(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】感圧センサ
(51)【国際特許分類】
G01L 5/00 20060101AFI20220610BHJP
G01L 1/20 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
G01L5/00 101Z
G01L1/20 G
(21)【出願番号】P 2019019964
(22)【出願日】2019-02-06
【審査請求日】2021-11-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000108627
【氏名又は名称】タカノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】古賀 欣郎
【審査官】森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-203809(JP,A)
【文献】特開2018-189648(JP,A)
【文献】米国特許第9733136(US,B2)
【文献】米国特許第4644801(US,A)
【文献】中国特許出願公開第107144379(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L
-----------------------------------
本件出願を優先基礎とする国際特許出願PCT/JP2019/040439
の調査結果が利用された。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性カーボンブラックとバインダー樹脂との混合物が塗工された導電布と、前記導電布の第1主面に配された第1電極布と、前記導電布の第2主面に配された第2電極布とを備えた感圧センサであって、
前記導電布は非導電性繊維糸によって形成された編物であり、前記第1電極布は第1間隔で複数の第1電極が導電性繊維糸によって形成された編物であり、前記第2電極布は第2間隔で複数の第2電極が導電性繊維糸によって形成された編物であり、前記第1電極と前記第2電極とは交差するように配されており、且つ、前記第1電極と前記第2電極との交差領域がマトリクス配置で形成される構成、または、前記導電布は非導電性繊維糸によって形成された編物であり、前記第1電極布と前記第2電極布とはいずれも導電性繊維糸によって形成された編物であり、前記第1電極布と前記第2電極布とは交差するように配されており、且つ、前記第1電極布と前記第2電極布との交差領域がマトリクス配置で形成される構成となっており、
前記第1電極布のコースまたはウェールは前記導電布のコースまたはウェールと平行または直交するように配置されており、且つ、前記第2電極布のコースまたはウェールは前記導電布のコースまたはウェールと平行または直交するように配置されていること
を特徴とする感圧センサ。
【請求項2】
前記第1電極布と前記第2電極布とは同じ編物であること
を特徴とする請求項1記載の感圧センサ。
【請求項3】
前記第1電極布における前記導電布との接触面と前記第2電極布における前記導電布との接触面とは同じ編模様であること
を特徴とする請求項1または2記載の感圧センサ。
【請求項4】
前記導電布における前記第1電極布との接触面と前記第1電極布における前記導電布との接触面とは同じ編模様であり、且つ、前記導電布における前記第2電極布との接触面と前記第2電極布における前記導電布との接触面とは同じ編模様であること
を特徴とする請求項1~3のいずれか一項記載の感圧センサ。
【請求項5】
前記第1電極布における前記導電布との接触面とその反対側の面とは異なる編模様であり、前記第2電極布における前記導電布との接触面とその反対側の面とは異なる編模様であり、且つ、前記第1電極布における前記導電布との接触面と前記第2電極布における前記導電布との接触面とは同じ編模様であること
を特徴とする請求項1~4のいずれか一項記載の感圧センサ。
【請求項6】
前記第1電極布のコースまたはウェールにおけるループのピッチはループ径の2倍以下の大きさに設定されており、前記第2電極布のコースまたはウェールにおけるループのピッチはループ径の2倍以下の大きさに設定されており、且つ、前記導電布のコースまたはウェールにおけるループのピッチはループ径の2倍以下の大きさに設定されていること
を特徴とする請求項1~5のいずれか一項記載の感圧センサ。
【請求項7】
前記非導電性繊維糸はポリエステル、ポリアミド、ナイロン、レーヨン、アクリルまたはポリウレタンのいずれか一種以上を含む合成糸であり、且つ、
前記導電性繊維糸は、ポリエステル、ポリアミド、ナイロン、レーヨン、アクリルまたはポリウレタンのいずれか一種以上を含む合成糸を芯糸として、ポリエステル糸、ポリアミド糸またはナイロン糸が銀でコートされた糸によってカバーリングされたカバーリング糸、または、ポリエステル糸、ポリアミド糸またはナイロン糸が銀でコートされてウーリー加工されたウーリー加工糸であること
を特徴とする請求項1~6のいずれか一項記載の感圧センサ。
【請求項8】
前記導電性カーボンブラックは平均一次粒子径が100nm以下のケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラックまたはファーネスブラックのいずれか1種以上であること
を特徴とする請求項1~7のいずれか一項記載の感圧センサ。
【請求項9】
前記導電布の重量に対する前記導電性カーボンブラックの重量は1%以上5%以下であること
を特徴とする請求項1~8のいずれか一項記載の感圧センサ。
【請求項10】
縫合糸をさらに備え、前記第1電極布が前記縫合糸によって前記導電布に縫い付けられており、且つ、前記第2電極布が前記縫合糸によって前記導電布に縫い付けられていること
を特徴とする請求項1~9のいずれか一項記載の感圧センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報を計測する感圧センサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、介護や健康促進等の目的で、ベッドでの寝姿の圧力分布や椅子等での着座姿勢の圧力分布を生体情報として計測する用途に感圧センサが使用されている。このように身体に接触させて生体情報を計測する用途においては、身体に違和感の少ない柔軟性を有しつつ、身体に対応した大きなサイズで広範囲の圧力分布を計測可能な感圧センサが必要とされている。
【0003】
