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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】バルーンカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/958 20130101AFI20220610BHJP
   A61M 25/098 20060101ALI20220610BHJP
   A61M 25/10 20130101ALI20220610BHJP
【FI】
A61F2/958
A61M25/098
A61M25/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019544569
(86)(22)【出願日】2018-09-13
(86)【国際出願番号】 JP2018034046
(87)【国際公開番号】W WO2019065280
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】P 2017186924
(32)【優先日】2017-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健太
【審査官】田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-86095(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0231790(US,A1)
【文献】特表2008-543399(JP,A)
【文献】米国特許第7198632(US,B2)
【文献】特表2015-512696(JP,A)
【文献】国際公開第2007/034639(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/958
A61M 25/098
A61M 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内管シャフトと、
前記内管シャフトの一部を覆う外管シャフトと、
前記内管シャフトと前記外管シャフトに固定されたバルーンと、
前記バルーンに配置されたステントと、
前記内管シャフトに配置された造影マーカーと、を備え、
前記バルーンは、前記バルーンが拡張した状態において、前記バルーンの最大外径部を形成する中間領域と、前記中間領域の先端から先端側に延びる先端側傾斜領域と、前記中間領域の基端から基端側に延びる基端側傾斜領域と、を有し、
前記ステントは、前記バルーンの前記中間領域の先端側に対応する位置に配置される先端部と、前記バルーンの前記中間領域の基端側に対応する位置に配置される基端部と、前記先端部と前記基端部との間に延びる中間部と、を有し、
前記造影マーカーは、造影性を有する金属材料からなる第1造影マーカー部と、造影性を有する樹脂材料からなる第2造影マーカー部と、を有し、
前記第1造影マーカー部は、前記中間領域と前記基端側傾斜領域との境界部および/または前記中間領域と前記先端側傾斜領域との境界部に対応する前記内管シャフトの位置に配置され、
前記第2造影マーカー部は、前記ステントが前記中間領域に配置された状態で、前記ステントの端部と前記第1造影マーカー部との間に配置され、
前記ステントの中間部に対応する前記内管シャフトの位置には、前記造影マーカーが配置されていない、バルーンカテーテル。
【請求項2】
前記第2造影マーカー部は、前記ステントよりもX線造影性が高い、請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項3】
前記造影マーカーは、前記第1造影マーカー部および前記第2造影マーカー部を備える基端側造影マーカーを有し、
前記基端側造影マーカーの前記第1造影マーカー部は、前記中間領域と前記基端側傾斜領域との前記境界部または当該境界部よりも基端側に対応する前記内管シャフトの位置に配置され、
前記基端側造影マーカーの前記第2造影マーカー部は、前記ステントが前記中間領域に配置された状態で、前記ステントの前記基端部または前記ステントの前記基端部よりも基端側に対応する前記内管シャフトの位置に配置されている、請求項1または請求項2に記載のバルーンカテーテル。
【請求項4】
前記第2造影マーカー部は、凹部を有し、
前記第1造影マーカー部は、前記第2造影マーカー部の凹部に配置される、請求項1~3のいずれか1項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項5】
前記内管シャフトは、凹部を有し、
前記造影マーカーは、前記内管シャフトの凹部に配置される、請求項1~4のいずれか1項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項6】
前記第2造影マーカー部は、前記第1造影マーカー部から前記ステントの端部側に向けて傾斜する傾斜部を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項7】
前記造影マーカーは、前記第1造影マーカー部および前記第2造影マーカー部を備える先端側造影マーカーを有し、
前記先端側造影マーカーの前記第1造影マーカー部は、前記中間領域と前記先端側傾斜領域との前記境界部または当該境界部よりも先端側に対応する前記内管シャフトの位置に少なくとも配置され、
前記先端側造影マーカーの前記第2造影マーカー部は、前記ステントが前記中間領域に配置された状態で、前記ステントの前記先端部または前記ステントの前記先端部よりも先端側に対応する前記内管シャフトの位置に少なくとも配置されている、請求項1~6のいずれか1項に記載のバルーンカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステントが配置されたバルーンを備えるバルーンカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から血管等に形成された狭窄部等の病変部の治療方法として、ステント留置術が知られている。病変部へのステントの送達および留置には、例えば、下記特許文献1に記載されているようなバルーンカテーテルが使用される。
【0003】
医師等の術者は、ステントを使用した手技において、収縮した状態のバルーンの外表面にステントが配置されたバルーンカテーテルを操作し、バルーンおよびステントを病変部まで送達する。術者は、病変部までバルーンおよびステントを送達した後、バルーンとともにステントを拡張させる。ステントは、拡張した状態で病変部に留置される。
【0004】
上記のようにステントを病変部に留置する際、術者は、バルーンカテーテルのシャフトに配置された造影マーカーの位置を基準にして、病変部に対してステントを位置決めする。具体的には、術者は、造影マーカーの位置をX線画像上で確認し、造影マーカーとステント端部の相対的な位置関係に基づいて生体管腔の所望の位置にステントを配置する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-111157号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
