(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】回路遮断器
(51)【国際特許分類】
H01H 73/20 20060101AFI20220610BHJP
【FI】
H01H73/20 A
(21)【出願番号】P 2018202136
(22)【出願日】2018-10-26
【審査請求日】2021-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕明
(72)【発明者】
【氏名】山中 佑太
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-45395(JP,A)
【文献】実開平2-69448(JP,U)
【文献】特開2013-152846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 69/00 - 69/01
H01H 71/00 - 83/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路遮断器であって、
電路を構成する外部配線と繋がる座部分、可動接触子と接触及び離隔することにより前記電路の導通及び遮断を切り替える固定接触子部分、及び前記座部分と前記固定接触子部分とを接続する接続部分、を有する端子金具と、
前記座部分に対応するように設けられている座保持面、及び前記固定接触子部分に対応するように設けられている接触子保持面が形成され、前記端子金具が組付位置に組み付けられる基台と、を備え、
前記端子金具を前記組付位置に組み付けるため、前記座部分を前記座保持面に沿わせて移動させるにあたって、
前記座保持面が形成された部分を前記座部分との間で挟み込むことで、前記座部分が前記座保持面から離れないように移動を規制する第1移動規制部分と、
前記固定接触子部分の少なくとも一部と前記座部分との相対的な位置関係を一時的に変化させた後に復旧方向に戻すことで、前記固定接触子部分が前記接触子保持面に対応する位置からずれないように移動を規制する第2移動規制部分と、が設けられている、回路遮断器。
【請求項2】
請求項1に記載の回路遮断器であって、
前記固定接触子部分の少なくとも一部が、前記接触子保持面が形成された部分に当接することで、前記固定接触子部分の少なくとも一部と前記座部分との相対的な位置関係が一時的に変化する、回路遮断器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回路遮断器であって、
前記接続部分が一時的に撓むことで、前記固定接触子部分の少なくとも一部と前記座部分との相対的な位置関係が一時的に変化した後に復旧方向に戻る、回路遮断器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の回路遮断器であって、
前記第2移動規制部分は、
前記固定接触子部分が前記接触子保持面に対向する場所に設けられた突起部と、
前記接触子保持面に形成され前記突起部が入り込み、前記突起部の周囲に側壁が当接する嵌合孔と、を含む、回路遮断器。
【請求項5】
請求項4に記載の回路遮断器であって、
前記突起部は、前記固定接触子部分の他の部分に対して撓むことができるように構成されている、回路遮断器。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか1項に記載の回路遮断器であって、
前記第2移動規制部分は、
前記基台において前記接触子保持面の周囲から突出するように設けられた爪部と、
前記固定接触子部分において前記爪部と当接し、前記端子金具を前記組付位置に組み付けるために移動させる方向とは反対側に設けられた当接面と、を含む、回路遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回路遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、安全性確保のため、電源と負荷との間の導通を遮断する回路遮断器がある。例えば、下記特許文献1には、電路上に設けられた固定接点と可動接点とを接触及び離隔させることにより、当該電路の導通及び遮断を切り替える回路遮断器が開示されている。この回路遮断器において、固定接点を含む固定接触子は、消弧グリッド組立体の内部に収容されつつ、上下方向に自由に摺動するようにケースに組み込まれている。