(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/536 20210101AFI20220610BHJP
B23K 20/10 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
H01M50/536
B23K20/10
(21)【出願番号】P 2018238553
(22)【出願日】2018-12-20
【審査請求日】2021-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高林 洋志
(72)【発明者】
【氏名】山中 友和
(72)【発明者】
【氏名】深沢 光一
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-205452(JP,A)
【文献】特開平05-094730(JP,A)
【文献】特開2018-125110(JP,A)
【文献】特開2014-049311(JP,A)
【文献】特開2009-022977(JP,A)
【文献】特開2017-060963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50
H01M 4/64
B23K 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体を有する第1電極板と、前記第1電極板と極性の異なる第2電極板を含む電極体と、前記集電体に接続された集電板とを備え、積層された前記集電体が前記集電板に接続された二次電池の製造方法であって、
前記電極体を用意する工程と、
積層された前記集電体と、前記集電板とを、超音波溶接で接合する工程と、
を有し、
前記超音波溶接で接合する工程は、積層された前記集電体と前記集電板とを、ホーン及びアンビルで挟み込んで押圧した状態で、前記ホーンに、押圧方向と垂直な方向に超音波振動を加えることによって行われ、
前記超音波溶接で接合する工程において、前記集電板は、超音波溶接中に、前記押圧方向と垂直な方向に動かないよう、固定手段によって固定されている、二次電池の製造方法。
【請求項2】
前記集電板は、前記アンビルに当接される前の状態で一対の対向する側面を有し、
前記超音波溶接で接合する工程において、前記集電板の前記一対の対向する側面に、それぞれ固定治具を当接することにより、前記集電板を、前記押圧方向と垂直な方向に動かないよう固定している、請求項1に記載の二次電池の製造方法。
【請求項3】
前記アンビルは、表面に凹部を有し、
前記超音波溶接で接合する工程において、前記アンビルの前記凹部に、前記集電板を嵌め込むことによって、前記集電板を、前記押圧方向と垂直な方向に動かないよう固定している、請求項1に記載の二次電池の製造方法。
【請求項4】
前記集電板は、前記アンビルに当接される前の状態で貫通孔を有し、
前記超音波溶接で接合する工程において、前記アンビルの表面に形成された突起部に、前記集電板の前記貫通孔を嵌め込むことによって、前記集電板を、前記押圧方向と垂直な方向に動かないよう固定している、請求項1に記載の二次電池の製造方法。
【請求項5】
前記第1電極板は、負極板であり、
前記第2電極板は、正極板であり、
前記負極板は、箔状の負極集電体と、前記負極集電体上に形成された負極活物質層とを有し、
前記負極集電体は、銅又は銅合金からなり、
前記集電体は、前記負極集電体である、請求項1~4のいずれかに記載の二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の二次電池は、正極板及び負極板をセパレータを介して捲回または積層して電極体を構成し、この電極体を電解液とともに電池ケース内に収容した構造を有している。
【0003】
電極体を構成する正極板及び負極板は、それぞれ集電体の表面に活物質層が形成されている。そして、正極板及び負極板のそれぞれ一端に設けられた複数の集電体は、集電板を介して、電池ケースの封口板に設けられた外部端子に接続されている。
【0004】
複数の積層された集電体と集電板とを接合する方法として、超音波溶接により接合する方法が知られている。超音波溶接は、積層された集電体と集電板とを、適度な加圧下において、ホーンとアンビルとで挟み込みながら、超音波による振動エネルギーを接合面に平行に加えることによって行われる。そして、積層された集電体と集電板とを確実に挟み込むために、ホーン及びアンビルの表面には、それぞれ突起部が設けられている。
【0005】
