(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】電気的性能が向上したコロナ点火装置
(51)【国際特許分類】
H01T 13/20 20060101AFI20220610BHJP
H01T 19/04 20060101ALI20220610BHJP
F02P 13/00 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
H01T13/20 B
H01T13/20 E
H01T19/04
F02P13/00 301J
(21)【出願番号】P 2019509466
(86)(22)【出願日】2017-08-11
(86)【国際出願番号】 US2017046420
(87)【国際公開番号】W WO2018034952
(87)【国際公開日】2018-02-22
【審査請求日】2020-08-11
(32)【優先日】2016-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518372567
【氏名又は名称】テネコ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TENNECO INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バローズ,ジョン・アントニー
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,ジョン・イー
(72)【発明者】
【氏名】ミクセル,クリスタファー・アイ
(72)【発明者】
【氏名】リコウスキー,ジェームズ・ディ
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-512556(JP,A)
【文献】特開2011-129511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 13/00-21/06
F02P 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線周波電場を放出して、燃料-空気混合物をイオン化し、コロナ放電を提供するためのコロナ点火器であって、
導電性材料で形成され、高い無線周波電圧を受信して前記無線周波電場を放出するための中心電極と、
電気絶縁材料で形成され、前記中心電極を取り囲み、中心軸に沿って絶縁体上端から絶縁体ノーズ端部まで長手方向に延在する
、圧縮状態にある絶縁体とを備え、
前記絶縁体は、前記絶縁体上端から前記絶縁体ノーズ端部まで延在する絶縁体外面を含み、
前記絶縁体外面は、前記中心軸に対して垂直に前記中心軸を横切って延在する絶縁体外径を提供し、
前記絶縁体は、絶縁体本体領域と絶縁体ノーズ領域とを含み、
前記絶縁体外面は、前記中心軸から離れて外向きに延在する下方レッジを前記絶縁体本体領域と前記絶縁体ノーズ領域との間に含み、
前記下方レッジは、前記絶縁体外径の増大を示し、
前記コロナ点火器はさらに、
導電性構成要素を備え、前記導電性構成要素は、前記絶縁体ノーズ領域が前記導電性構成要素よりも外側に延在するように前記絶縁体本体領域の少なくとも一部を取り囲み、
前記導電性構成要素は、前記絶縁体本体領域の少なくとも一部を取り囲み、シェル上端からシェル点火端部まで延在するシェルを含み、
前記シェルは、前記中心軸の方に面し、前記絶縁体外面に沿って前記シェル上端から前記シェル点火端部まで延在するシェル内面を提供し、
前記導電性構成要素は、導電性材料で形成され、前記絶縁体本体領域の一部を取り囲み、中間上端から中間点火端部まで長手方向に延在する中間部分を含み、
前記中間部分は、前記中心軸の方に面し、前記絶縁体外面に沿って前記中間上端から前記中間点火端部まで長手方向に延在する中間内面を含み、
前記中間内面は、前記中心軸に対して垂直に前記中心軸を横切って延在する導電内径を提供し、
前記導電内径は、前記下方レッジと前記絶縁体ノーズ端部との間に位置する前記絶縁体の一部に沿った前記絶縁体外径未満であり、
前記中間部分は、前記絶縁体上端と前記下方レッジとの間に配設され、
前記中間部分は、金属の層であり、