従来、導電性高分子及びバインダー樹脂を含有する混合物が布地にコーティングされている導電体によって構成された布体と、前記布体の導電面の両面に当接するように並べて配置された導電性高分子でコーティングされた繊維からなる複数の導電性の線状部材とを備え、前記導電面の表面において略平行に並べて配置された複数の前記線状部材が、前記導電面の裏面において略平行に並べて配置された複数の前記線状部材に対して、略直交するように配置されている感圧センサが提案されている(特許文献1:特開2014-108134号公報参照)。
【0004】
また、第1層シート、第2層シート及び第3層シートを備え、第1層シート及び第3層シートは、導電性粒子が所定間隔で塗布された導電路を有し、第1層シートの導電路の配向は、第3層シートの導電路の配向に対して横方向となっており、第2層シートは加圧力によって変化する電気特性を有する布製の感圧シートが提案されている(特許文献2:米国特許第8966997号明細書参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-108134号公報
【文献】米国特許第8966997号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の感圧センサは、導電性の布体と導電性の線状部材とを意図的に点接触または線接触させた状態で加圧力を計測する構成である。また、特許文献2記載の感圧シートは、導電性貴金属粒子をめっきして塗り分けた電極布によって感圧布を挟んだ状態で加圧力を計測しており、この場合、向かい合う面を構成する繊維は互いに点接触または線接触の状態になる。
【0007】
従来技術のような点接触または線接触での計測は、接触抵抗が大きいうえに接触状態が不安定となって抵抗値変動が大きい。特に、布が織物の場合、交錯点が突出している構造上、点接触となってしまうので接触抵抗が増大し、また、布の伸縮性などの要因で交錯点の位置がずれることでさらに接触状態が不安定となってしまうので抵抗値変動が大きくなる。その結果、感圧抵抗の再現性に乏しく所望の計測ができない、という問題がある。
【0008】
また、従来技術のように導電性貴金属粒子を布にめっきする場合、材料費が大幅なコストアップとなる。そして、めっきの前処理のために、布の油分除去、触媒付与、布表面の活性化処理等を行う必要があるため、処理工程が複雑になるとともに、このような化学処理は、布へのダメージが懸念される。さらに、布のサイズは、めっき設備のサイズの制約を受けるので、大きなサイズの感圧シートを製造することが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、布の柔軟性を活かしつつ、広範囲の圧力分布が計測できるとともに、面接触の状態で安定した加圧力の計測ができて、尚且つ、各交差領域における加圧力の計測精度を高めた構成の感圧センサを提供することを目的とする。
【0010】
一実施形態として、以下に開示するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0011】
本発明の感圧センサは、導電性カーボンブラックとバインダー樹脂との混合物が塗工された導電布と、前記導電布の第1主面に配された第1電極布と、前記導電布の第2主面に配された第2電極布とを備えた感圧センサであって、前記導電布は非導電性繊維糸によって形成された編物であり、前記第1電極布は第1間隔で複数の第1電極が導電性繊維糸によって形成された編物であり、前記第2電極布は第2間隔で複数の第2電極が導電性繊維糸によって形成された編物であり、前記第1電極と前記第2電極とは交差するように配されており、且つ、前記第1電極と前記第2電極との交差領域がマトリクス配置で形成される構成、または、前記導電布は非導電性繊維糸によって形成された編物であり、前記第1電極布と前記第2電極布とはいずれも導電性繊維糸によって形成された編物であり、前記第1電極布と前記第2電極布とは交差するように配されており、且つ、前記第1電極布と前記第2電極布との交差領域がマトリクス配置で形成される構成となっており、前記第1電極布のコースまたはウェールは前記導電布のコースまたはウェールと平行または直交するように配置されており、且つ、前記第2電極布のコースまたはウェールは前記導電布のコースまたはウェールと平行または直交するように配置されていることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、導電布、第1電極布および第2電極布を伸縮性に優れた編物として交差領域をマトリクス配置で形成したうえで、第1電極布のコースまたはウェールと導電布のコースまたはウェールとを平行または直交するように配置して、第2電極布のコースまたはウェールと導電布のコースまたはウェールとを平行または直交するように配置したので、編物の柔軟性及び伸縮性を活かすことができて、互いに対面するループ同士の安定した接触状態によって所望の計測が可能となる。尚且つ、導電性カーボンブラックとバインダー樹脂との混合物を編物に塗工しているので、身体に違和感の少ない柔軟性及び伸縮性を活かしつつ、めっき設備のような設備サイズの制約を受けることなく、身体に対応した大きなサイズとすることが可能となる。さらに、導電性カーボンブラックは、枝状のストラクチャー構造を有し、トンネル効果によって抵抗値を低くし、また、貴金属や導電性高分子化合物と比較して安価に入手できるので、材料費を抑えつつ、生産性が高い構成となる。そして、導電布の抵抗値は、第1電極布および第2電極布の抵抗値よりも大きいので、測定位置による抵抗値のばらつきやクロストークを低減できる。その結果、広範囲の圧力分布が計測できるとともに、面接触の状態で安定した加圧力の計測ができて、尚且つ、各交差領域における加圧力の計測精度を高めた構成となる。
【0013】
本明細書では、各電極布(第1電極布と第2電極布)のコースまたはウェールが導電布のコースまたはウェールと平行するように配置されているとは、一例として、それぞれのループの進行方向の中心線がなす角度(相対角度)が0±10[度]以内に設定されていることを指しており、この構成によれば、接触抵抗は最小値または最小値に近い値となる。ここでは、感圧抵抗ばらつきの許容範囲内において、第1電極布、導電布及び第2電極布の組み合わせばらつきが製造上生じ得ることを考慮している。感圧抵抗ばらつきを抑えるために、相対角度は0±10[度]以内に設定され、好ましくは相対角度が0±5[度]以内に設定され、さらに好ましくは相対角度が0±2[度]以内に設定される。
【0014】
また本明細書では、各電極布(第1電極布と第2電極布)のコースまたはウェールが導電布のウェールまたはコースと直交するように配置されているとは、一例として、それぞれのループの進行方向の中心線がなす角度(相対角度)が90±10[度]以内に設定されていることを指しており、この構成によれば、接触抵抗は最大値または最大値に近い値となる。ここでは、感圧抵抗ばらつきの許容範囲内において、第1電極布、導電布及び第2電極布の組み合わせばらつきが製造上生じ得ることを考慮している。感圧抵抗ばらつきを抑えるために、相対角度は90±10[度]以内に設定され、好ましくは相対角度が90±5[度]以内に設定され、さらに好ましくは相対角度が90±2[度]以内に設定される。
