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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】低出力電圧を有するバッテリー
(51)【国際特許分類】
   H01M 6/16 20060101AFI20220610BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20220610BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20220610BHJP
   H01M 6/04 20060101ALI20220610BHJP
   H01M 6/18 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
H01M6/16 Z
H01M4/62 Z
H01M4/66 A
H01M6/04
H01M6/16 A
H01M6/18 A
H01M6/18 E
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2019521062
(86)(22)【出願日】2017-09-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 US2017054231
(87)【国際公開番号】W WO2018075219
(87)【国際公開日】2018-04-26
【審査請求日】2020-08-05
(31)【優先権主張番号】15/297,877
(32)【優先日】2016-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518190776
【氏名又は名称】ナノテク インストゥルメンツ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Nanotek Instruments,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ス,ユ-シェン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ミンジ
(72)【発明者】
【氏名】ヘ,フイ
(72)【発明者】
【氏名】ファン,チン
(72)【発明者】
【氏名】ツァーム,アルナ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ボア ゼット.
【審査官】藤原 敬士
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-030272(JP,A)
【文献】特表平08-507637(JP,A)
【文献】特表2010-509725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 6/16 - 6/18
H01M 4/62
H01M 4/66
H01M 6/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次アノード活物質を有するアノードと、一次カソード活物質を有するカソードと、前記アノードおよび前記カソードとイオン接触しているイオン伝導性電解質とを含む電気化学バッテリーセルにおいて、前記セルが、10%の放電深度(DoD)で測定された、0.3ボルトの下限から0.8ボルトの上限までの初期出力電圧Vi、および90%以下のDoDで測定された最終出力電圧Vfを有し、電圧変動(Vi-Vf)/Viが±10%以下であり、ViとVfとの間の比容量がカソード活物質の重量または体積に基づいて100mAh/gまたは200mAh/cm以上であり、前記一次アノード活物質がリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、バナジウム(V)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、それらの混合物、それらの合金、またはそれらの組合せから選択され、前記一次カソード活物質が金属酸化物、金属リン酸塩、金属硫化物、または前記一次アノード活物質と異なる金属または半金属から選択され、前記カソード内の前記金属または半金属がスズ(Sn)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、インジウム(In)、テルル(Te)、リン(P)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、バナジウム(V)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、セレン(Se)、それらの混合物、それらの合金、またはそれらの組合せから選択され、前記アノードがグラフェンを保護材料としてさらに含有することを特徴とする電気化学バッテリーセル。
【請求項2】
請求項に記載の電気化学バッテリーセルにおいて、前記一次アノード活物質がグラフェンシートによって取り囲まれるかまたはグラフェンフィルム、グラフェン紙、グラフェンマット、またはグラフェンフォームに埋め込まれることを特徴とする電気化学バッテリーセル。
【請求項3】
請求項に記載の電気化学バッテリーセルにおいて、前記グラフェンが、非炭素元素0.01重量%未満を有する純粋なグラフェン材料または非炭素元素0.01重量%~50重量%を有する非純粋なグラフェン材料を含有し、前記非純粋なグラフェンが、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、フッ化グラフェン、塩化グラフェン、臭化グラフェン、ヨウ化グラフェン、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、ホウ素ドープトグラフェン、化学官能化グラフェン、またはそれらの組合せから選択されることを特徴とする電気化学バッテリーセル。
【請求項4】
請求項1に記載の電気化学バッテリーセルにおいて、前記一次カソード活物質がグラフェンシートによって取り囲まれるかまたはグラフェンフィルム、グラフェン紙、グラフェンマット、またはグラフェンフォームに埋め込まれることを特徴とする電気化学バッテリーセル。
【請求項5】
請求項に記載の電気化学バッテリーセルにおいて、前記一次カソード活物質がグラフェンシートによって取り囲まれるかまたはグラフェンフィルム、グラフェン紙、グラフェンマット、またはグラフェンフォームに埋め込まれることを特徴とする電気化学バッテリーセル。
【請求項6】
請求項に記載の電気化学バッテリーセルにおいて、前記一次アノード活物質がその中に埋め込まれている、前記アノード内の前記グラフェンフィルム、グラフェン紙、グラフェンマット、またはグラフェンフォームが第1のバッテリー端子タブに接続されてアノード集電体として機能し、前記グラフェンフィルム、グラフェン紙、グラフェンマット、またはグラフェンフォームを支持する別個のまたは付加的なアノード集電体がないことを特徴とする電気化学バッテリーセル。
【請求項7】
請求項に記載の電気化学バッテリーセルにおいて、前記一次カソード活物質がその中に埋め込まれている、前記カソード内の前記グラフェンフィルム、グラフェン紙、グラフェンマット、またはグラフェンフォームがバッテリー端子タブに接続されてカソード集電体として機能し、前記グラフェンフィルム、グラフェン紙、グラフェンマット、またはグラフェンフォームを支持する別個のまたは付加的なカソード集電体がないことを特徴とする電気化学バッテリーセル。
【請求項8】
前記アノードを支持するアノード集電体または前記カソードを支持するカソード集電体をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の電気化学バッテリーセル。
【請求項9】
請求項1に記載の電気化学バッテリーセルにおいて、ViとVfとの間の前記比容量が前記カソード活物質の重量または体積に基づいて200mAh/gまたは400mAh/cm以上であることを特徴とする電気化学バッテリーセル。
【請求項10】
請求項1に記載の電気化学バッテリーセルにおいて、ViとVfとの間の前記比容量が前記カソード活物質の重量または体積に基づいて400mAh/gまたは800mAh/cm以上であることを特徴とする電気化学バッテリーセル。
【請求項11】
請求項1に記載の電気化学バッテリーセルにおいて、ViとVfとの間の前記比容量が前記カソード活物質の重量または体積に基づいて1,000mAh/gまたは2,000mAh/cm以上であることを特徴とする電気化学バッテリーセル。
【請求項12】
請求項1に記載の電気化学バッテリーセルにおいて、前記一次アノード活物質がMgまたはAlであり、前記一次カソード活物質が硫黄(S)、SとSeとの混合物、またはグラフェン表面に接合した硫黄であり、前記電解質が水性、有機、ポリマー、または固体状態電解質から選択されることを特徴とする電気化学バッテリーセル。
【請求項13】
請求項1に記載の電気化学バッテリーセルにおいて、前記金属酸化物、金属リン酸塩、または金属硫化物が、酸化スズ、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化マンガン、酸化バナジウム、リン酸鉄、リン酸マンガン、リン酸バナジウム、遷移金属硫化物、またはそれらの組合せから選択されることを特徴とする電気化学バッテリーセル。
【請求項14】
一次アノード活物質を有するアノードと、一次カソード活物質を有するカソードと、前記アノードおよび前記カソードとイオン接触しているイオン伝導性電解質とを含む電気化学バッテリーセルにおいて、前記セルが、10%の放電深度(DoD)で測定された、0.3ボルトの下限から0.8ボルトの上限までの初期出力電圧、および90%以下のDoDで測定された最終出力電圧Vfを有し、電圧変動(Vi-Vf)/Viが±10%以下であり、ViとVfとの間の比容量がカソード活物質の重量または体積に基づいて100mAh/gまたは200mAh/cm以上であり、前記一次アノード活物質が、マグネシウム(Mg)またはアルミニウム(Al)、それらの混合物、それらの合金、またはそれらの組合せから選択され、前記一次カソード活物質が、金属酸化物、金属リン酸塩、金属硫化物、無機材料、または前記一次アノード活物質と異なる金属または半金属から選択され、前記カソード内の前記金属または半金属が、スズ(Sn)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、インジウム(In)、テルル(Te)、リン(P)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、バナジウム(V)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、硫黄(S)、セレン(Se)、それらの混合物、それらの合金、またはそれらの組合せから選択され、さらに、前記電解質が水性、有機、ポリマー、または固体状態電解質から選択され、イオン性電解質を含まないことを特徴とする電気化学バッテリーセル。
【請求項15】
請求項14に記載の電気化学バッテリーセルにおいて、前記無機材料が、炭素硫黄、硫黄化合物、多硫化リチウム、遷移金属ジカルコゲン化物、遷移金属トリカルコゲン化合物、またはそれらの組合せから選択されることを特徴とする電気化学バッテリーセル。
【請求項16】
請求項1に記載の電気化学バッテリーセルにおいて、前記カソードが、前記一次カソード活物質に対する電気化学特性改良剤としてグラフェンをさらに含有し、前記グラフェンがセルの比容量を増加させるかまたはセルの出力電圧を増加または減少させることを特徴とする電気化学バッテリーセル。
【請求項17】
請求項14に記載の電気化学バッテリーセルにおいて、前記カソードが、前記一次カソード活物質に対する電気化学特性改良剤としてグラフェンをさらに含有し、前記グラフェンがセルの比容量を増加させるかまたはセルの出力電圧を増加または減少させることを特徴とする電気化学バッテリーセル。
【請求項18】
請求項16に記載の電気化学バッテリーセルにおいて、前記一次カソード活物質が前記グラフェンの表面に接合されるかまたはそれによって物理的に支持されることを特徴とする電気化学バッテリーセル。
【請求項19】
請求項16に記載の電気化学バッテリーセルにおいて、前記グラフェンが、非炭素元素0.01重量%未満を有する純粋なグラフェン材料または非炭素元素0.01重量%~50重量%を有する非純粋なグラフェン材料を含有し、前記非純粋なグラフェンが、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、フッ化グラフェン、塩化グラフェン、臭化グラフェン、ヨウ化グラフェン、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、ホウ素ドープトグラフェン、化学官能化グラフェン、またはそれらの組合せから選択されることを特徴とする電気化学バッテリーセル。
