(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】ガレクチンに関連する疾患を予防および処置するためのセレノガラクトシド化合物およびその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7056 20060101AFI20220610BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220610BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220610BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220610BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20220610BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20220610BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20220610BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20220610BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20220610BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20220610BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20220610BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20220610BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20220610BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20220610BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20220610BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20220610BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220610BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
A61K31/7056
A61P43/00 111
A61P29/00
A61P35/00
A61P37/06
A61P3/00
A61P11/00
A61P1/16
A61P13/12
A61P9/00
A61P9/10
A61P9/04
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P11/06
A61P1/04
A61P37/08
A61P17/00
A61P43/00 121
A61K45/00
(21)【出願番号】P 2018566189
(86)(22)【出願日】2017-03-03
(86)【国際出願番号】 US2017020658
(87)【国際公開番号】W WO2017152048
(87)【国際公開日】2017-09-08
【審査請求日】2020-02-28
(32)【優先日】2016-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518314109
【氏名又は名称】ガレクティン・サイエンシーズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Galectin Sciences, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【氏名又は名称】秋山 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100136696
【氏名又は名称】時岡 恭平
(72)【発明者】
【氏名】シャーロン・シェクター
(72)【発明者】
【氏名】エリーザー・ゾマー
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・ジー・トレーバー
(72)【発明者】
【氏名】ラファエル・ニール
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・エム・ジョンソン
(72)【発明者】
【氏名】ライアン・ジョージ
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/155207(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/078655(WO,A1)
【文献】特表2015-503658(JP,A)
【文献】特表2010-510223(JP,A)
【文献】Carbohydrate Research,2012年,360,p.8-18
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H 19/00
A61K 31/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(5)
【化1】
の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の治療有効量、および、薬学的に許容されるアジュバント、賦形剤、製剤担体またはそれらの組合せ、を含む、医薬組成物。
【請求項2】
化合物が
、ガレクチン-3、ガレクチン-1、ガレクチン-8またはガレクチン-9に対する結合親和性を有する、請求項
1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
化合物が
、ガレクチン-3に対する結合親和性を有する、請求項
1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
ガレクチン-3に対する結合親和性が1nM~50μMである、請求項
3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
相乗作用剤をさらに含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
治療有効量の抗炎症性薬物、抗炎症性ビタミン、栄養補給薬物、サプリメントまたはそれらの組合せを含む、請求項
5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
哺乳動物における、リガンドに対するガレクチンの結合に関連する障害を治療するための、請求項1~
4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
障害が
、炎症性障害、線維症、癌、自己免疫性疾患、代謝障害から成る群から選択される、請求項
7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
障害が線維症であり、線維症が
、肺線維症、肝線維症、腎線維症および心臓線維症から成る群から選択される、請求項
7に記載の医薬組成物。
【請求項10】
障害が脈管構造の炎症性障害である、請求項
7に記載の医薬組成物。
【請求項11】
障害が
、関節炎、リウマチ性関節炎、喘息、全身性エリテマトーデスおよび炎症性腸疾患の一つである、請求項
7に記載の医薬組成物。
【請求項12】
障害が湿疹またはアトピー性皮膚炎である、請求項
7に記載の医薬組成物。
【請求項13】
哺乳動物における新生物状態を治療するための、請求項1~
4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
抗新生物薬物と組み合わせて投与される、請求項
13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
抗新生物薬物が
、チェックポイント阻害剤、免疫修飾剤、抗新生物剤またはそれらの組合せである、請求項
14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
チェックポイント阻害剤
が、抗CTLA2、抗PD1および抗PDL1またはそれらの組合せである、請求項
15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
免疫修飾剤が抗OX40である、請求項
15に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は2016年3月4日に出願された米国特許仮出願番号62/303,872号の利益および優先権を主張するものであり、全体の開示は、その全体の参照により本明細書に包含させる。
【0002】
本発明の分野
本発明の態様は化合物、医薬組成物、化合物の製造方法および1以上のガレクチンにより少なくとも一部が媒介される様々な障害を処置する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ガレクチンはβ-ガラクトース含有糖複合体に結合するS型レクチンのファミリーである。現在までに、15個の哺乳類ガレクチンが単離されている。ガレクチンは細胞接着、増殖制御、アポトーシス、炎症、線維化、腫瘍発生および進行のような種々の生物学的プロセスを調節する。ガレクチンは炎症、線維形成、細胞接着、細胞増殖、転移形成、血管形成、癌および免疫抑制に関与することが示されている。
【発明の概要】
【0004】
本発明の態様は、治療製剤に使用するための非経腸または経腸投与について許容される薬学的担体における化合物または化合物を含む組成物に関する。いくつかの実施態様において、組成物は静脈内により非経腸的に、皮下にまたは経口経路で投与される。
【0005】
本発明の態様は、限定されないが、慢性炎症性疾患、線維性疾患および癌を含む、病因においてレクチンタンパク質が役割を果たす様々な障害の処置のための化合物または組成物に関する。いくつかの実施態様において、化合物は免疫認識、炎症、線維化、血管形成、癌進行および転移をもたらす病態生理学的経路を調節することが知られているレクチンまたはガレクチンタンパク質と糖タンパク質の相互作用を模倣することができる。
【0006】
いくつかの実施態様において、ピラノシルおよび/またはフラノシルのアノマー炭素上のセレン原子に結合したピラノシルおよび/またはフラノシル構造を含む。
【0007】
いくつかの実施態様において、ピラノシルおよび/またはフラノシル構造に結合したセレンの親和性をさらに強化するために、特定の芳香族置換基がガラクトース核またはヘテログリコシド核に付加され得る。このような芳香族置換基はレクチンの炭水化物認識ドメイン(CRD)を構成するアミノ酸残基(例えばアルギニン、トリプトファン、ヒスチジン、グルタミン酸など)と化合物の相互作用を強化することがあり、従って結合および結合特異性を強化し得る。
【0008】
いくつかの実施態様において、化合物はガラクトースまたはヘテログリコシドのアノマー炭素上のセレン原子(Se)に結合したガラクトースまたはヘテログリコシド核のモノサッカライド、ジサッカライドおよびオリゴサッカライドを含む。
【0009】
いくつかの実施態様において、化合物は2個のガラクトシドが1以上のセレン結合により結合している対称ジガラクトシドである。いくつかの実施態様において、化合物は2個のガラクトシドが1以上のセレン結合により結合し、セレンがガラクトースのアノマー炭素に結合している対称ジガラクトシドである。いくつかの実施態様において、化合物は2個のガラクトシドが1以上のセレン結合および1以上の硫黄結合により結合し、セレンがガラクトースのアノマー炭素に結合している対称ジガラクトシドである。さらに他の実施態様において、化合物は非対称ジガラクトシドであり得る。例えば、化合物はガラクトース核に異なる芳香族または脂肪族置換基を有し得る。
【0010】
いくつかの実施態様において、化合物はガラクトースのアノマー炭素上に1以上のセレンを有する対称ガラクトシドである。いくつかの実施態様において、ガラクトシドはガラクトースのアノマー炭素に結合した1以上のセレンおよびセレンに結合した1以上の硫黄を有する。いくつかの実施態様において、化合物はガラクトース核に種々の芳香族または脂肪族置換基を有し得る。
【0011】
理論に縛られないが、Se含有分子を含む化合物は化合物を代謝的に安定にし、一方で炭水化物を認識することが知られているレクチンまたはガレクチンとの特定の相互作用についての化学的、物理的およびアロステリック特性を維持すると考えられている。
【0012】
いくつかの実施態様において、本発明のガラクトースのモノガラクトシド、ジガラクトシドまたはオリゴサッカライドはO-グリコシドまたはS-グリコシド結合を有する化合物より代謝的に安定である。
【0013】
いくつかの実施態様において、化合物は式(1)または式(2)
【化1】
〔式中、
Xはセレンであり;
Zは炭水化物またはO、N、S、CH2、NH、CH2、Se、アミノ酸から成るR
2およびR
3への結合であり;
WはO、N、S、CH2、NHおよびSeから成る群から選択され;
YはO、S、C、NH、CH2、Se、アミノ酸およびそれらの組合せから成る群から選択され、
R
1、R
2およびR
3は独立して、CO、SO2、SO、PO2、PO、CH、水素、約50~200Dの分子量のヘテロ環式置換基を含む疎水性鎖状および環状炭化水素から成る群から選択される〕
を有する単量体セレンポリヒドロキシル化シクロアルカン化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である。
【0014】
いくつかの実施態様において、疎水性鎖状および環状炭化水素は:a)少なくとも4炭素のアルキル基、少なくとも4炭素のアルケニル基、カルボキシ基で置換された少なくとも4炭素のアルキル基、カルボキシ基で置換された少なくとも4炭素のアルケニル基、アミノ基で置換された少なくとも4炭素のアルキル基、アミノ基で置換された少なくとも4炭素のアルケニル基、アミノ基およびカルボキシ基の両方で置換された少なくとも4炭素のアルキル基、アミノ基およびカルボキシ基の両方で置換された少なくとも4炭素のアルケニル基および少なくとも1以上のハロゲン置換されたアルキル基、b)少なくとも1個のカルボキシ基で置換されたフェニル基、少なくとも1個のハロゲンで置換されたフェニル基、少なくとも1個のアルコキシ基で置換されたフェニル基、少なくとも1個のニトロ基で置換されたフェニル基、少なくとも1個のスルホ基で置換されたフェニル基、少なくとも1個のアミノ基で置換されたフェニル基、少なくとも1個のアルキルアミノ基で置換されたフェニル基、少なくとも1個のジアルキルアミノ基で置換されたフェニル基、少なくとも1個のヒドロキシ基で置換されたフェニル基、少なくとも1個のカルボニル基で置換されたフェニル基および少なくとも1個の置換カルボニル基で置換されたフェニル基、c)ナフチル基、少なくとも1個のカルボキシ基で置換されたナフチル基、少なくとも1個のハロゲンで置換されたナフチル基、少なくとも1個のアルコキシ基で置換されたナフチル基、少なくとも1個のニトロ基で置換されたナフチル基、少なくとも1個のスルホ基で置換されたナフチル基、少なくとも1個のアミノ基で置換されたナフチル基、少なくとも1個のアルキルアミノ基で置換されたナフチル基、少なくとも1個のジアルキルアミノ基で置換されたナフチル基、少なくとも1個のヒドロキシ基で置換されたナフチル基、少なくとも1個のカルボニル基で置換されたナフチル基および少なくとも1個の置換カルボニル基で置換されたナフチル基、d)ヘテロアリール基、少なくとも1個のカルボキシ基で置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のハロゲンで置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のアルコキシ基で置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のニトロ基で置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のスルホ基で置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のアミノ基で置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のアルキルアミノ基で置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のジアルキルアミノ基で置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のヒドロキシ基で置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のカルボニル基で置換されたヘテロアリール基および少なくとも1個の置換カルボニル基で置換されたヘテロアリール基、およびe)サッカライド、置換サッカライド、D-ガラクトース、置換D-ガラクトース、C3-[1,2,3]-トリアゾール-1-イル-置換D-ガラクトース、水素、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、およびヘテロ環および誘導体;アミノ基、置換アミノ基、イミノ基または置換イミノ基の1つを含み得る。
【0015】
いくつかの実施態様において、化合物は二量体ポリヒドロキシル化シクロアルカン化合物である。
【0016】
いくつかの実施態様において、化合物は一般式(3)または式(4)
【化2】
〔式中、
XはSe、Se-SeまたはSe-Sであり;
