(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】軌道検測車および軌道形状を検出する方法
(51)【国際特許分類】
E01B 35/04 20060101AFI20220610BHJP
B61K 9/08 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
E01B35/04
B61K9/08
(21)【出願番号】P 2019532995
(86)(22)【出願日】2017-11-27
(86)【国際出願番号】 EP2017080505
(87)【国際公開番号】W WO2018114233
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-11-27
(32)【優先日】2016-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】514318345
【氏名又は名称】プラッサー ウント トイラー エクスポート フォン バーンバウマシーネン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Plasser & Theurer, Export von Bahnbaumaschinen, Gesellschaft m.b.H.
【住所又は居所原語表記】Johannesgasse 3, A-1010 Wien, Austria
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ カイザー
(72)【発明者】
【氏名】ローベアト カイザー
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-339629(JP,A)
【文献】特開2003-237576(JP,A)
【文献】特開2016-061630(JP,A)
【文献】特開平08-122042(JP,A)
【文献】特開昭47-002337(JP,A)
【文献】特開昭51-101561(JP,A)
【文献】米国特許第05199176(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 35/04
B61K 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道(2)の軌道形状を検出するための軌道検測車(1)であって、軌道(2)の2本のレール(3)上を走行可能でありかつレール走行装置(4)を有する車両フレーム(5)と、
前記軌道検測車(1)の走行中に空間曲線を検出する慣性測定ユニット(8)および各レール(3)に対する位置測定用の少なくとも1つの無接触式の位置測定装置(9)が配置された第1の測定基部(7)と、を備えた軌道検測車(1)において、
降下可能な第2の測定基部(11)が配置されており、該第2の測定基部(11)は、前記レール(3)上に載置可能な測定従輪(12)を有しておりかつ
、前記慣性測定ユニット(8)に対する前記第2の測定基部(11)の位置変化を連続的に検出する補償測定装置(20,22)を介して前記第1の測定基部(7)に結合されていることを特徴とする、軌道検測車(1)。
【請求項2】
前記各レール(3)に対する位置測定用の前記第1の測定基部(7)に、互いに離された2つの
前記位置測定装置(9)が配置されている、請求項1記載の軌道検測車(1)。
【請求項3】
前記位置測定装置(9)は、レーザラインスキャナとして形成されている、請求項1または2記載の軌道検測車(1)。
【請求項4】
前記補償測定装置(20,22)は、距離測定装置および/または角度測定装置として形成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の軌道検測車(1)。
【請求項5】
前記第1の測定基部(7)は、前記レール走行装置(4)の走行装置フレーム(6)として形成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の軌道検測車(1)。
【請求項6】
前記第2の測定基部(11)は、2つの
前記測定従輪(12)を備えた第1のテレスコープ軸(17)を有しており、該第1のテレスコープ軸(17)は、前記走行装置フレーム(6)に降下可能に支承されている、請求項5記載の軌道検測車(1)。
【請求項7】
前記第2の測定基部(11)は、2つの
前記測定従輪(12)を備えた第2のテレスコープ軸(18)を有しており、該第2のテレスコープ軸(18)は、前記第1のテレスコープ軸(17)に対し、軌道車両長手方向軸線(19)を中心として回動可能に支承されている、請求項6記載の軌道検測車(1)。
【請求項8】
