(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】適応性のある光レイダー受信機
(51)【国際特許分類】
G01S 7/4863 20200101AFI20220610BHJP
G01C 3/06 20060101ALI20220610BHJP
G01S 7/481 20060101ALI20220610BHJP
G01S 17/931 20200101ALN20220610BHJP
【FI】
G01S7/4863
G01C3/06 120Q
G01C3/06 140
G01S7/481 Z
G01S17/931
(21)【出願番号】P 2018543723
(86)(22)【出願日】2017-02-17
(86)【国際出願番号】 US2017018415
(87)【国際公開番号】W WO2017143217
(87)【国際公開日】2017-08-24
【審査請求日】2020-02-13
(32)【優先日】2016-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517052242
【氏名又は名称】エイアイ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AEYE, Inc.
【住所又は居所原語表記】8 Executive Dr., Suite 120, Fairview Heights, IL 62208, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ルイス ダッサン
(72)【発明者】
【氏名】アラン スタインハート
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド クック
【審査官】東 治企
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-157044(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0285625(US,A1)
【文献】特開2014-059302(JP,A)
【文献】特開2000-056018(JP,A)
【文献】特開2014-059301(JP,A)
【文献】特開2012-202776(JP,A)
【文献】特開2003-256820(JP,A)
【文献】特開2013-156139(JP,A)
【文献】特開2013-015338(JP,A)
【文献】特開2006-329971(JP,A)
【文献】国際公開第2016/025908(WO,A2)
【文献】特開平07-098381(JP,A)
【文献】特開2005-331273(JP,A)
【文献】特開2014-077658(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0331113(US,A1)
【文献】特開2001-050723(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48-7/51
G01S 17/00-17/95
G01C 3/00-3/32
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測距点絞り込みアルゴリズムを利用して光レイダー発信
機によって目標とするための走査エリア内の複数の測距点をインテリジェントに選択するステップであって、ショットリストが、選択される前記測距点として目標とされるフレーム内の画素の順序付けリストを含む、ステップと、
前記ショットリストに従って前記選択される測距点を前記光レイダー発信
機の目標とするように前記光レイダー発信
機の複数のミラーを走査するステップと、
前記ショットリストに従って前記ミラーの走査ステップによって前記目標とされる測距点に向かって複数の光レイダーパルスを発信するステップと、
複数の検出器画素を備える光検出器アレイに対して、前記光レイダーパルスが発信されている間、前記ショットリストおよび前記検出器画素の前記光検出器アレイ内の場所と前記ショットリストからの前記目標とされる測距点の前記走査エリア内の場所との関係性に基づいて、範囲の処理作業において使用するための光を感知するために前記検出器画素のどれが所与の時間に作動されるのかを適応可能に制御するステップであって、前記感知される光は、前記選択される測距点からの発信された前記光レイダーパルスの反射を含む、ステップと、
を含む、光レイダーシステムの動作方法。
【請求項2】
走査ミラーを備える光レイダー発信機であって、前記光レイダー発信機は、ショットリストに従って前記走査ミラーを介して走査エリア内の複数の測距点に向かって複数の光レイダーパルスを発信するように構成されており、前記ショットリストは、前記光レイダーパルスによって目標とされるべき前記走査エリア内の測距点の順序を規定し、前記目標とされる測距点は、測距点絞り込みアルゴリズムを利用して選択される、光レイダー発信機と、
(1)アレイと、(2)前記アレイと通信する回路とを備える光レイダー受信機と、
を備える光レイダーシステムであって、
前記アレイは、複数の光センサを備え、前記光センサが、前記目標とされる測距点からの前記発信された光レイダーパルスの反射を示す光を感知し、前記感知された光を示す信号を生成するように構成され、
前記回路は、前記ショットリストおよび前記光検出器のアレイ内の場所と前記ショットリストからの前記目標とされる測距点の前記走査エリア内の場所との関係性に基づいて前記光センサの複数のサブセットを規定することにより、所与の時間に読み出すために前記サブセットのどれが作動されるのかを適応可能に制御するように構成され、前記目標とされる測距点に関する範囲情報の計算における使用のために、前記光検出器の作動された前記サブセットが、前記目標とされる測距点からの前記発信された光レイダーパルスの反射に相当する前記感知された光を表す信号を生成する、
光レイダーシステム。
【請求項3】
前記回路が、
信号処理回路と、
前記アレイおよび前記信号処理回路と通信するマルチプレクサと、
を備え、
前記マルチプレクサは、各選択的に接続された光センサによって生成された前記信号を前記信号処理回路に渡すように、制御信号に応じて前記光センサの各規定されたサブセットを前記信号処理回路と選択的に接続するように構成され、
前記信号処理回路は、提供された信号を増幅し、前記目標とされる測距点に関して前記範囲情報を計算するために処理するために複数のデジタルサンプルに変換するように構成される、
請求項2に記載の光レイダーシステム。
【請求項4】
前記回路はさらに、前記マルチプレクサと通信する制御回路を備え、
前記制御回路は、前記制御信号が、前記走査エリア内の前記ショットリストからの前記目標とされる測距点の場所に基づいて前記アレイ内の光センサのサブセットを選択するように、前記制御信号を生成するように構成される、
請求項3に記載の光レイダーシステム。
【請求項5】
前記制御信号が、前記ショットリストにならう特定の順序で前記アレイ内の光センサのサブセットを選択するように、前記制御回路は、前記制御信号を生成するようにさらに構成される、
請求項4に記載の光レイダーシステム。
【請求項6】
前記光レイダー発信機が、前記光レイダー発信機がその光レイダーパルスを目標設定すべき場所を制御するために走査する複数の走査ミラーを備え、前記ショットリストが、前記光レイダー発信機が圧縮センシングを提供するように、前記測距点絞り込みアルゴリズムに従って前記走査エリア内の測距点のサブセットを選択的に目標とする、
請求項4または5に記載の光レイダーシステム。
【請求項7】
前記回路がさらに、
前記光センサからの出力を調整するために前記光センサに複数のフィードバック信号を提供するフィードバック回路を備える、
請求項4から6のいずれかに記載の光レイダーシステム。
【請求項8】
前記フィードバック回路が、前記光センサと、制御されたフィードバックループ内で前記光センサからの前記出力を増幅する前記マルチプレクサと、の間に複数の増幅器を備える、
請求項7に記載の光レイダーシステム。
【請求項9】
前記光センサからの前記出力に関する信号雑音比を増大させるフィードバックゲインを生成するために、前記増幅器を制御するように構成されたゲイン制御装置をさらに備える、
請求項8に記載の光レイダーシステム。
【請求項10】
前記フィードバック回路が、照合ネットワークフィードバックループとして構成される、
請求項8または9に記載の光レイダーシステム。
【請求項11】
前記信号処理回路が、前記マルチプレクサによって渡される前記信号のために単一のチャネルを含む、
請求項3から10のいずれかに記載の光レイダーシステム。
【請求項12】
前記信号処理回路が、前記マルチプレクサによって渡される前記信号のために複数のチャネルを含み、前記信号処理回路が、前記複数のチャネル内に存在する信号に基づいて前記マルチプレクサによって渡される前記信号の雑音成分を低下させるように構成される、
請求項3から11のいずれかに記載の光レイダーシステム。
【請求項13】
前記信号処理回路が、前記マルチプレクサによって渡される前記信号の空間的指向性の雑音成分を低下させるためのフィルタを含む前記複数のチャネルのためのコヒーレント結合回路を備える、
請求項12に記載の光レイダーシステム。
【請求項14】
前記サブセットが、複数の前記光センサを備え、回路は、複数の光センサから複数のマルチプレクサ入力ラインの各々への信号を結合し、これにより前記信号処理回路への読み出しのために複合画素を規定するように位置決めされる、
請求項3から13のいずれかに記載の光レイダーシステム。
【請求項15】
前記アレイの前記光センサが、複数の画素に相当し、選択された光センサの前記サブセットが、前記サブセット内にいくつの画素が含まれるかに関して経時的に変化する、
請求項2から14のいずれかに記載の光レイダーシステム。
【請求項16】
前記アレイの前記光センサが、複数の画素に相当し、複数の前記画素が、六角形を呈する、
請求項2から15のいずれかに記載の光レイダーシステム。
【請求項17】
前記アレイの前記光センサが、複数の画素に相当し、前記複数の画素は、異なるサイズを呈する、
請求項2から16のいずれかに記載の光レイダーシステム。
【請求項18】
前記アレイの前記光センサは、複数の画素に相当し、前記回路は、動作不良として検出された画素が、前記規定されたサブセットに含めるために選択されないように、動作不良の画素の検出に基づいて前記規定されたサブセット内に含めるためにどの画素が選択されるかを適応させるように構成される、
請求項2から17のいずれかに記載の光レイダーシステム。
【請求項19】
前記回路が、動作不良である画素を検出するようにさらに構成される、
請求項18に記載の光レイダーシステム。
【請求項20】
前記動作不良の画素は、暗い画素を含む、
請求項18または19に記載の光レイダーシステム。
【請求項21】
前記動作不良の画素は、白色画素を含む、
請求項18から20のいずれかに記載の光レイダーシステム。
【請求項22】
前記アレイの前記光センサが、複数の画素に相当し、前記回路が、過剰飽和状況の検出に基づいて前記規定されたサブセット内に含めるためにどの画素が選択されるかを適応させることで、前記過剰飽和状況を抑制する方法で、前記生成された信号に関するダイナミックレンジを調整するように構成される、
請求項2から21のいずれかに記載の光レイダーシステム。
【請求項23】
前記回路が、画素の前記サブセットによって感知される前記光に関して過剰飽和状況が存在するかどうかを検出するようにさらに構成される、
請求項22に記載の光レイダーシステム。
【請求項24】
前記過剰飽和状況が、前記サブセット内の過剰飽和した画素に相当する、
請求項22または23に記載の光レイダーシステム。