カバーがケースに取り付けられると、カバーから延びる突起により消弧グリッド組立体が押さえられ、これにより消弧グリッド組立体を介して固定接触子がケースに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の回路遮断器では、カバーをケースに取り付けなければ固定接触子の上下方向の摺動を押さえることができない。従って、回路遮断器の製造工程の途中においては固定接触子がケースに固定されず、固定接触子が消弧グリッド組立体とともに動き得るので、組み立て作業が煩雑となる。他方、例えば固定接触子といった端子金具をねじによりケースに固定しようとすると、ねじの締結作業が必要となり、部品及び作業工程が増える。
【0005】
本開示は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、他の部材を用いることなく端子金具が基台に組み付けられ、かつ基台に対する端子金具の移動が規制される回路遮断器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、回路遮断器は、電路を構成する外部配線と繋がる座部分、可動接触子と接触及び離隔することにより電路の導通及び遮断を切り替える固定接触子部分、及び座部分と固定接触子部分とを接続する接続部分、を有する端子金具と、座部分に対応するように設けられている座保持面、及び固定接触子部分に対応するように設けられている接触子保持面が形成され、端子金具が組付位置に組み付けられる基台と、を備え、端子金具を組付位置に組み付けるため、座部分を座保持面に沿わせて移動させるにあたって、座保持面が形成された部分を座部分との間で挟み込むことで、座部分が座保持面から離れないように移動を規制する第1移動規制部分と、固定接触子部分の少なくとも一部と座部分との相対的な位置関係を一時的に変化させた後に復旧方向に戻すことで、固定接触子部分が接触子保持面に対応する位置からずれないように移動を規制する第2移動規制部分と、が設けられている。
【0007】
本開示では、端子金具を基台の組付位置に組み付けるために、座部分を座保持面に沿わせて移動させる。この移動にあたって、第1移動規制部分は、座保持面が形成された部分を座部分との間で挟み込み、座部分が座保持面から離れないように規制することができる。更にこの移動にあわせて、第2移動規制部分は、固定接触子部分の少なくとも一部と座部分との相対的な位置関係を一時的に変化させた後に復旧方向に戻す。このような位置関係の一時的な変化によって、固定接触子部分と接触子保持面が形成された部分とが嵌合する状態を形成することができ、固定接触子部分が接触子保持面に対応する位置からずれないように規制することができる。座部分と固定接触子部分とは接続部分で接続されているので、固定接触子部分が接触子保持面に対応する位置からずれないように規制される効果が座部分に伝達され、座部分も座保持面に対応する位置からずれないように規制される。座部分を座保持面に沿わせて移動させることで、第1移動規制部分と第2移動規制部分とが連動して移動規制を行い、一動作で端子金具を組付位置に組み付けることができる。
【0008】
本開示において、固定接触子部分の少なくとも一部が、接触子保持面が形成された部分に当接することで、固定接触子部分の少なくとも一部と座部分との相対的な位置関係が一時的に変化してもよい。
【0009】
この好ましい態様によれば、端子金具を組付位置に組み付けるため、座部分を座保持面に沿わせて移動させるにあたって、固定接触子部分の少なくとも一部は接触子保持面が形成された部分に当接する。この当接に伴って、固定接触子部分の少なくとも一部と座部分との相対的な位置関係が一時的に変化するので、端子金具を組付位置に組み付けるための動作を行うことで第2移動規制部分を作動させることができ、組付作業が容易なものとなる。
【0010】
本開示において、接続部分が一時的に撓むことで、固定接触子部分の少なくとも一部と座部分との相対的な位置関係が一時的に変化した後に復旧方向に戻ってもよい。
【0011】
この好ましい態様によれば、接続部分の撓み動作によって固定接触子部分の少なくとも一部と座部分との相対的な位置関係が一時的に変化するので、固定接触子部分のみが撓む場合に比べて撓みのストロークをより大きく確保することが容易なものとなる。
【0012】
本開示において、第2移動規制部分は、固定接触子部分が接触子保持面に対向する場所に設けられた突起部と、接触子保持面に形成され突起部が入り込み、突起部の周囲に側壁が当接する嵌合孔と、を含んでいてもよい。
