(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】体液性親和性の加速に関する方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 39/39 20060101AFI20220610BHJP
A61K 39/118 20060101ALI20220610BHJP
A61K 39/12 20060101ALI20220610BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20220610BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220610BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220610BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20220610BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
A61K39/39
A61K39/118
A61K39/12
A61K39/00 Z
A61P35/02
A61P35/00
A61P31/12
A61P31/18
(21)【出願番号】P 2018543291
(86)(22)【出願日】2016-11-09
(86)【国際出願番号】 US2016061062
(87)【国際公開番号】W WO2017083337
(87)【国際公開日】2017-05-18
【審査請求日】2019-11-07
(32)【優先日】2015-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516133799
【氏名又は名称】オハイオ・ステート・イノヴェーション・ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・チェルペス
(72)【発明者】
【氏名】ニルク・イー・キスペ・カジャ
(72)【発明者】
【氏名】ロドルフォ・ダニエル・ヴィセッティ・ミゲル
【審査官】榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第95/012411(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/153087(WO,A1)
【文献】特表2001-507004(JP,A)
【文献】特表2009-502900(JP,A)
【文献】FEMS Immunology and Medicinal Microbiology,2007年,Vol.49,No.1,p.46-55
【文献】Vaccines,2014年,vol. 2,p. 323-353
【文献】The Journal of Immunology,1986年,vol. 136,p. 4249-4254
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原と、アジュバントとしての不活性化C.トラコマチス基本小体(EB)と、を含む、
非クラミジア特異的ポリクローナル抗体の産生を促進するためのワクチンであって、前記抗原がクラミジア種に由来
せず、
前記非クラミジア特異的ポリクローナル抗体が前記抗原に特異的である、前記ワクチン。
【請求項2】
前記不活性化C.トラコマチス基本小体(EB)が、クラミジアの主要外膜(MOMP)タンパク質を含む、請求項1に記載のワクチン。
【請求項3】
前記ワクチンが、2つ以上の抗原を含む、請求項1または2に記載のワクチン。
【請求項4】
前記ワクチンが、3つ以上の抗原を含む、請求項3に記載のワクチン。
【請求項5】
前記抗原が、感染因子を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項6】
前記感染因子が、ウイルス性である、請求項5に記載のワクチン。
【請求項7】
前記ウイルス性感染因子が、HIVである、請求項6に記載のワクチン。
【請求項8】
前記抗原が、腫瘍関連抗原を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項9】
前記ワクチンが、前記抗原単独と比較して、特異的体液性免疫を高める、請求項1~8のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項10】
抗原と、アジュバントとしての不活性化C.トラコマチス基本小体(EB)と、を含む非クラミジア特異的ポリクローナル抗体の産生を促進するためのキットであって、前記抗原がクラミジア種に由来
せず、
前記非クラミジア特異的ポリクローナル抗体が前記抗原に特異的である、キット。
【請求項11】
対象における疾患又は感染を予防又は治療するための、請求項1に記載のワクチン。
【請求項12】
前記抗原が、ウイルス性である、請求項11に記載のワクチン。
【請求項13】
前記抗原が、HIVに由来する、請求項12に記載のワクチン。
【請求項14】
前記抗原が、envタンパク質、ペプチド、又はそれらの断片である、請求項13に記載のワクチン。
【請求項15】
前記抗原が、腫瘍関連である、請求項11に記載のワクチン。
【請求項16】
前記対象が、哺乳類である、請求項11~15のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項17】
前記哺乳類が、ヒトである、請求項16に記載のワクチン。
【請求項18】
前記抗原と、前記不活性化C.トラコマチス基本小体(EB)とが、同時に投与される、請求項11~17のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項19】
前記抗原が、前記不活性化C.トラコマチス基本小体(EB)の前に投与される、請求項11~17のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項20】
前記抗原が、前記不活性化C.トラコマチス基本小体(EB)の後に投与される、請求項11~17のいずれか一項に記載のワクチン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2015年11月10日出願の米国仮出願第62/253,370号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ワクチンは、抗体を産生する体液性免疫応答を開始させることができる。ワクチンはまた、宿主が病原菌の侵入に抵抗するか又は疾患の発生を予防するのを助ける細胞性免疫応答により、細胞傷害性T細胞などのリンパ球を活性化することもできる(Cavallo F et al.,Vaccination for treatment and prevention of cancer in animal models.Adv Immunol.2006.90:175~213.Review)。ワクチンは対象の免疫系を活性化する効果を有するが、臨床用途では、多くの場合に、ワクチンは高齢者や子供のような免疫系が非常に弱い一部の個体群で所望の効果を実現できず、したがって適切な量のワクチンアジュバントを添加する必要があることが分かっている。更に、ワクチンアジュバントの添加はまた、免疫系を促進して抗原をより効果的に認識する効果も有し、ワクチンの用量又はワクチンの頻度を減らすのに役立ち得る。したがって、ワクチンアジュバントの添加は、ワクチンのコストを低減できるだけでなく、ワクチンの免疫効果を高めることもできる。
アジュバントの機能に応じて、アジュバントは2つの群に分類され得る。第1の群に属するアジュバントは、抗原を吸着し、抗原が細胞により貧食されるのを助けるために使用され、これにはアルミニウム塩及びM59乳化剤などが挙げられる(O’Hagan D T,Wack A,Podda A.Clin Pharmacol Ther.2007 December;82(6):740~4;4.Clapp T,Siebert P,Chen D,Jones Braun L.J Pharm Sci.2011 February;100(2):388~401)。第2の群に属するアジュバントは、免疫調節因子であり、これにはCFAマイコバクテリアなどが挙げられる(Hoft D F,Blazevic A,Abate G,Hanekom W A,Kaplan G,Soler J H,Weichold F,Geiter L,Sadoff J C,Horwitz M A.J Infect Dis.2008 Nov.15;198(10):1491~501)。親和性成熟を含む体液性免疫を加速させる新しいワクチンアジュバントは、当該技術分野で有用である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Cavallo F et al.,Vaccination for treatment and prevention of cancer in animal models.Adv Immunol.2006.90:175~213.Review
【文献】O’Hagan D T,Wack A,Podda A.Clin Pharmacol Ther.2007 December;82(6):740~4;4.
