発品では、超電導ケーブルの端末部が収容される低温容器においてFRP内管とポリマー外管との2重構造を採用し、FRP内管の内部空間で冷媒を流通させている。FRP内管とポリマー外管との各部材中にはこれを分割するような形態で、U相、V相およびW相の電流リードやシールド接続端子(シールド電極)を配置し、電流を電流リードから引き出し、シールド接続端子を終端部の外部で接地するような構成を想定している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】“Development of 22 kV HTS Triaxial Superconducting Bus”(Kazuhisa Adachi et al.), IEEE Transactions on Applied Superconductivity( Year: 2017, Volume: 27, Issue: 4) Article Sequence Number: 5401105 IEEE Journals & Magazines
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
FRP内管とポリマー外管との間の外部空間には「断熱性能」と「(電気的)絶縁性能」とが要求される。
【0006】
本出願人は、非技術文献1に示すように、当該外部空間に断熱材を充填し(III.A. Configuration of Triaxial Bus Termination参照)、真空度に対する絶縁依存度を調査しており、一定電圧のもとで断熱性能と絶縁性能とを保証するには当該外部空間を大気圧にすべきとの結論を導きだしている(III.B. Insulation Test for Model Sample)。
【0007】
しかしながら、単に大気圧という条件を見出しただけでは、断熱性能と絶縁性能との両性能を満足しうる終端部を構成することはできず、いまだ両性能を満足しうる構成を創作するには至っていない。
【0008】
本発明の主な目的は、断熱性能と絶縁性能とを同時に発揮させることができる超電導ケーブルの終端接続部および超電導ケーブルシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の発明者らは、断熱性能と絶縁性能とを同時に発揮させることができる超電導ケーブルの終端接続部の検討をさらにすすめ、FRP内管とポリマー外管との間の外部空間を大気圧にした状態で固体絶縁体を充填し、一定のAC/雷インパルス耐電圧試験および部分放電試験をおこなったところ(“Development of superconducting triaxial cable”5-O-8 No.386 12th IEEE International Conference on the Properties and Applications of Dielectric Materials - Xi'an - China、以下「参考文献」という。)、当該耐電圧試験に耐えうることおよび部分放電の発生もないことを新たに見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明の一態様によれば、
超電導導体層およびシールド層を有する超電導ケーブルの端末部を収容するための超電導ケーブルの終端接続部であって、
前記超電導ケーブルの端末部を冷却する冷媒が満たされる内側収容管と、前記内側収容管を囲むように配置される外側収容管と、
前記内側収容管および前記外側収容管の双方を軸方向で分割するように配設され、かつ、前記内側収容管の内部で段剥ぎされた前記超電導ケーブルの前記超電導導体層およびシールド層にそれぞれ接続されて、前記外側収容管の外部に電気的に接続されるリード電極およびシールド電極とを、有しており、
前記内側収容管と前記外側収容管との間の空間部には、大気圧の状態で固体絶縁体が充填されている、超電導ケーブルの終端接続部が提供される。
【0011】
本発明の他の態様によれば、
超電導導体層およびシールド層を有する超電導ケーブルと、
前記超電導ケーブルの端末部が挿通されこれを収容する前記超電導ケーブルの終端接続部とを、有する超電導ケーブルシステムが提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、内側収容管と外側収容管との間の空間部に固体絶縁体が充填されているため、当該空間部での空気の対流が抑制され(熱伝導が抑制され)、断熱性能が発揮される。かかる場合、当該空間部に固体絶縁体が充填されたとしても、大気圧の状態ではリード電極間およびリード電極-シールド電極間で絶縁性能が発揮される(実施例参照)。
以上から、本発明によれば断熱性能と絶縁性能とを同時に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】超電導ケーブルの終端接続部の要部構成を模式的に示す図である。
【
図2】超電導ケーブルの概略構成を示す断面図である。
【
図3】リード電極における超電導ケーブルの接続部分を示す正面図である。
【
図6】超電導ケーブルの終端接続部の変形例1の要部構成を模式的に示す図である。
