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特許7086094電池式エアロゾル発生装置用の電力管理の方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】電池式エアロゾル発生装置用の電力管理の方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/53 20200101AFI20220610BHJP
【FI】
A24F40/53
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019549447
(86)(22)【出願日】2018-03-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-02
(86)【国際出願番号】 EP2018055966
(87)【国際公開番号】W WO2018166925
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2021-03-05
(31)【優先権主張番号】17160953.0
(32)【優先日】2017-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100158551
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 貴明
(72)【発明者】
【氏名】ロベール ジャック
(72)【発明者】
【氏名】ベッサン ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】リヴァ レッジョーリ リッカルド
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第2856893(EP,A1)
【文献】英国特許出願公開第2528711(GB,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0128967(US,A1)
【文献】特開2016-154110(JP,A)
【文献】特開2007-028702(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/00-47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル発生装置(1)のエアロゾル発生要素(4)に供給される電力を制御するための方法であって、前記エアロゾル発生装置(1)が、エアロゾル発生要素(4)と、制御ユニット(3)と、前記エアロゾル発生要素および前記制御ユニットに電力を供給するための電池(2)とを備え、前記制御ユニットが前記電池から前記エアロゾル発生要素に供給される電流のデューティ比(DC)を調整するように構成されていて、前記方法が、
測定ユニット(25)を使用して、前記電池(2)の少なくとも一つの第一の特性(Tbat)を測定する工程であって、前記少なくとも一つの第一の特性(Tbat)が前記電池の温度(Tbat)を含む工程と、
前記制御ユニット(3)を使用して、前記測定された少なくとも一つの電池特性(Tbat)に基づき、デューティ比(DC)の値を出力する所定のルールに基づき、前記デューティ比(DC)の値を調整する工程とを含む、方法。
【請求項2】
前記測定する工程および前記調整する工程が定期的に実行される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記所定のルールが、前記電池(2)の前記少なくとも一つの特性(Tbat)に関連する値の複数の間隔を定義し、それぞれの間隔がそれぞれのデューティ比(DC)の値に関連付けられていて、前記デューティ比の値を調整する工程が、前記測定された少なくとも一つの電池特性(Tbat)の値を含む間隔に関連付けられた前記デューティ比(DC)の値を出力することを含む、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記エアロゾル発生装置(1)の少なくとも一つの第二の特性を測定し、所定のサブルールと前記エアロゾル発生装置(1)の少なくとも一つの第二の特性の測定値とに基づいてデューティ比(DC)の値を選択する工程を含み、前記所定のサブルールが、前記エアロゾル発生装置(1)の前記測定された少なくとも一つの第一の特性(Tbat)に基づく所定のサブルールのグループから選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも一つの第二の特性を測定する工程、および前記デューティ比の値を選択する工程が定期的に実行される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも一つの第二の特性を測定する前記工程およびデューティ比の前記値を選択する前記工程が、前記少なくとも一つの第二の特性が目標値に達するまで定期的に実行される、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記エアロゾル発生要素が抵抗ヒーターであり、前記エアロゾル発生装置(1)の前記少なくとも一つの第二の特性(Rh)が前記抵抗ヒーターの温度を含む、請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記エアロゾル発生装置(1)の少なくとも一つの第二の特性が前記エアロゾル発生要素(4)の電気抵抗(Rh)である、請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記エアロゾル発生装置(1)の前記少なくとも一つの第二の特性が、前記電池が完了した充放電サイクル数、および/または前記電池の内部抵抗、および/または前記電池