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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】収穫機
(51)【国際特許分類】
   A01D 75/00 20060101AFI20220610BHJP
   A01D 27/04 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
A01D75/00 C
A01D27/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019004548
(22)【出願日】2019-01-15
(65)【公開番号】P2020110110
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(73)【特許権者】
【識別番号】000217240
【氏名又は名称】田中工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】丸山 義貴
(72)【発明者】
【氏名】池田 圭
(72)【発明者】
【氏名】秋元 賢佑
(72)【発明者】
【氏名】守山 千仁
(72)【発明者】
【氏名】池田 伸広
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-226110(JP,A)
【文献】特開平10-084719(JP,A)
【文献】特開2018-201363(JP,A)
【文献】特開平11-266640(JP,A)
【文献】特開2002-037146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 13/00 - 33/14
A01D 75/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の後輪と、
前記左右の後輪の一方と前後に並んで配置される前輪と、
左右方向において、前記前輪が配置される側に偏って設けられる収穫部と、
前記後輪よりも後方に設けられる後スタンドと、
前記前輪の近傍に着脱可能に支持される前スタンドとを備え、
前記前スタンドおよび前記後スタンドは、前記収穫部より左右方向のうちの前記前輪が配置される側の外側に設けられる収穫機。
【請求項2】
前記後スタンドが接地される状態では、前記左右の後輪と前記後スタンドとで支持されて、前記前輪が持ち上がった姿勢となる請求項1記載の収穫機。
【請求項3】
前記後スタンドは、前記後スタンドが接地可能な突出姿勢と収納姿勢との間で揺動する請求項1または2に記載の収穫機。
【請求項4】
前記後スタンドは、長さが可変である請求項1から3のいずれか一項に記載の収穫機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、玉ねぎや人参、大根等の根菜類の作物を収穫する収穫機に関する。
【背景技術】
【0002】
収穫機は、畝間に位置する右および左の車輪により機体が支持されて、土崩し体、引き上げ装置、および切断装置が機体に備えられている。
【0003】
このような収穫機は、機体の進行に伴って、土崩し体が畝に作付けされた作物の下側の畝の土中を進行しながら土を崩して、作物が畝から引き上げられ易くなる状態を作り出し、引き上げ装置が畝に作付けされた作物の茎葉を挟持して作物を畝から上方に引き上げて、切断装置が引き上げられた作物の茎葉において引き上げ装置よりも下側の部分を切断し、茎葉が切断された作物が畝に落とされていく。
【0004】
収穫機は、メンテナンス等のためにスタンドを設ける場合がある。スタンドは機体の後部に設けられる。収穫機は、メンテナンス等の際に、後輪とスタンドとで支持されて、前輪が上げられた姿勢とされ、機体の下部からメンテナンス作業等が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-226110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、収穫機は、メンテナンスの際に、前輪が地面から浮き、後輪とスタンドとの3点で支持される。そのため、収穫機は安定せず、前輪が下がってしまうこともあり、メンテナンスの作業効率を悪化させる場合がある。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するために、効率的に作業を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態に係る収穫機は、左右の後輪と、前記左右の後輪の一方と前後に並んで配置される前輪と、左右方向において、前記前輪が配置される側に偏って設けられる収穫部と、前記後輪よりも後方に設けられる後スタンドと、前記前輪の近傍に着脱可能に支持される前スタンドとを備え、前記前スタンドおよび前記後スタンドは、前記収穫部より左右方向のうちの前記前輪が配置される側の外側に設けられる。