【文献】Clapp T,Siebert P,Chen D,Jones Braun L.J Pharm Sci.2011 February;100(2):388~401
【文献】C.H. Chenら、Blood 2006年、107、1459~67頁
【文献】Hoft D F,Blazevic A,Abate G,Hanekom W A,Kaplan G,Soler J H,Weichold F,Geiter L,Sadoff J C,Horwitz M A.J Infect Dis.2008 Nov.15;198(10):1491~501
【文献】Moshaverら、2008年Stem Cells 26:3059頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書に開示されるのは、抗原と、クラミジア種のタンパク質、ペプチド、若しくは炭水化物、又はそれらの断片と、を含むワクチンであり、抗原はクラミジア種に由来しない。
【0005】
また、本明細書に開示されるのは、疾患を治療又は予防する方法である。これらの方法は、対象に抗原を投与することを含み、抗原は、クラミジア種;及びクラミジア種のタンパク質、ペプチド、若しくは炭水化物、又はそれらの断片に由来せず、それによって対象における疾患又は感染を予防する。
更に開示されるのは、抗原と、クラミジア種のタンパク質、ペプチド、若しくは炭水化物、又はそれらの断片と、を含むキットである。
【0006】
本発明の1つ若しくは2つ以上の実施形態の詳細が、添付の図面及び以下の説明において記載される。本発明の他の特性、目的、及び利点は、説明及び図面から、並びに請求項から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】クラミジアが抗原特異的体液性免疫の誘導時に強いアジュバント活性を呈することを示す。マウスにOVA単独又はOVA+不活性化C.トラコマチスL2基本小体(EB)を2週間毎に計3回分投与した。各投与の2週間後に血清を得た。
【
図2】クラミジアが抗原特異的抗体の親和性を大いに高めることを示す。
【
図3】クラミジアがたった一度のワクチン接種後にジフテリア毒素(DT)特異的抗体の濃度を著しく高めることを示す。血清を得た2週間後に、マウスにDT単独又はDT+不活性化C.トラコマチスL2 EBを投与した。
【
図4】クラミジアアジュバントを有するDTワクチン接種が、その後の致死的DT攻撃からの防御を高めることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
定義
「a」及び「an」という冠詞は、冠詞の文法上の目的語の1つ、又は1つを超える(即ち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「an element」は、1つの要素又は1つを超える要素を意味する。
【0009】
「約」とは、本明細書において使用される際、量、時間的な持続時間など等の測定可能な値を指すとき、かかる変動が、開示される方法を実施するのに適切である際、指定される値から+/-.20%又は+/-.10%、より好ましくは+/-.5%、更により好ましくは+/-.1%、なおより好ましくは+/-.0.1%の変動を包含することを意味する。
【0010】
「抗原組成物」という用語は、宿主又は対象において、免疫系を刺激し、免疫応答を生じさせる材料を含む組成物を指す。
【0011】
「免疫応答を生じさせる」という用語は、抗原等の刺激に応答したインビボでの免疫細胞の刺激を指す。免疫応答は、細胞免疫応答、例えば、T細胞及びマクロファージ刺激と、体液性免疫応答、例えば、B細胞及び補足刺激並びに抗体産生の双方からなる。免疫応答は、抗体イムノアッセイ、増殖アッセイ、及び他のものが挙げられるが、これらに限定されない、当該技術分野において公知の技術を使用して測定され得る。
【0012】
「ワクチン」という用語は、本明細書に使用される際、本明細書において説明される組み換えウイルスを含む組成物を指し、これは、対象において、ウイルスに対する免疫を確立するために有用である。ワクチンが、薬学的に許容される担体及び/又はアジュバントを含むことが企図される。ワクチンが、予防的又は治療的であることが企図される。
【0013】
「予防的」治療は、病変を発症するリスクを減少させる目的で、疾患の兆候を呈しないか、又は早期兆候のみを呈する対象に施される治療である。本明細書に開示されるワクチンは、病変を発症する可能性を低減するため、又は発症した場合、病変の重症度を最小化するために、予防的治療として与えることができる。
【0014】
「治療的」治療は、病変の兆候又は症状を呈する対象に、それらの兆候又は症状を減退又は排除する目的で施される治療である。兆候又は症状は、生化学的、細胞的、組織学的、機能的、主観的、又は客観的であり得る。
【0015】
「不活性化された」という用語は、「殺滅された」又は「死滅した」微生物としても当該技術分野において既知である、クラミジア種(C.トラコマチス、C.シッタシ、及びC.ムリダルムを含む)等の、微生物を説明するために本明細書において使用される。不活性化された細菌は、感染特性を有しない全細菌であり、細菌が以前に任意の様態で弱毒化されたかどうかにかかわらず、「生きている」細菌から産生される。
【0016】
ポリペプチドの「断片」は、全長ポリペプチド又はタンパク質発現産物よりも小さい、ポリペプチドの任意の部分を指す。断片は、一態様において、1つ若しくは2つ以上のアミノ酸残基が、全長ポリペプチドのアミノ末端及び/又はカルボキシ末端から除去されている、全長ポリペプチドの欠失アナログである。したがって、「断片」は、以下で説明される欠失アナログのサブセットである。
【0017】
「抗体」という用語は、本明細書において使用される際、抗原上の特異的エピトープに特異的に結合することができる、免疫グロブリン分子を指す。抗体は、天然源又は組み換え源に由来する無傷免疫グロブリンであり得、無傷免疫グロブリンの免疫反応性部分であり得る。抗体は、本明細書において説明されるワクチンから産生することができ、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、細胞内抗体(「イントラボディ」)、Fv、Fab、及びF(ab)2、並びに単鎖抗体(scFv)、重鎖抗体、例えば、ラクダ抗体、合成抗体、キメラ抗体、及びヒト化抗体を含む、様々な形態において存在し得る(Harlow et al.,1999,Using Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY;Harlow et al.,1989,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor,N.Y.;Houston et al.,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879~5883;Bird et al.,1988,Science 242:423~426)。
【0018】
「異常」という用語は、生物、組織、細胞、又はその構成要素の文脈において使用されるとき、「正常な」(予想される)それぞれの特徴を示す、それらの生物、組織、細胞、又はその構成要素からの少なくとも1つの観察可能な又は検出可能な特徴(例えば、年齢、治療、時刻など)において異なる、それらの生物、組織、細胞、又はその構成要素を指す。1つの細胞又は組織型に対して正常であるか、又は予想される特徴は、異なる細胞又は組織型に対しては異常である場合がある。
【0019】
本明細書において使用される際、疾患を「緩和する」ことは、疾患又は障害の少なくとも1つの兆候又は症状の頻度又は重症度を低減することを意味する。
【0020】
「有効量」は、本明細書において使用される際、治療的又は予防的利益を提供する量を意味する。
【0021】