各前記テレスコープ軸(17,18)に、前記レール(3)に対して前記測定従輪(12)を側方に圧着させるための第2の空圧駆動装置(21)が割り当てられている、請求項6または7記載の軌道検測車(1)。
【請求項9】
前記第2の測定基部(11)は、第1の空圧駆動装置(10)を介して前記走行装置フレーム(6)に結合されている、請求項5から8までのいずれか1項記載の軌道検測車(1)。
【請求項10】
当該軌道検測車(1)は、前記慣性測定ユニット(8)、前記位置測定装置(9)および前記補償測定装置(20,22)の測定結果を評価するために設けられた評価装置(23)を有している、請求項1から9までのいずれか1項記載の軌道検測車(1)。
【請求項11】
当該軌道検測車(1)は、全球測位衛星システムの信号を受信するためのGNSSアンテナ(24)を有している、請求項1から10までのいずれか1項記載の軌道検測車(1)。
【請求項12】
前記第2の測定基部(11)は、上昇位置において、安全装置(25)によりロック可能である、請求項1から11までのいずれか1項記載の軌道検測車(1)。
【請求項13】
前記安全装置(25)は、固定フックとして形成されている、請求項12記載の軌道検測車(1)。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項記載の軌道検測車(1)の作動方法であって、
前記軌道検測車(1)の走行中に、前記慣性測定ユニット(8)によって空間曲線を検出し、第1の作動モードにおいて、前記位置測定装置(9)の測定データを用いて、前記空間曲線を、軌道延在部に対応する空間曲線に変換し、第2の作動モードにおいて、前記第2の測定基部(11)が降下した状態で、前記補償測定装置の測定データを用いて、前記空間曲線を、軌道延在部に対応する空間曲線に変換することを特徴とする、作動方法。
【請求項15】
第1の作動モードと第2の作動モードとを、測定信号に応じて自動的に切り替える、請求項14記載の作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道の2本のレール上を走行可能でありかつレール走行装置を有する車両フレームと、慣性測定ユニットおよび各レールに対する位置測定用の少なくとも1つの無接触式の位置測定装置が配置された第1の測定基部とを備えた、軌道の軌道形状(Gleisgeometrie)を検出するための軌道検測車に関する。さらに本発明は、このような軌道検測車の作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軌道の保守作業には、定期的な点検が必要である。このために、定期的な間隔で、軌道検測車の形態の軌道測定装置でもって軌道を走行し、軌道検測車が軌道形状を検出し、次いで軌道形状を評価する。軌道形状は、レール上を走行する車両の走行動力学に直接に影響を及ぼすので、軌道安全性を評価するためには精密な測定が重要である。したがって、軌道検測車は既にかなり以前から知られている。
【0003】
可動のポイントセンサでもって軌道と常時接触している機械的なセンサを備えた測定システムを使用することが多い。センサの動きから、次いで軌道形状を導出することができる。このような装置は、例えば独国特許出願公開第3914830号明細書から公知である。
【0004】
比較的新しい光学測定システムおよび慣性測定システムでは、所望の軌道形状測定データを導出するために、無接触式のレーザセンサが用いられる。鉛直方向の軌道位置は、座標系に関連付けられる2つの距離測定値の差から算出される。これにより、機械的な測定システムの速度制限も克服される。
【0005】
しかしながら、軌道上に雪または砂の吹きだまりがある場合、光学測定システムはその限界に突き当たり、したがって軌道形状を正しく検出することも、もはや不可能である。独国特許出願公開第4136904号明細書からは、例えば軌道のレール間隔を無接触式に測定する装置が公知である。慣性測定システムは、専門雑誌“Eisenbahningenieur (52) 9/2001”の第6~9頁に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の根底を成す課題は、冒頭で述べた形式の軌道検測車に関して、従来技術と比較した改良点を示すことにある。別の課題は、改良された軌道検測車の作動方法を説明することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これらの課題は、本発明に基づき、請求項1記載の軌道検測車および請求項14記載の方法によって解決される。各従属請求項には本発明の有利な構成が記載されている。
【0008】