【請求項25】
前記サブセットが、複数の画素を含み、前記過剰飽和状況が、前記生成された信号における画素の集合に相当する、
請求項22から24のいずれかに記載の光レイダーシステム。
【請求項26】
前記アレイの前記光センサが、複数の画素に相当し、前記サブセットが、複数の画素を含み、過剰に飽和した画素が、それが干渉する光からの雑音によって過剰に飽和される間、前記規定されたサブセット内に含めるために選択されないように、前記回路が、干渉する光によって過剰に飽和した画素の検出に基づいて前記規定されたサブセット内に含めるためにどの画素が選択されるかを適応させるように構成される、
請求項2から25のいずれかに記載の光レイダーシステム。
【請求項27】
前記回路が、前記サブセット内のいずれかの画素が干渉する光からの雑音によって過剰に飽和されているかどうかを検出するようにさらに構成される、
請求項26に記載の光レイダーシステム。
【請求項28】
前記干渉する光が、異なる光レイダー発信機からの光レイダーパルスに相当する、
請求項26または27に記載の光レイダーシステム。
【請求項29】
前記アレイの前記光センサが、複数の画素に相当し、前記回路が、散乱した光レイダーパルス反射の検出に基づいて前記規定されたサブセット内にどの画素が含まれるかを適応させるように構成される、
請求項2から28のいずれかに記載の光レイダーシステム。
【請求項30】
前記光レイダー発信機が、前記光レイダー受信機からのフィードバックに基づいて前記ショットリストを調整するように構成される、
請求項2から29のいずれかに記載の光レイダーシステム。
【請求項31】
調整後の前記ショットリストが、前記アレイ内の過剰に飽和した画素に相当する測距点を回避する、
請求項30に記載の光レイダーシステム。
【請求項32】
調整後の前記ショットリストが、過剰に干渉する光を含む視野内の領域に相当する測距点を回避する、
請求項30または31に記載の光レイダーシステム。
【請求項33】
前記光レイダー発信機が、前記光レイダー受信機からのフィードバックに基づいて前記光レイダーパルスにどのくらいの出力が含まれるかを調整するように構成される、
請求項2から32のいずれかに記載の光レイダーシステム。
【請求項34】
前記光レイダー受信機が、前記アレイと光学通信し、前記アレイ上に光を集めるように位置決めされた集光器をさらに備える、
請求項2から33のいずれかに記載の光レイダーシステム。
【請求項35】
前記集光器が、ファイバテーパ集光器を備える、
請求項34に記載の光レイダーシステム。
【請求項36】
前記ファイバテーパ集光器が、コヒーレントなファイバテーパ集光器を備える、
請求項35に記載の光レイダーシステム。
【請求項37】
前記光レイダー受信機が、結像系を含むレンズをさらに備え、前記レンズが、前記集光器と光学通信し、前記集光器の入射ひとみにおいて光を結像するように構成される、
請求項34から36のいずれかに記載の光レイダーシステム。
【請求項38】
前記光レイダー受信機が、結合系を含むレンズをさらに備え、前記レンズが、前記アレイと光学通信しており、前記アレイ上に光を結像するように構成される、
請求項2から37のいずれかに記載の光レイダーシステム。
【請求項39】
前記光レイダー受信機が、前記レンズと前記アレイとの間に集光器を含まない、
請求項38に記載の光レイダーシステム。
【請求項40】
前記回路が、(1)前記光レイダーシステムが移動中であることを示す信号を処理し、(2)処理済みの移動を示す信号に基づいて前記生成された信号の雑音成分を低下させるようにさらに構成される、
請求項2から39のいずれかに記載の光レイダーシステム。
【請求項41】
前記ショットリストおよび前記関係性に基づく順序での前記適応可能に制御するステップにより作動された前記検出器画素を利用して、前記発信された前記光レイダーパルスの戻りを検出するステップと、
前記選択される測距点に関する範囲情報を計算するために、検出された前記戻りを処理するステップと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項42】
前記インテリジェントに選択するステップは、圧縮センシングを提供する前記光レイダー発信機をもたらす、請求項1または41に記載の方法。
【請求項43】
前記適応可能に制御するステップは、作動された前記検出器画素に相当する信号を選択するためにマルチプレクサを制御するステップを含み、
前記方法は、
前記光検出器アレイと前記マルチプレクサとの間の増幅器によって、作動された前記検出器画素により生成された信号を増幅するステップであって、前記増幅器が照合ネットワークとして構成されたフィードバック回路の一部である制御されたフィードバックループ内にある、ステップと、
制御回路が備え付けるゲイン制御装置によって、制御された前記フィードバックループ内の前記増幅器をゲイン制御するステップと、
をさらに含む、
請求項1、41および42のいずれかに記載の方法。
【請求項44】
前記方法は、前記光レイダー発信機がダイクロイック光検出器によって前記光検出器アレイに目標設定した場所に関する追跡信号を提供するステップをさらに含む、請求項1、41および43のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
ダイクロイック光検出器を備え、前記光レイダー発信機が目標設定した場所に関する追跡情報を、前記光レイダー発信機および前記ダイクロイック光検出器が前記光レイダー受信機に提供する、請求項2から40のいずれかに記載の光レイダーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願に対する相互参照および優先権主張
本特許出願は、2016年2月18日に出願された、「Ladar Receiver」と題する米国仮特許出願第62/297,112号に対する優先権を主張し、その開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本特許出願はまた、(1)2017年2月10日に出願され、「Adaptive Ladar Receiving Method」と題する米国特許出願シリアル番号15/430,179号、(2)2017年2月10日に出願され「Adaptive Ladar Receiver」と題する米国特許出願シリアル番号15/430,192号、(3)2017年2月10日に出願され、「Ladar Receiver with Advanced Optics」と題する米国特許出願シリアル番号15/430,200号、(4)2017年2月10日に出願され、「Ladar System with Dichroic Photodetector for Tracking the Targeting of a Scanning Ladar Transmitter」と題する米国特許出願シリアル番号15/430,221号、および(5)2017年2月10日に出願され、「Ladar Receiver Range Measurement using Distinct Optical Path for Reference Light」と題する米国特許出願シリアル番号15/430,235号に対して優先権を主張し、これらの特許出願は全て、2016年2月18日に出願され「Ladar Receiver」と題する米国仮特許出願第62/297,112号に対して優先権を主張し、その各々の開示全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
導入
特に自動車コンピュータビジョンなどの分野において、改良されたコンピュータビジョン技術に対して当分野において多大な要求があると考えられる。しかしながらこのような要求は、自動車コンピュータビジョンの市場に限定されるわけではなく、改良されたコンピュータビジョン技術に対する要望は、様々な分野にわたって広く普及しているため、限定するものではないが、自立型プラットフォームビジョン(例えば、自立型の陸上ベースの車両、自立型の空中車両など、空気、陸地(地面を含む)、水(水中を含む)および空間に関する自立型車両)、監視(例えば国境警備、空中のドローン監視など)、マッピング(例えば地下トンネルマッピング、空中ドローンを介するマッピングなど)、目標認識用途、リモートセンシング、安全性の警告(例えば運転手に対するなど))が含まれる。
【0004】
本明細書で使用される際、用語「光レイダー」は、レーザレイダー、レーザ検知および測距、ならびに光検知および測距(「ライダー」)のいずれかを指し、これらを包含している。光レイダーは、コンピュータビジョンと関連して広く使用される技術である。1つの例示的な光レイダーシステムにおいて、レーザ源を含む発信機が、光レイダーパルスなどのレーザ出力を付近の環境へと発信する。その後、光レイダー受信機が、付近の環境内にある物体からこのレーザ出力の反射を受光し、光レイダー受信機は、受光した反射を処理して、係る物体までの距離(範囲情報)を求める。この範囲情報に基づいて、例えば障害物を回避するシナリオにおける経路のプランニング、航路定点の決定などの事態を計算することを望むホストプロセッサによって環境の幾何学形状のより明確な理解を得ることができる。しかしながら、コンピュータビジョンに対する従来の光レイダー解決法は、コストが高い、サイズが大きい、重量が重い、および出力要件が大きい、ならびにデータ帯域の利用が大きいという問題を抱えている。このことの最適な例は、自動運転車である。このような複雑な要因は、その効果的な利用を、短い範囲の視覚、狭い視野および/またはゆっくりとした再訪速度しか必要としないコストの高い用途に限定する。
【0005】
このような問題を解決しようとする中で、改良された光レイダー受信機および/または改良された光レイダー発信機/受信機系に関するいくつかの実施形態が本明細書に開示される。例えば、本発明者等は、適応性のある光レイダー受信機に関するいくつかの実施形態および関連する方法を開示しており、そこでは、光レイダーパルスによって目標とされる測距点の場所に基づいて、アドレス指定可能な光検出器アレイの中の画素のサブセットが制御可能に選択される。さらになおも、本発明者等は、光検出器アレイのそのような適応性のある制御が増強されることで、いくつかある特徴の中でも特に雑音(光レイダー干渉を含む)を低下させ、ダイナミックレンジを最適化し、かつ散乱作用を軽減させる実施形態例を開示する。本発明者等は、光検出器アレイと組み合わせた種々の光学装置によっていかにして受信機を増強させることができるかを示している。これらの開示を通して、一部の実施形態に関する予測されるミリメートル規模の精度を含めた範囲の精密さの改善を達成することができる。これらのおよび他の実施形態例がより詳細に以下で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1A】光レイダー発信機/受信機系の実施形態例を示す。
【
図1B】光レイダー発信機が、事前走査圧縮を助けるために走査ミラーおよび測距点の絞り込みを利用する光レイダー発信機/受信機系の実施形態例を示す。
【
図2】光レイダー受信機の実施形態例に関する一例のブロック図を示す。
【
図3A】結像式の検出光学装置が非結像式の集光器を利用する、光レイダー受信機に関する検出光学装置の実施形態例を示す。
【
図3B】無限焦点の検出光学装置が非結像式の集光器を利用する、光レイダー受信機に関する検出光学装置の別の実施形態例を示す。
【
図4】結像式の検出光学装置が結像式の集光器を利用する、光レイダー受信機に関する結像式検出光学装置の実施形態例を示す。
【
図5A】結像式光レイダー受信機に関する検出器に対して直接の実施形態の実施形態例を示す。
【
図5B】非結像式光レイダー受信機に関する検出器に対して直接の実施形態の別の実施形態例を示す。
【