前記金属の層は、前記絶縁体を前記シェルにろう付けする、コロナ点火器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2016年8月18日に出願された米国一部継続出願第15/240,652号の利益を主張し、その内容全体は、引用によって本明細書に援用される。
【0002】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、一般に、無線周波電場を放出して、燃料-空気混合物をイオン化し、コロナ放電を提供するためのコロナ点火器、および当該点火器を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術
コロナ放電点火システムは、中心電極を有する点火器を含み、中心電極は、高い無線周波電圧電位に充電されて、燃焼室内で強い無線周波電場を生じさせる。電場により、燃焼室内の燃料と空気との混合物の一部はイオン化して絶縁破壊を開始させ、燃料-空気混合物の燃焼を促進させる。電場は、好ましくは、燃料-空気混合物が誘電特性を維持して、非熱的プラズマとも称されるコロナ放電が生じるように制御される。燃料-空気混合物のイオン化された部分は、火炎前面を形成し、火炎前面は、その後自律的になって燃料-空気混合物の残りの部分を燃焼させる。好ましくは、電場は、点火器の電極と接地シリンダ壁、ピストンまたは他の部分との間に熱的プラズマおよび電気アークを生じさせる全ての誘電特性を燃料-空気混合物が失うことのないように制御される。コロナ放電点火システムの一例は、フリーン(Freen)による米国特許第6,883,507号に開示されている。
【0004】
コロナ点火器は、典型的には、燃料-空気混合物をイオン化し、コロナ放電を提供するために、高い無線周波電圧を受信して無線周波電場を放出するための、導電性材料で形成された中心電極を含む。電極は、典型的には、電場を放出する高電圧コロナ促進電極先端部を含む。点火器は、中心電極を受ける金属材料で形成されたシェルも含み、シェルと中心電極との間には、電気絶縁材料で形成された絶縁体が配設されている。コロナ放電点火システムの点火器は、意図的に中心電極の点火端部に近接して設置されたいかなる接地電極要素も含まない。むしろ、接地は、好ましくは、点火システムのシリンダ壁またはピストンによって提供される。コロナ点火器の一例は、リコウスキー(Lykowski)およびハンプトン(Hampton)による米国特許出願公開第2010/0083942号に開示されている。
【0005】
高周波コロナ点火器の動作中、接地金属シェルから離れて高電圧電極先端部に向かう方向に絶縁体外径が大きくなる場合に電気的利点がある。この設計の一例は、米国特許出願公開第2012/0181916号に開示されている。最大の利益のために、接地金属シェルの外径を内径よりも大きくすることがしばしば望ましい。この設計の結果、燃焼室の方向から絶縁体をシェルに挿入することによって点火器を組み立てる(「逆方向組み立て」とも称される)必要があった。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
本発明の一局面は、中心電極と、中心電極を取り囲む絶縁体と、絶縁体を取り囲む導電性構成要素とを備えるコロナ点火器を提供する。中心電極は、導電性材料で形成され、高い無線周波電圧を受信して無線周波電場を放出する。絶縁体は、電気絶縁材料で形成され、中心軸に沿って絶縁体上端から絶縁体ノーズ端部まで長手方向に延在している。絶縁体は、絶縁体上端から絶縁体ノーズ端部まで延在する絶縁体外面を含み、絶縁体外面は、中心軸に対して垂直に中心軸を横切って延在する絶縁体外径を提供する。また、絶縁体は、絶縁体本体領域と絶縁体ノーズ領域とを含む。絶縁体外面は、中心軸から離れて外向きに延在する下方レッジを絶縁体本体領域と絶縁体ノーズ領域との間に含む。下方レッジは、絶縁体外径の増大を示す。
【0007】
導電性構成要素は、導電性材料で形成され、絶縁体ノーズ領域が導電性構成要素よりも外側に延在するように絶縁体本体領域の少なくとも一部を取り囲んでいる。導電性構成要素は、絶縁体本体領域の少なくとも一部を取り囲み、シェル上端からシェル点火端部まで延在するシェルを含む。シェルは、中心軸の方に面し、絶縁体外面に沿ってシェル上端からシェル点火端部まで延在するシェル内面を提供する。シェル内面は、中心軸に対して垂直に中心軸を横切って延在するシェル内径も提供する。