バルーンカテーテルの造影マーカーは、X線画像上で高い造影性を有するため、金やプラチナ等の金属が使用される。例えば、造影マーカーが金属等の比較的硬質な材料で形成されている場合、造影マーカーとステントの端部との間にバルーンが挟み込まれると、バルーンとステントの端部とが擦過し、バルーンが損傷する可能性がある。そのため、造影マーカーとステントの端部との間には一定の距離が空けられる。しかしながら、造影マーカーとステントの端部との間に一定の距離が空けられると、次のような課題が生じる。
【0007】
術者は、血管の分岐部周辺に形成された病変部にステントを留置する場合、ステントの端部側(例えば、基端部側)に配置された造影マーカーを基準にして病変部に対するステントの位置決めを行う。その際、造影マーカーとステントの端部との間に一定の距離が存在すると、その距離の分だけ、ステントの端部の留置位置がずれてしまう。そのため、術者は、血管の分岐部周辺に形成された病変部に対してステントの端部を正確に位置決めすることが難しくなる。
【0008】
また、上記のような課題に鑑みて、例えば、ステントの全長(軸方向の全長)を示す造影マーカーをバルーンカテーテルのシャフトに配置することも考えられる。このように造影マーカーを配置した場合、術者は、ステントの端部の位置をX線画像上で容易に確認することができる。そのため、術者は、病変部に対するステントの位置決めを比較的正確に行うことが可能になる。しかしながら、上記のように造影マーカーを配置した場合、造影マーカーは、バルーンの中間領域(拡張部)にも配置されることになるため、ステントの送達時におけるバルーンのプロファイリング(外径)が大きくなってしまうという課題が生じる。
【0009】
本発明は、病変部に対してステントの端部をより正確に位置決めでき、かつ、収縮した状態のバルーンのプロファイルが大きくなるのを防止できるバルーンカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るバルーンカテーテルは、内管シャフトと、前記内管シャフトの一部を覆う外管シャフトと、前記内管シャフトと前記外管シャフトに固定されたバルーンと、前記バルーンに配置されたステントと、前記内管シャフトに配置された造影マーカーと、を備え、前記バルーンは、前記バルーンが拡張した状態において、前記バルーンの最大外径部を形成する中間領域と、前記中間領域の先端から先端側に延びる先端側傾斜領域と、前記中間領域の基端から基端側に延びる基端側傾斜領域と、を有し、前記ステントは、前記バルーンの前記中間領域の先端側に対応する位置に配置される先端部と、前記バルーンの前記中間領域の基端側に対応する位置に配置される基端部と、前記先端部と前記基端部との間に延びる中間部と、を有し、前記造影マーカーは、造影性を有する金属材料からなる第1造影マーカー部と、造影性を有する樹脂材料からなる第2造影マーカー部と、を有し、前記第1造影マーカー部は、前記中間領域と前記基端側傾斜領域との境界部および/または前記中間領域と前記先端側傾斜領域との境界部に対応する前記内管シャフトの位置に配置され、前記第2造影マーカー部は、前記ステントが前記中間領域に配置された状態で、前記ステントの端部と前記第1造影マーカー部との間に配置され、前記ステントの中間部に対応する前記内管シャフトの位置には、前記造影マーカーが配置されていない。
【発明の効果】
【0011】
上記のバルーンカテーテルは、ステントの端部と金属材料からなる第1造影マーカー部との間に樹脂材料を含む第2造影マーカー部が配置されている。そのため、第2造影マーカー部は、ステントの端部が第1造影マーカー部に接触することを防止し、ステントの端部と第1造影マーカー部との間に配置されたバルーンが損傷するのを防止できる。それにより、バルーンカテーテルは、ステントの端部を造影マーカーに近接して配置できる。そのため、医師等の術者は、ステントを留置する際、造影マーカーを基準にすることにより、ステントがバルーンの最大外形部(中間領域)の位置に配置されていること確認しつつ、生体管腔の所望の位置にステントの端部をより正確に位置決めすることができる。また、バルーンカテーテルは、ステントの中間部に対応する内管シャフトの位置(バルーンの中間領域に対応する内管シャフトの位置)に造影マーカーが配置されていないため、収縮した状態のバルーンのプロファイルが大きくなるのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係るバルーンカテーテルを示す図である。
図2図1の破線部2A部分の軸方向の断面図である。
図3図2に示すバルーンが拡張した状態を示す断面図である。
図4図4(A)は、図2の破線部4A部分を拡大した断面図であり、図4(B)は、図2の破線部4B部分を拡大した断面図である。
図5】実施形態に係るバルーンカテーテルの作用を説明するための模式的な断面図である。
図6図5の一部を拡大して示す断面図である。
図7】変形例に係るバルーンカテーテルの断面図である。
図8図7の破線部8A部分を拡大した断面図である。
図9】変形例1に係る造影マーカーを示す断面図である。
図10】変形例2に係る造影マーカーを示す断面図である。
図11】変形例3に係る造影マーカーを示す断面図である。
図12】変形例4に係る造影マーカーを示す断面図である。
図13】変形例5に係る造影マーカーを示す断面図である。
図14】変形例6に係る造影マーカーを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、各図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0014】
図1にはバルーンカテーテル10を簡略化して示し、図2には図1に示す破線部2A部分の拡大断面図(軸方向の断面図)を示し、図3には図2に示すバルーン130およびステント140が拡張した状態の断面図を示し、図4(A)には図2に示す破線部4A部分を拡大した断面図を示し、図4(B)には図2に示す破線部4B部分を拡大した断面図を示し、図5および図6にはバルーンカテーテル10の作用を説明するための模式的な断面図を示している。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係るバルーンカテーテル10は、バルーン130に配置(クリンプ)されたステント140を備えるステントデリバリー用のバルーンカテーテルとして構成している。
【0016】
図1図3に示すように、バルーンカテーテル10は、長尺状のシャフト100と、シャフト100の先端側に配置されたバルーン130と、バルーン130に配置されたステント140と、シャフト100の基端側に配置されたハブ190と、を有している。
【0017】
