(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】抗レトロウイルス薬及び薬物動態学的エンハンサーを含む医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/635 20060101AFI20220610BHJP
A61K 31/675 20060101ALI20220610BHJP
A61K 31/683 20060101ALI20220610BHJP
A61K 31/4525 20060101ALI20220610BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20220610BHJP
A61P 31/20 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
A61K31/635
A61K31/675
A61K31/683
A61K31/4525
A61P31/14
A61P31/20
(21)【出願番号】P 2018543111
(86)(22)【出願日】2017-02-01
(86)【国際出願番号】 IN2017050046
(87)【国際公開番号】W WO2017138022
(87)【国際公開日】2017-08-17
【審査請求日】2020-01-30
(31)【優先権主張番号】201621005051
(32)【優先日】2016-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(31)【優先権主張番号】201621032504
(32)【優先日】2016-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(31)【優先権主張番号】201621040945
(32)【優先日】2016-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】511109180
【氏名又は名称】シプラ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルホトラ,ジーナ
(72)【発明者】
【氏名】ジョシ,カルパナ
(72)【発明者】
【氏名】ラウト,プリーティ
(72)【発明者】
【氏名】ゴサルカール,ジーヴァン
【審査官】小川 知宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2003/084662(WO,A1)
【文献】特表2015-505565(JP,A)
【文献】International Journal of Pharmacy and Pharmaceutical Sciences,2015年,Vol.7. Issue 10,pp.241-245
【文献】Drugs in R & D,2007年,Vol.8, No.6,pp.383-391
【文献】DRUG METABOLISM AND DISPOSITION,2002年,Vol.30, No.8,pp.924-930
【文献】Biol. Pharm. Bull.,2009年,Vol.32, No.9,pp.1588-1593
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00 - 31/80
A61P 31/12 - 31/22
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量の少なくとも1種の抗レトロウイルス薬と、治療有効量の少なくとも1種の薬物動態学的ブースター若しくはエンハンサーと、を含み、
前記少なくとも1種の抗レトロウイルス薬が、テノホビルアラフェナミドフマル酸塩、ダルナビル、又はテノホビルジソプロキシルフマル酸塩を含み、前記少なくとも1種の薬物動態学的ブースター若しくはエンハンサーが、ピペリン、テトラヒドロピペリン、シス-トランスピペリン、トランス,シス-ピペリン、シス,シス-ピペリン、又はそれらの組合せを含む、経口用又は注射用医薬組成物。
【請求項2】
(i)前記少なくとも1種の薬物動態学的ブースター若しくはエンハンサーが、患者に投与される前記少なくとも1種の抗レトロウイルス薬の投与頻度を低下させ、(ii)前記少なくとも1種の薬物動態学的ブースター若しくはエンハンサーが、前記少なくとも1種の抗レトロウイルス薬のバイオアベイラビリティを約10%~約70%に増大させる、請求項1に記載の経口用又は注射用医薬組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種の抗レトロウイルス薬と、前記少なくとも1種の薬物動態学的ブースター若しくはエンハンサーとの比が、重量で約100:1から約1:1である、請求項1に記載の経口用又は注射用医薬組成物。
【請求項4】
前記組成物中の前記テノホビルジソプロキシルフマル酸塩が約1mg~約300mgである、請求項1に記載の経口用又は注射用医薬組成物。
【請求項5】
前記組成物中の前記テノホビルアラフェナミドフマル酸塩が約1mg~約25mgである、請求項1に記載の経口用又は注射用医薬組成物。
【請求項6】
前記組成物中の前記ダルナビルが約1mg~約800mgである、請求項1に記載の経口用又は注射用医薬組成物。
【請求項7】
前記組成物中の前記ピペリンが約0.5mg~約400mgである、請求項1に記載の経口用又は注射用医薬組成物。
【請求項8】
治療有効量の少なくとも1種の抗レトロウイルス薬;治療有効量の少なくとも1種の薬物動態学的ブースター若しくはエンハンサー;及び担体、希釈剤、充填剤、結合剤、潤滑剤、流動促進剤、崩壊剤、増量剤、香味剤、又はそれらの任意の組合せを含む1種以上の薬学的に許容される医薬品添加剤を含み、前記少なくとも1種の抗レトロウイルス薬が、テノホビルアラフェナミドフマル酸塩、ダルナビル、又はテノホビルジソプロキシルフマル酸塩を含み、前記少なくとも1種の薬物動態学的ブースター若しくはエンハンサーが、ピペリン、テトラヒドロピペリン、シス-トランスピペリン、トランス,シス-ピペリン、シス,シス-ピペリン、又はそれらの組合せを含む、経口用又は注射用の医薬組成物。
【請求項9】
前記経口用組成物が、錠剤、ミニ錠剤、顆粒、スプリンクル、カプセル剤、サシェ剤、粉末、ペレットの形態であり、前記注射用組成物が、溶液、懸濁液、エマルジョン、凍結乾燥粉末の形態、又はキットの形態である、請求項8に記載の経口用又は注射用の医薬組成物。
【請求項10】
前記経口用又は注射用医薬組成物が、レトロウイルスによって引き起こされる疾患の治療又は予防に使用される、請求項8に記載の経口用又は注射用医薬組成物。
【請求項11】
前記経口用又は注射用医薬組成物が、B型肝炎ウイルスによって引き起こされる疾患の治療又は予防に使用される、請求項8に記載の経口用又は注射用医薬組成物。
【請求項12】
治療有効量の少なくとも1種の抗レトロウイルス薬と、治療有効量の少なくとも1種の薬物動態学的ブースター若しくはエンハンサーとを、1種以上の薬学的に許容される医薬品添加剤と混合して医薬組成物を作製することを含み、前記少なくとも1種の抗レトロウイルス薬が、テノホビルアラフェナミドフマル酸塩、ダルナビル、又はテノホビルジソプロキシルフマル酸塩を含み、前記少なくとも1種の薬物動態学的ブースター若しくはエンハンサーが、ピペリン、テトラヒドロピペリン、シス-トランスピペリン、トランス,シス-ピペリン、シス,シス-ピペリン、又はそれらの組合せを含む、抗レトロウイルス薬のバイオアベイラビリティを向上させる医薬組成物を調製する方法。
【請求項13】
治療有効量の少なくとも1種の抗レトロウイルス薬と、治療有効量の少なくとも1種の薬物動態学的ブースター若しくはエンハンサーと、を含み、前記少なくとも1種の抗レトロウイルス薬が、前記少なくとも1種の薬物動態学的ブースター若しくはエンハンサーとは別の組成物であり、前記少なくとも1種の抗レトロウイルス薬が、テノホビルアラフェナミドフマル酸塩、ダルナビル、又はテノホビルジソプロキシルフマル酸塩を含み、前記少なくとも1種の薬物動態学的ブースター若しくはエンハンサーが、ピペリン、テトラヒドロピペリン、シス-トランスピペリン、トランス,シス-ピペリン、シス,シス-ピペリン、又はそれらの組合せを含む、レトロウイルス又はB型肝炎ウイルスによって引き起こされる疾患を治療するためのキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、同時係属中のインド仮特許出願番号201621005051(2016年2月12日付け提出)、同時係属中のインド仮特許出願番号201621032504号(2016年9月23日付け提出)、及び同時継続中のインド仮特許出願番号201621040945号(2016年11月30日付け提出)に基づく優先権を主張する。これらの出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、少なくとも1種の抗レトロウイルス薬と、少なくとも1種の薬物動態学的ブースター又はエンハンサーと、を含む医薬組成物に関する。本発明はまた、ウイルスによって引き起こされる疾患、具体的にはレトロウイルス又はB型肝炎ウイルスによって引き起こされる疾患の防止、治療、又は予防のためのその製造方法及び前記組成物の使用を提供する。
【背景技術】
【0003】
後天性免疫不全症候群(AIDS)を引き起こすウイルスであるヒト免疫不全ウイルス(HIV)は、世界で最も重篤な健康懸念の1つとなっている。HIVは、レトロウイルスと呼ばれるウイルスのクラスに属している。レトロウイルスはRNA(リボ核酸)ウイルスであり、複製するには、ウイルスはそれらのRNAのDNA(デオキシリボ核酸)コピーを作製しなければならない。ウイルスを複製させるのはDNA遺伝子である。全てのウイルスと同様に、HIVは細胞の内部でのみ複製し、細胞の機構が再生するのを制御する。しかしながら、HIVや他のレトロウイルスのみが、いったん細胞の内部に入ると、逆転写酵素と呼ばれる酵素を使ってそれらのRNAをDNAに変換し、これを宿主細胞の遺伝子に組み込むことができる。
【0004】
HIVは、ヒト免疫系の機能を維持するのに重要な白血球であるCD4陽性(CD4)T細胞を破壊する。これらの細胞の破壊は、HIVに感染した人々を、他の感染症、疾患、及び他の合併症にかかりやすくする。「Tヘルパー細胞」と呼ばれることもあるこれらの細胞は、免疫応答において中心的な役割を果たし、免疫系の他の細胞がそれらの特別な機能を果たすことを知らせる。HIVがこれらの細胞を攻撃するにつれて、ウイルスに感染した人は感染症や疾患を克服する術がなくなっていき、最終的にはAIDSが発症する。
【0005】
健康で感染していない人は、通常、1立方ミリメートル(mm3)の血液あたり800~1200個のCD4T細胞を有している。HIVは、身体の免疫系において極めて重要な役割を果たすヒトT-4リンパ球細胞に対して特別な親和性があると考えられている。HIV感染白血球(WBC)は、WBC集団の減少を招く。結果的に、免疫系は様々な日和見疾患に対して機能不全や無効にされる。HIV感染症が未治療である間、ヒトの血液中のこれらの細胞の数は次第に減少する。CD4T細胞数が200/mm3を下回ると、HIV疾患の最終段階であるAIDSの象徴である日和見感染症やがんに特にかかりやすくなる。AIDSを病んでいる人々は、しばしば肺、腸管、脳、眼、及び他の臓器の感染の他に、身体を衰弱させる体重減少、下痢、神経症状、並びにカポジ肉腫及び特定のタイプのリンパ腫等の癌も患う。
【0006】