Zは独立して、炭水化物(例えば、オリゴマーSe-ガラクトシドを構成する)またはO、S、C、NH、CH2、Seおよびアミノ酸から成るR
3およびR
4への結合から選択され;
WはO、N、S、CH2、NHおよびSeから成る群から選択され;
YはO、S、C、NH、CH2、Seおよびアミノ酸から成る群から選択され;
R
1、R
2、R
3およびR
4は独立して、CO、SO2、SO、PO2、PO、CH、水素、および約50~200Dの分子量のヘテロ環式置換基を含む疎水性鎖状および環状炭化水素から成る群から選択される〕
またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を有する。
【0017】
いくつかの実施態様において、疎水性鎖状および環状炭化水素は、a)少なくとも4炭素のアルキル基、少なくとも4炭素のアルケニル基、カルボキシ基で置換された少なくとも4炭素のアルキル基、カルボキシ基で置換された少なくとも4炭素のアルケニル基、アミノ基で置換された少なくとも4炭素のアルキル基、アミノ基で置換された少なくとも4炭素のアルケニル基、アミノ基およびカルボキシ基の両方で置換された少なくとも4炭素のアルキル基、アミノ基およびカルボキシ基の両方で置換された少なくとも4炭素のアルケニル基、および少なくとも1以上のハロゲン置換されたアルキル基、b)少なくとも1個のカルボキシ基で置換されたフェニル基、少なくとも1個のハロゲンで置換されたフェニル基、少なくとも1個のアルコキシ基で置換されたフェニル基、少なくとも1個のニトロ基で置換されたフェニル基、少なくとも1個のスルホ基で置換されたフェニル基、少なくとも1個のアミノ基で置換されたフェニル基、少なくとも1個のアルキルアミノ基で置換されたフェニル基、少なくとも1個のジアルキルアミノ基で置換されたフェニル基、少なくとも1個のヒドロキシ基で置換されたフェニル基、少なくとも1個のカルボニル基で置換されたフェニル基および少なくとも1個の置換カルボニル基で置換されたフェニル基、c)ナフチル基、少なくとも1個のカルボキシ基で置換されたナフチル基、少なくとも1個のハロゲンで置換されたナフチル基、少なくとも1個のアルコキシ基で置換されたナフチル基、少なくとも1個のニトロ基で置換されたナフチル基、少なくとも1個のスルホ基で置換されたナフチル基、少なくとも1個のアミノ基で置換されたナフチル基、少なくとも1個のアルキルアミノ基で置換されたナフチル基、少なくとも1個のジアルキルアミノ基で置換されたナフチル基、少なくとも1個のヒドロキシ基で置換されたナフチル基、少なくとも1個のカルボニル基で置換されたナフチル基および少なくとも1個の置換カルボニル基で置換されたナフチル基、d)ヘテロアリール基、少なくとも1個のカルボキシ基で置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のハロゲンで置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のアルコキシ基で置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のニトロ基で置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のスルホ基で置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のアミノ基で置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のアルキルアミノ基で置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のジアルキルアミノ基で置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のヒドロキシ基で置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のカルボニル基で置換されたヘテロアリール基および少なくとも1個の置換カルボニル基で置換されたヘテロアリール基、ならびにe)サッカライド、置換サッカライド、D-ガラクトース、置換D-ガラクトース、C3-[1,2,3]-トリアゾール-1-イル-置換D-ガラクトース、水素、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、およびヘテロ環および誘導体;アミノ基、置換アミノ基、イミノ基または置換イミノ基の1つを含み得る。
【0018】
いくつかの実施態様において、化合物はフルオロフェニルトリアゾールを有する3-誘導化ジセレノガラクトシドである。
【0019】
本発明の態様は式(5):
【化3】
の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物に関する。
【0020】
本発明の態様は、式(6)または式(7):
【化4】
〔式中、
n≦24であり;
XはSe、Se-SeまたはSe-Sであり;
WはO、N、S、CH2、NHおよびSeから成る群から選択され;
YおよびZは独立して、O、S、C、NH、CH2、Seおよびアミノ酸から成る群から選択され;
R
1およびR
2は独立して、CO、SO2、SO、PO2、PO、CH、水素、限定されないが、
a)少なくとも4炭素のアルキル基、少なくとも4炭素のアルケニル基、カルボキシ基で置換された少なくとも4炭素のアルキル基、カルボキシ基で置換された少なくとも4炭素のアルケニル基、アミノ基で置換された少なくとも4炭素のアルキル基、アミノ基で置換された少なくとも4炭素のアルケニル基、アミノ基およびカルボキシ基の両方で置換された少なくとも4炭素のアルキル基、アミノ基およびカルボキシ基の両方で置換された少なくとも4炭素のアルケニル基、および少なくとも1以上のハロゲン置換されたアルキル基;
b)少なくとも1個のカルボキシ基で置換されたフェニル基、少なくとも1個のハロゲンで置換されたフェニル基、少なくとも1個のアルコキシ基で置換されたフェニル基、少なくとも1個のニトロ基で置換されたフェニル基、少なくとも1個のスルホ基で置換されたフェニル基、少なくとも1個のアミノ基で置換されたフェニル基、少なくとも1個のアルキルアミノ基で置換されたフェニル基、少なくとも1個のジアルキルアミノ基で置換されたフェニル基、少なくとも1個のヒドロキシ基で置換されたフェニル基、少なくとも1個のカルボニル基で置換されたフェニル基および少なくとも1個の置換カルボニル基で置換されたフェニル基、
c)ナフチル基、少なくとも1個のカルボキシ基で置換されたナフチル基、少なくとも1個のハロゲンで置換されたナフチル基、少なくとも1個のアルコキシ基で置換されたナフチル基、少なくとも1個のニトロ基で置換されたナフチル基、少なくとも1個のスルホ基で置換されたナフチル基、少なくとも1個のアミノ基で置換されたナフチル基、少なくとも1個のアルキルアミノ基で置換されたナフチル基、少なくとも1個のジアルキルアミノ基で置換されたナフチル基、少なくとも1個のヒドロキシ基で置換されたナフチル基、少なくとも1個のカルボニル基で置換されたナフチル基および少なくとも1個の置換カルボニル基で置換されたナフチル基;および
d)ヘテロアリール基、少なくとも1個のカルボキシ基で置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のハロゲンで置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のアルコキシ基で置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のニトロ基で置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のスルホ基で置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のアミノ基で置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のアルキルアミノ基で置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のジアルキルアミノ基で置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のヒドロキシ基で置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のカルボニル基で置換されたヘテロアリール基および少なくとも1個の置換カルボニル基で置換されたヘテロアリール基、
e)サッカライド;置換サッカライド;D-ガラクトース;置換D-ガラクトース;C3-[1,2,3]-トリアゾール-1-イル-置換D-ガラクトース;水素、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、およびヘテロ環および誘導体;アミノ基、置換アミノ基、イミノ基または置換イミノ基
を含む約50~200Dの分子量のヘテロ環式置換基を含む疎水性鎖状および環状炭化水素から成る群から選択される〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物に関する。
【0021】
いくつかの実施態様において、化合物は遊離形態である。いくつかの実施態様において、遊離形態は無水物である。いくつかの実施態様において、遊離形態は水和物のような溶媒和物である。
【0022】
いくつかの実施態様において、化合物は結晶形態である。
【0023】
いくつかの本発明の態様は、哺乳動物、例えばヒトにおいて治療剤として使用するための本発明の化合物に関する。いくつかの実施態様において、化合物は式(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)または(7)を有し、哺乳動物、例えばヒトにおいて治療剤として使用され得る。
【0024】
いくつかの本発明の態様は、本発明の化合物および場合により薬学的に許容される添加剤、例えば担体または賦形剤を含む医薬組成物に関する。いくつかの実施態様において、医薬組成物は式(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)もしくは(7)の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物ならびに場合により薬学的に許容される添加剤、例えば担体または賦形剤を含む。
【0025】
いくつかの実施態様において、本発明の化合物は1以上のガレクチンに結合する。いくつかの実施態様において、化合物はガレクチン-3、ガレクチン-1、ガレクチン-8および/またはガレクチン-9に結合する。
【0026】
いくつかの実施態様において、本発明の化合物はガレクチン-3に対する高い選択性および親和性を有する。いくつかの実施態様において、本発明の化合物はガレクチン-3に対して約1nM~約50μMの親和性を有する。
【0027】
本発明の態様は、疾患の治療において使用され得る組成物または化合物に関する。本発明の態様は、ガレクチンが少なくとも一部病因に関与する疾患の処置において使用され得る組成物または化合物に関する。本発明の他の態様は、処置を必要とする対象における疾患を処置する方法に関する。
【0028】
いくつかの実施態様において、組成物または化合物は肝線維症を伴うまたは伴わない非アルコール性脂肪性肝炎、炎症性および自己免疫性障害、腫瘍状態または癌の処置に使用され得る。
【0029】
いくつかの実施態様において、組成物は肝線維症、腎線維症、肺線維症または心線維症の処置に使用され得る。
【0030】
いくつかの実施態様において、組成物または化合物は、限定されないが、肝臓、腎臓、肺および心臓を含む臓器における抗線維症活性を強化することができる。
【0031】
いくつかの実施態様において、組成物または化合物はアテローム性動脈硬化症および肺高血圧を含む脈管構造の炎症性障害の処置に使用され得る。
【0032】
いくつかの実施態様において、組成物または化合物は心不全、不整脈、および尿毒性心筋症を含む心臓障害の処置において使用され得る。
【0033】
いくつかの実施態様において、組成物または化合物は糸球体症および間質性腎炎を含む腎臓疾患の処置に使用され得る。
【0034】
いくつかの実施態様において、組成物または化合物は、限定されないが、乾癬および強皮症を含む炎症性、増殖性および線維性皮膚障害の処置において使用され得る。
【0035】
本発明の態様は、湿疹、アトピー性皮膚炎または喘息を含むアレルギー性またはアトピー性状態を処置する方法に関する。
【0036】
本発明の態様は、限定されないが、肝臓、腎臓、肺および心臓を含む臓器における抗線維症活性を強化することにより、ガレクチンが少なくとも一部病因に関与する炎症性および線維性障害を処置する方法に関する。
【0037】
本発明の態様は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を処置するための治療活性を有する組成物または化合物が関連する方法に関する。他の態様において、本発明は非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に関する病理および疾患活性を減少させる方法に関する。
【0038】
本発明の態様は、処置に使用される組成物または化合物または、限定されないが、関節炎、全身性エリテマトーデス、リウマチ性関節炎、喘息および炎症性腸疾患を含む、ガレクチンが少なくとも一部病因に関与する炎症性および自己免疫性障害を処置する方法に関する。
【0039】
本発明の態様は、ガレクチンにおける増大により促進されるプロセスを阻害することによる病因にガレクチンが少なくとも一部関与する新生物疾患(例えば良性または悪性新生物疾患)を処置するための組成物または化合物に関する。いくつかの実施態様において、本発明はガレクチンにおける増大により促進されるプロセスを阻害することによる、病因にガレクチンが少なくとも一部関与する新生物疾患(例えば良性または悪性新生物疾患)を処置する方法に関する。いくつかの実施態様において、組成物または化合物は腫瘍細胞増殖、侵襲、転移、および血管新生を処置または予防するために使用され得る。いくつかの実施態様において、組成物または化合物は原発性および二次性癌を処置するために使用され得る。
【0040】
本発明の態様は、限定されないが、チェックポイント阻害剤(抗CTLA2、抗PD1、抗PDL1)を含む他の抗新生物薬物、限定されないが、抗OX40を含む他の免疫修飾剤および複数のメカニズムの複数の他の抗新生物剤との組合せで新生物状態を処置するための組成物または化合物に関する。
【0041】
いくつかの実施態様において、治療有効量の化合物または組成物は、限定しないが、治療有効量の種々の抗炎症性薬剤、ビタミン、他の医薬および栄養薬剤もしくはサプリメントまたはそれらの組み合わせと組み合わせて併用可能であり、有効であり得る。
【0042】
本発明のいくつかの態様は、ガレクチンの結合に関連する障害を処置するための方法に使用するための式(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)または(7)の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物に関する。本発明の態様は、ガレクチン-3のリガンドへの結合に関連する障害を処置するための方法に使用するための式(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)または(7)の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物に関する。
【0043】
本発明のいくつかの態様は、ヒトにおけるガレクチン、例えばガレクチン-3のリガンドへの結合に関連する障害の処置法に関し、ここで該方法は治療有効量の少なくとも1個の式(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)または(7)の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を、必要とする患者に投与することを含む。
【0044】
本発明は添付の図面を参照することによりさらに説明されるが、同様の構造は、いくつかの図を通して同様の数字で示される。示される図面は必ずしも縮尺通りではなく、その代わりに本発明の原理を説明することに一般的に置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】CRD部位(部位A、部位B、部位C)を有するガレクチン-3の高解像度3D構造。
【
図3】結合したガラクトース単位を有するガレクチン-3CRD結合ポケットを示す。
【
図4】いくつかの実施態様による化合物の合成を示す。
【
図5A】いくつかの実施態様によるモノクローナル抗体結合アッセイを用いたガレクチンの阻害を示す。
【
図5B】いくつかの実施態様によるインテグリン機能アッセイを用いたガレクチンの阻害を示す。
【
図6A】いくつかの実施態様によるFRETアッセイ(蛍光共鳴エネルギー移動)を示す。
【
図6B】いくつかの実施態様による蛍光偏光アッセイを示す。
【
図7A-B】チオガラクトシドTD-139(G-240)およびセレノガラクトシドG-625化合物を用いた阻害を示す。
【
図8A】蛍光偏光アッセイを用いたジセレノガラクトシドG-626化合物と結合するガレクチン-3の阻害を示す。
【
図8B】蛍光偏光アッセイを用いたガレクチン-3結合の蛍光偏光のSe-単糖(G662)阻害を示す。
【
図8C-D】CRD近傍のヒドロキシル基とアミノ酸とのさらなる潜在的相互作用による、三量体構造(
図8C)に対してガレクチン-3CRDに対するより高い親和性を有する仮説四量体se-ガラクトシド(
図8D)を示す。
【0046】
【
図9】抗ガレクチン-3抗体とのELISAアッセイを用いたセレノガラクトシドG-625化合物を用いた阻害を示す。
【
図10】チオガラクトシドG-240およびセレノジガラクトシドG-625化合物のガレクチン-3結合阻害を示す。
【