【
図7】超電導ケーブルの終端接続部の変形例2の要部構成を模式的に示す図である。
【
図8】超電導ケーブルの終端接続部の変形例3の要部構成を模式的に示す図である。
【
図9】超電導ケーブルの終端接続部の変形例4の要部構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
まずは、本発明を適用した超電導ケーブルの終端接続部について説明する。
【0016】
<終端接続部(1)の構成>
図1は、超電導ケーブルの終端接続部1の要部構成を模式的に示す図である。
図1は、リード電極30以外を断面とした側面図であり、ここでは説明の便宜上、超電導ケーブル10が導入される側を基端側(
図1では右側)、反対側を先端側(
図1では左側であり挿入方向側)として説明する。
【0017】
図1に示す終端接続部1は、超電導ケーブル10の端末部と、終端接続部1の外部機器である常温部とを、所謂、電流リードとして機能するリード電極30(30-1~30-3)を介して接続するものである。
超電導ケーブル10は複数の超電導導体層112(112-1~112-3)を有している。終端接続部1では、これら複数の超電導導体層112を常温部にそれぞれ接続するため、複数のリード電極30を有している。
超電導ケーブル10の端末部は、ここでは、断熱管12を段剥ぎしたケーブルコア部分とする。
【0018】
終端接続部1は主に、リード電極30およびシールド電極40と、冷媒槽21および外側槽22を有する低温容器20と、支持脚部28とを、有している。
【0019】
終端接続部1では、超電導ケーブル10が挿通されるリード電極30が所定間隔を空けて配置されている。リード電極30間には、超電導ケーブル10を囲むように筒状の内側収容管211が架設され、冷媒槽21が形成されている。リード電極30間には、冷媒槽21を囲むように筒状の外側収容管221が架設され、外側槽22が形成されている。
【0020】
低温容器20は、リード電極30および内側収容管211を含む内側の冷媒槽21と、リード電極30および外側収容管221を含む外側の外側槽22とからなる二重構造を有している。内側収容管211と外側収容管221との間の空間部には、大気圧の状態で固体絶縁体70が充填されている。
【0021】
このように構成される低温容器20(詳細には冷媒槽21)に対し、超電導ケーブル10の端末部が所定の状態で水平方向に延在するように挿通され収容される。
「超電導ケーブルシステム」とはかかる状態のものを意味し、超電導ケーブル10とその端末部が挿通され収容される終端接続部1とで構成される。
【0022】
終端接続部1では、超電導ケーブル10の導体電流が低温容器20からリード電極30(詳細には
図3の引出端子部37)を介して常温部としての外部電力機器等の実系統側に引き出され、他方、実系統側からリード電極30を介して超電導ケーブル10に通電されるようになっている。
【0023】
シールド電極40には超電導ケーブル10のシールド層114(
図2参照)が接続され、シールド電極40が接地される。シールド電極40は超電導ケーブル10が挿通される円盤状の本体を有している。シールド電極40は、リード電極30と同様の機能を有するものであり、具体的な構成は後述する。
【0024】
超電導ケーブル10は超電導線材からなる複数層の超電導導体層を有し、終端接続部1において、導体電流が超電導導体層ごとに超電導ケーブル10からリード電極30を介して引き出される。
【0025】
<超電導ケーブル(10)>
図2は、超電導ケーブル10の概略構成を示す断面図である。
【0026】
図1および
図2に示すように、超電導ケーブル10は、断熱管12内に、電気絶縁層113(113-1~113-3)を介して超電導導体層112(112-1~112-3)を同心円状に複数備えるケーブルコア11が収容された超電導ケーブルである。
【0027】
超電導ケーブル10は、超電導導体層112同士で互いに位相の異なる電流を流す多相型の超電導ケーブルであって、具体的には超電導導体層112を、中心から、U相、V相、W相の3相の電流を流す導体を同軸上に配置した三相同軸型の超電導ケーブルである。
超電導ケーブル10は、2層または4層以上の超電導導体層を有する構成とされてもよいし、単層の超電導導体層を有する構成とされてもよい。
終端接続部1も、2層または4層以上の超電導導体層を、これと同数のリード電極30を介して常温部に接続する構造とされてもよいし、単層の超電導導体層を、1つのリード電極30を介して常温部に接続する構造とされてもよい。
【0028】
ケーブルコア11は中心から順に、N2冷却管として機能する中央冷却管111、第1超電導導体層112-1、第1電気絶縁層113-1(導体絶縁層)、第2超電導導体層112-2、第2電気絶縁層113-2(導体絶縁層)、第3超電導導体層112-3、第3電気絶縁層113-3(導体絶縁層)、シールド層114および保護層115を有している。
【0029】
超電導導体層112およびシールド層114は、たとえば、下層の外面に螺旋状に巻き付けた多数本の超電導テープ(テープ状の超電導線材)により構成される。