しかしながら、リチウムイオン二次電池等に使用される集電体の厚みは非常に薄いため、このような薄い集電体を複数枚積層したものと、板状の集電板とを超音波溶接により接合すると、集電体が剥がれることがある。この剥がれた集電体の小片が、電池の組み立て中に、電池内に入り込むと、電池の品質を低下させる虞がある。
【0006】
特許文献1には、このような問題を解決するために、ホーンの表面に設けられた突起部の形状を円弧状にしたり、ホーンの周辺に、突起部が形成されていないマージン領域を設ける方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明者等が、積層された複数の集電体と集電板とを超音波溶接により接合した後に、接合部で発生した小片(発塵)を調べていたところ、集電体の膜みよりも大きい小片が含まれていることに気がついた。しかも、この小片の大きさは、アンビルに設けた突起部の高さよりも大きいことが分かった。その後の詳細な分析から、このような大きさの小片は、集電体から剥がれてできたものではなく、集電板から削り取られてできたものであることが分かった。
【0009】
通常、負極集電板は、銅で構成されているが、負極集電板から削り取られたこのような大きさの小片(銅片)が、電解液の注入の際などに、正極板上に移動すると、充放電により正極板上の小片(銅片)が溶融するとともに、溶融した銅が負極板上でデンドライトに成長する虞がある。その結果、デンドライトがセパレータを突き破り、正極板と負極板との間で内部短絡が発生する虞がある。
【0010】
従来、積層された複数の集電体と集電板とを、超音波溶接により接合する際に発生する小片としては、集電体から剥がれたものは認識されていたが、集電板から削り取られたものは想定されていなかった。それ故に、集電板から削り取られた小片に起因して内部短絡が発生するという問題は、全く考慮されていなかった。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたもので、その主な目的は、積層された集電体と集電板とを、超音波溶接により接合する際に、集電板から削り取られた小片の発生を抑制することができる二次電池の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一形態に係る二次電池の製造方法は、集電体を有する第1電極板と、第1電極板と極性の異なる第2電極板を含む電極体と、集電体に接続された集電板とを備え、積層された集電体が集電板に接続された二次電池の製造方法であって、電極体を用意する工程と、積層された集電体と、集電板とを、超音波溶接で接合する工程とを有し、超音波溶接で接合する工程は、積層された集電体と集電板とを、ホーン及びアンビルで挟み込んで押圧した状態で、ホーンに、押圧方向と垂直な方向に超音波振動を加えることによって行われ、超音波溶接で接合する工程において、集電板は、超音波溶接中に、押圧方向と垂直な方向に動かないよう、固定手段によって固定されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、積層された集電体と集電板とを、超音波溶接により接合する際に、集電板から削り取られた小片の発生を抑制することができる二次電池の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態における二次電池の構成を模式的に示した図で、
図1(a)は断面図、
図1(b)は、
図1(a)のIb-Ib線に沿った断面図である。
【
図2】積層された負極集電体と負極集電板とを、超音波溶接で接合する工程を示した図である。
【
図3】
図3(a)、(b)は、固定手段を説明した図で、
図2に示した断面図において、アンビル、負極集電体、及びホーンを省略して、負極集電板のみを、ホーン側から見た平面図である。
【
図4】
図4(a)、(b)は、固定手段を説明した図で、
図2に示した断面図において、アンビル、負極集電体、及びホーンを省略して、負極集電板のみを、ホーン側から見た平面図である。
【
図5】
図5(a)、(b)は、固定手段を説明した図で、
図5(a)は、
図2に示した断面図において、負極集電体及びホーンを省略して、アンビル及び負極集電板を、ホーン側から見た平面図で、
図5(b)は、
図5(a)のVb-Vb線に沿った断面図である。
【
図6】
図6(a)、(b)は、固定手段を説明した図で、
図6(a)は、
図2に示した断面図において、負極集電体及びホーンを省略して、アンビル及び負極集電板を、ホーン側から見た平面図で、
図6(b)は、