図11A】チオガラクトシドG-240およびセレノジガラクトシドG-625化合物のインテグリンaVB3阻害を示す。
【
図11B】チオガラクトシドG-240およびセレノジガラクトシドG-625化合物のインテグリンaVB6阻害を示す。
【
図11C】チオガラクトシドG-240およびセレノジガラクトシドG-625化合物のインテグリンaMB2阻害を示す。
【
図11D】Se-モノサッカライドG-656によるインテグリン(aMB2)の阻害を示す。
【
図11E】Se-モノサッカライドG-662によるインテグリン(aMB2)の阻害を示す。
【
図12A】細胞培養モデルにおいて炎症および線維化に対して生理学的効果を有する濃度でのG-625の細胞培養生存率(MCF-7細胞)を示す。
【
図12B】細胞培養モデルにおいて炎症および線維化に対して生理学的効果を有する濃度でのG-625の細胞培養生存率(HTB-38)を示す。
【
図13A】内毒素ストレスTHP-1単球におけるG625による炎症バイオマーカーMCP-1の阻害を示す。
【
図13B】内毒素ストレスTHP-1単球におけるG625、G626およびG-240(TD-139)存在下でのMTTによる炎症バイオマーカーMCP-1の阻害および生存率を示す。
【
図14A】細胞ガレクチン-3の検出のための蛍光フローサイトメトリー法を用いた、星状細胞のTGFb1刺激性肝臓線維化における総Gal-3およびG-625およびTD-139による効果を示す。
【
図14B】細胞ガレクチン-3の検出のための蛍光フローサイトメトリー法を用いた、星状細胞のTGFb1刺激性肝臓線維化におけるガレクチン-3の阻害およびG-625およびTD-139による効果を示す。
【
図15】他のガレクチン(例えばガレクチン-1およびガレクチン-9)と結合するインテグリンのG625による阻害。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明の詳細な説明
本発明の詳細な実施態様は本明細書に開示される。しかしながら、開示される実施態様は、様々な形態で具現化され得る本発明の説明にすぎないと解されるべきである。さらに、様々な本発明の実施態様に関連して与えられる各々の例は説明を意図するものであり、限定を意図するものではない。さらに、図は必ずしも一定の規模ではなく、いくつかの図は特定の構成要素の詳細を示すために強調され得る。さらに、図に示されるあらゆる測定値、明細などは説明を意図するものであり、限定を意図するものではない。従って、本明細書に開示される特定の構造的および機能的詳細は、限定するものと理解されず、本発明を多様に利用することを当業者に教示するための代表的な基礎にすぎないと理解される。
【0048】
本明細書における資料の引用は、本明細書において引用される資料のいずれかが先行技術と関連することの承認または引用された資料が本出願の特許請求の範囲の特許性に重要であることの承認として意図されるものではない。
【0049】
本明細書および特許請求の範囲を通して、文脈に明らかに反しない限り、以下の用語は本明細書において明示的に関連付ける意味を有する。本明細書で使用される語句「ある実施態様において」および「いくつかの実施態様において」は、同一であり得るが、必ずしも同一の実施態様を示さない。さらに、本明細書で使用される語句「別の実施態様において」および「いくつかの他の実施態様において」は、異なることがあるが、必ずしも異なる実施態様を示さない。従って、以下に記載のように、様々な本発明の実施態様は本発明の範囲および概念から逸脱することなく容易に組み合わせることができる。
【0050】
さらに、本明細書で使用される用語「または」は、文脈に明らかに反しない限り、包括的「または」演算子であり、、用語「および/または」と同等である。用語「基づく(based on)」は、文脈に明らかに反しない限り、、排他的ではなく、記載されていないさらなる因子を許容する。さらに、明細書を通して、「ある(a)」、「ある(an)」および「その(the)」の意味は複数の参照を含む。
【0051】
特に断らない限り、表される全ての割合は重量/重量である。
【0052】
本発明の態様は、ガラクトース(またはヘテログリコシド)のアノマー炭素上のセレン原子に結合したガラクトース(またはヘテログリコシド)核のモノサッカライド、ジサッカライドおよびオリゴサッカライドの組成物に関する。いくつかの実施態様において、Se含有分子は、炭水化物を認識することが知られているレクチンとの相互作用についての化学的、物理的およびアロステリック特性を維持しながら、それらを代謝的に安定にする。さらに他の態様において、ガラクトース核に付加される特定の芳香族置換基は、レクチンの炭水化物認識ドメイン(CRD)を構成するアミノ酸残基(例えばアルギニン、トリプトファン、ヒスチジン、グルタミン酸など)との相互作用を強化し、それにより結合および結合特異性を強化することにより、ピラノシルおよび/またはフラノシル構造に結合したセレンの親和性をさらに強化する。
【0053】
ガレクチン
ガレクチン(ガラプチンまたはS-レクチンとしても知られる)はβ-ガラクトシドに結合するレクチンのファミリーである。一般名としてのガレクチンは、動物性レクチンのファミリーについて1994年に提唱された(Barondes, S. H., et al.: Galectins: a family of animal beta-galactoside-binding lectins. Cell 76, 597-598, 1994)。β-ガラクトシドに対する親和性を有する少なくとも1個の特徴的な炭水化物認識ドメイン(CRD)を有し、特定の配列要素を共有することにより定義される。さらなる構造特徴化は、ガレクチンを(1)単一のCRDを有するガレクチン、(2)リンカーペプチドにより結合された2つのCRDを有するガレクチンおよび(3)異なるタイプのN末端ドメインに結合した1つのCRDを有する、あるガレクチン(ガレクチン-3)を有する群を含む3つのサブグループに分類する。ガレクチン炭水化物認識ドメインは約135個のアミノ酸のβ-サンドイッチである。2つのシートがS面とも称される凹面を形成する6個の鎖およびF面とも称される凹面を形成する5個の鎖とともにわずかに折れ曲がっている。凹面は炭水化物が結合する溝を形成する(Leffler H, Carlsson S, Hedlund M, Qian Y, Poirier F (2004). "Introduction to galectins". Glycoconj. J. 19 (7-9): 433-40)。
【0054】
発生、分化、生態形成、腫瘍転移、アポトーシス、RNAスプライシングおよび他の多くのものを含む多様な生物学的現象がガレクチンと関連していることが示されている。
【0055】
一般的に、炭水化物ドメインは糖タンパク質と関連するガラクトース残基に結合する。ガレクチンはラクトース[(β-D-ガラクトシド)-D-グルコース]、N-アセチル-ラクトースアミン、ポリ-N-アセチルラクトースアミン、ガラクトマンナンまたはペクチンフラグメントのような他の有機化合物に結合したガラクトース残基に対する親和性を示す。しかしながら、ガラクトースはそれ自体ではガレクチンに結合しないことに注目するべきである。
【0056】
ペクチンのような植物性ポリサッカライドおよび修飾ペクチンは恐らく、高分子、この場合、動物細胞の場合における糖タンパク質ではなく複合炭水化物において提示されるガラクトース残基を含むことに基づいて、ガレクチンタンパク質に結合することが示される。
【0057】
1つまたは2つの炭水化物ドメインを一列に有する少なくとも15個の哺乳類ガレクチンタンパク質が同定されている。
【0058】
ガレクチンタンパク質は、細胞内の空間に見出され、そこでは多数の機能が割り当てられており、それらはまた細胞外空間に分泌され、そこで種々の機能を有する。細胞外空間において、ガレクチンタンパク質は、機能を調節する糖タンパク質間の相互作用、または不可欠な膜糖タンパク質受容体の場合には細胞シグナル伝達の修飾を促進することを含む、それらと糖タンパク質を含むガラクトースの相互作用により媒介される複数の機能を有する(Sato et al "Galectins as danger signals in host-pathogen and host-tumor interactions: new members of the growing group of "Alarmins". In "Galectins" (Klyosov, et al eds.), John Wiley and Sons, 115-145, 2008, Liu et al "Galectins in acute and chronic inflammation", Ann. N.Y. Acad. Sci. 1253: 80-91, 2012)。細胞外空間におけるガレクチンタンパク質はさらに、細胞-細胞および細胞マトリックス相互作用を促進し得る(Wang et al., "Nuclear and cytoplasmic localization of galectin-1 and galectin-3 and their roles in pre-mRNA splicing". In "Galectins" (Klyosov et al eds.)。細胞内空間について、細胞内小胞輸送は糖タンパク質との相互作用と関連があると考えられるが、ガレクチン機能はタンパク質-タンパク質相互作用とより関連があると考えられる。
【0059】
ガレクチンはホモ二量化を促進するドメインを有することが示された。従って、ガレクチンは糖タンパク質間の「分子接着剤」として作用することができる。ガレクチンは核および細胞質を含む複数の細胞コンパートメントにおいて見られ、細胞外空間へ分泌され、細胞表面および細胞外マトリックス糖タンパク質と相互作用する。分子相互作用のメカニズムは局在化に依存し得る。ガレクチンは細胞外空間において糖タンパク質と相互作用し得るが、細胞内空間における他のタンパク質とガレクチンの相互作用は、一般にタンパク質ドメインにより生じる。細胞外空間において、細胞表面受容体の結合はリガンドと相互作用する能力を増大または減少させ得る。
【0060】
ガレクチンタンパク質は、限定されないが、下記のような炎症、線維症、自己免疫および新生組織形成を伴う疾患を含む多数の動物およびヒト疾患状態において顕著に増大する。例えば、ガレクチンに依存し得る疾患状態は、限定されないが、急性および慢性炎症、アレルギー性障害、喘息、皮膚炎、自己免疫性疾患、炎症性および変形性関節炎、免疫介在神経疾患、多臓器(限定されないが、肝臓、肺、腎臓、膵臓および心臓を含む)線維症、炎症性腸疾患、アテローム性動脈硬化症、心不全、眼炎症性疾患、多様な癌を含む。
【0061】
疾患状態に加えて、ガレクチンはワクチン接種、外因性病原体および癌細胞に対する免疫細胞の応答の調節における重要な調節分子である。
【0062】
当業者は、ガレクチンに結合するおよび/または糖タンパク質に対するガレクチンの親和性を変化させる、ガレクチン間のヘテロ型またはホモ型相互作用を減少させる、または別の方法でガレクチンタンパク質の機能、合成または代謝を変化させることができる化合物は、ガレクチン依存性疾患における重要な治療効果を有し得ると理解する。
【0063】
ガレクチン-1およびガレクチン-3のようなガレクチンタンパク質は、炎症、線維性障害および新生組織形成において顕著に増大することが示されている(Ito et al. "Galectin-1 as a potent target for cancer therapy: role in the tumor microenvironment", Cancer Metastasis Rev. PMID: 22706847 (2012), Nangia-Makker et al. Galectin-3 binding and metastasis", Methods Mol. Biol. 878: 251-266, 2012, Canesin et al. Galectin-3 expression is associated with bladder cancer progression and clinical outcome", Tumour Biol. 31: 277-285, 2010, Wanninger et al. "Systemic and hepatic vein galectin-3 are increased in patients with alcoholic liver cirrhosis and negatively correlate with liver function", Cytokine. 55: 435-40, 2011)。さらに、ガレクチン、特にガレクチン-1(gal-1)およびガレクチン-3(gal-3)は、これらの疾患群の病因に直接関与することが実験により示されている(Toussaint et al., "Galectin-1, a gene preferentially expressed at the tumor margin, promotes glioblastoma cell invasion", Mol. Cancer. 11:32, 2012, Liu et al 2012, Newlaczyl et al., "Galectin-3 -a jack-of-all-trades in cancer", Cancer Lett. 313: 123-128, 2011, Banh et al., "Tumor galectin-1 mediates tumor growth and metastasis through regulation of T-cell apoptosis", Cancer Res. 71: 4423-31, 2011, Lefranc et al., "Galectin-1 mediated biochemical controls of melanoma and glioma aggressive behavior", World J. Biol. Chem. 2: 193-201, 2011, Forsman et al., "Galectin 3 aggravates joint inflammation and destruction in antigen-induced arthritis", Arthritis Reum. 63: 445-454, 2011, de Boer et al., "Galectin-3 in cardiac remodeling and heart failure", Curr. Heart Fail. Rep. 7, 1-8, 2010, Ueland et al., "Galectin-3 in heart failure: high levels are associated with all-cause mortality", Int J. Cardiol. 150: 361-364, 2011, Ohshima et al., "Galectin 3 and its binding protein in rheumatoid arthritis", Arthritis Rheum. 48: 2788-2795, 2003)。
【0064】
高レベルの血清ガレクチン-3は進行性の心不全のようないくつかのヒト疾患に関連することが示されており、これは患者ケアの重要な部分を試験するガレクチン-3を用いてリスクが高い患者を特定する。ガレクチン-3試験は、どの患者が入院または死亡のリスクが高いかを医師が判断する補助に有用であり得る。例えば、BGMガレクチン-3(登録商標)試験は血清または血漿におけるガレクチン-3を定量的に測定するインビトロ診断デバイスであり、慢性心不全を有すると診断された患者の予後を評価することを目的として、臨床評価とともに使用され得る。内因性タンパク質ガレクチン-3の濃度の測定は、心臓再同期療法で処置された患者における有効性を予測または観察するために使用され得る(参照により全体を本明細書に包含させる米国特許第8,672,857号を参照)。さらに、上昇したガレクチン-3レベルは慢性腎不全、肺高血圧および心臓不整脈に関連する。
【0065】
ガレクチン-8(gal-8)は肺癌および異種移植神経膠芽腫の侵襲領域で過剰発現することが示された。
【0066】
ガレクチン-9(gal-9)は免疫炎症性疾患から生じる病変の制御に関与し、一般に炎症に関与すると信じられている。Gal-9は特定の活性化細胞においてアポトーシスを媒介すると考えられる。
【0067】
本発明の態様は炎症性疾患、線維性疾患、新生物疾患またはそれらの組合せのようなヒト障害に関するガレクチンに結合する化合物に関する。いくつかの実施態様において、化合物は、限定されないが、ガレクチン-1(gal-1)、ガレクチン-3(gal-3)、ガレクチン-8(gal-8)および/またはガレクチン-9(gal-9)を含むガレクチンに結合する。
【0068】
ガレクチン阻害剤
ガレクチン-1および/またはガレクチン-3に結合することができる天然のオリゴサッカライドリガンド、例えば、ペクチンおよびグアーガムに由来するガラクトマンナンの修飾体が記載されている(国際公開第WO2013040316号、米国特許第20110294755号、国際公開第2015138438号)。肺線維症他の線維性疾患に有効なラクトース、N-アセチルラクトースアミン(LacNAc)およびチオラクトースのような合成ジガラクトシド(参照により本明細書に包含させる国際公開第2014067986A1号)。
【0069】
多数のガレクチンの炭水化物認識ドメイン(CRD)のタンパク質結晶学および高解像3D構造における進歩により、ガラクトースまたはラクトースよりも大きな親和性を有するCRDに対する強化された親和性を有する多くの誘導体が生成されている(全体の参照により本明細書に包含させる国際公開第2014067986号)。これらの化合物は模倣ヒト特発性肺線維症(IPF)と考えられる肺線維症の動物モデルの処置に有効であることが示されている。例えば、3-フルオロフェニル-2,3-トリアゾール基で置換されたチオ-ジガラクトピラノシル(TD-139)は肺線維症のマウスモデルにおいてガレクチン-3に結合し、効果的であることが報告されている。化合物は気管内注入またはネブライザーを用いた肺投与が必要である(参照により本明細書に包含させる米国特許第8703720号、米国特許第7,700,763号、米国特許第7,638,623号および米国特許第7,230,096号)。