本発明は、降下可能な第2の測定基部が配置されていることを想定しており、第2の測定基部は、レール上に載置可能な測定従輪を有しておりかつ補償測定装置を介して第1の測定基部に結合されている。よって、無接触式の位置測定装置が、例えば強い雨、雪または砂の吹きだまりによりその限界に突き当たると直ちに、降下可能な機械的な第2の測定基部による軌道測定を、間を置かずに継続することができる。この場合、補償測定装置は、慣性測定ユニットに対する第2の測定基部の位置変化を連続的に検出する。これにより、慣性測定ユニットの測定データから軌道形状を簡単に導出することができる。
【0009】
本発明の有利な実施形態では、各レールに対する位置測定用の第1の測定基部に、互いに離された2つの位置測定装置が配置されている、ということが想定されている。これにより、レール毎の一点測定の場合のような、軌道検測車の最低速度は一切必要とされない。車両の停止時または始動時にも、各レールの上り勾配または下り勾配ひいては長手方向高さを測定することができる。
【0010】
好適な改良では、位置測定装置は、レーザラインスキャナとして形成されている。この場合は、レーザラインスキャナの反応時間が極めて短くなり、測定周波数が極めて低くなるという利点がある。
【0011】
別の有利な構成では、補償測定装置は、距離測定装置および/または角度測定装置として形成されている。これにより、第1の測定基部と第2の測定基部との間の相対移動を正確に検出することができる。
【0012】
本発明による装置の別の改良は、第1の測定基部が、レール走行装置の走行装置フレームとして形成されていることを想定している。これにより、追加的な測定フレームの必要性がなくなる。
【0013】
有利な改良では、第2の測定基部は、2つの測定従輪を備えた第1のテレスコープ軸を有しており、第1のテレスコープ軸は、走行装置フレームに降下可能に支承されている。第2の測定基部は、必要に応じて軌道上に降下され、このときテレスコープ軸でもって、軌道の軌間に対する適合が行われる。
【0014】
本発明の有利な実施形態では、第2の測定基部が、2つの測定従輪を備えた第2のテレスコープ軸を有していることが想定されており、第2のテレスコープ軸は、第1のテレスコープ軸に対し、軌道車両長手方向軸線を中心として回動可能に支承されている。これにより、例えば軌道こう上時に生じるような、第1のテレスコープ軸に対する相対移動を測定することができる。この場合もやはり、このために軌道検測車の最低速度は一切不要である、という別の利点がある。
【0015】
さらに、各テレスコープ軸に、レールに対して測定従輪を側方に圧着させるための空圧駆動装置が割り当てられていると有意である。これにより、レール延在部の精密な追跡および完璧な測定結果が得られる。
【0016】
本発明の簡単な実施形態は、第2の測定基部が、空圧駆動装置を介して走行装置フレームに結合されていることを想定している。各空圧駆動装置は、一定の力において無出力の保持を可能にするので、第2の測定基部は、レールに継続して押し付けられることになる。
【0017】
本発明の別の有利な構成は、軌道検測車が、慣性測定ユニット、位置測定装置および補償測定装置の測定結果を評価するために設けられた評価装置を有していることにより、与えられている。つまり、この中央評価装置は、光学測定のデータおよび機械測定のデータをも処理する。
【0018】
空間的な位置検出については、軌道検測車が、全球測位衛星システムの信号を受信するためのGNSSアンテナを有していると、有意である。これにより、測定結果の空間的な対応を簡単に達成することができる。
【0019】
本発明の別の改良は、第2の測定基部が上昇位置において、安全装置によりロック可能である、ということを想定している。これにより、無接触式の位置測定装置の使用時には、第2の測定基部を上昇した休止位置に適宜に固定することができるようになっている。
【0020】
好適には、安全装置は固定フックとして形成されており、これにより、構造的に簡単であるにもかかわらず有効な構成となっている。
【0021】
本発明による方法は、軌道検測車の走行中に、慣性測定ユニットによって空間曲線を検出し、第1の作動モードにおいて、位置測定装置の測定データを用いて、空間曲線を、軌道延在部に対応する空間曲線に変換し、第2の作動モードにおいて、第2の測定基部が降下した状態で、補償測定装置の測定データを用いて、空間曲線を、軌道延在部に対応する空間曲線に変換することを想定している。この場合、有利には、両作動モードにおいて1つの共通の慣性測定ユニットが、空間曲線の検出に利用される。
【0022】
上記方法の別の実施形態では、第1の作動モードと第2の作動モードとを、測定信号に応じて自動的に切り替えることが想定されている。難しい条件のために、位置測定装置には正確な測定結果を検出することが不可能な場合には、第2の作動モードに自動的に切り替えられる。このことは、軌道上の条件が光学測定を再び許せば、逆の順序にも当てはまり、第2の作動モードから第1の作動モードに自動的に切り替えられる。