【0015】
前記第1電極布と前記第2電極布とは同じ編物であることが好ましい。この構成によれば、交差領域をマトリクス配置で形成しつつ、それぞれの電極布のループの進行方向を導電布のループの進行方向に対して平行配置または直交配置とすることが容易となり、且つ、部品点数を削減できるので合理的な構成となる。ここで、経編と経編とは同じ編物であるとしており、また、緯編と緯編とは同じ編物であるとしている。
【0016】
前記第1電極布における前記導電布との接触面と前記第2電極布における前記導電布との接触面とは同じ編模様であることが好ましい。編模様の表目及び裏目がいずれもコースまたはウェールに規則的に配列されている構成が特に好ましい。この構成によれば、接触抵抗のばらつきを抑えて安定させることができる。同じ編模様は同一または類似の編模様を指している。一例として、平編と平編とは同じ編模様であり、ゴム編とゴム編とは同じ編模様であり、パイル編とパイル編とは同じ編模様であり、ジャガード編とジャガード編とは同じ編模様である。また、一例として、トリコット編とトリコット編とは同じ編模様であり、ラッセル編とラッセル編とは同じ編模様であり、鎖編と鎖編とは同じ編模様であり、クロッシェ編とクロッシェ編とは同じ編模様である。
【0017】
前記導電布における前記第1電極布との接触面と前記第1電極布における前記導電布との接触面とは同じ編模様であり、且つ、前記導電布における前記第2電極布との接触面と前記第2電極布における前記導電布との接触面とは同じ編模様であることが好ましい。この構成によれば、接触抵抗が最小値または最大値になる位置で安定させることができる。
【0018】
前記第1電極布における前記導電布との接触面とその反対側の面とは異なる編模様であり、前記第2電極布における前記導電布との接触面とその反対側の面とは異なる編模様であり、且つ、前記第1電極布における前記導電布との接触面と前記第2電極布における前記導電布との接触面とは同じ編模様であることが好ましい。この構成によれば、編物のバリエーションに対応させつつ、接触抵抗のばらつきを抑えて安定させることができる。
【0019】
編物は、一例として、横編機、フルファッション編機または丸編機によって編成された緯編(よこ編み)である。緯編は、一例として、平編、ゴム編、パール編、タック編、パイル編、ジャガード編、その他既知の緯編が適用される。
【0020】
編物は、一例として、トリコット編機、ラッセル編機、クロッシェ編機またはミラニーズ編機によって編成された経編(たて編み)である。経編は、一例として、トリコット編、サテン編、インレイ編、ラッセル編、ダブルラッセル編、クロッシェ編、鎖編、アトラス編、ミラニーズ編、その他既知の経編が適用される。
【0021】
前記第1電極布のコースまたはウェールにおけるループのピッチはループ径の2倍以下の大きさに設定されており、前記第2電極布のコースまたはウェールにおけるループのピッチはループ径の2倍以下の大きさに設定されており、且つ、前記導電布のコースまたはウェールにおけるループのピッチはループ径の2倍以下の大きさに設定されていることが好ましい。この構成によれば、幅方向または長さ方向の接触面積を拡大することができるので、接触抵抗のばらつきを抑えて安定させることができる。
【0022】
一例として、前記導電布のコースまたはウェールにおけるループのピッチは、前記第1電極布のコースまたはウェールにおけるループのピッチの0.5倍以上2.0倍以下であり、且つ、前記導電布のコースまたはウェールにおけるループのピッチは、前記第2電極布のコースまたはウェールにおけるループのピッチの0.5倍以上2.0倍以下である。この構成によれば、幅方向または長さ方向の相互の接触抵抗のばらつきを抑えて安定させることができる。
【0023】
一例として、前記非導電性繊維糸はポリエステル、ポリアミド、ナイロン、レーヨン、アクリルまたはポリウレタンのいずれか一種以上を含む合成糸である。この構成によれば、肌触りがよくて耐薬品性に優れた編物となる。接触抵抗を小さくするためには、非導電性繊維糸はマルチフィラメントが好ましい。非導電性繊維糸は20~200デニールである。
【0024】
非導電性繊維糸は導電布に適用される。非導電性繊維糸は第1電極布に編み込まれて第1間隔を形成する場合があり、また、非導電性繊維糸は第2電極布に編み込まれて第2間隔を形成する場合がある。そして、非導電性繊維糸を第1電極や第2電極の一部に編み込んで導電性繊維糸の露出面積を変化させて導電布との接触面積を調整する場合がある。導電性繊維糸は第1電極や第2電極の一部ないしは全部に編み込まれる。導電性繊維糸は金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、またはこれらの合金のいずれか一種以上の金属を含む。この金属は、一例として、合成糸にコートされる場合があり、また、合成糸に練り込まれる場合がある。
【0025】
一例として、前記導電性繊維糸は、ポリエステル、ポリアミド、ナイロン、レーヨン、アクリルまたはポリウレタンのいずれか一種以上を含む合成糸を芯糸として、ポリエステル糸、ポリアミド糸またはナイロン糸が銀でコートされた糸によってカバーリングされたカバーリング糸である。この構成によれば、優れた伸縮性をもたせることができる。コートは、めっき、蒸着、その他既知のコーティング工法が適用される。
【0026】
一例として、前記導電性繊維糸は、ポリエステル糸、ポリアミド糸またはナイロン糸が銀でコートされてウーリー加工されたウーリー加工糸である。この構成によれば、優れた伸縮性をもたせることができるとともに、表面積を大きくして導電布との接触性を高めることができる。
【0027】
導電性金属の厚みは、コートされる糸の直径に対して1%以上10%以下が好ましい。この構成によれば、コートされる糸の長さ方向の抵抗値を抑えつつ柔軟性を確保できる。特に、銀は展延性に優れているので導電性薄膜を形成できるうえ、銀イオンはバクテリアなどの雑菌に対して強い殺菌力を示すので優れた抗菌作用がある。
【0028】
前記導電性カーボンブラックは平均一次粒子径が100nm以下のケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラックまたはファーネスブラックのいずれか1種以上であることが好ましい。この構成によれば、耐擦過性および柔軟性に優れた導電布となる。
【0029】
前記導電布の重量に対する前記導電性カーボンブラックの重量は1%以上5%以下であることが好ましい。この構成によれば、少量の添加量で必要な抵抗値が得られる。