【0008】
導電性構成要素は、絶縁体本体領域の一部を取り囲み、中間上端から中間点火端部まで長手方向に延在する中間部分も含む。たとえば、中間部分は、絶縁体をシェルにろう付けする金属の層であってもよい。中間部分は、中心軸の方に面し、絶縁体外面に沿って中間上端から中間点火端部まで長手方向に延在する中間内面を含む。中間内面は、中心軸に対して垂直に中心軸を横切って延在する導電内径を提供し、導電内径は、下方レッジと絶縁体ノーズ端部との間に位置する絶縁体の一部に沿った絶縁体外径未満である。中間部分は、絶縁体上端と下方レッジとの間に配設される。
【0009】
本発明の別の局面は、コロナ点火器を形成する方法を提供する。当該方法は、中間部分を絶縁体上端と下方レッジとの間に配設するステップと、導電性材料で形成されたシェルを中間部分および絶縁体の周囲に配設するステップとを備える。
【0010】
本発明のコロナ点火器は、導電内径が絶縁体ノーズ領域に隣接した絶縁体外径未満であるので、非常に優れた電気的性能を提供する。また、当該コロナ点火装置は、逆方向組み立てされることができる。
【0011】
本発明の他の利点は、添付の図面に関連付けて検討したときに以下の詳細な説明を参照することによってよりよく理解されるので、容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の1つの例示的な実施形態に係る順方向組み立て方法を使用して製造されたコロナ点火器の断面図である。
【
図1A】中間部分、絶縁体ノーズ領域、および絶縁体本体領域の一部を示す、
図1のコロナ点火器の一部の拡大図である。
【
図2】本発明の他の例示的な実施形態に係るコロナ点火器の断面図である。
【
図3】本発明の他の例示的な実施形態に係るコロナ点火器の断面図である。
【
図4】本発明の他の例示的な実施形態に係るコロナ点火器の断面図である。
【
図5】本発明の他の例示的な実施形態に係るコロナ点火器の断面図である。
【
図6】本発明の他の例示的な実施形態に係るコロナ点火器の断面図である。
【
図7】本発明の他の例示的な実施形態に係るコロナ点火器の断面図である。
【
図8】本発明の他の例示的な実施形態に係るコロナ点火器の断面図である。
【
図9】本発明の他の例示的な実施形態に係るコロナ点火器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
例示的な実施形態の詳細な説明
コロナ点火器20の例示的な実施形態を
図1~
図8に示す。コロナ点火器20は、高い無線周波電圧を受信するための中心電極22を含む。中心電極22は、無線周波電場を放出して、燃料-空気混合物をイオン化し、コロナ放電を提供するためのコロナ促進先端部24を含む。絶縁体26は、中心電極22を取り囲んでいる。絶縁体26は、絶縁体本体領域28と、絶縁体外径D
ioを提供する絶縁体ノーズ領域30とを含む。コロナ点火器20は、導電性構成要素も備え、当該導電性構成要素は、金属シェル34と、導電内径D
cを提供する中間部分36とを含む。絶縁体ノーズ領域30の一部に沿った絶縁体外径D
ioは、導電内径D
cよりも大きい。絶縁体外径D
ioは、金属シェル34から遠ざかって高電圧コロナ促進先端部24に向かう方向に大きくなって、動作中にコロナ点火器20に電気的利点を提供する。
【0014】
コロナ点火器2
0の中心電極22は、導電性材料で形成され、典型的には20~75KVピーク/ピークの範囲内の高い無線周波電圧を受信するためのものである。中心電極22は、典型的には0.9~1.1MHzの範囲内の高い無線周波電場も放出する。中心電極22は、中心軸Aに沿って終端端部38から電極点火端部40まで長手方向に延在している。中心電極22は、典型的には、コロナ促進先端部24、たとえば
図1~
図8に示されるように複数のプロングを含む先端部、を電極点火端部40に含む。
【0015】
コロナ点火器20の絶縁体26は、電気絶縁材料で形成されている。絶縁体26は、中心電極22を取り囲み、中心軸Aに沿って絶縁体上端42から絶縁体ノーズ端部44まで長手方向に延在している。
図1から