最初の症例は1981年に報告され、現在HIVに罹っている人々は今日では約3,690万人に上り、流行の初期から何千万人もの人々がエイズ関連を原因として亡くなっている。世界の全ての地域で新たな症例が報告されているが、約70%がサハラ以南のアフリカで見られる。更に、UNAIDSのファクトシート2016によると、2015年には、HIVに罹っている人々は3,670万人に上っていた。2015年12月現在、HIVに罹っている1700万人の人々が抗レトロウイルス療法を受けていた。2015年には、世界中でAIDS関連を原因として110万人が死亡した。
【0007】
HIVは、AIDSの原因物質であり、インドに限らず世界的にも大きな医療問題を引き起こしている。AIDSは、身体の免疫系の漸進的破壊並びに中枢神経系及び末梢神経系の進行性悪化を引き起こす。1980年代初頭に最初に認識されて以来、AIDSは急速に蔓延し、今では人口の比較的限られた区域内で多発している。徹底的な調査により、ヒト免疫不全ウイルス又はHIVと一般に呼ばれる、原因物質であるヒトT-リンパ球向性レトロウイルス111(HTLV-111)が発見された。
【0008】
HIV治療のために現在入手可能な抗レトロウイルス薬には、ジドブジン又はAZT(Retrovir(登録商標))、ジダノシン又はDDI(Videx(登録商標))、スタブジン又はD4T(Zenith(登録商標))、ラミブジン又は3TC(Epivir(登録商標))、ザルシタビン又はDDC(Hivid(登録商標))、アバカビル硫酸塩(Ziagen(登録商標))、テノホビルジソプロキシルフマル酸塩(Viread(登録商標))、エムトリシタビン(Emtriva(登録商標))、コンビビル(登録商標)(3TC及びAZTを含む)、トリジビル(登録商標)(アバカビル、3TC及びAZTを含む)、Epzicom(登録商標)(アバカビル及びラミブジンを含む);ネビラピン(Viramune(登録商標))、デラビルジン(Rescriptor(登録商標))、エファビレンツ(Sustiva(登録商標))、サキナビル(Invirase(登録商標)、Fortovase(登録商標))、インジナビル(Crixivan(登録商標))、リトナビル(Norvir(登録商標))、ネルフィナビル(Viracept(登録商標))、アンプレナビル(Agenerase(登録商標))、アタザナビル(Reyataz(登録商標))、Evotaz(登録商標)(アタザナビル及びコビシスタットを含む)、ホスアンプレナビル(Lexiva(登録商標))、Kaletra(登録商標)(ロピナビル及びリトナビルを含む)、エンフュービルタイド(T-20、Fuzeon(登録商標))、Truvada(登録商標)(テノホビル及びエムトリシタビンを含む)、ダルナビル(Prezista(登録商標))、Prezcobix(登録商標)(ダルナビル及びコビシスタットを含む)、ドルテグラビル(Tivicay(登録商標))、Triumeq(登録商標)(ドルテグラビル、アバカビル、及びラミブジンを含む)、エルビテグラビル(Vitekta(登録商標))、Genvoya(登録商標)(エルビテグラビル、コビシスタット、テノホビルアラフェナミドフマル酸塩、及びエムトリシタビンを含む)、Stribild(登録商標)(エルビテグラビル、コビシスタット、テノホビルジソプロキシルフマル酸塩、及びエムトリシタビンを含む)ラルテグラビル(Isentress(登録商標))、Complera(登録商標)(エムトリシタビン、テノホビルジソプロキシルフマル酸塩、及びリルピビリンを含む)、並びにAtripla(登録商標)(テノホビル、エムトリシタビン、及びエファビレンツの固定用量3剤併用薬を含む)が含まれる。
【0009】
HIVに罹患している人々の5~10%がB型肝炎ウイルスにも感染している(しばしば共感染と呼ばれる)。HIVに罹患しいる人々は、B型肝炎を自然治癒する可能性は低い。HIV及び肝炎の共感染を有する人々は、肝臓疾患がより速く進行し、そのうえB型肝炎治療に反応しない可能性がある。しかしながら、B型肝炎を有していることがHIV疾患を悪化させるわけでもなさそうである。B型肝炎ウイルス(HBV)感染は、世界で最も一般的な慢性ウイルス感染である。推定20億人の人々が感染しており、3億5000万人以上がウイルスの慢性キャリアである。HBVは感染した血液又は精液と接触して伝染する。
【0010】
更に、AIDS(HIV)とB型肝炎ウイルスとは、逆転写の共有、それらの祖先起源及び一般的な遺伝学的要素、並びにそれらの伝達様式の点で著しく類似している。大部分のB型肝炎変異体の複製能には厳しい制限があるが、どちらも超変異性であり、主に逆転写の誤りのためにquasi-species(準種)として存在する。それらはB型肝炎ウイルスにおけるインテグラーゼの欠如及び感染した宿主におけるそれらの病原性の点で異なる。HIVは主に宿主への致命的な損傷を制限しようとするウイルス調節制御要素による抗原変動、免疫回避、及び免疫機能の障害によって生き残る。B型肝炎ウイルスは主に感染肝細胞の細胞傷害性T細胞破壊を直接回避するe抗原/コア遺伝子の突然変異によって生存するか、又は細胞傷害性T細胞応答におけるアネルギーの誘発を介して間接的に感染細胞の破壊を制限する。
【0011】
更に、ラミブジン、アデホビル、エンテカビル、及びテノホビル等の抗レトロウイルス薬は、慢性HBV感染の治療に承認されている。
【0012】
薬物動態学的ブースター又はエンハンサーは、抗レトロウイルス薬の有効性を高めるために使用される。薬物動態学的ブースター又はエンハンサーが抗レトロウイルス薬と同時投与されると、薬物動態学的エンハンサーは、抗レトロウイルス薬の分解を妨げ、抗レトロウイルス薬を体内に長時間且つ高濃度で残留させる。薬物動態学的ブースター又はエンハンサーは、シトクロムP450 3A4酵素系の阻害を特異的に引き起こし、同時投与される抗レトロウイルス薬の血漿濃度の上昇をもたらす。プロテアーゼ阻害剤は、そのようなクラスの抗レトロウイルス薬であり、一般的に薬物耐性の高い遺伝的バリアを示し、ひいては薬物動態学的ブースター又はエンハンサーを同時投与する必要がある。HIVの治療に承認された全ての薬剤のうち、リトナビル及びコビシスタットは、薬物動態学的な「ブースター」又は「エンハンサー」と呼ばれている。リトナビルは薬物代謝酵素シトクロムP450(CYP)3A4を阻害するその能力のために使用される。低用量の投与でリトナビルはCYP3A4によって広範に代謝されるプロテアーゼ阻害剤、例えばロピナビル及びアタザナビルの代謝を低下させ、従って薬物曝露を増強する。コビシスタットはCYP3Aアイソザイムの強力な阻害剤であり、CYP3Aによって代謝される薬物、例えばプロテアーゼ阻害剤、即ち、アタザナビル及びダルナビルの血漿濃度を増大させる。
【0013】
リトナビル及びコビシスタットの他に、文献に報告されている多数の天然に存在する物質があり、特定の薬物の薬物動態学的活性を改善するために調査することができる。
【0014】
バイオエンハンサーとして作用する天然に存在するこれらの物質は、それらと混合される薬物のバイオアベイラビリティを促進し、且つ増大させる化学物質であり、薬物との相乗効果は示さない。これらのバイオエンハンサーの例には、ピペリン、ガーリック、キャラウェイ(Carum carvi)、クミン(Cumin cyminum)、リセルゴール、ナリンジン、ケルセチン、ニアジリジン、グリチルリチン、ステビア、ウシ尿、留出ジンジャー等が含まれる。
【0015】
これらの薬物動態学的「ブースター」又は「エンハンサー」は、抗ウイルス療法のコストを低減し、患者の錠剤数の負担を軽減し、且つ/又は治療量以下の抗ウイルス濃度のリスクを低減することができる(例えば、耐性の発生の他に、抗ウイルス療法に対する遵守の向上も)。
【0016】
しかしながら、この薬物動態の向上は、それ自体のリスクと関連している可能性がある。相互作用を引き起こす薬物(precipitant drug)、例えばブースター又はエンハンサーは、相互作用によって影響を受ける薬物(object drug)の排除を阻害するだけでなく、それ自体の副作用を起こさない用量で投与しなければならないかもしれない。
【0017】
従って、通常は強力阻害剤であるエンハンサーは、意図せず他の薬物の排除を阻害し、望ましくない副作用を招く可能性がある。また、エンハンサーの用量が注意深く調節されないか、又は不十分若しくは過剰である場合、相互作用によって影響を受ける薬物の濃度の減少又は増大のいずれかを最終的に引き起こす可能性がある。従って、これらの側面を考慮すると、エンハンサーの適切な用量の選択が重要な役割を果たす。
【0018】
例えば、リトナビルは抗ウイルス活性を有しているが、胃腸障害、特に慢性下痢及び脂質異常症をはじめとする望ましくない副作用を引き起こす。次にコビシスタットは、リトナビルとほぼ同程度の効果を発揮するものの、抗ウイルス活性又はその他の問題のある副作用はいずれもなかった。
【0019】
コビシスタットはCYP3A4の基質であり(CYP2D6は代謝の小経路である)、それ自体の代謝を阻害する。更に、コビシスタットはP-糖タンパク質(P-gp)及びCYP2D6も阻害し、ひいてはコビシスタットと共に起こり得るいくつかの潜在的相互作用が存在する。
【0020】
さらに、HIV治療中の患者は、他の非HIV治療薬との相互作用の危険性が常にあり、コビシスタットは、制酸薬、ベンゾジアゼパム、β遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、勃起不全薬、吸入/注射用コルチコステロイド、スタチン、経口避妊薬プロゲスチン、リファンピン、及びマラビロックとの重要な薬物相互作用を示すことが知られている。
【0021】
現在使用されている薬物動態学的エンハンサー又はブースターは、意図せず他の薬物の排除を阻害し、望ましくない副作用を招く。また、ピペリン及び/又はその構造類似体、例えばテトラヒドロピペリン、シス,トランスピペリン、トランス,シス-ピペリン、シス,シス-ピペリン、及びトランス,トランス-ピペリンの使用が、そのような抗レトロウイルス薬のバイオアベイラビリティを向上させることは知られていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
従って、そのような抗レトロウイルス薬の投与量、これらの薬物によって示される副作用を低減する他に、これの最適な濃度を維持する、薬物動態学的ブースター又はエンハンサーと、HIVの治療のためのそのような抗レトロウイルス薬との併用療法を提供する必要性が依然としてある。更に、天然に存在する薬物動態学的ブースター又はエンハンサーを使用した場合、同時に投与される他の非HIV医薬品との相互作用が排除又は低減される。
【課題を解決するための手段】
【0023】
いくつかの実施形態では、本発明の目的は、少なくとも1種の抗レトロウイルス薬と、少なくとも1種の薬物動態学的ブースター又はエンハンサーと、を含む組成物を提供することである。
【0024】
いくつかの実施形態では、本発明の別の目的は、少なくとも1種の抗レトロウイルス薬と、副作用が低減された少なくとも1種の薬物動態学的ブースター又はエンハンサーと、を含む組成物を提供することである。
【0025】
いくつかの実施形態では、本発明のさらに別の目的は、少なくとも1種の抗レトロウイルス薬と、薬物相互作用が低減された少なくとも1種の薬物動態学的ブースター又はエンハンサーと、を含む組成物を提供することである。
【0026】
いくつかの実施形態では、本発明の別の目的は、1日1回又は2回投与について、少なくとも1種の抗レトロウイルス薬と、少なくとも1種の薬物動態学的ブースター又はエンハンサーと、を含む組成物を提供することである。
【0027】
いくつかの実施形態では、本発明の別の目的は、少なくとも1種の抗レトロウイルス薬と、低減された用量の少なくとも1種の薬物動態学的ブースター又はエンハンサーと、を含む組成物を提供することである。
【0028】