【0070】
本発明の態様は、ガレクチンタンパク質の天然リガンドを再現する新規化合物に関する。いくつかの実施態様において、化合物はガレクチン-3の天然リガンドを再現する。いくつかの実施態様において、化合物はガレクチン-1の天然リガンドを再現する。いくつかの実施態様において、化合物はガレクチン-8の天然リガンドを再現する。いくつかの実施態様において、化合物はガレクチン-9の天然リガンドを再現する。
【0071】
いくつかの実施態様において、化合物はガラクトースのアノマー炭素に結合したガラクトース-Se核から成り、分子の残りへのリンカーとしての機能を果たす単量体、二量体またはオリゴマー構造を有する。いくつかの実施態様において、ガラクトース-Se核はガレクチンCRD(高解像ガレクチン-3の3D構造において
図1に示される)に結合する他のサッカライド/アミノ酸/酸/基に結合してよく、一体となってCRDに対する化合物の親和性を強化し得る。いくつかの実施態様において、ガラクトース-Se核はガレクチンCRD(高解像ガレクチン-3の3D構造において
図1に示される)における「部位B」に結合するサッカライド/アミノ酸/酸/基に結合してよく、一体となってCRDに対する化合物の親和性を強化し得る。
【0072】
いくつかの態様によって、化合物は部位Aおよび/または部位Cに結合してCRDとの結合さらに改善し、ガレクチン依存性病原体に対して標的化された治療剤としてのそれらの可能性を強化する置換基を有し得る。いくつかの実施態様において、置換基は本明細書に記載のようにインシリコ解析(コンピュータ支援分子モデリング)により選択できる。いくつかの実施態様において、置換基は目的のガレクチンタンパク質を用いた結合アッセイを用いてスクリーニングされ得る。例えば、化合物はガレクチン-3結合アッセイおよび/または活性化培養マクロファージインビトロ炎症性および線維性モデルを用いてスクリーニングされ得る(see Chavez-Galan, L. et al., Immunol. 2015; 6: 263)。
【0073】
いくつかの態様によって、化合物は1以上の特定の核ガラクトース-Se置換基を含む。例えば、核ガラクトース-SeCRD内に位置する残基と相互作用する特定の置換基で置換され得る。このような置換基は化合物の結合および潜在的有効性ならびに「薬らしさ(drugability)」特性を劇的に増大させる。
【0074】
セレン
セレンは5つの可能性のある酸化状態(-2、0、+2、+4および+6)を有し、従って多様な化学的性質を有する多様な化合物においてよく代表される。さらに、セレンは実質的に全ての硫黄化合物(無機ならびに有機)の硫黄の代替で存在し得る。
【0075】
ほとんどのセレン化合物(有機および無機)は食事から容易に吸収され、セレン代謝の一次臓器である肝臓へ輸送される。一般的なセレン化合物の代謝は化学的性質、つまり、酸化還元活性セレン化合物、メチルセレノールの前駆体およびセレノアミノ酸による3つの主要な経路をたどる。
【0076】
セレノシステインとしてのセレノタンパク質における存在のため、セレンは一般に抗酸化剤として知られている。しかしながら、セレンの毒性効果は厳密には濃度および化学種依存的である。ある種類のセレン化合物は顕著な腫瘍特異性を有する細胞増殖の強力な阻害剤である(Misra、2015)。亜セレン酸ナトリウムは進行した癌における細胞毒性物質として研究されている(SECAR, see Brodin, Ola et al., 2015)。
【0077】
ガラクトシド-セレン化合物
本発明の態様は、ピラノシルおよび/またはフラノシルのアノマー炭素上のセレン原子に結合したピラノシルおよび/またはフラノシル構造を含む化合物に関する。
【0078】
いくつかの実施態様において、特定の芳香族置換基がガラクトース核またはヘテログリコシド核に付加され、ピラノシルおよび/またはフラノシル構造に結合したセレンの親和性をさらに強化する。芳香族置換基はレクチンの炭水化物認識ドメイン(CRD)を構成するアミノ酸残基(例えばアルギニン、トリプトファン、ヒスチジン、グルタミン酸など)と化合物の相互作用を強化し、それにより結合および結合特異性を強化し得る。
【0079】
いくつかの実施態様において、化合物はガラクトースまたはヘテログリコシドのアノマー炭素上のセレン原子に結合したガラクトースまたはヘテログリコシド核のモノサッカライド、ジサッカライドおよびオリゴサッカライドを含む。
【0080】
いくつかの実施態様において、化合物は2個のガラクトシドが1以上のセレン結合により結合した。いくつかの実施態様において、化合物は2個のガラクトシドが1以上のセレン結合により結合し、セレンがガラクトースのアノマー炭素に結合した対称ジガラクトシドである。いくつかの実施態様において、化合物は2個のガラクトシドが1以上のセレン結合および1以上の硫黄により結合し、セレンがガラクトースのアノマー炭素に結合した対称ジガラクトシドである。さらに他の実施態様において、化合物は対称ジガラクトシドであり得る。例えば、化合物ガラクトース核において異なる芳香族または脂肪族置換基を有し得る。
【0081】
いくつかの実施態様において、化合物はガラクトースのアノマー炭素上に1以上のセレンを有する単一のガラクトシドである対称ガラクトシドである。いくつかの実施態様において、ガラクトシドはガラクトースのアノマー炭素に結合した1以上のセレンおよびセレンに結合した1以上の硫黄を有する。いくつかの実施態様において、化合物はガラクトース核において異なる芳香族または脂肪族置換基を有し得る。
【0082】
理論に縛られないが、Se含有分子は化合物を代謝的に安定にし、一方で炭水化物を認識することが知られているレクチンまたはガレクチンとの特定の相互作用についての化学的、物理的およびアロステリック特性を維持すると考えられている。いくつかの実施態様において、本発明のガラクトースのジガラクトシドまたはオリゴサッカライドはO-グリコシド結合を有する化合物より代謝的により安定である。
【0083】
いくつかの実施態様において、本発明のガラクトースのジガラクトシドまたはオリゴサッカライドは、S-グリコシド結合を有する化合物より代謝的により安定である。
【0084】
本発明の態様は、別のガラクトース、ヒドロキシルシクロヘキサン、芳香族部分、アルキル、アリール、アミンまたはアミドへのセレン架橋[X]を有するガラクトシド構造に基づく化合物に関する。
【0085】
本明細書で使用される用語「アルキル基」は、1~12個の炭素原子、例えば1~7個または1~4個の炭素原子を含むことを意味する。いくつかの実施態様において、アルキル基は直鎖または分岐鎖であり得る。いくつかの実施態様において、アルキル基は3~7個の炭素原子、好ましくは3個、4個、5個、6個または7個の炭素原子を含む環もまた、形成し得る。従って、アルキルはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、n-ヘキシル、2-メチルペンチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、n-ヘプチル、2-メチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルペンチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよび1-メチルシクロプロピルのいずれかを包含する。
【0086】
本明細書で使用される用語「アルケニル基」は、2~12個、例えば2~7個の炭素原子を含むことを意味する。アルケニル基は少なくとも1個の二重結合を含む。いくつかの実施態様において、アルケニル基はビニル、アリル、ブト-1-エニル、ブト-2-エニル、2,2-ジメチルエテニル、2,2-ジメチルプロプ-1-エニル、ペント-1-エニル、ペント-2-エニル、2,3-ジメチルブト-1-エニル、ヘキシ-1-エニル、ヘキシ-2-エニル、ヘキシ-3-エニル、プロプ-1,2-dienyl、4-メチルヘキシ-1-エニル、シクロプロプ-1-エニル基およびその他のいずれかを包含する。
【0087】
本明細書で使用される用語「アルコキシ基」は、1以上の不飽和炭素原子を含み得る1~12個の炭素原子を含むアルコキシ基に関する。いくつかの実施態様において、アルコキシ基は1以上の不飽和炭素原子を含み得る1~7個または1~4個の炭素原子を含む。従って、用語「アルコキシ基」はメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペントキシ基、イソペントキシ基、3-メチルブトキシ基、2,2-ジメチルプロポキシ基、n-ヘキソキシ基、2-メチルペントキシ基、2,2-ジメチルブトキシ基、2,3-ジメチルブトキシ基、n-ヘプトキシ基、2-メチルヘキソキシ基、2,2-ジメチルペントキシ基、2,3-ジメチルペントキシ基、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基および1-メチルシクロプロピルオキシ基を包含する。
【0088】
本明細書で使用される用語「アリール基」は、4~12個の炭素原子を含むことを意味する。前記アリール基はフェニル基またはナフチル基であり得る。上記の基は当然、有機化学の技術分野におけるいずれかの既知の置換基で置換されてよい。該基はまた、2以上の前記置換基で置換されてよい。置換基の例はハロゲン、アルキル、アルケニル、アルコキシ、ニトロ、スルホ、アミノ、ヒドロキシおよびカルボニル基である。ハロゲン置換基はブロモ、フルオロ、ヨードおよびクロロであり得る。アルキル基は上で定義されるように、1~7個の炭素原子を含む。アルケニルは上で定義されるように、2~7個、好ましくは2~4個の炭素原子を含む。アルコキシは以下で定義されるように、不飽和炭素原子を含み得る1~7個、好ましくは1~4個の炭素原子を含む。置換基の組合せは、例えばトリフルオロメチルが存在する。
【0089】
本明細書で使用される用語「ヘテロアリール基」は環の少なくとも1個の原子がヘテロ原子である、すなわち炭素ではない、4~18個の炭素原子を含むいずれかのアリール基を意味する。いくつかの実施態様において、ヘテロアリール基ピリジンまたはインドール基であり得る。
【0090】
上記の基は、有機化学の技術分野におけるいずれかの既知の置換基で置換されてよい。該基はまた、2以上の前記置換基で置換されてよい。置換基の例はハロゲン、アルキル、アルケニル、アルコキシ、ニトロ、スルホ、アミノ、ヒドロキシおよびカルボニル基である。ハロゲン置換基はブロモ、フルオロ、ヨードおよびクロロであり得る。アルキル基は上で定義されるように、1~7個の炭素原子を含む。アルケニルは上で定義されるように、2~7個、例えば2~4個の炭素原子を含む。アルコキシは以下で定義されるように、不飽和炭素原子を含み得る1~7個、例えば1~4個の炭素原子を含む。
【0091】
単量体セレンポリヒドロキシル化シクロアルカン
いくつかの実施態様において、化合物は式(1)または式(2):
【化5】
〔式中、
Xはセレンであり;
Zは炭水化物またはアミノ酸から成るR
2およびR
3への結合であり;
WはO、N、S、CH2、NHおよびSeから成る群から選択され;
YはO、S、C、NH、CH
2、Se、アミノ酸および前記の組合せから成る群から選択され;
R
1、R
2およびR
3は独立して、CO、SO2、SO、PO2、PO、CH、水素、限定されないが、
a)少なくとも4炭素のアルキル基、少なくとも4炭素のアルケニル基、カルボキシ基で置換された少なくとも4炭素のアルキル基、カルボキシ基で置換された少なくとも4炭素のアルケニル基、アミノ基で置換された少なくとも4炭素のアルキル基、アミノ基で置換された少なくとも4炭素のアルケニル基、アミノ基およびカルボキシ基の両方で置換された少なくとも4炭素のアルキル基、アミノ基およびカルボキシ基の両方で置換された少なくとも4炭素のアルケニル基、および少なくとも1以上のハロゲン置換されたアルキル基;。ハロゲンはフルオロ基、クロロ基、ブロモ基またはヨード基であり得る。
b)少なくとも1個のカルボキシ基で置換されたフェニル基、少なくとも1個のハロゲンで置換されたフェニル基、少なくとも1個のアルコキシ基で置換されたフェニル基、少なくとも1個のニトロ基で置換されたフェニル基、少なくとも1個のスルホ基で置換されたフェニル基、少なくとも1個のアミノ基で置換されたフェニル基、少なくとも1個のアルキルアミノ基で置換されたフェニル基、少なくとも1個のジアルキルアミノ基で置換されたフェニル基、少なくとも1個のヒドロキシ基で置換されたフェニル基、少なくとも1個のカルボニル基で置換されたフェニル基および少なくとも1個の置換カルボニル基で置換されたフェニル基、
c)ナフチル基、少なくとも1個のカルボキシ基で置換されたナフチル基、少なくとも1個のハロゲンで置換されたナフチル基、少なくとも1個のアルコキシ基で置換されたナフチル基、少なくとも1個のニトロ基で置換されたナフチル基、少なくとも1個のスルホ基で置換されたナフチル基、少なくとも1個のアミノ基で置換されたナフチル基、少なくとも1個のアルキルアミノ基で置換されたナフチル基、少なくとも1個のジアルキルアミノ基で置換されたナフチル基、少なくとも1個のヒドロキシ基で置換されたナフチル基、少なくとも1個のカルボニル基で置換されたナフチル基および少なくとも1個の置換カルボニル基で置換されたナフチル基;
d)ヘテロアリール基、少なくとも1個のカルボキシ基で置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のハロゲンで置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のアルコキシ基で置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のニトロ基で置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のスルホ基で置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のアミノ基で置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のアルキルアミノ基で置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のジアルキルアミノ基で置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のヒドロキシ基で置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のカルボニル基で置換されたヘテロアリール基および少なくとも1個の置換カルボニル基で置換されたヘテロアリール基;および
e)サッカライド;置換サッカライド;D-ガラクトース;置換D-ガラクトース;C3-[1,2,3]-トリアゾール-1-イル-置換D-ガラクトース;水素、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、およびヘテロ環および誘導体;アミノ基、置換アミノ基、イミノ基または置換イミノ基。
を含む50~200Dの分子量のヘテロ環式置換基を含む疎水性直鎖状および環状炭化水素から成る群から選択される〕
を有する単量体セレンポリヒドロキシル化シクロアルカン化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である。
【0092】
二量体セレンポリヒドロキシル化シクロアルカン化合物
いくつかの実施態様において、化合物は二量体ポリヒドロキシル化シクロアルカン化合物である。
【0093】
いくつかの実施態様において、化合物は
【化6】
〔式中、
XはSe、Se-SeまたはSe-Sであり;
WはO、N、S、CH2、NHおよびSeから成る群から選択され;
YおよびZはO、S、C、NH、CH2、Seおよびアミノ酸から成る群から選択され;
R
1、R
2、R
3およびR
4は独立して、CO、SO2、SO、PO2、PO、CH、水素、限定されないが、
a)少なくとも4炭素のアルキル基、少なくとも4炭素のアルケニル基、カルボキシ基で置換された少なくとも4炭素のアルキル基、カルボキシ基で置換された少なくとも4炭素のアルケニル基、アミノ基で置換された少なくとも4炭素のアルキル基、アミノ基で置換された少なくとも4炭素のアルケニル基、アミノ基およびカルボキシ基の両方で置換された少なくとも4炭素のアルキル基、アミノ基およびカルボキシ基の両方で置換された少なくとも4炭素のアルケニル基、および少なくとも1以上のハロゲン置換されたアルキル基;
b)少なくとも1個のカルボキシ基で置換されたフェニル基、少なくとも1個のハロゲンで置換されたフェニル基、少なくとも1個のアルコキシ基で置換されたフェニル基、少なくとも1個のニトロ基で置換されたフェニル基、少なくとも1個のスルホ基で置換されたフェニル基、少なくとも1個のアミノ基で置換されたフェニル基、少なくとも1個のアルキルアミノ基で置換されたフェニル基、少なくとも1個のジアルキルアミノ基で置換されたフェニル基、少なくとも1個のヒドロキシ基で置換されたフェニル基、少なくとも1個のカルボニル基で置換されたフェニル基および少なくとも1個の置換カルボニル基で置換されたフェニル基、
c)ナフチル基、少なくとも1個のカルボキシ基で置換されたナフチル基、少なくとも1個のハロゲンで置換されたナフチル基、少なくとも1個のアルコキシ基で置換されたナフチル基、少なくとも1個のニトロ基で置換されたナフチル基、少なくとも1個のスルホ基で置換されたナフチル基、少なくとも1個のアミノ基で置換されたナフチル基、少なくとも1個のアルキルアミノ基で置換されたナフチル基、少なくとも1個のジアルキルアミノ基で置換されたナフチル基、少なくとも1個のヒドロキシ基で置換されたナフチル基、少なくとも1個のカルボニル基で置換されたナフチル基および少なくとも1個の置換カルボニル基で置換されたナフチル基;