本明細書において使用される際、「イムノアッセイ」は、標的分子を検出及び定量化するために、標的分子に特異的に結合することが可能な抗体を使用する、任意の結合アッセイを指す。
【0022】
本明細書において使用される際、「説明材料」は、本明細書において説明される方法を実践するためのキットにおける、本発明の化合物、組成物、方法、プラットフォーム、又はシステムの有用性を伝えるために使用することができる、公開物、記録、図、又は任意の他の表現媒体を含む。本発明のキットの説明材料は、例えば、本発明の識別される化合物、組成物、プラットフォーム、若しくは送達システムを含有する容器に付着され得るか、又は本発明の特定される化合物、組成物、方法構成要素、プラットフォーム、若しくはシステムを含有する容器とともに出荷され得る。代替的に、説明材料は、説明材料及び化合物が受容者によって協働的に使用されることを意図して、容器から別個に出荷することができる。
【0023】
本明細書において使用される際、「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、同義的に使用され、ペプチド結合によって共有結合されたアミノ酸残基からなる化合物を指す。タンパク質又はペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含有しなければならず、タンパク質又はペプチドの配列を含むことができるアミノ酸の最大数に制限は設けられない。ポリペプチドは、ペプチド結合によって互いに接合された2つ若しくは3つ以上のアミノ酸を含む、任意のペプチド又はタンパク質を含む。本明細書において使用される際、用語は、短鎖(当該技術分野において、例えば、ペプチド、オリゴペプチド、及びオリゴマーとしても一般的に称される)、並びにより長い鎖(当該技術分野において、タンパク質として一般的に称され、これには多くの型が存在する)の両方を指す。「ポリペプチド」としては、とりわけ、例えば、生物学的に活性な断片、実質的に相同的なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモダイマー、ヘテロダイマー、ポリペプチドの変異体、修飾されたポリペプチド、誘導体、アナログ、融合タンパク質が挙げられる。ポリペプチドとしては、天然ペプチド、組み換えペプチド、合成ペプチド、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0024】
「疾患」は、動物が恒常性を維持することができず、疾患が改善されない場合、動物の健康が悪化し続ける、動物の健康状態である。対照的に、動物における「障害」は、動物が恒常性を維持することができるが、動物の健康状態が、障害がないときよりも良くない、健康状態である。治療されないまま放置されると、障害は、動物の健康状態における更なる悪化を必ずしも引き起こさない。
【0025】
「対象」という用語は、投与又は治療の標的である任意の個体を指す。対象は、脊椎動物、例えば、哺乳類であり得る。このため、対象は、ヒト又は獣医学的患者であり得る。「患者」という用語は、臨床医、例えば、医師又は獣医師の治療下にある対象を指す。
【0026】
本明細書において使用される際、「療法」又は「治療レジメン」という用語は、障害又は疾患状態を緩和又は改変するために採られるそれらの活動、例えば、薬理学的、外科的、食物的、及び/又は他の技術を使用した、疾患又は障害の少なくとも1つの兆候又は症状を低減又は排除することが意図される治療過程を指す。治療レジメンは、処方された用量の1つ若しくは2つ以上の薬物又は外科処置を含み得る。療法は、ほとんどの場合有益であり、かつ障害又は疾患状態の少なくとも1つの兆候又は症状を低減又は排除するが、一部の例において、療法の効果は、望ましくない、又は副作用を有する。療法の効果はまた、対象の生理学的状態、例えば、年齢、性別、遺伝的特徴、体重、他の疾患状態などによって、影響される。
【0027】
「治療有効量」という用語は、研究者、獣医師、医師、又は他の臨床医によって求められている、組織、系、又は対象の生物学的又は医学的応答を生じさせる、対象化合物の量を指す。「治療有効量」という用語は、投与されるとき、治療されている障害又は疾患の兆候又は症状のうちの1つ若しくは2つ以上の発症を予防するか、あるいはある程度緩和させるのに十分である、化合物の量である。治療有効量は、化合物、疾患、及びその重症度、並びに治療される対象の年齢、体重などに依存して変動する。
【0028】
用語が本明細書において使用される際、疾患を「治療する」ことは、対象によって経験される疾患又は障害の少なくとも1つの兆候又は症状の頻度又は重症度を低減することを意味する。
【0029】
「細胞」という用語もまた、本明細書において使用される際、具体的に示されない限り、個々の細胞、細胞株、初代培養物、又はかかる細胞に由来する培養物を指す。「培養物」は、同じ又は異なる型の単離された細胞を含む組成物を指す。細胞株は、無限に再現することができ、このため、細胞株を「不死」にする、特定の種類の細胞の培養物である。細胞培養物は、寒天等の培地上で成長させた細胞の集団であり得る。初代細胞培養物は、細胞からの培養物であるか、又は生きた生物から直接採られ、これは、不死化されていない。
【0030】
「生物学的試料」という用語は、組織(例えば、組織生検)、器官、細胞(培養物において維持される細胞を含む)、細胞溶解物(若しくは溶解物画分)、細胞若しくは細胞性材料に由来する生体分子(例えば、ポリペプチド若しくは核酸)、又は対象からの体液を指す。体液の非限定的な例としては、血液、尿、血漿、血清、涙液、リンパ液、胆汁、脳脊髄液、間質液、房水若しくは硝子体液、初乳、痰、羊水、唾液、肛門若しくは膣液、頸管分泌物、汗、精液、浸出液、滲出液、並びに滑液が挙げられる。
【0031】
単数若しくは複数形のいずれかで使用される「腫瘍細胞」又は「癌細胞」という用語は、細胞を宿主生物に対して病的なものにする悪性転換を生じた細胞を指す。原発性癌細胞(つまり、悪性転換の部位近傍から得られる細胞)は、十分に確立された技術、具体的には、組織学的検査によって、非癌性細胞から容易に区別することができる。癌細胞の定義は、本明細書において使用される際、原発性癌細胞だけでなく、癌細胞祖先に由来する任意の細胞を含む。これは、転移した癌細胞、並びに癌細胞に由来するインビトロ培養物及び細胞株を含む。「腫瘍関連抗原」又は「TAA」という用語は、同じ組織型の非腫瘍細胞よりも、腫瘍細胞によって、より高い頻度又は密度で発現される、分子又は複合体を指すために使用される。腫瘍関連抗原は、宿主によって通常発現されない抗原であり得る;それらは、突然変異しているか、切断されているか、ミスフォールドしているか、若しくはそうでなければ宿主によって通常発現される分子の異常発現であり得る;それらは、通常発現されるが、異常に高いレベルで発現された分子と同一であり得る;又は、それらは、異常である状況若しくは環境において発現され得る。腫瘍関連抗原は、例えば、タンパク質若しくはタンパク質断片、複合炭水化物、ガングリオシド、ハプテン、核酸、又はこれら若しくは他の生物学的分子の任意の組み合わせであり得る。特定の腫瘍関連抗原の存在又は特徴の知識は、本発明の実践に必要ではない。
【0032】
「B細胞」という用語は、Bリンパ球を指す。B細胞前駆体は、未成熟B細胞が産生される骨髄に存在する。B細胞発達は、いくつかの段階を通じて生じ、各段階は、抗体遺伝子座におけるゲノム量の変化を表す。ゲノム重鎖可変領域において、3つのセグメント、V、D、及びJが存在し、これらは、VDJ再構成と呼ばれるプロセスにおいてランダムに再結合して、各B細胞の免疫グロブリンにおいて固有の可変領域を産生する。同様の再構成が、関与する2つのみのセグメント、V及びJが存在することを除き、軽鎖可変領域に対して生じる。完全な再構成後、B細胞は、骨髄においてIgM+未成熟段階に達する。これらの未成熟B細胞は、それらの表面上に膜結合IgM、即ち、BCRを提示し、脾臓に移動し、ここでは、それらは、移行B細胞と呼ばれる。これらの細胞の一部は、成熟Bリンパ球に分化する。それらの表面上にBCRを発現する成熟B細胞は、血液及びリンパ系において循環し、免疫監視の役割を果たす。それらは、それらが完全に活性化されるまで、可溶性抗体を産生しない。各B細胞は、1つの特定の抗原に結合する、固有の受容体タンパク質を有する。一度B細胞がその抗原に遭遇し、Tヘルパー細胞から追加のシグナルを受信すると、それは、可溶性抗体を発現及び分泌するプラズマB細胞、又は記憶B細胞に更に分化することができる。