【請求項20】
請求項1に記載の電気化学バッテリーセルにおいて、前記電圧変動(Vi-Vf)/Viが±5%以下であることを特徴とする電気化学バッテリーセル。
【請求項21】
電源として請求項1に記載の電気化学バッテリーセルを備えることを特徴とする電子デバイス。
【請求項22】
前記電気化学バッテリーセルに電子的に接続されるセンサー、アクチュエーター、無線デバイス、ウェアラブルデバイス、または医療デバイスを備えることを特徴とする請求項21に記載の電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2016年10月19日に出願された米国特許出願第15/297,877号明細書の優先権を主張する。
【0002】
本発明は一般的に、電気化学バッテリーの分野に関し、より詳しくは、電圧調整器(例えば電圧降下器または変圧器)を使用せずに0.3ボルト~0.8ボルトの出力電圧を有する外部回路を自然に供給するバッテリーに関する。
【背景技術】
【0003】
健康管理および人工知能用途のための「モノのインターネット」および次世代センサー技術の出現は、再充電せずに何十年も持ちこたえ、特に、バッテリーを取り替えずに無線、ウェアラブル、または埋め込みデバイスをメンテナンスフリーにすることができるバッテリーの利用可能性を要する。
【0004】
例としてセンサーを使用して、超低電力モニタリングセンサーは電圧降下器を使用せずに0.3~0.8Vの間で動作することができる低電圧電源を必要とするということが確認されている。より低い動作電圧は、より低い電力消費量率を意味する。電圧降下器(例えば変圧器)の使用は、付加的な電力損を意味し、避けられなければならない。しかしながら、リチウムイオン(3.7V)、鉛酸(2V)、亜鉛-炭素/アルカリ(1.5V)、亜鉛-空気(1.4V)、およびニッケル-金属(1.2V)などの市販のバッテリーシステムは全て、電圧不整合があり、それらは動作電圧を0.8ボルト未満にするための電圧降下回路を必要とする。さらに、これらのバッテリーの大部分は、最後まで機能するためのエネルギー密度が不十分である。さらに、遠隔無線センサーのサイズは多くの場合ごく小さいので、バッテリーの体積エネルギー密度はセンサーデバイスのために特に重要である。
【0005】
したがって、0.3ボルト~0.8ボルトの電圧範囲内で動作し、電圧降下回路を使用せずに電力を無線、ウェアラブル、または埋め込みデバイスに供給する長持ちする一次バッテリーの必要に迫られている。好ましくは、このようなバッテリーシステムはまた、様々なデバイスの電力設計の要求に応えて出力電圧を調節する際の柔軟性を可能にするのがよい。
【発明の概要】
【0006】
前述の要件を満たす電気化学バッテリーセルが本明細書において報告される。バッテリーセルは、
(A)一次アノード活物質を有するアノード、
(B)一次カソード活物質を有するカソード、および
(C)アノードおよびカソードとイオン接触しているイオン伝導性電解質を含み、
そこでセルが、10%の放電深度(DoD)で測定された、0.3ボルトの下限から0.8ボルトの上限までの初期出力電圧Vi、および90%以下のDoDで測定された最終出力電圧Vfを有し、電圧変動(Vi-Vf)/Viが±10%以下(好ましくは±5%以下)であり、ViとVfとの間の比容量がカソード活物質の重量または体積に基づいて100mAh/gまたは200mAh/cm以上であり、アノードが、一次アノード活物質としてリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、バナジウム(V)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、それらの混合物、それらの合金、またはそれらの組合せを含有する。好ましいアノード活物質はLi、Na、Mg、Alおよびそれらの合金または混合物である。
【0007】
放電深度(DoD)はバッテリーの技術分野に公知の用語である。簡単にいえば、DoDは、セル重量、アノード活物質重量、またはカソード活物質重量を用いて、バッテリーセルが提供することができる最大放電量に対する実際の放電量(mAh/gまたはmAh/cmを用いる、比容量)の比である。例えば、(Mに整合させる十分な量を有する、アノード活物質として)Liに対する(カソード活物質として)金属MがM1グラム当たりLiイオン1000mAhまで貯蔵することができ、このLi/Mセルが900mAh/gまで放電させることができるにすぎない場合、900mAh/gのこの比容量は、900/1,000=90%のDoDに相当する。
【0008】
10%の放電深度(DoD)で測定されるとき、バッテリーセルは、0.3ボルト~0.8ボルト、好ましくは0.3ボルト~0.7ボルトの初期出力電圧Viを与えなければならない。また、バッテリーセルは90%以下のDoDで測定された最終出力電圧Vfを与え、ViとVfとの間の比容量は好ましくは、カソード活物質の重量または体積に基づいて100mAh/gまたは200mAh/cm以上である。好ましくは、Viと選択されたVfとの間の電圧変動(Vi-Vf)/Viが±10%以下(さらに好ましくは±5%以下)である。バッテリー設計者または電子デバイス設計者は10%~90%のDoDでVfを自由に選択するが、ViとVfとの間のバッテリーセルによって与えられる比容量は好ましくは、カソード活物質の重量または体積に基づいて100mAh/gまたは200mAh/cm以上である。
【0009】
電気化学バッテリーセルは、アノードを支持するアノード集電体および/またはカソードを支持するカソード集電体をさらに含んでもよい。
【0010】
一次カソード活物質は一次アノード活物質と異なる金属、半金属、または非金属元素から選択されてもよく、カソード内の金属、半金属、または非金属元素はスズ(Sn)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、インジウム(In)、テルル(Te)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、バナジウム(V)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、セレン(Se)、硫黄(S)、それらの混合物、それらの合金、またはそれらの組合せから選択される。一次カソード活物質として使用される金属、半金属、または非金属は一次アノード活物質として使用される金属と異なっていなければならず、一次アノード活物質と対にされるとき、0.3ボルト~0.8ボルトの範囲の出力電圧を与えることができなければならない。
【0011】
また、一次カソード活物質は、金属酸化物、金属リン酸塩、または金属硫化物から選択されてもよい。特に、それは酸化スズ、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化マンガン、酸化バナジウム、リン酸鉄、リン酸マンガン、リン酸バナジウム、遷移金属硫化物、またはそれらの組合せから選択されてもよい。
【0012】
特定の実施形態において、一次カソード活物質は、炭素硫黄、硫黄化合物、多硫化リチウム、遷移金属ジカルコゲン化物、遷移金属トリカルコゲン化合物、またはそれらの組合せから選択される無機材料を含有する。
【0013】
電解質は、水性、有機、ポリマー、イオン性液体、疑似固体、または固体状態電解質から選択されてもよい。
【0014】
好ましくは、アノードは、一次アノード活物質を保護する保護材料としてグラフェンをさらに含有する。さらに好ましくは、一次アノード活物質は、グラフェンシートによって取り囲まれるかまたはグラフェンフィルム、グラフェン紙、グラフェンマット、またはグラフェンフォームに埋め込まれる。
【0015】
アノードおよび/またはカソードにおいて使用するためのグラフェン材料は、非炭素元素0.01重量%未満を有する純粋なグラフェン材料または非炭素元素0.01重量%~50重量%を有する非純粋なグラフェン材料を含有してもよく、そこで前記非純粋なグラフェンは、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、フッ化グラフェン、塩化グラフェン、臭化グラフェン、ヨウ化グラフェン、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、ホウ素ドープトグラフェン、窒素ドープトグラフェン、化学官能化グラフェン、またはそれらの組合せから選択される。
【0016】
特定の実施形態において、一次カソード活物質は、グラフェンシートによって取り囲まれるかまたはグラフェンフィルム、グラフェン紙、グラフェンマット、またはグラフェンフォームに埋め込まれる。好ましくは、アノード内の一次アノード活物質は、グラフェンシートによって取り囲まれるかまたはグラフェンフィルム、グラフェン紙、グラフェンマット、またはグラフェンフォームに埋め込まれ、およびカソード内の一次カソード活物質はグラフェンシートによって取り囲まれるかまたはグラフェンフィルム、グラフェン紙、グラフェンマット、またはグラフェンフォームに埋め込まれる。
【0017】
本発明のバッテリーセルにおいて、アノード内のグラフェンフィルム、グラフェン紙、グラフェンマット、またはグラフェンフォーム(一次アノード活物質がその中に埋め込まれている)は第1のバッテリー端子タブに接続され(すなわちグラフェンフィルム、紙、マット、またはフォーム自体がアノード集電体として役立つ)、グラフェンフィルム、グラフェン紙、グラフェンマット、またはグラフェンフォームを支持する別個のまたは付加的なアノード集電体(例えばCu箔)はない。この特徴は、バッテリーの重量および体積を著しく低減することができる。
【0018】
特定の実施形態において、一次カソード活物質がその中に埋め込まれているカソード内のグラフェンフィルム、グラフェン紙、グラフェンマット、またはグラフェンフォームはバッテリー端子タブに接続され(グラフェンフィルム、グラフェン紙、グラフェンマット、またはグラフェンフォーム自体がカソード集電体として作用する)、グラフェンフィルム、グラフェン紙、グラフェンマット、またはグラフェンフォームを支持する別個のまたは付加的なカソード集電体はない。
【0019】
最も好ましくは、(第1の端子タブがそれに接続されている)アノード内のグラフェンフィルム、グラフェン紙、グラフェンマット、またはグラフェンフォームはアノード集電体として役立ち(Cu箔などの付加的なまたは別個のアノード集電体はない)、(第2のバッテリー端子タブがそれに接続されている)カソード内のグラフェンフィルム、グラフェン紙、グラフェンマット、またはグラフェンフォームはカソード集電体として役立ち、カソード内の前記グラフェンフィルム、グラフェン紙、グラフェンマット、またはグラフェンフォームを支持する別個のまたは付加的なカソード集電体(例えばAl箔)はない。この特徴は、バッテリーの重量および体積を著しく低減することができる。
【0020】
さらに、アノードおよびカソードの両方のグラフェンフィルム、グラフェン紙、グラフェンマット、またはグラフェンフォームの可撓性はまた、特殊な形状であり得る無線、ウェアラブル、または埋め込みデバイスにおいて使用するための可撓性バッテリーセルの製造を可能にする。
【0021】
好ましくは、ViとVfとの間の比容量は、カソード活物質の重量または体積に基づいて200mAh/gまたは400mAh/cm以上(より好ましくは300mAh/gまたは600mAh/cm以上およびさらに好ましくは400mAh/gまたは800mAh/cm以上)である。
【0022】
特定の実施形態において、カソードは、一次カソード活物質に対する電気化学特性改良剤としてグラフェンをさらに含有し、付加的なグラフェンは(カソード内に付加的なグラフェンを有さない相当するセルに対して)セルの比容量を増加させ、またはセルの出力電圧を増加または減少させる。好ましくは、一次カソード活物質は、グラフェンの表面に接合されるかまたはそれによって物理的に支持される。グラフェンは、非炭素元素0.01重量%未満を有する純粋なグラフェン材料または非炭素元素0.01重量%~50重量%を有する非純粋なグラフェン材料を含有してもよく、そこで非純粋なグラフェンは、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、フッ化グラフェン、塩化グラフェン、臭化グラフェン、ヨウ化グラフェン、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、ホウ素ドープトグラフェン、窒素ドープトグラフェン、化学官能化グラフェン、またはそれらの組合せから選択される。
【0023】