実施形態の説明において、バルーン130を配置した側をバルーンカテーテル10の先端側とし、ハブ190を配置した側をバルーンカテーテル10の基端側とし、シャフト100が延伸する方向を軸方向とする。また、実施形態の説明において、先端部とは、先端(最先端)およびその周辺を含む一定の範囲を意味し、基端部とは、基端(最基端)およびその周辺を含む一定の範囲を意味する。
【0018】
図1に示すように、バルーンカテーテル10は、シャフト100の先端側寄りにガイドワイヤ200が出入り可能な基端開口部(ガイドワイヤポート)105が形成された、いわゆるラピッドエクスチェンジ型のカテーテルとして構成している。
【0019】
図2に示すように、シャフト100は、内管シャフト110と、内管シャフト110の一部を覆う外管シャフト120と、を有している。
【0020】
内管シャフト110は、ガイドワイヤ200が挿通される内腔(ガイドワイヤルーメン)115を備えている。外管シャフト120は、バルーン130を拡張させるための加圧媒体が流通可能な内腔(拡張ルーメン)125を備えている。
【0021】
外管シャフト120は、例えば、シャフト100の基端開口部105付近において内管シャフト110と一体的に接続(融着)される先端側シャフトおよび基端側シャフト(各シャフトの図示は省略する)により形成できる。
【0022】
図2に示すように、内管シャフト110の先端側は、外管シャフト120の内腔125に配置している。内管シャフト110の先端側の一定の範囲は、外管シャフト120の先端よりも先端側へ突出するように配置している。
【0023】
内管シャフト110は、先端側に配置された先端部材180を有している。先端部材180は、ガイドワイヤ200を挿通可能な内腔181を有している。
【0024】
内管シャフト110は、先端側に先端部材180を備えることにより、バルーンカテーテル10の先端が生体管腔(血管の内壁等)に接触した際に、生体器官に損傷が生じるのを防止できる。先端部材180は、例えば、柔軟な樹脂材料で形成できる。ただし、先端部材180の材質は、内管シャフト110に対して固定が可能なものであれば特に限定されない。
【0025】
図3に示すように、バルーン130は、バルーン130が拡張した状態において、バルーン130の最大外径部を形成する中間領域133と、中間領域133の先端から先端側に延びる先端側傾斜領域134と、中間領域133の基端から基端側に延びる基端側傾斜領域135と、を有している。また、バルーン130は、内管シャフト110の先端部111に固定された先端側固定部131と、外管シャフト120の先端部121に固定された基端側固定部132と、を有している。
【0026】
バルーン130の先端側傾斜領域134は、先端側傾斜領域134の先端側に形成された第1傾斜領域134aと、先端側傾斜領域134の基端側に形成された第2傾斜領域134bと、を有している。また、バルーン130の基端側傾斜領域135は、基端側傾斜領域135の基端側に形成された第1傾斜領域135aと、基端側傾斜領域135の先端側に形成された第2傾斜領域135bと、を有している。
【0027】
バルーン130は、内管シャフト110の外周面との間に、外管シャフト120の内腔125と連通する拡張空間136を形成している。バルーン130の中間領域133は、拡張空間136に流体が流入すると、軸方向と交差する放射方向へ拡張する。中間領域133は、バルーン130の拡張に伴ってバルーン130に配置されたステント140を拡張させる。
【0028】
図2および図3に示すように、ステント140は、バルーン130の中間領域133の先端側に対応する位置に配置される先端部141と、バルーン130の中間領域133の基端側に対応する位置に配置される基端部142と、先端部141と基端部142との間に延びる中間部143と、を有している。
【0029】
ステント140は、例えば、拡張可能なストラット(骨格)を有する公知のバルーン拡張型のステントで構成することができる。なお、ステント140の具体的な構造(ストラットのデザイン、拡張径、軸方向の長さ等)は特に限定されない。また、例えば、ステント140の外表面には、薬剤コート層等を設けることも可能である。
【0030】
図2および図3に示すように、バルーンカテーテル10は、内管シャフト110に配置された造影マーカー150を有している。造影マーカー150は、ステント140の中間部143に対応する内管シャフト110の位置には配置されていない。造影マーカー150の詳細については後述する。
【0031】
図1に示すように、ハブ190は、流体(例えば、造影剤や生理食塩水)を供給するためのインデフレーター等の供給装置(図示省略)と液密・気密に接続可能なポート191を有している。ハブ190のポート191は、例えば、チューブ等が接続・分離可能に構成された公知のルアーテーパー等によって構成することができる。
【0032】
次に、造影マーカー150について説明する。
【0033】
図2および図3に示すように、造影マーカー150は、バルーン130の基端側の内管シャフト110の対応する位置に配置された基端側造影マーカー160と、バルーン130の先端側の内管シャフト110の対応する位置に配置された先端側造影マーカー170と、を有している。
【0034】
バルーン130は、ステント140が内管シャフト110に配置された状態で、内管シャフト110、造影マーカー150、外管シャフト120に収縮して巻き付けた状態で提供される。図2図4(A)、図4(B)、図6では、外管シャフト120に収縮して巻き付けた状態のバルーン130を概略的に図示している。
【0035】
図4(A)に示すように、基端側造影マーカー160は、造影性を有する金属材料からなる第1造影マーカー部161と、造影性を有する樹脂材料からなる第2造影マーカー部162と、を有している。なお、上記の「樹脂材料からなる」とは、樹脂材料を主材料(主原料)として構成されることを意味し、厳密に樹脂材料のみで構成されることを限定するものではない。
【0036】
第1造影マーカー部161は、バルーン130の中間領域133とバルーン130の基端側傾斜領域135との境界部b1(図3を参照)に対応する内管シャフト110の位置に配置している。本実施形態では、第1造影マーカー部161は、第1造影マーカー部161の先端部161aが境界部b1と周方向に重なるように配置している。具体的には、第1造影マーカー部161は、第1造影マーカー部161の先端部161aと境界部b1とが内管シャフト110の軸方向において略同一の位置で周方向に重なるように配置している。なお、第1造影マーカー部161は、例えば、第1造影マーカー部161によりバルーン130の最大外径部を形成する中間領域133の位置を把握することができる限り、第1造影マーカー部161の先端部161aが境界部b1よりも内管シャフト110の基端側に対応する位置に配置されてもよい。
【0037】
第1造影マーカー部161は、例えば、内管シャフト110の外周に沿って延在するリング状の部材で形成することができる。
【0038】