超電導導体層112を構成する各超電導テープは、互いに重ならずに配置されている。
【0030】
超電導テープは、ここでは、REBayCu3Oz系(REは、Y、Nd、Sm、Eu、GdおよびHoから選択された1種以上の元素を示し、y≦2およびz=6.2~7である。)の高温超電導薄膜を備える酸化物超電導材である。
この超電導テープは、テープ状の金属基板上に成膜された中間層上に、テープ状の超電導薄膜である酸化物超電導導体層、安定化層が順に積層されることによって作製される。
超電導テープの金属基板は、たとえば、ニッケル(Ni)、ニッケル合金またはステンレス鋼から構成される。
中間層は、たとえば、金属基板上に、酸化アルミニウム(Al2O3)層、ガリウムドープ酸化亜鉛層(Gd2Zr2O7:GZO)またはイットリウム安定化ジルコニア(YSZ)等による第1層、Y2O3または酸化ランタンマンガン(LaMnO3)等の層である第2層、酸化マグネシウム(MgO)等から成る第3層、LaMnO3等の層である第4層、および酸化セリウム(CeO2)層である第5層を、順に積層することによって構成される。
なお、超電導導体層は、有機金属酸塩または有機金属化合物を原料とし、真空プロセスを使用せずに、MOD法(Metal Organic Deposition Processes:有機酸塩堆積法)により中間層上に成膜される。MOD法は、金属基板上に中間層を設けた複合基板上の金属有機酸塩を加熱して熱分解することによって複合基板上に超電導導体層である薄膜を形成する。安定化層は、超電導導体層上に銀(Ag)等を成膜することにより形成される。
【0031】
このように構成される超電導テープを、複合基板上において、超電導導体層(超電導薄膜)が外周側で複合基板(基板)が内周側となるように、下層の中央冷却管111、電気絶縁層113(113-1、113-2)の外周に対し螺旋状に巻回することによって、各超電導導体層112は構成される。
【0032】
電気絶縁層113は、たとえば、それぞれ下層の超電導導体層112の外周に半合成絶縁紙を巻回して構成される。
保護層115は、たとえば、シールド層114の外周にクラフト紙等を巻回して構成される。
【0033】
図1に示すように、超電導ケーブル10の端末部においては、ケーブルコア11に段剥ぎ加工が施され、先端側から順に各層が露出する。各超電導導体層112(112-1~112-3)には、リード電極30(30-1~30-3)が電気的に接続されている。
【0034】
ここでは、リード電極30は、超電導導体層112の外周に配置され、内側収容管211および外側収容管221のそれぞれの表裏面のうち少なくとも一方の面に、冷媒槽21および外側槽22を形成するように接続される。
【0035】
シールド層114の外周にはシールド電極40が電気的に接続されている。
超電導導体層112(112-1~112-3)の外周に配置される電気絶縁層113(113-1~113-3)の外周には、ストレスコーン等の電界緩和部15が配置されている。
【0036】
断熱管12は、内側の断熱内管121と外側の断熱外管122とからなり、断熱内管121および断熱外管122は、コルゲート状を有することが好ましい。断熱内管121および断熱外管122は、たとえば、ステンレス鋼(SUS)製のコルゲート管(波付き管)によりそれぞれ構成される。
【0037】
超電導ケーブル10は、中央冷却管111の外周側に、超電導導体層112と、断熱内管121と断熱外管122とによる二重構造を採る断熱管12とを順に有し、二重構造の断熱内管121と断熱外管122との間には断熱材が配設されている。
【0038】
断熱内管121は、低温容器20の基端側において、シールド電極40の内周部に、内部接続部52を介して気密的に固定されている。
断熱内管121は、内部接続部52が固定されたシールド電極40の内周部を介して、冷媒槽21の内部(主に内側収容管211の内部)と気密的に連通する。
【0039】
断熱内管121は、ケーブルコア11を収容し、冷媒槽21に接続される。
超電導ケーブルシステムの運転時において、断熱内管121には冷媒(たとえば液体窒素)が充填され超電導導体層112が超電導状態に維持され、断熱内管121と断熱外管122との間は断熱のために真空状態に保持される。
【0040】
断熱外管122は、低温容器20の基端側において、外側槽22の基端面として機能するシールド電極40の外周部に、外部接続部54を介して気密的に固定されている。
外部接続部54と内部接続部52との間には隔壁56が立設され、断熱外管122と断熱内管121との間の空間部は、外側槽22の内部(主に外側収容管221の内部)とは隔離され連通していない。
【0041】
<内側収容管(211)および外側収容管(221)>
内側収容管211は、筒状を呈するFRP製(Fiber Reinforced Plastics、繊維強化プラスチック)の絶縁管である。すなわち、超電導ケーブル10の端末部は、冷媒槽21である絶縁管に収容された状態となる。
内側収容管211は、絶縁性とともに断熱性を有する。
【0042】
軸方向でリード電極30を介して接続される内側収容管211同士は、リード電極30に、超電導ケーブル10の延在方向(「軸方向」ともいう)に貫通して形成された貫通孔322(