【0013】
この好ましい態様によれば、端子金具が基台に組み付けられた状態において、端子金具の固定接触子部分に形成された突起部が基台の嵌合孔にはまるため、1つの構造により突起部の周囲に側壁が当接する方向の移動を規制することができる。突起部の周囲に側壁が当接する方向は任意に設けることができるため、例えば、複数の方向において当接個所を設けることで、複数の方向における移動を規制することができる。
【0014】
本開示において、突起部は、固定接触子部分の他の部分に対して撓むことができるように構成されていてもよい。
【0015】
このように、突起部を固定接触子の他の部分に対して撓むことができるように構成することで、突起部の嵌合孔への入り込みを容易に行うことができる。
【0016】
本開示において、第2移動規制部分は、基台において接触子保持面の周囲から突出するように設けられた爪部と、固定接触子部分において爪部と当接し、端子金具を組付位置に組み付けるために移動させる方向とは反対側に設けられた当接面と、を含んでいてもよい。
【0017】
この好ましい態様によれば、第2移動規制部分を爪部と当接面とによって構成することができるので、簡便な構造で移動規制を行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、他の部材を用いることなく端子金具が基台に組み付けられ、かつ基台に対する端子金具の移動が規制される回路遮断器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係る回路遮断器の部分的な断面を示す部分断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示される電源側端子金具の斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示される電源側端子金具の側面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示される電源側端子金具の斜視図である。
【
図5】
図5は、
図1に示される基台に組み付けられた電源側端子金具を示す斜視断面図である。
【
図6】
図6は、
図1に示される電源側端子金具の第1変形例を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、
図1に示される電源側端子金具の第2変形例を基台に組み付けた状態を示す斜視断面図である。
【
図8】
図8は、
図1に示される電源側端子金具の第3変形例を基台に組み付けた状態を示す斜視断面図である。
【
図9】
図9は、
図1に示される電源側端子金具の第4変形例を基台に組み付けた状態を示す斜視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0021】
各図面には、各図面相互の関係を明確にし、各部材の位置関係を理解する助けとするために、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸により構成される直交座標系を便宜的に付す。X軸、Y軸及びZ軸とは、
図1に示される3つの方向を意味し、それぞれ正方向(矢印の方向)及び負方向(矢印とは反対の方向)を含むものとする。以下では、例えばX軸及びY軸により規定される平面をXY平面とも呼ぶ。
【0022】
図1は、本開示の実施形態に係る回路遮断器の構造を説明するための図であって、部分的に断面を示す部分断面図である。回路遮断器10は、例えば電源と負荷との間を接続する電路上に設けられ、当該電路の導通及び遮断を切り替える装置である。
図1に示されるように、回路遮断器10は、ハウジング20と、電源側端子金具30と、負荷側端子金具40と、可動接触子50と、ハンドル60と、を備えている。
【0023】
電源側端子金具30は、電路の電源側配線(不図示)が繋がれる端子金具である。負荷側端子金具40は、電路の負荷側配線(不図示)が繋がれる端子金具である。電源側端子金具30及び負荷側端子金具40は、それぞれハウジング20の電源側端部及び負荷側端部において露出するように設けられている。
【0024】
可動接触子50は、電路を導通及び遮断するためにハウジング20の内部に設けられている可動部品である。ハンドル60は、可動接触子50を操作するためにハウジング20から突出するように設けられている可動部品である。
【0025】