いくつかの実施形態では、本発明の更に別の目的は、キットの形態の、少なくとも1種の抗レトロウイルス薬と、少なくとも1種の薬物動態学的ブースター又はエンハンサーと、を含む組成物を提供することである。
【0029】
いくつかの実施形態では、本発明の更に別の目的は、少なくとも1種の抗レトロウイルス薬と、少なくとも1種の薬物動態学的なブースター又はエンハンサーと、を投与することを含む、ウイルスによって引き起こされる疾患、具体的にはレトロウイルスによって引き起こされる疾患、具体的には後天性免疫不全症候群又はHIV感染症を防止、治療又は予防する方法を提供することである。
【0030】
いくつかの実施形態では、本発明の更に別の目的は、少なくとも1種の抗レトロウイルス薬と、少なくとも1種の薬物動態学的ブースター又はエンハンサーと、を投与することを含む、ウイルスによって引き起こされる疾患、具体的にはB型肝炎ウイルスによって引き起こされる疾患を治療する方法を提供することである。
【0031】
いくつかの実施形態では、本発明の更に別の目的は、ウイルスによって引き起こされる疾患、具体的にはレトロウイルスによって引き起こされる疾患、具体的には後天性免疫不全症候群又はHIV感染症の治療又は予防のための、少なくとも1種の抗レトロウイルス薬と、少なくとも1種の薬物動態学的ブースター又はエンハンサーと、を含む医薬組成物の使用を提供することである。
【0032】
いくつかの実施形態では、本発明の更に別の目的は、ウイルス、具体的にはB型肝炎ウイルスによって引き起こされる疾患の治療のための、少なくとも1種の抗レトロウイルス薬と、少なくとも1種の薬物動態学的ブースター又はエンハンサーと、を含む医薬組成物の使用を提供することである。
【0033】
本発明の1つの態様によれば、少なくとも1種の抗レトロウイルス薬と、少なくとも1種の薬物動態学的ブースター又はエンハンサーと、1種以上の薬学的に許容される医薬品添加剤と、を含む医薬組成物が提供される。
【0034】
本発明の別の態様によれば、少なくとも1種の抗レトロウイルス薬と、少なくとも1種の薬物動態学的ブースター又はエンハンサーと、少なくとも1種以上の薬学的に許容される医薬品添加剤と、を含む医薬組成物を調製する方法が提供される。
【0035】
本発明の別の態様によれば、少なくとも1種の抗レトロウイルス薬と、本発明による少なくとも1種の薬物動態学的なブースター又はエンハンサーと、を含む治療有効量の医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、ウイルスによって引き起こされる疾患、具体的にはレトロウイルスによって引き起こされる疾患、特にAIDS又はHIV感染症を治療する方法が提供される。
【0036】
本発明の別の態様によれば、少なくとも1種の抗レトロウイルス薬と、本発明による少なくとも1種の薬物動態学的なブースター又はエンハンサーと、を含む治療有効量の医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、B型肝炎ウイルスによって特異的に引き起こされるウイルスによって引き起こされる疾患を治療する方法が提供される。
【0037】
本発明の別の態様によれば、ウイルスにより引き起こされる疾患、具体的にはレトロウイルスにより引き起こされる疾患、特にAIDS又はHIV感染症の治療のための薬剤の製造における、少なくとも1種の抗レトロウイルス薬と、本発明による少なくとも1種の薬物動態学的ブースター又はエンハンサーと、を含む医薬組成物の使用が提供される。
【0038】
本発明の別の態様によれば、ウイルスによって引き起こされる疾患、具体的にはB型肝炎ウイルスによって引き起こされる疾患の治療のための薬剤の製造における、少なくとも1種の抗レトロウイルス薬と、本発明による少なくとも1種の薬物動態学的ブースター又はエンハンサーと、を含む医薬組成物の使用が提供される。
【0039】
いくつかの実施形態では、治療有効量の少なくとも1種の抗レトロウイルス薬と、治療有効量の少なくとも1種の薬物動態学的ブースター若しくはエンハンサー又はそれらの誘導体と、を含む経口用又は注射用の医薬組成物が提供される。
【0040】
いくつかの実施形態では、治療有効量の少なくとも1種の抗レトロウイルス薬;治療有効量の少なくとも1種の薬物動態学的ブースター若しくはエンハンサー又はそれらの誘導体;及び担体、希釈剤、充填剤、結合剤、潤滑剤、流動促進剤、崩壊剤、増量剤、香味剤
、又はそれらの任意の組合せを含む1種以上の薬学的に許容される医薬品添加剤を含む経口用又は注射用の医薬組成物が提供される。
【0041】
いくつかの実施形態では、(i)治療有効量の少なくとも1種の抗レトロウイルス薬又は抗ウイルス薬;(ii)治療有効量の少なくとも1種の薬物動態学的ブースター若しくはエンハンサー又はそれらの誘導体;(iii)担体、希釈剤、充填剤、結合剤、潤滑剤、流動促進剤、崩壊剤、増量剤、香味剤、又はそれらの任意の組合せを含む1種以上の薬学的に許容される医薬品添加剤を含む医薬組成物を投与することを含む、レトロウイルス又はB型肝炎ウイルスによって引き起こされる疾患を、そのような治療を必要とする患者において治療する方法が提供される。
【0042】
いくつかの実施形態では、治療有効量の少なくとも1種の抗レトロウイルス薬と、治療有効量の少なくとも1種の薬物動態学的ブースター若しくはエンハンサー又はそれらの誘導体とを、1種以上の薬学的に許容される医薬品添加剤と混合して医薬組成物を作製することを含む、抗レトロウイルス薬のバイオアベイラビリティを向上させる医薬組成物を作製する方法が提供される。
【0043】
いくつかの実施形態では、治療有効量の少なくとも1種の抗レトロウイルス薬と、治療有効量の少なくとも1種の薬物動態学的ブースター若しくはエンハンサー又はそれらの誘導体とを含み、少なくとも1種の抗レトロウイルス薬は、少なくとも1種の薬物動態学的ブースター若しくはエンハンサー又はそれらの誘導体とは別の組成物である、レトロウイルス又はB型肝炎ウイルスによって引き起こされる疾患を治療するためのキットが提供される。
【0044】
いくつかの実施形態では、治療有効量の少なくとも1種の抗レトロウイルス薬を準備することと、治療有効量の少なくとも1種の薬物動態学的ブースター若しくはエンハンサー又はそれらの誘導体を準備することとを含む、経口用抗レトロウイルス薬のバイオアベイラビリティを向上させる方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】テノホビルアラフェナミドフマル酸塩(TAF)及びテノホビルジソプロキシルフマル酸塩(TDF)の透過性を示す単方向アッセイの結果の棒グラフを示す図である。TDF及びTAFは、低~中程度の透過性の薬物であることが観察された。
【
図2】ジゴキシン10μM、ジゴキシン10μM(A-B)+ピペリン10μM、TAF100μM(VRD-1063/16/187)、TAF100μM(VRD-1063/16/187)+ピペリン0.1μM、及びTAF100μM(VRD-1063/16/187)+ピペリン10μMの双方向アッセイの結果の棒グラフを示す図である。結果は、TAFの排出比(efflux ratio)を減少させることにより、TAF吸収がピペリンにより増大することを示した。
【
図3】ジゴキシン10μM、ドルテグラビル5μM、ドルテグラビル5μM+ピペリン1μM、ドルテグラビル5μM+ピペリン10μM、ドルテグラビル5μM+ベラパミル1μM、及びドルテグラビル5μM+ベラパミル10μMの双方向アッセイの結果の棒グラフを示す図である。
【
図4】ジゴキシン10μM、ダルナビル40μM、ダルナビル40μM+ピペリン1μM、ダルナビル40μM+ピペリン10μM、ダルナビル40μM+コビシスタット10μM、及びダルナビル40μM+コビシスタット100μMの双方向アッセイの結果の棒グラフを示す図である。結果は、TAFの排出比を減少させることにより、ダルナビルの吸収がピペリンにより増大することを示した。
【
図5】ジゴキシン10μM、TDF200μM、TDF100μM、TDF100μM+ピペリン10μM、及びTDF100μM+テトラヒドロピペリン10μMの双方向アッセイからの結果の棒グラフを示す図である。結果は、排出比を減少させることによりTDFの吸収がピペリンにより増大し、排出比を減少させることによりTDFの吸収がテトラヒドロピペリンにより増大し、且つTDFの透過性に匹敵する改善がピペリン及びテトラヒドロピペリンの両方により見出されたことを示した。
【
図6】異なる時点でのTDF300mg及びTDF300mg+ピペリン20mgにおけるテノホビルの血漿濃度の棒グラフを示す図である。
【
図7】異なる時点でのTDF300mg及びTDF300mg+ピペリン20mgにおけるテノホビルの血漿濃度の棒グラフを示す図である。
【
図8】TDF300mg、TDF300mg+ピペリン20mg及びTDF150mg+ピペリン20mgにおけるテノホビルの時間依存性血漿濃度を示す図である。
【0046】
図は縮尺どおりに描写又は記録されていないことを理解されたい。更に、図中のオブジェクト間の関係は、縮尺どおりではない場合があり、実際にはサイズとは逆の関係にある場合がある。これらの図は、示される各オブジェクトの構造を理解し、明瞭にすることを意図しており、ひいては構造の特定の特徴を説明するために、いくつかの特徴を誇張して示している場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0047】
詳細な説明
レトロウイルス又はB型肝炎ウイルスによって引き起こされる疾患、特にAIDS、HIV感染症又はB型肝炎の治療のためには、最大量の薬物が作用部位に到達することが不可欠である。大抵の抗レトロウイルス薬は、低い溶解性及び/又は低い透過性を有しており、薬物のバイオアベイラビリティは大幅に低下する。
【0048】
本発明者らは、そのような抗レトロウイルス薬のバイオアベイラビリティの問題に対処する方法を見出した。特に、本発明者らは、薬物動態学的ブースター又はエンハンサーを使用することにより、これらの薬物のバイオアベイラビリティ特性を改善できることを見出した。
【0049】
抗ウイルス薬のバイオアベイラビリティの向上は、いくつかの参考文献に開示されている。Role of Piperine As A Bioavailability Enhancer, UMESH K PATIL et al International Journal of Recent Advances in Pharmaceutical Research October 2011; 4:16-23には、バイオアベイラビリティエンハンサーとしてピペリンが開示されている。
【0050】
国際公開第2004067018号には、ジドブジンのバイオアベイラビリティを改善するために、バイオエンハンサーとしてキャラウェイ(Carum carvi)の抽出物を単独で又はピペリン若しくはショウガ(Zinzeber officinale)抽出物と組み合わせて使用することが開示されている。
【0051】
Natural Bioenhancers:An overview,Deepthi V.Tatiraju et al,Journal of Pharmacognosy and Phytochemistry 2013;2(3):55-60。この論文には、ピペリンとネビラピンとの組合せが開示されており、ピペリンがネビラピンのバイオアベイラビリティを向上させていた。
【0052】
Oral bioavailability enhancement of an anti-viral drug using an herbal bio-enhancer,Mohammad Asif(ガンパット大学に提出された論文)。この論文には、ピペリンとエファビレンツとの組合せが開示されており、ピペリンがエファビレンツのバイオアベイラビリティを向上させていた。