図6A】検出器アレイ内のどのセンサが信号処理回路に渡されるかを選択するためにマルチプレクサを利用する、光レイダー受信機内の読み出し回路に関する実施形態例を示す。
【
図6B】
図6Aの実施形態例に関連して使用することができる光レイダーの受信方法の実施形態例を示す。
【
図7A】
図6Aの読み出し回路に対する信号処理回路に関する一実施形態例を示す。
【
図7B】
図6Aの読み出し回路に対する信号処理回路に関する別の一実施形態例を示す。
【
図8】マルチプレクサ制御信号を生成するための制御回路の実施形態例を示す。
【
図9】ダイクロイック光検出器と組み合わせた光レイダー発信機の実施形態例を示す。
【
図10A】光レイダー受信機が、パルス送信と、パルス検出との間の遅延を推定するために照合フィルタとして相関関係を利用する実施形態例を示す。
【
図11A】感知した光信号のSNRを改善するためにフィードバック回路を利用する受信機の実施形態例を示す。
【
図11B】フィードバック回路設計に関連する別の実施形態例を示す。
【
図12】インテリジェントに制御された適応性のある光レイダー受信機に関するプロセスフローの例を示す。
【
図13B】
図13Aの光レイダー受信機の実施形態の日中の利用に関する信号雑音比(SNR)と範囲、ならびに付加的な受信機の特性のグラフを示す。
【
図14A】別の一例の光レイダー受信機の実施形態を示す。
【
図14B】
図14Aの光レイダー受信機の実施形態の日中の利用に関する信号雑音比(SNR)と範囲、ならびに付加的な受信機の特性のグラフを示す。
【
図15】動作が強化された検出器アレイ活用の一例を示す。
【
図16】動作が強化された検出器アレイの追跡性能を示すグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1Aは、光レイダー発信機/受信機系100の実施形態例を示している。系100は、光レイダー発信機102および光レイダー受信機104を含み、各々が、系のインターフェースおよび制御装置106と通信している。光レイダー発信機102は、複数の光レイダーパルス108を複数の測距点110(例示を簡単にするために、1つの、例えば測距点110が
図1Aに示されている)に向けて発信するように構成されている。光レイダー受信機104は、測距点110からこの光レイダーパルスの反射112を受光する。光レイダー受信機104は、反射した光レイダーパルス112を受光し、これを処理することで、測距点の距離および強度情報の決定を助ける。革新的な光レイダー受信機104に関する実施形態例が以下に記載される。
【0008】
実施形態例において、光レイダー発信機102は、
図1Bによって示されるように、事前走査圧縮(これは「圧縮センシング」として本明細書で称することができる)を助けるために、走査ミラーを含み、測距点絞り込みアルゴリズムを利用する光レイダー発信機の形態を採ることができる。そのような実施形態はまた、環境シーンデータを光レイダー発信機に提供することで、測距点の絞り込みを助ける環境センシングシステム120を含んでよい。そのような光レイダー発信機の実施形態例は、2014年8月15日に出願された米国特許出願シリアル番号62/038,065号、米国特許出願公開番号第2016/0047895号、2016/0047896号、2016/0047897号、2016/0047898号、2016/0047899号、2016/0047903号および2016/0047900号に見いだすことができ、これらの各々の開示は全て参照により本明細書に組み込まれる。事前走査圧縮の利用を通して、係る光レイダー発信機は、インテリジェントな測距点の目標の選択を通して帯域をより最適に管理することができる。
【0009】
図2は、光レイダー受信機104の実施形態例に関する一例のブロック図を示している。光レイダー受信機は、反射した光レイダーパルス112を含む光を受光する検出光学装置200を備える。検出光学装置200は、光センサ202と光学式に通信しており、光センサ202は、感知された反射した光レイダーパルス112を示す信号を生成する。信号読み出し回路204が、センサ202によって生成された信号を読み取り、測距点に関するデータ形成(例えば測距点の距離情報、測距点の強度情報などの計算)のために使用される信号データを生成する。光レイダー受信機104は、
図2によって示されない追加の構成要素を含む場合があることを理解されたい。
図3A~
図5Bは、光レイダー受信機104と共に使用され得る検出光学装置200の種々の実施形態例を示している。光センサ202は、複数の個々にアドレス指定可能な光センサのアレイを備えてよい(例えばn個の素子の光検出器アレイ)。実施形態例として、光センサ202は、シリコンPINアレイ(例えばInGaAsPINアレイ)の形態を採ることができる。別の実施形態例として、光センサ202は、シリコンアバランシェフォトダイオード(APD)アレイ(例えばInGaAs APDアレイ)の形態を採る場合もある。読み出し回路204は、いくつかの形態(例えば読み出し集積回路(ROIC))を採ることができ、読み出し回路に関する実施形態例が以下に記載される。
【0010】
図3Aは、非結像式の集光器302を利用する光レイダー受信機104に関する検出光学装置200の実施形態例を示す。このように複合放物面型集光器などの非結像式集光器302は、その出射開口において、その入射固定ひとみ304における像平面を、この光センサと結合された光センサ202上に再結像することはない。そのような実施形態例に関して、光の焦点を合わせるための結像系を含むレンズ300が、非結像式集光器302と光学式に通信している。
図3Aの例において、レンズ300は、たとえ結合された光センサのところに実際の映像が存在しなくても、レンズが、集光器302の入射ひとみ304のところで光の焦点を合わせる(像平面)ように位置決めされ、そのように構成される。
【0011】
図3Bは、非結像式の集光器302を利用する検出光学装置200の別の例の実施形態を示している。そのような実施形態例の場合、無限焦点レンズ群310が、非結像式集光器302と光学式に通信している。集光器302は、入射ひとみ304を含み、それは、その出射開口において光センサ202と結合させることができる。
図3Bの例では、レンズ310は、無限焦点レンズ群の入射ひとみが、集光器302の入射ひとみ304において再結像されるように位置決めされ、そのように構成される。本発明者はまた、専門家によって所望される場合、
図3Bの実施形態は、無限焦点レンズ310を省く場合もあり得ることも指摘している。
【0012】
図3Aおよび
図3Bの実施形態例に関して、集光器302は、ファイバテーパ集光器または複合放物面型集光器などの形態を採ることができる。一例のファイバテーパ集光器は、Schottより入手可能であり、一例の複合放物面型集光器は、Edmunds Opticsより入手可能である。
【0013】
図3Aおよび
図3Bの実施形態例は、専門家に様々な利点を提供する。例えばこのような実施形態例によって、光センサ202のために比較的小さい検出器アレイを利用することが可能になる。別の例として、このような実施形態は、それらが検出器の受光角を検出器のサイズと引き換えにし、ならびにSNRを高い調整不良の許容範囲と引き換えにする機会を専門家に与えるため有益であり得る。しかしながら
図3Aおよび
図3Bの実施形態が、他の実施形態に対して最適なSNRを生み出すわけではない。
【0014】
図4は、結像式集光器320を利用する検出光学装置200の実施形態例を示している。このように、結像式集光器320は、その入射ひとみ304において受光した像を光センサ202上に再結像する。そのような実施形態例に関して、光の焦点を合わせるための結像系を含むレンズ300は、結像式集光器320と光学式に通信している。レンズは、レンズが集光器320の入射ひとみ304のところで光の焦点を合わせ(像平面)、集光器320が、この光を結合された光センサ202上に結像するように位置決めされ、そのように構成されている。実施形態例において、集光器320は、コヒーレントなファイバテーパ集光器の形態を採ることができる。一例のコヒーレントなファイバテーパ集光器は、Schottより入手可能である。
【0015】
図4の実施形態例もまた、専門家に対して様々な利点を提供する。例えば、
図3Aおよび
図3Bの例でのように、
図4の実施形態例によって、光センサ202のために比較的小さい検出器アレイを利用することが可能になる。この実施形態もまた、検出器の受光角を検出器のサイズと引き換えにし、ならびにSNRを高い調整不良の許容範囲と引き換えにする機会を専門家に与えるために有益であり得る。
図3A/
図3Bの実施形態例に対する
図4の実施形態例の利点は、
図4の実施形態例は概してより高いSNRを生み出すことである。
【0016】
図5Aは、光レイダー受信機104に関する「検出器に対して直接の」検出光学装置200の実施形態例を示している。そのような実施形態例に関して、光の焦点を合わせるための結像系を含むレンズ300が、光センサ202と光学式に通信している。レンズ300は、レンズが光センサ202上に直接光の焦点を合わせる(像平面)ように位置決めされ、そのように構成されている。よって、
図3Aおよび
図4の実施形態とは異なり、レンズ300と光センサ202との間に集光器は存在していない。
【0017】
図5Bは、光レイダー受信機104に関する「検出器に対して直接の」検出光学装置200の別の実施形態例を示している。そのような実施形態例に関して、無限焦点レンズ310が、光センサ202と光学式に通信している。レンズ310は、レンズひとみが光センサ202上に直接再結像されるように位置決めされ、そのように構成されている。本発明者はまた、専門家によって所望される場合、
図5Bは、無限焦点レンズ310を省く場合もあることを指摘している。
【0018】
図5Aおよび
図5Bの実施形態例は、光センサ202に関して(他の実施形態に対する所与の系視野角(FOV)に関して)より大きな検出器アレイを必要とすると予測されるが、それらは極めて優れたSNRを呈することも予測される。
図5Aの実施形態と、
図5Bの実施形態のどちらかと言うと、
図5Aの実施形態は一般に、
図5Bの実施形態より優れたSNRを呈するが、
図5Bの実施形態は一般に、調整不良に対してより寛容であることが予測される(これは
図5Bの実施形態がより製造し易いことを意味している)。
【0019】
検出光学装置200は、専門家によって所望される場合、光センサ202に対して像平面の不完全な結像作業を行うように設計される場合があることも理解されたい。これは、幾分「ぼやけた」画像が生じることになるが、そのようなぼやけは、低フィルファクターの検出器アレイに関連するいくつかの用途および/または状況にとっては好適な場合もある。
【0020】
図6Aは、検出器アレイ600の中のどのセンサ602が信号処理回路606に渡されるかを選択するのにマルチプレクサ604を利用する光レイダー受信機内の読み出し回路204に関する実施形態例を示している。この実施形態例では、光センサ602は、複数の個別にアドレス指定可能な光センサ602を備える検出器アレイ600の形態を採る。各光センサ602は、アレイ600の1つの画素として特徴付けることができ、各光センサ602は、入射光に応答してその独自のセンサ信号610を生成する。よって、アレイ600は、複数の光検出器の画素を備える検出領域を有する光検出器を備えることができる。
図6Aの実施形態は、読み出し回路204が、所与の時間に信号処理回路606に渡される到来するセンサ信号610を分離することを可能にするマルチプレクサ604を利用する。そうする中で、