第2造影マーカー部162は、ステント140がバルーン130の中間領域133に配置された状態で、ステント140の基端部142と第1造影マーカー部161との間に配置されている。具体的には、第2造影マーカー部162は、第2造影マーカー部162の先端部162aがステント140の基端部142と第1造影マーカー部161との間に介在するように、内管シャフト110に配置されている。
【0039】
図4(A)に示すように、第2造影マーカー部162は、ステント400がバルーン130の中間領域133に配置された状態で、ステント140の基端部142に対応する内管シャフト110の位置に配置している。本実施形態では、第2造影マーカー部162は、第2造影マーカー部162の先端部162aがステントの基端部142と周方向に重なるように配置している。より具体的には、第2造影マーカー部162は、第2造影マーカー部162の先端部162aとステント140の基端部142とが内管シャフト110の軸方向において略同一の位置で周方向に重なるように配置している。なお、第2造影マーカー部162は、例えば、第2造影マーカー部162によりステント140の基端部142の位置が把握することができる限り、第2造影マーカー部162の先端部162aがステント140の基端部142よりも内管シャフト110の基端側に対応する位置に配置されてもよい。
【0040】
図4(A)に示すように、ステント140がバルーン130の中間領域133に配置された状態で、バルーン130の一部は、内管シャフト110の周方向において、第2造影マーカー部162の先端部162aとステント140の基端部142との間に配置される。なお、ステント140がバルーン130の中間領域133に配置された状態で、バルーン130の一部は、内管シャフト110の軸方向において、第2造影マーカー部162の先端部162aとステント140の基端部142との間に配置されてもよい。また、第2造影マーカー部162は、金属材料で形成された第1造影マーカー部161よりも柔軟に形成される。そのため、バルーン130は、ステント140と第2造影マーカー部162との間に一部が挟まれて配置される場合においても、生体管腔送達時に擦過による損傷が生じ難い。したがって、バルーンカテーテル10は、ステント140の基端部142と基端側造影マーカー160を近接して配置することができる。なお、ステント140の基端部142と基端側造影マーカー160(第2造影マーカー部162の先端部162a)との間の距離は、例えば、0mm~0.2mmに形成できる。
【0041】
なお、図4(A)に示すように、ステント140がバルーン130に配置された状態で、バルーン130の少なくとも一部は、内管シャフト110の軸方向(内管シャフト110の軸方向に沿う矢視であり、矢印aで示す矢視)において、基端側造影マーカー160と重なる位置に配置されている。
【0042】
第2造影マーカー部162は、ステント140よりもX線造影性が高い。第2造影マーカー部162の造影性の大きさは、例えば、第2造影マーカー部162を形成する樹脂材料の種類、樹脂材料中に含有される造影性を有する粒子の種類、造影性を有する粒子の含有量等により調整できる。なお、第1造影マーカー部161は、例えば、第2造影マーカー部162よりもX線造影性が大きくなるように形成できる。
【0043】
図4(A)に示すように、第2造影マーカー部162は、凹部162cを有している。凹部162cは、第2造影マーカー部162の軸方向(図4(A)の左右方向)の略中心位置に形成している。第1造影マーカー部161は、第2造影マーカー部162の凹部162cに配置している。また、第1造影マーカー部161は、軸方向における各端面(先端部161a側の端面、基端部161b側の端面)が第2造影マーカー部162により覆われている。また、第1造影マーカー部161は、バルーン130の内表面側に配置される第1造影マーカー部161の外周面が第2造影マーカー部162から露出している。
【0044】
凹部162cの断面形状や大きさ等は、例えば、第1造影マーカー部161の断面形状に合わせて形成できる。例えば、凹部162cの断面形状は、図4(A)に示すように、第1造影マーカー部161が凹部162cに配置され、かつ、第1造影マーカー部161が凹部162cから突出しない形状に形成できる。
【0045】
第1造影マーカー部161の厚み(図4(A)に示す上下片側部分の上下方向の最大寸法)は、例えば、5~30μmに形成できる。また、第2造影マーカー部162の厚み(図4(A)に示す上下片側部分の上下方向の最大寸法)は、例えば、15~90μmに形成できる。
【0046】
図4(A)に示すように、第2造影マーカー部162の先端部162aは、内管シャフト110の軸心を通る直線に対して垂直に延びる平坦部を形成している。また、第2造影マーカー部162の基端部162bは、内管シャフト110の基端側に向けて傾斜する傾斜部を形成している。
【0047】
図4(A)に示すように、内管シャフト110は、内管シャフト110の基端側造影マーカー160と対応する位置に形成された凹部116を有している。基端側造影マーカー160は、内管シャフト110の凹部116に配置されている。凹部116は、例えば、内管シャフト110の外周全周に形成できる。凹部116は、例えば、図4(A)に示すように、第2造影マーカー部162の一部を挿入可能な断面形状で形成できる。ただし、凹部116の具体的な断面形状や大きさ(軸方向の長さ)等は特に限定されない。
【0048】
図4(B)に示すように、先端側造影マーカー170は、造影性を有する金属材料からなる第1造影マーカー部171と、造影性を有する樹脂材料を含む第2造影マーカー部172と、を有している。
【0049】
先端側造影マーカー170は、基端側造影マーカー160と軸方向に対称な構造(図2および図3の左右方向に反転させた構造)を有している。そのため、先端側造影マーカー170の説明において基端側造影マーカー160と実質的に同一に構成できる点については説明を適宜省略する。
【0050】
第1造影マーカー部171は、バルーン130の中間領域133とバルーン130の先端側傾斜領域134との境界部b2(図3を参照)に対応する内管シャフト110の位置に配置している。本実施形態では、第1造影マーカー部171は、第1造影マーカー部171の基端部171bが境界部b2と周方向に重なるように配置している。具体的には、第1造影マーカー部171は、第1造影マーカー部171の基端部171bと境界部b2とが内管シャフト110の軸方向において略同一の位置で周方向に重なるように配置している。なお、第1造影マーカー部171は、例えば、第1造影マーカー部171によりバルーン130の最大外径部を形成する中間領域133の位置を把握することができる限り、第1造影マーカー部171の基端部171bが境界部b2よりも内管シャフト110の先端側に対応する位置に配置してもよい。
【0051】
術者は、上記のように第1造影マーカー部171が配置されているため、第1造影マーカー部171により、バルーン130が拡張した状態において、バルーン130の最大外径部を形成する中間領域133の位置を把握することができる。そのため、術者は、病変部等にバルーン130を送達した後、ステント140がバルーン130の中間領域133に配置されていることを確認することができる。