図8に示されるように、電極点火端部40は、典型的には、絶縁体ノーズ端部44よりも外側に配設されている。絶縁体内面46は、中心電極22を受ける絶縁体ボアを取り囲んでいる。中心電極22および電気接点49を絶縁体ボア内に留めるために、典型的には導電性シール47が使用される。
【0016】
絶縁体内面46は、中心軸Aに対して垂直に中心軸Aを横切って延在する絶縁体内径Diiも提供する。絶縁体26は、絶縁体上端42から絶縁体ノーズ端部44まで延在する絶縁体外面50を含む。絶縁体外面50は、中心軸Aに対して垂直に中心軸Aを横切って延在する絶縁体外径Dioも提供する。絶縁体内径Diiは、好ましくは、絶縁体外径Dioの15~25%である。
【0017】
図1に示されるように、絶縁体26は、絶縁体本体領域28と、絶縁体ノーズ領域30とを含む。絶縁体外面50は、中心軸Aから離れて外向きに、中心軸Aに対して横方向に延在する下方レッジ52を絶縁体本体領域28と絶縁体ノーズ領域30との間に含む。下方レッジ52は、絶縁体外径D
ioの増大を示す。絶縁体本体領域28および絶縁体ノーズ領域30は、それらの間に下方レッジ52が配設されていれば、図面に示されている設計および寸法以外のさまざまな異なる設計および寸法を有してもよい。
【0018】
図面に示されるように、コロナ点火器20の導電性構成要素は、絶縁体ノーズ領域30が導電性構成要素よりも外側に延在するように絶縁体本体領域28の少なくとも一部を取り囲んでいる。導電性構成要素は、両方とも導電性金属で形成されたシェル34と中間部分36とを含む。シェル34および中間部分36は、同じ導電性材料で形成されてもよく、または異なる導電性材料で形成されてもよい。
【0019】
シェル34は、典型的には、鋼鉄などの金属材料で形成されており、絶縁体本体領域28の少なくとも一部を取り囲んでいる。シェル34は、中心軸Aに沿ってシェル上端54からシェル点火端部56まで延在している。シェル34は、中心軸Aの方に面し、絶縁体外面50に沿ってシェル上端54からシェル点火端部56まで延在するシェル内面58を提供する。シェル34は、シェル内面58とは反対の方に面し、シェル外径Dsoを提供するシェル外面60も含む。シェル内面58は、中心軸Aを取り囲むシェルボアであり、中心軸Aに対して垂直に中心軸Aを横切って延在するシェル内径Dsiを提供する。シェル内径Dsiは、典型的には、絶縁体26の全長lに沿って絶縁体上端42から絶縁体ノーズ端部44まで絶縁体外径Dio以上であるため、コロナ点火器20を順方向組み立てすることができる。絶縁体26の長さは、本体領域28とノーズ領域30とを両方とも含む。「順方向組み立て」という用語は、シェル点火端部56からではなくシェル上端54から絶縁体ノーズ端部44をシェルボアに挿入できることを意味する。しかし、代替実施形態では、シェル内径Dsiは、絶縁体26の長さlの一部に沿って絶縁体上端42から絶縁体ノーズ端部44まで絶縁体外径Dio以下であり、コロナ点火器20は逆方向組み立てされる。「逆方向組み立て」という用語は、シェル点火端部56から絶縁体上端42をシェルボアに挿入することを意味する。
【0020】
コロナ点火器20の中間部分36は、シェル34よりも内側に配設され、絶縁体本体領域28の一部を取り囲んでいる。中間部分36は、絶縁体本体領域28に沿って絶縁体ノーズ領域30の真上に配設されている。それは、中間上端64から中間点火端部66まで長手方向に延在している。中間部分36は、絶縁体外面50にしっかりと取り付けられている。好ましくは、中間内面68は、絶縁体外面50に密閉封止されて、軸方向継ぎ目を閉じ、燃焼機関内でのコロナ点火器20の使用中にガス漏れを回避する。
【0021】
中間部分36は、典型的には、ニッケル、コバルト、鉄、銅、スズ、亜鉛、銀および金のうちの1つ以上を含む金属または金属合金で形成されている。当該金属または金属合金は、絶縁体外面50上の所定の位置に鋳造され得る。代替的に、中間部分36は、ガラスまたはセラミックベースであってもよく、上記の金属または金属合金のうちの1つ以上を添加することによって導電性にされてもよい。ガラスまたはセラミックベースの中間部分36は、絶縁体外面50上の所定の位置に直接形成され焼結され得る。また、中間部分36は、はんだ付け、ろう付け、拡散接合、高温接着剤または別の方法によって絶縁体外面50の所定の位置に取り付けられた金属リングとして設けられてもよい。また、中間部分36は、好ましくははんだ付け、ろう付け、溶接、締まり嵌めおよび熱収縮嵌めを含む任意の好適な方法によってシェル内面58に取り付けられる。中間部分36を形成するために使用される材料は、好ましくは適合可能であり、動作中に発生する応力を、絶縁体26に伝えることなく吸収することができる。
