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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】ガス発生器
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/264 20060101AFI20220610BHJP
   B01J 7/00 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
B60R21/264
B01J7/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018198405
(22)【出願日】2018-10-22
(65)【公開番号】P2020066255
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小山 弘朗
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-239141(JP,A)
【文献】国際公開第2018/088134(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/264
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する下壁および上壁を有するハウジングと、
第1点火部を有する第1点火器と、
前記下壁に固定されており、前記第1点火器を保持する第1ホルダと、
前記第1点火部の周囲に第1伝火室を規定するように前記第1点火部の周囲に設けられた第1伝火室形成部材と、
前記第1伝火室内に充填された第1伝火薬と、
第2点火部を有する第2点火器と、
前記下壁のうち前記第1ホルダから離間した部位に固定されており、前記第2点火器を保持する第2ホルダと、
前記ハウジング内の空間を、前記上壁に面する第1燃焼室と前記下壁に面する第2燃焼室とに仕切る仕切部材と、
前記第1燃焼室に充填された第1ガス発生剤と、
前記第2燃焼室に充填された第2ガス発生剤と、を備え、
前記ハウジングには、前記第1燃焼室を外部に連通させるガス噴出孔が設けられており、
前記第1伝火室形成部材は、
前記第1ホルダを包囲する第1包囲筒と、
前記第1包囲筒の外形よりも小さな外形を有する小筒部と、
前記第1包囲筒と前記小筒部とを連結する連結部と、を有し、
前記仕切部材には、前記小筒部の挿通を許容し、かつ、前記連結部の挿通を禁止する形状を有する挿通孔が設けられており、
前記第1包囲筒および前記連結部は、前記第2燃焼室に配置されており、
前記小筒部は、前記挿通孔に挿通された状態で前記第1燃焼室に配置されており、
前記仕切部材は、前記挿通孔の周囲に形成された隙間形成部を有し、
前記仕切部材は、前記隙間形成部が前記連結部に密着することで前記第1燃焼室と前記第2燃焼室との連通を遮断する遮断姿勢と、前記隙間形成部が前記連結部から離間することで前記第1燃焼室と前記第2燃焼室との連通を許容する隙間形成姿勢と、の間で変形可能であり、
前記第1伝火室形成部材は、前記第1伝火薬の燃焼時に前記第1伝火室を前記第1燃焼室に開放し、
前記仕切部材は、前記第1ガス発生剤の燃焼に伴う前記第1燃焼室の圧力上昇を受けて前記遮断姿勢をとり、前記第2ガス発生剤の燃焼に伴う前記第2燃焼室の圧力上昇を受けて前記隙間形成姿勢をとる、ガス発生器。
【請求項2】
前記第2燃焼室に設けられており、前記第1ガス発生剤の燃焼時における前記仕切部材の前記第2燃焼室側への変形を規制するように前記仕切部材を支持する支持部材をさらに備える、請求項1に記載のガス発生器。
【請求項3】
第2伝火薬をさらに備え、
前記支持部材は、前記仕切部材と当接または近接する支持部を含むとともに、前記第2点火部の周囲に第2伝火室を規定するように前記第2点火部の周囲を取り囲む形状を有し、
前記第2伝火薬は、前記第2伝火室に充填されており、
前記支持部材は、前記第2伝火薬の燃焼時に当該第2伝火薬の燃焼により生じた火炎が前記第2伝火室から前記第2燃焼室に至るのを許容する、請求項2に記載のガス発生器。
【請求項4】
前記支持部材は、前記第2ホルダを包囲する第2包囲筒をさらに有し、
前記支持部は、前記第2包囲筒の開口を塞ぐように前記第2包囲筒に接続されており、
前記第2包囲筒には、前記第2伝火室を前記第2燃焼室に連通させる貫通孔が設けられている、請求項3に記載のガス発生器。
【請求項5】
前記第1燃焼室に設けられており、前記第1ガス発生剤および前記第2ガス発生剤の燃焼により生じるガスを冷却するフィルタであって、筒状に形成された前記フィルタをさらに備え、
前記仕切部材は、前記下壁と前記上壁とを結ぶ方向に沿って見た場合に前記第1包囲筒および前記第2包囲筒の周囲を全域にわたって取り囲む形状を有し、かつ、前記方向と直交する方向に前記第1包囲筒および前記第2包囲筒と重なる位置で前記フィルタを支持するフィルタ支持部を有する、請求項4に記載のガス発生器。
【請求項6】
前記仕切部材は、
前記ハウジング内の前記空間を前記第1燃焼室と前記第2燃焼室とに仕切っており、かつ、前記挿通孔が設けられた仕切部と、
前記仕切部の縁部から前記第2燃焼室側に突出する縁部突出部と、を有し、