【0033】
「B細胞」という用語はまた、その表面上に、完全に再構成された、即ち、成熟した、B細胞受容体(BCR)を提示する、任意のBリンパ球を指し得る。例えば、B細胞は、未成熟又は成熟B細胞であり得、好ましくは未感作B細胞、即ち、当該B細胞の表面上のBCRによって特異的に認識された抗原に曝露されていないB細胞である。B細胞は、記憶B細胞、好ましくは、IgG+記憶B細胞であり得る。「B細胞」という用語はまた、B細胞の混合物を指し得る。B細胞の混合物は、混合物中のB細胞が、異なる抗原特異性を有する、即ち、様々な抗原を認識する抗体又は完全に再構成されたBCRを産生することを意味し得る。単一B細胞の抗体又はBCRは、抗原特異性に関しても、通常同一である。
【0034】
「抗体を分泌するB細胞」という用語は、好ましくは、プラズマB細胞を指す。「それらの表面上にBCRを担持するB細胞」という用語は、好ましくは、それらのプラズマ膜において、BCR、好ましくは完全に再構成されたBCRを発現する、B細胞を指す。この文脈において、「BCR」は、好ましくは、単一のBCRを意味するのではなく、好ましくは、同じ抗原特異性を有する多数のBCRを意味する。
【0035】
「部分」という用語は、ほんの一部を意味する。部分は、好ましくは、エンティティ全体の少なくとも20%、少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、更により好ましくは少なくとも80%、及び最も好ましくは少なくとも90%を意味する。「相当な部分」という用語は、好ましくは、エンティティ全体の少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、更により好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%、及び最も好ましくは少なくとも99%を指す。
【0036】
「クローン性増殖」という用語は、特異的エンティティが繁殖されるプロセスを指す。本発明の文脈において、用語は、好ましくは、リンパ球、好ましくはBリンパ球が、抗原によって刺激され、増殖し、その抗原を認識する特異的リンパ球の数が増大する、免疫学的応答の文脈において使用される。好ましくは、クローン性増殖は、リンパ球の、好ましくは、抗体を産生及び分泌するリンパ球への分化につながる。抗体を分泌するBリンパ球は、例えば、プラズマB細胞である。
【0037】
本明細書において使用される際、「免疫応答の増強」という用語は、特定の種類の抗体(例えば、高親和性広域中和抗体)を生成するために胚中心の能力を高めること、及び/又はより高速で抗体を生成することを指す。
【0038】
本明細書において使用される際、「同時」治療使用という用語は、少なくとも2つの活性成分を同じ経路で同時又はほぼ同時に投与することを指す。
【0039】
本明細書において使用される際、「個別」治療使用という用語は、少なくとも2つの活性成分を同時又はほぼ同時に異なる経路で投与することを指す。
【0040】
本明細書において使用される際、「逐次」治療使用という用語は、少なくとも2つの活性成分を異なる時間で投与することを指し、投与経路は同じか又は異なる。より具体的には、逐次使用は、活性成分のうちの1つを全て投与してから、他の活性成分の投与を開始することを指す。したがって、活性成分のうちの1つを数分、数時間、又は数日にわたって投与してから、他の活性成分を投与することができる。この場合に同時治療はない。
【0041】
「抗原」という用語は、免疫応答がそれに対して生成されるエピトープを含む物質に関する。「抗原」という用語は、具体的には、タンパク質、ペプチド、多糖、脂質、核酸、特に、RNA及びDNA、並びにヌクレオチドを含む。「抗原」という用語はまた、形質転換(例えば、体タンパク質での完了によって、分子において中間で)を通じてのみ、抗原性(及び感作性)になる、二次物質としての、誘導体化された抗原、並びに原子団(例えば、イソシアネート、ジアゾニウム塩)の人工的な組み込みを通じて、新たな構成的特異性を示す、共役された抗原を含む。好ましい実施形態において、抗原は、細胞質、細胞表面、及び細胞核に由来し得る、腫瘍抗原、即ち、癌細胞の構成物、具体的には、好ましくは、細胞内に、又は腫瘍細胞上の表面抗原として、多量に産生される、それらの抗原である。例は、癌胎児性抗原、α1-フェトタンパク質、イソフェリチン及び胎児硫糖タンパク質(sulfoglycoprotein)、α2-H-鉄タンパク質及びγ-フェトタンパク質、並びに種々のウイルス性腫瘍抗原である。更なる実施形態において、抗原は、ウイルス性リボ核タンパク質又はエンベロープタンパク質等のウイルス抗原である。具体的には、抗原又はそのペプチドは、B細胞受容体、又は抗体等の免疫グロブリン分子によって認識可能であるべきである。好ましくは、抗原は、B細胞受容体によって認識される場合、適切な共刺激シグナルの存在下で、抗原を特異的に認識するBCRを発現するB細胞のクローン性増殖、及びかかるB細胞の抗体分泌B細胞への分化を誘導することができる。抗原は、反復性機構において提示することができ、即ち、抗原は、免疫応答がそれに対して生成されるか、又は産生される抗体に対する、1個を超える、好ましくは少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、最大6個、10個、12個以上の物質又はエピトープを含む。かかる反復性抗原は、好ましくは、同じ特異性の1つを超える抗体に結合することが可能である。換言すると、かかる反復性抗原は、1つを超えるエピトープ、好ましくは同一のエピトープを含み、このため、当該エピトープを対象とする抗体を「架橋する」ことが可能である。1つを超える物質又はエピトープは、共有又は非共有結合され得、共有結合は、ペプチド結合等による任意の化学物質のグルーピングによるものであってもよい。抗原は、抗原ペプチドの反復を含むか、又は共通のエピトープを有する異なる抗原ペプチドを含む、融合分子であり得る。1つの好ましい実施形態において、当該抗原ペプチドは、ペプチドリンカーによって結合される。
【0042】
範囲:本開示を通じて、本発明の種々の態様は、範囲形式において提示され得る。範囲形式での説明は、便宜性及び簡潔性のためであるに過ぎず、本発明の範囲に対する柔軟性のない制限として解釈されるべきではないことが理解されるべきである。したがって、範囲の説明は、具体的に開示された全ての可能な部分範囲、並びにその範囲内の個々の数値を有すると見なされるべきである。例えば、1~6等の範囲の説明は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6など等の具体的に開示された部分範囲、並びにその範囲内の個々の数値、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3、及び6を有すると見なされるべきである。これは、その範囲の幅にかかわらず適用される。
【0043】