図6Aの実施形態は、センサ読み出しを選択的に分離するための能力が開示されないUSPN8,081,301によって開示されるものなどの光レイダー受信機の設計と比べて、とりわけ周辺の受動光に対して、より最適な受信されるSNRを提供する。よって、信号処理回路606は、1回につき単一の到来するセンサ信号610(または到来するセンサ信号610のいくつかのサブセット)に対して作用することができる。
【0021】
マルチプレクサ604は、反射した光レイダーパルスを検出する要望を満たすのに十分に高い切り換え率を提供する任意のマルチプレクサチップまたは回路であってよい。実施形態例では、マルチプレクサ604は、検出器アレイ600のセンサ602によって生成される光電流信号を多重送信する。しかしながら、マルチプレクサ604が、検出器アレイ600のセンサ602によって生成される結果として生じる電圧信号を多重送信する他の実施形態が使用される場合もあることを理解されたい。さらに、
図6Aの読み出し回路204を含む光レイダー受信機が、事前走査圧縮センシングを利用する走査光レイダー発信機と対にされる実施形態例では(例えば、上記で参照され組み込まれた特許出願に記載される測距点絞り込みを利用する実施形態例など)、光レイダー発信機によって実現される測距点の選択的な目標設定作業は、マルチプレクサ604によって提供される選択的な読み出しと最適に対になることで、受信機は、SNRを改善するための努力において検出器の読み出しを対象の画素に対して隔離することができる。
【0022】
制御回路608は、到来するセンサ信号610のうちのどれが信号処理回路606に渡されるかを管理する制御信号612を生成するように構成することができる。
図6Aの読み出し回路204を含む光レイダー受信機が、走査パターンに従って事前走査圧縮センシングを利用する走査光レイダー発信機と対にされる実施形態例では、制御信号612は、マルチプレクサを、発信機のショットリストにならうあるパターンで(係る発信機によって利用され得るショットリストの例が、上記で参照され組み込まれた特許出願に記載される)個々の光センサ602に選択的に接続させることができる。制御信号612は、ショットリストを介して測距点の目標設定にならうあるパターンでアレイ600内のセンサ602を選択することができる。よって、発信機が光レイダーパルスによって画素x、yを目標に設定した場合、マルチプレクサ604は、検出器アレイ600からの画素x、yの読み出しを生じさせる制御信号612を生成することができる。
図8は、制御回路608に関する実施形態例を示す。制御回路608は入力としてショットリスト800を受け取る。このショットリストは、光レイダー発信機によって測距点として目標設定されるべきフレーム内の画素の順序付けリストである。802において、制御回路は、ショットリスト上の測距点/目標画素のうちの最初のものを選択する。804において、制御回路は、選択した測距点を検出器アレイ600のセンサ/画素(または複合画素/スーパーピクセル)にマップする。806において、制御回路はその後、マルチプレクサに、検出器アレイ600のマップされたセンサ/画素(または複合画素/スーパーピクセル)を読み出させるのに有効な制御信号612を生成する。808において、制御回路は、ショットリスト上の次の測距点/目標画素へと進み、作業802に戻る。必要であれば、制御回路608は、各画素を目標にする光レイダーパルスに関して往復時間を考慮するためにタイミングゲートを含むことができる。
【0023】
制御信号612は、1回につき単一のセンサ602を選択するのに有効であり得る、またはそれは1回につき複数のセンサ602を選択するのに有効である場合もあり、そのようなケースでは、マルチプレクサ604は、信号処理回路606によるさらなる処理のために、到来するセンサ信号610のサブセットを選択することを理解されたい。そのような複数のセンサは、複合画素(またはスーパーピクセル)と呼ばれる場合もある。例えば、アレイ600は、JxKグリッドの複合画素に分割されてよく、その場合、各複合画素は、X個の個々のセンサ602で構成される。加算機回路を、検出器アレイ600と、マルチプレクサ604との間に位置決めすることができ、この場合、各加算機回路は、単一の複合画素に相当し、その対応する複合画素を構成する画素からの読み出し(センサ信号610)を合計するように構成される。
【0024】
また専門家は、所望であれば、検出器アレイ600とマルチプレクサ604との間にいくつかの事前増幅回路を含むことを選ぶ場合もあることも理解されたい。
【0025】
図6Bは、
図6Aの実施形態例に対応する一例の光レイダー受光方法を描いている。ステップ620において、光レイダーパルスが目標とされる測距点に向かって発信される。上記で指摘したように、視野内の走査エリアにおけるこの目標とされる測距点の場所は、光レイダー発信機によって知ることができる。この場所は、以下で説明するように、光レイダー発信機から光レイダー受信機に伝えられる、または光レイダー受信機自体によって特定される場合もある。
【0026】
ステップ622において、目標とされる測距点の場所に基づいて、検出器アレイ600内の画素のサブセットが選択される。
図8に関連して指摘したように、走査エリア内の画素x1、y1が目標に設定された場合、これを検出器アレイ600内の画素j1、k1に変換することができるように、検出器アレイ600の画素と走査エリア内の場所との間にマッピング関係を築くことができる。サブセットは、検出器アレイ600の単一の画素しか含まない場合もあるが、多くのケースでは、サブセットは、複数の画素(例えば目標とされる測距点が、その特有の画素を取り囲むいくつかの数の画素を加えるようにマップする特有の画素)を含むことを理解されたい。そのような周辺の画素も、測距点の光レイダーパルス反射からエネルギーを受け取ることを予測することができるが、このエネルギーは、特有の画素より低くなることが予測される。
【0027】
ステップ624において、検出器アレイ600内の選択された画素のサブセットは、入射光を感知するが、これは、ステップ620において送信された光レイダーパルスの反射/戻りを含むことが予測される。選択されたサブセットに含まれる各画素はよって、入射の感知した光に応じて信号を生成する(ステップ626)。複数の画素が、選択されたサブセットに含まれる場合、これらの生成された画素固有の信号は、選択されたサブセットの画素の全てに対する入射の感知した光に相関する集合信号へと結合させることができる。選択されたサブセットに含まれない検出器画素もまた、そのような画素によって感知された光を示す出力信号を生成することができるが、システムは、ステップ626~630においてこのような信号は利用しないことを理解されたい。さらに、システムは、ステップ624および626における読み出しの前に、選択されたサブセット内の画素を「ゼロに設定」し、そのような画素上に既に存在し得る任意の漂遊する/事前に存在する光の作用を排除するように構成され得ることも理解されたい。
【0028】
ステップ628において、ステップ626において生成された光検出器信号が処理される。一例として、光検出器信号は、増幅されデジタル化されることで、反射した光レイダーパルスに基づいた範囲および強度情報の解明作業を目的とするさらなる処理作業を可能にする。そのような処理作業の例が以下でさらに考察される。
【0029】
ステップ630において、ステップ628における光検出器信号の処理作業に基づいて目標とされる測距点に関する範囲情報が計算される。この範囲の計算は、いくつかの技術のいずれかに依拠してよい。また計算された範囲情報は、光レイダーシステム100と目標とされる測距点110との間の距離を示す任意のデータであってよい。例えば計算された範囲情報は、発信機102から目標とされる測距点110までの光レイダーパルス108と、目標とされる測距点110から受信機104に戻る反射した光レイダーパルス112とに関する通過の時間の推定値であってよい。係る通過時間情報は、光レイダーシステム100と、目標とされる測距点110との間の距離を示している。例えば、範囲の計算は、光レイダーパルスが発信されたときと、反射した光レイダーパルスがステップ628において処理済みの信号内で検出されたときとの時間遅延の測定値に依拠する場合がある。そのような範囲の計算を支援するための技術の例が以下で考察される。
【0030】
図6Bのプロセスフローは、光レイダーパルスが光レイダー発信機によって目標設定された場所に基づいて、検出器アレイ600の有効な感知領域が変化する適用性のある光レイダー受光方法を説明することを理解されたい。そうする中で、雑音の有意な削減および範囲の解明の改善が達成されると考えられている。さらに、以下でより詳細に説明するように、検出器画素のサブセットが、感知された光から取り出される情報に基づいて適応可能に選択されることで、さらに性能を改善することができる。
【0031】
図6Aに戻ると、信号処理回路606は、マルチプレクサ604によって渡される選択されたセンサ信号(複数可)を増幅し、増幅された信号を、光レイダー測距点に関する範囲情報および/または強度を示す処理済みの信号データに変換するように構成することができる。信号処理回路606の実施形態例が、
図7Aおよび
図7Bによって示される。
【0032】
図7Aの例では、信号処理回路606は、選択されたセンサ信号(複数可)を増幅する増幅器700と、増幅された信号を複数のデジタルサンプルに変換するアナログデジタル変換器(ADC)702と、デジタルサンプルに対していくつかの処理作業を行うことで処理済みの信号データを生成するように構成されたフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)とを備える。
【0033】
増幅器700は、例えば低雑音RF増幅器または低雑音で動作可能な増幅器などの低雑音増幅器の形態を採ることができる。ADC702は、NチャネルADCの形態を採ることができる。
【0034】
FPGA704は、デジタルサンプルを処理し、反射した光レイダーパルスに基づいた測距点に関する範囲および/または強度についての情報を最終的に返すように構成されたハードウェアロジックを含む。実施形態例において、FPGA704は、ADC702によって生成されたデジタルサンプルに対してピーク検出を行うように構成される場合もある。実施形態例において、係るピーク検出は、範囲情報を+/-10cmの範囲内で計算するのに有効であり得る。FPGA704はまた、サンプルが多項式に対する曲線適合を有するデジタルサンプルに対して補間を実施することで、検出されたピークがどこで曲線に適合するかをより精密に特定する補間を支援することもできる。実施形態例において、そのような補間は、+/-5mmの範囲内で範囲情報を計算するのに有効であり得る。
【0035】
図7Aに示されるものなどの信号処理回路を利用する受信機が、上記に参照され組み込まれた特許出願に記載されるような圧縮センシングを利用する光レイダー発信機と対にされた場合、受信機は、検出されたパルスに対して信号処理を実行するためにより多くの時間を有することになるが、これは光レイダー発信機が、従来式の発信機よりも、フレーム当たり空気中により少ない数の光レイダーパルスを発射するためであり、このことは信号処理回路に対してかかる処理の負担を軽減する。さらに、処理の性能をさらに高めるために、FPGA704は、検出された信号の異なる部分がFPGAの異なるハードウェアロジックリソースによって同時に処理され、これにより各測距点について正確な範囲および/または強度情報を計算するために必要とされる時間をさらに短縮するように、FPGAの並行なハードウェアロジックリソースを活用するように設計することもできる。
【0036】
さらに、
図7Aの信号処理回路は、検出を最大にするためにFPGAが信号データ上で担うことができる信号処理作業に起因して、低SNRを呈する到来する信号と共に機能することが可能である。