前記ハウジングは、前記縁部突出部を受ける受け部を有する、請求項1から5のいずれかに記載のガス発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガス発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等に搭載されるエアバッグ装置に用いられるガス発生器が知られている。たとえば、特開2018-75985号公報(以下、「特許文献1」という。)には、ハウジングと、第1点火器と、内筒部材と、第1閉塞部材と、第2点火器と、隔壁と、第2閉塞部材と、を備えるガス発生器が開示されている。第1点火器は、ハウジングの底板に固定されている。内筒部材は、第1点火器を収容しており、第1点火器の周囲に伝火室を規定している。この伝火室には、伝火薬が充填されている。内筒部材の上部には、第2端開口部が形成されており、この第2端開口部が第1閉塞部材により閉塞されている。第2点火器は、ハウジングの底板のうち第1点火器から離間した部位に固定されている。隔壁は、ハウジング内を、ハウジングの天板側に設けられた第1燃焼室と、ハウジングの底板側に設けられた第2燃焼室と、に上下に仕切っている。第1燃焼室には、第1ガス発生剤が充填されており、第2燃焼室には、第2ガス発生剤が充填されている。隔壁には、内筒部材を挿通させる貫通孔が設けられており、内筒部材は、貫通孔に挿通された状態で第1燃焼室と第2燃焼室とにまたがるように配置されている。このため、内筒部材内の伝火室は、第2端開口部を介して第1燃焼室に連通している。また、隔壁には、第1燃焼室と第2燃焼室とを連通させる第2連通孔が設けられており、この第2連通孔が金属製の粘着テープ等からなる第2閉塞部材により閉塞されている。
【0003】
このガス発生器において、第1点火器が点火されると、内筒部材内に充填された伝火薬が燃焼する。これにより、第1閉塞部材が破裂し、第2端開口部および貫通孔を通じて火炎が第1燃焼室に至る。そうすると、第1ガス発生剤が燃焼するため、その燃焼により生じたガスが、ガス排出口を通じて外部に噴出される。これにより、エアバッグが膨張する。なお、このとき、第2閉塞部材は、第2連通孔を閉塞させた状態に維持される。
【0004】
続いて、第2点火器が点火されると、第2燃焼室において第2ガス発生剤が燃焼する。そうすると、第2燃焼室の圧力が高まるため、第2閉塞部材が第2連通孔を開放する。このため、第2ガス発生剤の燃焼により生じたガスは、第2連通孔、第1燃焼室およびガス排出口を通じて外部に噴出される。これにより、エアバッグの膨張状態が維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-75985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されるガス発生器では、第1ガス発生剤の燃焼時に生じる火炎が第1燃焼室から第2燃焼室へ至るのを阻止するとともに、第2ガス発生剤の燃焼時に生じるガスが第2燃焼室から第1燃焼室へ流出するのを許容するために、隔壁に第2連通孔が形成され、この第2連通孔が第2閉塞部材により閉塞されている。この構造は、連通孔を塞ぐための専用部材を必要とする複雑な構造であり、製造工程も複雑になる。
【0007】
本発明の目的は、第1燃焼室と第2燃焼室とを連通させる連通孔を塞ぐ専用部材を用いることなく、第1ガス発生剤の燃焼時に生じる火炎が第1燃焼室から第2燃焼室へ至るのを阻止することと、第2ガス発生剤の燃焼時に生じるガスが第2燃焼室から第1燃焼室へ流出するのを許容することと、の双方を達成可能なガス発生器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に基づくガス発生器は、互いに対向する下壁および上壁を有するハウジングと、第1点火部を有する第1点火器と、前記下壁に固定されており、前記第1点火器を保持する第1ホルダと、前記第1点火部の周囲に第1伝火室を規定するように前記第1点火部の周囲に設けられた第1伝火室形成部材と、前記第1伝火室内に充填された第1伝火薬と、第2点火部を有する第2点火器と、前記下壁のうち前記第1ホルダから離間した部位に固定されており、前記第2点火器を保持する第2ホルダと、前記ハウジング内の空間を、前記上壁に面する第1燃焼室と前記下壁に面する第2燃焼室とに仕切る仕切部材と、前記第1燃焼室に充填された第1ガス発生剤と、前記第2燃焼室に充填された第2ガス発生剤と、を備える。前記ハウジングには、前記第1燃焼室を外部に連通させるガス噴出孔が設けられている。前記第1伝火室形成部材は、前記第1ホルダを包囲する第1包囲筒と、前記第1包囲筒の外形よりも小さな外形を有する小筒部と、前記第1包囲筒と前記小筒部とを連結する連結部と、を有する。前記仕切部材には、前記小筒部の挿通を許容し、かつ、前記連結部の挿通を禁止する形状を有する挿通孔が設けられている。前記第1包囲筒および前記連結部は、前記第2燃焼室に配置されている。前記小筒部は、前記挿通孔に挿通された状態で前記第1燃焼室に配置されている。前記仕切部材は、前記挿通孔の周囲に形成された隙間形成部を有する。前記仕切部材は、前記隙間形成部が前記連結部に密着することで前記第1燃焼室と前記第2燃焼室との連通を遮断する遮断姿勢と、前記隙間形成部が前記連結部から離間することで前記第1燃焼室と前記第2燃焼室との連通を許容する隙間形成姿勢と、の間で変形可能である。前記第1伝火室形成部材は、前記第1伝火薬の燃焼時に前記第1伝火室を前記第1燃焼室に開放する。前記仕切部材は、前記第1ガス発生剤の燃焼に伴う前記第1燃焼室の圧力上昇を受けて前記遮断姿勢をとり、前記第2ガス発生剤の燃焼に伴う前記第2燃焼室の圧力上昇を受けて前記隙間形成姿勢をとる。
【0009】
上記本発明に基づくガス発生にあっては、前記第2燃焼室に設けられており、前記第1ガス発生剤の燃焼時における前記仕切部材の前記第2燃焼室側への変形を規制するように前記仕切部材を支持する支持部材をさらに備えることが好ましい。