ハウジング20は、基台21と、カバー22と、を備えている。基台21とカバー22とが組み立てられることで、内部空間が設けられたハウジング20が形成される。基台21には、電源側端子金具30、負荷側端子金具40、可動接触子50及びハンドル60が各組付位置に組み付けられている。カバー22は、基台21に組付けられ、基台21に設けられた各種部品を外部環境から保護する。
【0026】
ハウジング20は、第1壁部201と、第2壁部202と、第3壁部203と、第4壁部204と、を備えている。第1壁部201と第2壁部202とは、互いに対向するように配置されている。第3壁部203と第4壁部204とは、互いに対向するように配置されている。
【0027】
回路遮断器10が分電盤のベース板といった取り付け部分に取り付けられた場合に、第1壁部201は電路の電源側に配置され、第2壁部202は電路の負荷側に配置され、第4壁部204はベース板側に配置される。第3壁部203及び第4壁部204は、第1壁部201と第2壁部202とを繋ぐように設けられている。
【0028】
ハウジング20内部には、電源側端子座設置部210と、固定接触子設置部211と、負荷側端子座設置部212と、被嵌合部215と、を備えている。電源側端子座設置部210、固定接触子設置部211、負荷側端子座設置部212、及び被嵌合部215は、基台21に形成されている。電源側端子座設置部210、固定接触子設置部211、負荷側端子座設置部212、及び被嵌合部215への設置態様については後述する。
【0029】
電源側端子金具30は、電源側端子座31(座部分)と、固定接触子32(固定接触子部分)と、接続部分33と、嵌合部34と、を備えている。電源側端子座31は、電源側配線と繋がる座部分を構成している。固定接触子32は、可動接触子50との接点となる固定接触子部分を構成する。接続部分33は、電源側端子座31と固定接触子32とを接続する部分である。嵌合部34は、被嵌合部215と嵌め合わされる部分である。電源側端子座31、固定接触子32、接続部分33、及び嵌合部34は、例えば導電性の板状の金属部材により一体的に形成されている。
【0030】
電源側端子座31は、ハウジング20の電源側端子座設置部210に設置されている。電源側端子座設置部210には、座保持面213が設けられている。座保持面213は、電源側端子座31に対応するように設けられている。電源側端子座31は、電源側端子座設置部210の座保持面213に保持されることで、ハウジング20の一方に設けられた第1壁部201において、ハウジング20の外部に露出している。図示が省略されているが、電源側端子座31に電源側配線の圧着端子が当接され、圧着端子の環状部分をねじが貫通し、電源側端子座31に設けられたねじ穴にねじを締めこんで固定されることにより、電源側配線が電源側端子金具30と電気的に接続される。電源側配線は、回路遮断器10の外部の電路を構成する外部配線の一具体例である。
【0031】
固定接触子32は、ハウジング20の内部に設けられている。固定接触子32は、可動接触子50の端部に設けられた可動接点51の移動軌道上に設けられた固定接点320を有する。固定接触子32は、固定接触子設置部211に設置されている。固定接触子設置部211には、接触子保持面214が設けられている。固定接触子32は、接触子保持面214に保持されている。
【0032】
接続部分33は、電源側端子座31からハウジング20の内部に向かってY軸正方向に延び、更に基台21に向かってZ軸負方向に略直角に折れ曲がった形状を有している。接続部分33は、枝部33a及び枝部33b(
図1においては明示しない)を有している。接続部分33における電源側端子座31と反対側の端部には、固定接触子32が設けられている。本実施形態において、電源側端子座31と固定接触子32は、接続部分33の端部から同じ方向(Y軸負方向)に延びている。電源側端子金具30の構成及び基台21への組付工程の詳細については後述する。
【0033】
負荷側端子金具40は、負荷側配線(不図示)と繋がる座部分を構成する負荷側端子座41を有する。
【0034】
負荷側端子座41は、ハウジング20の負荷側端子座設置部212に設置されている。負荷側端子座41は、負荷側端子座設置部212に設置されることで、ハウジング20の第2壁部202において、ハウジング20の外部に露出している。図示が省略されているが、負荷側端子座41に負荷側配線の圧着端子がねじにより固定されることにより、負荷側配線が負荷側端子金具40と電気的に接続される。負荷側配線は、回路遮断器10の外部の電路を構成する外部配線の一具体例である。