【0037】
図7Bの例では、信号処理回路606は、選択されたセンサ信号(複数可)を増幅する増幅器700と、増幅された信号を、感知された光(反射した光レイダーパルスを含む)を表す複数のデジタルサンプルに変換する時間デジタル変換器(TDC)710とを備える。TDCは、ピークホールド回路を利用して、検出された信号におけるピークがいつ到達するかを検出し、またピークホールド回路と組み合わせてタイマーとしてランプ回路を利用することもできる。TDC710の出力はこのとき、測距点に関する範囲情報を規定するのに使用することができるピーク間のタイミングを表す一連のビットであってよい。
【0038】
図7Bの信号処理回路は一般に、到来する信号が
図7Aの実施形態よりも高いSNRを呈することを必要とするが、
図7Bの信号処理回路は、範囲に対する高い分解能(例えばピコ秒の分解能)を提供することが可能であり、実装するのに
図7Aの実施形態ほど費用が高くないことにより利益を与える。
【0039】
図9は、光レイダー発信機102および光検出器900を使用して、光レイダー発信機(その走査ミラーを介して)が目標に設定した場所に関する追跡情報を光レイダー受信機104に提供する実施形態例を開示している。この例では、光検出器900は、走査ミラーの光学的に下流に(例えば光レイダー発信機102からの出力のところに)位置決めされ、この場合、この光検出器900は、(1)光レイダーパルス108によって呈示される周波数を包含する範囲(この場合この周波数の範囲は、透過性の周波数範囲と呼ばれてよい)内の周波数を呈示する入射光に対する有効な透過性窓として、および(2)透過性の周波数範囲内にない周波数を呈示する入射光に関する光検出器として作用する。よって、光検出器のドープされた/固有の層および基板が選択され得ることで、光レイダーパルス108は、透過性の周波数範囲内になり、その一方で別の周波数における光は、吸収され検出される。入射光の周波数に基づいた伝播性と、吸収/検出のこのような二重の特性を呈する光検出器の領域は、光学的に透過性の/伝播性のケーシングの中に収容することができる。光検出作用を支援する光検出器900の電子回路は、透過性/伝播性である必要がない光検出器900の別の領域に収容することができる。そのような光検出器900は、ダイクロイック光検出器と呼ばれる場合がある。
【0040】
図9の光レイダー発信機102は、光検出器900によって吸収され、光検出器出力信号904(例えば光電流q)に変換される周波数で光902を出力する第2の光源(例えば第2の口径照準式光源)を装備している。光902は、レーザ光、LED照明、または光検出器900による精密な局所化された検出に適した任意の他の光であってよい。光レイダー発信機102は、光902を光レイダーパルス108と整列させることができるため、走査ミラーは、光レイダーパルス108と同じやり方で光902を誘導する。光検出器の出力信号904は、光902が光検出器900に当たる場所のx、y位置を示している。光902と光レイダーパルス108が整列することによって、これは、信号904もまた、光レイダーパルス108が光検出器900に当たる(およびこれを通過する)場所を示すことを意味している。したがって信号904は、発信機のミラーが走査する際に光レイダー発信機が目標に設定した場所を追跡する追跡信号として機能する。各々の光レイダーパルスが発信機102によっていつ発射されるかを知ることによって、追跡信号904をこのように利用することで、光レイダーパルス108が測距点110に向けて発射される際、光レイダー発信機が目指していた場所を特定することができる。我々は以下で、このような発射に関するタイミングの認識をどのようにして達成することができるかを考察する。追跡信号904はその後、光レイダー受信機104内の制御回路によって、またはシステム内の他の知的装置によって処理されることで、光レイダーパルス108が発射されたとき、光レイダー発信機102が目標にした場所を追跡することができる。発信機が目標にした場所を正確に知ることによって、システムは、受信機によって収集されるデータの改善された位置の場所を獲得することが可能である。本発明者等は、システムは、10mrad前後のビーム広がりに関して1mradまたはより最適なビーム指向精度を達成することができると予測する。これにより、未処理の光回折限界値を上回る測距点の十分な戻りに対する位置情報を獲得するためのその後の処理作業が可能になる。
【0041】
我々はここで、レーザ光に関する送信時間と、受光時間とを考察する。
図10Aは、実施形態例を開示しており、この場合、発信機102から測距点に向かって、および光レイダーパルス反射112を介して受信機104に戻る光レイダーパルス108が採る光路と異なる光路が、光レイダー発信機102と光レイダー受信機104との間に設けられており、距離の精度を高めるために、これを介して発信機102から受信機104へと基準光1000が伝えられる。さらに、この別個の光路は、光検出器600が、基準光1000の鮮明なコピーを受信することを保証するのに十分である。
【0042】
この別個の光路は、発信機102から受信機の光検出器600への直接の光路であってよい。そのような直接の光路によって、基準光1000を受信機の光検出器600に送るためのミラーまたはファイバーオプティクスに関連する余剰のコストを回避することができる。例えば、発信機と受信機が横並びの空間配置である構成において、受信機104は、光を発信機102から光検出器600へと通すピンホールなどを含むことができる。実際には、このような直接の光路は、レーザが送信する出力は、受光されるレーザ戻り信号より著しく強力であるため容易に保証することができる。例えば、1Kmのところで、1cmの受光ひとみを有し、10%の反射率である場合、受信機によって感知される反射した光は、発信機の出力における光よりも10億倍以上も小さくなる。このことからして、104における光レイダー受信機のケーシング内の小さいum規模のピンホールは、ケーシングがミラーの出力904から下流に位置決めされた状態で、この直接的な結合を確立するのに十分である。別の実施形態において、ファイバーオプティクス供給装置は、メインのファイバレーザ源から分割され、基準光1000を、ひずみを生じることなく、光検出器へと誘導するのに使用される直接の光路を提供することができる。
【0043】
光レイダーパルス108が環境へと発射される際、正確な時間に、かつ正確な場所で発生させた基準光1000は、範囲の決定において使用するための時間遅延測定を促進するために光レイダーパルス108と同一のパルスであってよい。換言すると、基準光1000は、場に送信されるものと同一のパルス形状を有する光子を含む。しかしながら場からの光レイダーパルス反射とは異なり、基準光のパルスは、雑音や広がりを持たないため完璧である。
【0044】
よって、
図10Aにおける光レイダー受信機104の拡大された図の例に示されるように、光検出器600は、別個の光路を介して基準パルス1000を受光し、その後、反射された光レイダーパルス112を受光する。光検出器600によって感知された信号はその後、ADC1002によってデジタル化され、2つのチャネルに分けることができる。第1のチャネルにおいて、遅延回路/操作者1004が、デジタル化された信号1006を遅延させて、遅延信号1008を生成する。遅延信号1008はその後、相関演算1010を介してデジタル化された信号1006と比較される。この相関演算は、(既知の)パルス長と等しい、またはそれを超える時間間隔にわたって合計された各項1006、1008の乗算であってよい。信号1006は、相関演算1010を介して信号1008にわたって有効にスライドするため、相関出力1012は、2つの信号が互いと調整されたとき、最大値に達することになる。この調整は、基準パルス1000と反射パルス112との間の遅延を示しており、この遅延は高分解能の範囲決定に使用することができる。例えば、基準光信号1000が、反射した光レイダーパルス112よりも3デジタルサンプル早く到達したと仮定されたい。このような2つの信号が全く同じであり(反射においてパルスの広がりがない)、かつ像縮尺{1,2,1}の範囲内で等しい、すなわち送信パルスが、3サンプル持続すると仮定する。このとき、1004において遅延ゼロの場合、パルス長を2回合計すると、出力は、{1,2,1,0,0,0}掛ける{0,0,0,1,2,1}である。次に、1004において1サンプルだけ遅延させると仮定する。このとき出力は、和[{0,1,2,1,0,0}掛ける{0,0,0,1,2,1}]=1である。再度1サンプルだけ遅延を増大させた場合、相関出力1012として4を獲得する。次のサンプル遅延の増大に関して、6の相関出力を獲得する。このとき、次のサンプル遅延の増大に関して、4の相関出力を獲得する。次の2つのサンプル遅延の増大に関して、1の相関出力と、その後のゼロの相関出力をそれぞれ獲得する。この3番目のサンプル遅延が、最大の相関出力を生み出し、基準光と反射した光レイダーパルスとの間の遅延を正確に見つける。さらに、1kmの距離ならば、発信機は、毎秒毎に150,000パルスを発射することが可能であると予測することができ、受信機が、光レイダーパルス反射112から戻ってくる光がない状態で基準光1000の鮮明なコピーを受け取ることを保証するのに十分なタイミングのゆとりがあると予測される。
図10Aによって示される遅延および相関回路は、照合フィルタと呼ばれる場合もある。照合フィルタは、FPGAまたは、信号処理回路606の一部を形成する他のプロセッサ内に実装することができる。
【0045】
図10Aの例は、受信機の中の光検出器600およびADC1002を示しているが、戻りパルス112および基準パルス1000を検出するのに別個の光検出器が使用される場合もあることを理解されたい。また、このような光検出器からの出力をデジタル化するのに別個のADCが使用される場合もある。しかしながら、戻りパルス112と基準パルス1000によって共有される単一の光検出器およびADCの使用は、性能の低下を生じることなく、実装においてコスト削減を生み出すと考えられている。また、サンプル化された戻りパルス112の補間は、パルス1000を基準として利用することによって同様に実行することができる。上述したプロセスを利用して行われたピークの発見の後、システムは最初に、基準光信号を補間することができる。これは、三次式近似、正弦関数、ゼロ詰めおよびFFTなどの任意の所望される補間法を用いて行うことができる。システムはこのときピーク値の前後の受信信号を補間し、上述したプロセスを繰り返す。新たなピークは、このとき補間された値である。先の例に戻ると、基準光パルスを補間して{1,1.5,2,1.5,1,0,0,0,0,0,0}を獲得し、受光パルスを同様に補間して{0,0,0,1,1,5,2,1,5,1}を獲得すると仮定する。このとき、システムは、スライドし、増倍し、合計する。光レイダー戻り補間のみを単に「信頼すること」に対する上記の利点は、基準光との相関が光レイダー戻りからの雑音を除去することである。
【0046】
基準パルス1000を、形状の点で光レイダーパルス108と同じようにすることは、範囲の検出における精度の改善に貢献するが、その理由は、このような構成が、ショット間のパルス108における変化を考慮することが可能であるためである。具体的には、パルスエネルギー較正(これは単に送信時のエネルギーを測定する技術である)を利用して、範囲は形状より改善され、反射率の測定は、強度によって改善される。範囲の場合は、
図10Bによって示されるモデル化の結果において明らかにされる。
図10Bの垂直軸は、±xcmで測定された、すなわちcmで測定されたx標準の偏差の範囲の精度であり、
図10Bの水平軸はSNRである。このモデルは、1nsの全幅の1/2の最大ガウスパルスに適用される。