【0010】
上記本発明に基づくガス発生にあっては、第2伝火薬をさらに備えていてもよい。その場合には、前記支持部材は、前記仕切部材と当接または近接する支持部を含むとともに、前記第2点火部の周囲に第2伝火室を規定するように前記第2点火部の周囲を取り囲む形状を有し、前記第2伝火薬は、前記第2伝火室に充填されており、前記支持部材は、前記第2伝火薬の燃焼時に当該第2伝火薬の燃焼により生じた火炎が前記第2伝火室から前記第2燃焼室に至るのを許容することが好ましい。
【0011】
上記本発明に基づくガス発生にあっては、前記支持部材は、前記第2ホルダを包囲する第2包囲筒をさらに有していてもよい。その場合には、前記支持部は、前記第2包囲筒の開口を塞ぐように前記第2包囲筒に接続されており、前記第2包囲筒には、前記第2伝火室を前記第2燃焼室に連通させる貫通孔が設けられていることが好ましい。
【0012】
上記本発明に基づくガス発生にあっては、前記第1燃焼室に設けられており、前記第1ガス発生剤および前記第2ガス発生剤の燃焼により生じるガスを冷却するフィルタであって、筒状に形成された前記フィルタをさらに備えていてもよい。その場合には、前記仕切部材は、前記下壁と前記上壁とを結ぶ方向に沿って見た場合に前記第1包囲筒および前記第2包囲筒の周囲を全域にわたって取り囲む形状を有し、かつ、前記方向と直交する方向に前記第1包囲筒および前記第2包囲筒と重なる位置で前記フィルタを支持するフィルタ支持部を有することが好ましい。
【0013】
上記本発明に基づくガス発生にあっては、前記仕切部材は、前記ハウジング内の前記空間を前記第1燃焼室と前記第2燃焼室とに仕切っており、かつ、前記挿通孔が設けられた仕切部と、前記仕切部の縁部から前記第2燃焼室側に突出する縁部突出部と、を有し、前記ハウジングは、前記縁部突出部を受ける受け部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
以上に説明したように、この発明によれば、第1燃焼室と第2燃焼室とを連通させる連通孔を塞ぐ専用部材を用いることなく、第1ガス発生剤の燃焼時に生じる火炎が第1燃焼室から第2燃焼室へ至るのを阻止することと、第2ガス発生剤の燃焼時に生じるガスが第2燃焼室から第1燃焼室へ流出するのを許容することと、の双方を達成可能なガス発生器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態のガス発生器の断面図である。
図2図1に示されるガス発生器の第2ガス発生剤の燃焼時の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態のガス発生器の断面図である。図1に示されるように、ガス発生器1は、ハウジング10と、第1点火器100と、第1ホルダ110と、第1伝火室形成部材120と、第1伝火薬130と、第1ガス発生剤140と、第2点火器200と、第2ホルダ210と、支持部材220と、第2伝火薬230と、第2ガス発生剤240と、仕切部材300と、フィルタ400と、クッション材500と、保持部材600と、を備えている。
【0018】
ハウジング10は、第1ガス発生剤140および第2ガス発生剤240の燃焼空間を有している。ハウジング10は、下側シェル20と、上側シェル30と、を有している。下側シェル20および上側シェル30は、たとえば圧延された金属製の板状部材をプレス加工することによって形成されたプレス成形品からなる。下側シェル20および上側シェル30を構成する金属製の板状部材としては、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等からなる金属板が利用され、好適には440[MPa]以上780[MPa]以下の引張応力が印加された場合にも破断等の破損が生じないいわゆる高張力鋼板が利用される。
【0019】
下側シェル20は、下壁22と、下側周壁24と、を有している。
下壁22は、平板状に形成されている。本実施形態では、下壁22は、円板状に形成されている。下壁22には、第1ホルダ110を取り付けるための第1取付穴22aと、第2ホルダ210を取り付けるための第2取付穴22bと、が設けられている。第1取付穴22aは、下壁22の中心の一方側に設けられており、第2取付穴22bは、下壁22の中心の他方側(第1取付穴22aの側方)に設けられている。
【0020】
下側周壁24は、円筒状に形成されており、下壁22に接続されている。下側周壁24は、小径部25と、大径部26と、受け部27と、を有している。小径部25は、下壁22の外縁部から起立する形状を有している。大径部26は、小径部25の径よりも大きな径を有している。受け部27は、小径部25の中心軸と大径部26の中心軸とが一直線上に並ぶように、小径部25と大径部26とを接続している。受け部27は、小径部25から大径部26に向かうにしたがって次第に拡径する形状を有している。受け部27は、仕切部材300を受ける。
【0021】
上側シェル30は、上壁32と、上側周壁34と、フランジ36と、を有している。
上壁32は、平板状に形成されている。本実施形態では、上壁32は、円板状に形成されている。上壁32は、下壁22と対向している。
【0022】
上側周壁34は、上壁32の外縁部から下壁22側に向かって延びる形状を有している。上側周壁34は、円筒状に形成されている。上側周壁34の内径は、大径部26の外径よりもわずかに小さく形成されている。換言すれば、大径部26は、上側周壁34に圧入されている。上側周壁34および大径部26の境界部は、溶接などにより接合されている。