また、本発明は、電源として本発明の電気化学バッテリーセルを備える電子デバイスを提供する。電子デバイスは、本発明の電気化学バッテリーセルに電子的に接続されるセンサー、無線デバイス、ウェアラブルデバイス、または医療デバイスを備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A図1(A)は、アノード集電体(例えばCu箔)と、アノード層としてLi金属箔のシート(Li金属がアノード活物質である)と、多孔性セパレーターと、導電性充填剤(例えばアセチレンブラック)および樹脂結合剤(例えばPVDF)と混合されたカソード活物質(例えばMoSまたはMnO)の粒子から構成されるカソード活物質層と、カソード集電体(例えばAl箔)とから構成される先行技術のリチウム金属バッテリーセル(例えば一次セル)の略図である。
図1B図1(B)は、アノード集電体(例えばCu箔)と、導電性充填剤(例えばカーボンブラック)および樹脂結合剤(例えばSBR)と混合されたアノード活物質(例えば黒鉛またはSi粒子)の粒子から構成されるアノード層と、多孔性セパレーターと、導電性充填剤および樹脂結合剤(例えばPVDF)と混合されたカソード活物質(例えばLiCoOまたはLiFePO)の粒子から構成されるカソード活物質層と、カソード集電体(例えばAl箔から構成される)とから構成される先行技術のリチウムイオンバッテリーセル(二次または再充電可能セル)の略図である。
図2図2は、純粋なグラフェンフォーム40aまたは酸化グラフェンフォーム40bを製造するための方法と共に、剥離黒鉛製品(可撓性黒鉛箔および膨張黒鉛フレーク)を製造するための様々な先行技術の方法を説明するフローチャートである。
図3図3は、2つの仮想バッテリーセルの放電曲線(一定の電流密度における電圧対DoD曲線、または電圧対時間)を示す例示的な実施例である:セルAは(0%のDoDから100%のDoDまで)1,500mAh/cmの全比容量を有し、セルBは600mAh/cmの比容量を有する。
図4図4は、可能なグラフェンシート間同化機構である。
図5図5は、低電圧Al-Sセルの放電曲線(電圧対DoD)である。
図6図6は、低電圧Li-Pセルおよびグラフェン改質Li-P/グラフェンセルの放電曲線(電圧対DoD)である。
図7図7は、低電圧Li-SnOセルの放電曲線(電圧対DoD)である。
図8図8は、低電圧Na-SnOセルの放電曲線(電圧対DoD)である。
図9図9は、低電圧Li-Sbセルの放電曲線(電圧対DoD)である。
図10図10は、低電圧Na-Sbセルの放電曲線(電圧対DoD)である。
図11図11は、低電圧Li-Feセルの放電曲線(電圧対DoD)である。
図12図12は、低電圧Na-Feセルの放電曲線(電圧対DoD)である。
図13図13は、低電圧Li-Snセルの放電曲線(電圧対DoD)である。
図14図14は、低電圧Li-Mnセルおよびグラフェン改質セル(Li-Mn/グラフェンセル)の放電曲線(電圧対DoD)である。
図15図15は、低電圧Li-Alセルの放電曲線(電圧対DoD)である。
図16図16は、低電圧Li-MoOセルの放電曲線(電圧対DoD)である。
図17図17は、低電圧Li-MoSセルの放電曲線(電圧対DoD)である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1(A)において説明されるように、従来の一次セル構成において、セルは典型的に、アノード集電体(例えばCu箔)と、アノード層としてLi金属箔のシート(Li金属がアノード活物質である)と、多孔性セパレーターと、導電性充填剤(例えばアセチレンブラック)および樹脂結合剤(例えばPVDF)と混合されたカソード活物質(例えばMoSまたはMnO)の粒子から構成されるカソード活物質層と、カソード集電体(例えばAl箔とから構成される。アノード活物質(例えばLi金属)は、銅箔のシートなどのアノード集電体上に直接に堆積される薄いフィルム形態であり得る。
【0026】
しかしながら、本質的に全ての現在の電子デバイス、電動工具、電気車等は1.0ボルトより高いセル電圧で動作するので、このようなリチウム金属バッテリーセルは通常、高い出力電圧(例えば>2.0ボルトおよびより典型的に>3.0ボルト)を与えるように設計される。また、一次または二次バッテリーの他のタイプは典型的に、1.0ボルトより著しく高い出力電圧を提供するように設計され、作られる。例えばリチウムイオン(3.7V)、鉛酸(2V)、アルカリ(1.5V)、亜鉛-空気(1.4V)、およびニッケル-金属水素化物(1.2V)。4.0ボルトより高い電圧で動作するデバイスは、直列に接続される複数のセルの使用を必要とする(例えば12ボルトで動作する電気バイクは、直列に接続される6つの鉛酸バッテリーセルを必要とする)。
【0027】
図1(B)において説明されるように、リチウムイオンバッテリーセル(二次または再充電可能セル)は典型的に、アノード集電体(例えばCu箔)と、アノードまたは陰極と、多孔性セパレーターおよび/または電解質成分と、カソード電極(典型的にカソード活物質、導電性添加剤、および樹脂結合剤を含有する)と、カソード集電体(例えばAl箔から構成される)とから構成される。より一般的に使用されるセル構成において、アノード層は、アノード活物質(例えば黒鉛、Sn、SnO、またはSi)の粒子と、導電性添加剤(例えばカーボンブラック粒子)と、樹脂結合剤(例えばSBRまたはPVDF)とから構成される。
【0028】
アノード内のCu箔およびカソード内のAl箔はそれぞれ、外部回路への接続のための端子タブと付着される(溶接またははんだ付けされる)。しかしながら、これらの集電体は、重量および体積をセルに付加し、セルの有効な質量および体積エネルギー密度を低減する。
【0029】
超低電力モニタリングセンサーは、0.3~0.8Vの範囲の電圧レベルで動作する低電圧電源の利用可能性を必要とする。この電圧レベルは好ましくは、長い動作時間にわたって比較的一定したままである。さらに、無線、ウェアラブル、または埋め込みデバイスの大部分は、できる限りサイズが小さい電源を必要とする。先行技術のバッテリーは、一次と二次のいずれかが、これらの要件を満たさない。
【0030】
これらの問題はここで本発明によって取り扱われる。本発明の一実施形態は、前述の要件を満たす電気化学バッテリーセルである。バッテリーセルは、(A)一次アノード活物質を有するアノードと、(B)一次カソード活物質を有するカソードと、(C)アノードおよびカソードとイオン接触しているイオン伝導性電解質とを含み、そこでセルは、10%の放電深度(DoD)で測定された、0.3ボルトの下限から0.8ボルトの上限までの初期出力電圧Vi、および90%以下のDoDで測定された最終出力電圧Vfを有し、電圧変動(Vi-Vf)/Viは±15%以下(好ましくは±10%以下およびさらに好ましくは±5%以下)であり、ViとVfとの間の比容量はカソード活物質の重量または体積に基づいて100mAh/gまたは200mAh/cm以上であり、そしてアノードは、一次アノード活物質としてリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、バナジウム(V)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、それらの混合物、それらの合金、またはそれらの組合せを含有する。好ましいアノード活物質はLi、Na、Mg、Alおよびそれらの合金である。
【0031】
放電深度(DoD)は、セル重量、アノード活物質重量、またはカソード活物質重量を用いて、バッテリーセルが提供することができる最大放電量に対する実際の放電量(比容量、mAh/gまたはmAh/cm)の比である。図3は、2つのセルの放電曲線(一定の電流密度における電圧対DoD曲線、または電圧対時間曲線)を示す例示的な実施例を提供する:セルAは(0%のDoDから100%のDoDまで)1,500mAh/cmの全比容量を有し、セルBは600mAh/cmの比容量を有する。
【0032】
図3のセルAについて、10%のDoDは150mAh/cmにおいて生じ、90%のDoDは1,350mAh/cmにおいて生じる。10%から90%の最も有用なDoD範囲は、1,200mAh/cmの比容量に相当する。0.55ボルトの平均電圧によって、この範囲は(カソード体積に基づいて)1,200×0.55=660Wh/cmのエネルギー密度を与え、それは、より低電力のデバイスにおいて使用するために、非常に優れているわけではないにもかかわらず、許容範囲である。さらに、10%から90%のDoDで、電圧は0.575ボルトから0.545ボルトに降下し、変動(0.575-0.545)/0.575=5.2%である。
【0033】
セルBについて、10%のDoDは60mAh/cmにおいて生じ、90%のDoDは540mAh/cmにおいて生じる。この範囲は480mAh/cmの比容量に相当する。しかしながら、この範囲にわたって、電圧は0.50ボルトから0.33ボルトに降下し、変動(0.50-0.33)/0.50=34%であり、それは許容範囲ではない。電子デバイスは通常、有効寿命にわたって比較的安定な電圧を必要とする。±10%の変動が許容範囲であると仮定するのが妥当である。次に、電圧は、所望の範囲のDoDにわたって0.50ボルトから0.45ボルト未満に降下させておくことはできない。セルBについて、この0.45ボルトは、35%のDoDに相当する。従って、有用な電圧範囲は10%から35%のDoDであり、(35%-10%)×600=150mAh/cmの有用な比容量に相当し、それは、長寿命一次セルとしていかなる実際の使用についても低すぎる。
【0034】
したがって、要約すると、10%の放電深度(DoD)で測定されるとき、バッテリーセルは、0.3ボルト~0.8ボルト、好ましくは0.3ボルト~0.7ボルトの初期出力電圧Viを与えなければならない。また、バッテリーセルは90%以下のDoDで測定された最終出力電圧Vfを与え、ViとVfとの間の比容量は好ましくは、カソード活物質の重量または体積に基づいて100mAh/gまたは200mAh/cm以上である。好ましくは、Viと選択されたVfとの間の電圧変動(Vi-Vf)/Viが±10%以下(より好ましくは±5%以下)である。バッテリー設計者または電子デバイス設計者は10%から90%のDoDでVfを自由に選択するが、ViとVfとの間のバッテリーセルによって与えられる比容量は好ましくは、カソード活物質の重量または体積に基づいて200mAh/gまたは400mAh/cm以上(さらに好ましくは300mAh/gまたは600mAh/cm以上、より好ましくは400mAh/gまたは800mAh/cm以上、さらにより好ましくは500mAh/gまたは1,000mAh/cm以上、さらにいっそう好ましくは700mAh/gまたは1,400mAh/cm以上、最も好ましくは1,000mAh/gまたは2,000mAh/cm以上)である。
【0035】
一次カソード活物質は一次アノード活物質と異なる金属、半金属、または非金属元素から選択されてもよく、カソード内の金属、半金属、または非金属元素はスズ(Sn)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、インジウム(In)、テルル(Te)、リン(P)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、バナジウム(V)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、セレン(Se)、硫黄(S)、それらの混合物、それらの合金、またはそれらの組合せから選択される。一次カソード活物質として使用される金属、半金属、または非金属は一次アノード活物質として使用される金属と異なっていなければならず、一次アノード活物質と対にされるとき、0.3ボルト~0.8ボルトの範囲の出力電圧を与えなければならない。
【0036】
また、一次カソード活物質は、金属酸化物、金属リン酸塩、または金属硫化物から選択されてもよい。特に、それは酸化スズ、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化マンガン、酸化バナジウム、リン酸鉄、リン酸マンガン、リン酸バナジウム、遷移金属硫化物、またはそれらの組合せから選択されてもよい。
【0037】
特定の実施形態において、一次カソード活物質は、炭素硫黄、硫黄化合物、多硫化リチウム、遷移金属ジカルコゲン化物、遷移金属トリカルコゲン化合物、またはそれらの組合せから選択される無機材料を含有する。
【0038】
電気化学バッテリーセルは、アノードを支持するアノード集電体および/またはカソードを支持するカソード集電体をさらに含んでもよい。
【0039】
好ましくは、アノードおよび/またはカソードは、一次アノード/カソード活物質を保護する保護材料としてグラフェンをさらに含有する。さらに好ましくは、一次アノード活物質および/またはカソード活物質はグラフェンシートによって取り囲まれるかまたはグラフェンフィルム、グラフェン紙、グラフェンマット、またはグラフェンフォームに埋め込まれる。