d)ヘテロアリール基、少なくとも1個のカルボキシ基で置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のハロゲンで置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のアルコキシ基で置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のニトロ基で置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のスルホ基で置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のアミノ基で置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のアルキルアミノ基で置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のジアルキルアミノ基で置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のヒドロキシ基で置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のカルボニル基で置換されたヘテロアリール基および少なくとも1個の置換カルボニル基で置換されたヘテロアリール基;および
e)サッカライド;置換サッカライド;D-ガラクトース;置換D-ガラクトース;C3-[1,2,3]-トリアゾール-1-イル-置換D-ガラクトース;水素、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、およびヘテロ環および誘導体;アミノ基、置換アミノ基、イミノ基または置換イミノ基
を含む約50~200Dの分子量のヘテロ環式置換基を含む疎水性直鎖状および環状炭化水素から成る群から選択される〕
またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を有する。
【0094】
3以上の単位を有するオリゴマーセレンポリヒドロキシル化シクロアルカン化合物
いくつかの実施態様において、化合物は3以上の単位を有するオリゴマーセレンポリヒドロキシル化シクロアルカン化合物である。いくつかの実施態様において、化合物は以下の一般式(6)および(7):
【化7】
〔式中、
n≦24であり;
XはSe、Se-SeまたはSe-Sであり;
WはO、N、S、CH2、NHおよびSeから成る群から選択され;
YおよびZは独立して、O、S、C、NH、CH2、Se、アミノ酸から成る群から選択され;
R
1およびR
2は独立して、CO、SO2、SO、PO2、PO、CH、水素、限定されないが、
a)少なくとも4炭素のアルキル基、少なくとも4炭素のアルケニル基、カルボキシ基で置換された少なくとも4炭素のアルキル基、カルボキシ基で置換された少なくとも4炭素のアルケニル基、アミノ基で置換された少なくとも4炭素のアルキル基、アミノ基で置換された少なくとも4炭素のアルケニル基、アミノ基およびカルボキシ基の両方で置換された少なくとも4炭素のアルキル基、アミノ基およびカルボキシ基の両方で置換された少なくとも4炭素のアルケニル基、および少なくとも1以上のハロゲン置換されたアルキル基;
b)少なくとも1個のカルボキシ基で置換されたフェニル基、少なくとも1個のハロゲンで置換されたフェニル基、少なくとも1個のアルコキシ基で置換されたフェニル基、少なくとも1個のニトロ基で置換されたフェニル基、少なくとも1個のスルホ基で置換されたフェニル基、少なくとも1個のアミノ基で置換されたフェニル基、少なくとも1個のアルキルアミノ基で置換されたフェニル基、少なくとも1個のジアルキルアミノ基で置換されたフェニル基、少なくとも1個のヒドロキシ基で置換されたフェニル基、少なくとも1個のカルボニル基で置換されたフェニル基および少なくとも1個の置換カルボニル基で置換されたフェニル基;
c)ナフチル基、少なくとも1個のカルボキシ基で置換されたナフチル基、少なくとも1個のハロゲンで置換されたナフチル基、少なくとも1個のアルコキシ基で置換されたナフチル基、少なくとも1個のニトロ基で置換されたナフチル基、少なくとも1個のスルホ基で置換されたナフチル基、少なくとも1個のアミノ基で置換されたナフチル基、少なくとも1個のアルキルアミノ基で置換されたナフチル基、少なくとも1個のジアルキルアミノ基で置換されたナフチル基、少なくとも1個のヒドロキシ基で置換されたナフチル基、少なくとも1個のカルボニル基で置換されたナフチル基および少なくとも1個の置換カルボニル基で置換されたナフチル基;
d)ヘテロアリール基、少なくとも1個のカルボキシ基で置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のハロゲンで置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のアルコキシ基で置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のニトロ基で置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のスルホ基で置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のアミノ基で置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のアルキルアミノ基で置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のジアルキルアミノ基で置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のヒドロキシ基で置換されたヘテロアリール基、少なくとも1個のカルボニル基で置換されたヘテロアリール基および少なくとも1個の置換カルボニル基で置換されたヘテロアリール基;および
e)サッカライド;置換サッカライド;D-ガラクトース;置換D-ガラクトース;C3-[1,2,3]-トリアゾール-1-イル-置換D-ガラクトース;水素、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、およびヘテロ環および誘導体;アミノ基、置換アミノ基、イミノ基または置換イミノ基。
を含む約50~200Dの分子量のヘテロ環式置換基を含む疎水性直鎖状および環状炭化水素から成る群から選択される〕
またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を有し得る。
【0095】
本明細書で使用される用語「アルキル基」は、1以上の不飽和炭素原子を含み得る1~7個の炭素原子を含むアルキル基に関する。いくつかの実施態様において、アルキル基は1以上の不飽和炭素原子を含み得る1~4個の炭素原子を含む。アルキル基における炭素原子は直鎖または分岐鎖を形成し得る。前記アルキル基における炭素原子はまた、3個、4個、5個、6個または7個の炭素原子を含む環を形成し得る。従って、本明細書で使用される用語「アルキル基」はメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、n-ヘキシル、2-メチルペンチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、n-ヘプチル、2-メチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルペンチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよび1-メチルシクロプロピルを包含する。
【0096】
いくつかの実施態様において、化合物は以下の式を有し、ガレクチン-3の阻害剤である:表1は単量体Seガラクトシドの非限定的な例を示す。
【0097】
いくつかの実施態様において、化合物は以下の式を有し、ガレクチン-3の阻害剤である:単量体Seガラクトシドの非限定的な例を表1に示す。
【表1-1】
【表1-2】
【0098】
いくつかの実施態様において、化合物は以下の式を有し、ガレクチン-3の阻害剤である:ジ-Seガラクトシドの非限定的な例を表1に示す。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【0099】
いくつかの実施態様において、化合物は以下の式を有し、ガレクチン-3の阻害剤である:表3はオリゴ-Seガラクトシドの非限定的な例を示す。
【表3】
【0100】
四量体Se-ガラクトシドは、CRD近傍におけるヒドロキシル基のアミノ酸とのさらなる潜在的相互作用のため、三量体構造に対して、CRDに対するより高い親和性を有すると予想される(実施例14を参照)。
【0101】
理論に縛られないが、本明細書に記載のガラクトース-セレン化合物の構造は加水分解(代謝)および酸化されにくい、例えば非置換芳香環、炭素-酸素系、炭素-窒素系などであるため、本明細書に記載のガラクトース-セレン化合物は強化された安定性を有する。
【0102】
コンピューターリガンド-タンパク質親和性のスコア付け
標的分子に対するリガンドの結合能力を評価するための標準的なアッセイは、例えば、ELISA、ウェスタンブロットおよびRIAを含めて当分野において知られている。適当なアッセイは本明細書に記載される。いくつかの実施態様において、結合速度(例えば、結合親和性)はBiacore分析のような当分野において知られている標準的なアッセイにより分析され得る。ガレクチンの機能的性質に対する化合物の効果を評価するためのアッセイは、さらに本明細書において記載される。
【0103】
タンパク質-リガンド結合親和性を決定する1つの方法は、リガンドがタンパク質に結合するときに生じるタンパク質-リガンド複合体の相互作用を予測できる構造に基づくモデルを使用する。このような構造はX線結晶構造解析により研究され得る。いくつかの実施態様において、目的の化合物は当分野に既知のいずれかのスコア付けを用いて、レクチンまたはガレクチンタンパク質に対するリガンドの親和性を予測するために「インシリコで」スクリーニングされ得る。
【0104】
いくつかの実施態様において、コンピューターモデリングは構造に基づく薬物デザインを容易にするために使用され得る。インシリコモデルはまた、タンパク質-化合物相互作用、立体配座の歪みおよび可能性のある立体的衝突を視覚的に調査し、それらを回避することを可能にする。いくつかの実施態様において、タンパク質-リガンド親和性はGlide(Schrodinger、Portland OR)を用いてスコア付けされ得る。タンパク質と比較したリガンドの位置および配置の組合せは、柔軟なドッキングとともに、リガンドポーズと称され、Glideについてのリガンドポーズのスコア付けはGlideScoreによりなされる。GlideScoreは、リガンド結合フリーエネルギーについての予測を提供する定量的測定である。それは力場(静電力、ファンデルワールス力など)寄与を含む多くの用語およびリガンド結合に影響を与えることが知られている相互作用に利益を与えるまたは不利益を与える用語を有する。それは2つのエネルギー要素;生物学的反応のエンタルピーおよびエントロピー寄与を含む。エンタルピー-エントロピー補償についての熱力学的論拠は、結合が強くなるにつれて、強固な複合体の形成によりエンタルピーがよりネガティブになり、エントロピーがそれに付随して減少する傾向があるという事実に基づく。このようなものとして、最も低いGlideScoreを有するリガンドが選択され得る。
【0105】
ガレクチン-3および/またはガレクチン-1の阻害のための方法および化合物が提供される。しかしながら、本明細書に記載されるインシリコモデル、アッセイおよび化合物は他のガレクチンタンパク質およびレクチンに適用され得る。
【0106】
ガレクチン-3CRDのインシリコモデルはヒトガレクチン-3CRDの1KJR結晶構造に基づき(Sorme, P. et al. (2005) J. Am. Chem. Soc. 127: 1737-1743)、トレーニングとして既知のガレクチン-3「活性」および「不活性」化合物を用いて改善し、試験セットを使用した。ガラクトースのC3胃に大きな置換基(例えばインドールまたはナフタレン)を許容する独特な広がった空洞のため、1KJR結晶構造を選択した(Vargas-Berebgurl 2013, Barondes 1998, Sorme 2003)。表4は異なるジガラクトシド:(1)同一の置換基を有する置換基チオガラクトシド、ガラクトシド、セレノガラクトシド、ジセレノガラクトシドについてのGlideScoreを示す。
【表4】
【0107】
GlideScoreデータはガラクトース上のアノマー炭素へのSeの導入(G-625)がチオガラクトシド(TD-139、G-240とも称される)と同様のスコアを示すことを示した。その結果はまた、チオガラクトシド(TD-139)およびセレノガラクトシド化合物(G-625)が同等の全体予測自由エネルギーを予測することを示した。このようなものとして、チオガラクトシド(TD-139)およびセレノガラクトシド化合物(G-625)は同等のガレクチン-3に対する親和性および阻害剤効果を有すると予想される。
【0108】
インテグリンおよびガレクチン-3との親和性についてこれらの化合物を試験した。驚くべきことに、セレノガラクトシド化合物(G-625)は少なくとも2倍~少なくとも3倍良好なガレクチン-3およびインテグリンに対する親和性を示した。
【0109】
Se原子は残りの分子(例えばG-625)のがTD-139と見られる相互作用を満たすことを可能にするが、ガレクチン-3に対する優れた親和性を有する。TD-139はElisaに基づくアッセイおよび蛍光偏光アッセイにおいて示されるとおりである。いくつかの実施態様において、式(1)のセレノガラクトシドはTD-139より少なくとも2倍または少なくとも3倍強いガレクチン-3に対する親和性を有する。いくつかの実施態様において、本発明のセレノガラクトシドは、対応するチオガラクトシドより少なくとも2倍または少なくとも3倍強いガレクチン-3に対する親和性を有する。
【0110】
コンピューター構造解析により定義されるように、「薬らしさ」特性とは化合物の(1)立体異性化、(2)糖におけるヒドロキシル基の位置(例えばアキシアルまたはエクアトリアル)および(3)置換基の位置および性質であると考えられる。
【0111】
1)立体異性化:同一の2D体型を有する化合物は極めて異なる結合形態ならびに異なる予測結合自由エネルギーの予測者であるGlideScoreを導き得る異なる3D構造を有し得ることに注目するべきである。
【0112】
2)ヒドロキシル基:糖におけるヒドロキシル基の位置(例えばアキシアルまたはエクアトリアル)は結合する化合物において重要な役割を果たす。特に、本発明は、残りの分子のリンカーとして働くアノマー炭素に結合したセレン原子に結合した、ガラクトースに基づく化合物に関する。
【0113】
3)置換基:いくつかの態様によって、化合物はリガンドの結合に役割を果たすことが知られているまたは知られていない結合部位の一部であるアミノ酸に達することができるまたは達するようにデザインされた置換基を有し得る。当業者は、ガレクチンはミリモル濃度範囲における解離定数を有するモノサッカライド、ガラクトースに結合することを理解する。N-アセチルグルコサミンのガラクトースへの付加は隣接部位とのさらなる相互作用を提供し、化合物のガレクチン-3への親和性を10倍以上強化し得ることが示されている(Bachhawat-Sikder Et al. FEBS Lett. 2001 Jun 29;500(1-2):75-9)。
【0114】
サッカライドの3位でのナフトールのような非天然誘導体のさらなる付加は、低いマイクロモル濃度、例えば0.003mMに対する親和性を強化し得る。この置換基は表面残基Arg144とのカチオン-π相互作用を利用する。
【0115】
ヒトガレクチン-3空洞は溶媒のアクセス可能性が高く、浅い。ヒトガレクチン-3空洞は極めて親水性が高いが、Arg144および可能性のあるTrp181とのカチオン-π相互作用を形成することができる(Magnani 2009, Logan 2011)。リガンドの結合により、Arg144はタンパク質表面から3.5オングストローム上方へ動き、アレーン-アルギニン相互作用のためのポケットを作製する。Arg144は他のガレクチン、例えばGal-1、Gal-9には存在せず、これは我々のインシリコモデルで利用されていることに留意するべきである。同様に、有効性はArg186の表面残基とのカチオン-π相互作用を利用することにより改善され得る。例えば、ガラクトースの3位のトリアゾール置換基はガレクチン-3親和性を増大させることが報告されている(Salameh BA et al. Bioorg. Med. Chem. Lett. 2005 Jul 15; 15(14):3344-6)。
【0116】
サブサイトCのトリプトファン181はガレクチンファミリー全体に保存される。サブサイトC内で適合したTrp181(W181)側鎖および炭水化物残基(天然炭水化物の割合のガラクトース)の間のπ-πスタッキング相互作用は全ての報告されたガレクチン-サッカライド複合体において生じる。
【0117】
ガレクチン-3阻害剤のような強力なガレクチン阻害剤の構造に基づくデザインのためのアプローチを開発するために、保存された結合モチーフの三次元構造および生理化学的性質に基づいて、炭水化物認識のための詳細な分子ベースを理解することが重要である。高解像度構造情報はこの点について大いに役立つ(Ultra-High-Resolution Structures and Water Dynamics, Saraboji, K. et al., Biochemistry. 2012 Jan 10; 51(1): 296-306を参照)。ガレクチン-3CRD部位は酸素の枠組みのような炭水化物を認識するために予め構築される(