【0035】
可動接触子50は、ハウジング20の内部に設けられた配線(不図示)を通じて負荷側端子金具40に電気的に接続されている。可動接触子50は、ハンドル60の手動操作に基づいて揺動する。可動接触子50が揺動することにより、可動接点51が固定接点320に対して接触及び離隔する。可動接点51が固定接点320と接触しているとき、可動接触子50は、Y軸と略平行な導通位置において保持される。可動接点51が固定接点320から離れているとき、可動接触子50は、
図1に示される遮断位置において保持される。
【0036】
ハンドル60は、ハウジング20の第3壁部203から突出するように設けられている。回路遮断器10では、ユーザがハンドル60を操作することにより、電源側端子座31から負荷側端子座41に至る電路上に設けられた可動接点51及び固定接点320が接触及び離隔する。可動接点51が固定接点320に接触している場合、電源側端子座31と負荷側端子座41とが導通された状態となる。
【0037】
可動接点51が固定接点320から離隔している場合、電源側端子座31と負荷側端子座41とが遮断された状態となる。加えて、回路遮断器10は、電源側端子座31から負荷側端子座41に至る電路に過電流が流れた際に、可動接触子50を揺動させて可動接点51を固定接点320から強制的に離隔させる、いわゆるトリップ動作を行うことにより、電源側端子座31と負荷側端子座41との電気的な接続を強制的に遮断する機能を有している。
【0038】
次に、
図2から
図5を参照して、電源側端子金具30の構造及び基台21への組付について具体的に説明する。
図2は、電源側端子金具30の斜視構造を示す斜視図である。
図3は、電源側端子金具30の側面構造を示す側面図である。
図4は、
図2とは反対側の角度から見た電源側端子金具30の斜視構造を示す斜視図である。
図5は、基台21に組み付けられた電源側端子金具30の断面構造を示す断面図である。
【0039】
図2及び
図4に示されるように、電源側端子金具30の接続部分33は二股に分かれている。接続部分33は、二股に分かれた部分から固定接触子32に至る2つの枝部33a,33bを有する。
【0040】
図3から
図5に示されるように、電源側端子金具30における電源側端子座31と接続部分33の間であって、枝部33aと枝部33bの間には、嵌合部34が形成されている。嵌合部34は、基台21の電源側端子座設置部210に設けられた被嵌合部215を抱き込むように、電源側端子座31から基台21側に向かって略直角に折れ曲がり、更に電源側端子座31と平行となるように略直角に折れ曲がった形状を有している。
【0041】
嵌合部34は、電源側端子金具30が基台21に組み付けられる際及び組み付けられた状態において、基台21の被嵌合部215を電源側端子座31との間で挟み込むことで、電源側端子座31が基台21の座保持面213から離れないように移動を規制する。なお、電源側端子座31が基台21の座保持面213から離れないとは、電源側端子座31が回路遮断器10の上下方向(Z軸方向)に移動しないことを意味する。電源側端子金具30の嵌合部34と基台21の被嵌合部215との嵌合構造は、電源側端子金具30のZ軸方向の移動を規制する第1移動規制部分の一具体例である。
【0042】
図4に示されるように、固定接触子32のうち基台21の接触子保持面214に当接する当接面321には、2つの突起部35a,35bが形成されている。突起部35a,35bは、基台21側(Z軸負方向側)に向かって突出している。
【0043】
図5に示されるように、基台21の接触子保持面214には、突起部35bに対応する嵌合孔216が形成されている。突起部35bは、嵌合孔216に入り込み、突起部35bの周囲に嵌合孔216の側壁が当接することにより、固定接触子32Aが接触子保持面214に対応する位置からずれないように移動を規制する。
【0044】
なお、固定接触子32が接触子保持面214に対応する位置からずれないとは、電源側端子金具30の組付位置において、固定接触子32が回路遮断器10の水平方向(XY平面方向)に移動しないことを意味する。突起部35bと嵌合孔216との嵌合構造は、固定接触子32のXY平面方向の移動を規制する第2移動規制部分の一具体例である。
図5においては図示が省略されているが、接触子保持面214には、嵌合孔216と同様に突起部35aに対応する嵌合孔も形成されている。
【0045】