図10Bにグラフ化された底部ラインは、理想のケースである。その付近の実線121は、2GHzADCに関して商業的に容易に入手可能なジッターレベルである1ピコ秒のタイミングジッターの場合のADCに関するグラフである。121の下に示される2つの曲線の性能を比較することによって、
図10Bから、ジッターは、cm以下の分解能を達成する際の制約要因でないことが分かる。具体的には、下の曲線(ジッターなし)と、上の曲線(ジッター)は、極めて高い(および通常な達成不可能な)SNR[1000以下]において1ミリメートルしか違わない。しかしながらパルス変動は、有意な制限である。このことは120によって示されており、これは、商業的なナノ秒パルスの光レイダーシステムにおける共通の限界値であり、これは5%のパルス間の形状変化の場合に利用可能な性能である。120と121の差は、SNRに相関したピークの発見と、補間法の両方に関して、開示される
図10Aの技術の実施形態例によって達成される改善点である。
【0047】
この手法の計算の複雑さが、既存のFPGA装置の範囲内において十分であることを指摘することによって、範囲の精度の考察を終結する。一実施形態において、相関および補間は、これ以前の閾値が、反射した光レイダーパルスから到達するデータによって抹消された後、実践することができる。このことは、性能コストなしで複雑さを大きく低下させる。相関および補間の目的は、検出そのものではなく測距を改善することを思い出されたく、そのためこのような演算を遅延させ、それらを検出された範囲の戻りの近傍付近のみに適用することは、性能を損なわずに計算を効率化する。典型的には、それがそれだけ短いために、3つのサンプルのみが基準光パルスから選ばれる。3次モデルを用いるこの20倍の補間作業は、およそ200の演算しか必要とせず、ショット当たり1回行われ、名目上100,000ショットを伴う。光レイダー受信パルスに対する総負担事前照合フィルタおよび補間は、20Mflopである。処理のために最大の、最初と最後のパルスを選択した場合、これは、現在商業的な装置において利用可能なテラフロップスと比較して100Mflop未満まで高まる。
【0048】
さらに、
図11Aは、フィードバック回路1100を利用して有効なセンサ/画素602によって感知される信号のSNRを改善する受信機設計の実施形態例を開示している。フィードバック回路1100は、受光した光レイダーパルス戻り112(この場合、光レイダーパルス108および戻りパルス112は実施形態例においてガウスパルス形状を呈することができる)と共振状態にあり、これにより信号を強化し、雑音を抑制する照合ネットワークとして構成することができる。光検出器の性能は、ピッチ(各素子のエリア)および帯域に相関している。受動的な結像装置は入射の一時的な信号構造の事前の認識を欠いており、よって性能を調整する能力を持たない。しかしながら光レイダー発信機が圧縮センシングを利用する実施形態例では、送信された光レイダーパルス108は、それが指定された距離幅の範囲内の到達時間であるため認識されている。この認識によって、検出器の電流をフィルタにかけ、信号強度を増大させ、かつ受信機の雑音をフィルタにかける照合ネットワークフィードバックループを促進することができる。フィードバック回路によって提供されるフィードバックゲインは、制御回路からの制御信号1102を介して制御することができる。さらに、制御回路608は、受信機に関する作動状態についてより多くの情報を得るために、信号処理回路606と通信することもできることを理解されたい。
【0049】
フィードバック回路1100の照合ネットワークは、RF結合ノイズおよびクロスチャネルインピーダンスノイズを最小限にするために検出器600のIn-GaAs基板に埋め込まれてよい。検出器のチップ上に照合ネットワークを加えるコストは最低限である。さらに、この照合作用によって、通常利用可能なものより、我々がより最適な暗電流、周辺光およびジョンソンノイズの抑制を実現することが可能になる。このことは必要とされるレーザ出力をさらに低下させ、これは、光レイダーパルス108の1.5μmの波長と組み合わされた場合、非常に目に安全な解決策を導く。照合ネットワークは、複数の電極、増幅器および段を備えたより複雑な照合ネットワークで構成することができる。しかしながら単一の電極でも既に有意な利点を提供する。信号処理回路606への入力は、マルチプレクサ、フィードバックの複雑さ、または画素のサイズの変動性にもかかわらず、このカーネルの畳み込みおよび乗法による不変性により、ガウスであり得ることに留意されたい。
【0050】
図11Bは、フィードバック回路1100をどのように設計することができるかについて展開する一例を示す。照合ネットワークは、制御回路608が備え付けるゲイン制御装置によって制御されたフィードバックループ1104内に1つまたは複数の増幅器1102を含む。照合ネットワークは、mux604への全ての入力ライン上に存在することができ、
図11Bは、例示を容易にするために、点線のボックス1120の範囲内に単一の係るネットワークを示しているに過ぎない。フィードバックゲインは、フィードバック回路の入/出力関係をモデル化するための微分方程式を用いて最大SNRを出力するように概ね選択される。実際には、制御ループは、muxの出力をモニターし、増幅器1102を調整して、年数、熱的効果および周辺の光における起こり得る変動に起因する傾向を考慮するように設計することができる。そうはいっても、本明細書には、2つ以上のデジタルチャネルを利用して、フィルタ(例えばウィナーフィルタまたは最小二乗平均フィルタなど)を構築して、強力な散乱体、他の光レイダーパルスまたはさらには帯域内の太陽光線、ヘッドライドまたは他の汚染要因からの干渉を拒絶する実施形態も開示されている。またフィードバック回路は、ショット間の出力における汚染要因からのいかなる飽和も回避するために、各ショットにおいてリセットさせることもできる。
【0051】
光レイダーパルス108に対してガウスパルス形状が使用され、この場合、全ての空間時間信号が通常通り分散された状態である場合、フィードバック制御は、1122における表記法を用いて極めて簡素化することができる。したがって実施形態例では、光レイダーパルス108およびその戻りパルス112は、ガウスパルス形状を呈することができる。そのような実施形態例では(光レイダーパルス108がガウスである)、パルスのフーリエ表現もまたガウス関数であり、制御回路608によるゲイン選択は扱い易く、迅速かつ正確な適応を保証する。
【0052】
図11Bによって示される設計の別の革新的な態様は、検出器アレイ600内の複数のセンサ602に対して六角形に成形された画素を使用することである。陰付きのエリア1130は、所与の時間に信号処理回路606に渡すために選ばれた画素の選択されたサブセットを示している。どの画素602がマルチプレクサ604によって選択されるかを適応可能に選択することによって、受信機は、画素/センサ602を足したり引いたりすることによって、陰付きのエリア1130のサイズを拡大したり、縮小したりすることができる。画素/センサ602の六角形の形状は、各六角形が6つの隣接する部分を有するため、故障許容に関して好ましい形状を提供する。さらに検出器アレイ600の画素/センサ602は、専門家によって所望される場合、異なるサイズおよび/または形状を呈することもできる。例えば、画素/センサの一部は、より小さいサイズである場合もあり(例えば1132を参照されたい)、他の画素/センサは、より大きなサイズを有する場合もある(1134を参照されたい)。さらに、一部の画素/センサは六角形であってよく、他の画素/センサは異なる形状を呈する場合もある。
【0053】
図12は、受信機が検出器アレイ600の有効な領域をどのように適応させるかを制御するための適応性のある制御技術を実装するための一例のプロセスフローを描いている。ステップ1200において、サブセット1130内に含まれるのにふさわしい画素のリストが規定される。このリストは、どの画素602がサブセット1130内に含まれるのに選択されるのにふさわしいかを示すデータを含む任意のデータ構造1202であってよい。そのようなデータ構造は、
図12のプロセスフローを実装するプロセッサにアクセス可能なメモリに維持されてよい。
図12の例は、選ばれるのに適した画素602を特定するリスト1202を示しているが、データ構造1202は、サブセット1130内に含まれるのにふさわしくない画素を特定する有効なブラックリストとしての働きもする場合があることを理解されたい。
【0054】
ステップ1204において、回路(例えば信号処理回路606および/または制御回路608)は、処理ロジック(例えばFPGA)および/または他のプロセッサを含んでよく、アレイ600によって感知された光、(これはアレイ内で有効な画素602のサブセットによって感知され得る)から、または環境シーン(例えばカメラ/ビデオ画像を処理することによる)から情報を取り出すように作用する。この取り出された情報には、何らかの飽和状況が存在するかどうか、いずれかの画素が動作不良であるかどうか、視野内に何らかの高い雑音のエリアが存在しているかどうかなどの情報が含まれてよい。適応性のある制御に有益であり得る取り出された情報の例を以下で考察する。さらに、過剰飽和状況は、特有の画素(例えば強烈な入射光によってブラインド状態になった画素など)に起因し得る、および/またはサブセット1130内に含まれる画素による画素読み取り値の結合(この場合、画素出力の集約は、処理回路の線形の作動範囲を過剰飽和する)から生じる集合信号に起因し得ることを理解されたい。
【0055】
ステップ1206において、適格な画素のリスト1202が、ステップ1204において取り出された情報に基づいて調整される。例えば、所与の画素が、ステップ1204の結果として動作不良であることがわかった場合、この画素は、ステップ1206においてリスト1202から除去することができる。同様に、何らかの過剰飽和した画素もリスト1202から除去することができ、および/または視野の過度に雑音の大きいエリア(例えば雑音が閾値を超える領域)に相当する任意の画素をステップ1206においてリスト1202から除去することができる。
【0056】
次に、ステップ1208において、システムは、目標とされる測距点に基づいて適格な画素のリスト1202から画素を選択する。これは、
図8のステップ804に関連して記載されるように実行することができるが、この場合、リスト1202は、走査エリア/視野内の目標とされる測距点の場所に応じて選択されるのに適格な画素のプールを規定する。よって目標とされる測距点が、アレイ内の画素1140に対してマップされ、サブセット1130が、画素1140に隣接する全ての画素を通常含む場合、上側左の隣接する画素が、ステップ1206においてリスト1202から除去された場合(例えば検出された動作不良などによって)、画素1140の上側左の隣接する画素がサブセット1130に含まれないように、
図12の適応性のある制御技術が作用してサブセット1130を規定してもよい。さらに、ステップ1208はまた、どの適格な画素がサブセットに含まれるかに影響を与えるために、ステップ1204において取り出された情報を利用するように作用する場合もあることを理解されたい。例えば取り出された情報に基づいて有効なセンサ領域のサイズを拡大するために追加の画素がサブセット1130に加えられる場合がある。同様に、取り出された情報に基づいてサブセット1130内でより少ない画素を利用することによって、有効なセンサ領域のサイズが縮小される場合もある。よって、選択されたサブセット1130によって規定される有効な領域のサイズは、ステップ1204において取り出された情報に基づいてショット間で変動し得ることも理解されたい。
【0057】