図3参照)を介して連通した状態となっている。
【0043】
超電導ケーブルシステムの運転時において、冷媒槽21には冷媒循環装置(図示略)により冷媒が循環供給され、冷媒槽21に連通する断熱内管121の内部も冷媒で充填される。
【0044】
外側収容管221は、外周に襞部223を有するポリマーがい管であり、冷媒槽21を収容するようにリード電極30間およびリード電極30-シールド電極40間に設けられている。
外側収容管221は、たとえば、エポキシ樹脂やFRP等の絶縁材料から構成された筒状体の部材であって、その外周に襞部223を有し、絶縁性とともに断熱性を有する。
外側収容管221は、リード電極30に気密的に固定されている。
外側収容管221の筒状体は、機械的強度の高いFRPで形成され、筒状体の外周面に一体的にポリマー被覆体を設けて襞部223が設けられている。襞部223であるポリマー被覆体は、電気絶縁性能に優れる材料、たとえばシリコーンポリマー(シリコーンゴム)などの高分子材料で構成され、外周面で長手方向に離間して複数個の傘状の襞を構成している。
【0045】
外側収容管221の内側は、リード電極30に、超電導ケーブル10の延在方向に貫通して形成されたスロット部364(
図3参照)を介して連通した状態となっている。
【0046】
外側収容管221の筒状体は、冷媒槽21内の超電導ケーブル10の外面に電界緩和部15を取り付けた場合、電界緩和層の周囲で電界緩和部15を囲む位置に配置される。
【0047】
<固体絶縁体(70)>
固体絶縁体70は、内側収容管211と外側収容管221との間の空間部に充填された固体状の絶縁体である。
【0048】
固体絶縁体70は、絶縁機能を有し、内側収容管211と外側収容管221との間に充填されるように配置されるものであればどのように構成されてもよく、たとえば、一体のもので構成されてもよいし、単層や複数層で構成されてもよい。
固体絶縁体70は、断熱性および絶縁性を有する多孔質材料からなることが望ましい。
【0049】
図5は、軸方向から見た固体絶縁体70の断面図である。
【0050】
図5に示すように、固体絶縁体70は、絶縁性を有しかつ可撓性を有する多孔質絶縁シート71(71-1~71-4)を積層することにより構成されている。
なお、積層せずに1枚の多孔質絶縁シート71を内側収容管211と外側収容管221との間に充填するように配置してもよい。
【0051】
多孔質絶縁シート71は、微細な空孔が多数形成されかつ高い断熱性を有する多孔質材料を不織布グラスファイバーに含浸させた、所定厚みを有する多孔シート状の部材である。
多孔質絶縁シート71は、たとえば、エアロジェル、特にシリカエアロジェルをグラスファイバー不織布に含浸させたブランケットであることが好ましい。シリカエアロジェルは、平均10nmの多数の空孔をもち、その熱伝導率は10mW/m-K(38℃、1気圧)と、固体の中で最も低い熱伝導率であり、非常に高い断熱性を有し、極めて軽量であることが知られている。多孔質絶縁シート71として株式会社エアロジェル製パイロジェルXTを使用するのが好適である。
【0052】
固体絶縁体70は、多孔質絶縁シート71を内側収容管211の外周面に、当該外周を覆うように複数層状に巻き付けられて形成されている。
多孔質絶縁シート71により形成される各層は同じ厚みになるように巻き付けられて固定されている。
【0053】
多孔質絶縁シート71-1~71-4により形成される各層は、積層された多孔質絶縁シート71-1~71-4の端部71a、71bを、上下層で周方向にずれた位置になるようにして巻き付けられることで構成されている。
多孔質絶縁シート71-1~71-4の各層において、互いに重なる層のそれぞれの端部71a、71bは、固体絶縁体70の軸を中心に180°ずれた位置に配置されている。これにより、内側収容管211と外側収容管221との間において、端部71a、71bが半径方向で重なり、空気溜まりとなる空間が形成されないため、空気が対流することなく、熱伝導を抑制することができる。
なお、多孔質絶縁シート71の端部71a、71bの位置のずれは、固体絶縁体70の軸を中心に何度ずれていてもよく、たとえば、30°、45°、90°、120°等の角度でずれていてもよい。多孔質絶縁シート71の端部71a、71bは、互いに重なる層同士で、層のつなぎ目が半径方向で重なる位置に配置されないのがよい。
【0054】
多孔質絶縁シート71-1~71-4は、内側収容管211の外周に一層ごとに巻き付けられ端部71a同士が突き合わされ筒状に配置され、外周にシリコンテープ等の絶縁テープが巻回され層状に固定されている。
ここでは、多孔質絶縁シート71-1~71-4は、多孔質絶縁シート71の端部71a同士を突き合わせた部分上に、上の層の多孔質絶縁シートの端部71bを突き合わせた部分が位置しないように巻回され、シリコンテープで固定されている。これにより、多孔質絶縁シート71は各層がずれることなく内側収容管211と外側収容管221との間の空間部に充填されている。
【0055】