【0053】
Bioenhancement effect of piperine and ginger oleo resin on the bioavailability of atazanavir,Swati Prakash et al,International Journal of Pharmacy and Pharmaceutical Sciences Vol 7, Issue 10, 2015。この論文には、ピペリンとアタザナビルとの組合せが開示されており、ピペリンがアタザナビルのバイオアベイラビリティを向上させていた。
【0054】
国際公開第03084462号には、インジナビル、サキナビル、アンプレナビル、ネルフィナビル、ロピナビル、及びピペリン等の抗レトロウイルスプロテアーゼ阻害剤を単一の医薬組成物中に含有する医薬組成物の製造方法が開示されている。
【0055】
いくつかの実施形態では、本発明による抗レトロウイルス薬には、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NRTI)、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)、ヌクレオチドアナログ逆転写酵素阻害剤、プロテアーゼ阻害剤(PI)、インテグラーゼ阻害剤、融合阻害剤、CCR5阻害剤、モノクローナル抗体、糖タンパク質阻害剤、及びそれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
1つの実施形態では、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NRTI)及び非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)には、ラミブジン、アバカビル、ジドブジン、エムトリシタビン、ジダノシン、スタブジン、ロブカビル、エンテカビル、アプリシタビン、センサブジン、ザルシタビン、デキセルブシタビン、アロブジン、エファビレンツ、アムドキソビル、エルブシタビン、フェスチナビル、ラシビル、レルシビリン、リルピビリン、エトラビリン、スタンピジン、ドラビリン、ダピビリンが含まれるが、これらに限定されない。
【0057】
いくつかの実施形態では、好ましくは、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NRTI)及び非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)は、アバカビル、ジダノシンである。好ましくは、1日2回投与について、アバカビルの用量は、約3mg~約300mgの範囲であり、ジダノシンの用量は、約2mg~約200mgの範囲である。
【0058】
別の実施形態では、プロテアーゼ阻害剤は、ロピナビル、リトナビル、サキナビル、ネルフィナビル、アンプレナビル、インジナビル、ネルフィナビル、アタザナビル、ラシナビル、パリナビル、チルプラナビル(tirpranavir)、ホスアンプレナビル、ダルナビル、又はチプラナビルを含むが、これらに限定されない。好ましくは、プロテアーゼ阻害剤は、チルプラナビル、ダルナビルである。好ましくは、1日2回投与について、チプラナビルの用量は、約5mg~約500mgの範囲であり、ダルナビルの用量は、約1mg~約800mgの範囲である。いくつかの実施形態では、1日2回投与について、ダルナビルの用量は、約1mg~約500mg、約20mg~約500mg、約25mg~約500mg、約30mg~約500mg、約35mg~約500mg、約25mg~約35mg、約50mg~約400mg、又は約100mg~約300mgの範囲である。いくつかの実施形態では、1日1回又は2回投与について、ダルナビルの用量は、約1mg、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790~約800mgの範囲である。各用量は、本明細書に記載されるように、1以上の単位剤形であり得る。
【0059】
別の実施形態では、インテグラーゼ阻害剤には、ドルテグラビル、エルビテグラビル、ラルテグラビル、ビクテグラビル、カボテグラビルが含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、インテグラーゼ阻害剤は、エルビテグラビル、ドルテグラビル、ラルテグラビルである。好ましくは、1日1回投与について、ドルテグラビルの用量は、約1mg~約50mgの範囲であり、エルビテグラビルの用量は、約1mg~約150mgの範囲であり、1日1回投与について、ラルテグラビルの用量は、約4mg~約400mgの範囲である。いくつかの実施形態では、1日2回投与について、ドルテグラビルの用量は、約5mg~約50mg、約20mg~約50mg、約25mg~約50mg、約25mg~約45mg、約30mg~約50mg、約30mg~約40mg、又は約35mg~約50mgである。いくつかの実施形態では、1日1回又は2回投与について、ドルテグラビルの用量は、約1mg、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49~約50mgの範囲である。各用量は、本明細書に記載されるように、1以上の単位剤形であり得る。
【0060】
別の実施形態では、融合阻害剤には、マラビロク、エンフュービルタイド、グリフィスシン、アプラビロク、ビクリビロク、プレリキサホル、ホステムサビル、アルブビルチドが含まれるが、これらに限定されない。
【0061】
別の実施形態では、CCR5阻害剤には、アプラピロク、ビクリビロク、マラビロク、セニクリビロクが含まれるが、これらに限定されない。
【0062】
別の実施形態では、モノクローナル抗体には、イバリズマブが含まれるが、これに限定されない。
【0063】
別の実施形態では、糖タンパク質阻害剤には、シフビルチドが含まれるが、これに限定されない。
【0064】
別の実施形態では、ヌクレオチドアナログ逆転写酵素阻害剤には、テノホビルアラフェナミドフマル酸塩、テノホビルジソプロキシルフマル酸塩、及びアデホビルが含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、ヌクレオチドアナログ逆転写酵素阻害剤は、テノホビルアラフェナミドフマル酸塩、及びテノホビルジソプロキシルフマル酸塩である。いくつかの実施形態では、1日2回投与について、テノホビルアラフェナミドフマル酸塩の用量は、約1mg~約25mg、約2.5mg~約25mg、約5mg~約20mg、又は約5mg~約15mgの範囲である。いくつかの実施形態では、1日1回又は1日2回投与について、テノホビルアラフェナミドフマル酸塩の用量は、約1mg、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24~約25mgの範囲である。いくつかの実施形態では、1日2回投与について、テノホビルジソプロキシルフマル酸塩の用量は、約1mg~約300mg、約1mg~約150mg、約75mg~約250mg、約100mg~約200mg、又は約120mg~約180mgの範囲である。いくつかの実施形態では、1日1回又は1日2回投与について、テノホビルジソプロキシルフマル酸塩の用量は、約1mg、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290~約300mgの範囲である。各用量は、本明細書に記載されるように、1以上の単位剤形であり得る。
【0065】
「抗レトロウイルス薬」及び「薬物動態学的ブースター又はエンハンサー」という用語は、広義には、「抗レトロウイルス薬」それ自体及び「薬物動態学的ブースター又はエンハンサー」それ自体だけでなく、その薬学的に許容される誘導体を含めて使用される。薬学的に許容される適切な誘導体には、薬学的に許容される塩、薬学的に許容される溶媒和物、薬学的に許容される水和物、薬学的に許容される無水物、薬学的に許容されるエナンチオマー、薬学的に許容されるエステル、薬学的に許容される異性体、薬学的に許容される多形体、薬学的に許容されるプロドラッグ、薬学的に許容される互変異性体、薬学的に許容される複合体等が含まれる。
【0066】
「薬物動態学的ブースター又はエンハンサー」という用語は、アルカロイドである。いくつかの実施形態では、薬物動態学的ブースター又はエンハンサーは、ピペリン、テトラヒドロピペリン、シス-ピペリン、トランス-ピペリン、シス-トランスピペリン、トランス,シス-ピペリン、シス,シス-ピペリン、トランス,トランス-ピペリン、又はそれらの組合せを含む。より好ましくは、薬物動態学的ブースター又はエンハンサーは、ピペリン又はテトラヒドロピペリン及びその類似体又は誘導体である。いくつかの実施形態では、薬物動態学的ブースター又はエンハンサーは、抗レトロウイルス薬の血漿濃度を、薬物動態学的ブースター又はエンハンサーが使用されないときと比べて10%、20、30、40、50、60、70、80、90、100%以上増大させる。
【0067】
「注射用」という用語は、医薬組成物の投与様式である。医薬組成物は、様々な手法で投与することができる。ヒトにおいて、医薬組成物は、非経口経路によって投与することができる。例えば、医薬組成物は、静脈内(例えば、静脈内注射)、皮下、皮内、又は筋肉内注射によって投与することができる。静脈内投与は、当業者に理解されるように、医薬組成物を適切な医薬担体(賦形剤)又は医薬品添加剤に混合することによって達成することができる。非経口投与に適した製剤は、好適には、患者の血液と等張性であるように製剤化され得る医薬組成物の滅菌水性調製物を含む。
【0068】
「治療有効量」又は「有効量」という用語は、投与されると、医薬組成物がウイルス又は疾患の阻害をもたらすようなものである。患者に投与される投与量は、薬物の投与される薬物動態学的特性、投与経路、患者の状態及び特徴(性別、年齢、体重、健康状態、大きさ等)、並びに症状の程度、併用療法、治療の頻度及び所望の効果をはじめとする様々な要因に依存して、単回投与又は複数回投与であり得る。
【0069】
疾患、ウイルス、又は症状の「治療」又はそれらを「治療する」という用語は、疾患、ウイルス、又は症状の徴候又は病徴を緩和するために、1種以上の薬物を患者に投与することを含むプロトコルを実行することを指す。緩和は、疾患、ウイルス、又は症状の徴候又は病徴が出現する前の他に、それらの出現後に起こり得る。従って、「治療する」又は「治療」には、疾患、ウイルス、又は症状を低減すること、予防すること又はそれらの予防が含まれる。更に、「治療する」又は「治療」は、徴候又は病徴の完全な緩和を必要とせず、治癒を必要とせず、具体的には、患者に僅かな影響しか及ぼさないプロトコルを含む。
【0070】
黒コショウ(Piper nigrum L.)及び長コショウ(Piper longum L.)の果実は、いずれもアーユルヴェーダ及びユナニ(インド伝統)医学体系の重要な薬草であり、その治療薬は一般的にハーブの混合物で構成されている。黒コショウの薬用の適用性が広いことは知られており、白内障の治療におけるその使用を含めて文書化されている。
【0071】
ピペリンは、薬物動態学的ブースター又はエンハンサーであり得る。ピペリンは、黒コショウ(Piper nigrum L.;Piperaceae)の果実に見出される主要なアルカロイドであり、メラノサイトの複製を刺激し、メラノサイト樹状突起の形成を誘発する。ピペリンは、病変部周囲の濾胞性メラノサイトへの刺激効果により白斑パッチの再増殖を引き起こすことが予想される。
【0072】
ピペリンは、化学的に(1-2E、4E-ピペリノイル-ピペリジン)として知られており、下記に示すように構造的に表される:
【0073】
【0074】