図2を参照)、2~3倍増大した活性を有するSe含有化合物を認識することを予想していなかった。
【0118】
ガレクチン-3(
図3におけるCRD結合ポケットを参照)において、Arg144の側鎖は、芳香族部分を有するアルギニン-アレーン相互作用(カチオン-πまたはπ-πスタッキング相互作用)により高い親和性に寄与し得るその柔軟性により、種々のコンホメーションに適合することができる。
【0119】
いくつかの実施態様において、リガンド親和性に影響を与えるガレクチンの鍵残基は、コンピューターアラニンスキャニング変異(ASM)または「インシリコアラニンスキャン」を用いて特定される。ASMはアラニンによる個々の残基の配列置換により実施され、タンパク質機能、安定性および形状を特定し得る。各アラニン置換基はタンパク質の機能性に対する個々のアミノ酸の寄与を試験する。
【0120】
CRD結合ポケット内の残基の重要性をより理解するために(
図3)、Glideにおけるドッキングにより、「インシリコアラニンスキャン」を式1の化合物およびガレクチン-3阻害剤、3,3’-ジデオキシ-3,3’-ジ-[4-(3-フルオロフェニル)-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル]-1,1’-スルファンジイル-ジ-D-ガラクトピラノシド(TD139、全体の参照により包含させる国際公開第2016005311A1号を参照)に対して実施した。結合に関与すると予測された残基を変化させ、アラニンへの変異はGlideScoreの結果に影響を与えると予想された。リガンドの結合への残基の重要性を予測するためにアラニンスキャンを実施した。
【0121】
例えば、ガレクチン-3 R186Sは炭水化物相互作用を無効にすることが報告された。R186Sは糖タンパク質グリカンに一般的に見られるジサッカライド部分であるLacNAcに対する親和性を選択的に失い、好中球および小胞への細胞内標的化を活性化する能力を失ったことを示した(Salomonsson E. et al., J Biol Chem. 2010 Nov 5;285(45):35079-91を参照)。
【表5】
【表6】
【0122】
**dG>100はアラニンへの変異によるリガンド結合における増大を示し、dG<100アラニンへの変異によるリガンド結合における減少を示す。
【0123】
これらの結果はTD-139の「分子相互作用プロファイル」がG-625の分子相互作用プロファイルと異なることを示す。表5および6はインシリコモデルにより予測されるような相互作用プロファイルを示す。TD139はR186A変異(自由結合エネルギーを予測するGlideScoreにおける「約15%減少」が存在する)の導入により大きな影響を受ける。他方で、R186AはG-625に対する影響が小さく、G-625はH158A変異に対してより感受性である。
【0124】
驚くべきことに、アラニンスキャンは、残基N174がTD-139およびG-625化合物両方の結合において重要な役割を果たすことを示した。理論に縛られることなく、それは残基N174がガレクチン-3CRD部位が酸素の枠組みのような炭水化物を認識することを可能にする「光学的配座」におけるガラクトース核を配置することにおいて助けとなり得る可能性がある。
【0125】
インシリコアラニンスキャンは、G-625独特な結合プロファイルを有しており、一方でArg162、Arg186およびArg144のような既知のCDR残基との相互作用を維持することを示した。これらの結果に基づいて、部位A:S237;部位B:D148;部位C-D:A146、K176、G182およびE165;および部位C-ループにおけるN166(
図2および
図3)に位置する残基との相互作用を、CDRとの相互作用を改善するために調査した。
【0126】
合成経路
本発明の化合物は以下の一般的方法および手順により製造され得る。典型的なまたは好ましい工程条件(例えば反応温度、時間、反応剤のモル濃度比、溶媒、圧力、pH)が与えられる場合、特に断らない限り、他の工程条件もまた使用され得ると理解されるべきである。最適な反応条件は特定の反応剤、使用される溶媒およびpHなどにより変化するが、このような条件は所定の最適化方法により、当業者により決定される。
【0127】
いくつかの実施態様において、化合物は
図4に示す合成経路を用いて合成した。
【0128】
例えば、化合物G-625は実施例17に示すように製造した。
【0129】
医薬組成物
本発明の態様は、医薬の製造のための本明細書に記載の化合物の使用に関する。
【0130】
本発明の態様は、1以上本明細書に記載の化合物を含む医薬組成物に関する。いくつかの実施態様において、医薬組成物は1以上の薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤、賦形剤および担体を含む。
【0131】
用語「薬学的に許容される担体」は、本発明の化合物とともに対象(例えば患者)に投与され得て、その薬理活性を破壊せず、治療量または効果的な量の化合物を送達するために十分な投与量で投与されたとき、非毒性である担体またはアジュバントをいう。
【0132】
「薬学的に許容される担体」は、任意および全ての溶媒、分散媒体をいう。薬学的に活性な物質に対するこのような媒体および化合物の使用は当分野において既知である。好ましくは、担体は経口、静脈内、筋肉内、皮下、非経腸、脊髄または硬膜外投与(例えば、注射または吸入により)について適当である。投与経路により、活性化合物は該化合物を不活性化し得る酸の作用および他の中性条件から該化合物を保護するために物質でコーティングされ得る。
【0133】
いくつかの実施態様において、医薬組成物は薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤、賦形剤または担体をともに有する活性成分として本明細書に記載の化合物を含む。医薬組成物1~99重量%の薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤、賦形剤または担体ならびに1~99重量%の本明細書に記載の化合物を含み得る。
【0134】
本発明の組成物において使用され得るアジュバント、希釈剤、賦形剤および/または担体は薬学的に許容される、すなわち化合物および医薬組成物の他の成分と混合可能であり、その受容者にとって無害である。本発明の医薬組成物において使用され得るアジュバント、希釈剤、賦形剤および担体は当業者に既知である。
【0135】
試験動物またはヒトに対する本発明の化合物の有効な経口投与量は胃および小腸による化合物の吸収を強化する様々な賦形剤および添加剤で製剤され得る。
【0136】
本発明の医薬組成物は、2以上の本発明の化合物を含み得る。組成物はまた、関連する障害を処置するための当分野における他の医薬とともに使用され得る。
【0137】
いくつかの実施態様において、医薬組成物は、静脈内、局所、腹腔内、経鼻、口腔、舌下または皮下投与、または例えばエアロゾルまたは空気懸濁微粉末の形態で呼吸器を経由する投与、眼、眼内、硝子体内または角膜を経由する投与に適合し得る1以上の本発明に記載の化合物を含む。
【0138】
いくつかの実施態様において、1以上の本明細書に記載の化合物を含む医薬組成物は、注射溶液剤、スプレー溶液剤、軟膏剤、経皮パッチ剤または坐剤の形態であり得る。
【0139】
いくつかの本発明の態様は本明細書に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物ならびに場合により、担体もしくは賦形剤のような薬学的に許容される添加剤を含む医薬組成物に関する。
【0140】
有効な経口投与量は非経腸投与量の10倍および最大100倍であり得る。
【0141】
有効な経口投与量は毎日、週1回もしくは分割用量または週2回、週3回、または月1回。
【0142】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の化合物は1以上の他の治療剤と共投与され得る。特定の実施態様において、さらなる剤を別個に、複数の投与レジメンの一部として本発明の化合物から投与し得る(例えば逐次的に、例えば本発明の化合物の投与と異なる重複スケジュールで)。他の実施態様において、これらの剤は単一の組成物に本発明の化合物をともに混合した単回投与形態であり得る。さらに別の実施態様において、これらの剤は本発明の化合物とほぼ同時に投与される別個の用量として与えられ得る。組成物が本発明の化合物および1以上のさらなる治療剤または予防剤を含むとき、該化合物およびさらなる剤の両方は、単剤療法において投与される通常の投与量の約1~100%、およびより好ましくは約5~95%の投与量で存在し得る。
【0143】
本発明の態様は、限定されないが、チェックポイント阻害剤(抗CTLA2、抗PD1、抗PDL1)を含む他の抗新生物薬剤、限定されないが、抗OX40を含む他の免疫修飾剤、複数の作用機構の複数の他の抗新生物剤と組み合わせて新生物疾患を処置するための組成物または化合物に関する。
【0144】
いくつかの実施態様において、治療有効量の化合物または組成物は、限定されないが、治療有効量の多様な抗炎症性薬剤、ビタミン剤、他の医薬および栄養薬剤またはサプリメントまたはそれらの組合せと組み合わせて併用可能であり、有効であり得る。
【0145】
本発明の態様は、限定されないが、チェックポイント阻害剤(抗CTLA2、抗PD1、抗PDL1)を含む他の抗新生物薬剤、限定されないが、抗OX40を含む他の免疫修飾剤、複数の作用機構の複数の他の抗新生物剤と組み合わせて新生物疾患を処置するための組成物または化合物に関する。
【0146】
処置方法
いくつかの本発明の態様は、ガレクチンのリガンドへの結合に関連する障害の処置に使用するための本明細書に記載の化合物または本明細書に記載の組成物に関する。いくつかの実施態様において、ガレクチンはガレクチン-3である。
【0147】
いくつかの本発明の態様は、ガレクチンのリガンドへの結合に関連する様々な障害を処置する方法に関する。いくつかの実施態様において、該方法は治療有効量の本明細書に記載の少なくとも1個の化合物を、必要とする対象に投与することを含む。いくつかの実施態様において、それを必要とする患者は高レベルのガレクチン-3を有するヒトである。ガレクチン、例えばガレクチン-3の量は当分野において知られるいずれかの方法を用いて定量され得る。
【0148】
いくつかの実施態様において、障害は炎症性障害、例えば炎症性腸疾患、クローン病、多発性硬化症、全身性エリテマトーデスまたは潰瘍性大腸炎である。
【0149】
いくつかの実施態様において、障害は線維症、例えば肝線維症、肺線維症、腎線維症、心線維症または臓器の正常な機能を害するいずれかの臓器の線維症である。
【0150】
いくつかの実施態様において、障害は癌である。
【0151】
いくつかの実施態様において、障害はリウマチ性関節炎および多発性硬化症のような自己免疫性疾患である。
【0152】
いくつかの実施態様において、障害は心疾患または心不全である。
【0153】
いくつかの実施態様において、障害は代謝障害、例えば糖尿病である。
【0154】
いくつかの実施態様において、関連する障害は眼血管形成のような病原性血管形成、眼血管形成および癌に関連する疾患または状態である。
【0155】
いくつかの実施態様において、組成物または化合物は肝線維症、炎症性および自己免疫性障害、新生物疾患もしくは癌を伴うまたは伴わない非アルコール性脂肪性肝炎の処置に使用され得る。
【0156】
いくつかの実施態様において、組成物は肝線維症、腎線維症、肺線維症または心線維症の処置において使用され得る。
【0157】
いくつかの実施態様において、組成物または化合物は、限定されないが、肝臓、腎臓、肺および心臓を含む臓器における抗線維症活性を強化することができる。
【0158】
いくつかの実施態様において、組成物または化合物はアテローム性動脈硬化症および肺高血圧を含む脈管構造の炎症性障害の処置において使用され得る。
【0159】
いくつかの実施態様において、組成物または化合物は心不全、不整脈および尿毒性心筋症を含む心臓障害の処置において使用され得る。
【0160】
いくつかの実施態様において、組成物または化合物は糸球体症および間質性腎炎を含む腎臓疾患の処置において使用され得る。
【0161】
いくつかの実施態様において、組成物または化合物は、限定されないが、乾癬および強皮症を含む炎症性、増殖性および線維性皮膚障害の処置において使用され得る。
【0162】
本発明の態様は、限定されないが、湿疹、アトピー性皮膚炎または喘息を含むアレルギーまたはアトピー状態を処置する方法に関する。
【0163】
本発明の態様は、限定されないが、肝臓、腎臓、肺および心臓を含む臓器の抗線維症活性を強化することによる、ガレクチンが病因に少なくとも一部関与する炎症性および線維性障害を処置する方法に関する。
【0164】
本発明の態様は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を処置するための治療活性を有する組成物または化合物に関する方法に関する。他の態様において、本発明は非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に関連する病理および疾患活性を減少させる方法に関する。
【0165】
本発明の態様は、ガレクチンが、限定されないが、関節炎、全身性エリテマトーデス、リウマチ性関節炎、喘息および炎症性腸疾患を含む病因に少なくとも一部関与する炎症性および自己免疫性障害の処置において使用される組成物もしくは化合物または処置方法に関する。
【0166】
本発明の態様は、ガレクチンにおける増大により促進されるプロセスを阻害することにより、ガレクチンが病因に少なくとも一部関与する新生物疾患(例えば良性または悪性新生物疾患)を処置する組成物または化合物に関する。いくつかの実施態様において、本発明は、ガレクチンにおける増大により促進されるプロセスを阻害することにより、ガレクチンが病因に少なくとも一部関与する新生物疾患(例えば良性または悪性新生物疾患)を処置する方法に関する。いくつかの実施態様において、組成物または化合物は腫瘍細胞増殖、侵襲、転移、および新血管形成を処置または予防するために使用される。いくつかの実施態様において、組成物または化合物は原発性または二次癌を処置するために使用され得る。
【実施例】
【0167】
実施例1:生理的リガンドに結合するガレクチンの化合物阻害
限定されないが、ガレクチン-3およびガレクチン-1を含むガレクチンタンパク質は、限定されないが、齧歯類、霊長類およびヒトを含む哺乳動物種において複数の生物学的に関連する結合リガンドを有する。ガレクチンはβ-ガラクトシド含有サッカライドを有する糖タンパク質に結合する炭水化物結合タンパク質である。ガレクチンタンパク質のリガンドへの結合の結果、細胞生存およびシグナル伝達の調節、細胞増殖および走化性への影響、サイトカイン分泌への干渉、細胞-細胞および細胞-マトリックス相互作用の媒介または腫瘍の進行および転移への影響を含む、細胞内および細胞上ならびに組織内および生物全体における多くの生物学的影響が生じる。さらに、ガレクチンタンパク質の正常な発現における変化は、限定されないが、炎症性、線維性および新生物疾患を含む多くの疾患における病理学的影響の原因となる。
【0168】
本発明において記載される化合物は、限定されないが、ガレクチン-3を含むガレクチンタンパク質の炭水化物認識ドメインに結合するようにデザインされ生物学的に関連するリガンドとの相互作用を破壊する。それらは正常な発現量での病理学的過程に関与し得るまたは生理学的量を超えて増大する状況がでのガレクチンタンパク質の機能を阻害することを目的とする。
【0169】
正常な細胞機能ならびに疾患における病理において重要であるガレクチンタンパク質に対するいくつかのリガンドは、限定されないが、TIM-3(T細胞免疫グロブリンムチン-3)、CD8、T細胞受容体、インテグリン、ガレクチン-3結合タンパク質、TGF-β受容体、ラミニン、フィブロネクチン、BCR(B細胞受容体、CTLA-4(細胞毒性T-リンパ球関連タンパク質-4)、EGFR(上皮細胞増殖因子受容体)、FGFR(線維芽細胞増殖因子受容体)、GLUT-2(グルコース輸送体-2)、IGFR(インシュリン様増殖因子受容体)、種々のインターロイキン、LPG(リポホスホグリカン)、MHC(主要組織適合複合体)、PDGFR(血小板由来増殖因子受容体)、TCR(T細胞受容体)、TGF-β(トランスフォーミング増殖因子-β)、TGFβR(トランスフォーミング増殖因子-β受容体、CD98、Mac3抗原(CD107b(分化107bのクラスター)としても知られるリソソーム関連膜タンパク質2(LAMP2))を含む。
【0170】
細胞機能を媒介する種々の生物学的リガンドを有するガレクチンタンパク質の物理的相互作用を評価するために試験を実施した。種々のガレクチン-3リガンド環の相互作用を評価するためにおよび本明細書に記載の化合物が
図5Aおよび5Bに示すようにこれらの相互作用を阻害することができるかどうかを決定するために、試験を設計した。
【0171】
このアッセイを用いて、本明細書に記載の化合物は約0.5nM~約50μMの範囲のIC50を有する種々のインテグリン分子(αVβ3、αVβ6、αMβ2、α2β3およびその他)を含むガレクチンタンパク質とそれらのリガンドの相互作用を阻害することが示された。いくつかの実施態様において、IC50は約0.5nM~約1nMである。いくつかの実施態様において、IC50は約1nM~約10nMである。いくつかの実施態様において、IC50は約10nM~約100nMである。いくつかの実施態様において、IC50は約100nM~約1μMである。いくつかの実施態様において、IC50は約1μM~約10μMである。いくつかの実施態様において、IC50は約10μM~約50μMである。
図11Aから
図11Eを参照。
【0172】
実施例2:標識プローブに結合するガレクチンの化合物阻害