【0040】
アノードおよび/またはカソードにおいて使用するためのグラフェン材料は、非炭素元素0.01重量%未満を有する純粋なグラフェン材料または非炭素元素0.01重量%~50重量%を有する非純粋なグラフェン材料を含有してもよく、そこで前記非純粋なグラフェンは、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、フッ化グラフェン、塩化グラフェン、臭化グラフェン、ヨウ化グラフェン、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、ホウ素ドープトグラフェン、窒素ドープトグラフェン、化学官能化グラフェン、またはそれらの組合せから選択される。
【0041】
本発明のバッテリーセルにおいて、アノード内のグラフェンフィルム、グラフェン紙、グラフェンマット、またはグラフェンフォーム(一次アノード活物質がその中に埋め込まれている)は第1のバッテリー端子タブに接続され(すなわちグラフェンフィルム、紙、マット、またはフォーム自体がアノード集電体として役立つ)、グラフェンフィルム、グラフェン紙、グラフェンマット、またはグラフェンフォームを支持する別個のまたは付加的なアノード集電体(例えばCu箔)はない。この特徴は、バッテリーの重量および体積を著しく低減することができ、それ故に、質量および体積エネルギー密度を著しく増加させる。
【0042】
特定の実施形態において、一次カソード活物質がその中に埋め込まれているカソード内のグラフェンフィルム、グラフェン紙、グラフェンマット、またはグラフェンフォームはバッテリー端子タブに接続され(グラフェンフィルム、グラフェン紙、グラフェンマット、またはグラフェンフォーム自体がカソード集電体として作用する)、グラフェンフィルム、グラフェン紙、グラフェンマット、またはグラフェンフォームを支持する別個のまたは付加的なカソード集電体はない。
【0043】
最も好ましくは、アノード側およびカソード側の両方が別個の(付加的な)集電体を有するわけではない。具体的には、(第1の端子タブがそれに接続されている)アノード内のグラフェンフィルム、グラフェン紙、グラフェンマット、またはグラフェンフォームはアノード集電体として役立ち(Cu箔などの付加的なまたは別個のアノード集電体はない)、(第2のバッテリー端子タブがそれに接続されている)カソード内のグラフェンフィルム、グラフェン紙、グラフェンマット、またはグラフェンフォームはカソード集電体として役立ち、カソード内の前記グラフェンフィルム、グラフェン紙、グラフェンマット、またはグラフェンフォームを支持する別個のまたは付加的なカソード集電体(例えばAl箔)はない。この特徴は、バッテリーの重量および体積を著しく低減することができ、それ故に、さらに質量および体積エネルギー密度を著しく増加させる。
【0044】
さらに、アノードおよびカソードの両方のグラフェンフィルム、グラフェン紙、グラフェンマット、またはグラフェンフォームの可撓性ならびにCu箔およびAl箔集電体がないこともまた、特殊な形状であり得る無線、ウェアラブル、または埋め込みデバイスにおいて使用するための可撓性バッテリーセルの製造を可能にする。これらの予想外の特徴は無線、ウェアラブル、または埋め込みデバイスのために非常に望ましい。
【0045】
本発明の別の予想外の特徴は、グラフェンがアノードまたはカソード活物質の電気化学的性質を改良することができる(例えば放電曲線を変化させる)ということである。したがって、特定の実施形態において、カソードは、一次カソード活物質に対する電気化学特性改良剤としてグラフェンをさらに含有し、付加的なグラフェンは(カソード内に付加的なグラフェンを有さない相応するセルに対して)セルの比容量を増加させ、またはセルの出力電圧を増加または減少させる。好ましくは、一次カソード活物質は、グラフェンの表面に接合されるかまたはそれによって物理的に支持される。また、グラフェンは、電気化学改良剤として、非炭素元素0.01重量%未満を有する純粋なグラフェン材料または非炭素元素0.01重量%~50重量%を有する非純粋なグラフェン材料を含有してもよく、そこで非純粋なグラフェンは、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、フッ化グラフェン、塩化グラフェン、臭化グラフェン、ヨウ化グラフェン、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、ホウ素ドープトグラフェン、窒素ドープトグラフェン、化学官能化グラフェン、またはそれらの組合せから選択される。
【0046】
バルク天然黒鉛は、各々の黒鉛粒子が複数の結晶粒(結晶粒は黒鉛単結晶または微結晶である)から構成され、結晶粒界(非晶質または欠陥領域)は、隣接する黒鉛単結晶の境界を定める3次元黒鉛材料である。各々の結晶粒は、互いに平行に配向される複数のグラフェン面から構成される。黒鉛微結晶内のグラフェン面は、二次元の、六方格子を占める炭素原子から構成される。所与の結晶粒または単結晶において、グラフェン面は、(グラフェン面または基礎面に垂直な)c方向の結晶方位のファンデルワールス力によって積み重ねられて接合される。1つの結晶粒の全てのグラフェン面は互いに平行であるが、典型的に1つの結晶粒のグラフェン面と隣接した結晶粒のグラフェン面は異なった配向で傾斜している。換言すれば、黒鉛粒子の様々な結晶粒の配向は典型的に、結晶粒ごとに異なる。
【0047】
面間ファンデルワールス力に打ち勝つことができるならば、天然または人工黒鉛粒子中の黒鉛微結晶の構成グラフェン面は剥離されて抽出または単離され、炭素原子の単独グラフェンシートを得ることができる。炭素原子の単離された、単独グラフェンシートは一般的に単一層グラフェンと称される。約0.3354nmのグラフェン面間間隔で厚さ方向にファンデルワールス力によって接合した複数のグラフェン面の積層体は一般的に複数層グラフェンと称される。複数層グラフェンプレートレットは、300層までのグラフェン面(厚さ<100nm)を有するが、より典型的には30までのグラフェン面(厚さ<10nm)、さらにより典型的に20までのグラフェン面(厚さ<7nm)、および最も典型的に10までのグラフェン面を有する(科学界において一般的に数層グラフェンと称される)。単一層グラフェンおよび複数層グラフェンシートは一括して「ナノグラフェンプレートレット」(NGP)と呼ばれる。グラフェンまたは酸化グラフェンシート/プレートレット(一括して、NGP)は、0次元フラーレン、1次元CNT、および3次元黒鉛からはっきり区別される新規な種類の炭素ナノ材料(2次元ナノ炭素)である。
【0048】
我々の研究グループは、早くも2002年にグラフェン材料および関連製造プロセスの開発を始めた:(1)B.Z.Jang and W.C.Huang,“Nano-scaled Graphene Plates”、米国特許第7,071,258号明細書(07/04/2006)、2002年10月21日に提出された出願;(2)B.Z.Jang,et al.“Process for Producing Nano-scaled Graphene Plates”、米国特許出願第10/858,814号明細書(06/03/2004);および(3)B.Z.Jang,A.Zhamu,and J.Guo,“Process for Producing Nano-scaled Platelets and Nanocomposites”、米国特許出願第11/509,424号明細書(08/25/2006)。
【0049】
図2(方法のフローチャート)において図示されるように、一方法において、グラフェン材料は、天然黒鉛粒子を強酸および/または酸化剤でインターカレートして黒鉛層間化合物(GIC)または黒鉛酸化物(GO)を得ることによって得られる。グラフェン面間の格子空間における化学種または官能基の存在は、グラフェン間間隔(d002、X線回折によって測定される)を増加させるのに役立ち、それによって他の場合ならグラフェン面をc軸方向に沿って保持するファンデルワールス力をかなり低減する。GICまたはGOは非常にしばしば、天然黒鉛粉末(図2の20)を硫酸、硝酸(酸化剤)、および別の酸化剤(例えば過マンガン酸カリウムまたは過塩素酸ナトリウム)の混合物中に浸漬することによって製造される。得られたGIC(22)は、酸化剤がインターカレーション法の間に存在している場合、実際には或るタイプの黒鉛酸化物(GO)粒子である。次に、このGICまたはGOを繰り返して水中で洗浄およびすすぎ洗いして過剰な酸を除去して、黒鉛酸化物懸濁液または分散体をもたらし、それは、水中に分散された離散したおよび目視で識別できる黒鉛酸化物粒子を含有する。グラフェン材料を製造するために、以下に簡単に説明される、このすすぎ洗い工程の後の2つの加工経路のうちの1つに従うことができる。
【0050】
経路1は、水を懸濁液から除去して、本質的に、乾燥されたGICまたは乾燥された黒鉛酸化物粒子の塊である、「膨張性黒鉛」を得る工程を必要とする。膨張性黒鉛を典型的に800~1,050℃の範囲の温度に約30秒~2分間の間暴露したとき、GICは30~300倍急速な体積膨張をして「黒鉛ワーム」(24)を形成するが、それらはそれぞれ、相互接続されたままである剥離した、しかしほとんど分離していない黒鉛フレークの集まりである。
【0051】
経路1Aにおいて、これらの黒鉛ワーム(剥離黒鉛または「相互接続された/分離されていない黒鉛フレークの網目構造」)を再圧縮して、0.1mm(100μm)~0.5mm(500μm)の範囲の厚さを典型的に有する可撓性黒鉛シートまたは箔(26)を得ることができる。代わりに、100nmよりも厚い主に黒鉛フレークまたはプレートレット(したがって、定義によってナノ材料ではない)を含有するいわゆる「膨張黒鉛フレーク」(49)を製造する目的のために低強度エアーミルまたは剪断機を使用して黒鉛ワームを単に破断することを選択してもよい。
【0052】
我々の米国特許出願第10/858,814号明細書において開示されるように、経路1Bにおいて、剥離黒鉛を高強度機械的剪断に供して(例えばウルトラソニケーター、高剪断ミキサー、高強度エアジェットミル、または高エネルギーボールミルを使用して)、分離された単一層および複数層グラフェンシート(一括してNGPと呼ばれる、33)を形成する。単一層グラフェンはわずか0.34nmであり得るが、他方、複数層グラフェンは100nmまで、しかしより典型的に10nm未満の厚さを有することができる(一般的に数層グラフェンと称される)。複数グラフェンシートまたはプレートレットは、製紙法を使用してNGP紙のシート(34)にされてもよい。
【0053】
経路2は、単独酸化グラフェンシートを黒鉛酸化物粒子から分離/単離する目的のために黒鉛酸化物懸濁液を超音波処理することを必要とする。これは、グラフェン面間分離が天然黒鉛の0.3354nmから高度に酸化された黒鉛酸化物の0.6~1.1nmに増加しており、隣接する面を一緒に保持するファンデルワールス力を著しく弱めるという考えに基づいている。超音波出力は、グラフェン面シートをさらに分離して、分離された、単離された、または離散酸化グラフェン(GO)シートを形成するために十分であり得る。次に、これらの酸化グラフェンシートを化学的にまたは熱還元して、0.001重量%~10重量%、より典型的に0.01重量%~5重量%、最も典型的におよび好ましくは2重量%未満の酸素含有量を典型的に有する「還元酸化グラフェン」(RGO)を得ることができる。
【0054】
本出願の請求の範囲を定義する目的のために、NGPまたはグラフェン材料には、純粋なグラフェン、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン(RGO)、フッ化グラフェン、塩化グラフェン、臭化グラフェン、ヨウ化グラフェン、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、化学官能化グラフェン、ドープトグラフェン(例えばBまたはNによってドープされた)の単一層および複数層(典型的に10層より少ない)の離散シート/プレートリットが含まれる。純粋なグラフェンは、本質的に0%の酸素を有する。RGOは典型的に、0.001重量%~5重量%の酸素含有量を有する。酸化グラフェン(RGOなど)は0.001重量%~50重量%の酸素を有することができる。純粋なグラフェン以外、全てのグラフェン材料は、0.001重量%~50重量%の非炭素元素(例えばO、H、N、B、F、Cl、Br、I等々)を有する。これらの材料はここでは、非純粋なグラフェン材料と称される。
【0055】
全てのタイプのグラフェンシートが(アノードまたはカソード活物質の粒子と共に)例えば真空補助濾過手順を使用して紙形態にされてもよい。全てのタイプのグラフェンシートが(アノードまたはカソード活物質の粒子と共に)コーティングまたは流延手順を使用してフィルム形態にされてもよい。これらの手順は当技術分野に公知である。