【0009】
このような構成により、前スタンドが装着されたままであると、収穫作業中や移動中、トラックへの積み降ろし作業中に、前スタンドが畝やトラック等と接触し、作業や移動の妨げとなる。上記構成によると、メンテナンス作業中等以外の収穫作業中や移動中、トラックへの積み降ろし作業中等には、前スタンドが取り外されることが可能な構成であるため、これらの作業を妨げることがなく、効率的に作業を行うことができる。
【0010】
また、前スタンド、後スタンド、右の後輪および前輪がほぼ直線上に並ぶ。そのため、圃場での作業中にメンテナンスを行ったとしても、畝間に後スタントが位置し、また、畝間で前スタンドが機体を支持することができる。その結果、畝に前スタンドおよび後スタンドが接地することがなく、畝を荒らすことを抑制できると共に、畝に比べて地面の固い畝間に前スタンドおよび後スタンドが接地することになり、機体が安定して支持される。
【0011】
また、前記後スタンドが接地される状態では、前記左右の後輪と前記後スタンドとで支持されて、前記前輪が持ち上がった姿勢となっても良い。
【0012】
このように、後スタンドと左右の後輪で支持されながら前輪が持ち上がる姿勢でメンテナンス等を行う際に、前輪が接地方向に下がったとしても、前スタンドが収穫機を支えることができる。その結果、それ以上前輪が下がることが抑制されて機体が前上がりの姿勢で維持され、メンテナンス作業等が阻害されず、効率的に作業を行うことができる。
【0013】
また、前記後スタンドは、前記後スタンドが接地可能な突出姿勢と収納姿勢との間で揺動することが好ましい。
【0014】
このような構成により、メンテナンス作業中等の間だけ後スタンドが突出姿勢に変位され、メンテナンス作業中等以外の収穫作業中や移動中、トラックへの積み降ろし作業中等には、後スタンドが収納姿勢に変位される。収納姿勢では、後スタンドが機体からあまりはみ出さず、後スタンドが畝やトラック等と接触することが抑制されるため、収穫作業等を妨げることがなく、効率的に作業を行うことができる。
【0015】
また、前記後スタンドは、長さが可変であることが好ましい。
【0016】
後スタンドの長さを調整することにより、収穫機の前上がり姿勢の角度を調整することができる。これにより、適切な姿勢でメンテナンス作業等を行うことができ、効率的に作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】玉ねぎ収穫機の全体側面図である。
図2】玉ねぎ収穫機の全体平面図である。
図3】後スタンドの構成例を示す概略図である。
図4】前スタンドの取り付け状態を例示する図である。
図5】通常時の玉ねぎ収穫機の構成例を示す側面図である。
図6】メンテナンス時の玉ねぎ収穫機の構成例を示す側面図である。
図7】別実施形態における後スタンドの構成例を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔全体構成〕
図1図2に収穫機の一例である歩行型の玉ねぎ収穫機が示されており、先ず玉ねぎ収穫機の全体構成について説明する。
【0019】
玉ねぎ収穫機は、ミッションケース1にエンジン2が支持され、ミッションケース1から右および左に延出された車軸ケース3および伝動ケース4に右および左の後輪5が支持され、前方に延出された右および左の支持フレーム6の右の支持フレーム6に、前輪7が支持される。前輪7の車軸は、U字形の軸支部20に回転可能な状態で軸支される。軸支部20は、前輪シャフト21が連結される。前輪シャフト21は、前輪支持筒22に内嵌され、前輪支持筒22から突出する長さが可変な状態で支持される。前輪支持筒22は支持フレーム6に支持される。
【0020】
図1図2に示すように玉ねぎ収穫機は、後方に操縦ハンドル8が延出されて、操縦ハンドル8に備えられた調整ハンドル9により、右の支持フレーム6に対する前輪7の高さを調節することができる。調整ハンドル9の操作により、前輪支持筒22から突出する前輪シャフト21の長さが調整され、これにより、支持フレーム6に対する前輪7の高さが調節される。また、玉ねぎ収穫機は、調整ハンドル9により、右の支持フレーム6に対する前輪7の高さを調節することによって機体の前後方向の姿勢(傾斜)を調節することができる。