図5に示されるように、固定接触子32に設けられた固定接点320は、固定接触子32の他の部分に対して固定接触子設置部211側に突出している。当該突出した部分は、基台21の固定接触子設置部211に設けられた溝部211aの内部に収容されている。
【0046】
電源側端子金具30の基台21への組み付けは、電源側端子金具30を基台21に対して相対的に移動させることにより行われる。具体的には、電源側端子金具30の電源側端子座31を基台21の座保持面213に沿わせつつ、電源側端子座31と嵌合部34が開口する方向(本実施形態ではY軸負方向。以下、「スライド方向」とも呼ぶ。)に電源側端子金具30をスライド移動させる。
【0047】
このとき、上述のとおり電源側端子金具30の嵌合部34が基台21の被嵌合部215に嵌合するので、電源側端子座31のZ軸方向の移動が規制される。他方、当該スライド移動にあたって、電源側端子金具30の固定接触子32では、突起部35a,35bが基台21の接触子保持面214と当接することにより、固定接触子32の少なくとも一部(本実施形態では固定接触子32の全体)と電源側端子座31との相対的な位置関係が一時的に変化する。具体的には、接続部分33が一時的に撓むことにより、固定接触子32は第2移動規制部分の規制方向(XY平面方向)と交差する方向(Z軸正方向)に移動する。
【0048】
電源側端子金具30のスライド移動が更に進むと、電源側端子金具30の嵌合部34のスライド方向と反対側の面が基台21の被嵌合部215に当接することにより、電源側端子座31のスライド方向の移動が規制される。加えて、接続部分33の撓みが元に戻ることにより、突起部35a,35bが基台21の接触子保持面214に形成された嵌合孔216に入り込み、固定接触子32が復旧方向に戻る。これにより、上述のとおり固定接触子32AのXY平面方向の移動が規制される。上述の工程により電源側端子金具30の基台21への組み付けが完了し、電源側端子金具30が組付位置に固定される。
【0049】
上述のとおり、回路遮断器10では、電源側端子金具30を基台21に対して移動させるにあたって、電源側端子金具30の嵌合部34と基台21の被嵌合部215との嵌合構造により電源側端子座31が基台21の座保持面213から離れないように規制される。更に、この移動において、固定接触子32に形成された突起部35a,35b及び基台21に形成された嵌合孔216は、固定接触子32の少なくとも一部と電源側端子座31との相対的な位置関係を一時的に変化させた後に復旧方向に戻す。このような位置関係の一時的な変化によって、固定接触子32と固定接触子設置部211とが嵌合する状態が形成され、固定接触子32が接触子保持面214に対応する位置からずれないように規制される。電源側端子座31と固定接触子32とは接続部分33で接続されているので、固定接触子32が接触子保持面214に対応する位置からずれないように規制される効果が電源側端子座31に伝達され、電源側端子座31も座保持面213に対応する位置からずれないように規制される。
【0050】
電源側端子座31を座保持面213に沿わせて移動させることで、第1移動規制部分と第2移動規制部分とが連動して移動規制を行い、一動作で電源側端子金具30を組付位置に組み付けることができる。従って、特許文献1に開示されるように消弧グリッド組立体やカバーといった他の部材を用いることなく、電源側端子金具30を基台21に固定することができるので、組み立て作業が容易なものとなる。また、例えばねじにより電源側端子金具を基台に固定する構成に比べて、必要部品及び専用工具が削減され、作業時間が短縮される。
【0051】
回路遮断器10では、電源側端子金具30を基台21に対して移動させるにあたって、固定接触子23に形成された突起部35a,35bが基台21の接触子保持面214に当接する。この当接に伴って、固定接触子23の少なくとも一部と電源側端子座31との相対的な位置関係が一時的に変化する。従って、電源側端子金具30を組み付けるための動作を行うことで第2移動規制部分を作動させることができ、組付作業が容易なものとなる。
【0052】
回路遮断器10では、接続部分33の撓み動作によって固定接触子32の少なくとも一部と電源側端子座31との相対的な位置関係が一時的に変化する。従って、固定接触子32のみが撓む場合に比べて、撓みのストロークをより大きく確保することが容易なものとなる。
【0053】