ガレクチン-3および他のガレクチンタンパク質に結合するフルオレセイン標識プローブを開発し、蛍光局在化(Sorme P, et al. Anal Biochem. 2004 Nov 1;334(1):36-47)を用いてガレクチンタンパク質に対するリガンドの結合親和性を測定するアッセイを確立するためにこれらのプローブを使用した。
【0173】
このアッセイを用いて、本明細書に明示的に記載される化合物はガレクチン-3、ならびに他のガレクチンタンパク質に結合し、約0.5nM~約5μMのIC50(50%阻害の濃度)を有する高い親和性でプローブを置換する。いくつかの実施態様において、IC50は約0.5nM~約1nMである。いくつかの実施態様において、IC50は約1nM~約10nMである。いくつかの実施態様において、IC50は約10nM~約100nMである。いくつかの実施態様において、IC50は約100nM~約1μMである。いくつかの実施態様において、IC50は約1μM~約10μMである。いくつかの実施態様において、IC50は約10μM~約20μMである。
【0174】
生理的リガンドの阻害:
図5Bに示すように、インテグリンのような生理的リガンドの阻害を試験するための機能アッセイを開発した。
【0175】
gal-3/インテグリン相互作用ELISAアッセイを用いてチオジグリコシドG240(TD-139)およびセラノジグリコシドG-625化合物を比較した。
図10および
図11A-11CはG625がTD-139(G240)より強力なGal-3/インテグリン阻害剤であることを示した。
【0176】
図11Dおよび11Eに示すように、ジフルオライドベンゼンで置換されたSe-モノガラクトシド(G-656およびG662)はgal-3のインテグリンとの相互作用を顕著に阻害することを示した。
【0177】
蛍光偏光
特定の蛍光リガンドの蛍光偏光シグナルを用いて、2個の化合物(G-625およびG-240)を試験した(
図6Bを参照)。
【0178】
構造:
G-240またはTD-139:3-デオキシ-3-(4-(3-フルオロフェニル)-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル)-β-D-ガラクトピラノシル 3-デオキシ-3-(4-(3-フルオロフェニル)-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル)-1-チオ-β-D-ガラクトピラノシド。G-240(TD-139)は2個のアリールトリアゾールガラクトシド環の間に硫黄架橋を有する。
【0179】
G-625-3-デオキシ-3-(4-(3-フルオロフェニル)-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル)-β-D-ガラクトピラノシル 3-デオキシ-3-(4-(3-フルオロフェニル)-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル)-1-セレノ-β-D-ガラクトピラノシド。G-625は2個のアリールトリアゾールガラクトシド環の間に1つのセレニド架橋を有する。
【0180】
図7Aおよび
図7Bに示す阻害曲線は、本明細書に記載の化合物G-625は、ガレクチン-3CRD特異的蛍光リガンドのG-240(TD-139)より2倍優れた阻害剤である。
【0181】
G-626、G-625のジセレニド誘導体を合成した(表4を参照)。G-626は蛍光偏光アッセイにおいて阻害活性を示した(
図6Bおよび
図8A)。
【0182】
G-662セレノ-モノサッカライドを合成し(表1を参照)、蛍光偏光アッセイにおいてGal-3を阻害することを示した(
図8B)。
【0183】
実施例3:FRETアッセイを用いたガレクチン結合の化合物阻害
限定されないが、モデル蛍光ラベルプローブを含むガレクチン-3とガレクチンタンパク質の相互作用を評価するためにFRET(蛍光共鳴エネルギー移動)アッセイを開発した(
図6Aを参照)。このアッセイを用いて、本明細書に繰り返し記載の化合物はガレクチン-3、ならびに他のガレクチンタンパク質に結合し、約0.5nM~約5μMのIC
50(50%阻害の濃度)を有する高い親和性でプローブを置換する。いくつかの実施態様において、IC50は約0.5nM~約1nMである。いくつかの実施態様において、IC50は約1nM~約10nMである。いくつかの実施態様において、IC50は約10nM~約100nMである。いくつかの実施態様において、IC50は約100nM~約1μMである。いくつかの実施態様において、IC50は約1μM~約5μMである。
【0184】
実施例4:ガレクチンタンパク質におけるアミノ酸残基へ結合する化合物
限定されないが、ガレクチン-3を含むガレクチン分子と本明細書に記載の化合物の相互作用を評価し、ガレクチン-3分子における相互作用残基を評価するために、ヘテロ核NMRスペクトロスコピーを使用する。
【0185】
Gal-1の製造について先に記載するように、均一に15N標識したGal-3をBL21(DE3)コンピテント細胞(Novagen)で発現させ、最少培地で増殖させ、ラクトース親和性カラムで精製し、ゲル濾過カラムで画分化する(Nesmelova IV, Pang M, Baum LG, Mayo KH. 1H, 13C, and 15N backbone and side-chain chemical shift assignments for the 29 kDa human galectin-1 protein dimer. Biomol NMR Assign 2008 Dec;2(2):203-205)。
【0186】
均一に15N標識したGal-3を95%H2O/5%D2O混合液を用いて調製したpH7.0の20mMカリウムホスフェート緩衝液に2mg/mlの濃度で溶解する。本明細書に記載の一連の化合物の結合を調査するために、1H-15N HSQC NMR試験を使用する。組換えヒトGal-3についての1Hおよび15N共鳴評価は以前に報告されている(Ippel H, et al. (1)H, (13)C, and (15)N backbone and side-chain chemical shift assignments for the 36 proline-containing, full length 29 kDa human chimera-type galectin-3. Biomol NMR Assign 2015 Apr;9(1):59-63)。
【0187】
H/C/N三重共鳴プローブおよびx/y/z三軸パルスフィールド勾配ユニットを備えたBruker 600MHz、700MHzまたは850MHzスペクトロメーターで、NMR試験を30℃で実施する。2次元1H-15N HSQCの勾配感度増強バージョンは、それぞれ窒素およびプロトン次元で256(t1)×2048(t2)の複素データ点で適用される。生データはNMRPipeを使用して変換および処理し、NMRviewを使用して解析した。
【0188】
これらの試験は、ガレクチン-3炭水化物結合ドメインにおける結合残基における本明細書に記載の化合物間の差異を示す。
【0189】
実施例5:ガレクチン結合阻害に関連するサイトカイン活性の細胞活性
実施例1には、本出願の化合物の生理的リガンドのガレクチン分子への結合を阻害する能力が記載されている。本実施例の試験において、それらの結合相互作用の機能的関連を評価した。
【0190】
本発明の化合物により阻害されるガレクチンとの相互作用の1つは、TGF-β受容体であった。従って、細胞株におけるTGR-β受容体活性に対する化合物を評価するために試験を実施した。限定されないが、LX-2およびTHP-1細胞を含む種々のTGF-β応答細胞株をTGF-βで処理し、限定されないが、種々の細胞内SMADタンパク質のリン酸化を含むセカンドメッセンジャー系の活性化に注目することにより、細胞の応答を測定した。TGF-βが細胞株においてセカンドメッセンジャー系を活性化することを確立した後、細胞を本明細書に記載の化合物で処理した。試験はこれらの化合物がTGF-βシグナル伝達経路を阻害することを示し、実施例1に記載の結合相互作用阻害が細胞モデルにおいて生理学的役割を有することが確認された。
図14Aおよび14BはG-240に対するG-625の強化された活性を示す。
【0191】
また、ガレクチン-3と種々のインテグリン分子との相互作用の阻害の生理学的重要性を評価するために細胞アッセイを実施した。血管内皮細胞に結合する単球ならびに他の細胞株を使用して、細胞-細胞相互作用試験を実施した。本明細書に記載の化合物を用いた細胞の処理は、これらのインテグリン依存性相互作用を阻害することを見出し、実施例1に記載の結合相互作用阻害が細胞モデルにおいて生理学的役割を有することが確認された。
【0192】
バイオアッセイ方法:
MCF-7細胞(結腸癌)についての方法は以下のとおりであった:
1.MCF-7細胞を4X Pen/Strepおよび0.25%ウシ胎仔血清(Gibco ロット番号1202161)を含む培養培地に再懸濁した。
2.100μlの培地(約4,000~10,000細胞/ウェル、継代数5~最大30)とともに添加し、細胞を37℃で少なくとも24時間インキュベートした。
3.試験化合物を上のように、通常100μg/ml~20ng/mLの範囲でアッセイ培地に順次希釈した。
4.100mlの連続希釈化合物をアッセイプレート内の細胞にデュプリケートで加えた。各ウェルの最終体積を200ml(2x Pen/Strep、0.25%FBSおよび示された化合物を含む)とした。
5.細胞を37℃で60~80時間インキュベートした。
6.20mlのプロメガ基質[CellTiter 96 Aqueous One Solution]試薬を各ウェルに添加した。
7.細胞を37℃で4~8時間インキュベートし、490nMでのODを読んだ。
【0193】
HTB-38細胞(乳癌)についての方法は以下のとおりであった:
1.HTB-38細胞を8ng/ml h-IFN-γ、4X Pen/Strepおよび10%ウシ胎仔血清(Gibco ロット番号1260930)を含む培養培地に再懸濁した。
2.細胞をアッセイプレートに100μl/ウェル(4,000~10,000細胞/ウェル、継代数4~最大30)で移した。
3.化合物を上のように、通常100μg/ml~20ng/mLの範囲でアッセイ培地に順次希釈した。
4.100μl/ウェルの連続希釈化合物をアッセイプレート内の細胞にデュプリケートで加えた。各ウェルの最終体積を200μl(4ng/ml h-IFN-γ、2x Pen/Strepを含む)とした。
5.細胞を37℃で60~90時間インキュベートした。
6.20μlのプロメガ基質[CellTiter 96 Aqueous One Solution]試薬を各ウェルに添加した。
7.細胞を37℃で4~8時間インキュベートし、490nMでのODを読んだ。
【0194】
図12Aおよび12Bは、Se-ジガラクトシドG-625存在下の細胞培養の生存率は、炎症性および線維化細胞ベースモデルに対して顕著な活性を有する濃度で細胞毒性を有しなかったことを示した。細胞を標準生育培地でG-625に3日間曝した。
【0195】
ガレクチン-3と実施例1で定義される種々のインテグリンおよび他の細胞の相互作用の阻害の生理学的重要性を評価するために、細胞運動性アッセイを実施する。半透膜分離ウェル装置内の多数の細胞株を用いて細胞試験を行う。本明細書に記載の化合物を用いた細胞の処理は細胞運動性を阻害することを見出し、実施例1に記載の結合相互作用阻害が細胞モデルにおいて生理学的役割を有することが確認される。
【0196】
実施例6:インビトロ炎症性モデル(単球ベースアッセイ)
PMA(ホルボール 12-ミリステート 13-アセテート)を使用して、2~4日炎症性マクロファージへ分化させたTHP-1単球培養物から出発して、マクロファージ極性化のモデルを設定した。一度分化すると(M0マクロファージ)、マクロファージは、マクロファージ活性化(M1)のためのLPSまたはLPSおよびIFN-γを用いて、炎症段階に1~3日誘発された。サイトカインおよびケモカインの配列を分析し炎症段階のTHP-1由来マクロファージの極性化を確認した。抗ガレクチン3化合物のマクロファージ極性化に対する影響を、増殖または細胞毒性アッセイ(新規テトラゾリウム化合物[3-(4,5-ジメチル-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム、分子内塩;MTSおよび電子カップリング剤(フェナジンエトスルフェート;PES)を含むCellTiter 96 (登録商標) AQueous One Solution Cell Proliferation Assay])およびケモカイン単球化学誘引物質タンパク質-1(MCP-1/CCL2)、炎症の細胞プロセスにおける単球/マクロファージの遊走および浸潤を調節する鍵タンパク質の定量的測定により評価される炎症段階における生存可能細胞の数を決定するための(テトラゾリウム試薬を使用した)比色法を用いて細胞生存率をモニタリングすることにより初めに評価した。活性化合物を導くために、他のサイトカインおよびケモカインの発現および分泌について後の試験を実施した。MCP-1の割合減少で表した。
【0197】
図13Aおよび13Bは内毒素で5日間刺激された炎症性THP-1単球におけるMCP-1の阻害を示す。細胞を単球化学誘引物質タンパク質-1(MCP-1)のような炎症性サイトカインを分泌する炎症性マクロファージ(M1)に変換する微生物内毒素により、THP-1細胞を刺激した。
【0198】
本実施例において、方法の工程は以下のとおりであった。
THP-1細胞をゲンタマイシンを含む培地で培養した。
2)THP-1細胞を96ウェルプレートのウェルに2,000細胞/ウェルで移し、10ng/mlのPMAを含むアッセイ培地で2日間インキュベートした。
3)培地を含むLPS(10ng/ml)で試験化合物を連続希釈した。
4)各ウェルに100mlの化合物/LPS溶液を添加して、ゲンタマイシンおよび5ng/mlのPMAもまた含む、各ウェル200mlの最終アッセイ体積とした。
5)細胞を最大8日間インキュベートした。
6)1日おきに、60μlのサンプルをバイオアッセイのために除去した。
7)最後に、(490nMでの)細胞毒性をモニタリングするために各ウェルに15mlのプロメガ基質CellTiter 96 Aqueous One Solutionを添加した。
8)細胞バイオマーカー評価のために、1XPBSで洗浄し、200μlの溶解緩衝液で1時間抽出した。抽出はを10分間減速し、上から120μlのサンプルを除去した。試験まで全てのサンプルを-70℃で維持する。
【0199】
図13はG-625およびG-626の両方が、極性化マクロファージのバイオマーカーであるMCP-1の分泌を減少させることにより炎症段階に対する阻害効果を有することを示す。
【0200】
実施例7:細胞培養線維化モデル
本明細書に記載の化合物の細胞効果を評価するために、限定されないが、LX-2細胞を含む線維形成星状細胞培養物を用いて試験を実施した。LX-2細胞を、血清不足培地および種々の割合のTHP-1細胞条件培地を添加した培養物中で活性化した。LX-2細胞の活性化は、限定されないが、TIMP-1を含む種々の十分に特定されたマーカーによりモニタリングした。処理24時間後までに、明示的なLX-2細胞活性化が明らかであった。本明細書に記載の化合物を用いた細胞の処理は活性化を阻害することが明らかになり、細胞モデルにおける生理学的役割が確認された。
【0201】
図14Aおよび14Bは、5日間の血清飢餓刺激LX-2細胞、肝線維形成星状細胞におけるTGFb1中のセレン化合物G625によるガレクチン-3発現の阻害を示す。
【0202】
TGFb1は、肝星細胞をコラーゲンおよび他の線維症バイオマーカーの分泌を導く線維形成経路に刺激する。Gal-3への蛍光タグ化モノクローナル抗体を使用してフローサイトメトリー試験が確立されたため、肝細胞膜におけるガレクチン-3の発現は大きく強化された。Gal-3の発現に対する刺激の特異性を示すためにラクトースおよびガラクトースを使用した。Gal-3に対する結合親和性を有していることが知られているが、ガラクトースはこの親和性が欠如している。ラクトースは(比較的高い濃度で)効果を有するが、ガラクトースは全く効果を有さないと考えられた。この仮説は結果により確認された。
【0203】
実施例8:肝線維症のインビボ動物モデル
NASHマウス線維症モデル
NASHモデルは雄性新生児マウス[C57BL/6Jマウス]を使用する。疾患は糖尿病を誘発し、高脂肪食を投与した2日後に、ストレプトゾトシン(Sigma、セントルイス、MO)溶液の単回皮下注射により誘発する。NASHの他のモデルはまた、多様な種のマウス(DIAMONDマウス)における高脂肪および/または脂肪添加糖質食の使用を含めて、使用され得る。4週齢後、高脂肪飼料(HFD、脂肪からのkcalの57%)を12~最大16週間与える。ビークルおよび種々の用量の試験物質を経口的にまたはSQまたは静脈内で毎週投与し、mg/kg体重として計算する。
【0204】
血漿ALTレベルおよび体重に基づく処置の前に、処置群へのマウスの無作為化を実施する。ビークル対照の1群、正常マウスの1群およびNASHおよび肝線維症の発症中に種々のタイミングで開始する種々の期間で与えられる種々の濃度のセレノガラクトシド化合物を含有する他の群を含む、最低でも3つの処置群(各群6~15匹のマウス)を試験する。
【0205】
本明細書に記載のセレノガラクトシド化合物、種々の処置期間は、正常マウスにおいて確立されたように、溶媒対照にまたはほぼ正常なコラーゲン量に対する10%~80%のコラーゲン、10%~80%の肝脂肪レベル、10%~80%の肝細胞アポトーシスおよび10%~80%の肝臓炎症により測定される肝線維症を減少させる。
【0206】
一般的な生物化学試験:
AST、ALT、総ビリルビン、クレアチニンおよびTG量について肝機能を血漿中で評価し、FUJI DRY CHEM 7000(富士フイルム、日本)により測定する。
【0207】