【0021】
図1図2に示すように、玉ねぎ収穫機は、収穫装置(収穫部)として、右および左の支持フレーム6の前部から、茎葉引き上げ装置10、掻き上げ装置11、引き上げ装置12、右および左の土崩し体13、搬送装置14、切断装置15および放出装置16を備える。エンジン2の動力により、右および左の後輪5、茎葉引き上げ装置10、掻き上げ装置11、引き上げ装置12、右および左の土崩し体13、搬送装置14、切断装置15および放出装置16が駆動される。
【0022】
図1図2に示すように、玉ねぎ収穫機は、さらに、後述する後スタンド17を備え、後述する前スタンド18を着脱可能に装着できる構成である。後スタンド17は、右の伝動ケース4に支持され、前スタンド18は右の支持フレーム6の前輪7の近傍に装着される。
【0023】
図1図2に示すように、圃場に、畝間A1を挟んで複数の畝Aが形成され、一つの畝Aに4条の玉ねぎW(作物)が作付けされる。
【0024】
玉ねぎ収穫機は、前輪7および後輪5を畝間A1に接地させて畝Aを跨ぐ状態で機体が進行する。玉ねぎ収穫機は、畝Aの4条の玉ねぎWのうち、機体の進行方向に向かって右の2条の玉ねぎWを収穫する。
【0025】
図1図2に示すように、機体の進行に伴って、右および左の土崩し体13は、畝Aに作付けされた玉ねぎWの下側の畝Aの土中を進行しながら土を崩し、玉ねぎWが畝Aから引き上げられ易くなる状態を作り出す。引き上げ装置12は、畝Aに作付けされた玉ねぎWの茎葉Waを挟持して玉ねぎWを畝Aから上方に引き上げる。引き上げられた玉ねぎWの茎葉Waにおいて引き上げ装置12よりも下側の部分は、切断装置15に切断され、茎葉Waが切断された玉ねぎWは畝Aに落とされていく。
【0026】
この後、作物回収車によって畝Aの玉ねぎWを回収したり、作業者が畝Aの玉ねぎWを回収したりする。
【0027】
〔後スタンド〕
図3に示すように、後スタンド17は右の伝動ケース4に支持される。後スタンド17は、固定部23、可動部24、および脚部30を備える。固定部23は、互いに向かい合う一対の側壁23bと、一対の側壁23bにわたって設けられる前壁23cとから構成され、それぞれの側壁23bがボルト23aにより伝動ケース4に支持される。可動部24は、互いに向かい合う一対の側壁24aと、一対の側壁24aにわたって設けられる前壁24bおよび底壁24cとから構成される。固定部23および可動部24は、ヒンジ部25を介して連結され、固定部23と可動部24とが直線上に配置されて脚部30が突出姿勢となる使用状態(実線で図示)と、固定部23に対して可動部24が折り曲げられた姿勢となる収納状態(収納姿勢(2点鎖線で図示))とに姿勢が変形可能に接続される。ヒンジ部25は、2枚の板が互いに可動部(図示せず)を中心に揺動可能に連結され、一方の板が固定部23の前壁23cに固定され、他方の板が可動部24の前壁24bに固定される。このような構成により、固定部23および可動部24は、ヒンジ部25の2枚の板の可動部(図示せず)を中心に揺動する。脚部30は、可動部24の底壁24cに長さ調整可能な状態で支持される。脚部30は側面にらせん状のねじが切られ、可動部24の底壁24cに形成された穴31に螺合される。脚部30は、穴31に挿入される長さで、可動部24から突出する長さが調整され、ナット32を用いて固定される。
【0028】
後スタンド17は、さらにプレート26を備え、プレート26は、固定部23と可動部24とを使用状態の姿勢、および収納状態の姿勢で保持するために用いられる。プレート26は、一端が可動部24の固定部23側の端部に固定される。プレート26は、穴27および穴28が設けられ、穴27または穴28にノブ29を挿入することにより固定部23と連結される。ノブ29はねじが切られたシャフト(図示せず)を備える。また、固定部23は可動部24側の端部に穴(図示せず)が設けられる。プレート26の穴27と固定部23の穴(図示せず)とにノブ29のシャフト(図示せず)を挿通することにより、固定部23と可動部24とが収納状態で固定される。また、プレート26の穴28と固定部23の穴(図示せず)とにノブ29のシャフト(図示せず)を挿通することにより、固定部23と可動部24とが使用状態で固定される。
【0029】
〔前スタンド〕
図4に示すように、前スタンド18は、前輪7の軸支部20に着脱可能である。前スタンド18は、スタンド本体であるシャフト部18aと、シャフト部18aの両端に設けられるプレート18bおよび接地部18cを備える。プレート18bが軸支部20に装着されることにより、前スタンド18は軸支部20に固定される。プレート18bおよび軸支部20には、それぞれ穴(図示せず)が設けられる。これらの穴が重なる状態でプレート18bを軸支部20に位置合わせし、2つの穴にノブ33を挿通して固定することにより、前スタンド18は軸支部20に固定される。