【0056】
グラフェンフォームは、発泡剤を含む手順を使用して調製されてもよい。発泡剤またはフォーミング剤は、ポリマー(プラスチックおよびゴム)、ガラス、および金属など、固化または相転移を受ける様々な材料中に発泡法によってセルまたは発泡構造体を生じ得る物質である。それらは典型的に、発泡される材料が液体状態であるときに適用される。発泡剤は、固体状態である間に発泡材料を作るために使用できることはこれまで知られていなかった。それ以上に重要なことは、グラフェンシートの集合体を発泡剤によってグラフェンフォームに変換することができることは教示も示唆もされていない。ポリマー母材中のセル構造体は典型的に、元のポリマーの厚さおよび相対的な剛性を増加させながら、密度を低減し、耐熱性および防音を高める目的で作られる。
【0057】
発泡またはセル状材料を製造するために母材中に細孔またはセル(気泡)を作る発泡剤または関連の発泡機構は、以下の群に分類され得る:
(a)物理的発泡剤:例えば炭化水素(例えばペンタン、イソペンタン、シクロペンタン)、クロロフルオロカーボン(CFC)、ヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、および液体CO。気泡/フォーム製造プロセスは吸熱性であり、すなわちそれは、液体発泡剤を気化させるための、(例えば溶融プロセスまたは架橋による化学発熱からの)熱を必要とする。
(b)化学発泡剤:例えばイソシアネート、アゾ-、ヒドラジンおよびその他の窒素系材料(熱可塑性およびエラストマーフォーム用)、重炭酸ナトリウム(熱可塑性フォームにおいて使用される、例えば重曹)。ここでガス生成物およびその他の副生成物が化学反応によって形成され、プロセスによってまたは反応ポリマーの発熱によって促進される。ブローイング反応は、吹込ガスとして作用する低分子量化合物を形成する工程を必要とするので、付加的な発熱も出る。粉末水素化チタンが金属フォームの製造においてフォーミング剤として使用され、それが分解して高温でチタンおよび水素ガスを形成する。水素化ジルコニウム(II)が同じ目的のために使用される。形成されると低分子量化合物は決して元の発泡剤に戻らず、すなわち反応は不可逆的である。
(c)混合物理/化学発泡剤:例えば、非常に低い密度を有する可撓性ポリウレタン(PU)フォームを製造するために使用される。化学的および物理的ブローイングの両方を直列に使用して、放出/吸収される熱エネルギーに対して互いに相殺する;したがって、温度上昇を最小にする。例えば、マットレスのための非常に低密度の可撓性PUフォームの製造においてイソシアネートと水(反応してCOを形成する)を液体CO(沸騰して気体形態を生じる)と組み合わせる。
(d)機械的注入される薬剤:機械的に製造されるフォームは、気泡を液体重合性母材(例えば液体ラテックスの形態の未加硫エラストマー)中に導入する方法を必要とする。方法は、空気または他のガスまたは低沸点揮発性液体を低粘度ラチス中で泡立てる工程、または押出機バレルまたはダイ内への、または射出成形バレルまたはノズル内へのガスの注入、およびスクリューの剪断/混合作用によってガスを均一に分散させて溶融体中に非常に微細な気泡またはガスの溶液を形成する工程を含む。溶融体が成形または押し出されて加工品が大気圧にあるとき、ガスが溶液から出て凝固の直前にポリマー溶融体を膨張させる。
(e)可溶性および浸出性剤:可溶性充填剤、例えば、液体ウレタン系に混合される固体塩化ナトリウム結晶であり、次いでそれを固体ポリマー加工品に造形し、塩化ナトリウムは、固体成形品をしばらくの間水中に浸漬することによって後で洗浄除去され、小さな相互接続孔を比較的高密度のポリマー製品中に残す。
(f)上記の5つの機構を全て使用して固体状態である間にグラフェン材料中に細孔を作ることができることを我々は見出した。グラフェン材料中に細孔を製造する別の機構は、それらの非炭素元素を高温環境において除去することによって揮発性ガスを発生および気化することによる。これは、これまで決して教示も示唆もされていない独特の自己発泡法である。
【0058】
好ましい実施形態において、分散体中のグラフェン材料は、純粋なグラフェン、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、フッ化グラフェン、塩化グラフェン、臭化グラフェン、ヨウ化グラフェン、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、化学官能化グラフェン、またはそれらの組合せから選択される。上記のグラフェン材料のいずれか一つを製造するための出発黒鉛材料は、天然黒鉛、人工黒鉛、メソフェーズ炭素、メソフェーズピッチ、メソカーボンマイクロビード、軟質炭素、硬質炭素、コークス、炭素繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、またはそれらの組合せから選択されてもよい。
【0059】
例えば、酸化グラフェン(GO)は、ある期間(出発原料の性質および使用される酸化剤のタイプに応じて典型的に0.5~96時間)、所望の温度の反応器内で酸化性液体媒体(例えば硫酸、硝酸、および過マンガン酸カリウムの混合物)中に出発黒鉛材料の粉末またはフィラメント(例えば天然黒鉛粉末)を浸漬することによって得られてもよい。次に、得られた黒鉛酸化物粒子を熱剥離または超音波による剥離に供してGOシートを製造してもよい。
【0060】
純粋なグラフェンは、黒鉛粒子の直接超音波処理(液相製造としても知られる)または超臨界流体剥離によって製造されてもよい。これらの方法は本技術分野に公知である。界面活性剤の補助によって複数の純粋なグラフェンシートを水または他の液体媒体中に分散させて懸濁液を形成してもよい。次に、化学発泡剤を分散体中に分散させてもよい(図2の38)。次に、この懸濁液を固体基材(例えばガラスシートまたはAl箔)の表面上に流延またはコートする。所望の温度に加熱されるとき、化学発泡剤が活性化または分解されて揮発性ガス(例えばNまたはCO)を発生させ、それらが作用して固体グラフェンシートの他の状態の塊に気泡または細孔を形成し、純粋なグラフェンフォーム40aを形成する。
【0061】
フッ素化グラフェンまたはフッ化グラフェンがここにおいてハロゲン化グラフェン材料の群の例として使用される。フッ素化グラフェンを製造するために用いた2つの異なった方法がある:(1)予め合成されたグラフェンのフッ素化:この方法は、機械的剥離によってまたはXeFなどのフッ素化剤を使用するCVD成長、またはF系プラズマによって作製されたグラフェンを処理することを必要とする。(2)複数層フッ化黒鉛の剥離:フッ化黒鉛の機械的剥離および液相剥離の両方とも容易に達成することができる[F.Karlicky,et al. “Halogenated Graphenes: Rapidly Growing Family of Graphene Derivatives” ACS Nano, 2013, 7 (8),pp 6434-6464]。
【0062】
高温でのFと黒鉛との相互作用は、共有結合性フッ化黒鉛(CF)または(CF)をもたらすが、低温では黒鉛層間化合物(GIC)CF(2≦x≦24)が形成される。(CF)において炭素原子は、sp3-混成であり、したがってフルオロカーボン層は波形であり、トランス結合シクロヘキサンいす形からなる。(CF)においてC原子の半分だけがフッ素化され、隣接した炭素シートの全ての対がC-C共有結合によって一緒に連結される。得られたF/C比は一般に、フッ素化温度、フッ化ガス中のフッ素の分圧の他、黒鉛化度、粒度、および比表面積などの黒鉛前駆体の物理的特性に依存していることをフッ素化反応に関する組織的な研究は示した。フッ素(F)の他に、他のフッ素化剤を使用してもよいが、入手できる文献の大部分は、場合によってはフッ化物の存在下での、Fガスによるフッ素化を含む。
【0063】
層状前駆体材料を単独層または数層の状態に剥離するために、隣接した層間の引力を克服すると共に層をさらに安定化することが必要である。これは、官能基によるグラフェン表面の共有結合修飾によるかまたは特定の溶剤、界面活性剤、ポリマー、またはドナー-アクセプター芳香族分子を使用する非共有結合修飾によるかどちらによって達成されてもよい。液相剥離の方法には、液体媒体中のフッ化黒鉛の超音波処理が含まれる。
【0064】
グラフェンの窒化は、酸化グラフェンなどのグラフェン材料を高温(200~400℃)のアンモニアに暴露することによって行なうことができる。また、窒素化グラフェンをより低温において熱水法によって、例えばGOおよびアンモニアをオートクレーブ内に封止することによって形成し、次に温度を150~250℃に上昇させることができる。窒素ドープトグラフェンを合成する他の方法には、グラフェンの窒素プラズマ処理、アンモニアの存在下での黒鉛電極間のアーク放電、CVD条件での酸化グラフェンの加安分解、および異なった温度での酸化グラフェンおよび尿素の熱水処理が含まれる。
【0065】
本発明のアノードのグラフェンフォーム中の細孔壁(セル壁または固体グラフェン部分)は、化学結合および同化したグラフェン面を含有する。これらの平面芳香族分子またはグラフェン面(六方晶構造炭素原子)は物理的におよび化学的に十分に相互接続される。これらの面の横方向寸法(長さまたは幅)は非常に大きく(例えば、20nm~>10μm)、出発黒鉛粒子の最大微結晶寸法(または最大構成グラフェン面寸法)よりも典型的に数倍またはさらに数桁大きい。グラフェンシートまたは面は本質的に同化および/または相互接続されて、低い抵抗を有する電子伝導経路を形成する。これは、これまで発見されたり、開発されたり、またはおそらく存在することが示唆されていない独自で新規なクラスの材料である。
【0066】
本発明の方法がどのように機能してグラフェンフォームで保護されたアノードまたはカソード材料の層を製造するのかということを説明するために、本明細書において酸化グラフェン(GO)およびフッ化グラフェン(GF)を2つの例として利用した。これらは、請求の範囲を限定すると解釈されるべきでない。各々の場合において、第1の工程は、任意選択の発泡剤を含有するグラフェン分散体(例えばGO+水またはGF+有機溶剤、DMF)の調製を必要とする。グラフェン材料が、非炭素元素を含有しない純粋なグラフェンである場合、発泡剤が必要とされる。
【0067】
工程(b)において、GFまたはGO懸濁液(図2の21)(しかしここでアノードまたはカソード活物質の粒子も含む)を好ましくは剪断応力の影響下で固体基材表面(例えばPETフィルムまたはガラス)上に湿潤GFまたはGO層35に形成する。このような剪断手順の一例は、コーティング機を使用するGFまたはGO懸濁液の薄いフィルムの流延またはコーティングである。この手順は、固体基材上にコートされるワニス、ペイント、コーティング、またはインクの層に似ている。フィルムが造形されるときかまたはローラー/ブレード/ワイパーと支持基材との間に高い相対運動があるときにローラー、またはワイパーは剪断応力を生じる。極めて予想外にそして重要なことに、このような剪断作用によって、平面GFまたはGOシートを例えば、剪断方向に沿って十分に整列させることができる。さらに驚くべきことに、GFまたはGO懸濁液中の液体成分をその後に除去して少なくとも部分的に乾燥される高整列化GFまたはGOシートの十分に充填された層を形成するときにこのような分子整列状態または好ましい配向は破損されない。乾燥されたGFまたはGO質量37aは、平面内の方向と平面に垂直な方向との間の高い複屈折係数を有する。
【0068】
実施形態において、このGFまたはGO層(それぞれSi粒子を含む)を次に、発泡剤を活性化する熱処理および/または非炭素元素(例えばF、O等々)をグラフェンシートから除去して副生成物として揮発性ガスを生成する熱的誘起反応に供する。これらの揮発性ガスは、固体グラフェン材料中に細孔または気泡を生成し、固体グラフェンシートをフォーム壁構造体中に押し込み、酸化グラフェンフォーム(図2の40b)を形成する。発泡剤が添加されない場合、グラフェン材料中の非炭素元素は好ましくは、グラフェン材料の少なくとも10重量%(好ましくは少なくとも20%、さらに好ましくは少なくとも30%)を占める。第1の(初期)熱処理温度は典型的に80℃超、好ましくは100℃超、より好ましくは300℃超、さらにより好ましくは500℃超であり、1,500℃もの高い温度であり得る。発泡剤は典型的に、80℃~300℃の温度で活性化されるが、より高くなり得る。フォーミング手順(細孔、セル、または気泡の形成)は典型的に、80~1,500℃の温度範囲内で完了される。非常に驚くべきことに、エッジからエッジまでおよび面から面までの方法でのグラフェン面(GOまたはGF面)間の化学連結または同化は、比較的低い熱処理温度(例えば、実に150~300℃しかない)で起こり得る。