本明細書において教示される方法によると、対象は、有効量の薬剤が投与される。有効量及び有効な用量という用語は、同義的に使用される。有効量という用語は、所望の生理学的応答をもたらすために必要な任意の量として定義される。薬剤を投与するための有効量及びスケジュールは、経験的に判定され得、かかる判定を行うことは、当該技術分野の技術内である。投与のための用量範囲は、疾患又は障害の1つ若しくは2つ以上の症状が影響される(例えば、低減又は遅延される)、所望の効果をもたらすのに十分に大きいものである。用量は、望ましくない交差反応、アナフィラキシー反応など等の相当な有害な副作用を引き起こすほど大きくあるべきではない。一般的に、用量は、年齢、状態、性別、疾患の種類、疾患若しくは障害の程度、投与経路、又は他の薬物がレジメンに含まれているかどうかと共に変動し、当業者によって判定することができる。用量は、いずれかの禁忌がある場合には、個々の医師によって調整することができる。用量は、毎日、1日、又は数日間、変更することができ、かつ1つ若しくは2つ以上の用量の投与において投与することができる。指針は、所与のクラスの医薬製品に対する適切な用量に関する文献において見出すことができる。
【0044】
本明細書において使用される際、治療(treatment)、治療する(treat)、又は治療している(treating)という用語は、疾患若しくは状態、又は疾患若しくは状態の症状の影響を低減する方法を指す。このため、開示される方法において、治療は、確立された疾患若しくは状態、又は疾患若しくは状態の症状の重症度の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%の低減を指し得る。例えば、疾患を治療するための方法は、対照と比較して、対象における疾患の1つ若しくは2つ以上の症状の10%の低減が存在する場合、治療と見なされる。このため、低減は、未感作又は対照レベルと比較して、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、又は10%~100%の任意のパーセントの低減であり得る。治療が、必ずしも、疾患、状態、又は疾患若しくは状態の症状の療養又は完全切除を指すわけではないことが理解される。
【0045】
本明細書において使用される際、疾患又は障害を予防する(prevent)、予防している(preventing)、及び予防(prevention)という用語は、対象が疾患又は障害の1つ若しくは2つ以上の症状を示し始める前、又はそれとほぼ同時に行われる、行為、例えば、治療薬の投与を指し、これは、疾患又は障害の1つ若しくは2つ以上の症状の発病又は増悪を阻害又は遅延する。本明細書において使用される際、減少、低減、又は阻害への言及は、対照レベルと比較して、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又はそれ以上の変化を含む。かかる用語は、完全な排除を含むことができるが、必ずしも含まない。
【0046】
ワクチン、方法、及びキット
同種抗原及びクラミジアの同時インビボ投与は、強力な抗原特異的体液性免疫の発生を誘導し、より親和性の高い抗原特異的抗体の発生を加速させることが発見されている。例えば、本明細書に開示されるのは、HIV-1特異的中和抗体の形成である。
【0047】
慢性クラミジア・トラコマチス感染症は、生殖器粘膜に胚中心様構造を誘発することが知られているが、この観察結果のメカニズムの説明は確定されていない。しかしながら、最近になって、クラミジア種が、ポリクローナルB細胞の活性化及び増殖をインビトロ(ヒト、ヒト以外の霊長類、イヌ、ネコ、及びマウス)及びインビボ(マウス)において誘発し、非クラミジア特異的ポリクローナル抗体の産生を促進することが分かった。
【0048】
この現象を利用して、抗原及びクラミジアの同時投与により同種抗原に対する体液性免疫応答を高めることができる。例えば、マウスにオボアルブミン(OVA)及び不活性化C.トラコマチス血清型L2基本小体(EB)を2週間毎に1ヶ月間投与した(即ち、計3回の処置)。この研究において、これらのマウスは、OVAのみを投与されたマウスと比較して、著しく高いOVA特異的IgM及びIgG血清抗体濃度を示し(
図1)、OVA特異的抗体の親和性は、OVA及びクラミジアEBで同時に処置されたマウスにおいて著しく高かった(
図2)。後者の結果は、EBの使用がOVA特異的抗体の親和性成熟の過程を加速したことを示した。これらの結果と同様に、ジフテリア毒素(DT)及びクラミジアEBの単一用量を投与したマウスは、DT特異的IgG抗体の著しく高い血清濃度を生じた(
図3)。更に、これらのマウスは、DTのみで処置されたマウスと比較して、致死的DT攻撃に対する感受性が低下した(
図4)。
【0049】
本明細書に開示されるのは、抗原と、クラミジア種のタンパク質、ペプチド、若しくは炭水化物、又はそれらの断片と、を含むワクチンであり、抗原はクラミジア種に由来しない。抗原及びクラミジア種(即ち、それらのタンパク質、ペプチド、炭水化物、又は断片)の両方を含む、本明細書に開示されるワクチンは、特異的体液性活性を高めることができる。これは、クラミジア種のタンパク質、ペプチド、炭水化物、又は断片を含まないワクチンの形態で抗原を対象に投与したコントロールと比較するとき、特異的体液性活性を10、20、30、40、50、60、70、80、90、若しくは100%、又は2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10倍、又はそれ以上に高め得ることを意味する。
【0050】
抗原と、クラミジア種のタンパク質、ペプチド、若しくは炭水化物、又は全不活性化クラミジア、又はそれらの断片とは、アジュバントとして使用するために抗原に化学的に結合され得る。あるいは、抗原と、クラミジア種のタンパク質、ペプチド、若しくは炭水化物、又は全不活性化クラミジア、又はそれらの断片とは、結合せずに単に混合され得る。ナノ粒子を使用することもでき、このナノ粒子は、クラミジア種のタンパク質、ペプチド、若しくは炭水化物、又は全不活性化クラミジアでコーティングされる。クラミジア種のタンパク質、ペプチド、若しくは炭水化物、又は全不活性化クラミジア種は、ナノ粒子による投与の前に、抗原に結合されてもよく、又は単に抗原と混合されてもよい(化学的に結合されない)。
【0051】
「抗原がクラミジア種に由来しない」とは、抗原が、クラミジア種から得られたタンパク質、ペプチド、炭水化物、核酸、又はこれらのいずれかの断片ではないことを意味する。換言すると、抗原は、別の感染因子などのクラミジア以外の供給源、又は腫瘍に由来する。例えば、抗原は、クラミジアのタンパク質又は核酸と90、80、70、60、50、40、30、20、又は10%未満の相同性を持つことができる。
【0052】
クラミジア種のタンパク質、ペプチド、又は炭水化物(又はそれらの断片)は、所望の免疫応答を生じさせ得る任意の機能的断片であり得る。本明細書に開示されるワクチン及び方法において使用されるクラミジア種(C.トラコマチス、C.シッタシ、及びC.ムリダルムを含む)は、生きていても、不活性化されていてもよく、又はクラミジア種(C.トラコマチス、C.シッタシ、及びC.ムリダルムを含む)由来のタンパク質、炭水化物、若しくは断片であってもよい。クラミジア種は、既知の種の変異型であり得、かつ依然として、本明細書に開示される効果を付与する機能を保持することができる。例えば、全細菌を使用することができる(生菌は白血球に感染せず、抗生物質含有培地中で生存できない)。代替的に、不活性化された全細菌(X線若しくはガンマ線を照射した)、又は全細菌から生成された溶解物を使用することができる。別の実施形態では、特定のタンパク質、炭水化物、又はそれらの断片を使用することができる。例えば、クラミジア・トラコマチスの主要外膜タンパク質(MOMP)又はその断片を使用することができる。別の例では、不活性化C.トラコマチス基本小体(EB)又は網状体(RB)を使用することができる。当業者であれば、クラミジア種のどのタンパク質、ペプチド、若しくは炭水化物、又はそれらの断片が、所望の効果を付与するために使用することができるかを容易に判定することができる。
【0053】