【0030】
〔スタンドの使用状態〕
図5に示すように、玉ねぎ収穫機は、通常状態において、前輪7および後輪5が接地される。この際、右側の後輪5および前輪7は略直線上に並び、同じ畝間A1に接地する。また、左側の後輪5は、畝A(図2参照)を挟んだ左隣の畝間A1に接地する。この状態で、玉ねぎ収穫機は、畝A(図2参照)の玉ねぎW(図2参照)を収穫する。通常状態において、後スタンド17は折り曲げられて、収納状態に姿勢変形される。また、前スタンド18は取り外される。
【0031】
図6に示すように、玉ねぎ収穫機は、メンテナンス状態において、後輪5が接地された状態で前輪7が持ち上げられ、前上がりとなる。なお、エンジンの許容傾斜角度は例えば29°であるため、この場合には前上がり角度が29°以下となるように、後スタンド17の脚部30の長さが調整される。また、メンテナンス作業に適切な角度に玉ねぎ収穫機が傾くように調整することが可能となる。この際、後スタンド17はまっすぐにのばされて、使用状態に姿勢変形される。また、前スタンド18が前輪7を支持する軸支部20に装着される。メンテナンス状態において、後スタンド17および後輪5は接地されて玉ねぎ収穫機を支持し、前輪7は持ち上げられて接地されない。メンテナンス状態において、前スタンド18は接地せず、地面(畝間A1)から離れる長さである。通常、メンテナンス状態においては、玉ねぎ収穫機は後スタンド17および左右の後輪5で支持される。
【0032】
しかしながら、後スタンド17および左右の後輪5はいずれも玉ねぎ収穫機の後方に設けられるため、玉ねぎ収穫機の姿勢は安定しない。そのため、メンテナンス作業中等に前輪7が接地する方向に下がる場合がある。このような場合であっても、前スタンド18が接地して玉ねぎ収穫機がそれ以上前下がりになることを抑制し、作業の妨げとなることが抑制され、効率的に作業を継続することができる。また、前スタンド18は着脱が可能であるため、メンテナンス時等以外には前スタンド18を取り外しておくことができ、前スタンド18が畝A(図2参照)等に接触することがないため、収穫作業の妨げとならず、効率的に収穫作業を行うことができる。また、玉ねぎ収穫機をトラック等から積み降ろす際や移動中に、トラックの荷台等に前スタンド18が接触することがなく、効率的に積み降ろし作業や移動を行うことができる。
【0033】
〔別実施形態〕
(1)上記説明では、後スタンド17は、使用状態および収納状態において、プレート26を用いて姿勢が保持されていた。しかし、プレート26を用いる場合に限らず、後スタンド17の姿勢を保持するために弾性体が用いられても良い。
【0034】
例えば、図7に示すように、後スタンド17は、固定部23と可動部24とにわたって設けられるばね34を備える。後スタンド17は、固定部23の向かい合う側壁23b間にわたって設けられる支持棒35と、可動部24の向かい合う側壁24a間にわたって設けられる支持棒36とを備え、ばね34は、両端が支持棒35と支持棒36とに支持される。このように、プレート26を設けず、ばね34を設けることにより、ばね34の弾性力により、後スタンド17は使用状態および収納状態のいずれの姿勢においても保持される。
【0035】
(2)また、上記説明では、後スタンド17は、ヒンジ部25を介して可動部24が固定部23に対して揺動する構成であったが、ヒンジ部25を用いる構成に限らない。例えば、プレート26またはばね34を用いて姿勢を保持する構成において、図7に示すように、可動部24の側壁24aは、固定部23に向かって突出する。可動部24の側壁24aと固定部23の側壁23bとは支持棒35によって軸支される。このような構成により、可動部24は、支持棒35を中心に固定部23に対して揺動することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、玉ねぎ収穫機ばかりではなく、人参や大根等の根菜類の作物を収穫する根菜類収穫機、さらに種々の収穫機に適用できる。
【符号の説明】
【0037】
5 後輪
7 前輪
10 茎葉引き上げ装置(収穫部)
11 掻き上げ装置(収穫部)
12 引き上げ装置(収穫部)
13 土崩し体(収穫部)
14 搬送装置(収穫部)
15 切断装置(収穫部)
16 放出装置(収穫部)
17 後スタンド
18 前スタンド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7