内側収容管211と外側収容管221との間の空間部は、少なくとも内側収容管211、外側収容管221、リード電極30およびシールド電極40で構成され、大気圧の状態に保持される。
【0056】
<リード電極(30)>
図3は、リード電極30における超電導ケーブルの接続部分を示す正面図であり、
図4は、
図3のA-A線断面図である。
【0057】
図3および
図4に示すリード電極30は、超電導ケーブル10を、引出端子部37を介して常温側の機器に電気的に接続するものである。
なお、リード電極30は、超電導ケーブル10において外周面となる各超電導導体層112のそれぞれに同様に接続されるため、ここではリード電極30の代表例として
図1のリード電極30-2について説明する。
【0058】
シールド電極40は、内周部の中央部で超電導ケーブル10を挿通し、超電導ケーブル10のシールド層114を接地するために外部に引き出す端子であり、リード電極30と同様に形成される。よって、シールド電極40についても、リード電極30の説明により省略する。
【0059】
リード電極30は、終端接続部1において、内側収容管211(冷媒槽21)の内側の超電導ケーブル10の外周面に位置する超電導導体層112と、外側収容管221の外部の常温側の機器とを、導通するものである。
【0060】
リード電極30は、電極部32、導電リード部33および引出端子部37を有しており、これら部材は導電性を有し電気的に接続される。
電極部32は、超電導ケーブル10の外周に配置され、超電導ケーブル10に接続される。電極部32は、銅等の導電部材により筒状に形成され、内周面で超電導ケーブル10の外周の超電導導体層112に密着して電気的に接続された状態で固定されている。
図4に示すように、電極部32は、内側リード部34および外側リード部36の厚みよりも、超電導ケーブル10の延在方向に長い。電極部32の周壁部には、軸方向に沿って貫通して形成された、冷媒が通る貫通孔322が周方向に複数設けられている。
【0061】
導電リード部33は、電極部32の外周にフランジ状に配置され、電極部32に電気的に接続される。導電リード部33は、引出端子部37と電極部32との間の部位に形成され、引出端子部37から電極部32への通電経路Eを形成するようになっている。
導電リード部33は、電極部32の外周に配置され内側収容管211が固定される内側リード部34と、内側リード部34に電気的に接続され内側リード部34の外周に配置される外側リード部36と、を有する。
【0062】
内側リード部34は、円環板状の銅等からなる導電部材であり、内部に超電導ケーブル10および電極部32が配置される。内側リード部34の内周面には、接触子であるマルチコンタクト35aが取り付けられており、内側リード部34はマルチコンタクト35aを介して電極部32と電気的に接続された状態で周方向および軸方向に摺動自在に外嵌されている。
内側リード部34は、表裏面の外周縁部で、内側収容管211の開口端部を塞ぐように気密的に固定される。内側リード部34の外周縁部には、内側収容管211を固定する固定穴342が形成され、内側収容管211が固定穴342を介してボルト等の止着材により固着される。内側収容管211の中心軸と内側リード部34の中心軸とは同軸であることが好ましい。
【0063】
外側リード部36は、銅等の導電部材により環状に形成され、ここでは、内側リード部34と同じ厚みの円環板状に形成されている。外側リード部36の内周面には、接触子であるマルチコンタクト35bが取り付けられており、外側リード部36はマルチコンタクト35bを介して内側リード部34と電気的に接続されつつ、相対的に周方向および軸方向に摺動自在に接続されている。
外側リード部36の外周面には引出端子部37が半径方向に突出して設けられている。
引出端子部37は、外側リード部36の外周の一部から突出する矩形板状を呈し外側リード部36と一体的に形成されている。
外側リード部36には、表裏面の少なくとも一面の外周部において、外側収容管221(
図1参照)が気密的に固定される。外側収容管221は、外側リード部36に対し固定穴362を介してボルト等の止着部材により固定される。
図1に示すリード電極30-1の表面(ここでは、先端側の面)には、外側槽22の先端面となるカバー24が気密的に固定され、リード電極30-2では表裏面にそれぞれ外側収容管221が取り付けられている。
【0064】
外側リード部36は、外側収容管221よりも内側の領域であって、引出端子部37と内側リード部34との間の領域に形成されたスロット部364を有している。
スロット部364は、導電リード部33において、引出端子部37と電極部32とを連続させるための通電経路Eを規定する。
スロット部364は、中心の超電導ケーブル10を囲むように配置される複数のスロット364a、364bを有している。
スロット部364は、引出端子部37と、電極部32の超電導ケーブル10との接触部分との間の通電経路Eの長さを、引出端子部37と、電極部32の超電導ケーブル10との接触部分との間を少なくとも最短で結ぶ直線よりも長くなるように規定している。
スロット364a、364bは、それぞれ同心で且つ異なる直径の欠円状(円の一部を直線で切断した形状)をなしている。最外周側のスロット364aにおいて欠円部分を挟む端部は、半径方向で引出端子部37と超電導ケーブル10を挟んだ逆側の位置に配置されている。