【0023】
上側周壁34には、第1ガス発生剤140および第2ガス発生剤240の燃焼時に生じるガスを外部に噴出させるためのガス噴出孔34hが設けられている。ガス噴出孔34hは、後述の第1燃焼室S11を外部に連通させている。このガス噴出孔34hは、シール部材としての金属製のシールテープ35により塞がれている。このシールテープ35としては、片面に粘着部材が塗布されたアルミニウム箔等が好適に利用でき、当該シールテープ35によってハウジング10の内部の空間の気密性が確保されている。
【0024】
フランジ36は、上側周壁34の外周面から上側周壁34の径方向の外向きに張り出す形状を有している。フランジ36は、エアバッグ装置に設けられたリテーナなどに固定される。
【0025】
第1点火器100は、火炎を発生させるためのものである。第1点火器100は、第1基部102と、第1点火部104と、一対の第1端子ピン106と、を有している。
【0026】
第1点火部104は、第1基部102に支持されている。第1点火部104は、スクイブカップと、スクイブカップ内に充填されており点火されることにより燃焼する点火薬と、この点火薬を着火させるための抵抗体(ブリッジワイヤ)と、を有している。スクイブカップは、一般に金属製またはプラスチック製である。抵抗体としては、一般にニクロム線等が利用される。点火薬としては一般にZPP(ジルコニウム・過塩素酸カリウム)、ZWPP(ジルコニウム・タングステン・過塩素酸カリウム)、鉛トリシネート等が利用される。
【0027】
一対の第1端子ピン106は、第1基部102に保持されており、第1点火部104に接続されている。具体的には、一対の第1端子ピン106は、当該一対の第1端子ピン106の端部がスクイブカップ内において抵抗体に接続された状態で第1基部102に保持されている。
【0028】
第1ホルダ110は、下壁22に固定されている。具体的に、第1ホルダ110は、第1取付穴22aに挿入された状態で下壁22に固定されている。第1ホルダ110と下壁22との境界部は、溶接などにより接合されている。第1ホルダ110は、第1点火器100を保持している。第1ホルダ110は、ステンレス鋼、鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属材料からなる。第1ホルダ110は、第1基部保持部112と、かしめ部113と、端子ピン包囲部114と、を有している。
【0029】
第1基部保持部112は、第1基部102を保持する部位である。第1基部保持部112は、第1基部102を受け入れ可能な凹部を有している。かしめ部113は、第1基部保持部112に保持された第1基部102をかしめ固定している。第1基部保持部112と第1基部102との間には、シール材(Oリング等)が設けられている。
【0030】
端子ピン包囲部114は、一対の第1端子ピン106を包囲する形状を有している。端子ピン包囲部114は、第1基部保持部112の下部に接続されている。端子ピン包囲部114は、第1取付穴22a内に挿入されている。端子ピン包囲部114は、下向きに開口する形状を有している。
【0031】
第1伝火室形成部材120は、第1点火部104の周囲に第1伝火室S10を規定するように第1点火部104の周囲に設けられている。第1伝火室形成部材120は、第1包囲筒122と、小筒部124と、連結部126と、閉塞部128と、を有している。
【0032】
第1包囲筒122は、第1ホルダ110を包囲している。第1包囲筒122は、円筒状に形成されている。第1包囲筒122の内径は、第1ホルダ110の外径よりもわずかに小さく設定されている。つまり、第1包囲筒122内に第1ホルダ110が圧入されている。第1包囲筒122の下端部は、端子ピン包囲部114に当接している。第1包囲筒122は、第1ホルダ110の上端部よりも上壁32側に突出する形状を有している。
【0033】
小筒部124は、第1包囲筒122の外形よりも小さな外形を有している。具体的に、小筒部124の径は、第1包囲筒122の径よりも小さい。小筒部124は、第1伝火室S10を第1燃焼室S11に開放する開口を有している。
【0034】
連結部126は、第1包囲筒122と小筒部124とを連結している。連結部126の外側面は、平坦に形成されている。連結部126の外側面は、下壁22と平行である。第1包囲筒122、小筒部124および連結部126は、第1伝火薬130および第1ガス発生剤140の燃焼時に破断しない強度を有している。たとえば、第1包囲筒122、小筒部124および連結部126は、ステンレス鋼、鉄鋼、ステンレス合金等の金属材料からなる。
【0035】
閉塞部128は、小筒部124の開口を塞ぐ形状を有している。閉塞部128は、小筒部124の上端部に接続されている。閉塞部128は、第1伝火薬130の燃焼時に破裂または溶融する部材からなる。たとえば、閉塞部128は、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属製の薄膜状の部材や、エポキシ樹脂等に代表される熱硬化性樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂(たとえばナイロン6やナイロン66等)、ポリプロピレンスルフィド樹脂、ポリプロピレンオキシド樹脂等に代表される熱可塑性樹脂等の樹脂製の薄膜状の部材からなる。
【0036】