肝臓生物化学:肝臓ヒドロキシプロリン含量を定量するために、コラーゲン含量、凍結肝臓サンプル(40~70mg)の定量的評価を一般的なアルカリ-酸加水分解法により実施し、ヒドロキシプロリン含量を総肝臓タンパク質に対して正規化する。
【0208】
総肝脂質抽出物を、Folchの方法によって尾状葉から得て、肝臓TGレベルは、トリグリセリドE検定(和光、日本)を用いて測定する。
【0209】
組織病理学的および免疫組織化学的分析 ブアン溶液で固定し、リリーマイヤーヘマトキシリン(武藤化学、日本)およびエオシン溶液(和光、日本)で染色した肝臓組織のパラフィンブロックから肝臓切片を切る。
【0210】
コラーゲン堆積を視覚化するために、ピクロシリウスレッド溶液(Waldeck GmbH & Co.KG、ドイツ)を用いてブアン溶液で固定した肝臓部分を染色する。確立された基準に従って、NAFLD活性スコア(NAS)もまた、計算する。
【0211】
SMA、F4/80、ガレクチン-3、CD36およびiNOSについての免疫組織化学は、炎症および線維症の拡大についての指標として各陽性領域から予測され得る。
【0212】
ラット線維症/硬変モデル(TAAモデル):
これらの試験は、実験動物の管理と使用に関する指針(Institute of Laboratory Animal Resources, 1996, Nat. Acad. Press)および動物実験委員会(IACUC)に従い維持されている動物研究施設(Jackson Laboratory)から得られた160~280gの雄性Sprague-Dawleyラットを使用する。試験終了時、動物フェノバルビタール麻酔で安楽死させる。
【0213】
2週間の順応期間後に8週間の誘発期間を開始し、ラットを0.9%食塩水に溶解したチオアセトアミド(TAA,Sigma Chemical Co.,セントルイス,MO,アメリカ合衆国)無菌溶液の腹腔内(IP)注射に供し、初期用量450mg/kg/wkで週に2回または3回、その後400mg/kg/wk体重の7週間レジメンによりIP注射で投与する。線維症の進行について評価するために、2匹のラットを4週および8週で安楽死させ、肝臓を組織化学的に検査する。硬変を発症させるために、動物にTAAを腹腔内(IP)で最大11~12週間投与し、線維症については8週間で十分である。処置は8週から初めて4週間であり、ビークル対照群に0.9%NaClを腹腔内で週2回、4週間投与する。実験的試験項目は、それぞれ線維症または硬変について8または11週目からそれぞれ開始して、腹腔内、静脈内または経口で2回または1週間に1回、または他の間隔で与えられる。処置期間終了時、1~5%のイソフルオラン吸入および開腹により安楽死させる。屠殺時、水カラムの高さを測定するために門脈に導入された16G血管カテーテルを用いて門脈圧を測定する。肝臓を除去し、計量し、最も大きな葉からの切片をさらに解析に使用する。脾臓もまた廃棄する前に摘出し、計量する。
【0214】
シリウスレッド染色した肝臓部分の代表的な組織学は、抗線維症効果について統計的に許容される平均コラーゲンにおいて20%の減少を示す。架橋線維症の鎖は、線維症段階を示す(コラーゲン繊維の鎖が存在する)。
【0215】
生物化学試験:NASHモデルにおけるように、線維症による肝臓損傷の拡大を評価するために、種々の診断試験を実施する。
【0216】
AST、ALT、総ビリルビン、クレアチニンおよびTG量について肝機能を血漿中で評価し、FUJI DRY CHEM 7000(富士フイルム、日本)により測定する。
【0217】
肝臓生物化学:肝臓ヒドロキシプロリン含量を定量するために、コラーゲン含量、凍結肝臓サンプル(40~70mg)の定量的評価を一般的なアルカリ-酸加水分解法により実施し、ヒドロキシプロリン含量を総肝臓タンパク質に対して正規化する。
【0218】
総肝脂質抽出物を、Folchの方法によって尾状葉から得て、肝臓TGレベルは、トリグリセリドE検定(和光、日本)を用いて測定する。
【0219】
組織病理学的および免疫組織化学的分析 ブアン溶液で固定し、リリーマイヤーヘマトキシリン(武藤化学、日本)およびエオシン溶液(和光、日本)で染色した肝臓組織のパラフィンブロックから肝臓切片を切る。
【0220】
コラーゲン堆積を視覚化するために、ピクロシリウスレッド溶液(Waldeck GmbH & Co.KG、ドイツ)を用いてブアン溶液で固定した肝臓部分を染色する。確立された基準に従って、NAFLD活性スコア(NAS)もまた、計算する。
【0221】
SMA、F4/80、ガレクチン-3、CD36およびiNOSについての免疫組織化学は、炎症および線維症の拡大についての指標として各陽性領域から予測され得る。
【0222】
肝線維症の胆管モデル
胆管結紮または胆管線維症を引き起こす薬剤を用いた処置による肝臓の線維症に対する本明細書に記載の化合物の有効性を評価するために、これらの試験を実施する。本明細書に記載の化合物で処置された動物は、ビークル対照と比較して肝線維症が減少したことを示す。
【0223】
実施例9:肺線維症のインビボ動物モデル
ブレオマイシン誘発性肺線維症に対する補明細書に記載の化合物の有効性を評価するために、これらの試験を実施する。気管内生理食塩水注入した未処置対照群6~12匹のマウスから成る。0日に他の群の肺にブレオマイシンを気管内注入によりゆっくりと投与する。1日、2日、6日、9日、13日、16日および20日に、ビークルまたは種々の用量の本明細書に記載の化合物(iv、ip、皮下または経口)とともに1日1回マウスに投与(iv、ip、皮下または経口)する。動物を計量し、呼吸器の損傷を毎日評価する。21日に、全ての動物を安楽死させ、肺の湿重量を計測する。屠殺後、血清の調製のために眼窩後出血による血液を回収する。肺の右葉を後のヒドロキシプロリン分析のために急速凍結し、一方組織化学解析のために左葉に10%ホルマリンを散布し、10%ホルマリン中で固定する。ホルマリン固定した肺を所定の組織化学的評価に供する。
【0224】
実施例10:腎線維症のインビボ動物モデル
片側輸尿管結紮および糖尿病性腎症のモデルを使用して、腎臓の線維症に対する本明細書に記載の化合物の有効性を評価するために、これらの試験を実施する。種々の本明細書に記載の化合物で処置された動物は、ビークル対照と比較して腎線維症が減少したことを示す。
【0225】
実施例11:心血管線維症のインビボ動物モデル
心不全、心房細動、肺高血圧およびアテローム性動脈硬化症のモデルを使用して、心臓および血管の線維症に対する本明細書に記載の化合物の有効性を評価するために、これらの試験を実施する。
【0226】
実施例12:VEGF-A誘発性血管形成
VEGF受容体-2(VEGFR-2)による血管内皮細胞増殖因子(VEGF)シグナル伝達は、第一の血管新生経路である。そのシグナル伝達経路のために、ガレクチンタンパク質が重要である。本明細書に記載の化合物は、傷害に対する応答においてマウス角膜の新血管形成を阻害することができる。
【0227】
実施例13:化合物の吸収、分布、代謝および排出の評価
限定されないが、生物関連媒体(FaSSIF、FaSSGF、FeSSIF)における溶解度(熱力学的および速度論的方法)、多様なpH変化、溶解度、LogD(オクタノール/水およびシクロヘキサン/水)、血漿中の化学的安定性および血液分配を含む物理化学的性質について本明細書に記載の化合物を評価する。
【0228】
限定されないが、PAMPA(並列人工膜浸透性アッセイ)、Caco-2およびMDCK(野生型)を含むインビトロ浸透特性について、本明細書に記載の化合物を評価する。
【0229】
限定されないが、マウス(スイスアルビノ、C57、Balb/C)、ラット(ウイスタリア、Sprague Dawley)、ウサギ(ニュージーランドホワイト)、イヌ(ビーグル)、カニクイザルなどにおける種々の経路、すなわち、経口、静脈内、腹腔内、皮下、組織分布、脳-血漿比、胆汁排出およびマスバランスによる薬物動態を含む薬物動態特性について、本明細書に記載の化合物を評価する。
【0230】
限定されないが、血漿タンパク質結合(限外濾過および平衡透析)およびミクロソームタンパク質結合を含むタンパク質結合について、本明細書に記載の化合物を評価する。
【0231】
限定されないが、シトクロームP450阻害、シトクロームP450時間依存的阻害、代謝安定性、肝臓ミクロソーム代謝、S-9フラクション代謝、凍結保存された肝細胞への効果、血漿安定性およびGSH捕捉を含むインビトロ代謝について、本明細書に記載の化合物を評価する。
【0232】
限定されないが、インビトロの同定(ミクロソーム、S9および肝細胞)およびインビボサンプルを含む。代謝物同定について、本明細書に記載の化合物を評価する。
【0233】
実施例14:
図6Bの蛍光偏光アッセイフォーマットを使用して、表3の四量体se-ガラクトシドおよび三量体Se-ガラクトシドの親和性をアッセイした。
【0234】
図18Dは、予想された四量体Se-ガラクトシドのガレクチン-3に対する親和性を示す。
図18Cは、予想された三量体Se-ガラクトシドのガレクチン-3との親和性を示す。
【0235】
四量体Se-ガラクトシドは、CRD近傍におけるアミノ基とのヒドロキシル基のさらなる潜在的相互作用のため、三量体構造に対してCRDとより高い親和性を有すると予想される。
【0236】
実施例15:
図5Bにおいて示されるように、Gal-3以外のガレクチン、例えばガレクチン1およびガレクチン9とともに本明細書に開示される化合物の交差反応性を調査するために、異なる対のガレクチンおよびインテグリンを使用するELISAフォーマットを開発した。
【0237】
図15は、化合物G-625がガレクチン1およびインテグリンaBV6ならびにガレクチン-9およびインテグリンaMB2の間の相互作用を顕著に阻害したことを示す。これらのデータは本明細書に開示される化合物がガレクチン-3以外のガレクチンを阻害するための選択性を有し得る。このようなガレクチンは多くの病理学的経路に関与することが報告されている。
【0238】
実施例17-G-625合成方法
以下のスキーム(
図4を参照)を使用してG-625化合物を合成した。
工程-1:
【化8】
(2R,3R,4S,5R,6S)-2-(アセトキシメチル)-4-アジド-6-((4-メチルベンゾイル)セラニル) テトラヒドロ-2H-ピラン-3,5-ジイル ジアセテート(3):(2R,3R,4S,5R,6R)-2-(アセトキシメチル)-4-アジド-6-ブロモテトラヒドロ-2H-ピラン-3,5-ジイル ジアセテート(1、1.6g、4.06mmol)およびカリウム4-メチルベンゾセレノエート(2、2.41g、10.14mmol)のEtOAc(30mL)溶液に、室温(rt)で硫酸水素テトラ-n-ブチルアンモニウム(2.75g、8.12mmol)およびNa
2CO
3水溶液(16mL、16mmolL)を順次添加し、反応混合物を室温で3時間撹拌した。完了後、反応混合物を水(30mL)でクエンチし、EtOAc(3x15mL)で抽出した。合わせた有機層を乾燥(Na
2SO
4)させ、ろ過し、減圧下で濃縮し、残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー[順相、シリカゲル(100~200メッシュ)、勾配 ヘキサン中0~30%EtOAc]により精製し、表題化合物(3)を白色固体(1.38g、66%)として得た。
1H-NMR(400MHz;CDCl
3):δ2.04(s、3H)、2.06(s、3H)、2.18(s、3H)、2.45(s、3H)、2.76-2.80(m、1H)、4.03-4.17(m、3H)、5.44-5.53(m、3H)、7.27(d、J=8.1Hz、2H)、7.75(d、J=8.1Hz、2H)。
【0239】
工程-2:
【化9】
(2S,2’S,3R,3’R,4S,4’S,5R,5’R,6R,6’R)-セレノビス(6-(アセトキシメチル)-4-アジドテトラヒドロ-2H-ピラン-2,3,5-トリイル) テトラアセテート(5):(2R,3R,4S,5R,6S)-2-(アセトキシメチル)-4-アジド-6-((4-メチルベンゾイル)セラニル) テトラヒドロ-2H-ピラン-3,5-ジイル ジアセテート(3、100mg、0.19mmol)のDMF(4mL)溶液をアルゴンで20分間脱気した。混合物を-15℃まで冷却し、Cs
2CO
3(127mg、0.79mmol)、ジメチルアミン(2M THF溶液)(0.39mL、0.78mmol)および (2R,3R,4S,5R)-2-(アセトキシメチル)-4-アジド-6-ブロモテトラヒドロ-2H-ピラン-3,5-ジイル ジアセテート(307mg、0.78mmol)のDMF(2mL)溶液を添加し、再びアルゴンで20分間脱気した。反応混合物を同じ温度で5分間撹拌した。TLCを確認後、反応混合物を水(10mL)でクエンチし、EtOAc(3x15mL)で抽出した。合わせた有機層を塩水で洗浄し、乾燥(Na
2SO
4)させ、ろ過し、減圧下で濃縮した。粗製の残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー[順相、シリカゲル(100~200メッシュ)、勾配 ヘキサン中0%~50%EtOA]により精製し、表題化合物(5)を無色棒状固体(66mg、48%)として得た。
MS:m/z 707(M+AcOH)
+(ES
+)
1H-NMR(粗生成物)(400MHz;CDCl
3):δ2.04-2.19(m、18H)、2.87-2.98(m、2H)、4.09-4.17(m、6H)、4.60-4.82(m、6H)。
【0240】
工程-3:
【化10】
(2S,2’S,3R,3’R,4S,4’S,5R,5’R,6R,6’R)-セレノビス(6-(アセトキシメチル)-4-(4-(3-フルオロフェニル)-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル)テトラヒドロ-2H-ピラン-2,3,5-トリイル) テトラアセテート(7): (2S,2’S,3R,3’R,4S,4’S,5R,5’R,6R,6’R)-セレノビス(6-(アセトキシメチル)-4-アジドテトラヒドロ-2H-ピラン-2,3,5-トリイル) テトラアセテート(5、130mg、0.183mmol)および1-エチニル-3-フルオロベンゼン(6、115mg、0.918mmol)のトルエン(4mL)溶液に、室温でDIPEA(0.07mL、0.366mmolL)およびCuI(34mg、0.183mmol)を添加した。反応混合物を室温で16時間撹拌した。完了後、反応混合物を水(20mL)でクエンチし、EtOAc(3x15mL)で抽出した。合わせた有機層をセライトパッドでろ過し、EtOAcで洗浄し、乾燥(Na
2SO
4)させ、減圧下で濃縮し、残渣をEt
2O(10mL)で洗浄して表題化合物(7)を白色固体(164mg、94%)として得た。
MS:m/z 949(M+H)
+(ES
+)
1H-NMR(400MHz;DMSO-d
6):δ1.83(s、3H)、1.85(s、3H)、1.90-2.07(m、12H)、4.07-4.13(m、4H)、4.32-4.40(m、2H)、5.36(d、J=9.5Hz、1H)、5.48 -5.49 (m、3H)、5.64-5.73(m、4H)、7.18(t、J=8.4Hz、2H)、7.47-7.51(m、2H)、7.68-7.74(m、4H)、8.76(d、J=10.3Hz、2H)。
【0241】
工程-4:
【化11】
(2R,2’R,3R,3’R,4S,4’S,5R,5’R,6S,6’S)-6,6’-セレノビス(4-(4-(3-フルオロフェニル)-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル)-2-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-3,5-ジオール)(GTJC-010-01):(2S,2’S,3R,3’R,4S,4’S,5R,5’R,6R,6’R)-セレノビス(6-(アセトキシメチル)-4-(4-(3-フルオロフェニル)-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル)テトラヒドロ-2H-ピラン-2,3,5-トリイル) テトラアセテート(7200mg、0.21mmol)のMeOH(10mL)溶液に、0℃でNaOMe(0.4mL、0.42mmol)を添加した。反応混合物を0℃で2時間撹拌した。完了後、Amberlyst 15H(pH約6)を用いて反応混合物を酸性化し、ろ過し、MeOHで洗浄し、減圧下で濃縮した粗製の残渣を分取HPLC(逆相、X BRIDGE Shield RP、C-18、19x250mm、5μ、勾配 5Mm重炭酸アンモニウムを含む水溶液中50%~82% ACN、214nm、RT:7.8分)により精製し、表題化合物を白色固体(GTJC-010-01、18mg)として得た。
LCMS(方法A):m/z 697(M+H)
+(ES
+)、4.51分、純度96%。
1H-NMR(400MHz;DMSO-d
6):δ3.49-3.61(m、4H)、3.72(t、J=6.2Hz、2H)、3.99(dd、2.9&6.6Hz、2H)、4.36-4.43(m、2H)、4.70(t、J=5.5Hz、1H)、4.82 (dd、2.8&10.5Hz、2H)、5.19(d、J=9.7Hz、2H)、5.31(d、J=7.2Hz、2H)、5.40(d、J=6.6Hz、2H)、7.12-7.17(m、2H)、7.46-7.51(m、2H)、7.66(dd、J=2.3&10.2Hz、2H)、7.72(d、J=7.8Hz、2H)、8.67(s、2H)。
LCMS(方法A):機器:Waters Acquity UPLC、Waters 3100 PDA Detector、SQD;カラム:Acquity BEH C-18、1.7ミクロン、2.1x100mm;勾配[時間(分)/溶媒 BのA溶液(%)]:0.00/2、2.00/2、7.00/50、8.50/80、9.50/2、10.0/2;溶媒:溶媒A=5mM酢酸アンモニウム水溶液;溶媒B=アセトニトリル;注入体積1μL;検出波長214nm;カラム温度30℃;流速0.3mL/分。