ピペリンは、胃腸管への血液供給を増大させること、塩酸分泌を減少させていくつかの薬物の分解を防止すること、消化管の乳化含量を増大させること、栄養素を腸管細胞に能動及び受動輸送することに関与するγ-グルタミルトランスペプチダーゼのような酵素を増大させることにより薬物及び栄養素の迅速な吸収を促進することによって、薬物バイオアベイラビリティを向上させることができる。
【0075】
ピペリンは、薬物のバイオトランスフォーメーションに関与する酵素を阻害し、ひいてはそれらの不活性化及び排除を防止することによって薬物のバイオアベイラビリティを増大させることができる。それはまた、細胞から物質を除去し、グルクロン酸の腸内生成を減少させることができ、その結果、より多くの物質が活性形態で体内に入ることを可能にする「ポンプ」タンパク質であるp-糖タンパク質を阻害する。
【0076】
ピペリンは、他のコショウ(Piper)種、即ち、P.acutisleginum、album、argyrophylum、attenuatum、aurantiacum、betle、callosum、chaba、cubeba、guineense、hancei、khasiana、longum、macropodum、nepalense、novae hollandiae、peepuloides、retrokacturn、及びsylvaticumにおいて発生することも報告されている。
【0077】
テトラヒドロピペリンは、ピペリンの構造類似体である。2位及び4位の2つの二重結合は飽和してテトラヒドロ類似体が得られる。テトラヒドロピペリンは、化学的に5-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-1-ピペリジン-1-イルペンタン-1-オンとして知られており、下記に示すように構造的に表される:
【0078】
【0079】
テトラヒドロピペリンは、ピペリンのように黒コショウに天然に存在する(黒コショウ含オレオレジン中で約0.7%)。テトラヒドロピペリンは、予め黒コショウオレオレジンから抽出されたピペリンから合成することができる。
【0080】
テトラヒドロピペリンの「類似体又は誘導体」という用語は、広義には、アルキルテトラヒドロピペリン類、例えば、メチルテトラヒドロピペリン又はエチルテトラヒドロピペリン、ジアルキルテトラヒドロピペリン、例えば、ジメチルテトラヒドロピペリン又はジエチルテトラヒドロピペリン、アルコキシル化テトラヒドロピペリン、例えば、メトキシテトラヒドロピペリン、ヒドロキシル化テトラヒドロピペリン、例えば、1-[(5,3-ベンゾジオキシル-5-イル)-1-ヒドロキシ-2,4-ペンタジエニル]-ピペリン、1-[(5,3-ベンゾジオキシル-5-イル)-1-メトキシ-2,4-ペンタジエニル]-ピペリン、ハロゲン化テトラヒドロピペリン、例えば、1-[(5,3-ベンゾジオキシル-5-イル)-1-オキソ-4-ハロ-2-ペンテニル]-ピペリン及び1-[(5,3-ベンゾジオキシル-5-イル)-1-オキソ-2-ハロ-4-ペンテニル]-ピペリン、ジヒドロピペリン、アルキルジヒドロピペリン、例えば、メチルジヒドロピペリン又はエチルジヒドロピペリン、ジアルキルジヒドロピペリン、例えば、ジメチルジヒドロピペリン又はジエチルジヒドロピペリン、アルコキシル化ジヒドロピペリン、例えば、メトキシジヒドロピペリン、及びハロゲン化ジヒドロピペリン、並びにそれらの薬学的に許容される塩、薬学的に許容される溶媒和物、薬学的に許容される水和物、薬学的に許容される無水物、薬学的に許容されるエナンチオマー、薬学的に許容されるエステル、薬学的に許容される異性体、薬学的に許容される多形体、薬学的に許容されるプロドラッグ、薬学的に許容される互変異性体、薬学的に許容される複合体等を含めて使用される。
【0081】
いくつかの実施形態では、好ましくは、ピペリンの用量は、約0.5mg~約400mgの範囲であり、テトラヒドロピペリンの用量は、約0.5mg~約400mgの範囲である。いくつかの実施形態では、ピペリン及び/又はテトラヒドロピペリンの用量は、約0.5mg、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390~約400mgの範囲である。いくつかの実施形態では、少なくとも1種の抗レトロウイルス薬と少なくとも1種の薬物動態学的ブースター又はエンハンサーとの比は、重量比で約100:1~約1:1である。
【0082】
好ましくは、医薬組成物は、剤形、例えば、錠剤、カプセル剤(粉末、ペレット、ビーズ、ミニ錠剤、丸薬、マイクロペレット、小型錠剤単位、複数回投与ペレットシステム(MUPS)、崩壊錠、分散錠、顆粒、及びマイクロスフェア、マルチパーティクルが充填されたもの)、サッシェ剤(粉末、ペレット、ビーズ、ミニ錠剤、丸薬、マイクロペレット、小型錠剤単位、複数回投与ペレットシステム(MUPS)、崩壊錠、分散錠、顆粒、及びマイクロスフェア、マルチパーティクルが充填されたもの)、再構成用粉末、経皮パッチ及びスプリンクルをはじめとする剤形、しかしながら、放出制御製剤、凍結乾燥製剤、凍結乾燥粉末、徐放性製剤、遅延性放出製剤、持続性放出製剤、拍動性放出製剤、二重放出製剤等の他の剤形で提供され得るが、これらに限定されない。液体、液体注射用、又は半固体剤形(液体、懸濁液、溶液、分散液、軟膏、クリーム、エマルジョン、マイクロエマルジョン、スプレー、パッチ、スポットオン)、注射剤、非経口剤、局所剤、吸入剤、バッカル剤、点鼻剤等も、本発明の範囲内で想定することができる。いくつかの実施形態では、医薬組成物はシロップを介して投与される。シロップは、糖、例えばスクロースの濃縮水溶液に活性化合物を添加することによって製造することができ、これに任意の補助成分を添加することもできる。そのような補助成分には、着香料、適切な保存剤、糖の結晶化を遅延させる薬剤、及び多価アルコール、例えばグリセロール又はソルビトール等の他の成分の溶解性を高める薬剤が含まれ得る。
【0083】
いくつかの実施形態では、錠剤のような単位剤形は、圧縮又は成形によって、任意に1種以上の補助成分と共に製造することができる。圧縮錠剤は、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、不活性希釈剤、界面活性剤、又は分散剤と任意に混合された粉末又は顆粒等の自由流動性の形態の活性化合物を用いて、適切な機械で圧縮することによって調製することができる。適切な担体を含む成形錠剤は、適切な機械で成形することによって作製することができる。
【0084】
本発明の医薬組成物は、少なくとも1種の抗レトロウイルス薬と、ピペリン又はテトラヒドロピペリンとを含む。これらの活性成分は、同時、別々、又は連続投与のために製剤化される。活性成分が連続して投与される場合、少なくとも1種の抗レトロウイルス薬又はピペリン/テトラヒドロピペリンのいずれかを最初に投与してよい。投与が同時に行われる場合、活性成分は、同じ又は異なる医薬組成物のいずれかで投与され得る。例えば、一方の活性成分が一次治療として使用され、他方の活性成分がその一次治療を補助するために使用される補助療法も本発明の実施形態である。
【0085】
従って、レトロウイルス又はB型肝炎ウイルスによって引き起こされる疾患、特にAIDS若しくはHIV感染症、又はB型肝炎の治療のための同時、別々、又は連続使用のための組合せ剤として、少なくとも1種の抗レトロウイルス薬と、ピペリン又はテトラヒドロピペリンとを含む製品が提供される。
【0086】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、レトロウイルスによって引き起こされる疾患、特に後天性免疫不全症候群又はHIV感染症を治療するために、テノホビルジジプロキシルフマル酸塩とピペリンとを含む。
【0087】
好ましい実施形態によれば、本発明の医薬組成物は、テノホビルジプロキシルフマル酸塩とピペリンとを、約100:1、50:1、40:1、30:1、20:1、10:1、8:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1~約1:1の重量比で含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、レトロウイルスによって引き起こされる疾患、特にAIDS又はHIV感染症の治療のために、テノホビルアファフェナミドフマル酸塩とピペリンとを含む。
【0089】
好ましい実施形態によれば、本発明の医薬組成物は、テノホビルアラフェナミドフマル酸塩とピペリンとを、約100:1、50:1、40:1、30:1、20:1、10:1、8:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1~約1:1の重量比で含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、レトロウイルスによって引き起こされる疾患、特に後天性免疫不全症候群又はHIV感染症を治療するために、ドルテグラビルとピペリンとを含む。
【0091】
好ましい実施形態によれば、本発明の医薬組成物は、ドルテグラビルとピペリンとを、約100:1、50:1、40:1、30:1、20:1、10:1、8:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1~約1:1の重量比で含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、レトロウイルスによって引き起こされる疾患、特に後天性免疫不全症候群又はHIV感染症を治療するために、ダルナビルとピペリンとを含む。
【0093】
好ましい実施形態によれば、本発明の医薬組成物は、ダルナビルとピペリンとを、約100:1、50:1、40:1、30:1、20:1、10:1、8:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1~約1:1の重量比で含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、B型肝炎ウイルスによって引き起こされる疾患の治療のために、テノホビルジソプロキシルフマル酸塩とピペリンとを含む。
【0095】
好ましい実施形態によれば、本発明の医薬組成物は、テノホビルジソプロキシルフマル酸塩とピペリンとを、約100:1、50:1、40:1、30:1、20:1、10:1、8:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1~約1:1の重量比で含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、B型肝炎ウイルスによって引き起こされる疾患の治療のために、テノホビルアラフェナミドフマル酸塩とピペリンとを含む。
【0097】
好ましい実施形態によれば、本発明の医薬組成物は、テノホビルアラフェナミドフマル酸塩とピペリンとを、約100:1、50:1、40:1、30:1、20:1、10:1、8:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1~約1:1の重量比で含む。
【0098】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、レトロウイルスによって引き起こされる疾患、特に後天性免疫不全症候群又はHIV感染症を治療するために、テノホビルジソプロキシルフマル酸塩とテトラヒドロピペリンとを含む。
【0099】