第1伝火薬130は、第1伝火室S10に充填されている。第1伝火薬130としては、第1ガス発生剤140を確実に燃焼させることができるものであることが必要であり、一般的には、B/KNO3、B/NaNO3、Sr(NO32等に代表される金属粉/酸化剤からなる組成物や、水素化チタン/過塩素酸カリウムからなる組成物、B/5-アミノテトラゾール/硝酸カリウム/三酸化モリブデンからなる組成物等が用いられる。第1伝火薬130としては、粉状のものや、バインダによって所定の形状に成形されたもの等が利用される。バインダによって成形された第1伝火薬130の形状としては、たとえば顆粒状、円柱状、シート状、球状、単孔円筒状、多孔円筒状、タブレット状など種々の形状がある。第1伝火薬130は、第1点火器100の作動時に生じた火炎によって点火される。第1伝火薬130の燃焼により、熱粒子が生じる。第1伝火薬130の燃焼により、閉塞部128が破裂または溶融するため、第1伝火室S10が第1燃焼室S11に開放される。
【0037】
第2点火器200は、火炎を発生させるためのものである。第2点火器200の構成は、第1点火器100の構成と基本的に同じである。そのため、第2点火器200の説明は省略する。第2点火器200は、第2基部202と、第2点火部204と、一対の第2端子ピン206と、を有している。
【0038】
第2ホルダ210は、下壁22に固定されている。具体的に、第2ホルダ210は、第2取付穴22bに挿入された状態で下壁22に固定されている。第2ホルダ210と下壁22との境界部は、溶接などにより接合されている。第2ホルダ210の構成は、第1ホルダ110の構成と基本的に同じである。そのため、第2ホルダ210の説明は省略する。すなわち、第2ホルダ210は、第2基部保持部212と、かしめ部213と、端子ピン包囲部214と、を有している。
【0039】
仕切部材300は、ハウジング10内の空間を、上壁32に面する第1燃焼室S11と下壁22に面する第2燃焼室S21とに仕切っている。第1燃焼室S11に第1ガス発生剤140が充填されており、第2燃焼室S21に第2ガス発生剤240が充填されている。第1ガス発生剤140および第2ガス発生剤240については、後述する。仕切部材300は、ステンレス鋼、鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属材料からなる。仕切部材300は、仕切部310と、起立筒部320と、縁部突出部330と、を有している。仕切部材300は、プレス成形により形成可能である。
【0040】
仕切部310は、ハウジング10内の空間を第1燃焼室S11と第2燃焼室S21とに仕切っている。仕切部310は、平板部312と、フィルタ支持部314と、を有している。
【0041】
平板部312は、平板状に形成されている。平板部312には、挿通孔312hが設けられている。挿通孔312hは、小筒部124の挿通を許容し、かつ、連結部126の挿通を禁止する形状を有している。挿通孔312hは、円形に形成されている。挿通孔312hの径は、小筒部124の外径よりも大きく、連結部126(第1包囲筒122)の外径よりも小さい。小筒部124は、この挿通孔312hに挿通された状態で第1燃焼室S11に配置されている。第1包囲筒122および連結部126は、第2燃焼室S21に配置されている。
【0042】
平板部312は、挿通孔312hの周囲に形成された隙間形成部313を有している。隙間形成部313は、平板部312のうち下壁22と上壁32とを結ぶ方向に連結部126と重なる位置に設けられている。なお、隙間形成部313は、第1ガス発生剤140の燃焼前において、連結部126に当接していてもよいし、連結部126からわずかに離間していてもよい。
【0043】
仕切部材300は、遮断姿勢と、隙間形成姿勢(図2に示される姿勢)と、の間で変形可能である。図2は、図1に示されるガス発生器の第2ガス発生剤の燃焼時の状態を示す断面図である。
【0044】
遮断姿勢は、隙間形成部313が連結部126に密着することにより、第1燃焼室S11と第2燃焼室S21との連通を遮断する姿勢である。より詳細には、遮断姿勢は、隙間形成部313が連結部126に密着することにより、第1ガス発生剤140の燃焼により生じた火炎が第1燃焼室S11から第2燃焼室S21に至るのを遮断する姿勢である。
【0045】
隙間形成姿勢は、隙間形成部313が連結部126から離間することにより、第1燃焼室S11と第2燃焼室S21との連通を許容する姿勢である。より詳細には、隙間形成姿勢は、隙間形成部313が連結部126から離間することにより、第2ガス発生剤240の燃焼により生じたガスの第2燃焼室S21から第1燃焼室S11への流入を許容する隙間G(図2を参照)を隙間形成部313と連結部126との間に形成する姿勢である。
【0046】
フィルタ支持部314については、後述する。
起立筒部320は、平板部312のうち挿通孔312hの周囲の部位から上壁32に向かって起立する形状を有している。起立筒部320は、円筒状に形成されている。起立筒部320の軸方向における当該起立筒部320の長さは、小筒部124の軸方向における当該小筒部124の長さよりも小さい。なお、この起立筒部320は、省略されてもよい。
【0047】
縁部突出部330は、仕切部310の縁部から第2燃焼室S21側(下壁22側)に突出する形状を有している。縁部突出部330は、円筒状に形成されている。縁部突出部330の外径は、大径部26の内径にほぼ等しく設定されている。縁部突出部330は、下側周壁24の受け部27に受けられている。
【0048】
ここで、第1ガス発生剤140および第2ガス発生剤240について説明する。第1ガス発生剤140および第2ガス発生剤240としては、非アジド系ガス発生剤を用いることが好ましく、一般に燃料と酸化剤と添加剤とを含む成形体としてこれら第1ガス発生剤140および第2ガス発生剤240が形成される。