任意の疾患、障害、又は状態からの任意の抗原を使用することができる。例示的な抗原としては、細菌、ウイルス、寄生虫、アレルゲン、自己抗原、及び腫瘍関連抗原が挙げられるが、これらに限定されない。DNAに基づくワクチンが使用される場合、抗原は、典型的に、投与されたDNA構築物の配列によってコードされる。代替的に、抗原が共役体として投与される場合、抗原は、典型的に、投与された共役体に含まれるタンパク質である。具体的には、抗原は、タンパク質抗原、ペプチド、全不活性化生物などを含むことができる。
【0054】
本明細書に開示されるワクチン及び方法に単一の抗原を使用してもよく、又は複数の抗原を共に使用してもよい。例としては、同じワクチン中に使用される(即ち、同時に投与される)か、又は互いの一定時間枠内で使用される、2つ、3つ、4つ、又はそれ以上の抗原が挙げられる。
【0055】
一態様では、抗原は、ロタウイルス、口蹄疫ウイルス、インフルエンザAウイルス、インフルエンザBウイルス、インフルエンザCウイルス、H1N1、H2N2、H3N2、H5N1、H7N7、H1N2、H9N2、H7N2、H7N3、H1 0N7、ヒトパラインフルエンザ2型、単純ヘルペスウイルス、エプスタイン・バーウイルス、野兎病、大痘瘡(天然痘)、ウイルス性出血熱、エルシニア・ペスティス(疫病)、水痘ウイルス、ブタヘルペスウイルス1、リステリア、サイトメガロウイルス、リッサウイルス、ポリオウイルス、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、E型肝炎、ジステンパーウイルス、ベネズエラウマ脳脊髄炎、ネコ白血病ウイルス、レオウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ラッサ熱ウイルス、ポリオーマ腫瘍ウイルス、イヌパルボウイルス、乳頭腫ウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス、牛疫ウイルス、ヒトライノウイルス種、エンテロウイルス種、メンゴウイルス、パラミクソウイルス、トリ伝染性気管支炎ウイルス、ヒトT細胞白血病-リンパ腫ウイルス1、ヒト免疫不全ウイルス1、ヒト免疫不全ウイルス2、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、パルボウイルスB19(paro-virus B 19)、アデノウイルス、風疹ウイルス、黄熱ウイルス、デング熱ウイルス、ウシRSウイルス、コロナウイルス、ボルデテラ・パータシス、ボルデテラ・ブロンキセプチカ、ボルデテラ・パラパータシス、ブルセラ・アボルタス(Brucella abortis)、ブルセラ・メリテンシス、ブルセラ・スイス、ブルセラ・オビス、ブルセラ種、エシェリキア・コリ、サルモネラ種、サルモネラ・チフィ、連鎖球菌、ビブリオ・コレラ、ビブリオ・パラヘモリチカス、シゲラ、シュードモナス、マイコバクテリウム・ツベルクローシス、マイコバクテリウム・アビウム、マイコバクテリウム・ボビス(カルメット・ゲラン桿菌)、マイコバクテリウム・レプレ、肺炎球菌、ブドウ球菌、エンテロバクター種、ロシャリメア・ヘンセラ(Rochalimaia henselae)、パスツレラ・ヘモリチカ(Pasterurella haemolytica)、パスツレラ・マルトシダ、トレポネーマ・パリダム、ヘモフィルス種、マイコプラズマ・ボビゲニタリウム、マイコプラズマ・プルモニス、マイコプラズマ種、ボレリア・ブルグドルフェリ、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionalla pneumophila)、クロストリジウム・ボツリヌム(Colstridium botulinum)、コリネバクテリウム・ジフテリエ、エルシニア・エンテロコルチカ(Yersinia entercolitica)、リケッチア・リケッチィ、リケッチア・チフィ、リケッチア・プロワツェキイ(Rickettsia prowsaekii)、エーリキア・シャフェンシス、アナプラズマ・ファゴサイトフィルム、熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、四日熱マラリア原虫、住血吸虫、トリパノソーマ、リーシュマニア種、フィラリア線虫、トリコモナス症、肉胞子虫症、無鉤条虫、有鉤条虫、リーシュマニア、トキソプラズマ・ゴンディ、旋毛虫、コクシジウム症、ニワトリ盲腸コクシジウム、クリプトコッカス・ネオフォルマンス、カンジダ・アルビカンス(Candida albican)、アスペルギルス・フミガーツス(Apergillus fumigatus)、コクシジオイデス症、ナイセリア・ゴノレエ、マラリアスポロゾイト周囲タンパク質、マラリアメロゾイトタンパク質、トリパノソーマ表面抗原タンパク質、百日咳、アルファウイルス、アデノウイルス、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、髄膜炎菌外膜タンパク質、連鎖球菌Mタンパク質、インフルエンザ血球凝集素、癌抗原、腫瘍抗原、毒素、外毒素、神経毒、サイトカイン、サイトカイン受容体、モノかイン、モノかイン受容体、植物花粉、動物のフケ、及びイエダニからなる群から選択されるか、又はこれらに由来する。他の抗原としては、自己免疫状態、炎症性状態、アレルギー、ぜんそく、及び移植拒絶反応と関連する抗原が挙げられる。
【0056】
具体的には、本明細書に開示されるのは、HIV特異的抗体の親和性成熟の加速と、HIV特異的中和活性を有する抗体の発生との両方を促進する、HIV-1エンベロープ糖タンパク質(Env)及びクラミジアを投与するためのワクチン戦略である。
【0057】
広域HIV-1中和活性を有する有効な抗体応答を生じさせるのに必要な免疫原的特性を有するEnvの開発に、多大な努力が払われてきた。しかしながら、ウイルススパイク上の保存Ab決定基が立体構造及びグリカンにより遮蔽されているため、HIV-1は中和抵抗性の高いウイルスである。したがって、Env上のより接触しやすいエピトープ領域にほとんど結合しない広域中和抗体を生じさせることは、極めて困難であり、特異的な次位決定基の選択的標的化と、親和性成熟を増大及び/又は加速させる強力なアジュバントの使用とが必要である。上記のように、クラミジアは、親和性成熟を増大させるアジュバントとして働く実質的な能力を有する。
【0058】
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に対するワクチンの開発は、その発見から30年が過ぎても目標が達成されないままである。ワクチン開発は、ウイルスがすぐに変異し、可変ループ、高グリコシル化、オリゴマー化、及び立体構造的マスキングを用いてそのエンベロープ糖タンパク質の保存エピトープを「隠す」という現実により、捉えどころがなく、困難になっている。
【0059】
HIVなどのエンベロープウイルスは、2段階の過程で細胞に侵入する。第1の過程は、ウイルス表面タンパク質が宿主細胞の原形質膜上の受容体に結合することを伴う。受容体の結合後、ウイルスエンベロープの脂質二重層と宿主細胞膜との間で膜融合反応が生じる。ウイルスエンベロープの脂質二重層に埋め込まれたウイルスタンパク質は、受容体の結合及び膜融合反応に触媒作用を及ぼす。
【0060】
HIVでは、エンベロープ(Env)糖タンパク質が、ウイルス侵入機能を行う。Envは、ポリタンパク質前駆体分子として合成されており、このポリタンパク質前駆体分子は、宿主のプロテアーゼによりタンパク質分解的に処理され、成熟Env糖タンパク質複合体の表面サブユニット(gpl20)及び膜貫通サブユニット(gp41)を生成する。未処理のEnv前駆体は、その見掛けの分子量を反映する、gpl60として知られており、これは更に処理されてgp41サブユニット及びgpl20サブユニットを形成する。
【0061】