【0022】
別の実施形態では、中間部分36は、絶縁体26をシェル34にろう付けする。この実施形態では、中間部分36は、ニッケル、コバルト、鉄、銅、スズ、亜鉛、銀および金のうちの1つ以上を含む金属の薄層である。金属は、液体の形態で提供され、絶縁体26とシェル34との間を流れ、次いで凝固して絶縁体26をシェル34にろう付けする。金属の層は、絶縁体26をシェル34に配設する前または後に適用されてもよい。また、中間部分36は、順方向組み立て点火器20または逆方向組み立て点火器20のいずれにおいても絶縁体26をシェル34にろう付けするために使用することができる。
【0023】
1つの例示的な実施形態では、中間部分36は、金属の固体片、具体的には絶縁体26の周囲に配設された銀(Ag)および/または銅(Cu)合金からなる固体リング、から形成される。次に、シェル34が絶縁体26の周囲に配設され、アセンブリが加熱され、そのときに、ろう付け部と称される固体リングが液体になって、毛細管現象によって「ろう付け領域」と称される領域に運ばれる。部分が冷えると、液体合金は凝固して、絶縁体26およびシェル34にろう付けされた中間部分36を提供する。合金が凝固した後と部分が冷えるときとの間の構成要素の収縮の差により、このプロセスはセラミック絶縁体26を圧縮状態にする。動作中、エンジン温度は、中間部分36を形成するために使用されるろう付け用合金の融点に達しないため、ろう付け用合金は、エンジン動作中は固体のままである。代替的に、中間部分36は、上記のろう付けプロセスを使用して、固体リングよりも低い融点を有する別の金属などの別の金属材料によって固体リングを絶縁体26およびシェル34にろう付けすることによって形成されてもよい。
【0024】
中間部分36の中間内面68は、中心軸Aの方に面し、絶縁体外面50に沿って中間上端64から中間点火端部66まで長手方向に延在している。中間部分36は、中間内面68とは反対の方に面し、中間上端64から中間点火端部66まで長手方向に延在する中間外面70も含む。中間外径D
intは、典型的には
図1~
図7に示されるようにシェル外径D
so以下であるが、
図8に示されるようにシェル内径D
siよりも大きくてもよい。中間内面68は、中心軸Aに対して垂直に中心軸Aを横切って延在する導電内径D
cを提供する。導電内径D
cは、絶縁体ノーズ領域30と絶縁体本体領域28との間である絶縁体26の下方レッジ52においては絶縁体外径D
io未満である。また、絶縁体26は、シェル点火端部56に隣接して大きくなり、中間点火端部66に隣接して大きくなる厚みt
iも提供する。絶縁体厚みt
iは、電極点火端部40に向かう方向に大きくなっている。この特徴は、順方向組み立て方法の使用を依然として可能にしながら、先行技術の逆方向組み立て点火器で達成される電気的利点を提供する。導電内径D
cは、典型的には、下方レッジ52の真下では絶縁体外径D
ioの80~90%である。
【0025】
導電内径D
cは、典型的には、中間部分36に沿ってシェル内径D
siの75~90%に等しい。
図1~
図8に示されるように、中間点火端部66は、好ましくは絶縁体26の下方レッジ52と係合し、シェル点火端部56と長手方向に整列されている。また、
図1~
図8に示されるように、絶縁体外径D
ioは、典型的には、下方レッジ52から絶縁体ノーズ領域30に沿って絶縁体ノーズ端部44までテーパ状になっている。
【0026】
コロナ点火器20の例示的な実施形態は、さまざまな異なる特徴を含んでもよい。
図1~
図3および
図5~
図8の例示的な実施形態では、絶縁体本体領域28の絶縁体外面50は、上方レッジ72を提供し、上方レッジ72は、上方レッジ72および下方レッジ52がそれらの間に凹部74を提供するように中心軸Aに向かって内向きに延在している。凹部74には中間部分36が配設され、中間部分36は、典型的には、凹部74の全長に沿って延在している。好ましくは、中間上端64は、上方レッジ72と係合し、中間点火端部66は、下方レッジ52と係合して、組み立て中および動作時の中間部分36の動きを制限する。凹部74および中間部分36の長さは、変動し得る。たとえば、