図6(a)のVIb-VIb線に沿った断面図である。
【
図7】
図7は、固定手段を説明した図で、
図2に示した断面図において、負極集電体及びホーンを省略して、アンビル及び負極集電板を、ホーン側から見た平面図である。
【
図8】
図8は、固定手段を説明した図で、
図2に示した断面図において、負極集電体及びホーンを省略して、アンビル及び負極集電板を側方から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上述したように、本発明者等は、積層された複数の集電体と集電板とを、超音波溶接により接合した際、従来、想定されていなかった、集電板から削り取られたような小片が発生しているという新たな知見を得た。
【0016】
具体的には、複数の負極集電体(銅箔:厚さ8μm)と、負極集電板(銅板:厚さ1mm)との超音波溶接による接合部において、ホーンと接触した側の負極集電体表面、及びアンビルと接触した側の負極集電板表面に、それぞれ粘着テープを貼り付け、接合部で発生した小片を粘着テープに転写させて、発生した小片の大きさや個数を詳細に分析した。その結果、アンビル側の負極集電板表面で発生した小片の個数の方が、ホーン側の負極集電体表面で発生した小片の個数よりも、10倍程度多いことが分かった。また、小片の特徴としては、アンビル側の負極集電板表面で発生した小片(銅片)の大きさ(10~100μm程度)が、ホーン側の負極集電体表面で発生した小片(銅片)の大きさ(5~20μm程度)よりも大きいことも分かった。
【0017】
複数の負極集電体と負極集電板との超音波溶接において、アンビルと接触した側の負極集電板表面で発生した小片は、以下の理由により発生したものと考えられる。
【0018】
従来、積層された集電体と集電板とを、ホーン及びアンビルで挟み込み両側から押圧する際に、アンビルに設けられた複数の突起部を集電板に食い込ませることにより、集電板とアンビルとが固定された状態として超音波溶接が行われていた。即ち、アンビルで集電板を押圧することにより、集電板にアンビルに設けられた突起部に対応する形状の凹部が生じるようにして、集電板とアンビルを固定していた。そのため、従来は、ホーンに超音波振動を印加しても、アンビルに対して集電板は動かなかった。
【0019】
一方、二次電池の高容量化、高エネルギー密度化が進むに伴い、積層される集電体の層数が増加してきている。それに応じて、複数の集電体と集電板との超音波溶接において、ホーンに印加する振動エネルギー(振幅、振動数、印加時間)も増加してきている。
【0020】
そのため、振動エネルギーが増加したことによって、ホーンに印加された振動が、集電体を介して、集電板まで伝わり、集電板自身もホーンの振動に連動して動いたものと考えられる。この場合、アンビルは固定されているため、振動する負極集電板とアンビルとの間で摩擦が生じ、その結果、アンビルと接触した側の集電板表面が、アンビルに設けられた突起部によって削られたものと考えられる。
また、アンビル側の負極集電板表面で発生した小片の個数が、ホーン側の負極集電体表面で発生した小片の個数よりも多かったことや、アンビル側の負極集電板表面で発生した小片の大きさが、ホーン側の負極集電体表面で発生した小片の大きさよりも大きかったことも、上記の理由によるものと考えられる。
【0021】
そこで、本発明者等は、振動エネルギーが増加した場合、従来のように、アンビルに設けられた突起部を、集電板に食い込ませることだけで、アンビルと集電板とを固定することは困難で、別途、集電板が動かないように拘束する手段が必要であると考え、本発明を想到するに至った。
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。また、本発明の効果を奏する範囲を逸脱しない範囲で、適宜変更は可能である。
【0023】
図1(a)、(b)は、本発明の一実施形態における二次電池の構成を模式的に示した図で、
図1(a)は断面図、
図1(b)は、
図1(a)のIb-Ib線に沿った断面図である。
【0024】
図1(a)、(b)に示すように、本実施形態における二次電池10では、発電要素である電極体13が電解液とともに、電池ケース11内に収容されている。また、電池ケース11の開口部は、封口板12で封口されている。また、負極外部端子15及び正極外部端子17は、それぞれ、封口板12に設けられた貫通孔を貫通して封口板12に固定されている。ここで、電極体13は、正極板(第2電極板)及び負極板(第1電極板)がセパレータ(何れも不図示)を介して捲回された構造をなす。正極板としては、箔状の正極集電体表面に正極活物質を含む正極活物質層が設けられたものを用いることができる。負極板としては、箔状の負極集電体表面に負極活物質を含む負極活物質層が設けられたものを用いることができる。なお、正極外部端子17及び負極外部端子15は、封口板12の上面及び下面に設けられた絶縁部材(不図示)を介して、封口板12に固定されている。