【0049】
燃料としては、たとえばトリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、グアニジン誘導体、アゾジカルボンアミド誘導体、ヒドラジン誘導体等またはこれらの組み合わせが利用される。具体的には、たとえばニトログアニジンや硝酸グアニジン、シアノグアニジン、5-アミノテトラゾール等が好適に利用される。
【0050】
酸化剤としては、たとえば塩基性硝酸銅等の塩基性硝酸塩や、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、アンモニアから選ばれたカチオンを含む硝酸塩等が利用される。硝酸塩としては、たとえば硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等が好適に利用される。
【0051】
添加剤としては、バインダやスラグ形成剤、燃焼調整剤等が挙げられる。バインダとしては、たとえばポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースの金属塩、ステアリン酸塩等の有機バインダや、合成ヒドロタルサイト、酸性白土等の無機バインダが好適に利用可能である。また、この他にも、バインダとしては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ニトロセルロース、微結晶性セルロース、グアガム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、デンプン等の多糖誘導体や、二硫化モリブデン、タルク、ベントナイト、ケイソウ土、カオリン、アルミナ等の無機バインダも好適に利用可能である。スラグ形成剤としては、窒化珪素、シリカ、酸性白土等が好適に利用可能である。燃焼調整剤としては、金属酸化物、フェロシリコン、活性炭、グラファイト等が好適に利用可能である。
【0052】
ガス発生剤の成形体の形状には、顆粒状、ペレット状、円柱状等の粒状のもの、ディスク状のものなど様々な形状のものがある。また、円柱状のものでは、成形体内部に貫通孔を有する有孔状(たとえば単孔筒形状や多孔筒形状等)の成形体も利用される。これらの形状は、ガス発生器1が組み込まれるエアバッグ装置の仕様に応じて適宜選択されることが好ましく、たとえばガス発生剤の燃焼時においてガスの生成速度が時間的に変化する形状を選択するなど、仕様に応じた最適な形状を選択することが好ましい。また、ガス発生剤の形状の他にもガス発生剤の線燃焼速度、圧力指数などを考慮に入れて成形体のサイズや充填量を適宜選択することが好ましい。
【0053】
第1ガス発生剤140および第2ガス発生剤240は、それらの組成が同じものであってもよいし、それらの組成が異なるものであってもよい。また、第1ガス発生剤140および第2ガス発生剤240は、それらの形状や大きさが同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。
【0054】
支持部材220は、第2燃焼室S21に設けられている。支持部材220は、第1ガス発生剤140の燃焼時における仕切部材300の第2燃焼室S21側への変形を規制するように仕切部材300を支持する。本実施形態では、支持部材220は、第2点火部204の周囲に第2伝火室S20を規定するように第2点火部204の周囲を取り囲む形状を有している。つまり、支持部材220は、第2伝火室形成部材としての機能をも有している。具体的に、支持部材220は、第2包囲筒222と、支持部224と、を有している。支持部材220は、第2伝火薬230の燃焼時に破断しない強度を有している。支持部材220は、たとえば、ステンレス鋼、鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属材料からなる。
【0055】
第2包囲筒222は、第2ホルダ210を包囲している。第2包囲筒222は、円筒状に形成されている。第2包囲筒222の内径は、第2ホルダ210の外径よりもわずかに小さく設定されている。つまり、第2包囲筒222内に第2ホルダ210が圧入されている。第2包囲筒222の下端部は、下壁22に当接している。第2包囲筒222は、第2ホルダ210の上端部よりも上壁32側に位置する上筒部223を有している。
【0056】
上筒部223には、第2伝火室S20を第2燃焼室S21に連通させる貫通孔223hが設けられている。貫通孔223hは、上筒部223の周方向に沿って並ぶ複数箇所に設けられている。貫通孔223hは、第2伝火薬230が第2伝火室S20外に流出するのを阻止する大きさに設定されている。ただし、第2伝火薬230として、貫通孔223hを通過可能な粒径を有するものが用いられてもよい。この場合、貫通孔223hを塞ぐように、シールテープ等からなる薄膜状の部材であって、第2伝火薬230の燃焼時に第2伝火室S20を第2燃焼室S21に開放する前記部材が、第2包囲筒222の上筒部223に設けられてもよい。
【0057】
支持部224は、円板状に形成されており、上筒部223の上端部に接続されている。支持部224は、仕切部材300の平板部312と当接または近接する位置に配置されている。なお、この支持部224に貫通孔223hが設けられてもよい。
【0058】
第2伝火薬230は、第2伝火室S20に充填されている。第2伝火薬230としては、第2ガス発生剤240を確実に燃焼させることができるものであることが必要であり、第1伝火薬130と同様、ボロン系等の着火薬が好ましく用いられる。ただし、第2伝火薬230として、第2ガス発生剤240と同組成のものが用いられてもよい。第2伝火薬230は、第2点火器200の作動時に生じた火炎によって点火される。第2伝火薬230の燃焼により、熱粒子が生じる。