図1、
図3および
図6~
図8に示されるように、凹部74および中間部分36の長さは、絶縁体26の長さ1の4分の1未満に沿って延在していてもよい。代替的に、
図2および
図4に示されるように、凹部74および中間部分36の長さは、絶縁体26の長さ1の4分の1よりも長い長さに沿って延在していてもよい。
図2および
図4に示されるように中間部分36の長さを延長することにより、熱的性能が向上し、アセンブリ内のいかなる小さな空隙も除去され、電気的性能が向上する。
【0027】
図1~
図5および
図8の例示的な実施形態では、コロナ点火器20のシェル内面58は、シェル上端54に隣接する絶縁体外面50から離れて延在し、シェル内面58と絶縁体外面50との間に隙間76を提供する。充填材材料88が、シェル上端54に隣接した絶縁体外面50とシェル内面58との間の隙間76を少なくとも部分的に充填する。充填材材料88は、典型的には、絶縁体26をシェル34に取り付ける接着剤であり、中間部分36における継ぎ目が破損した場合に絶縁体26が燃焼室に進入することを防止する。充填材材料88は、電気的および熱的性能を向上させ、安定性を向上させることもできる。充填材材料88は、セラミック含有接着剤、シリコーン、またはエポキシ系充填材、PTFE、印刷可能なキャリア、塗装可能なキャリア、または混合粉末などのように電気絶縁性であってもよい。代替的に、充填材材料88は、導電性材料、はんだまたはろう付け材を含む金属含有エポキシ、印刷可能なキャリア、または塗装可能なキャリアなどのように導電性であってもよい。充填材材料88が十分な接着力、機械的強度および熱的性能を提供する場合には、中間部分36を絶縁体26にしっかりと取り付けるステップを省略することができる。中間部分36は、従来どおりシェル34に取り付けられ、絶縁体26を係留式にする。この実施形態では、充填材材料88は、中間部分36に沿った継ぎ目の代わりに気密シールを提供することができる。しかし、中間内面68は、依然として絶縁体外面50に対して、またはレッジ52,72および凹部74に対して密接に嵌まり、動作中の構成要素の起こり得る動きを制限する。
【0028】
図1および
図8の例示的な実施形態では、絶縁体外径D
ioは、上方レッジ72から絶縁体本体領域28の一部に沿って絶縁体上端42に向かって一定であり、そして、絶縁体本体領域28の一部に沿って絶縁体上端42に向かって徐々に大きくなっている。絶縁体外径D
ioは、徐々に大きくなっている部分から絶縁体上端42まで一定である。徐々に大きくなっている部分は、正確な組み立てを実現するのに役立ち、上方本体領域を支持し、熱的性能を向上させ、中間部分36に沿った継ぎ目が破損した場合に絶縁体26が燃焼室に進入することを防止する。徐々に大きくなっている部分に沿った絶縁体26とシェル34との間に共形要素78が設置され得る。共形要素78は、典型的には、銅もしくは焼きなまし鋼、またはプラスチックもしくはゴム材料からなる軟金属ガスケットで形成される。
図1および
図8の例示的な実施形態では、隙間76は、段階的遷移部から絶縁体上端42に向かって延在している。
【0029】
図2の例示的な実施形態では、絶縁体外径D
ioは、上方レッジ72から絶縁体上端42に向かって徐々に大きくなり、徐々に大きくなっている部分から絶縁体上端42まで一定である。この実施形態でも、隙間76は、徐々に大きくなっている部分から絶縁体上端42に向かって延在している。
【0030】
図3の例示的な実施形態では、絶縁体外径D
ioは、上方レッジ72から絶縁体上端42まで一定である。これにより、動作中に絶縁体26を引っ張り状態にすることを回避することが容易になる。この実施形態では、コロナ点火器20は、順方向組み立てされてもよく、または逆方向組み立てされてもよい。しかし、他のシステム構成要素(図示せず)と適切に接続するために隙間76に沿ってまたは隙間76の上方で絶縁体外径D
ioを大きくすることが望ましいであろう。代替的に、隙間76に沿ってまたは隙間76の上方で絶縁体外径D
ioを大きくするために別の構成要素(図示せず)を追加してもよい。
【0031】