【0069】
発泡グラフェン材料は、第1の熱処理温度よりも著しく高い少なくとも第2の温度を必要とするさらなる熱処理に供されてもよい。
【0070】
適切にプログラムされた熱処理手順は、単に単一熱処理温度(例えば第1の熱処理温度だけ)、少なくとも2つの熱処理温度(一定時間の間第1の温度、そして次に第2の温度に上げ、さらに別の一定時間の間この第2の温度に維持する)、または初期処理温度(第1の温度)と、第1の温度よりも高い、最終HTT(第2の温度)とを含む熱処理温度(HTT)の任意の他の組合せを含むことができる。乾燥されたグラフェン層が受ける最も高いまたは最終HTTは、3つの異なったHTTレジームに分けられてもよい。
【0071】
レジーム1(80℃~300℃):この温度範囲において(熱還元レジームと、また、存在する場合、発泡剤のための活性化レジーム)、GOまたはGF層は最初に熱誘導還元反応を受け、酸素含有量またはフッ素含有量の、典型的に(GO中のOの)20~50%または(GF中のFの)10~25%から約5~6%への低減をもたらす。この処理は、フォーム壁内のグラフェン間の間隔の、約0.6~1.2nm(乾燥されたとき)から約0.4nmへの低減、および単位比重当たり200W/mKまでの熱伝導率の増加および/または単位比重当たり2,000S/cmまでの電気導電率の増加をもたらす。(グラフェンフォーム材料の多孔度のレベル、したがって、比重を変えることができ、同じグラフェン材料が与えられれば、熱伝導率および電気導電率の両方の値が比重と共に変化するので、これらの特性値を比重によって分けて公正な比較を助けなければならない。)このような低温範囲を使用しても、グラフェンシート間の若干の化学連結が起こる。GO間またはGF間面間隔は比較的大きいままである(0.4nm以上)。多くのO含有またはF含有官能基は残る。
【0072】
レジーム2(300℃~1,500℃):1つの重要な事象がこの温度範囲において起こる:
a)この事象は、グラフェンフォーム構造物の形成に関する。この化学連結のレジームにおいて、隣接したGOまたはGFシート間に広範な化合、重合、および架橋が起こる。化学連結の後に酸素またはフッ素含有量は典型的に<1.0%(例えば0.7%)に低減され、グラフェン間の間隔を約0.345nmに低減するという結果をもたらす。黒鉛化を開始するために2,500℃もの温度を典型的に必要とする従来の黒鉛化可能な材料(炭化ポリイミドフィルムなど)と著しい対照をなして、若干の初期再黒鉛化がこのような低温においてすでに始まっていることをこれは意味する。これは、本発明のグラフェンフォームおよびその製造プロセスの別の異なった特徴である。これらの化学連結反応は、単位比重当たり250W/mKまで熱伝導率の増加、および/または単位比重当たり2,500~4,000S/cmまで電気導電率の増加をもたらす。
【0073】
レジーム3(1,500~2,500℃):この秩序化および再黒鉛化のレジームにおいて、広範な黒鉛化またはグラフェン面の同化が起こる、フォーム壁内の著しく改良された程度の構造秩序化をもたらす。結果として、酸素またはフッ素含有量は典型的に0.01%に低減され、グラフェン間の間隔は約0.337nmに低減される(実際のHTTおよび時間に応じて1%~約80%の黒鉛化度を達成する)。また、改良された秩序化度は、単位比重当たり>350W/mKまで熱伝導率の増加、および/または単位比重当たり>3,500S/cmまで電気導電率の増加によって反映される。
【0074】
レジーム4(>2,500°C):再黒鉛化または再結晶化。
アノードまたはカソード活物質を含む本発明のグラフェンフォーム構造体は、少なくとも第1のレジーム(温度が500℃を決して超えない場合この温度範囲において1~4時間を典型的に必要とする)にわたる、より一般的には最初の2つのレジーム(1~2時間が好ましい)、さらにより一般的には最初の3つのレジーム(レジーム3において好ましくは0.5~2.0時間)にわたる、そして全ての4つのレジーム(0.2~1時間のレジーム4を含めて、最も高い導電率を達成するために実施されてもよい)にわたり得る温度プログラムを使用して、乾燥されたGOまたはGF層を熱処理することにより得ることができる。
【0075】
グラフェン材料が、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、フッ化グラフェン、塩化グラフェン、臭化グラフェン、ヨウ化グラフェン、水素化グラフェン、窒素化グラフェン、化学官能化グラフェン、またはそれらの組合せからなる非純粋なグラフェン材料の群から選択され、そして最高熱処理温度(例えば第1および第2の熱処理温度の両方)が2,500℃未満である場合、得られた固体グラフェンフォームは典型的に、0.01重量%~2.0重量%の範囲の非炭素元素の含有量を含有する(非純粋なグラフェンフォーム)。
【0076】
X線回折パターンは、CuKcv放射線を備えたX線回折計を使用して得られた。回折ピークのシフトおよび広幅化は、ケイ素粉末標準を使用して較正された。黒鉛化度、gは、メーリング(Mering)の式d002=0.3354g+0.344(1-g)(式中、d002は、nm単位の黒鉛またはグラフェン結晶の中間層間隔である)を使用して、X線パターンから計算された。この式は、d002が約0.3440nm以下であるときにだけ有効である。0.3440nmよりも高いd002を有するグラフェンフォーム壁は、スペーサーとして作用してグラフェン間の間隔を増加させる酸素含有またはフッ素含有官能基(例えば、グラフェン分子平面の表面またはエッジ上の-F、-OH、>O、および-COOHなど)の存在を反映する。
【0077】
グラフェンおよび従来の黒鉛結晶のフォーム壁内の積層および接着グラフェン面の秩序化度を特性決定するために使用できる別の構造指数は、(002)または(004)反射のロッキング曲線(X線回折強度)の半値全幅によって表わされる、「モザイクスプレッド」である。この秩序化度は、黒鉛またはグラフェン結晶サイズ(または結晶粒径)、粒界およびその他の欠陥の量、および好ましい結晶粒配向度を特性決定する。黒鉛のほぼ完全な単結晶は、0.2~0.4のモザイクスプレッド値を有することを特性とする。我々のグラフェン壁の大部分は、0.2~0.4のこの範囲のモザイクスプレッド値を有する(2,500℃以上の熱処理温度(HTT)を使用して製造される場合)。しかしながら、HTTが1,500~2,500℃の間である場合いくつかの値は0.4~0.7の範囲であり、HTTが300~1,500℃の間である場合0.7~1.0の範囲である。
【0078】
図4に示されるのは、2個だけの整列GO分子が例として示される妥当な化学連結機構であるが、非常に多数のGO分子が一緒に化学連結してフォーム壁を形成することができる。さらに、GO、GF、および化学官能化グラフェンシートについて化学連結はまた、エッジからエッジまでだけでなく、面から面まで生じ得る。分子が化学的に同化され、連結され、単一実体に統合されるようにこれらの連結および同化反応が進む。グラフェンシート(GOまたはGFシート)がそれら自体の元の本質を完全に失い、それらはもう離散シート/プレートリット/フレークではない。得られた生成物は、単独グラフェンシートの単純な集合体ではなく、本質的に無数の分子量を有する相互接続巨大分子の本質的に網目構造である単一実体である。また、これは、グラフェン多結晶(若干の結晶粒を有するが、識別できる、明瞭な粒界を典型的に有さない)として説明されてもよい。全ての構成グラフェン面は横方向寸法(長さおよび幅)において非常に大きく、HTTが十分に高い場合(例えば>1,500℃またはより高い)、これらのグラフェン面は互いに一緒に本質的に接着される。本発明のアノード層またはカソード層のグラフェンフォームは、これまで教示も示唆もされていない以下の独特のおよび新規な特徴を有する。これらの特徴は、(活物質がその中に埋め込まれている)これらの電極層を集電体としても機能させ、アノードまたはカソード内に別個の集電体を有する必要性をなくす。
【0079】
(1)SEM、TEM、制限視野回折、X線回折、AFM、ラマン分光学、およびFTIRの組合せを使用する綿密な研究は、グラフェンフォーム壁はいくつかの非常に大きいグラフェン面(典型的に>>20nm、より典型的には>>100nm、しばしば>>1μm、そして、多くの場合、>>10μm、またはさらに>>100μmの長さ/幅を有する)から構成されることを示す。最終熱処理温度が2,500℃よりも低い場合、これらの巨大グラフェン面は、しばしばファンデルワールス力(従来の黒鉛微結晶におけるように)だけでなく、共有結合によっても厚さ方向(c軸結晶方向)に沿って積層および接合される。これらの場合、理論によって限定されることを望まないが、ラマンおよびFTIR分光法研究は、グラフェン面中における従来のspだけでなくsp(支配的)およびsp(弱いが存在している)電子配置の共存を示すと思われる。
【0080】
(2)グラフェンフォーム壁内のこれらの相互接続された大きなグラフェン面は、高伝導性であるだけでなく弾性でもありフォーム細孔が可逆的におよびバッテリーのアノード電極の著しい膨張または収縮を引き起こさずに細孔内に容れられるアノード活物質粒子と一致して膨張および収縮することを可能にするグラフェンの一体3D網目構造を形成する。
【0081】
(3)このグラフェンフォーム壁は、樹脂結合剤、リンカー、または接着剤を使用して離散フレーク/プレートリットを接着または接合することによって製造されない。代わりに、外部から添加されるリンカーまたは結合剤分子またはポリマーを全く使用せずにGO分散体からのGOシート(分子)またはGF分散体からのGFシートを、互いの共有結合の接合または形成によって同化して、統合されたグラフェン実体にする。このようなアノード層を特徴とするリチウムバッテリーについては、リチウムを貯蔵することができない、樹脂結合剤または導電性添加剤などの非活物質を有する必要はない。これは、アノード中の非活物質の低下した量または活物質の増加した量を意味し、比容量/(複合物の)全アノード重量、mAh/gを有効に増加させる。
【0082】
(4)グラフェンフォーム細孔壁は典型的に、不完全なまたは定義が不十分な粒界を有する大きなグラフェン結晶粒から構成される多結晶である。この実体は、GOまたはGF懸濁液から得られ、それはさらには、本来複数の黒鉛微結晶を有する天然黒鉛または人工黒鉛粒子から得られる。化学的に酸化またはフッ素化される前に、これらの出発黒鉛微結晶は、初期長さ(a軸結晶方向のL)、初期幅(b軸方向のL)、および厚さ(c軸方向のL)を有する。酸化またはフッ素化したとき、これらの初期離散黒鉛粒子は、かなりの濃度のエッジ担持または表面担持官能基(例えば-F、-OH、-COOH等々)を有する高級芳香族酸化グラフェンまたはフッ化グラフェン分子に化学的に変化される。懸濁液中のこれらの芳香族GOまたはGF分子は、黒鉛粒子またはフレークの一部であるそれらの元の本性を失っている。液体成分を懸濁液から除去するときに、得られたGOまたはGF分子は、本質的非晶質構造体を形成する。熱処理時に、これらのGOまたはGF分子は、フォーム壁を構成する単体またはモノリシックグラフェン実体に化学的に同化および連結される。このフォーム壁は、高度に秩序化されている。
【0083】
フォーム壁中の得られた単体グラフェン実体は典型的に、元の微結晶のLおよびLよりも著しく大きい長さまたは幅を有する。このグラフェンフォーム壁実体の長さ/幅は、元の微結晶のLおよびLよりも著しく大きい。多結晶グラフェン壁構造体中の単独結晶粒でも、元の微結晶のLおよびLよりも著しく大きい長さまたは幅を有する。
【0084】
(5)グラフェン面の大きな長さおよび幅は、フォーム壁が高い機械的強度および弾性を有することを可能にする。比較実験において、この特徴がなければ(すなわちグラフェン面の化学的同化がない)、離散的グラフェンシートの集合体から構成される慣例的に製造されるグラフェンフォームは、比較的弱く、脆く、非弾性である(可逆的でない変形)ことを我々は観察する。
【0085】
(6)これらの独特の化学組成(酸素またはフッ素含有量を含む)のために、モルホロジー、結晶構造(グラフェン間の間隔を含む)、および構造特徴(例えば高い配向度、わずかな欠陥、不完全な粒界、化学結合およびグラフェンシート間の間隙がないこと、ならびにグラフェン面の割り込みがほとんどないこと)、GO由来またはGF由来のグラフェンフォームは、著しい熱伝導率、電気導電率、機械的強度、および剛性(弾性率)の独特の組合せを有する。
【実施例
【0086】
以下の実施例は、本発明を実施する最良の方式についていくつかの具体的な詳細を説明するために使用され、本発明の範囲を制限すると解釈されるべきではない。
【0087】
実施例1:様々なバッテリーセルの評価