ステップ1210において、ステップ1208において選択された画素がサブセット1130に含まれ、MUXはこのとき、選択されたサブセット1130内に含まれる画素からの出力を読み取る/結合するように制御される(ステップ1212)。その後、プロセスフローは、次の光レイダーパルスショットのためにステップ1204へと戻る。したがって、
図12のプロセスフローは、アレイ600内のどの画素が光レイダーパルス戻りを感知するために使用されるかをインテリジェントにかつ適応可能に制御するための技術を定義することが分かる。
【0058】
さらに、
図12のプロセスフローはまた、発信機の作動に影響を与えるために使用することもできることを理解されたい。例えばそのショットリスト上のショットのタイミング/順序を調整する(例えば受光時の雑音によって損なわれる可能性のあるショットを回避する)ために、光レイダー発信機によって使用するために適格な画素のリスト(または不適格な画素のリスト)を光レイダー発信機に提供することができる。さらになお、一例として、ステップ1204において取り出された情報が、MUX604によって生成された集合信号が過剰飽和したことを示す場合、光レイダー発信機は、光レイダーパルス108によって使用される出力を下げることで、受光側での過剰飽和の可能性を低下させることができる。このとき、そのような過剰飽和によって受信機が損なわれた場合、光レイダー発信機は、光レイダーパルス108に関する出力を低下させ、低下した出力パルスを再発信することによって、損なわれたショットを繰り返すことができる。
【0059】
また光レイダーシステムによって利用することができる制御技術の特有の例も本明細書に開示される。各制御技術が個別に考察され、それだけで実装することが可能であるように理解すべきであるが、適応性のある受信機に関する性能をさらに高めるために、複数のこのような制御技術を集約することもできることも理解されたい。したがって、多くの例において、このような制御技術の集約された組み合わせは、相乗作用を有し、強化することを理解されたい。他のケースでは、受信機に対して所望される動作特性に基づいて専門家によって決定されるべき交換条件が在る場合もある。
適応性のある故障許容マスク
【0060】
従来の結像アレイの場合、デッド画素は典型的には、回復不能な損失につながる。しかしながら、本明細書に記載される適応性のある制御機構の場合、動作不良の画素602は、最低限の作用を有する。例えば、500個の画素602のアレイ600を有すると仮定する。このとき、7つのスーパーピクセル/複合画素1130(特定された画素1140およびその隣接するもの)に対して遠視野シーンをマップするレンズを有すると仮定する。1つの画素を失うことは、正味の光子エネルギーのうちの1/7の損失につながる。検出器アレイがショット雑音が制限されている場合、この場合、全体の結像アレイに対する100%の損失に対して、エネルギーの7%しか損失しない。光レイダー発信機が圧縮センシングを利用する実施形態に適用される際の、故障許容の適応性のあるマスクに関する一例の制御フローが以下に示される。マスクが制御回路608によって利用されて、どの画素602が、有効なセンサの選択されたサブセットに含まれ、またどの画素がそこに含まれないのかを規定することができることを理解されたい。例えば、マスクは、各ビット位置がアレイ600内の異なる画素に対応するデータ信号であってよい。「1」の値を有するビット位置に関して、対応する画素602は、選択されたサブセットに含まれ、「0」の値を有するビット位置に関して、対応する画素602は、選択されたサブセットに含まれない。
【0061】
光を検出することができない画素602(例えば「デッド」画素または「暗い」画素)は、選択されたサブセットに含まれるべきではなく、その理由は、そのようなデッド画素は、選択されたサブセットによって規定される複合画素に相当する集約された感知信号に対して、雑音を加えることはあっても、信号は加えることはないためである。さらに、動作不良の画素は、デッド画素のみに限定されないことも理解されたい。入射光が受光されるかどうかにかかわらず出力信号を生成する画素602(例えば「スタック」画素または「白色」画素)もまた、選択されたサブセットから除くべきである。実際、白色画素は、暗い画素よりもさらに悪い場合があり、その理由は、白色画素によって生じる固着の負担が、複合画素における全ての戻りに対してグレアを加える一定の輝度の読み取りにつながる場合があるためである。どの画素602が動作不良として検出されたかに基づいて、どの画素602が選択されたサブセットに含まれるかを調整することができる適応性のある故障許容マスクを生成するための一例の制御プロセスフローが以下に記載される。
1:バックグランド画素状況プローブショットスケジュールの反復率Tを選択する(例えば名目上1時間に1回)。
2:分解:過去における先行時間ブロックTがSを特定し、画素のセットは、照明するためにまだ選択されない。S1、S2に分解し、前者は、アドレス指定可能(そのシーンにおける強力な戻り)であり、後者は、アドレス指定不可能であるように規定される(例えば水平線より上)。S1、S2は時間変動することに留意されたい。
3:ショットリスト:S1、S2をショットリストに入力する。
4:マスクを構築し、1~3(戻りのない、または変則的なゲインのいずれか)からの戻りの分析から特定された故障したタイルを除外する。レンズおよびタイルピッチに基づいてスーパーピクセルのサイズを設定することができるが、但し名目上は7であり得る。
5:1-4を再帰的に処理する。
6:平均:上記において、必要に応じて、画素プローブに対して移動平均を適用し、適応性のある計測学を含む。
【0062】
このような様式の故障許容は、緩和なしで、たった一つの信号の欠陥がFOV全体を無効にし得るため、安全性を高める際の有益なステップであり得る。
ダイナミックレンジを制御するための適応性のあるマスク
【0063】
画素のどのサブセットが、所与の時間に作動されるかに対して適応性のある制御はまた、システムのダイナミックレンジを調整するのに使用することもできる。範囲の認識に基づいて、複合画素によって生成される信号は、予測可能な強度を有する。選択されたサブセットに含まれる画素602によって規定される複合画素のサイズを調整することによって、ADC前置きフィルタおよび/またはADC自体における戻りのダイナミックレンジを縮小する(または拡大する)マスクを構築することができる。例えば典型的な複合画素が7画素(例えば
図11Bにおける1130を参照されたい)である場合、サブセットが7画素から単一の画素に減少するようにそれを調整することは、エネルギーを1/7に(またはおおまかに3ビットだけ)減少させる。光検出器は、光のエネルギーを測定するが、光の振幅は測定しない。結果として、ADCのダイナミックレンジは、従来の通信および振幅を測定する光レイダー回路に関するものの2乗である。結果として、ダイナミックレンジを適切に制御することは、レーザシステムに関する技術的挑戦である。例えば、10~500mにわたって作動するように調整された光レイダーシステムは、固定された反射率とレーザ出力の場合、2500だけ信号戻りのダイナミックレンジの変化を被る。付近の対象物が受信機を飽和させた場合、より遠い目標が失われることになる。したがって、実施形態例は、mux回路内の選択されたサブセットから任意の画素を励起するためのその必要性を評価するために、瞬間的視野における従前のショット範囲の戻りの分析を含むことができる。結果として、以下で概説するように、MUXに、領域1130の1つまたは複数の画素からのセンサ信号(複数可)を落とすようにさせる要望が存在する場合がある。戻り信号のダイナミックレンジを制御するための適応性のあるマスクを生成するための一例の制御プロセスフローが以下に記載される。
1.選択または圧縮センシングのいずれからより得られた対象物のパルス戻りからの範囲の戻りを調べる。
2.いくつかの範囲サンプルに関してMSB(最上位ビット)におけるADC報告によって証明されるように、任意の飽和アーチファクトを特定する。
3.飽和した範囲サンプルを原点の正確な方位角および高度に対してマップする。これは、隣接するセルを調査することで、とりわけビーム広がりがより顕著であるとき、より長い範囲において背景から原点を特定することを含んでよい。
4.3において特定された原点においてより大きなゲインを提示する画素を阻止することによって飽和を抑制するようにマスクを修正する。
5.必要に応じて、より小さいエリア画素のみを選択することによってマスクをさらに修正する。
干渉する光レイダーパルスの衝突を除去するための適応性のあるマスク
【0064】
受信機によって感知される光における雑音の別の可能性のある発生源は、干渉する光レイダーパルスからの衝突である。例えば光レイダーシステムが移動中の自動車において利用される用途では、検出器アレイ600に対して入射する到来する光は、主題の光レイダーシステムを担持する車両からの光レイダーパルス戻り112だけでなく、異なる車両によって担持される異なる光レイダーシステムからの光レイダーパルスまたは光レイダーパルス戻り(干渉する「車外の」パルス)も含む可能性がある。そのような干渉するパルスの適応性のある分離は、他の光レイダーシステムからの強力な干渉パルスに対応付けられた画素を励起することによって選択される画素602のサブマスクを形成することによって達成することができる。上記に参照され組み込まれた特許出願は、どの光レイダーパルスが「固有の」パルスであり、どれが「誤った」パルス(例えば「車外の」パルス)であるかについての決定を助けるために、いかにしてパルスエンコーディングを利用することができるかを記載している。例えば、そのようなエンコーディングを利用して、画素1134が干渉する光レイダーパルスからのエネルギーを包含していることを検出すると考える。このとき、どれが干渉を受けているかを知るために、アレイの画素全体(例えばクラスタ1130を含む)を走査する。一実施形態において、これは、エンコーディングを利用して「固有の」光レイダーパルスを除去することと、差し引いた後に結果として生じる信号を測定することと、所定の閾値と比較することとを含む。別の実施形態では、システムは、単にMUX出力を分析し、「固有の」パルスエンコーディング信号を差し引き、残りを閾値と比較するだけである。この実施形態は、遭遇する干渉の程度、および利用可能なプロセッサリソースに左右される。そのような検出の後、制御回路608は、この画素1134を選択されたサブセットに含むのに適格な画素のリストから除去することができ、干渉パルスは、その画素1132によって登録される。
【0065】
システムはまた、夜間の作動における受動式ビデオからのヘッドライド光源の位置特定に基づいて画素を除去する場合もある(ここでの作動上の保守的な前提は、ヘッドライドを備えた全ての車両が光レイダー発信機を有することである)。さらに、パルス衝突検出を利用して、車外のパルスを明らかにすることができるため、この情報を利用して、任意の選択された車外のレーザ源を所望される信号として扱い、残りのもの(クルマ固有の光レイダーパルスを含む)を差し引き、この干渉が最大となる場所を見つけるためにアレイの画素全体を走査することができる。そうする中で、各干渉する光レイダー源の発生源を特定し、これをその後除去することができる。
強力な散乱体の除去のための適応性のあるマスク
【0066】