図4は、隙間76が中間上端64からシェル上端54まで延在するさらに別の例示的な実施形態を示す。この実施形態では、絶縁体外径D
ioは、下方レッジ52から絶縁体上端42まで一定である。
図5の例示的な実施形態では、絶縁体外径D
ioは、下方レッジ52と絶縁体上端42との間の絶縁体本体領域28に沿って、中間上端64の上方でわずかに小さくなっている。
【0032】
図6および
図7は、絶縁体外径D
ioが上方レッジ72から逆転領域(ターンオーバ領域)まで一定である他の例示的な実施形態を示す。絶縁体26の直径は、逆転領域において大きくなり、そして小さくなって、シェル上端54を支持してシェル上端54と係合するための逆転肩部82を提供する。そして、絶縁体外径D
ioは、逆転肩部82から絶縁体上端42まで一定である。これらの実施形態では、シェル上端54は、逆転肩部82において絶縁体外面50と向きを逆転して絶縁体外面50と係合し、絶縁体26をシェル34内に係留した状態にする。これにより、絶縁体26は圧縮状態になり、中間上端64および中間点火端部66に沿って中間部分36と絶縁体26との間に気密シールを形成することができる。気密シールが実現される場合、中間部分36を絶縁体26およびシェル34にろう付けするまたはその他の態様で取り付けるステップは、省略されてもよい。
【0033】
図6の例示的な実施形態では、中間内面68は、中心軸Aに対して垂直に中心軸Aを横切って延在する導電内径D
cを提供し、導電内径D
cは、絶縁体26の下方レッジ52の真下では絶縁体外径D
io未満である。他の実施形態と同様に、中間点火端部66は、絶縁体26の下方レッジ52と係合する。しかし、この実施形態では、中間外面70は、中間上端64と中間点火端部66との間に中間シート84を含み、中間外径D
intは、中間点火端部66に向かって中間シート84に沿って小さくなっている。また、シェル内面58は、中間外面70に向かって延在するシェルシート86を提供する。シェルシート86は、中間シート84と平行に整列され、中間シート84と係合する。また、シェル34は、シェル内面58からシェル外面60まで延在する厚みt
sを有し、厚みt
sは、シェルシート86において大きくなっている。
【0034】
図7の例示的な実施形態では、シェル34は、再び、絶縁体26の上方レッジ72に対向するシェルシート86を含む。シェル内径D
siは、シェル点火端部56に向かってシェルシート86に沿って小さくなっている。シェルシート86と絶縁体26の上方レッジ72との間にはガスケット80が配設され、ガスケット80は、シェルシート86および絶縁体26の上方レッジ72を分離する。ガスケット80は、絶縁体外面50とシェルシート86との間で圧縮されて、シールを提供する。この実施形態では、中間部分36は、ガス圧に対して封止したり絶縁体26を保持したりする必要がなく、組み立て中にシェル34にプレスフィットされてもよい。この実施形態では、上方レッジ72における絶縁体外径D
ioは、下方レッジ52における絶縁体外径D
ioよりも大きい。
図6の実施形態のように、シェル34の厚みt
sは、シェルシート86において大きくなっている。
【0035】
図8の例示的な実施形態では、中間上端64における中間外径D
intは、絶縁体26の上方レッジ72の絶縁体外径D
ioよりも大きい。中間上端64は、絶縁体外面50に対して径方向外向きに延在し、中間上端64上にシェル点火端部56が配設されている。この実施形態では、中間上端64から中間点火端部66までの導電内径D
cは、一定であり、中間外径D
intは、中間上端64から中間点火端部66までテーパ状になっている。
【0036】
本発明の別の局面は、コロナ点火器20を形成する方法を提供する。当該方法は、順方向組み立て方法であってもよく、逆方向組み立て方法のようにシェル点火端部56ではなく、シェル上端54から絶縁体ノーズ端部44をシェルボアに挿入するステップを含む。しかし、当該方法は、代替的に、逆方向組み立て方法を備えてもよく、シェル内径Dsiは、絶縁体26の一部に沿って絶縁体外径Dio以下であり、当該方法は、シェル点火端部56から絶縁体ノーズ端部44をシェルボアに挿入するステップを含む。
【0037】
コロナ点火器20を形成する方法は、組み立て中に、または動作中の熱膨張差により、絶縁体26が引っ張り状態にならないように力および材料温度を制御することを含む。