【0065】
スロット364aに対して異なる直径を有しかつ内周側で隣り合う同心のスロット364bでは、スロット364bの欠円部分を挟む端部を、スロット364aにおいて欠円部分を挟む端部とは同心を挟み逆側の位置で、かつ、スロット364aを挟み引出端子部37の接続部分と対向する位置に位置させている。
これら複数の欠円状のスロット364a、364bでは、隣り合うスロット同士で、欠円部分を挟む端部が、同心を挟んで逆側に配置されている。
【0066】
リード電極30では、引出端子部37に最も近接する最外周のスロット364aの欠円部分を、引出端子部37とは正対する方向に位置させることにより、熱伝導経路を長くしている。これにより、引出端子部37に最も近接する最外周のスロット364aの欠円部分を、引出端子部37側に配置されるようにしてリード電極30を形成した構成と比較して、同じ外形寸法のリード電極でも熱侵入量を低減することができる。
なお、ここでは、通電経路E(引出端子部37と電極部32との間の内側リード部34および外側リード部36における伝導熱が伝導する導電部分)の「長さ/断面積比」を、熱侵入量(伝導熱と通電時のジュール発熱の和)が最小値となるように設定している。
【0067】
引出端子部37は、導電リード部33の外周面、つまり、外側リード部36の外周面から外方に突出して設けられ、外側槽22の外周から外方に突出し、常温側に配置される。
【0068】
<まとめ>
以上の本実施形態では、超電導ケーブル10の超電導導体層112およびシールド層114がそれぞれリード電極30およびシールド電極40に接続される終端接続部1が提供され、超電導ケーブル10を囲む内側収容管211と外側収容管221との間の空間部には大気圧の状態で固体絶縁体70(多孔質絶縁シート71)が充填されている。
【0069】
かかる構成によれば、当該空間部に多孔質絶縁シート71が充填されているため、当該空間部での空気の対流が抑制され(熱伝導が抑制され)、断熱性能が発揮される。当該空間部に多孔質絶縁シート71が充填されたとしても、大気圧の状態ではリード電極30間およびリード電極30-シールド電極40間で絶縁性能が発揮される(実施例参照)。
以上から、本実施形態にかかる超電導ケーブルの終端接続部1によれば、断熱性能と絶縁性能とを同時に発揮させることができる。
【0070】
なお、超電導ケーブルの終端接続部1では、固体絶縁体70を、多孔質絶縁シート71-1~71-4で構成したが、これに代えて、内側収容管211と外側収容管221との間の空間部を、グラスウールその他の公知の断熱材により充填してもよい。
【0071】
グラスウールは、断熱性を有する繊維であって高温で溶融したガラスを遠心力等で吹き飛ばし、綿状に細かく繊維化したものである。
【0072】
固体絶縁体70をグラスウールにより構成すれば、上述と同様の作用効果を奏するとともに、使用するガラスにリサイクルガラスを用いることができ、経済性、環境性の向上も図ることができる。
【0073】
<変形例1~4>
図6~
図9は、超電導ケーブルの終端接続部1の変形例1~4にかかる終端接続部1A~1Dの要部構成を模式的に示す図である。
なお、
図6~
図9は、
図1と同様に、リード電極30以外を断面とした側面図であり、ここでは説明の便宜上、超電導ケーブル10が導入される側を基端側(
図6~
図9では右側)、反対側を先端側(
図6~
図9では左側であり挿入方向側)として説明する。
【0074】
図6~
図9に示す終端接続部1A~1Dは、
図1に示す終端接続部1と比較して、固体絶縁体70の構成が異なり、それ以外は同様の基本的構成を有する。よって、
図6~
図9では、同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0075】
<変形例1>
図6に示す超電導ケーブルの終端接続部1Aでは、固体絶縁体70がFRP製真空体72(FRP:Fiber-Reinforced Plastics、繊維強化プラスチック)で構成されている。
【0076】
超電導ケーブルの終端接続部1Aでは、軸方向に並ぶリード電極30(30-1~30-3)およびリード電極30-シールド電極40間の、内側収容管211と外側収容管221との間の空間部には、大気圧の状態でFRP製真空体72が充填されている。
【0077】
各FRP製真空体72は内部が真空状態の筒状体である。
各FRP製真空体72は、リード電極30(30-1~30-3)間およびリード電極-シールド電極40間で、内側収容管211と外側収容管221との間の空間部に隙間無く、充填された状態で配置されている。
【0078】
以上の変形例1によれば、リード電極30(30-1~30-3)間およびリード電極30-シールド電極40間は、FRP製真空体72により、それぞれ好適に断熱されるとともに絶縁され、終端接続部1と同様の作用効果を奏することができる。
なお、変形例1では、内側収容管211と外側収容管221との間の空間部であってFRP製真空体72の占める領域以外の部分には(隙間ができた場合)、多孔質絶縁シート71、グラスウールその他の公知の断熱材が充填されてもよい。