電気化学試験のために、いくつかのタイプのアノードおよびカソードを作製した。例えば、層タイプのアノードまたはカソードは、(その中に埋め込まれたアノードまたはカソード活物質を含有する)フォームを(アノード集電体としての)Cu箔のシートに対して単にロールプレスすることによって作製された。アノード活物質を含有するいくつかのフォーム試料は、別個のCu箔集電体を使用せずにアノード電極として使用された。カソード活物質を含有するいくつかのフォーム試料は、別個のAl箔集電体を使用せずにカソード電極として使用された。
【0088】
比較目的のために、スラリーコーティングもまた使用して従来の電極を作製した。例えば、作業電極は、N-メチル-2-ピロリドン(pyrrolidinoe)(NMP)中に溶解された85重量%の活物質(SnO粒子、7重量%のアセチレンブラック(Super-P)、および8重量%のポリフッ化ビニリデン(PVDF、5重量%の固形分)結合剤を混合することによって作製された。スラリーをCu箔上に被覆した後、電極を2時間の間真空中で120℃で乾燥させて、加圧前に溶媒を除去した。
【0089】
次に、電極をディスク(φ=12mm)に切断し、真空中で24時間の間100℃で乾燥させた。対向/参照電極として(一例として)リチウム金属、セパレーターとしてCelgard2400膜、および(電解質の例として)エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)との混合物(EC-DEC、1:1v/v)中に溶解された1MのLiPF電解質溶液を有するCR2032(3V)コイン型セルを使用して電気化学測定を実施した。様々なアノードおよびカソード材料組成物sを評価した。セルの組立をアルゴン充填グローブボックス内で行なった。CV測定は、1~100mV/sの走査速度で電気化学ワークステーションを使用して実施された。様々なセルの電気化学的性能もまた、LAND電気化学ワークステーションを使用して50~1,000mA/gの電流密度で定電流充電/放電サイクル繰り返しによって評価された。フルセルパウチもまた作製され、試験された。
【0090】
低電圧セルの以下の実施例は、センサー、小さなアクチュエーター、小さな補聴器(小さな医療デバイスの例)、小さな無線回路、ウェアラブルデバイス等に接続され得る(そして我々の研究室では接続された)。
【0091】
実施例2:低電圧Al-Sセル(水性または有機電解質)
電気化学反応の観点から、硫黄(S)は、レドックス反応の間に2つの電子を受容/供与することができる二価物質である。実容量は約1,980mAh/cmである。アルミニウムアノードと対にされる場合、出力電圧は約0.73Vであることがわかる(図5)。10%のDoDと90%のDoDとの間の電圧変動は±2.1%である。
アノード反応:Al+7AlCl →4AlCl +3e
カソード反応:M+2e→M 2-(M=S)
全反応:2Al3++6e+3M→Al(M
【0092】
実施例3:低電圧Li-Pセル
(M=P)は、レドックス反応の間に3つの電子を受容/供与することができる三価物質である。実容量は100%のDoDにおいて約2,371mAh/cmである(図6)。リチウムアノードと対にされるとき、それは約0.32Vの出力電圧を与える。10%のDoDと90%のDoDとの間の電圧変動は±14%である。カソード内の20重量%のグラフェンの存在によって、放電曲線は全0.1ボルト上方にシフトされ、傾きは著しく減少する(より安定な電圧出力)。これらの予想外の改良は非常に有益である。
アノード反応:Li→Li+e
カソード反応:M+3e→M 3-
全反応:3Li+3e+M→Li(M
【0093】
実施例4:低電圧Li-SnOセル
(化合物A=SnO)は、レドックス反応の間に複数電子を受容/供与することができる多価物質である。放電曲線は2つの領域、平らなプラトーおよび傾き曲線からなる(図7)。傾き曲線の実容量は100%のDoDにおいて約6,157mAh/cmである。リチウムアノードと対にされ且つ傾き領域だけが利用されるとき、それは約0.35Vの出力電圧を与える。10%のDoDと90%のDoDとの間の電圧変動は±68%である。しかしながら、Vfを同定することができ、比容量が非常に大きいので電圧変動(Vi-Vf)/Viは±10%以下である。
アノード反応:Li→Li+e
カソード反応:A(M)+xe→A(Mx-
全反応:xLi+xe+A(M)→Li(A(M))
【0094】
実施例5:低電圧Na-SnOセル
(化合物A=SnO)は、レドックス反応の間に複数電子を受容/供与することができる多価物質である。放電曲線は2つの領域、平らなプラトーおよび傾き曲線からなる(図8)。実容量は100%のDoDにおいて約3,315mAh/cmである。ナトリウムアノードと対にされ且つプラトー領域だけが利用されるとき、それは約0.55Vの出力電圧を与える。10%のDoDと90%のDoDとの間の電圧変動は±5%である。
アノード反応:Na→Na+e
カソード反応:A(M)+xe→yA(M)+zB(M(x/z)-
全反応:xNa+xe+A(M)→yA(M)+zNa(x/z)B(M
【0095】
実施例6:低電圧Li-Sbセル
(Sb)は、レドックス反応の間に複数電子を受容/供与することができる多価物質である。実容量は約3,355mAh/cmである。リチウムアノードと対にされるとき、それは約0.80Vの出力電圧を与える(図9)。10%のDoDと90%のDoDとの間の電圧変動は±2.4%である。
アノード反応:Li→Li+e
カソード反応:M+xe→M x-
全反応:xLi+xe+M→Li(M
【0096】
実施例7:低電圧Na-Sbセル
(Sb)は、レドックス反応の間に複数電子を受容/供与することができる多価物質である。実容量は約3,355mAh/cmである。ナトリウムアノードと対にされるとき、それは約0.47Vの出力電圧を与える(図10)。10%のDoDと90%のDoDとの間の電圧変動は±2.4%である。
アノード反応:Na→Na+e
カソード反応:M+xe→M x-
全反応:xNa+xe+M→Na(M
【0097】
実施例8:低電圧Li-Feセル
(化合物A=Fe)は、レドックス反応の間に複数電子を受容/供与することができる多価物質である。実容量は約3,650mAh/cmである。リチウムアノードと対にされるとき、それは約0.83Vの出力電圧を与える(図11)。10%のDoDと90%のDoDとの間の電圧変動は±3.3%である。
アノード反応:Li→Li+e
カソード反応:A(M)+xe→yA(M)+zB(M(x/z)-
全反応:xLi+xe+A(M)→yA(M)+zLi(x/z)B(M
【0098】
実施例9:低電圧Na-Feセル
(化合物A=Fe)は、レドックス反応の間に複数電子を受容/供与することができる多価物質である。実容量は約3,650mAh/cmである。ナトリウムアノードと対にされるとき、それは約0.5Vの出力電圧を与える(図12)。10%のDoDと90%のDoDとの間の電圧変動は±3.3%である。
アノード反応:Na→Na+e
カソード反応:A(M)+xe→yA(M)+zB(M(x/z)-
全反応:xNa+xe+A(M)→yA(M)+zNa(x/z)B(M
【0099】
実施例10:低電圧Li-Snセル
(Sn)は、レドックス反応の間に複数電子を受容/供与することができる多価物質である。実容量は約5,818mAh/cmである。リチウムアノードと対にされるとき、それは約0.42Vの出力電圧を与える(図13)。10%のDoDと90%のDoDとの間の電圧変動は±48%である。
アノード反応:Li→Li+e
カソード反応:M+xe→M x-
全反応:xLi+xe+M→Li(M
【0100】
実施例10:低電圧Li-Mnおよびグラフェン改質Li-Mnセル
10(化合物A=Mn)は、レドックス反応の間に複数電子を受容/供与することができる多価物質である。実容量は約3,615mAh/cmである。リチウムアノードと対にされるとき、それは約0.32Vの出力電圧を与える(図14)。10%のDoDと90%のDoDとの間の電圧変動は±6.5%である。カソード活物質(Mnのナノ粒子)は窒素化グラフェンシートに接合され、セルの出力電圧はより有用な範囲にまでシフトされて、傾きもまた低減される(曲線のより良いプラトー)。
アノード反応:Li→Li+e
カソード反応:A(M10)+xe→yA(M10)+zB(M10(x/z)-
全反応:xLi+xe+A(M10)→yA(M10)+zLi(x/z)B(M10
【0101】
実施例11:低電圧Li-Alセル
11(Al)は、レドックス反応の間に複数電子を受容/供与することができる多価物質である。実容量は約2,748mAh/cmである。リチウムアノードと対にされるとき、それは約0.30Vの出力電圧を与える(図15)。10%のDoDと90%のDoDとの間の電圧変動は±1.8%である。
アノード反応:Li→Li+e
カソード反応:M11+xe→M11 x-
全反応:xLi+xe+M11→Li(M11
【0102】
実施例12:低電圧Li-MoOセル
12(化合物A=MoO)は、レドックス反応の間に複数電子を受容/供与することができる多価物質である。実容量は約3,503mAh/cmである。リチウムアノードと対にされるとき、それは約0.41Vの出力電圧を与える(図16)。10%のDoDと90%のDoDとの間の電圧変動は±14%である。
アノード反応:Li→Li+e
カソード反応:A(M12)+xe→yA(M12)+zB(M12(x/z)-
全反応:xLi+xe+A(M12)→yA(M12)+zLi(x/z)B(M12
【0103】
実施例13:低電圧Li-MoSセル
13(化合物A=MoS)は、レドックス反応の間に複数電子を受容/供与することができる多価物質である。実容量は約2,509mAh/cmである。リチウムアノードと対にされるとき、それは約0.58Vの出力電圧を与える(図17)。10%のDoDと90%のDoDとの間の電圧変動は±6.4%である。
アノード反応:Li→Li+e
カソード反応:A(M13)+xe→yA(M13)+zB(M13(x/z)-
全反応:xLi+xe+A(M13)→yA(M13)+zLi(x/z)B(M13
【0104】
実施例14:離散的官能化GOシートおよびグラフェンフォームの調製
12μmの平均直径を有する細断した黒鉛繊維および天然黒鉛粒子を出発原料として別々に使用し、それを(化学インターカレートおよび酸化剤として)濃硫酸、硝酸、および過マンガン酸カリウムの混合物中に浸漬して黒鉛層間化合物(GIC)を調製した。最初に出発原料を24時間の間80℃で真空炉内で乾燥させた。次いで、(4:1:0.05の重量比の)濃硫酸、発煙硝酸、および過マンガン酸カリウムの混合物を、適切な冷却および撹拌下で、繊維セグメントを含有する三首フラスコにゆっくりと添加した。5~16時間の反応後に、酸処理黒鉛繊維または天然黒鉛粒子を濾過し、溶液のpHレベルが5に達するまで脱イオン水で十分に洗浄した。一晩100℃で乾燥処理した後、得られた黒鉛層間化合物(GIC)または黒鉛酸化物繊維を水-アルコール中に再分散させてスラリーを形成した。
【0105】
1つの試料において、黒鉛酸化物繊維5グラムを15:85の比でアルコールおよび蒸留水からなるアルコール溶液2,000mlと混合してスラリー塊を得た。次いで、混合物スラリーを様々な長さの時間の間200Wの出力で超音波照射に供した。20分の音波処理の後、GO繊維を有効に剥離し、約23重量%~31重量%の酸素含有量を有する薄い酸化グラフェンシートに分離した。アンモニア水を得られた懸濁液の1つのポットに添加し、それをもう1時間超音波処理してNH官能化酸化グラフェン(f-GO)を製造した。GOシートおよび官能化GOシートを別々に5%の重量分率に稀釈して(低電圧セル内のカソード活物質の例として)所望の量のSnO粒子を懸濁液に添加した。その後、発泡剤として2%の重曹をGO/SnOまたはf-GO/SnO懸濁液に添加して混合物スラリーを形成した。得られたスラリーを2日間、一切の機械的撹乱なしに容器内に放置しておいた。
【0106】
次に、GO/SnOまたはf-GO/SnOを含有する得られたスラリーをPETフィルム表面上にコンマコートした。得られたコーティングフィルムは、液体の除去後に、100~800μmの厚さを有する。次に、フィルムを(HおよびNの混合物中で)2時間500℃の初期熱処理温度を必要とする熱処理に供して、発泡構造物の形成を可能にした。この後に、異なった試験体のために(Arガス雰囲気中で)800~1,200℃の第2の温度にフォームを暴露した。
【0107】
実施例15:メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)およびグラフェンフォームからの単一層グラフェンシートの調製
メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)は、China Steel Chemical Co.(Kaohsiung,Taiwan)から供給された。この材料は、約2.24g/cmの密度ならびに約16μmのメジアン粒度を有する。MCMB(10グラム)を48~96時間にわたって酸溶液(4:1:0.05の比の硫酸、硝酸、および過マンガン酸カリウム)でインターカレートした。反応の終了時に、混合物を脱イオン水中に流し込み、濾過した。インターカレートされたMCMBをHClの5%溶液中で繰り返して洗浄して硫酸イオンの大部分を除去した。次に、ろ液のpHが4.5以上になるまで試料を脱イオン水で繰り返して洗浄した。次に、スラリーを10~100分にわたって超音波処理に供してGO懸濁液を製造した。GOシートの大部分は、酸化処理が72時間を超えるときに単一層グラフェンであり、酸化時間が48~72時間であるときに2層または3層グラフェンであることをTEMおよび原子間力顕微鏡研究は示す。
【0108】
GOシートは、48~96時間の酸化処理時間の間約35重量%~47重量%の酸素の比率を含有する。GOシートは水中に懸濁された。1~6μmの直径を有するMoO粒子(カソード活物質の別の例)をGO懸濁液に添加した。流延の直前に化学発泡剤として重曹(5~20重量%)も懸濁液に添加した。次に、懸濁液をドクターブレードを使用してガラス表面上に流延して剪断応力を加え、GOシート配向を誘導した。いくつかの試料を流延したが、発泡剤を含有するものも含有しないものもある。液体を除去した後、得られたGOフィルムは、約10~500μmで変化し得る厚さを有する。
【0109】
次に、発泡剤を有する、または有さないGOフィルムのいくつかのシートを1~5時間の間80~500℃の初期(第1の)熱還元温度を必要とする熱処理に供した。この第1の熱処理はグラフェンフォームを生成した。次に、フォームを750~950℃の第2の温度に4時間供した。
【0110】
実施例16:純粋なグラフェンフィルムおよびフォーム(0%の酸素)の調製
GOシートの高い欠陥群が単独グラフェン面の伝導率を低下させるように作用することを認識して、純粋なグラフェンシート(酸化されないおよび酸素を含有しない、ハロゲン化されないおよびハロゲンを含有しない等々)の使用はより高い熱伝導率を有するグラフェンフォームをもたらすことができるかどうかを我々は調べることにした。純粋なグラフェンシートは、直接超音波処理または液相製造プロセスを使用して製造された。
【0111】
典型的な手順において、約20μm以下のサイズに微粉砕された5グラムの黒鉛フレークを1,000mLの脱イオン水(DuPont製のZonyl(登録商標)FSO、分散助剤0.1重量%を含有する)中に分散させて懸濁液を得た。85Wの超音波エネルギーレベル(BransonS450ウルトラソニケーター)を15分~2時間にわたってグラフェンシートの剥離、分離、および粉砕のために使用した。得られたグラフェンシートは、少しも酸化されておらず酸素を含有せず比較的欠陥がない純粋なグラフェンである。他の非炭素元素は実質的に存在しない。
【0112】
様々な量(グラフェン材料に対して0重量%~30重量%)の化学発泡剤(chemical bowing agents)(N,N-ジニトロソペンタメチレンテトラミンまたは4.4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)およびMoO粒子を(カソード活物質の例として)純粋なグラフェンシートと界面活性剤とを含有する懸濁液に添加した。次に、懸濁液をPETフィルム表面上にスロットダイ被覆し、それはグラフェンシートの剪断応力-誘起配向を含む。得られたグラフェン-Siフィルムは、液体の除去後に、約100~750μmの厚さを有する。
【0113】
次に、グラフェンフィルムを1~5時間の間80~1,500℃の初期(第1の)温度を含む熱処理に供し、それによってグラフェンフィルム(発泡剤0%の場合)または(若干の発泡剤を使用して)フォーム層が製造される。次に、純粋なフォーム試料のいくつかを700~2,500℃の第2の温度の熱処理に供する。
【0114】
実施例17:天然黒鉛からの酸化グラフェン(GO)懸濁液の調製およびGOフォームの後続の調製
黒鉛酸化物は、黒鉛フレークを4:1:0.05の比の硫酸、硝酸ナトリウム、および過マンガン酸カリウムからなる酸化剤液体で30℃で酸化することによって調製された。天然黒鉛フレーク(14μmの粒度)が48時間にわたって酸化剤混合物液体中に浸漬および分散されるとき、懸濁液またはスラリーは光学的に不透明且つ暗くみえ、そのままである。48時間後に、反応塊を水で3回洗浄してpH価を少なくとも3.0に調節した。次に、最終的な量の水を添加して一連のGO-水懸濁液を調製した。GOシートが>3%および典型的に5%~15%の重量分率を占めるとき、GOシートが液晶相を形成することを我々は観察した。
【0115】
スラリーコーターでGO懸濁液(アノードまたはカソード活物質の粒子を含有する)をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に分配および被覆し、液体媒体をコーティングフィルムから除去することによって、乾燥された酸化グラフェンの薄いフィルムが得られた。次に、いくつかのGOフィルム試料を異なった熱処理に供し、それらは典型的に、1~10時間の間100℃~500℃の第1の温度、および0.5~5時間の間750~1,500℃の第2の温度の熱還元処理と、その後の、制御された冷却手順とを含む。圧縮応力下で同様に、これらの熱処理を使用して、GOフィルムをグラフェンフォームに変化させた。
【0116】
別の基準で、化学還元剤として特定の量のヒドラジンを(活物質粒子を含有する)GO懸濁液に添加して、還元GO(RGO)懸濁液を得た。次に、RGO懸濁液を公知の真空補助濾過手順に供してRGO紙を形成した。
【0117】
実施例18:フッ化グラフェンからのグラフェンフォームの調製(アノードまたはカソード活物質の粒子を含有する)
GFを製造するためにいくつかの方法が使用されたが、本明細書において実施例としてただ1つの方法が説明される。典型的な手順において、高度剥離黒鉛(HEG)は、インターカレートされた化合物СF・xClFから調製された。HEGを三フッ化塩素の蒸気によってさらにフッ素化して、フッ素化高度剥離黒鉛(FHEG)をもたらした。予備冷却されたテフロン反応器に20~30mLの液体予備冷却ClFを入れ、反応器を閉じて、液体窒素温度に冷却した。次に、1g以下のHEGをClFガスが入っていく孔を有する容器内に置き、反応器内に配置した。7~10日で、近似式CFを有する灰色-ベージュ色の生成物が形成された。
【0118】
その後、少量のFHEG(約0.5mg)を20~30mLの有機溶剤(メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、tert-ブタノール、イソアミルアルコール)と混合し、30分間にわたって超音波処理(280W)に供し、均質な黄色がかった分散体を形成した。5分の音波処理は比較的均質な分散体を得るために十分であったが、より長い音波処理時間はより良い安定性を確実にした。次に、アノードまたはカソード活物質の粒子を分散体に添加した。溶剤を除去したガラス表面上に流延したとき、分散体はガラス表面上に形成された茶色がかったフィルムになった。GFフィルムが熱処理されたとき、フッ素が、フィルム中に細孔を生成するのに役立つガスとして放出された。いくつかの試料において、物理的発泡剤(Nガス)が、流延される間に湿潤GFフィルム中に注入された。これらの試料は、ずっと高い細孔体積またはずっと低いフォーム密度を示す。発泡剤を使用しなければ、得られたフッ化グラフェンフォームは、0.35~1.38g/cmの物理的密度を示す。発泡剤が使用されるとき(0.5/1~0.05/1の発泡剤/GF重量比)、0.02~0.35g/cmの密度が得られた。典型的なフッ素含有量は、必要とされる最終熱処理温度に応じて、0.001%(HTT=2,500℃)~4.7%(HTT=350℃)である。
【0119】
実施例19:窒素化グラフェンからのグラフェンフォームの調製(アノードまたはカソード活物質の粒子を含有する)
実施例2において合成された酸化グラフェン(GO)を異なった比率の尿素と共に微粉砕し、ペレット化された混合物をマイクロ波反応器(900W)内で30秒間加熱した。生成物を脱イオン水で数回洗浄し、真空乾燥させた。この方法において酸化グラフェンは同時に、窒素で還元およびドープされる。1:0.5、1:1および1:2のグラフェン:尿素の質量比によって得られた生成物はそれぞれNGO-1、NGO-2およびNGO-3と呼ばれ、これらの試料の窒素含有量はそれぞれ、元素分析によって確認されるとき14.7、18.2および17.5wt%であった。これらの窒素化グラフェンシートは、水中に分散可能なままである。次に、アノードまたはカソード活物質の粒子を分散体に添加した。次に、得られた懸濁液を流延し、乾燥させ、初期に第1の熱処理温度として200~350℃で熱処理し、その後1,500℃の第2の温度で処理した。得られた窒素化グラフェンフォームは、0.45~1.28g/cmの物理的密度を示す。フォームの典型的な窒素分は、必要とされる最終熱処理温度に応じて0.01%(HTT=1,500℃)~5.3%(HTT=350℃)である。
【0120】
実施例20:様々なグラフェンフォームおよび従来の黒鉛フォームの特性決定
いくつかの乾燥されたGO層、および熱処理の異なった段階の熱処理フィルムの内部構造(結晶構造および配向)がX線回折を使用して調査された。天然黒鉛のX線回折曲線は典型的に、約2θ=26°のピークを示し、約0.3345nmのグラフェン間の間隔(d002)に相当する。酸化したとき、得られたGOは、約2θ=12°のX線回折ピークを示し、それは約0.7nmのグラフェン間の間隔(d002)に相当する。150℃での或る熱処理によって、乾燥されたGOコンパクトは、22°を中心とするハンプの形成を示し、化学連結および秩序化プロセスの開始のためにグラフェン間の間隔を減少させるプロセスをそれが開始したことを示す。1時間にわたる2,500℃の熱処理温度によってd002間隔は、黒鉛単結晶の0.3354nmに近い、約0.336に減少した。
【0121】
1時間にわたる2,750℃の熱処理温度によって、d002間隔は、黒鉛単結晶のd002間隔に等しい、約0.3354nmに減少する。さらに、高強度を有する第2の回折ピークは、(004)面からのX線回折に相当する2θ=55°に出現する。同じ回折曲線上の(002)強度に対する(004)ピーク強度、またはI(004)/I(002)比は、グラフェン面の結晶完成度および好ましい配向の良い表示である。2,800℃よりも低い温度で熱処理された全ての黒鉛材料について(004)ピークは存在していないかまたは比較的弱いかどちらかであり、I(004)/I(002)比<0.1である。3,000~3,250℃で熱処理された黒鉛材料(例えば、高度配向熱分解黒鉛、HOPG)のI(004)/I(002)比は、0.2~0.5の範囲である。対照的に、1時間にわたって2,750℃の最終HTTで調製されたグラフェンフォームは、0.78のI(004)/I(002)比および0.21のモザイクスプレッド値を示し、良い程度の好ましい配向を有するほぼ完全なグラフェン単結晶を示す。
【0122】
「モザイクスプレッド」値は、X線回折強度曲線の(002)反射の半値全幅から得られる。秩序化度のためのこの指標は、黒鉛またはグラフェン結晶サイズ(または結晶粒径)、粒界およびその他の欠陥の量、および好ましい結晶粒配向度を特性決定する。黒鉛のほぼ完全な単結晶は、0.2~0.4のモザイクスプレッド値を有することを特性とする。我々のグラフェンフォームのいくつかは、2,500℃以上の最終熱処理温度を使用して製造されるときに0.2~0.4のこの範囲のモザイクスプレッド値を有する。
【0123】
500℃しかない熱処理温度は細孔壁に沿うGOシートの平均グラフェン間間隔を0.4nm未満にするのに十分であり、天然黒鉛の平均グラフェン間間隔または黒鉛単結晶の平均グラフェン間間隔にますます近づいていることを注記しておくべきである。この方法の長所は、このGO懸濁液法によって、本来異なった黒鉛粒子またはグラフェンシートからの平面酸化グラフェン分子を再組織化、再配向、および化学的に同化して、全てのグラフェン面がいま横方向寸法においてより大きい(元の黒鉛粒子のグラフェン面の長さおよび幅よりも著しく大きい)統合構造を形成できたということである。可能性がある化学連結機構が図4において説明される。これは、非常に優れた構造統合性、可撓性、高い熱伝導率および高い電気導電率の値を生じて、(その中に埋め込まれたアノードまたはカソード活物質を含有する)グラフェンフォームまたはフィルム層が集電体としても機能することを可能にする。これにより、別個の(付加的な)アノードおよびカソード集電体を有する必要がなくなる。
図1A-1B】
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17