のインピーダンスを含む、請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記所定のサブルールが、前記エアロゾル発生装置(1)の前記少なくとも一つの第二の特性に関連した値の複数の間隔を定義し、それぞれの間隔がそれぞれのデューティ比の値(DC)と関連付けられていて、前記制御ユニット(3)を使用して、前記デューティ比(DC)の値を調整する工程が、前記エアロゾル発生装置(1)の少なくとも一つの第二の特性の前記測定された値を含む前記間隔を選択することを含む、5~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記電池の出力電池電圧を定期的に測定して、測定された出力電池電圧に基づき、出力電池電圧降下率を計算することと、出力電池電圧降下率が閾値を超える場合に、前記デューティ比を低下させることとをさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記所定の複数の出力電池電圧測定サイクルについて出力電池電圧降下率が前記閾値を超える場合に、それに続いて前記デューティ比を増大させる工程を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
エアロゾル発生装置(1)であって、
エアロゾル発生要素(4)と、
制御ユニット(3)と、
前記エアロゾル発生要素(4)および前記制御ユニットに電流を送達するための電池(2)と、
前記電池(2)の少なくとも一つの第一の特性(Tbat)を測定するための測定ユニット(25)とを含み、前記少なくとも一つの第一の特性(Tbat)が前記電池(Tbat)の温度を含み、
前記制御ユニットが、前記測定ユニットによって測定された前記少なくとも一つの電池特性に基づく前記デューティ比の値を出力する所定のルールに基づき、前記電池から前記エアロゾル発生要素に供給される電流のデューティ比を調整するように構成されている、エアロゾル発生装置。
【請求項14】
前記エアロゾル発生要素が電気抵抗ヒーターである、請求項13に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項15】
前記電池がリチウムイオン電池である、請求項13または14に記載のエアロゾル発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池式エアロゾル発生装置に関し、特に、異なる動作状態下で装置の信頼性を向上させるエアロゾル発生要素への電力供給を制御するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
典型的に、電池式エアロゾル発生装置は、電池に接続された抵抗発熱体などのエアロゾル発生要素を備える。
【0003】
エアロゾル発生装置が初めて起動される時、装置がエアロゾルを送達するのにかかる時間を最小限にすることが望ましい。吸入するためのエアロゾルを発生する装置では特に、初回の吸煙を送達するためにかかる時間が長すぎる場合、ユーザーは苛立つことになる。抵抗ヒーターを使用する装置において、これは可能な限り迅速にヒーターの温度を上げることを意味する。
【0004】
ところが、起動開始時にエアロゾル発生要素への最大電力を単に供給することには潜在的な困難がある。エアロゾル発生装置は典型的に、正しく動作するために最小電圧を必要とするマイクロコントローラユニット(MCU)および様々な電子構成要素を備える。この電圧以下では、正しい動作を保証できない。このことは、MCUに特に当てはまる。ところが、電池から最大電力を供給することは、特に電池が低温の時に、MCUでの電圧不足につながることがある。
【0005】
電池から高電流を引き出すと、その出力電圧が低下することは周知である。これは電池の内部抵抗に起因する。低温では電池の内部抵抗が高くなり、それによって最大放電電流が制限されることも周知である。さらに、任意の所定の出力電池電流について、電池の出力電圧は低温で低くなる。エアロゾル発生要素が正の温度係数を有する抵抗ヒーターである場合、ヒーターの抵抗は起動前に最も低くなり、温度に伴い高くなり、電池の内部抵抗の両端でのより大きい電圧降下につながる。
【0006】
これらの理由から、電池からの出力電圧がMCUに必要な最小電圧より低くなるため、起動開始時に最大電力を印加することは、装置の動作停止の原因となりうることが考えられる。
【0007】
装置を最短時間内で完全な動作状態にするために電池から最大電力を引き出すことができる一方で、MCUの正しい動作を確実にする最小閾値電圧よりも高い出力電池電圧を維持することを確実にすることが望ましい。
【0008】
エアロゾル発生装置の動作を調整するために電池は、エアロゾル発生要素に流される電流および電圧のデューティ比を変化させうるように、エアロゾル発生要素に動的に接続されうる。
【発明の概要】
【0009】
第一の態様において、エアロゾル発生装置のエアロゾル発生要素に供給される電力を制御するための方法が提供されていて、エアロゾル発生装置は、エアロゾル発生要素と、制御ユニットと、電力をエアロゾル発生要素と制御ユニットに供給するための電池とを備え、制御ユニットは、電池からエアロゾル発生要素に供給される電流のデューティ比を調整するように構成されていて、ここで方法は、
【0010】
測定ユニットを使用して、バッテリーの少なくとも一つの第一の特性を測定する工程と、
【0011】
制御ユニットを使用して、測定された少なくとも一つの電池特性に基づくデューティ比の値を出力する所定のルールに基づき、デューティ比の値を調整する工程とを含む。
【0012】
このように電池から供給される電流のデューティ比を制御することによって、可能な限り高いデューティ比を使用できつつも、制御ユニットでの電圧は最小動作電圧以上に維持される。制御ユニットでの電圧が閾値電圧を超えることを確実にするために、所定のルールが選択されうる。