【0059】
フィルタ400は、第1燃焼室S11に設けられている。フィルタ400は、第1ガス発生剤140および第2ガス発生剤240の燃焼により生じるガスを冷却する。フィルタ400は、前記ガスに含まれる残渣(スラグ)等を除去する機能をも有している。フィルタ400は、第1包囲筒122および第2包囲筒222をまとめて包囲可能な大きさを有している。具体的に、フィルタ400は、円筒状に形成されている。フィルタ400として、ステンレス鋼や鉄鋼等の金属線材を巻き回して焼結したものや、金属線材の編み込みにより形成された網材をプレス加工することによって押し固められたもの等が好ましく用いられる。
【0060】
ここで、フィルタ支持部314について説明する。フィルタ支持部314は、フィルタ400を支持する部位であり、平板部312の縁部に接続されている。フィルタ支持部314は、下壁22と上壁32とを結ぶ方向に沿って見た場合に第1包囲筒122および第2包囲筒222の周囲を全域にわたって取り囲む形状を有している。フィルタ支持部314は、下壁22と上壁32とを結ぶ方向と直交する方向に第1包囲筒122および第2包囲筒222と重なる位置でフィルタ400を支持している。具体的に、フィルタ支持部314の上面は、フィルタ400の下面410に当接しており、フィルタ支持部314の外周面は、フィルタ400の内周面の下部430に当接している。なお、フィルタ400の上面420は、上壁32の内面に当接している。
【0061】
クッション材500は、ハウジング10の振動等に起因する第1ガス発生剤140の粉砕を抑制する部材である。クッション材500は、第1ガス発生剤140と上壁32との間に配置される。クッション材500は、好適には、セラミックスファイバの成形体やロックウール、発泡樹脂(発泡シリコーン、発泡ポリプレン、発泡ポリエチレン等)、クロロプレンおよびEPDMに代表されるゴムからなる部材によって構成される。クッション材500は、円板状ないし円柱状に形成されている。なお、クッション材500は、第1ガス発生剤140の燃焼によって焼失する。
【0062】
保持部材600は、フィルタ400の内側でクッション材500を保持する部材である。保持部材600は、第1ガス発生剤140および第2ガス発生剤240の燃焼により生じたガスがフィルタ400を通過することなくフィルタ400と上壁32との隙間からフィルタ400の外側に流出することを抑制する。具体的に、保持部材600は、円板部610と、円筒部620と、を有している。円板部610は、円板状に形成されており、クッション材500の上面と上壁32の内面との間に配置されている。円筒部620は、円板部610の外縁部から下壁22に向かって延びる形状を有しており、クッション材500の外周面とフィルタ400の内周面との間に配置されている。保持部材600は、たとえば、ステンレス鋼、鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の板状部材をプレス加工することによって形成される。
【0063】
次に、ガス発生器1の動作について説明する。
本ガス発生器1が搭載された車両が衝突した際、まず、車両に搭載されたコントロールユニットから第1点火器100に点火信号が送信されることにより、第1点火器100が作動する。具体的には、第1点火部104に充填された点火薬が抵抗体によって加熱されることで点火され、当該点火薬が燃焼することで第1点火部104のスクイブカップが破裂する。これにより、第1カップ部材140内に充填された第1伝火薬130が燃焼する。それにより、閉塞部128が破裂または溶融し、第1伝火室S10が第1燃焼室S11に開放される。
【0064】
そうすると、第1燃焼室S11内の第1ガス発生剤140が燃焼するため、その燃焼により生じたガスが、フィルタ400およびガス噴出孔34hを通じてハウジング10外に噴出される。このとき、ガスは、フィルタ400によって冷却され、ガスに含まれるスラグは、フィルタ400により除去される。第1ガス発生剤140が燃焼している間、第1燃焼室S11の圧力が上昇することにより、仕切部材300に対し、第1燃焼室S11から第2燃焼室S21に向かう方向の外力が作用するため、仕切部材300が遮断姿勢となる。このため、第1ガス発生剤140の燃焼により生じた火炎が第1燃焼室S11から第2燃焼室S21に至ることが阻止される。
【0065】
第1ガス発生剤140の燃焼により、クッション材500が焼失するとともに、上壁32および円板部610が外向きに膨出する形状に変形する。
【0066】
その後、第2点火器200が点火されると、第2伝火薬230が燃焼し、この燃焼により生じた火炎が、貫通孔223hを通じて第2伝火室S20から第2燃焼室S21に至る。そうすると、第2燃焼室S21内の第2ガス発生剤240が燃焼するため、第2燃焼室S21の圧力が上昇する。これにより、仕切部材300に対し、第2燃焼室S21から第1燃焼室S11に向かう方向の外力が作用するため、仕切部材300は、隙間形成姿勢(図2に示される姿勢)に変形する。このため、隙間形成部313および連結部126間の隙間Gを通じて、第2ガス発生剤240の燃焼により生じたガスが第1燃焼室S11へ流入する。
【0067】