【0030】
縫合糸をさらに備え、前記第1電極布が前記縫合糸によって前記導電布に縫い付けられており、且つ、前記第2電極布が前記縫合糸によって前記導電布に縫い付けられていることが好ましい。この構成によれば、電極布が導電布に縫い付けられて一体化しているので、測定領域の位置ずれを防止するとともに、布の柔軟性を活かしつつ安定した加圧力の計測が可能となる。尚且つ、広範囲の圧力分布を計測可能なサイズにできる。そして、面接触の状態で安定した加圧力の計測が可能となり、材料費を抑えつつ、生産性が高い構成となる。さらに、縫い付けによって交差領域の境界の位置が安定するので、各交差領域における加圧力の計測精度を高めることができる。
【0031】
一例として、幅が900[mm]×長さが1800[mm]のベッドサイズに合わせたサイズの感圧センサとすることができて、この場合、第1電極ストライプが25[mm]で絶縁ストライプが5[mm]のストライプピッチを有する第1電極布と、第2電極ストライプが25[mm]で絶縁ストライプが5[mm]のストライプピッチを有する第2電極布とで、導電布を挟んだ構成とすることで、交差領域の一辺が25[mm]の感圧セルを1800個備えて圧力分布が計測可能な感圧センサができる。そして、絶縁ストライプのエリア内で第1電極布と導電布と第2電極布とを非導電性の縫合糸で縫製することによって、第1電極布と導電布と第2電極布との位置ずれを防止するとともに、感圧特性の再現性に優れた大きなサイズの感圧センサができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、編物の柔軟性及び伸縮性を活かすことができて、互いに対面するループ同士の安定した接触状態によって所望の計測が可能となる。尚且つ、導電性カーボンブラックとバインダー樹脂との混合物を編物に塗工しているので、身体に違和感の少ない柔軟性及び伸縮性を活かしつつ、めっき設備のような設備サイズの制約を受けることなく、身体に対応した大きなサイズとすることが可能となる。さらに、導電性カーボンブラックは、枝状のストラクチャー構造を有し、トンネル効果によって抵抗値を低くし、また、貴金属や導電性高分子化合物と比較して安価に入手できるので、材料費を抑えつつ、生産性が高い構成となる。そして、導電布の抵抗値は、第1電極布および第2電極布の抵抗値よりも大きいので、測定位置による抵抗値のばらつきやクロストークを低減できる。その結果、広範囲の圧力分布が計測できるとともに、面接触の状態で安定した加圧力の計測ができて、尚且つ、各交差領域における加圧力の計測精度を高めた構成となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は本実施形態の感圧センサの交差領域における電極布と導電布の配置例を示す概略の構造展開図である。
【
図2】
図2は本実施形態の感圧センサの交差領域における電極布と導電布の他の配置例を示す概略の構造展開図である。
【
図3】
図3は本実施形態の感圧センサの交差領域における電極布と導電布の他の配置例を示す概略の構造展開図である。
【
図4】
図4は本実施形態の感圧センサの交差領域における電極布と導電布の他の配置例を示す概略の構造展開図である。
【
図5】
図5は本実施形態の感圧センサにおける電極布と導電布の相対角度と加圧時コンダクタンスとの関係を示すグラフ図である。
【
図6】
図6は本実施形態の感圧センサにおける電極布と導電布の相対角度と加圧時コンダクタンスとの関係を示すグラフ図である。
【
図7】
図7は第1の例の感圧センサを示す概略の斜視図である。
【
図8】
図8は第1の例の感圧センサを示す概略の平面図である。
【
図9】
図9Aは第1の例の感圧センサを示す概略の正面図であり、
図9Bは第1の例の感圧センサを示す概略の側面図である。
【
図11】
図11Aはミシンによって電極布と導電布とを貫通したループ状の上糸に下糸を通して結び目が出来た状態の概略の断面図であり、
図11Bは前記結び目を引き上げることで電極布と導電布との間に前記結び目が配された状態の概略の断面図であり、
図11Cは電極布と導電布とを所定方向に移動させながら結び目を作る作業を繰り返して縫製された状態の概略の断面図である。
【
図12】
図12は第1の例の感圧センサを示す概略の平面図であり、コントローラを接続した状態の図である。
【
図13】
図13は第2の例の感圧センサを示す概略の斜視図である。
【
図14】
図14は第2の例の感圧センサを示す概略の平面図である。
【
図15】
図15Aは第2の例の感圧センサを示す概略の正面図であり、
図15Bは第2の例の感圧センサを示す概略の側面図である。
【
図16】
図18は第2の例の感圧センサを示す概略の平面図であり、コントローラを付設した状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。
図7と
図13は、感圧センサ1の例を示す概略の斜視図である。説明の都合上、
図7や
図13等ではカバー布や信号配線等は省略している。
図7~
図18の詳細は後述する。ここで、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。なお、第1主面2a,3a,4aと第2主面2b,3b,4bとはそれぞれ互いに180[°]逆向きの面であって、相対的な位置関係を示しており、物理的な向きは限定していない。第1主面2a,3a,4aは、例えば上面、表面または表目と読み替えることができる。また、第2主面2b,3b,4bは、例えば下面、裏面または裏目と読み替えることができる。
【0035】
図1~
図4は、本実施形態の感圧センサ1の交差領域V1における第1電極布3、導電布2および第2電極布4の配置例を示す概略の構造展開図である。
図1と
図2の例では、第1電極布3、導電布2および第2電極布4はいずれも緯編となっている。
図3と
図4の例では、第1電極布3、導電布2および第2電極布4はいずれも経編となっている。説明の都合上、
図1~
図4は、第1主面2a,3a,4aは上面側から視ており、第2主面2b,3b,4bは下面側から視ている。
【0036】
図1の例は、第1主面3a、第2主面2bおよび第1主面4aは平編の表目となっており、且つ、第1主面2a、第2主面3bおよび第2主面4bは平編の裏目となっている。そして、第1電極布3のコースP3は導電布2のコースP2と平行するように配置されており、且つ、第2電極布4のコースP4は導電布2のコースP2と平行するように配置されている。
【0037】
図2の例は、第1主面3a、第2主面2bおよび第1主面4aは平編の表目となっており、且つ、第1主面2a、第2主面3bおよび第2主面4bは平編の裏目となっている。そして、第1電極布3のコースP3は導電布2のコースP2と直交するように配置されており、且つ、第2電極布4のコースP4は導電布2のコースP2と直交するように配置されている。