回路遮断器10では、電源側端子金具30が基台21に組み付けられた状態において、電源側端子金具30の固定接触子32に形成された突起部35a,35bが基台21に形成された嵌合孔216にはまるので、1つの構造により突起部の周囲に側壁が当接する方向(本実施形態ではXY平面上の任意の方向)の移動を規制することができる。突起部の周囲に側壁が当接する方向は任意に設けることができるため、例えば、複数の方向において当接個所を設けることで、複数の方向における移動を規制することができる。
【0054】
本実施形態においては、電源側端子金具30の接続部分33が第4壁部に向かって略直角に折れ曲がっているが、当該部分は、例えば
図1に示されるように遮断位置で保持された可動接触子50と平行な傾斜面であってもよい。傾斜面であることにより、可動接触子50が遮断位置で保持されているとき、電源側端子金具30の接続部分と可動接触子50とが所定距離をもって離れるため、電源側端子金具30と可動接触子50との間に電気的な短絡が生じ難くなる。
【0055】
本実施形態においては、電源側端子金具30の接続部分33が2つに分かれた枝部33a,33bを有する構成が示されているが、当該部分はいずれか一方の枝部を有する構成であってもよい。
【0056】
本実施形態においては、固定接触子32に2つの突起部35a,35bが形成され、基台21に2つの嵌合孔が形成される例が示されているが、これらの突起部及び対応する嵌合孔の数は2つに限定されず、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。このことは、後述する他の実施形態における突起部及び嵌合孔、並びに爪部についても同様である。
【0057】
図6は、電源側端子金具30の第1変形例である電源側端子金具30Aの斜視構造を示す斜視図である。
【0058】
電源側端子金具30Aは、固定接触子32Aにおいて、突起部35a,35bの代わりに突起部36aが形成されている点において電源側端子金具30と異なる。突起部36aは、接触子保持面214との当接面321におけるX軸負方向側の端部に形成されている。なお、
図6においては図示が省略されているが、当接面321におけるX軸正方向側の端部にも、突起部36aと同様の突起部が形成されている。
【0059】
突起部36aは、電源側端子金具30Aのスライド方向とは逆の方向(Y軸正方向)側が基台21側に突出した爪形状を有している。電源側端子金具30Aを基台21に組み付ける際のスライド移動にあたって、突起部36aは、固定接触子32Aの他の部分に対してZ軸正方向側に撓んだのち、復旧方向に戻ることにより、基台21に形成された対応する嵌合孔(不図示)に入り込む。
【0060】
突起部36aの少なくともY軸正方向側の面に基台21の嵌合孔の側壁が当接することにより、固定接触子32Aが基台21の接触子保持面214に対応する位置からY軸正方向側にずれないように規制される。電源側端子金具30Aの突起部36aと基台21の嵌合孔との嵌合構造は、固定接触子32Aの基台21に対するY軸正方向側の移動を規制する第2移動規制部分の一具体例である。
【0061】
電源側端子金具30Aでは、突起部36aが固定接触子32Aの他の部分に対して撓むため、突起部36aの嵌合孔への入り込みを容易に行うことができる。突起部36a及び対応する嵌合孔によっては電源側端子金具30Aのスライド方向の移動が規制され難いが、電源側端子金具30Aの嵌合部34及び基台の被嵌合部215との当接によって当該スライド方向の移動が規制される。この場合、嵌合部34及び被嵌合部215は、固定接触子32AのXY平面方向の移動を規制する第2移動規制部分としても機能する。
【0062】
図7は、電源側端子金具30の第2変形例である電源側端子金具30Bの断面構造を示す断面図である。
【0063】
本変形例では、電源側端子金具30Bの固定接触子32Bに突起部が形成される代わりに、基台21に2つの爪部37a,37bが形成されている点において電源側端子金具30及びその構成に対応する基台21の構成と異なる。爪部37a,37bは、基台21の接触子保持面214の周囲から固定接触子32Bに向かって突出するように設けられている。
【0064】
固定接触子32Bは、電源側端子金具30Bのスライド方向とは反対側(Y軸正方向側)に、爪部37a,37bと当接する当接面322を有する。電源側端子金具30Bが基台21に組み付けられた状態において、固定接触子32Bの当接面322が爪部37a,37bと当接することにより、固定接触子32Bが接触子保持面214に対応する位置からY軸正方向側にずれないように規制される。固定接触子32Bの当接面322と基台21の爪部37a,37bとの当接構造は、固定接触子32Bの基台21に対するY軸正方向側の移動を規制する第2移動規制部分の一具体例である。第2移動規制部分を爪部37a,37bと当接面322によって構成することができるので、簡便な構造で移動規制を行うことができる。