【0025】
正極板及び負極板は、それぞれ、その一端において、活物質層が形成されていない正極集電体16及び負極集電体14が露出している。電極体13の一方の端部においては、正極集電体16が露出した部分が巻回されることにより、正極集電体16が積層されている。電極体13の他方の端部においては、負極集電体14が露出した部分が巻回されることにより、負極集電体14が積層されている。そして、正極集電体16は、正極集電板30を介して、正極外部端子17に接続されている。また、負極集電体14は、負極集電板20を介して、負極外部端子15に接続されている。
【0026】
図1(b)に示すように、負極板の一端に設けられた積層された負極集電体14は、束ねられて、負極集電板20に超音波溶接により接合されている。同様に、正極板の一端に設けられた積層された正極集電体16は、束ねられて、正極集電板30に超音波溶接により接合されている。
【0027】
なお、二次電池10が非水電解質二次電池である場合、正極集電体16、正極集電板30、及び正極外部端子17は、アルミニウムあるいはアルミニウム合金からなることが好ましい。また、負極集電体14、負極集電板20、及び負極外部端子15は、銅あるいは銅合金であることが好ましい。
【0028】
図2は、積層された負極集電体14と、負極集電板20とを、超音波溶接で接合する工程を示した図である。なお、積層された正極集電体16と、正極集電板30とを、超音波溶接で接合する工程も、同様の方法で行うことができるので、説明は省略する。
【0029】
図2に示すように、超音波溶接は、積層された負極集電体14と、集電板20とを、ホーン40及びアンビル50で挟み込んで、図中の矢印Yの方向に押圧した状態で、ホーン40に、押圧方向Yと垂直な方向Xに超音波振動を加えることによって行われる。
【0030】
ここで、ホーン40の表面には、複数の突起部(ナール)41が設けられている。そして、負極集電体14の上からホーン40を押し当てることによって、負極集電体14が突起部41によって凹むとともに、負極集電体14と負極集電板20とが、超音波振動による摩擦熱で加熱されて接合される。
【0031】
一方、アンビル50の負極集電板20を載置する側の表面には、従来のような、負極集電板20を固定するための複数の突起部は設けられていない。その代わり、
図2に示すように、負極集電板20は、超音波溶接中に、負極集電板20の対向する側面21a、21bに対して、両サイドから、押圧方向Yと垂直な方向Xに、所定の力Fを加えることによって、負極集電板20が、押圧方向Yと垂直な方向Xに動かないよう固定している。
【0032】
これにより、ホーンに印加された超音波振動が、負極集電体14を介して、負極集電板20まで伝わっても、負極集電板20自身が、ホーン40の振動に連動して動くことはない。そのため、負極集電板20とアンビル50との間で摩擦が生じることはないので、アンビル50と接触した側の負極集電板20の表面が削られることはない。その結果、負極集電体14の層数の増加に伴い、ホーン40に印加する振動エネルギー(振幅、振動数、印加時間)が増加しても、負極集電板20から削り取られた小片に起因して内部短絡が発生するのを抑制することができる。また、アンビル50の表面に突起部を設けていないため、アンビル50側の負極集電板20の表面が、突起部により凹むことはない。そのため、凹みによる負極集電板20の変形も抑制することができる。
【0033】
なお、
図2では、負極集電板20に加える力Fを、押圧方向Yと垂直な方向であって、ホーン40の振動方向Xと同じ方向に加えた例を示したが、ホーン40の振動方向Xと垂直な方向(紙面に対して垂直な方向)に加えてもよい。この場合においても、超音波溶接中に、負極集電板20自身が動かないように拘束されていれば、アンビル50と接触した側の負極集電板20の表面が削られることはない。
【0034】
以上、説明したように、本実施形態における二次電池の製造方法は、電極体13を用意する工程と、積層された集電体14、16と集電板20、30とを、超音波溶接で接合する工程とを有し、超音波溶接で接合する工程は、積層された集電体14、16と集電板20、30とを、ホーン40及びアンビル50で挟み込んで押圧した状態で、ホーン40に、押圧方向と垂直な方向に超音波振動を加えることによって行われ、集電板20、30は、超音波溶接中に、押圧方向と垂直な方向に動かないよう、固定手段によって固定されている。