【0038】
図3の例は、第1主面3a、第2主面2bおよび第1主面4aはトリコット編の表目となっており、且つ、第1主面2a、第2主面3bおよび第2主面4bはトリコット編の裏目となっている。そして、第1電極布3のウェールP3は導電布2のウェールP2と平行するように配置されており、且つ、第2電極布4のウェールP4は導電布2のウェールP2と平行するように配置されている。
【0039】
図4の例は、第1主面3a、第2主面2bおよび第1主面4aはトリコット編の表目となっており、且つ、第1主面2a、第2主面3bおよび第2主面4bはトリコット編の裏目となっている。そして、第1電極布3のウェールP3は導電布2のウェールP2と直交するように配置されており、且つ、第2電極布4のウェールP4は導電布2のウェールP2と直交するように配置されている。
【0040】
上記の例に限定されず、第1電極布3と第2電極布4とが緯編となっており、導電布2が経編となっている場合がある。また、第1電極布3と第2電極布4とが経編となっており、導電布2が緯編となっている場合がある。それぞれの編模様は既知の編模様を適用できて、編模様の組み合わせは任意に設定できる。また、編の表目と編の裏目とは互いに180[°]逆向きとなる主面を指しており、相対的な関係にある。なお、第1電極布3並びに第2電極布4は、電極布3並びに電極布4と表記する場合がある。
【0041】
図5は本実施形態の感圧センサ1における電極布3並びに電極布4と導電布2のコース(またはウェール)の相対角度と加圧時コンダクタンスとの関係を示すグラフ図である。グラフ図の縦軸は、電極布3と電極布4とが互いに近づく圧縮方向に50[mmHg]の外力を加えた状態における、交差領域V1の厚み方向の抵抗の平均値の逆数であるコンダクタンスを規格化した加圧時コンダクタンスである。グラフ図の横軸は、電極布3並びに電極布4と導電布2のコース(またはウェール)の相対角度であり、コース(またはウェール)が平行するように配置されているときの相対角度は180[°]または360[°]となる。また、コース(またはウェール)が直交するように配置されているときの相対角度は90[°]または270[°]となる。
【0042】
図1や
図2(または
図3や
図4)の編模様が同じ構成にて、相対角度を変化させると、
図5の略正弦波状の実線波形になり、コース(またはウェール)が平行するように配置されているときに、加圧時コンダクタンスが大きくなるとともに、相対角度の変化に対して接触抵抗のばらつきが少ない状態となる。また、コース(またはウェール)が直交するように配置されているときに、加圧時コンダクタンスが小さくなるとともに、相対角度の変化に対して接触抵抗のばらつきが少ない状態となる。つまり、電極布3並びに電極布4と導電布2のコース(またはウェール)が平行するように配置されている構成、または、電極布3並びに電極布4と導電布2のコース(またはウェール)が直交するように配置されている構成は、接触抵抗のばらつきが少なくなり、感圧抵抗の再現性が高くなるので、好ましい。
【0043】
図1や
図2の構成において導電布2を
図3や
図4の構成とした場合(または
図3や
図4の構成において導電布2を
図1や
図2の構成とした場合)の編模様が異なる構成にて、相対角度を変化させると、
図5の略正弦波状でコンダクタンス値が高い側のピークがつぶれて台形に近くした破線波形になり、コース(またはウェール)が平行するように配置されているときに、加圧時コンダクタンスが大きくなるとともに、相対角度の変化に対して接触抵抗のばらつきが少ない状態となる。また、コース(またはウェール)が直交するように配置されているときに、加圧時コンダクタンスが小さくなるとともに、相対角度の変化に対して接触抵抗のばらつきが少ない状態となる。
【0044】
図5に示すとおり、電極布3並びに電極布4と導電布2のコース(またはウェール)が平行するように配置されている構成、または、電極布3並びに電極布4と導電布2のコース(またはウェール)が直交するように配置されている構成は、接触抵抗のばらつきが少なくなり、感圧抵抗の再現性が高くなるので、好ましい。また、電極布3並びに電極布4と導電布2の組み付け精度等に伴う相対角度の誤差による接触抵抗のばらつき(感圧抵抗のばらつきと等価)を低減する観点からは、高抵抗側(低コンダクタンス側)にて、コース(またはウェール)が直交するように配置されている構成は、接触抵抗のばらつきが少なくなり、感圧抵抗の再現性が高くなるので、好ましい。
【0045】
電極布3並びに電極布4における電極ストライプの長手方向の抵抗値は、感圧部を構成する導電布2の厚み方向の感圧抵抗の最小値(最大加圧力印加時の感圧抵抗値)に対して、2桁以上小さい値にすることで、マトリクス配置された感圧セル(交差領域V1)の感圧抵抗の位置依存性を抑えることができる。感圧抵抗の位置依存性を抑える観点からは、低抵抗側(高コンダクタンス側)にて、コース(またはウェール)が平行するように配置されている構成は、接触抵抗のばらつきが少なくなって、感圧抵抗の再現性が高くなるとともに、感圧抵抗値を小さくできるので、好ましい。
【0046】
図6は本実施形態の感圧センサ1における電極布3並びに電極布4と導電布2のコース(またはウェール)の相対角度と加圧時コンダクタンスとの関係を示すグラフ図である。グラフ図の縦軸は、インチ平方あたりのコンダクタンスである。グラフ図の横軸は、電極布3と電極布4とが互いに近づく圧縮方向に外力を段階的に加えた状態における初期状態からの経過時間である。
【0047】
図1や
図2(または
図3や
図4)の編模様が同じ構成にて、電極布3並びに電極布4を位置固定して、導電布2を平面視で反時計回りに角度が45[°]、90[°]、135[°]、180[°]、225[°]、270[°]、315[°]、360[°]となる、それぞれの位置で、電極布3と電極布4とが互いに近づく圧縮方向に、順に、50[mmHg]の外力を60[秒]加えて、100[mmHg]の外力をさらに60[秒]加えて、150[mmHg]の外力をさらに60[秒]加えて、100[mmHg]の外力をさらに60[秒]加えて、50[mmHg]の外力を60[秒]加えて、加圧力を変化させ、経過時間が10[秒]毎にインチ平方あたりのコンダクタンスを測定した。
図6に示すとおり、コース(またはウェール)が平行するように配置されている構成は、感圧抵抗の再現性が高くなるとともに、感圧抵抗値を小さくできる。
【0048】
図5と