【0079】
<変形例2>
図7に示す超電導ケーブルの終端接続部1Bでは、固体絶縁体70が固体絶縁体74で構成されている。
固体絶縁体74は内部を真空にした金属製真空体742と金属製のシャフト744とで構成されている。
【0080】
金属製真空体742は、軸方向に並ぶリード電極30(30-1~30-3)間およびリード電極30-シールド電極40間で、内側収容管211と外側収容管221との間の空間部に配置されている。
【0081】
金属製真空体742は、軸方向で隣り合うリード電極30(30-1~30-3)のうちの一方のリード電極30およびシールド電極40に対し、導電性を有するシャフト744を介して片持ち状態で接続され、他方のリード電極30から離間するように配置されている。
たとえば、リード電極30-1、30-2間に配置される金属製真空体742は、リード電極30-1に近接しつつ接触しない状態でリード電極30-2に接続されている。
【0082】
以上の変形例2によれば、U相、V相およびW相のリード電極30(30-1~30-3)間をそれぞれ好適に断熱して絶縁し、終端接続部1と同様の作用効果を奏することができる。
【0083】
なお、変形例2では、終端接続部1Bにおける金属製真空体742を、内部を真空にした繊維強化プラスチック管(真空FRP管)に替えてもよい。
変形例2でも、内側収容管211と外側収容管221との間の空間部であって固体絶縁体74の占める領域以外の部分には(隙間)、多孔質絶縁シート71、グラスウールその他の公知の断熱材が充填されてもよい。
【0084】
<変形例3>
図8に示す超電導ケーブルの終端接続部1Cでは、固体絶縁体70が絶縁ユニット76で構成されている。
【0085】
絶縁ユニット76は、軸方向に並ぶリード電極30(30-1~30-3)間およびリード電極30-シールド電極40間で、内側収容管211と外側収容管221との間の空間部に配置される筒状のユニットである。
【0086】
絶縁ユニット76は、軸方向に並ぶリード電極30(30-1~30-3)間およびリード電極30-シールド電極40間を絶縁し、内側収容管211と外側収容管221との間の空間部を断熱する。
【0087】
絶縁ユニット76は、金属製真空体762、762、金属製のシャフト764、764、および金属製真空体762、762間を絶縁する絶縁部766を有している。
【0088】
金属製真空体762、762は中空の金属製筒状体であって内部が真空である。
【0089】
金属製真空体762、762は、絶縁ユニット76を挟む軸方向に並ぶリード電極30(30-1~30-3)およびシールド電極40の双方に、導電性を有するシャフト764、764を介して、双方から互いに対向する方向に突出するように接続されている。
【0090】
シャフト764、764は、金属製真空体762、762のそれぞれの周方向で所定間隔をあけた位置と、対向するリード電極30(たとえば30-2、30-3)との間に複数接続されている。
シャフト764、764は、金属製真空体762、762をリード電極30(たとえば30-2、30-3)の双方に片持ち状態で支持している。
【0091】
絶縁部766は、金属製真空体762、762間に介設され、金属製真空体762、762間を絶縁する。
絶縁部766は、断面H字状の周壁を有するFRP製の筒状体であり、両端部で開口する凹部内に金属製真空体762、762のそれぞれが挿入され接続された状態で固定されている。
【0092】
これにより金属製真空体762、762の対向する部位同士は、絶縁部766により覆われ、金属製真空体762、762は互いに導通しない状態で保持されている。
【0093】
絶縁ユニット76は、軸方向に並ぶリード電極30(30-1~30-3)間およびリード電極30-シールド電極40間で、内側収容管211と外側収容管221との間の空間部に、大気圧の状態で充填されている。
【0094】
以上の変形例3によれば、絶縁ユニット76の金属製真空体762、762の内部が真空状態であるため、内側収容管211と外側収容管221との間の空間部が真空断熱され、当該空間部では断熱性能が発揮される。金属製真空体762、762はシャフト764、764を介してリード電極30およびシールド電極40に接続されているためこれら部材と同電位を有するものの、金属製真空体762、762間にはFRP製の絶縁部766が介設されているため、リード電極30間およびリード電極30-シールド電極40間が絶縁され、当該空間部では絶縁性能が発揮される。
したがって、変形例3でも、断熱性能と絶縁性能とを同時に発揮させることができる。
【0095】
<変形例4>
図9に示す超電導ケーブルの終端接続部1Dでは、固体絶縁体70が絶縁ユニット76と断熱材78とで構成されている。
終端接続部1Dの絶縁ユニット76は変形例3にかかる終端接続部1Cのそれと同様のものである。
断熱材78は多孔質絶縁シート71、グラスウールその他の公知の断熱材で構成され、ここではグラスウールで構成されている。
断熱材78は内側収容管211と外側収容管221との間の空間部であって、絶縁ユニット76の占める領域以外の部分に充填されている。