好ましい実施形態によれば、本発明の医薬組成物は、テノホビルジソプロキシルフマル酸塩とテトラヒドロピペリンとを、約100:1、50:1、40:1、30:1、20:1、10:1、8:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1~約1:1の重量比で含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、レトロウイルスによって引き起こされる疾患、特に後天性免疫不全症候群又はHIV感染症を治療するために、テノホビルジソアラフェナミドフマル酸塩とテトラヒドロピペリンとを含む。
【0101】
好ましい実施形態によれば、本発明の医薬組成物は、テノホビルアラフェナミドフマル酸塩とテトラヒドロピペリンとを、約100:1、50:1、40:1、30:1、20:1、10:1、8:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1~約1:1の重量比で含む。
【0102】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、レトロウイルスによって引き起こされる疾患、特に後天性免疫不全症候群又はHIV感染症を治療するために、ドルテグラビルとテトラヒドロピペリンとを含む。
【0103】
好ましい実施形態によれば、本発明の医薬組成物は、ドルテグラビルとテトラヒドロピペリンとを、約100:1、50:1、40:1、30:1、20:1、10:1、8:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1~約1:1の重量比で含む。
【0104】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、レトロウイルスによって引き起こされる疾患、特に後天性免疫不全症候群又はHIV感染症を治療するために、ダルナビルとテトラヒドロピペリンとを含む。
【0105】
好ましい実施形態によれば、本発明の医薬組成物は、ダルナビルとテトラヒドロピペリンとを、約100:1、50:1、40:1、30:1、20:1、10:1、8:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1~約1:1の重量比で含む。
【0106】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、B型肝炎ウイルスによって引き起こされる疾患を治療するために、テノホビルジソプロキシルフマル酸塩とテトラヒドロピペリンとを含む。
【0107】
好ましい実施形態によれば、本発明の医薬組成物は、テノホビルジソプロキシルフマル酸塩とテトラヒドロピペリンとを、約100:1、50:1、40:1、30:1、20:1、10:1、8:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1~約1:1の重量比で含む。
【0108】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、B型肝炎ウイルスによって引き起こされる疾患を治療するために、テノホビルアラフェナミドフマル酸塩とテトラヒドロピペリンとを含む。
【0109】
好ましい実施形態によれば、本発明の医薬組成物は、テノホビルアラフェナミドフマル酸塩とテトラヒドロピペリンとを、約100:1、50:1、40:1、30:1、20:1、10:1、8:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1~約1:1の重量比で含む。
【0110】
いくつかの実施形態では、薬物動態ブースター若しくはエンハンサー又はそれらの誘導体を抗レトロウイルス薬と共に医薬組成物中に投与すると、患者に投与される少なくとも1種の抗レトロウイルス薬の投与頻度が低下される。いくつかの実施形態では、少なくとも1種の薬物動態学的ブースター若しくはエンハンサー又はそれらの誘導体は、少なくとも1種の抗レトロウイルス薬のバイオアベイラビリティを約10%~約100%、約10%~約70%、約10%~約50%、約10%~約30%、又は約10%~約20%増大させる。いくつかの実施形態では、少なくとも1種の薬物動態学的ブースター若しくはエンハンサー又はそれらの誘導体は、少なくとも1種の抗レトロウイルス薬のバイオアベイラビリティを約10%、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、又は100%増大させる。
【0111】
本発明者らはまた、抗レトロウイルス薬のバイオアベイラビリティ特性がナノサイジングによって改善され得ることも見出した。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約1ナノメートル(nm)~約50nmのサイズを有するナノ粒子を介して投与される。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50nmのサイズを有する。
【0112】
いくつかの実施形態では、適切な医薬品添加剤は、本発明による剤形を製剤化するために使用することができ、例えば、表面安定剤若しくは界面活性剤、粘度調整剤、例えば遅延性放出ポリマーといったポリマー、安定剤、崩壊剤若しくは超崩壊剤、希釈剤、可塑剤、結合剤、流動促進剤、潤滑剤、甘味剤、着香剤、固化防止剤、乳白剤、抗微生物剤、消泡剤、乳化剤、緩衝材、着色剤、担体、充填剤、付着防止剤、溶剤、矯味剤、保存剤、酸化防止剤、テクスチャーエンハンサー、チャネリング剤、コーティング剤、又はそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0113】
いくつかの実施形態では、医薬組成物が単位剤形で提供される場合、上記のように、単位投剤はコーティングされていなくてもコーティングされていてもよい。
【0114】
本出願のこれらの態様及び他の態様は、以下の実施例を考慮して更に理解されるであろう。これらの実施例は、本出願の特定の実施形態を説明することを意図しているが、特許請求の範囲によって規定されるその範囲に限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0115】
【0116】
プロセス:
1)テノホビルアラフェナミドフマル酸塩、エムトリシタビン、ピペリン、ラクトース、コロイド状二酸化ケイ素、微結晶性セルロース、及びクロスカルメロースナトリウムを適切なブレンダーで乾式混合した。
2)工程(1)で得られたブレンドをステアリン酸マグネシウムで潤滑化し、圧密化して乾式造粒した。
3)工程(3)で得られた顆粒、コロイド状二酸化ケイ素、微結晶性セルロース、及びクロスカルメロースナトリウムを混合してブレンドを形成した。
4)工程(3)で得られたブレンドを圧縮して錠剤を形成し、オパドライ(Opadry)で被覆した。
【0117】
【0118】
プロセス:
1)テノホビルアラフェナミドフマル酸塩、ピペリン、ラクトース、コロイド状二酸化ケイ素、微結晶性セルロース、及びクロスカルメロースナトリウムを適切なブレンダーで乾燥混合した。
2)工程(1)で得られたブレンドをステアリン酸マグネシウムで潤滑化し、圧縮して錠剤を形成し、オパドライ(Opadry)で被覆した。
【0119】
【0120】
プロセス:
1)テノホビルアラフェナミドフマル酸塩、エムトリシタビン、ピペリン、エルビテグラビル、ラクトース、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、及び微結晶性セルロースを乾式混合してブレンドを得た。
2)工程(1)で得られたブレンドをステアリン酸マグネシウムで潤滑化し、圧密化し、小型圧縮して錠剤を形成した。
【0121】
【0122】
プロセス:
1)テノホビルジソプロキシルフマル酸塩、エムトリシタビン、ピペリン、エルビテグラビル、ラクトース、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、及び微結晶性セルロースを乾式混合してブレンドを得た。
2)工程(1)で得られたブレンドをステアリン酸マグネシウムで潤滑化し、圧密化し、小型圧縮して錠剤を形成した。
【0123】
【0124】
プロセス:
1)ドルテグラビルナトリウム、ピペリン、マンニトールを乾式混合し、ポビドンを水に溶解した。
2)工程(1)で得られた乾式混合物を造粒し、得られた顆粒を粉砕した。
3)工程(2)で得られた顆粒を、マンニトール、デンプングリコール酸ナトリウム、微結晶性セルロース、及びコロイド状二酸化ケイ素とブレンド化した。
4)工程(3)で得られたブレンドをフマル酸ステアリルナトリウムで潤滑化し、圧縮して被覆した。
【0125】
【0126】
プロセス:
1)ダルナビル水和物、ピペリン、微結晶性セルロース、クロスポビドン、及びコロイド状二酸化ケイ素を篩にかけ、混合した。
2)工程(1)で得られた乾式混合物を造粒し、ステアリン酸マグネシウムで潤滑化した。
3)工程(2)で得られた顆粒を圧縮し、オパドライ(Opadry)で被覆した。
【0127】
【0128】
プロセス:
1)ダルナビル水和物、ピペリン、ポビドン、微結晶性セルロース、クロスポビドン、及びコロイド状二酸化ケイ素を篩にかけ、混合した。
2)工程(1)で得られた乾式混合物を造粒し、ステアリン酸マグネシウムで潤滑化した。
3)工程(2)で得られた顆粒を圧縮し、オパドライ(Opadry)で被覆した。
【0129】
【0130】
プロセス:
1)ダルナビルエタノール付加物、ピペリン、ポビドン、ケイ化微結晶性セルロース、クロスポビドン、及びコロイド状二酸化ケイ素を篩にかけ、混合した。
2)工程(1)で得られた乾式混合物を造粒し、ステアリン酸マグネシウムで潤滑化した。
3)工程(2)で得られた顆粒を圧縮し、オパドライ(Opadry)で被覆した。
【0131】
【0132】
プロセス:
1)ダルナビルエタノール付加物、ピペリン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ケイ化微結晶性セルロース、クロスポビドン、及びコロイド状二酸化ケイ素を篩にかけ、混合した。
2)工程(1)で得られた乾式混合物を造粒し、ステアリン酸マグネシウムで潤滑化した。
3)工程(2)で得られた顆粒を圧縮し、オパドライ(Opadry)で被覆した。
【0133】
【0134】
プロセス:
1)ラミブジン、微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、アルファー化デンプン、及びステアリン酸マグネシウムをブレンド化し、顆粒体に圧縮した。
2)テノホビルジソプロキシルフマル酸塩、ピペリン、微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、及びステアリン酸マグネシウムをブレンド化し、顆粒体に圧縮した。
3)微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、及びステアリン酸マグネシウムを、工程(1)及び工程(2)で得られたブレンドと混合し、圧縮して、シールコーティング、次いでフィルムコーティングを有する錠剤を形成した。
【0135】
【0136】
プロセス
1)エムトリシタビン、テノホビルジソプロキシルフマル酸塩、ピペリン、ラクトース一水和物、微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、及びステアリン酸マグネシウムを混合し、顆粒体に圧縮した。
2)微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、及びステアリン酸マグネシウムをブレンドし、顆粒体に圧縮した。
3)ポリソルベート80、ポビドン、及びラクトースを水に溶解した。
4)リルピビリンを、工程(3)で得られた溶液に添加してスラリーを形成した。
5)ラクトース一水和物及びクロスポビドンの乾式混合物を、工程(4)で得られたスラリーに添加した。