図6の結果からは、電極布3並びに電極布4と導電布2のコース(またはウェール)が平行するように配置されている構成は、接触抵抗のばらつきが少なくなって、感圧抵抗の再現性が高くなるとともに、感圧抵抗値を小さくできる。さらに、導電布2における導電性カーボンブラックの添加量を低減できるので、導電布2のコストが低減できるうえ、柔軟性と耐摩耗性の両方を高めた構成の感圧センサ1にできる。
【0049】
(第1の例)
続いて、本実施形態の第1の例について詳しく説明する。
図7は、第1の例の感圧センサ1を示す概略の斜視図である。
図8は第1の例の感圧センサ1を示す概略の平面図である。
図9Aは第1の例の感圧センサ1を示す概略の正面図であり、
図9Bは第1の例の感圧センサ1を示す概略の側面図である。ここで、感圧センサ1の各部の位置関係を説明し易くするため、図中にX,Y,Zの矢印で向きを示している。感圧センサ1を実際に使用する際には、これらの向きに限定されず、どのような向きで使用しても支障ない。
【0050】
第1の例の感圧センサ1は、四角形状の導電布2と、導電布2の第1主面2aに第1間隔2cで配された複数の帯状第1電極布3と、導電布2の第2主面2bに第1電極布3と交差する方向に第2間隔2dで配された複数の帯状第2電極布4と、非導電性の縫合糸5とを備える。ここでは、導電布2の第1主面2aにおいて第1電極布3が略平行に配置されており、また、導電布2の第2主面2bにおいて第2電極布4が略平行に配置されており、そして、第2電極布4が第1電極布3に対して略直交するように配置されている。なお、導電布2、第1電極布3及び第2電極布4は、四角形状に限られず、角丸四角形状や楕円形状とする場合がある。
【0051】
ここで、感圧センサ1は、
図10Aに示すように、第1電極布3と第1電極布3との間の第1隙間の位置で縫合糸5によって第2電極布4が導電布2に縫い付けられている。また、
図10Bに示すように、第2電極布4と第2電極布4との間の第2隙間の位置で縫合糸5によって第1電極布3が導電布2に縫い付けられている。そして、平面視で、第1電極布3と第2電極布4との交差領域V1がマトリクス配置で形成される。
図7と
図8では、ハッチングされた四角形状の領域を交差領域V1として示している。
【0052】
図8の例では、交差領域V1を囲むように縫合糸5が縫い付けられている。尚且つ、交差領域V1の四隅の外側位置に縫合糸5が縫い付けられている。この構成によれば、縫合糸5の縫い付けによって交差領域V1から他の交差領域V1へのリーク電流が低減されるので、加圧力に対応して出力される検出信号のS/N比を改善できる。
【0053】
そして、
図10Aに示すとおり、第1電極布3における縫合糸5が縫い付けられている箇所が縫合糸5の張力によって窪んでいる。また、
図10Bに示すとおり、第2電極布4における縫合糸5が縫い付けられている箇所が縫合糸5の張力によって窪んでいる。この構成によれば、縫合糸5の縫い付けによる上下方向の締付けによって縫い付け部に不感帯が形成されるので交差領域V1以外の箇所の抵抗値の変動が抑えられて、加圧力に対応して出力される検出信号のS/N比を改善できる。上記以外の構成として、交差領域V1の四隅の位置に縫合糸5が縫い付けられている場合があり、この場合も上記の構成と同様の効果が見込める。
【0054】
図11A、
図11B、
図11Cは、ミシンによって第1電極布3と導電布2とを縫製する手順を例示する概略の断面図である。一例として、本縫いの場合、ミシンによって第1電極布3と導電布2とを貫通したループ状の上糸5に下糸5を通して結び目が出来た状態とし(
図11A)、結び目を引き上げることで第1電極布3と導電布2との間に結び目が配される状態とし(
図11B)、第1電極布3と導電布2とを所定方向に移動させながら結び目を作る作業を繰り返して縫製する(
図11C)。ミシンによって第2電極布4と導電布2とを縫製する場合も、
図11A、
図11B、
図11Cに示す縫製手順と同様である。
【0055】
本実施形態は、第1電極布3の短手方向の幅は第1間隔2cの短手方向の幅よりも大きく、かつ、第2電極布4の短手方向の幅は第2間隔2dの短手方向の幅よりも大きい。この構成によれば、隣接する測定箇所からのリーク電流が低減されるので、加圧力に対応して出力される検出信号のS/N比を改善できる。第1電極布3の短手方向の幅と第2電極布4の短手方向の幅は、それぞれ一例として10~100[mm]である。また、第1間隔2cの短手方向の幅と第2間隔2dの短手方向の幅は、それぞれ一例として1~10[mm]である。
【0056】
本実施形態は、導電布2の厚みは第1間隔2cの短手方向の幅よりも小さく、かつ、導電布2の厚みは第2間隔2dの短手方向の幅よりも小さい。この構成によれば、隣接する測定箇所からのリーク電流が低減されるので、加圧力に対応して出力される検出信号のS/N比を改善できる。導電布2の厚みは、一例として0.3~0.6[mm]である。第1電極布3の厚みと第2電極布4の厚みは、一例として0.2~0.6[mm]である。
【0057】
本実施形態は、導電性カーボンブラックのストラクチャーによって、導電布2は厚み方向、長手方向及び短手方向に導通している(不図示)。また、銀でコートされた糸(導電性繊維糸)のストラクチャーによって、第1電極布3は厚み方向、長手方向及び短手方向に導通している(不図示)。第2電極布4についても、第1電極布3と同様である。
【0058】
本実施形態は、導電性カーボンブラックは平均一次粒子径が100nm以下のケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラックまたはファーネスブラックのいずれか1種以上である。この構成によれば、少量の添加量で必要な抵抗値が得られるので、耐擦過性および柔軟性に優れた導電布2となる。
【0059】
ファーネスブラックは、油やガスを高温ガス中で不完全燃焼させて導電性カーボンブラックを得るファーネス法によって製造される。ファーネスブラックは、製造上、大量生産に向き、粒子径やストラクチャーをコントロールし易い。
【0060】
チャンネルブラックは、天然ガスを燃焼させ、チャンネル鋼に析出させたものを掻き集めて得るチャンネル法によって製造される。チャンネルブラックは、表面官能基が多いので、塗工に向いている。
【0061】
アセチレンブラックは、アセチレンガスを熱分解して得るアセチレン法よって製造される。アセチレンブラックは、導電性が高く、不純物が少ない。
【0062】
ケッチェンブラックは、大まかには不純物の少ない油を高温ガス中で不完全燃焼させて導電性カーボンブラックを得るオイルファーネス法によって製造され、副生するガスを分離後、前駆体を造粒・乾燥して製造される。ケッチェンブラックは他の導電性カーボンブラックと異なり、中空シェル状の構造を持っているため、アセチレンブラックよりも高い導電性を発現する。
【0063】