受信機によって感知された光における雑音の別の可能性のある発生源は、光レイダーパルスが、強力な散乱作用を呈する物体(例えば、より理想的に配向された物体とは対照的に、光レイダーパルス108による衝突の角度に直交する、激しく傾斜し、反射する物体)にぶつかったときである。多様な戻りを呈する目標は、情報を保持する内容を有する。しかしながら、このような内容は、極端なダイナミックレンジが原因で失われる場合があり、その理由は、最も大きい戻りが飽和して、強制的に受信機を非線形モードにする、および/または強制的により弱い戻りをセンサ検出下限以下にするためである。典型的には、直接の戻りが最大であり、連続する戻りは、地面の跳ね返りの分散によって弱められるが、これは反射率が跳ね返りの戻りにおいてより高くなるケースではない。いずれのケースでも、マスクを調整することで、近範囲サンプルが、より高いひとみを受け取り(膨張)(例えば選択されたサブセットが、アレイ600のより大きなエリアを画定する場合)、遠範囲サンプルは、ひとみの収縮を被る(例えば選択されたサブセットが、アレイ600のより小さいエリアを画定する場合)ことが望ましい。遠範囲では、レーザスポットに関して大きな角度を成す範囲が生じる。強力な近範囲の散乱体のパルス戻りは、発信されたパルスのためのデータ取得窓の範囲内に到達することが可能である。適応性のあるマスクの利用によって、受光時にスポットビームを過度に分解し(例えばショット戻りビームによってカバーされる2つ以上の画素)、これにより飽和または目的のセルへの散乱体の漏出を抑えることによって、このような散乱体の除去が可能になる。例えば、理論上、範囲の戻りが1134において始まり、1132において2倍まで移動し、最も近い範囲では1130に現れることを観察すると仮定する。このとき、光レイダーパルスがセンサアレイにわたって掃引する際、異なるmuxラインを選ぶことによってマスクを修正するように制御回路に命令することができる。
マスクフィードバック制御に関連付けられた適応性のあるショットタイミング
【0067】
圧縮センシングにおいて、ダイナミックレンジは、発信機による光レイダーパルスを故意に時間調節することによってさらに縮小させることができ、その結果、レーザのピーク強度は、目標の上に当たらず、代わりに、目標に近い障害物から離れるようになり、これにより信号対クラッター比を増大させる。これは、他の手段によって得られるものの他に、近くの干渉の抑制を可能にする。例えば、理論上、上方のセンサセル1132が極めて強力な目標を含んでおり、同様に1132でラベル付けされた下方の付近のセンサセルが目標を含むと仮定する。このとき、受信したパルスショット照明を1132から2バイト分移動させ、それをより1130に向けて中心に配置するようにショットタイミングを設定することができる。ここで、ショットタイミングにおける融通性(圧縮センシングを介して提供される)、発信時のビームの位置決めの認識(
図9を参照)およびセンサ素子における選択制(例えば
図11Bを参照)を利用することで、受信機および発信機を最適に調整することで、最上級に可能な信号品質を獲得する。マスクが調整されることで、受信されたビームのビームピークが雑音源(例えば到来するトラフィック)から離れることを保証することによって、我々は、所定の距離で結像する間、付近の車両からの強力な戻りを減少させることができ、強力な散乱体を95%まで削減させ、その一方で目標の対象物は数パーセントだけ減衰させるには、一部のケースにおいては1ミリラジアンで十分である。実施形態例において、選択センシングを使用して、マスクのパラメータを決定する場合もあるが、圧縮センシング、または固定式のロードマップベースの解決策が選ばれる場合もある。ここでの一例はレーン構造であるが、これは、対向レーンのトラフィックが最大の干渉量を生み出すためである。システムはこれにより、ショットを調整する、またはショットの順序を調整することで、雑音の多いエリアを回避し、所望される物体の情報を得ることができる。
マスクの不一致によるダイナミックレンジの緩和に対して適応性のあるマスク
【0068】
最大の光レイダー反射測定を提供するために1130におけるマスクが選ばれた場合、中心画素が最大のエネルギーを有する。したがって、それは、その他のどれよりも前に飽和する。したがって飽和のリスクを低下させるための1つの手法は、飽和の事実または飽和に関する問題が生じている場合、マスク1130から中心画素を単に除去することである。
出力コヒーレントな干渉除去に対して適応性のあるマスク
【0069】
本明細書に開示される進歩した受信機の1つの利点は、Mが画素の数である場合のMとは対照的に、単一のデータチャネルしか必要とされないことである。しかしながら、それでもなお、低コストを維持することができ、第2のチャネルを加えることによってシステムを交換することもできる。この第2のチャネルは、第1のチャネルと同様に、完全なアナログデジタル変換器(
図7Aを参照)または飛行時間デジタイザ(
図7Bを参照)のいずれかであり得る。いずれかの実施形態によって、フィルタリング(例えばウィナーフィルタリングまたは最小二乗平均(LMS)フィルタリングなど)を用いて干渉を最適に抑えるために、コヒーレント結合(強度における)が可能になる。2つのチャネルx、yによって、および目標戻り重み付けが、w
x、w
yである場合、これは、重みを解明し、データにこの重みを適用すること匹敵し、その結果w
xx+w
yyのSNRが最大になる。そのような適応性のあるマスクを介して、感知された光信号における空間的指向性の雑音成分を低下させることができる。
【0070】
図6A~
図12の実施形態は、感知された光が検出器アレイ600上に結像される、
図4および
図5Aによって示されるものなどの検出光学装置と対にされた場合にとりわけ有益であり得る。(例えば
図3A、
図3Bおよび
図5Bの実施形態など画像パルスが検出器アレイ600上で結像されない実施形態(または画像が中途半端な結像作用により「ぼやけた」実施形態)では、この場合、検出された信号を特有の画素に対して分離する必要性が小さいため、専門家が、マルチプレクサ604を削除することを選ぶ場合もある。
【0071】
図13Aは、例えば
図5Aによって示されるものなどの「検出器に対して直接の」検出光学装置が利用され、かつ
図7Aの読み出し回路が利用される一例の光レイダー受信機の実施形態を描いている。この例では、光レイダー受信機は、おおよそ60x60度のFOVと、おおよそ150mの範囲(@SNR=8、10%の反射率)を有するように設計される。受信機は、例えばシリコンまたはInGaAs PIN/APDアレイなどの少数のN個の素子の検出器アレイを利用する。InGaAs PINアレイを利用する場合、受信機は、2cmの入力開口、14mmの焦点距離を呈してよく、それは、パルス当たり4マイクロジュール前後のおおよそ0.2~5.0ナノ秒のレーザパルスと併せて機能してよい。干渉を抑制するために空間的/角度を成す分離が利用されてよく、視野レンズを使用して、検出器が十分に高いフィルファクターを持たない場合、検出器の面内に「デッドスポット」がないことを保証してよい。
図13Bは、
図13Aの光レイダー受信機の実施形態の日中の使用に関するSNRと範囲のグラフを描いている。
図13Bはまた、この実施形態に関する付加的な受信機の特徴も示している。注目すべきは、80%の反射率(金属)における範囲が600mを超えることである。さらに最大範囲の包絡線は、150m前後と、600m前後の間であり、現実の目標の反射率および地形/形状に左右される。
【0072】
図14Aは、
図3Bに示されるものなどの検出光学装置が利用され、かつ
図7Aの読み出し回路が利用される光レイダー受信機の実施形態を描いている。この例では、光レイダー受信機は、おおよそ50x50度のFOVと、おおよそ40mの範囲(@SNR=8、10%の反射率)を有するように設計される。
図13Aの実施形態でのように、受信機は、例えばシリコンまたはInGaAs PIN/APDアレイなどの少数のN個の素子の検出器アレイを利用する。InGaAs PINアレイを利用する場合、
図14Aの受信機は、2cmの入力開口を呈示し、無限焦点の非結像レンズを利用してよく、それはパルス当たり4マイクロジュール前後のおおよそ0.2~5.0ナノ秒のレーザパルスと併せて機能してよい。
図14Bは、
図14Aの光レイダー受信機の実施形態の日中の使用に関するSNRと範囲のグラフを描いている。
図14Bはまた、この実施形態に関する付加的な受信機の特徴も示している。注目すべきは、80%の反射率(金属)における範囲が180m前後であることである。さらに最大範囲の包絡線は、40m前後から180m前後の間であり、現実の目標の反射率と、地形/形状に左右される。
【0073】
光レイダーシステムを装備した車両の動き、もしくはそれが追跡する対象物の動きのいずれか、またはその両方を活用することによって、検出範囲、SNRおよびしたがって検出の可能性、またはその両方を劇的に改善することも可能である。これは、道路の面の低い反射率(-20%)およびパルスの拡散および関連するSNRのロスが理由で、道路の表面をマッピングするのにとりわけ有益であり得る。
【0074】
この双方向(既知の)のビームパターンの確率論的な調整は、得られたポイントクラウド(複数可)に対して位置情報を埋め込む。この埋め込み式の改良されたパラメータから推定値から抜き出すことができる。これは基本的に、光レイダーリモートセンシングにおけるISAR(逆合成開口光レイダー)の二重である。これは
図15に示されており、ここでは、所与の方位角および高度の画素に関する検出器の出力を示しており、各列は、1回のショットからの範囲の戻りである。ショットを総計する際、我々は積分ゲインを獲得する。
図15では、白色の実線の曲線1502は、車両の動きによって、どのように特有の、固定された地面の基準点が垂直方向に変化するかを示している。この動きは、非線形の外形につながり得ることに留意されたい。これは、たとえ固定された速度の場合でも、地面の突出部は、近範囲においては、平坦な突出部を提示しないという事実に起因している。換言すると、地面の突出部のヤコビ行列式は、パラメトリックに異なる。我々が提案する相対運動の利用は、このような外形に沿って、検出器アレイの出力を二進法または強度のいずれかで統合することで、地面のマップを作り直すためである。そのような統合は、パルスが広がり、これにより各ショットは、弱い戻りを提示するという事実によって実際に必要とされる。さらに、アスファルトは、20%程のかなり低い反射率を有する傾向があり、範囲情報の抽出をさらに複雑にする。白色の矩形領域1502は、レーザ源の車両に対して相対運動を見せる車両に関するショットの移行を示している。グラフを簡素化するために、差動相互速度[接近する速度]が一定であるケースを示している。矩形1502の幅は、この差分における不確実性を提示している。目盛りは、この幅が、上述した地面のマッピングに関する幅よりずっと大きいことを示している。これは、我々が、光レイダーを利用して差動速度を推定する必要があり、固有のクルマが、計測を向上させるためにGPS、加速度計および他の計器を有するためである。綿密な検査によって、白色の傾斜した矩形1502の内部により多くの検出が存在することが示される。この例は、SNRが2である場合であり、さらには低SNRの場合でも、手順[二進法]に従った統合は、適切な性能を提供することができることを示している。受信機が作用する曲線は容易に計算され、
図16において示される。検出の可能性1600(上部右の細い線)ならびにフォールスアラーム曲線、底部左の1602が示されている。細い線を1ショットから30ショットまで移動させる。水平軸は統合後のレベルにおける閾値であり、
図15に従って運動学的空間におけるラインを形成している。1.5の閾値において、15ショットで95%6%のPd Pfaを獲得することが観察され、これは50m/sの接近速度の場合、25mの目標車両の進入、または1/2秒である。
【0075】
本発明をその実施形態例に関連して上述してきたが、なおも本発明の範囲にある様々な修正がそれに対して行われる場合がある。本発明に対するそのような修正は、本明細書の教示を精査することで認識することが可能である。