【0035】
このような方法により、複数の集電体14、16と集電板20、30とを、超音波溶接により接合する際に、集電板20、30から削り取られた小片の発生を抑制することができる。これにより、集電体14、16の層数の増加に伴い、ホーン40に印加する振動エネルギー(振幅、振動数、印加時間)が増加しても、集電板20、30から削り取られた小片に起因して内部短絡が発生するのを抑制することができる。
【0036】
本実施形態において、超音波溶接中に、負極集電板20が、押圧方向Yと垂直な方向に動かないよう固定する手段(固定手段)は、特に限定されないが、例えば、
図3~
図8に示すような固定手段を用いることができる。
【0037】
図3(a)、(b)は、
図2に示した断面図において、アンビル50、負極集電体14、及びホーン40を省略して、負極集電板20のみを、ホーン40側から見た平面図である。
【0038】
図3(a)に示すように、負極集電板20の対向する側面21a、21bに対して、両サイドに、一対のブロック60、61を配置する。ここで、一対のブロック60、61は固定手段に相当する。また、一対のブロック60、61は、アンビル50の一部であってもよい。
【0039】
ブロック60は、予め決められた位置に固定された固定ブロックで、超音波溶接を実施する前に、負極集電板20の側面21aを、固定ブロック60の側面に当接させておく。一方、ブロック61は、ホーン40の押圧方向Yと垂直な方向(ここでは、ホーン40の振動方向Xと同じ方向)に可動可能な可動ブロックである。
【0040】
超音波溶接中は、
図3(b)に示すように、一対のブロック60、61を、押圧方向Yと垂直な方向に押し当てることによって、負極集電板20を、押圧方向Yと垂直な方向に動かないよう固定している。なお、押圧する力Fは、ホーン40に印加する振動エネルギー(振幅、振動数、印加時間)に応じて、負極集電板20が動かない程度の大きさに、適宜決めればよい。また、一対のブロック60、61を、押圧方向Yと垂直な方向であって、ホーン40の振動方向Xと垂直な方向(紙面の左右方向)に配置してもよい。
【0041】
なお、一対のブロック60、61は、負極集電板20において、一対のブロック60、61と当接する前の状態で存在する一対の側面に当接される。
【0042】
図4(a)、(b)は、
図2に示した断面図において、アンビル50、負極集電体14、及びホーン40を省略して、負極集電板20のみを、ホーン40側から見た平面図である。
【0043】
図4(a)に示すように、負極集電板20の直交する側面21a、22aに対して、当接する側面を有するL字型のブロック60と、負極集電板20の直交する側面21b、22bに対して、それぞれ当接する側面を有するブロック61、62とを配置する。ここで、ブロック60は、予め決められた位置に固定された固定ブロックで、超音波溶接を実施する前に、負極集電板20の側面21a、22aを、それぞれ、固定ブロック60の側面に当接させておく。一方、ブロック61、62は、ホーン40の押圧方向Yと垂直な方向であたって、互いに直交する方向(ホーン40の振動方向Xと、振動方向Xに垂直な方向)に可動可能な可動ブロックである。 ここで、固定ブロック60、及び可動61、62は、固定手段に相当する。また、固定ブロック60、及び可動61、62は、アンビル50の一部であってもよい。
【0044】
超音波溶接中は、
図4(b)に示すように、負極集電板20の側面21b、22bに対して、それぞれ、可動ブロック61、62を、押圧方向Yと垂直な方向に押し当てることによって、負極集電板20を、押圧方向Yと垂直な方向に動かないよう固定している。
【0045】
このような固定手段は、負極集電板20の一対の側面(21a、21b)、(22a、22b)に対して、それぞれ、2軸方向から、一対のブロック(60、61)、(60、62)を押し当てることができるため、より確実に、負極集電板20を、押圧方向Yと垂直な方向に動かないよう固定することができる。
【0046】
図5(a)は、
図2に示した断面図において、負極集電体14及びホーン40を省略して、アンビル50及び負極集電板20を、ホーン40側から見た平面図で、
図5(b)は、
図5(a)のVb-Vb線に沿った断面図である。
【0047】