一例として、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社のケッチェンブラックEC300JはBET比表面積のカタログ値が800[m2/g]であり、ケッチェンブラックEC600JDはBET比表面積のカタログ値が1270[m2/g]以上であり、いずれも標準的なアセチレンブラックのBET比表面積の10倍以上である。これにより、少量の添加量で高い導電性が得られるので、耐擦過性および柔軟性に優れた導電布2となる。
【0064】
本実施形態は、導電布2、第1電極布3及び第2電極布4はいずれも編物である。この構成によれば、伸縮性に優れた感圧センサ1となり、身体に違和感の少ない柔軟性を有しつつ、身体に対応した大きなサイズで広範囲の圧力分布を計測可能な感圧センサ1となる。
【0065】
本実施形態は、導電性カーボンブラックと破断伸度が100%以上のバインダー樹脂との混合物が導電布2に塗工されている。この構成によれば、導電布2の柔軟性を活かしつつ安定した加圧力の計測ができる。一例として、導電性カーボンブラックはバインダー樹脂によって導電布2における基材布の表面及び繊維中に接着されている。一例として、第1電極布3と第2電極布4とは、同一の材料からなる。
【0066】
本実施形態は、上述の構成により、第1電極布3と第2電極布4との表面抵抗率が、いずれも導電布2の表面抵抗率よりも2桁以上小さくなる。これによれば、第1電極布3および第2電極布4の長さ方向の抵抗の影響が低減されるので、加圧力に対応して出力される検出信号のS/N比を改善できる。つまり、感圧部である交差領域V1における測定抵抗の影響をほとんど無視できる。尚且つ、導電性金属粒子と比較して安価な導電性カーボンブラックによって分散安定性に優れた導電布2を構成できるうえ、少量の添加量で必要な抵抗値が得られるので、耐擦過性および柔軟性に優れた導電布2となる。また、測定位置による抵抗値のばらつきを低減できるとともに、交差領域V1と交差領域V1とのクロストークを低減できる。
【0067】
前記基布は、一例としてナイロン、ポリエステル、レーヨン、アクリル、ポリアミドなどの合成繊維からなる。医療現場では、オートクレーブ滅菌処理を行うことが想定されることから、オートクレーブ滅菌処理の耐性が高いこれらの繊維が好ましい。前記基布は、一例として編物である。前記基布を構成する糸または繊維の太さは、一例として20~200デニールである。前記基布が編物であることで、織物や不織布よりも伸縮性が大きくなり、感圧特性に優れた感圧センサ1となる。
【0068】
導電性カーボンブラックは、枝状のストラクチャー構造を有し、トンネル効果によって抵抗値を低くし、また、貴金属や導電性高分子化合物と比較して安価に入手できる。特にケッチェンブラックは、少量の添加量で必要な抵抗値が得られるので、耐擦過性および柔軟性に優れた導電布2となる。
【0069】
バインダー樹脂は、一例として熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂からなる。バインダー樹脂は、一例としてポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリウレタン(PU)、ポリエステル(PEs)、または既知の合成樹脂である。
【0070】
塗工は、浸漬法、スプレーコート法、ロールコート法、バーコート法、電着法、または他既知の塗布方法、若しくはこれら塗布方法の組み合わせが適用できる。
【0071】
縫合糸5は、一例としてナイロン、ポリエステル、レーヨン、アクリル、ポリアミドなどの合成繊維や、綿、リンネルなどの天然繊維からなる。縫合糸5の太さは、一例として20~200デニールである。
【0072】
縫製は、一例としてミシン、若しくは手縫いである。前記縫製は、一例として本縫い、環縫い、かがり縫い、偏平縫い、その他既知の縫い方が適用される。縫製が本縫いの場合、第1主面2a(表)と第2主面2b(裏)の両方において、縫合糸5が縫い付けられた箇所が伸縮性のない縫い目となり、不感帯が形成されて交差領域V1以外の箇所の抵抗値の変動が抑えられるので、交差領域V1をマトリクス配置で形成するとともに、個々に電気信号を取り出すための独立した圧力セルとして機能させ易くなる。
【0073】
図12は第1の例の感圧センサ1の例を示す概略の平面図であり、コントローラ7を接続した状態の図である。コントローラ7は、信号配線の切替え回路、信号検出器、A/D変換器、半導体メモリ、演算回路、これらを制御するCPUを有する。感圧センサ1は、所定間隔で複数配された第1電極布3と所定間隔で複数配された複数の第2電極布4との、それぞれの長手方向の端部に信号線が接続され、コントローラ7に内蔵された切替え回路によって周波数が一例として10~100[Hz]でスキャンされ、マトリクス配置で形成された交差領域V1の抵抗値を個々にミリ秒オーダーで信号検出器によって検出され、A/D変換器によってA-D変換され、半導体メモリによってデータ蓄積され、演算回路によって演算され、最終的に圧力値または圧力分布、若しくは圧力値及び圧力分布として外部のディスプレイ装置に表示される。一例としてコントローラ7とディスプレイ装置とは、感圧センサ1との信号接続用のインターフェース基板が内蔵されたパーソナルコンピュータが適用できる。
【0074】
本実施形態は、導電布2の第1主面2aに第1間隔2cで配された[m]数の第1電極布3と、導電布2の第2主面2bに第1電極布3と交差する方向に第2間隔2dで配された[n]数の第2電極布4とを備え、第1電極布3と第2電極布4との交差領域V1がマトリクス配置で形成される。ここで、[m]と[n]とはそれぞれ2以上の自然数であり、
図12の例では、m=5であり、n=6である。
【0075】
本実施形態は、第1電極布3と第2電極布4とが互いに近づく圧縮方向に50[mmHg]の外力を加えた状態における、交差領域V1の厚み方向の抵抗の平均値である抵抗値Rc[Ω]に対して、長手方向で隣接する2つの交差領域V1,V1の長手方向の抵抗の平均値である抵抗値Re[Ω]が次の式(1)を満たす。
【0076】
(数1)
1<Re<(Rc/(m+n))・・・(1)
【0077】
この構成によれば、布の柔軟性を活かしつつ安定した加圧力の計測が可能となり、かつ、広範囲の圧力分布を計測可能なサイズにできるとともに、材料費を抑えつつ生産性が高い構成となる。尚且つ、導電布2の上下に配された帯状電極の表面抵抗が、導電布2の表面抵抗より2桁以上小さい構成となるので、各交差領域における加圧力の計測精度を高めることができる。
【0078】
図12のように、行方向の各第1電極布3の電極ピッチ3pと、列方向の各第2電極布4の電極ピッチ4pとが等しい場合、上述の式(1)のとおりとなる。
【0079】