以上のように、本ガス発生器1では、第1燃焼室S11と第2燃焼室S21とを連通させる連通孔を塞ぐ専用部材を用いることなく、第1ガス発生剤140の燃焼時に生じる火炎が第1燃焼室S11から第2燃焼室S21へ至るのを阻止することと、第2ガス発生剤240の燃焼時に生じるガスが第2燃焼室S21から第1燃焼室S11へ流出するのを許容することと、の双方を達成することが可能となる。
【0068】
また、ガス発生器1は、支持部材220を備えているため、第1ガス発生剤140の燃焼時における仕切部材300の変形ないし変位が抑制される。
【0069】
さらに、支持部材220は、第2点火部204の周囲に第2伝火室S20を規定しており、その第2伝火室S20に第2伝火薬230が充填されているため、第1燃焼室S11での第1ガス発生剤140の燃焼時における仕切部材300の変形の抑制に加え、第2ガス発生剤240の安定的な燃焼状態も確保される。
【0070】
また、仕切部材300は、フィルタ支持部314を有しているため、フィルタ400の体積を大きく確保することが可能となる。
【0071】
また、仕切部材300は、縁部突出部330を有しており、ハウジング10は、受け部27を有しているため、第1燃焼室S11での第1ガス発生剤140の燃焼時(仕切部材300に対する第1燃焼室S11から第2燃焼室S21に向かう方向の外力の作用時)における仕切部材300の変位が抑制される。
【0072】
なお、第1点火器100と第2点火器200とは、同時に点火されてもよい。この場合、第1燃焼室S11と第2燃焼室S21との圧力差等に起因して、仕切部材300に対する第1燃焼室S11から第2燃焼室S21に向かう方向の第1外力の方が、仕切部材300に対する第2燃焼室S21から第1燃焼室S11に向かう方向の第2外力よりも大きい間は、仕切部材300は遮断姿勢となり、逆に、第2外力の方が第1外力よりも大きい間は、仕切部材300は、隙間形成姿勢となる。
【0073】
また、上記実施形態において、支持部材220は、第1ガス発生剤140の燃焼時における仕切部材300の第2燃焼室S21側への変形を規制するように仕切部材300を支持するのであれば、第2伝火室S20を規定する形状に限られない。たとえば、支持部材220は、下壁22と仕切部材300との間、あるいは、第2ホルダ210と仕切部材300との間に設けられた柱状の部材で構成されてもよい。この場合、第2伝火薬230の代わりに第2ガス発生剤240が充填される。
【0074】
あるいは、上記実施形態において、支持部材220は、省略されてもよい。この場合においても、第2伝火薬230の代わりに第2ガス発生剤240が充填される。
【0075】
また、上記実施形態では、第1点火器100および第2点火器200は、それぞれ金属製の第1ホルダ110および第2ホルダ210を介してハウジング10の下壁22に組付けられるように構成された例が示されたが、これら第1点火器100および第2点火器200の双方は、いわゆるインサート成形によって下壁22に組付けられるように構成されてもよい。その場合には、ガス発生器1は、上述した第1ホルダ110および第2ホルダ210に代えて、樹脂成形部からなる第1保持部および第2保持部を有することになり、第1点火器100および第2点火器200は、それぞれこれら第1保持部および第2保持部を介して下壁22に組付けられることになる。
【0076】
具体的には、第1保持部および第2保持部は、型を用いた射出成形によって形成される。射出成形によって形成される第1保持部および第2保持部の原料としては、硬化後において耐熱性や耐久性、耐腐食性等に優れた樹脂材料が好適に選択されて利用される。その場合、エポキシ樹脂等に代表される熱硬化性樹脂に限られず、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂(たとえばナイロン6やナイロン66等)、ポリプロピレンスルフィド樹脂、ポリプロピレンオキシド樹脂等に代表される熱可塑性樹脂を利用することも可能である。これら熱可塑性樹脂を原材料として選択する場合には、成形後において第1保持部および第2保持部の機械的強度を確保するために、これら樹脂材料にガラス繊維等をフィラーとして含有させることが好ましい。しかしながら、熱可塑性樹脂のみで十分な機械的強度が確保できる場合には、上述の如くのフィラーを添加する必要はない。
【0077】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0078】
1 ガス発生器、10 ハウジング、20 下側シェル、22 下壁、22a 第1取付穴、22b 第2取付穴、24 下側周壁、25 小径部、26 大径部、27 受け部、30 上側シェル、32 上壁、34 上側周壁、34h ガス噴出孔、36 フランジ、100 第1点火器、102 第1基部、104 第1点火部、106 第1端子ピン、110 第1ホルダ、112 第1基部保持部、113 かしめ部、114 端子ピン包囲部、120 第1伝火室形成部材、122 第1包囲筒、124 小筒部、126 連結部、128 閉塞部、130 第1伝火薬、140 第1ガス発生剤、200 第2点火器、202 第2基部、204 第2点火部、206 第2端子ピン、210 第2ホルダ、212 第2基部保持部、213 かしめ部、214 端子ピン包囲部、220 支持部材、222 第2包囲筒、223 上筒部、223h 貫通孔、224 支持部、230 第2伝火薬、240 第2ガス発生剤、300 仕切部材、310 仕切部、312 平板部、312h 挿通孔、313 隙間形成部、314 フィルタ支持部、320 起立筒部、330 縁部突出部、400 フィルタ、500 クッション材、600 保持部材、S10 第1伝火室、S11 第1燃焼室、S20 第2伝火室、S21 第2燃焼室。
図1
図2