【0052】
第1造影マーカー部171は、例えば、内管シャフト110の外周に沿って延在するリング状の部材で形成することができる。
【0053】
第2造影マーカー部172は、ステント140がバルーン130の中間領域133に配置された状態で、ステント140の先端部141と第1造影マーカー部171との間に配置している。具体的には、第2造影マーカー部172は、第2造影マーカー部172の基端部172bがステント140の先端部141と第1造影マーカー部171との間に介在するように、内管シャフト110に配置されている。
【0054】
図4(B)に示すように、第2造影マーカー部172は、ステント400がバルーン130の中間領域133に配置された状態で、ステント140の先端部141に対応する内管シャフト110の位置に配置している。本実施形態では、第2造影マーカー部172は、第2造影マーカー部172の基端部172bがステント140の先端部141と周方向に重なるように配置している。より具体的には、第2造影マーカー部172は、第2造影マーカー部172の基端部172bとステント140の先端部141とが内管シャフト110の軸方向において略同一の位置で周方向に重なるように配置している。なお、第2造影マーカー部172は、例えば、第2造影マーカー部172によりステント140の先端部141の位置が把握することができる限り、第2造影マーカー部172の基端部172bがステント140の先端部141よりも内管シャフト110の先端側に対応する位置に配置されてもよい。
【0055】
前述した基端側造影マーカー160と同様に、ステント140がバルーン130に配置された状態で、バルーン130の一部は、内管シャフト110の周方向において、第2造影マーカー部172の基端部172bとステント140の先端部141との間に配置される。なお、ステント140がバルーン130の中間領域133に配置された状態で、バルーン130の一部は、内管シャフト110の軸方向において、第2造影マーカー部172の基端部172bとステント140の先端部141との間に配置されてもよい。また、第2造影マーカー部172は、金属材料で形成された第1造影マーカー部171よりも柔軟に形成される。そのため、バルーン130は、ステント140と第2造影マーカー部172との間に一部が挟まれて配置される場合においても、生体管腔送達時に擦過による損傷が生じ難い。したがって、バルーンカテーテル10は、ステント140の先端部141と先端側造影マーカー170を近接して配置することができる。なお、ステント140の先端部141と先端側造影マーカー170(第2造影マーカー部172の基端部172b)との間の距離は、例えば、0mm~0.2mmに形成できる。
【0056】
なお、図4(B)に示すように、ステント140がバルーン130に配置された状態で、バルーン130の少なくとも一部は、内管シャフト110の軸方向(内管シャフト110の軸方向に沿う矢視であり、矢印aで示す矢視)において、先端側造影マーカー170と重なる位置に配置されている。
【0057】
第2造影マーカー部172は、ステント140よりもX線造影性が高い。第2造影マーカー部172の造影性の大きさは、例えば、第2造影マーカー部172を形成する樹脂材料の種類、樹脂材料中に含有される造影性を有する粒子の種類、造影性を有する粒子の含有量等により調整できる。なお、第1造影マーカー部171は、例えば、第2造影マーカー部172よりもX線造影性が大きくなるように形成できる。
【0058】
図4(B)に示すように、第2造影マーカー部172は、凹部172cを有している。凹部172cは、第2造影マーカー部172の軸方向(図4(B)の左右方向)の略中心位置に形成している。第1造影マーカー部171は、第2造影マーカー部172の凹部172cに配置している。また、第1造影マーカー部171は、軸方向における各端面(先端部171a側の端面、基端部171b側の端面)が第2造影マーカー部172により覆われている。また、第1造影マーカー部171は、バルーン130の内表面側に配置される第1造影マーカー部171の外周面が第2造影マーカー部172から露出している。
【0059】
第1造影マーカー部171の厚み(図4(B)に示す上下片側部分の上下方向の最大寸法)は、例えば、5~30μmで形成できる。また、第2造影マーカー部172の厚み(図4(B)に示す上下片側部分の上下方向の最大寸法)は、例えば、15~90μmで形成できる。
【0060】
第2造影マーカー部172の先端部172aは、内管シャフト110の先端側に向けて傾斜する傾斜部を形成している。また、第2造影マーカー部172の基端部172bは、内管シャフト110の軸心を通る直線に対して垂直に延びる平坦部を形成している。
【0061】
図4(B)に示すように、内管シャフト110は、内管シャフト110の先端側造影マーカー170と対応する位置に形成された凹部116を有している。先端側造影マーカー170は、内管シャフト110の凹部116に配置している。
【0062】
次に、図5および図6を参照して、造影マーカー150(基端側造影マーカー160、先端側造影マーカー170)の作用を説明する。
【0063】
図5には、血管の分岐部Bの周辺に形成された狭窄部Sにステント140を留置する際の様子を模式的に示している。
【0064】
医師等の術者は、ステント140を狭窄部Sに配置する際、ステント140を円滑に拡張するため、基端側造影マーカー160及び先端側造影マーカー170により、ステント140がバルーン130の最大外径部を形成する中間領域133に位置していることを確認する。また、医師等の術者は、ステント140を狭窄部Sに配置する際、図6に示すように、ステント140の基端部142を狭窄部Sの基端部Sb付近に位置決めする。この際、術者は、基端側造影マーカー160の位置を基準にして、ステント140の基端部142の位置決めする。具体的には、術者は、X線画像上において、第2造影マーカー部162の先端部162a(基端側造影マーカー160の先端部)の位置A1を確認しつつ、血管の分岐部B周辺に第2造影マーカー部162の先端部162aを配置する。前述したように、本実施形態に係るバルーンカテーテル10は、ステント140の基端部142と基端側造影マーカー160の先端部とを近接して配置することができるため、両者の間の距離(ギャップ)が小さい。そのため、術者は、基端側造影マーカー160に基づいてステント140の位置決めを行うことにより、血管の分岐部Bの周辺に形成された狭窄部Sの基端部Sb付近にステント140の基端部142を容易に配置することができる。それにより、バルーンカテーテル10は、血管の分岐部Bの周辺に形成された狭窄部Sの治療効果の向上を図ることができる。
【0065】
なお、バルーンカテーテル10は、先端側造影マーカー170を有するため、例えば、先端側造影マーカー170を利用してステント140の先端部141を狭窄部等に位置決めする際、基端側造影マーカー160を利用する場合と同様に、ステント140の先端部141を所望の位置に容易に配置することができる。