終端接続部1Dでは、断熱材78は、内側収容管211の外周に所定の厚みになるまで巻きつけられ絶縁ユニット76が設置された後、絶縁ユニット76の外周にさらに巻き付けられ外側収容管221の内周に当接する厚みになるまで積層されるのがよい。このとき、断熱材78のつなぎ目(両端部が当接する部分)は半径方向でずれた位置に配置されるのがよい。
【0096】
以上の変形例4によれば、内側収容管211と外側収容管221との間の空間部のうち絶縁ユニット76が占める領域以外の部分が断熱材78で充填されているため、当該部分での空気の対流が抑えられ熱伝導が抑制される。
したがって、変形例4では、断熱性能をさらに向上させることができる。
【実施例】
【0097】
(1)サンプルの製造
(1.1)実施例1、2
実施例1、2の終端接続部として
図1の終端接続部1を製造した。
実施例1の終端接続部1では、リード電極30-1~30-3同士の間、およびリード電極30-3とシールド電極40との間で、且つ、内側収容管211と外側収容管221との間に配置される固体絶縁体70を、多孔性断熱シート71(パイロジェルXT)により構成した。
実施例2の終端接続部1では、固体絶縁体70を、グラスウールにより構成した。
【0098】
(1.2)実施例3
実施例3の終端接続部として
図9の終端接続部1Dを製造した。
実施例3の終端接続部1Dでは、固体絶縁体70を、絶縁ユニット76および断熱材78(グラスウール)により構成した。
【0099】
(1.3)比較例1
比較例1の終端接続部として、実施例1の終端接続部1の構成において、固体絶縁体70の無い終端接続部を製造した。
【0100】
(2)断熱性能試験および絶縁性能試験
実施例1~3および比較例1において、断熱性能および絶縁性能を確認するため、下記の断熱性能試験および絶縁性能試験をそれぞれ実施した。
断熱性能試験では、熱侵入量をカロリメトリック法により測定した。
絶縁性能試験では、5mの超電導ケーブルを用いて冷媒槽21の内側に液体窒素(77K、0.3MPa)を封入して、CIGRE TB538(高電圧大電力システム国際会議による試験規格の推奨案)に基づく絶縁試験を実施した(参考文献のIII. INSULATION DESIGN OF THE TRIAXIAL TERMINATIONおよびIV. THE TEST OF TRIAXIAL SUPERCONDUCTING CABLE SYSTEM参照)。
断熱性能試験に基づく熱侵入量、ならびに絶縁性能試験に基づく商用周波耐電圧試験(商用AC)、雷インパルス耐電圧試験(雷インパルス)および商用周波部分放電試験(部分放電)の測定結果を、表1に示す。
【0101】
【0102】
(3)まとめ
断熱性能試験では、比較例1は熱侵入量が多く断熱性能に劣るのに対し、実施例1~3は熱侵入量が低く抑えられていた。
絶縁性能試験では、比較例1および実施例1、2は商用周波耐電圧試験において52kV印加に30分耐えることができ、雷インパスル耐電圧試験において±125kV印加の10回の繰り返しに耐えることができ、商用周波部分放電試験において36kV印加に対し部分放電の発生がなかった(ノイズレベルは5pC以下)。
実施例3は商用周波耐電圧試験において26kV印加に30分耐えることができ、雷インパスル耐電圧試験において±75kV印加の10回の繰り返しに耐えることができ、商用周波部分放電試験において19kV印加に対し部分放電の発生がなかった(ノイズレベルは5pC以下)。
以上のとおり、比較例1と実施例1~3との比較から、内側収容管211と外側収容管221との間の空間部に対し、大気圧の状態で固体絶縁体70を充填することは、断熱性能と絶縁性能とを発揮させるのに有用であることがわかる。特に、実施例1と実施例2、3との比較から、固体絶縁体70を多孔性断熱シート71で構成した場合に(実施例1)、グラスウールで構成した場合の絶縁性能と(実施例2)、絶縁ユニット76およびグラスウールで構成した場合の断熱性能との(実施例3)、両方の利点を併せもつことがわかる。
【0103】
以上、ここで開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0104】
1、1A、1B、1C、1D 超電導ケーブルの終端接続部
10 超電導ケーブル
11 ケーブルコア
12 断熱管
15 電界緩和部
20 低温容器
21 冷媒槽
22 外側槽
24 カバー
30 リード電極
32 電極部
33 導電リード部
34 内側リード部
35a、35b マルチコンタクト
36 外側リード部
37 引出端子部
40 シールド電極
52 内部接続部
54 外部接続部
56 隔壁
70 固体絶縁体
71 多孔質絶縁シート
72 FRP製真空体
74 金属製真空体
76 絶縁ユニット
78 断熱材
111 中央冷却管
112 超電導導体層
113 電気絶縁層
114 シールド層
115 保護層
121 断熱内管
122 断熱外管
211 内側収容管
221 外側収容管
223 襞部
322 貫通孔
742 金属製真空体
744 シャフト
762 金属製真空体
764 シャフト
766 絶縁部