一方、各第1電極布3の電極ピッチ3pと、各第2電極布4の電極ピッチ4pとが異なる場合、行方向の各第1電極布3の電極ピッチ3pでの電極抵抗値R1[Ω]と、列方向の各第2電極布4の電極ピッチ4pでの電極抵抗値R2[Ω]との加重平均で抵抗値Re[Ω]を、次の式(2)によって算出する。
【0080】
(数2)
Re=(m×R1+n×R2)/(m+n)・・・(2)
【0081】
この構成によれば、布の柔軟性を活かしつつ安定した加圧力の計測が可能となり、かつ、広範囲の圧力分布を計測可能なサイズにできるとともに、材料費を抑えつつ生産性が高い構成となる。尚且つ、導電布2の上下に配された帯状電極(第1電極布3と第2電極布4)の表面抵抗が、導電布2の表面抵抗より2桁以上小さい構成となるので、各交差領域V1における加圧力の計測精度を高めることができる。
【0082】
(第2の例)
続いて、本実施形態の第2の例について詳しく説明する。
図13は、第2の例の感圧センサ1を示す概略の斜視図である。
図14は第2の例の感圧センサ1を示す概略の平面図である。
図15Aは第2の例の感圧センサ1を示す概略の正面図であり、
図15Bは第2の例の感圧センサ1を示す概略の側面図である。説明の都合上、
図13等ではカバー布や信号配線等は省略している。第2の例では、第1の例と相違する点を中心に説明する。
【0083】
本実施形態は、導電布2の第1主面2aに配された1枚の第1電極布3と、導電布2の第2主面2bに配された1枚の第2電極布4とを備え、第1電極布3は第1間隔2cで複数の第1電極3dが形成されており、第2電極布4は第2間隔2dで複数の第2電極4dが形成されているとともに、第2電極4dが第1電極3dと交差するように配されており、第1電極3dと第2電極4dとの交差領域V1がマトリクス配置で形成される。
【0084】
本実施形態は、第1電極3dの短手方向の幅は第1間隔2cの短手方向の幅よりも大きく、かつ、第2電極4dの短手方向の幅は第2間隔2dの短手方向の幅よりも大きい。この構成によれば、隣接する測定箇所からのリーク電流が低減されるので、加圧力に対応して出力される検出信号のS/N比を改善できる。第1電極3dの短手方向の幅と第2電極4dの短手方向の幅は、それぞれ一例として10~100[mm]である。また、第1間隔2cの短手方向の幅と第2間隔2dの短手方向の幅は、それぞれ一例として1~10[mm]である。
【0085】
本実施形態は、導電布2の厚みは第1間隔2cの短手方向の幅よりも小さく、かつ、導電布2の厚みは第2間隔2dの短手方向の幅よりも小さい。この構成によれば、隣接する測定箇所からのリーク電流が低減されるので、加圧力に対応して出力される検出信号のS/N比を改善できる。導電布2の厚みは、一例として0.3~0.6[mm]である。第1電極布3の厚みと第2電極布4の厚みは、一例として0.2~0.6[mm]である。
【0086】
第2の例は、第1電極布3と第2電極布4との寸法や数が上述の第1の例と相違している。それ以外の縫製方法や縫製位置、導電性カーボンブラック、導電性繊維糸、その他構成要素を第1の例と同様にできる。
【0087】
図16は第2の例の感圧センサ1を示す概略の平面図であり、コントローラ7を接続した状態の図である。コントローラ7は、信号配線の切替え回路、信号検出器、A/D変換器、半導体メモリ、演算回路、これらを制御するCPUを有する。本実施形態は、導電布2の第1主面2aに配された1つの第1電極布3と、導電布2の第2主面2bに配された1つの第2電極布4とを備え、第1電極布3は第1間隔2cで[m]数の第1電極3dが形成されており、第2電極布4は第2間隔2dで[n]数の第2電極4dが形成されているとともに、第2電極4dが第1電極3dと交差するように配されており、第1電極3dと第2電極4dとの交差領域V1がマトリクス配置で形成される。ここで、[m]と[n]とはそれぞれ2以上の自然数であり、
図16の例では、m=5であり、n=6である。
【0088】
本実施形態は、第1電極布3と第2電極布4とが互いに近づく圧縮方向に50[mmHg]の外力を加えた状態における、交差領域V1の厚み方向の抵抗の平均値である抵抗値Rc[Ω]に対して、長手方向で隣接する2つの交差領域V1,V1の長手方向の抵抗の平均値である抵抗値Re[Ω]が上述の式(1)を満たす。
図16のように、行方向の各第1電極布3の電極ピッチ3pと、列方向の各第2電極布4の電極ピッチ4pとが等しい場合、上述の式(1)のとおりとなる。
【0089】
一方、各第1電極布3の電極ピッチ3pと、各第2電極布4の電極ピッチ4pとが異なる場合、行方向の各第1電極布3の電極ピッチ3pでの電極抵抗値R1[Ω]と、列方向の各第2電極布4の電極ピッチ4pでの電極抵抗値R2[Ω]との加重平均で抵抗値Re[Ω]を、上述の式(2)によって算出する。
【0090】
上述の感圧センサ1は、一例としてベッド、ベッド用マット、シーツ、敷布、クッション、椅子用マット、健康マット、カーペットに適用できる。一例としてベッド、ベッド用マット、シーツまたは敷布に感圧センサ1を組み込むことで、人の就寝時の寝姿を計測し、エアマットの空気圧調整等によって寝返りを促して褥瘡を防止できる。また、所定部位の圧力波形を分析演算することにより心拍センサや呼吸センサとして、心拍や呼吸等を計測することも可能である。一例として、クッションまたは椅子用マットに感圧センサ1を組み込むことで、人の着座姿勢の計測や、離席を検知して人の動作の把握や、エアクッションの空気圧調整等によって姿勢を矯正して肩こりや腰痛を防止できる。一例として、健康マットまたはカーペットに感圧センサ1を組み込むことで、人の歩行姿勢の計測や、立位での足圧計測によって被検者に対応する靴のカスタマイズができる。そして、接触抵抗から人の体重を計測することも可能であり、また、人の部屋内移動など生活習慣の計測にも応用可能である。
【0091】
一般に、椅子やベッドでの圧力分布計測では、感圧センサ1による計測範囲は加圧力が10~200[mmHg]で十分に計測できる。感圧センサ1による計測頻度が高いのは加圧力が50[mmHg]前後である。
【0092】
本発明は、上述の実施例に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更が可能である。感圧センサ1の形状及びサイズは、既知のベッド、ベッド用マット、シーツ、敷布、クッション、椅子用マット、健康マット、カーペットの仕様等に合わせて適宜仕様変更する場合がある。
【符号の説明】
【0093】
1 感圧センサ
2 導電布、2a 第1主面、2b 第2主面、2c 第1間隔、2d 第2間隔
3 電極布(第1電極布)、3a 第1主面、3b 第2主面、3d 第1電極、
4 電極布(第2電極布)、4a 第1主面、4b 第2主面、4d 第2電極
5 縫合糸
7 コントローラ
P2 コース(またはウェール)
P3 コース(またはウェール)
P4 コース(またはウェール)
V1 交差領域