【0038】
当該方法は、電気絶縁材料で形成され、中心軸Aに沿って絶縁体上端42から絶縁体ノーズ端部44まで延在する絶縁体26を設けるステップを含む。絶縁体26は、絶縁体上端42から絶縁体ノーズ端部44まで延在する絶縁体外面50を含む。絶縁体外面50は、絶縁体外径Dioを提供し、中心軸Aから離れて外向きに、中心軸Aに対して横方向に延在する下方レッジ52を絶縁体本体領域28と絶縁体ノーズ領域30との間に含む。
【0039】
当該方法は、導電性材料で形成された中間部分36を絶縁体26の下方レッジ52上に配設するステップも含む。このステップは、典型的には、絶縁体26をシェル34に挿入するステップの前に行われる。しかし、
図8のコロナ点火器20のように中間外径D
intがシェル内径D
siよりも大きい場合、絶縁体26をシェル34に挿入するステップの後に中間部分36が下方レッジ52上に配設される。
【0040】
当該方法は、典型的には絶縁体26をシェル34に挿入するステップの前に中間部分36を絶縁体外面50にしっかりと取り付けるステップも含む。取り付けるステップは、典型的には、鋳造、焼結、ろう付け、はんだ付け、拡散接合、または中間部分36と絶縁体外面50との間に高温接着剤を適用することを含む。中間部分36が金属または金属合金である場合、取り付けるステップは、典型的には、鋳造を含む。中間部分36がガラスまたはセラミックベースである場合、取り付けるステップは、典型的には、絶縁体外面50の周囲の所定の位置に直接形成および焼結することを含む。中間部分36が金属リングである場合、取り付けるステップは、典型的には、はんだ付け、拡散接合、または中間部分36と絶縁体外面50との間に高温接着剤を適用することを含む。当該方法は、典型的には、中間部分36を絶縁体26に密閉封止して、軸方向継ぎ目を閉じてコロナ点火器20の使用中のガス漏れを回避するステップを含む。
【0041】
当該方法は、導電性材料で形成され、中心軸Aに沿って中心軸Aの周囲にシェル上端54からシェル点火端部56まで延在するシェル34を設けるステップも含む。シェル34は、シェル上端54からシェル点火端部56まで延在するシェル内面58を含み、シェル内面58は、中心軸Aに沿って延在するシェルボアを提供する。各々の例示的な実施形態では、シェル内径Dsiは、絶縁体外径Dio以上である。
【0042】
当該方法は、次に、順方向組み立て方向に絶縁体26をシェル34に挿入するステップを含む。このステップは、典型的には、中間部分36を絶縁体26に取り付けるステップの後に行われるが、前に行われてもよい。このステップは、シェル上端54から絶縁体ノーズ端部44をシェルボアに挿入するステップを含む。絶縁体ノーズ端部44がシェル点火端部56よりも外側に延在するまで、絶縁体26をシェル内面58に沿って移動させるべきである。
図1~
図7の例示的な実施形態を製造するために、このステップは、シェル点火端部56を絶縁体26の下方レッジ52および中間点火端部66と整列させるステップを含む。
図8の例示的な実施形態を製造するために、当該方法は、絶縁体26をシェル34に挿入するステップに続いて、中間上端64がシェル点火端部56と係合するように中間部分36を絶縁体外面50に沿って配設するステップを含む。
【0043】
当該方法は、絶縁体26とシェル上端54との間の隙間76に充填材材料88を配設するステップも含んでもよい。このステップは、隙間76の少なくとも一部を充填材材料88で充填するステップを含んでもよい。代替的に、充填材材料88は、絶縁体26をシェル34に挿入するステップの前に絶縁体外面50およびシェル内面58の両方に適用されてもよく、その結果、絶縁体26およびシェル34が接続されると、充填材材料88は隙間76を少なくとも部分的に充填する。充填材材料88が気密シールを提供する場合、中間部分36を絶縁体26にしっかりと取り付けるステップを省略することができる。
【0044】
明らかに、上記の教示に鑑みて、本発明の多くの変形例および変更例が可能であり、添付の特許請求の範囲の範囲内であれば、具体的に記載されている態様とは異なる態様で実施されてもよい。全ての請求項および全ての実施形態の全ての特徴は、互いに矛盾しない限り互いに組み合わせられてもよいと考えられる。