図5(a)、(b)に示すように、アンビル50の表面に凹部51が形成され、この凹部51に、負極集電板20が嵌め込まれている。これにより、ホーン40の超音波振動が、負極集電体14を介して、負極集電板20まで伝わっても、負極集電板20は、ホーン40の振動に連動して動くことはない。その結果、負極集電板20を、押圧方向Yと垂直な方向に動かないよう固定することができる。
【0048】
図6(a)は、
図2に示した断面図において、負極集電体14及びホーン40を省略して、アンビル50及び負極集電板20を、ホーン40側から見た平面図で、
図6(b)は、
図5(a)のVIb-VIb線に沿った断面図である。
【0049】
図6(a)、(b)に示すように、アンビル50の表面に突起部52が形成され、この突起部52に、負極集電板20に形成した貫通孔23が嵌め込まれている。これにより、ホーン40超音波振動が、負極集電体14を介して、負極集電板20まで伝わっても、負極集電板20を、押圧方向Yと垂直な方向に動かないよう固定することができる。なお、負極集電板20は、アンビル50に当接される前の状態で貫通孔23を有する。
【0050】
図7は、
図2に示した断面図において、負極集電体14及びホーン40を省略して、アンビル50及び負極集電板20を、ホーン40側から見た平面図である。
【0051】
図7に示すように、アンビル50の表面に、一対の突起部53が形成され、この一対の突起部53に、負極集電板20に形成した一対の溝24が嵌め込まれている。これにより、ホーン40の超音波振動が、負極集電体14を介して、負極集電板20まで伝わっても、負極集電板20を、押圧方向Yと垂直な方向に動かないよう固定することができる。なお、負極集電板20は、アンビル50に当接される前の状態で一対の溝24を有する。
【0052】
図8は、
図2に示した断面図において、負極集電体14及びホーン40を省略して、アンビル50及び負極集電板20を側方から見た断面図である。
【0053】
図8に示すように、負極集電板20には、曲げ部25が設けられており、アンビル50の表面には、曲げ部25を含む負極集電板20が嵌め込まれる凹部51、54が形成されている。この凹部51、54に、曲げ部25を含む負極集電板20を嵌め込むことによって、ホーン40の超音波振動が、負極集電体14を介して、負極集電板20まで伝わっても、負極集電板20を、押圧方向Yと垂直な方向に動かないよう固定することができる。
なお、負極集電板20は、アンビル50に当接される前の状態で曲げ部25を有する。
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、もちろん、種々の改変が可能である。例えば、上記実施形態では、アンビル50の表面を平らに加工したものを用いたが、本発明の固定手段に加えて、従来のように、アンビル50の表面に突起部を設け、負極集電板20に、アンビル50に設けられた突起部を食い込ませた状態で超音波溶接を行ってもよい。この場合においても、超音波溶接中に、負極集電板20自身が動かないように拘束されていれば、アンビル50と接触した側の負極集電板20の表面が削られることはない。また、アンビル50に設けた突起部による拘束力を利用することにより、負極集電板20の対向する側面21a、21bに対して加えるFを低減することができる。
【0054】
また、上記実施形態では、正極板及び負極板がセパレータを介して捲回された構造の電極体13を例に説明したが、正極板及び負極板がセパレータを介して積層された構造の電極体13であってもよい。この場合、正極板及び負極板のそれぞれ一端に設けられた複数の集電体14、16は、タブ形状のものであってもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、電極体13が、その捲回軸が電池ケース11の底部と平行となる向きに配置した構成を示したが、捲回軸が電池ケース11の底部と垂直となる向きに電極体13を配置してもよい。
【0056】
また、正極及び負極の集電体、集電板、活物質層、セパレータ、非水電解液等については公知の材料を使用できる。
【符号の説明】
【0057】
10 二次電池
11 電池ケース
12 封口板
13 電極体
14 負極集電体
15 負極外部端子
16 正極集電体
17 正極外部端子
20 集電板
20 負極集電板
21a、21b 負極集電板の一対の側面
22a、22b 負極集電板の一対の側面
23 貫通孔
24 溝
25 曲げ部
30 正極集電板
40 ホーン
41 突起部
50 アンビル
51、54 凹部
52、53 突起部
60 固定ブロック
61、62 可動ブロック