【0066】
次に、バルーンカテーテル10の構成材料を説明する。なお、以下に説明する各材料は、一例に過ぎない。そのため、本実施形態に係るバルーンカテーテル10の構成材料は特に限定されない。
【0067】
内管シャフト110は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、軟質ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂、ポリウレタンエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー等の各種エラストマー、ポリアミド、結晶性ポリエチレン、結晶性ポリプロピレン等の結晶性プラスチック等で形成できる。
【0068】
外管シャフト120は、例えば、内管シャフト110の構成材料として例示した上記のものと同様のもので形成できる。
【0069】
バルーン130は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリ塩化ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、架橋型エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリスチレンエラストマー、シリコーンゴム、ラテックスゴム等で形成できる。
【0070】
ステント140は、例えば、ステンレス鋼等の鉄ベース合金、タンタル(タンタル合金)、プラチナ(プラチナ合金)、金(金合金)、コバルトクロム合金等のコバルトベース合金、チタン合金、ニオブ合金等で形成できる。ただし、ステント140は、ポリマーなどを一部に含むものであってもよいし、ポリマーを主材料として構成された生分解性のステントであってもよい。
【0071】
第1造影マーカー部161、171は、例えば、白金、金、銀、イリジウム、チタン、タングステン等の金属、またはこれらの合金等により形成できる。
【0072】
第2造影マーカー部162、172は、例えば、主材料である樹脂材料として、ポリウレタン、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、エポキシ樹脂、アクリル系樹脂等を使用できる。また、上記樹脂材料に造影性を備えるタングステン、ハロゲン化合物等を含有させてもよい。
【0073】
次に、本実施形態に係るバルーンカテーテル10の作用を説明する。
【0074】
バルーンカテーテル10は、内管シャフト110と、内管シャフト110の一部を覆う外管シャフト120と、内管シャフト110と外管シャフト120に固定されたバルーン130と、バルーン130に配置されたステント140と、内管シャフト110に配置された造影マーカー150と、を備えている。バルーン130は、バルーン130が拡張した状態において、バルーン130の最大外径部を形成する中間領域133と、中間領域133の先端から先端側に延びる先端側傾斜領域134と、中間領域133の基端から基端側に延びる基端側傾斜領域135と、を有している。ステント140は、バルーン130の中間領域133の先端側に対応する位置に配置される先端部141と、バルーン130の中間領域133の基端側に対応する位置に配置される基端部142と、先端部141と基端部142との間に延びる中間部143と、を有している。造影マーカー150は、造影性を有する金属材料からなる第1造影マーカー部161、171と、造影性を有する樹脂材料を含む第2造影マーカー部162、172と、を有している。第1造影マーカー部161、171は、バルーン130の中間領域133とバルーン130の基端側傾斜領域135との境界部b1および/またはバルーン130の中間領域133とバルーン130の先端側傾斜領域134との境界部b2に対応する内管シャフト110の位置に配置されている。そして、第2造影マーカー部162、172は、ステント140がバルーン130の中間領域133に配置された状態で、ステント140の各端部141、142と第1造影マーカー部161、171との間に配置され、ステント140の中間部143に対応する内管シャフト110の位置には、造影マーカー150が配置されていない。
【0075】
上記のように構成したバルーンカテーテル10は、ステント140の端部141、142と金属材料からなる第1造影マーカー部161、171との間に樹脂材料を含む第2造影マーカー部162、172が配置されている。そのため、第2造影マーカー部162、172は、ステント140の端部141、142が第1造影マーカー部161、171に接触することを防止し、ステント140の端部141、142と第2造影マーカー部172との間に配置されたバルーン130が損傷するのを防止できる。それにより、バルーンカテーテル10は、ステント140の端部141、142を第1造影マーカー部161、171に近接して配置することができる。そのため、医師等の術者は、ステント140を留置する際、造影マーカー(第1造影マーカー部161、171及び第2造影マーカー部162、172)を基準にすることにより、ステント140がバルーンの最大外形部の位置に配置されていることを確認しつつ、ステント140の端部141、142を生体管腔の所望の位置に対してより正確に位置決めすることができる。また、バルーンカテーテル10は、ステント140の中間領域133に対応する内管シャフト110の位置(バルーン130の中間領域133に対応する内管シャフト110の位置)に造影マーカー150が配置されていないため、収縮した状態のバルーン130のプロファイルが大きくなるのを防止できる。
【0076】
また、第2造影マーカー部162、172は、ステント140よりもX線造影性が高い。そのため、医師等の術者は、ステント140を生体管腔の所望の位置に配置する際、第2造影マーカー部162、172を基準にすることにより、狭窄部等の病変部に対してステント140の端部141、142を容易に位置決めすることができる。
【0077】
また、造影マーカー150は、第1造影マーカー部161および第2造影マーカー部162を備える基端側造影マーカー160を有している。基端側造影マーカー160の第1造影マーカー部161は、バルーン130の中間領域133と基端側傾斜領域135との境界部b1または境界部b1よりも基端側に対応する内管シャフト110の位置に配置されている。また、基端側造影マーカー160の第2造影マーカー部162は、ステント140が中間領域133に配置された状態で、ステント140の基端部142またはステント140の基端部142よりも基端側に対応する内管シャフト110の位置に配置されている。これにより、医師等の術者は、第1造影マーカー部161により、ステント140の基端部142がバルーン130の最大外径部を形成する中間領域133に位置していることを確認できる。また、医師等の術者は、第2造影マーカー部162により、生体管腔において、バルーンカテーテル10の手元側に位置するステント140の基端部142の位置を把握できる。なお、医師等の術者は、ステント140の基端部142がバルーンカテーテル10の手元側に存在するため、バルーンカテーテル10の操作性の観点より、ステント140の基端部142の位置決めをしやすい。そのため、医師等の術者は、バルーンカテーテル10を使用した手技において、基端側造影マーカー160の各造影マーカー部161、162に基づいて、ステント140の基端部142がバルーン130の最大外径部を形成する中間領域133に位置していることを確認しつつ、ステント140の基端部142を生体管腔の所望の位置に位置決めし、ステント140を適切に配置することができる。