HIV感染の初期段階は、HIV-I及びHIV-2の主要受容体として働く、細胞表面分子CD4にgpl20が結合することを伴う。膜融合過程は、一般にgpl20とCD4との事前接触の後、gpl20と、Gタンパク質結合共役受容体であるCCR5又はCXCR4ケモカイン受容体のいずれかとの相互作用により開始される。Gp41は、融合過程に関与する。膜融合におけるGp41の正確な役割は、完全には分かっていない。一説には、Gp41は、最初に融合ペプチドと呼ばれるそのアミノ末端の疎水性ドメインにより標的細胞膜と接触して係合し、次いでウイルス及び細胞の脂質二重層を近接させるために構造変化を経て、それらの外部小葉を合体させ、それによって半融合中間体を形成する。次に、融合孔と呼ばれる水性連結部を、合体した膜の内部小葉にわたって開き、ヌクレオカプシドに対して通路を開放しておくように広げる必要がある。
【0062】
有効なHIVワクチンを同定するための探求において重要な目的は、広域交差反応性HIV中和抗体(bcrn Ab)(広域中和抗体(bn Ab)と同等)を生じさせ得るワクチン免疫原の探索であった。このような抗体は、HIVに感染したヒトではほとんど生じることがなく、このようなモノクローナルbcrn Abはわずかに数種類が知られており、これには、IgG bl2(Burton et al,1994;Roben et al.,1994)、IgG 2G12(Trkola et al.,1996;Sanders et al.,2002;Scanlan et al.,2002)、ml 4(Zhang et al.,2004c)、ml 8(Zhang et al.,2003)、447~52D(Gorny et al.,1992)、IgG 2F5(Muster et al.,1993)、IgG 4E10(Stiegler et al.,2001;Zwick et al.,2001)、IgG m46(Choudhry et al.,2007)、IgG m48(Zhang et al.,2006)、Fab X5(Moulard et al.,2002)、及びFab Z13(Zwick et al.,2001)が挙げられ、それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0063】
しかしながら、bcrn Abを同定したとしても、これらのAbは著しい体細胞突然変異及び親和性成熟を要するため、ワクチンを使用してHIVに感染するリスクのある患者にこれらの抗体を導入することは実現していない。現在使用可能なアジュバントは、これらの効果を必要なレベルまでもたらし得ていない。これは、依然として予防HIVワクチンの開発における重大な障害のうちの1つである。本明細書に開示されるのは、HIV特異的抗体の親和性成熟の加速と、HIV特異的中和活性を有する抗体の発生との両方を促進する、HIV-1エンベロープ糖タンパク質(Env)及びクラミジアを投与するためのワクチン戦略であり、予防HIVワクチンの開発における重大な障害のうちの1つをできる限り克服し得る。
【0064】
一実施形態において、抗原は、腫瘍関連抗原を含むことができる。治療可能な腫瘍の例としては、以下の膵臓腫瘍、例えば、膵管腺癌(adenocarinomas);肺腫瘍、例えば、小細胞及び大細胞腺癌、扁平上皮細胞癌、並びに細気管支肺胞上皮癌;結腸腫瘍、例えば、上皮腺癌及びそれらの転移;並びに肝臓腫瘍、例えば、肝細胞種及び胆管癌が挙げられる。また、乳腺腫瘍、例えば、管状及び小葉腺癌;婦人科腫瘍、例えば、子宮頸部の扁平上皮及び腺癌、並びに子宮及び卵巣上皮腺癌;前立腺腫瘍、例えば、前立腺腺癌;膀胱腫瘍、例えば、移行扁平上皮癌;RES系の腫瘍、例えば、結節性又はびまん性B又はT細胞リンパ腫、形質細胞腫、及び急性又は慢性白血病;皮膚腫瘍、例えば、悪性黒色腫;並びに軟部腫瘍、例えば、軟部肉腫及び平滑筋肉腫も挙げられる。星状細胞腫、乏突起膠腫、上衣腫、髄芽腫、及び未分化神経外胚葉性腫瘍等の脳腫瘍が、特に関心が高い。このカテゴリには、神経膠腫、膠芽細胞腫、及び神経膠肉腫が含まれる。
【0065】
具体的には、以下の抗原は、以下の種類の癌に関連し、本明細書に開示されるワクチン及び方法において使用することができる。
【0066】
【0067】
個体の免疫は、以下のうちのいずれかであり得る:個体は、組成物中に存在するある腫瘍関連抗原に対して、免疫学的に未感作であり得、この場合、組成物は、抗腫瘍応答の成熟を開始又は促進するために与えられ得る。個体は、現在、抗腫瘍免疫を発現していない可能性があるが、ワクチンに含まれる腫瘍関連抗原に関連する、免疫学的記憶、具体的には、T細胞記憶を有し得、この場合、組成物は、記憶応答を刺激するために与えられ得る。個体はまた、ワクチンに含まれる腫瘍関連抗原に対して、活性免疫(体液性若しくは細胞性免疫のいずれか、又は両方)を有し得、この場合、組成物は、応答を維持、強化、若しくは成熟させるために、又は免疫系の他のアームを動員させるために与えられ得る。対象は、少なくとも部分的に免疫応答性であるべきであり、そのため、ワクチンは、内因性T細胞応答を誘導することができる。
【0068】
本明細書に開示されるのは、抗原と、クラミジア種のタンパク質、ペプチド、若しくは炭水化物、又はそれらの断片と、を含むキットであり、抗原はクラミジア種に由来しない。キットは、本明細書に開示されるような、ワクチンに必要な他の成分も同様に含んでよい。
【0069】
また、本明細書に開示されるのは、疾患を治療又は予防する方法である。これらの方法は、対象に抗原を投与することを含み、抗原は、クラミジア種;及びクラミジア種のタンパク質、ペプチド、若しくは炭水化物、又はそれらの断片に由来せず、それによって対象における疾患又は感染を予防する。抗原と、クラミジア種のタンパク質、ペプチド、若しくは炭水化物、又はそれらの断片とは、同じ注射液中などで、同時に投与されてよい。あるいは、抗原と、クラミジア種のタンパク質、ペプチド、若しくは炭水化物、又はそれらの断片とは、個別に投与されてもよい。当業者であれば、ワクチンの投与に使用可能な種々の方法が分かるであろう。
【0070】
治療される対象は、様々な疾患又は障害を有し得る。免疫系の体液性治療群を使用して治療され得る任意の疾患又は障害は、本明細書に開示される方法を使用して治療され得る。例えば、感染性疾患及び癌は、これらの方法を使用して治療され得る。
【0071】
本明細書に開示されるのは、抗原に対する免疫応答を生じさせる免疫付与の戦略である。ワクチンは、例えば、HIVの治療又は予防に使用され得る。一実施形態において、腫瘍特異的抗原を発現するある種類の癌を有する対象が開示される。これにより、例えば、腫瘍特異的抗原を発現する癌細胞若しくは固形腫瘍の成長の遅延若しくは減退、又は癌細胞の総数若しくは総腫瘍量の低減により証明される、患者の治療結果の改善がもたらされ得る。関連実施形態において、患者は、特定の抗原、例えば、ウイルス抗原の発現に関連するウイルス感染、細菌感染、真菌感染、又は他の種類の感染に罹患していると診断されている。このワクチンにより、患者における原因となる感染性因子の成長の遅延、及び/又は典型的には特定の感染性疾患に関連する検出可能な症状の軽減若しくは排除により証明される、患者の治療結果の改善がもたらされ得る。
【0072】
ワクチンが投与のために調製される場合、それは、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤と組み合わせられて、医薬製剤又は単位剤形を形成することができる。かかる製剤中の全活性成分は、製剤の0.1~99.9重量%を含む。「薬学的に許容される」物質とは、製剤の他の成分と適合性であり、かつその受容者に有害ではない担体、希釈剤、賦形剤、及び/又は塩である。投与のための活性成分は、粉末若しくは顆粒として;溶液、懸濁液、又は乳剤として存在し得る。
【0073】