【0023】
以下に、本発明を添付の図面を参照して例示的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2】第1および第2の測定基部を示す概略立体図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に略示する、レール3上を走行可能なレール走行装置4と、レール走行装置4上に支持された車両フレーム5とを備えた、軌道2の軌道形状を検出するための軌道検測車1は、慣性測定ユニット8および複数の位置測定装置9を備えている、走行装置フレーム6として形成された第1の測定基部7と、複数の第1の空圧駆動装置10を介して降下可能な第2の測定基部11とを有している。
【0026】
第2の測定基部11は、レール3に載置可能な複数の測定従輪12を有しており、かつ複数の連結棒14を介して第1の測定基部7に結合されている。連結棒14は、その上端部15において、回動可能に第1の測定基部7に支承されており、その下端部16において、それぞれ第1のテレスコープ軸17と第2のテレスコープ軸18とに結合されている。第1のテレスコープ軸17は、第2のテレスコープ軸18に対し、軌道車両長手方向軸線19を中心として回動可能に支承されている(
図2)。
【0027】
走行装置フレーム6上には複数のコンソール26が配置されていてよく、これらのコンソール26に第1の空圧駆動装置10が支持されている。つまり、既存のレール走行装置4に、コンソール26と、第1の測定基部7のフレームとを後付けすることが可能である。
【0028】
軌道検測車1には、全球測位衛星システムの信号を受信するためのGNSSアンテナ24と、評価装置23とが配置されている。第2の測定基部11は、上昇位置では、好適には固定フックとして形成された複数の安全装置25によりロックされる。
【0029】
図2には、第1の測定基部7の一部と、降下された状態の第2の測定基部11とが示されている。レール走行装置4の端部側において、第1の測定基部7の下側に、複数の位置測定装置9が取り付けられている。これらの位置測定装置9は、好適にはレーザラインスキャナとして形成されており、この場合、各2つのレーザラインスキャナがレール3の内縁部に向けられている。
【0030】
軌道中心における空間曲線を検出するために、第1の測定基部7には、慣性測定ユニット8が、好適には2つの位置測定装置9の間の真ん中に配置されている。つまり、第1の測定基部7は、走行装置フレーム6、位置測定装置9および慣性測定ユニット8と共に、1つの剛性の装置を形成している。第1の作動モードでは、レールに対する第1の測定基部7の位置が、位置測定装置9により連続的に検出される。
【0031】
第2の作動モードでは、第2の測定基部11が、第1の空圧駆動装置10により、軌道2上へ降下している。第1の空圧駆動装置10には、補償測定装置として、各1つの第1の距離測定装置20が配置されている。これにより、第1の測定基部7と第2の測定基部11との間の鉛直方向の相対移動が検出される。代わりに、相対移動を検出するためには連結棒14に角度測定装置が取り付けられていてもよい。
【0032】
図3には、レール走行装置4を下から見た図が示されている。テレスコープ軸17,18には、測定従輪12をレール3に対して側方に圧着させるための第2の空圧駆動装置21が1つずつ配置されている。分岐器またはクロッシングを通過する際に測定従輪12がレールの隙間内へ押圧されることを防ぐために、各測定従輪12には案内支柱13が割り当てられている。案内支柱13がガードの傍らを案内されると直ちに、案内支柱13は割り当てられた測定従輪12を拘束し、このようにして圧着圧力に抗して作用する。
【0033】
テレスコープ軸17,18の間の中間には、補償測定装置として第2の距離測定装置22が配置されており、第2の距離測定装置22は、第1の測定基部7に対する第2の測定基部11の横方向ずれを検出する。このようにして、第2の作動モードでは、機械的な補償測定装置20,22により、レール3に対する第1の測定基部7の位置が検出される。
【0034】
1つの図示しない変化態様では、第1の測定基部7はレール走行装置4から分離され、フレームとしてレール車輪の車軸に取り付けられている。これにより、鉛直方向のレール延在部の直接的な測定作業が可能になると共に、レール3に対する第1の測定基部7の横方向の相対移動だけを検出すれば済むことになる。
【0035】
評価装置23には、慣性測定ユニット8、無接触式の位置測定装置9および補償測定装置20,22の測定信号が供給される。この場合、有利には連続的に、位置測定装置9の信号の妥当性点検が行われる。信号の飛躍または信号の異常が認められると直ちに第2の測定基部11が降下され、第1の作動モードから第2の作動モードに切り替えられる。