【0078】
また、第2造影マーカー部162、172は、凹部162c、172cを有している。第1造影マーカー部161、171は、第2造影マーカー部162、172の凹部162c、172cに配置している。そのため、バルーンカテーテル10は、第1造影マーカー部161、171が第2造影マーカー部162、172から位置ずれするのを好適に防止できる。
【0079】
また、内管シャフト110は、凹部116を有している。造影マーカー150は、内管シャフト110の凹部116に配置している。そのため、バルーンカテーテル10は、造影マーカー150が内管シャフト110から位置ずれするのを好適に防止できる。また、バルーンカテーテル10は、内管シャフト110の造影マーカー150が配置された部分のバルーン130のプロファイルが大きくなるのを防止できる。
【0080】
また、造影マーカー150は、第1造影マーカー部171および第2造影マーカー部172を備える先端側造影マーカー170を有している。先端側造影マーカー170の第1造影マーカー部171は、バルーン130の中間領域133と先端側傾斜領域134との境界部b2または境界部b2よりも先端側に対応する内管シャフト110の位置に配置されている。また、先端側造影マーカー170の第2造影マーカー部172は、ステント140が中間領域133に配置された状態で、ステント140の先端部141またはステント140の先端部141よりも先端側に対応する内管シャフト110の位置に配置されている。これにより、医師等の術者は、第1造影マーカー部171により、ステント140の先端部141がバルーン130の最大外径部を形成する中間領域133に位置していることを確認できる。また、医師等の術者は、第2造影マーカー部172により、生体管腔において、ステント140の先端部141の位置を把握できる。そのため、医師等の術者は、バルーンカテーテル10を使用した手技において、先端側造影マーカー170の各造影マーカー部171、172に基づいて、ステント140の先端部141がバルーン130の最大外径部を形成する中間領域133に位置していることを確認しつつ、ステント140の先端部141を生体管腔の所望の位置に位置決めし、ステント140を配置することができる。
【0081】
<変形例>
次に、変形例に係るバルーンカテーテルを説明する。変形例の説明では、既に説明した内容と同一の内容についてはその説明を適宜省略する。変形例の説明において特に言及しない点は、前述した実施形態と同様に構成することができるものとする。
【0082】
図7には、変形例に係るバルーンカテーテルの先端部の断面図を示しており、図8には、図7の破線部8Aを拡大して示している。
【0083】
図8に示すように、変形例に係るバルーンカテーテルが備える基端側造影マーカー160の第2造影マーカー部162は、第1造影マーカー部161からステント140の基端部142側に向けて傾斜する傾斜部(先端部)162aを有している。
【0084】
変形例に係るバルーンカテーテルは、第2造影マーカー部162の傾斜部162aとステント140の基端部142の一部が内管シャフト110の周方向に重なるように配置されている。そのため、ステント140の基端部142と基端側造影マーカー160(第2造影マーカー部162)との間に軸方向のギャップが形成されなくなる。したがって、医師等の術者は、ステント140の基端部142を狭窄部等の病変部に対してより一層正確に位置決めすることができる。なお、第2造影マーカー部162とステント140の周方向に重なる位置は、第2造影マーカー部162及びステント140の造影性により、第2造影マーカー部162単体の造影性又はステント140単体の造影性よりも高くなるため、術者は適切にステントの位置決めを行うことができる。
【0085】
また、ステント140の基端部142は、第2造影マーカー部162の傾斜部162aに配置している。そのため、バルーンカテーテル10は、ステント140の基端部142と基端側造影マーカー160とが周方向に重なった部分のバルーン130のプロファイリングが大きくなるのを防止できる。
【0086】
なお、先端側造影マーカー170は、基端側造影マーカー160と軸方向に対称な構造(図7および図8の左右方向に反転させた構造)を有している。そのため、先端側造影マーカー170は、基端側造影マーカー160と実質的に同様の作用効果を奏することができる。
【0087】
次に、造影マーカー150(基端側造影マーカー160)の各変形例を説明する。
【0088】
図9に示す変形例1に係る基端側造影マーカー160は、第1造影マーカー部161の先端部161aの先端側(先端面側)を覆うように第2造影マーカー部162が配置されている。第2造影マーカー部162は、前述した実施形態と同様に、第1造影マーカー部161とバルーン130が擦過して、バルーン130が破損等するのを防止する。また、第2造影マーカー部162は、第1造影マーカー部161と周方向に重なるように配置されていないため、基端側造影マーカー160の外径(図中の上下方向の寸法)が大きくなるのを防止できる。
【0089】
図10に示す変形例2に係る基端側造影マーカー160は、第1造影マーカー部161の先端部161aの先端側(先端面側)および第2造影マーカー部162の基端側(基端端面側)を覆うように第2造影マーカー部162が配置されている。第2造影マーカー部162は、前述した実施形態と同様に、第1造影マーカー部161とバルーン130が擦過して、バルーン130が破損等するのを防止する。また、第2造影マーカー部162は、第1造影マーカー部161と周方向に重なるように配置されていないため、基端側造影マーカー160の外径(図中の上下方向の寸法)が大きくなるのを防止できる。
【0090】
図11に示す変形例3に係る基端側造影マーカー160は、第1造影マーカー部161の先端部161aの先端側(先端面側)および外周面を覆うように第2造影マーカー部162が配置されている。第2造影マーカー部162は、前述した実施形態と同様に、第1造影マーカー部161とバルーン130が擦過して、バルーン130が破損等するのを防止する。また、第2造影マーカー部162は、第1造影マーカー部161の先端側に一定の長さで突出している。そのため、第1造影マーカー部161の突出した部分にステント140の基端部142を周方向に重ねるように配置することができる(図8を参照)。また、第2造影マーカー部162が基端側造影マーカー160の第1造影マーカー部161の外周面を覆うように配置されているため、第1造影マーカー部161の厚みを小さくした場合においても、基端側造影マーカー160の造影性が低下するのを防止できる。