発現ベクター、形質導入細胞、ポリヌクレオチド、及びポリペプチド(活性成分)が製剤化及び投与されて、活性成分と生物の身体におけるそれらの薬剤の作用部位との接触をもたらす任意の手段により様々な疾患状態を治療することができる。それらは、個別の治療活性成分として、又は治療活性成分の組み合わせでのいずれかで医薬品との併用に利用可能な任意の従来の手段によって投与され得る。それらは単独で投与され得るが、一般に、選択される投与経路及び標準の薬務に基づいて選択される薬学的担体と投与される。
【0074】
一般に、水、好適な油、生理食塩水、水性ブドウ糖(グルコース)、並びに関連糖溶液及びグリコール、例えば、プロピレングリコール又はポリエチレングリコールが、非経口溶液に好適な担体である。非経口投与用の溶液は、活性成分、好適な安定剤、及び必要な場合、緩衝物質を含有する。単独又は組み合わせのいずれかでの重硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、又はアスコルビン酸等の酸化防止剤が、好適な安定剤である。クエン酸並びにそのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)塩及びナトリウムも使用される。加えて、非経口溶液は、塩化ベンザルコニウム、メチル-又はプロピル-パラベン、及びクロロブタノール等の防腐剤を含有し得る。好適な薬学的担体については、この分野の標準参照文章であるRemington’s Pharmaceutical Sciencesに記載されている。
【0075】
更に、標準の薬学的方法を用いて、作用持続期間を制御することができる。これらは、当該技術分野で周知であり、放出制御調製物を含み、適切な巨大分子、例えば、ポリマー、ポリエステル、ポリアミノ酸、ポリビニル、ピロリドン、エチレンビニルアセテート、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、又は硫酸プロタミンを含み得る。巨大分子の濃度、並びに組み込み方法を調整して、放出を制御することができる。更に、この薬剤は、ポリエステル、ポリアミノ酸、ヒドロゲル、ポリ(乳酸)、又はエチレンビニルアセテートコポリマー等のポリマー材料の粒子に組み込まれ得る。組み込みに加えて、これらの薬剤を使用して、この化合物をマイクロカプセル内に捕捉することもできる。
【0076】
本明細書に開示される治療薬を含有する医薬製剤は、周知の容易に入手可能な成分を使用した当該技術分野で既知の手技によって調製され得る。治療薬は、例えば、筋肉内、皮下、又は静脈内経路により、非経口投与に適切な溶液としても製剤化され得る。治療薬の医薬製剤は、水溶液若しくは無水溶液又は分散液の形態、又は代替的に乳剤又は懸濁液の形態も採り得る。
【0077】
投与される用量は、所望の治療応答、免疫応答の刺激、又は本開示の他の箇所に定義される感染性疾患若しくは癌の治療をもたらすのに「有効な」量である。所望の効果を達成するために組み合わせで使用される場合、複数の用量は各々、有効量の定義内に入る。これらの用量は、例えば、1日に複数回、又は毎日、又は2日毎に、又は3日毎に投与され得る。追加の用量が、所望の効果が達成されるまで、例えば、月1回又は週1回ベースで投与され得る。その後、かつ具体的には免疫学的又は臨床的利益が弱まっているように見えたときに、追加のブースタ又は維持用量が必要に応じて投与され得る。
【0078】
ワクチンの種々の成分が「有効な組み合わせ」で存在し、これは、ワクチンが有効になるのに十分な量の成分が各々存在することを意味する。ワクチンが全体として有効である限り、任意の数の構成物を使用してよい。これは、ワクチンを調製するために使用される方法にも依存する。
【0079】
薬学的組成物は、免疫応答の生成又は感染症の治療若しくは予防に関連する他の療法の後に、それらの前に、それらの代わりに、又はそれらと組み合わせて投与され得る。例えば、対象に抗ウイルス薬を同様に投与してもよい。かかる様式が使用される場合、それらは、好ましくは、本明細書に開示される組成物の免疫原性を妨害しない方法で、又はそれを妨害しないときに用いられる。免疫応答を刺激するために、対象に別のワクチン又は他の組成物が投与されている場合もある。
【0080】
抗腫瘍又は抗病原体免疫学的応答の提供を目的とする別の戦略とともに本明細書に記載のワクチンの組み合わせを投与することを含む併用療法が、本明細書に開示される。一併用療法では、当業者に周知の抗ウイルス療法とともに、本明細書に開示されるワクチンが対象に投与される。一併用療法では、刺激された同種異系リンパ球の腫瘍内留置剤が、腫瘍から離れた部位で、治療前、治療中、又は治療後のいずれかに対象に投与される。別の併用療法では、対象が、腫瘍から離れた部位で、治療前、治療中、又は治療後のいずれかに、代替的なワクチン組成物で治療される。複数の異なる組成物又は投与方法が治療過程を通して用いられる場合、治療の各要素の順序及びタイミングは、免疫刺激又は抗腫瘍効果を最適化するように選択される。
【0081】
本発明のいくつかの実施形態について説明されている。それでもなお、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく種々の修正を加えてもよいことが理解される。したがって、他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内である。
【実施例】
【0082】
実施例1:C.トラコマチスがOVA特異的抗体の親和性成熟を加速させる
マウスオボアルブミン(OVA)及び不活性化C.トラコマチス基本小体(EB)を、2週間毎に1ヶ月間投与した(即ち、計3回の処置)。この研究において、これらのマウスは、OVAのみを投与されたマウスと比較して、著しく高いOVA特異的IgM及びIgG血清抗体濃度を示し(
図1)、OVA特異的抗体の親和性は、OVA及びクラミジアEBで同時に処置されたマウスにおいて著しく高かった(
図2)。後者の結果は、EBの使用がOVA特異的抗体の親和性成熟の過程を加速したことを示した。これらの結果と同様に、ジフテリア毒素(DT)及びクラミジアEBの単一用量を投与したマウスは、DT特異的IgG抗体の著しく高い血清濃度を生じた(
図3)。更に、これらのマウスは、DTのみで処置されたマウスと比較して、致死的DT攻撃に対する感受性が低下した(
図4)。
【0083】
実施例2:C.トラコマチスがEnv特異的抗体応答を高め得る
初期実験プラットフォームとしてマウスを使用したインビボ研究を実施することができる。クラミジアがC57BL/6マウスにおいてEnvの免疫原性を高め得るかどうかについて、ELISA及びB細胞のELISPOT測定により抗原特異的応答の大きさを決定することにより判定する。次に、Env特異的抗体応答の親和性を、カオトロピックELISAプロトコールの使用により定義する。その後、単一Env特異的記憶B細胞及び胚中心B細胞を同定して免疫化C57BL/6マウスから単離し、クラミジアが体細胞突然変異の程度を高め得るかどうかを判定する。また、十分に標準化したEnv偽ウイルスアッセイ及びTZM-bl標的細胞を使用して、Env特異的抗体を生じさせる能力を高めてHIV-1を中和するためのアジュバントとしてクラミジアを評価する。最後に、他の種類のアジュバント、例えば、無機塩(例えば、ミョウバン)、油エマルション(例えば、MF59)、及び微粒子(例えば、AbISCO-100)と同時に使用する場合、B細胞アジュバントとして作用してEnv特異的抗体の濃度及び親和性を高めるクラミジアの能力を評価することができる。
【0084】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、開示される発明に属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に引用される刊行物及びそれらが引用される資料は、参照により具体的に組み込まれる。
【0085】
当業者であれば、日常的な実験のみを使用して、本明細書に記載の本発明の具体的な実施形態に対する多くの等価物を理解するか、又は解明することができる。かかる等価物は、以下の特許請求の範囲によって包含されるものとする。