6)微結晶性セルロース、クロスポビドン、及びステアリン酸マグネシウムを、工程(5)で得られた乾式ブレンドに添加した。
7)工程(1)で得られたブレンドを、工程(6)で得られたブレンドと共に圧縮して、フィルムコーティングを有する二層錠剤を形成した。
【0137】
【0138】
プロセス:
1)エムトリシタビン、テノホビルジソプロキシルフマル酸塩、ピペリン、ラクトース一水和物、微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、及びステアリン酸マグネシウムを混合し、ブレンド化して顆粒体を形成した。
2)微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、及びステアリン酸マグネシウムを混合し、ブレンド化した。
3)工程(1)及び工程(2)で得られたブレンドを圧縮し、被覆してフィルムコーティングを有する錠剤を形成した。
【0139】
【0140】
プロセス:
1)エムトリシタビン、テノホビルジソプロキシルフマル酸塩、ピペリン、ラクトース一水和物、微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、及びステアリン酸マグネシウムを混合し、ブレンド化して顆粒を形成した。
2)微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、及びステアリン酸マグネシウムを、工程(1)で得られたブレンドに添加し、更にブレンド化した。
3)エファビレンツ、微結晶性セルロース、及びクロスカルメロースナトリウムをSLSに添加し、次いでヒドロキシプロピルセルロースに添加して溶液を形成し、顆粒化した。
4)ラクトース一水和物及びステアリン酸マグネシウムをブレンド化し、圧縮して、フィルムコーティングを有する二層錠剤を形成した。
【0141】
【0142】
プロセス:
1)ラミブジン、微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、アルファー化デンプン、及びステアリン酸マグネシウムをブレンド化して顆粒体を形成した。
2)テノホビルジソプロキシルフマル酸塩、ピペリン、微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、及びステアリン酸マグネシウムをブレンド化して顆粒体を形成した。
3)微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、及びステアリン酸マグネシウムを、工程(1)及び工程(2)で得られたブレンドと混合した。
4)エファビレンツ、微結晶性セルロース、及びクロスカルメロースナトリウムをSLSに添加し、次いでヒドロキシプロピルセルロースに添加して溶液を形成し、造粒した。
5)ラクトース一水和物及びステアリン酸マグネシウムをブレンド化し、圧縮して、シールコーティング、次いでフィルムコーティングを有する二層錠剤を形成した。
【0143】
本発明をより完全に理解するために、以下の調製方法及び試験方法を記載する。これらの方法は、説明を目的としており、決して本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0144】
調製及び試験方法
I)材料
カフェイン(高透過性マーカー)、アテノロール(低透過性マーカー)、ジゴキシン(既知のP-gp基質)、TDF(MD1431532)、TAF(VRD-1063/16/187)、HBSS緩衝液、MES水和物、HEPES粉末、ウシ胎児血清(FBS)、最小必須培地(MEM)、ルシファーイエロー、ピペリン(P-gp阻害剤)
【0145】
方法
1)Caco-2細胞培養
【0146】
Caco-2細胞を、10%血清を含むMEM培地で培養し、75000細胞/mLの密度で播種し、37℃、5%CO2で24ウェルトランスウェルプレートで21日間培養した。上皮細胞抵抗測定器(TEER)を用いて単層の完全性を断続的に(0~21日目)調べた。細胞を薬物で以下のように処理した:
【0147】
2)単方向アッセイ(A-B)
【0148】
ストック調製物:全ての薬物の10mMストックをDMSO中で調製した。試験濃度は、プレート計画に従って10mM MES水和物pH6.8を含有するHBSS緩衝液中で更に調製した。また、pH7.4の10mM HEPESを含むHBSS緩衝液を調製した。
【0149】
【0150】
アッセイプロトコル
【0151】
400μLのサンプルを、10mM MES水和物pH6.8と共に二重に調製したアピカル側(A)へのプレート設定に従ってウェルに添加し、10mM HEPES pH7.4を含む800μLのHBSSを全ての基礎ウェル(B)に添加した。サンプルを基底側から60、90、及び120分で採取した。マスバランスサンプルをアピカル側から0及び120分で採取した。サンプルをLCMS-MSで分析した。
【0152】
4)ピペリン(P-gp阻害剤)の透過性に及ぼす効果を研究するための双方向アッセイ(A-B及びB-A)
プレート研究
【表16】
【0153】
アッセイプロトコル
【0154】
400μLのサンプルを、基底ウェル中の800μLのHBSS pH7.4と共に二重にアピカル側へのプレート設定に従ってウェルに添加した。サンプルを基底側から60、90、及び120分で採取した。マスバランスサンプルをアピカル側から0及び120分で採取した。
【0155】
B-Aについては、それぞれの希釈液800μLを、アピカルウェル中の400μLのHBSS pH 7.4と共に二重に基底側に添加した。サンプルをアピカル側から60、90、及び120分で採取した。マスバランスサンプルを基底側から0及び120分で採取した。サンプルをLCMS-MSで分析した。
【0156】
実験の最後に、ルシファーイエローを用いて単層の完全性を調べ、100μg/mLのルシファーと共に細胞をインキュベートすることによってルシファーイエローの拒絶反応(%)を計算した。
【0157】
5)データ分析
【0158】
Pappは以下のように計算した:
1秒あたりの単位における見掛け透過率(Papp)は、以下の式を用いて計算することができる。
シングルポイント法の場合:
Papp=(V/(T*A))*(C0/Ct)
マルチポイント法の場合:
Papp=(dQ/dt)/(A*C0)
%マスバランス=100-[CR120*VR+CD120*VD/C0*VD]
ルシファーイエローについて:
%Lucifer Yellow Passage=[RFU(test)RFU(blank)/RFU(equilibrium)-RFU(blank)]*100
【0159】
【0160】
【0161】
【0162】
結論
TDF及びTAFは、低~中程度に透過性の薬物であることが観察されている。更に、TAFの排出比を減少させることにより、TAF吸収がピペリンにより増大する。上記のデータは、TAFが排出トランスポーターの基質であり、ひいてはバイオアベイラビリティが低いことを示している。このデータからわかるように、A-B Pappは34.49nm/sであり、その排出比は5.17であった。排出トランスポーターの既知の阻害剤であるピペリンを添加することによって、A-B、Pappは282.66nm/sより高く増大し、その一方で排出比は1.18未満に減少した。従って、ピペリンの添加が透過性を改善することを示す。従って、ピペリンの使用は排出比を減少させ、その結果としてバイオアベイラビリティを増大させると結論付けることができる。
【0163】
II)材料
ジゴキシン(既知のP-gp基質)、ドルテグラビル(KK1406229)、HBSS緩衝液、MES水和物、HEPES粉末、ウシ胎児血清(FBS)、最小必須培地(MEM)、ルシファーイエロー、ピペリン(P-gp阻害剤)、コビシスタット(P-gp阻害剤)
【0164】
方法
1)Caco-2細胞培養
【0165】
Caco-2細胞を、10%血清を含むMEM培地で培養し、75000細胞/mLの密度で播種し、37℃、5%CO2で24ウェルトランスウェルプレートに21日間培養した。上皮細胞抵抗測定器(TEER)を用いて単層の完全性を断続的に(0~21日目)調べた。細胞を薬物で以下のように処理した:
【0166】
2)ピペリン(P-gp阻害剤)の透過性に及ぼす効果を研究するための双方向アッセイ(A-B及びB-A)
プレート研究
【表20】
【0167】
アッセイプロトコル
400μLのサンプルを、基底ウェル中の800μLのHBSS pH 7.4と共に二重にアピカル側(A)へのプレート設定に従ってウェルに添加した。サンプルを基底側から60、90、及び120分で採取した。マスバランスサンプルをアピカル側から0及び120分で採取した。
【0168】
B-Aについては、それぞれの希釈液800μLを、アピカルウェル中の400μLのHBSS pH 7.4と共に二重に基底側に添加した。サンプルをアピカル側から60、90、及び120分で採取した。マスバランスサンプルを基底側から0及び120分で採取した。
【0169】
サンプルをLCMS-MSで分析した。実験の最後に、ルシファーイエローを用いて単層の完全性を調べ、100μg/mLのルシファーと共に細胞をインキュベートすることによってルシファーイエローの拒絶反応(%)を計算した。
【0170】
3)データ分析
【0171】
Pappは以下のように計算した:
1秒あたりの単位における見掛け透過率(Papp)は、以下の式を用いて計算することができる。
シングルポイント法の場合:
Papp=(V/(T*A))*(C0/Ct)
マルチポイント法の場合:
Papp=(dQ/dt)/(A*C0)
%マスバランス=100-[CR120*VR+CD120*VD/C0*VD]
ルシファーイエローについて:
%Lucifer Yellow Passage=[RFU(test)RFU(blank)/ RFU(equilibrium)-RFU(blank)]*100
【0172】
【0173】
【0174】
結論
ドルテグラビルは既知のP-gp基質である。ドルテグラビルは高透過性の薬物であり、ピペリンはcaco-2単層を横切るドルテグラビルの透過性に影響を及ぼさない。従って、ピペリンの使用は排出比を減少させ、その結果としてバイオアベイラビリティを増大させると結論付けることができる。
【0175】
III)材料
ジゴキシン(既知のP-gp基質)、ドルテグラビル(DN0011215)、HBSS緩衝液、MES水和物、HEPES粉末、ウシ胎児血清(FBS)、最小必須培地(MEM)、ルシファーイエロー、ピペリン(P-gp阻害剤)、コビシスタット(P-gp阻害剤)
【0176】
方法
1)Caco-2細胞培養
【0177】
Caco-2細胞を、10%血清を含むMEM培地で培養し、75000細胞/mLの密度で播種し、37℃、5%CO2で24ウェルトランスウェルプレートに21日間培養した。上皮細胞抵抗測定器(TEER)を用いて単層の完全性を断続的に(0~21日目)調べた。細胞を薬物で以下のように処理した:
【0178】
2)ピペリン(P-gp阻害剤)の透過性に及ぼす効果を研究するための双方向アッセイ(A-B及びB-A)
プレート研究
【表23】
【0179】
アッセイプロトコル
400μLのサンプルを、基底ウェル中の800μLのHBSS pH7.4と共に二重にアピカル側へのプレート設定に従ってウェルに添加した。サンプルを基底側から60、90、及び120分で採取した。マスバランスサンプルをアピカル側から0及び120分で採取した。
【0180】
B-Aについては、それぞれの希釈液800μLを、アピカルウェル中の400μLのHBSS pH 7.4と共に二重に基底側に添加した。サンプルをアピカル側から60、90、及び120分で採取した。マスバランスサンプルを基底側から0及び120分で採取した。