【0091】
図12に示す変形例4に係る基端側造影マーカー160は、第2造影マーカー部162に第1造影マーカー部161が埋設されている。そのため、第1造影マーカー部161は、外表面が第2造影マーカー部162により覆われている。第2造影マーカー部162は、前述した実施形態と同様に、第1造影マーカー部161とバルーン130が擦過して、バルーン130が破損等するのを防止する。また、第2造影マーカー部162は、第1造影マーカー部161の先端側に一定の長さで突出している。そのため、第1造影マーカー部161の突出した部分にステント140の基端部142を周方向に重ねるように配置することができる(図8を参照)。また、第2造影マーカー部162が基端側造影マーカー160の第1造影マーカー部161の外表面を覆うように配置されているため、第1造影マーカー部161の厚みを小さくした場合においても、基端側造影マーカー160の造影性が低下するのを防止できる。
【0092】
図13に示に示す変形例5に係る基端側造影マーカー160は、第1造影マーカー部161の先端部161aの先端側(先端面側)、第1造影マーカー部161の基端部161bの基端側(基端端面側)、および第1造影マーカー部161の内周面を覆うように第2造影マーカー部162が配置されている。第2造影マーカー部162は、前述した実施形態と同様に、第1造影マーカー部161とバルーン130が擦過して、バルーン130が破損等するのを防止する。また、第2造影マーカー部162は、第1造影マーカー部161の先端側に一定の長さで突出している。そのため、第1造影マーカー部161の突出した部分にステント140の基端部142を周方向に重ねるように配置することができる(図8を参照)。また、基端側造影マーカー160は、第2造影マーカー部162を形成する樹脂材料の基材(例えば、リング状の部材)の外周面に第1造影マーカー部161を配置および固定する比較的簡単な作業により、製造することができる。
【0093】
図14に示に示す変形例6に係る基端側造影マーカー160は、第1造影マーカー部161の先端部161aの先端側(先端面側)および第1造影マーカー部161の内周面を覆うように第2造影マーカー部162が配置されている。第2造影マーカー部162は、前述した実施形態と同様に、第1造影マーカー部161とバルーン130が擦過して、バルーン130が破損等するのを防止する。また、第2造影マーカー部162は、第1造影マーカー部161の先端側に一定の長さで突出している。そのため、第1造影マーカー部161の突出した部分にステント140の基端部142を周方向に重ねるように配置することができる(図8を参照)。また、基端側造影マーカー160は、第2造影マーカー部162を形成する樹脂材料の基材(例えば、リング状の部材)の外周面に第1造影マーカー部161を配置および固定する比較的簡単な作業により、製造することができる。
【0094】
各変形例において説明した基端側造影マーカー160は、例えば、第2造影マーカー部162の先端部162aや基端部162bにテーパー形状を付加したり、湾曲形状(R形状)等を付加したりすることも可能である。
【0095】
各変形例において説明したように、造影マーカー150は、ステント140の端部と第1造影マーカー部161との間に第2造影マーカー部162が配置される限り、具体的な形状や構造等が限定されることはない。
【0096】
また変形例の説明では、基端側造影マーカー160を説明し、先端側造影マーカー170の説明は省略したが、先端側造影マーカー170は、例えば、前述した実施形態と同様に、基端側造影マーカー160と軸方向に対称な構造で形成できる。
【0097】
以上、実施形態を通じて本発明に係るバルーンカテーテルを説明したが、本発明は実施形態で説明した構成のみに限定されることはなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
【0098】
例えば、実施形態の説明では、バルーンカテーテルに先端側造影マーカーと基端側造影マーカーの二つの造影マーカーを備える例を説明したが、造影マーカーは、ステントの先端部を示す造影マーカーおよびステントの基端部を示す造影マーカーのうちの少なくとも一つを備えていればよい。なお、バルーンカテーテルは、実施形態で説明したような血管の分岐部にステントを留置する用途で使用される場合、基端側造影マーカーを少なくとも備えるように構成されることが好ましい。また、バルーンカテーテルが先端側造影マーカーと基端側造影マーカーの二つの造影マーカーを備える場合においても、先端側造影マーカーと基端側造影マーカーとが異なる構造のものであってもよい(例えば、軸方向に対称な構造でなくてもよい)。
【0099】
例えば、バルーンカテーテルは、オーバーザワイヤ型のバルーンカテーテルとして構成することも可能である。
【0100】
また、例えば、バルーンカテーテルの使用用途(使用対象となる生体管腔)は、血管のみに限定されず、生体器官の各部に適用できる。
【0101】
また、例えば、実施形態において説明したバルーンカテーテルの構造や部材の配置等は適宜変更することができ、図示により説明した付加的な部材の使用の省略や、特に説明されなかったその他の付加的な部材の使用等も適宜に行い得る。
【0102】
本出願は、2017年9月27日に出願された日本国特許出願第2017-186924号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として引用されている。
【符号の説明】
【0103】
10 バルーンカテーテル、
100 シャフト、
110 内管シャフト、
116 内管シャフトの凹部、
120 外管シャフト、
130 バルーン、
131 先端側固定部、
132 基端側固定部、
133 中間領域、
134 先端側傾斜領域、
135 基端側傾斜領域、
136 拡張空間、
140 ステント、
141 ステントの先端部、
142 ステントの基端部、
143 ステントの中間部、
150 造影マーカー、
160 基端側造影マーカー、
161 第1造影マーカー部、
161a 第1造影マーカー部の先端部、
161b 第1造影マーカー部の先端部、
162 第2造影マーカー部、
162a 第2造影マーカー部の先端部、傾斜部、
162b 第2造影マーカー部の基端部、
162c 第2造影マーカー部の凹部、
170 先端側造影マーカー、
171 第1造影マーカー部、
171a 第1造影マーカー部の先端部、
171b 第2造影マーカー部の基端部、
172 第2造影マーカー部、
172a 第2造影マーカー部の先端部、
172b 第2造影マーカー部の基端部、
172c 第2造影マーカー部の凹部、
200 ガイドワイヤ、
B 血管の分岐部、
S 狭窄部、
Sb 狭窄部の基端部、
b1 中間領域と基端側傾斜領域との境界部、
b2 中間領域と先端側傾斜領域との境界部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14