【0065】
図8は、電源側端子金具30の第3変形例である電源側端子金具30Cの断面構造を示す断面図である。
【0066】
電源側端子金具30Cでは、電源側端子座31と固定接触子32が接続部分33Cから異なる方向(
図8においては、Y軸負方向とY軸正方向)に沿って延びている。このように、電源側端子金具の形状は、
図1に示される形状に限らず、任意の形状に変更することが可能である。
【0067】
電源側端子金具30Cでは、電源側端子金具30,30A,30Bに比べて電源側端子金具30Cと可動接触子50との間の距離を広げることができるため、絶縁距離をより十分に確保することができる。
図8においては第2移動規制部分の一例として突起部35b及び嵌合孔216が示されているが、第2移動規制部分の構成はこれに限られず、他の様々な実施形態の構成を適用可能である。
【0068】
図9は、電源側端子金具30の第4変形例である電源側端子金具30Dの断面構造を示す断面図である。
【0069】
図9に示されるように、電源側端子金具30Dは、嵌合部34の代わりに嵌合部34Dを有する。また、基台21の電源側端子座設置部210は、被嵌合部215の代わりに被嵌合部215Dを有する。
【0070】
電源側端子金具30Dに設けられた嵌合部34Dは、電源側端子座31の端部側(Y軸負方向側)に形成されている。これに伴って、基台21に設けられた被嵌合部215Dは、電源側端子座設置部210のうちハウジング20の第1壁部201側(Y軸負方向側)に形成されている。
【0071】
嵌合部34Dは、被嵌合部215Dを抱き込むように、電源側端子座31から基台21側に向かって略直角に折れ曲がり、更に電源側端子座31と平行となるように略直角に折れ曲がった形状を有している。嵌合部34Dは、電源側端子金具30Dが基台21に組み付けられる際及び組み付けられた状態において、基台21の被嵌合部215Dを電源側端子座31との間で挟み込むことで、電源側端子座31が基台21の座保持面213から離れないように移動を規制する。電源側端子金具30Dの嵌合部34Dと基台21の被嵌合部215Dとの嵌合構造は、電源側端子金具30DのZ軸方向の移動を規制する第1移動規制部分の一具体例である。
【0072】
電源側端子座31と嵌合部34Dとの開口方向が、上述の電源側端子座31と嵌合部34との開口方向と逆方向であるので、電源側端子金具30Dのスライド方向もまた、上述のスライド方向と逆方向となる。従って、仮に固定接触子32に上述の突起部36aに相当する突起部が形成される場合、当該突起部は、突起部36aとは逆の方向(Y軸負方向)側が基台21側に突出する構成であることが好ましい。あるいは、仮に基台21に上述の爪部37a,37bに相当する爪部が形成される場合、当該爪部は、爪部37a,37bとは逆の方向(Y軸正方向)に向かって突出し、固定接触子32Bにおける当接面322とは逆側の面に当接することが好ましい。これらの構造を適用することにより、スライド方向とは逆方向の移動を規制することができる。
【0073】
本開示は上記の具体例に限定されるものではない。上記の具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素、及びその配置、条件、形状等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【0074】
例えば、上述の電源側端子金具における第1移動規制部分及び第2移動規制部分の構成は、負荷側端子金具にも適用可能である。
【符号の説明】
【0075】
10:回路遮断器
21:基台
30,30A,30B,30C,30D:電源側端子金具(端子金具)
31:電源側端子座(座部分)
32,32A,32B:固定接触子(固定接触子部分)
33,33C:接続部分
34,34D:嵌合部(第1移動規制部分、第2移動規制部分)
35a,35b,36a:突起部(第2移動規制部分)
37a,37b:爪部(第2移動規制部分)
40:負荷側端子金具(端子金具)
50:可動接触子
213:座保持面
214:接触子保持面
215,215D:被嵌合部(第1移動規制部分)
321,322:当接面(第2移動規制部分)