【0181】
サンプルをLCMS-MSで分析した。実験の最後に、ルシファーイエローを用いて単層の完全性を調べ、100μg/mLのルシファーと共に細胞をインキュベートすることによってルシファーイエローの拒絶反応(%)を計算した。
【0182】
3.)データ分析
【0183】
Pappは以下のように計算した:
1秒あたりの単位における見掛け透過率(Papp)は、以下の式を用いて計算することができる。
シングルポイント法の場合:
Papp=(V/(T*A))*(C0/Ct)
マルチポイント法の場合:
Papp=(dQ/dt)/(A*C0)
%マスバランス=100-[CR120*VR+CD120*VD/C0*VD]
ルシファーイエローについて:
%Lucifer Yellow Passage=[RFU(test)RFU(blank)/ RFU(equilibrium)-RFU(blank)]*100
【0184】
【0185】
【0186】
結論
ダルナビルは既知のP-gp基質である。TAFの排出比を減少させることにより、ダルナビルの吸収がピペリンにより増大する。従って、ピペリンの使用は排出比を減少させ、その結果としてバイオアベイラビリティを増大させると結論付けることができる。
【0187】
IV)材料
ジゴキシン(既知のP-gp基質)、TDF、HBSS緩衝液、MES水和物、HEPES粉末、ウシ胎児血清(FBS)、最小必須培地(MEM)、ルシファーイエロー、ピペリン(P-gp阻害剤)、コビシスタット(P-gp阻害剤)、テトラヒドロピペリン(P-gp阻害剤)
【0188】
方法
1)Caco-2細胞培養
【0189】
Caco-2細胞を、10%血清を含むMEM培地で培養し、75000細胞/mLの密度で播種し、37℃、5%CO2で24ウェルトランスウェルプレートに21日間培養した。上皮細胞抵抗測定器(TEER)を用いて単層の完全性を断続的に(0~21日目)調べた。細胞を薬物で以下のように処理した:
【0190】
2)ピペリン(P-gp阻害剤)及びテトラヒドロピペリンの透過性に及ぼす効果を研究するための双方向アッセイ(A-B及びB-A)
プレート研究
【表26】
【0191】
アッセイプロトコル
400μLのサンプルを、基底ウェル中の800μLのHBSS pH7.4と共に二重にアピカル側へのプレート設定に従ってウェルに添加した。サンプルを基底側から60、90、及び120分で採取した。マスバランスサンプルをアピカル側から0及び120分で採取した。
【0192】
B-Aについては、それぞれの希釈液800μLを、アピカルウェル中の400μLのHBSS pH 7.4と共に二重に基底側に添加した。サンプルをアピカル側から60、90、及び120分で採取した。マスバランスサンプルを基底側から0及び120分で採取した。
【0193】
サンプルをLCMS-MSで分析した。実験の最後に、ルシファーイエローを用いて単層の完全性を調べ、100μg/mLのルシファーと共に細胞を培養することによってルシファーイエローの拒絶反応(%)を計算した。
【0194】
3.)データ分析
【0195】
Pappは以下のように計算した:
1秒あたりの単位における見掛け透過率(Papp)は、以下の式を用いて計算することができる。
シングルポイント法の場合:
Papp=(V/(T*A))*(C0/Ct)
マルチポイント法の場合:
Papp=(dQ/dt)/(A*C0)
%マスバランス=100-[CR120*VR+CD120*VD/C0*VD]
ルシファーイエローについて:
%Lucifer Yellow Passage=[RFU(test)RFU(blank)/ RFU(equilibrium)-RFU(blank)]*100
【0196】
【0197】
【0198】
結論
TDFは既知のP-gp基質である。排出比を減少させることにより、TDFの吸収がピペリンにより増大する。更に、排出比を減少させることにより、TDFの吸収がテトラヒドロピペリンにより増大する。ピペリン及びテトラヒドロピペリンの両方によって、TDFの透過性の同等の改善が見られた。従って、ピペリン及びテトラヒドロピペリンの使用は排出比を減少させ、その結果としてバイオアベイラビリティを増大させると結論付けることができる。
【0199】
動物研究
インビボラットPK試験
【0200】
この非GLP研究の目的は、単回静脈内投与及び経口投与後の雄Wistarラットの異なる群のTDF単独及びピペリンとの組合せにおける薬物動態を決定することであった。この研究は、インドの動物実験のコントロール及び監督を目的とする委員会(CPCSEA/ Committee for the Purpose of Control and Supervision of Experiments on Animals)の要件に従って、動物実験倫理委員会(IAEC/Institutional Animal Ethics Committee)の承認を得て実施した。
【0201】
研究デザイン
下記の表30に示すように、各群の6匹の雄Wistarラットを用いて研究を行った。
【表29】
【0202】
製剤の調製
溶液製剤を以下のように調製した:
【0203】
静脈内経路:
必要量の化合物B(TDF)(23.03mg)を秤量し、これに賦形剤(生理食塩水)10.94mLを添加し、ボルテックスし、2分間超音波処理して透明な製剤を作製した。
【0204】
経口経路あたり:
第2群について:化合物Bの必要量(79.37mg)を秤量し、これに賦形剤(Naカルボキシメチルセルロース)9.42mLを添加し、ボルテックスし、2分間超音波処理して6.2mg/mL濃度の製剤を作製した。
【0205】
第3群について:化合物Bの必要量(46.14mg)を秤量し、これに賦形剤(Naカルボキシメチルセルロース)10.95mLを添加し、ボルテックスし、2分間超音波処理して均一な製剤を作製した。
【0206】
第4群について:化合物Bの必要量(79.56mg)を秤量し、これに賦形剤(Naカルボキシメチルセルロース)4.72mLを添加し、ボルテックスし、2分間超音波処理して透明な製剤を作製した。必要量の化合物B1(ピペリン)(18.95mg)を秤量し、これに22.71mLのビヒクル(Naカルボキシメチルセルロース)を添加し、ボルテックスし、2分間超音波処理して透明な製剤を作製した。各製剤の等容積(4.72mL)の別々のバイアル中で混合して5mL/kgとした。
【0207】
第5群について:化合物B(47.20mg)及び化合物B1(18.95mg)の必要量を秤量し、これに5.61mLの賦形剤(Naカルボキシメチルセルロース)を添加し、ボルテックスし、2分間超音波処理して透明な製剤を作製した。各製剤の等容積(5.61mL)を別々のバイアル中で混合して5mL/kgとした。
【0208】
バイオ分析
ラット血漿サンプル中のTDF及びPMPAの定量のために、目的にかなったLC-MS/MS法を用いて生物分析を実施した。この方法の較正曲線(CC)は、二重ブランク及びゼロ標準サンプルと一緒に9つの非ゼロ較正標準からなっていた。
【0209】
薬物動態学的分析
血漿薬物動態学的パラメータは、Phoenixソフトウェア(バージョン6.3)の非コンパートメント解析ツールを用いて計算し、各群の個々の動物から決定した。ピーク血漿濃度(Cmax)、ピーク血漿濃度を達成する時間(Tmax)、血漿濃度-時間曲線下の面積(AUC0-t及びAUCinf)、AUC Extra(%)、消失半減期(T1/2)、クリアランス(CL)、分布容積Vd(L/kg)、及び平均滞留時間(MRT)を静脈内群から算出した。ピーク血漿濃度(Cmax)、ピーク血漿濃度を達成する時間(Tmax)、AUC0-t及びAUCinf、AUC Extra(%)、平均滞留時間(MRT)及び絶対経口バイオアベイラビリティー(F)を経口群から計算した。
【0210】
結果
雄WistarラットにおけるTDFの静脈内及び経口投与後のPMPAの血漿濃度-時間データ及び血漿薬物動態学的パラメータを表31に示す。
【表30】
【0211】
図6及び
図7は、異なる時点におけるTDF300mg及びTDF300mg+ピペリン20mgについてのテノホビルの血漿濃度を示す。
【0212】
表31:種々の組合せのCmax、Tmax、及びAUC値
【表31】
【0213】
図8は、TDF300mg、TDF300mg+ピペリン20mg、及びTDF150mg+ピペリン20mgについてのテノホビルの時間依存性血漿濃度を示す。
【0214】
結論
ラットPK試験は、TDFをピペリンと組み合わせて投与すると、テノホビルのピーク血漿濃度が有意に増大することを明示している。この結果は、TDF300mg単独(34.39±6.07)と比較してTDFを150mgでピペリン20mg(52.48±13.48)と投与した場合、有意なバイオアベイラビリティ向上を示す。
【0215】
添付の特許請求の範囲の組成物及び方法は、本明細書に記載される特定の組成物及び方法によって範囲が限定されるものではなく、特許請求の範囲のいくつかの態様の説明として意図され、機能的に等価である任意の組成物及び方法は、請求項の範囲内に含まれることが意図される。本明細書に示され記載されたものに加えて、組成物及び方法の様々な変更は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。更に、本明細書に開示さる特定の代表的な組成物及び方法工程のみが具体的に記載されているが、具体的に挙げられていないとしても、組成物及び方法工程の他の組合せも添付の特許請求の範囲内に含まれる。従って、工程、要素、成分、又は構成要素の組合せが、本明細書で明示的に言及されていてもいなくてもよいが、明示的に述べられていないとしても、工程、要素、成分、及び構成要素の他の組合せが含まれる。本明細書で使用される「含む(comprising)」という用語及びその変形は、「含む(including)」という用語及びその変形と同義的に用いられ、オープンで非限定的な用語である。「含む(comprising)」及び「含む(including)」という用語は、本明細書では様々な実施形態を説明するために使用されているが、本発明のより具体的な実施形態を提供するために、「から本質的になる(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting of)」を「含む(comprising)」及び「含む(including)」の代わりに用いることができる。実施例において、又は特に明記されない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される成分の量、反応条件等を表す全ての数字は、最低でも理解されるべきであり、特許請求の範囲の均等論の適用を制限しようとするものではなく、有効数字及び通常の四捨五入手法に照らして解釈されるべきである。
【0216】
本開示に引用された全ての特許及び非特許刊行物は、それらの各特許及び各非特許刊行物が参照によりその全体が本明細書に組み込まれているかのように本明細書に組み込まれる。更に、本開示が特定の実施例及び実施形態を参照して説明されていたとしても、これらの実施例及び実施形態は、本開示の原理及び適用の単なる説明であることを理解されたい。従って、例示的な実施形態に対して多数の変更を行うことができ、以下の請求項によって定義される本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、他の構成が考案されてもよいことが理解されるべきである。
【0217】
本明細書の教示の精神又は範囲から逸脱することなく、本明細書に記載された様々な実施形態に対して様々な変更及び変形を行うことができることは、当業者には明らかであろう。従って、様々な実施形態は、本教示の範囲内で様々な実施形態の他の変更及び変形を包含することが意図される。