【0013】
少なくとも一つの電池の第一の特性は、電池の温度を含みうる。電池の出力電圧は、その内部抵抗が温度による影響を受けるため、温度による影響を受ける。サーミスタまたはその他の専用温度センサーを使用して、電池の温度の測定値を得ることができる。別の方法として、少なくとも一つの電池特性は、電池が完了した充放電サイクル数など、電池寿命の測定値を含みうる。充放電サイクル数は記録されて、エアロゾル発生装置内のメモリに保存されうる。別の方法として、少なくとも一つの電池特性は、電池の内部抵抗または電池のインピーダンスを含みうる。電池の内部抵抗は、WO2014/029880号に記述された方法など、周知の技法を使用して測定されてもよく、電池インピーダンス測定は、小さいAC電流をバッテリーに導入し、関連するAC電圧を測定することによって行うことができる。
【0014】
有利なことに、測定する工程および調整する工程は定期的に実行される。電池が放電すると、その内部抵抗の結果として、幾らかの熱が放散される。これによって、内部抵抗が低減されうる。デューティ比は、電池の低減される内部抵抗を考慮に入れて、定期的に、例えば0.5秒ごとに調整されうる。このように、デューティ比は低値で開始されてもよく、制御ユニットが十分な電圧を受けることを確実にしながら漸進的に増大されてもよい。
【0015】
有利なことに、所定のルールは、電池の少なくとも一つの特性に関連する複数の値を画定し、各間隔はそれぞれのデューティ比の値と関連付けられ、デューティ比の値を調整する工程は、測定された少なくとも一つの電池特性の値を含む間隔と関連するデューティ比の値を出力することを含む。電池の少なくとも一つの特性に関連する値の間隔は、連続的であってもよい。電池の少なくとも一つの特性に関連する値の間隔は、非オーバーラップでもよい。
【0016】
例えば、一つの実施形態において、電池の少なくとも一つの特性は温度であり、所定のルールは以下の間隔および関連するデューティ比の値を含む。
1/ 電池温度が-10℃~-5℃の場合、デューティ比10%を使用する。
2/ 電池温度が-5℃~0℃の場合、デューティ比20%を使用する。
3/ 電池温度が0℃~5℃の場合、デューティ比30%を使用する。
4/ 電池温度が5℃~10℃の場合、デューティ比40%を使用する。
5/ 電池温度が10℃~15℃の場合、デューティ比50%を使用する。
6/ 電池温度が15℃~20℃の場合、デューティ比60%を使用する。
7/ 電池温度が20℃を超える場合、望ましい任意のデューティ比を使用する。
【0017】
手持ち式装置では、電池の内部で発生した熱および装置内の一つ以上のヒーターによって発生した熱のため、またユーザーが装置を持ち、体温がバッテリーに伝わるため、使用中に電池の温度が上昇することが予期されうる。
【0018】
方法は、エアロゾル発生装置の少なくとも一つの第二の特性を測定し、所定のサブルールとエアロゾル発生装置の少なくとも一つの第二の特性の測定値とに基づいてデューティ比の値を選択する工程をさらに含んでもよく、ここで所定のサブルールは、電池の測定された少なくとも一つの第一の特性に基づく所定のサブルールの群から選択される。
【0019】
少なくとも一つの第二の特性を測定する工程と、デューティ比の値を選択する工程は定期的に実行される。デューティ比は、エアロゾル発生要素の第二の特性の変化する値を考慮に入れて、定期的に、例えば0.5秒ごとに調整されうる。このように、デューティ比は低値で開始されてもよく、制御ユニットが十分な電圧を受けることを確実にしながら漸進的に増大されてもよい。
【0020】
エアロゾル発生装置の少なくとも一つの第二の特性は、エアロゾル発生要素の電気抵抗を含みうる。エアロゾル発生要素の電気抵抗は温度依存性でありうるため、使用中に変化してもよい。エアロゾル発生要素は抵抗ヒーターでもよい。エアロゾル発生装置の少なくとも一つの第二の特性は、抵抗ヒーターの温度を含みうる。抵抗ヒーターの電気抵抗は、抵抗ヒーターの温度に依存しうる。抵抗ヒーターの組成に応じて、抵抗ヒーターが加熱すると、電気抵抗は増大することがあり、例えば結果的に電池の内部抵抗の両端での電圧降下が低くなり、それによってより大きいデューティ比が使用されることを可能にする。
【0021】
少なくとも一つの第二の特性は、電池の第一の特性と異なる。少なくとも一つの第二の特性は、電池が完了した充放電サイクル数など、電池寿命の測定値を含みうる。充放電サイクル数は記録されて、エアロゾル発生装置内のメモリに保存されうる。別の方法として、少なくとも一つの第二の特性は、電池の内部抵抗または電池のインピーダンスを含みうる。別の方法として、電池の温度が電池の第一の特性として使用されない場合、電池の温度は、少なくとも一つの第二の特性として使用されうる。
【0022】
少なくとも一つの第二の特性を測定する工程、およびデューティ比の値を選択する工程は、少なくとも一つの第二の特性が目標値に達するまで定期的に実行されうる。抵抗ヒーターの実施例において、ヒーターは、望ましいエアロゾルの製造のための目標温度または目標温度範囲に達するが、その目標を超えないことが望ましい場合がある。目標温度に達した時、ヒーターに供給される電流のデューティ比を最大化するよりもむしろ温度を維持することが望ましい。ヒーターの温度を調整する目的で、様々なデューティ比を使用することができる。デューティ比が高いほど、電池によって発熱体に供給される平均電流は高くなり、従って発熱体の温度が高くなる。当然ながら、デューティ比を減少させることは逆に、例えばヒーターの温度を低下させることを可能にする。
【0023】
方法は、装置の起動からの時間を監視することを含んでもよく、また所定時間内に目標温度に達しない場合、装置を停止することまたは無効化することを含む。
【0024】
所定のサブルールは、エアロゾル発生装置の少なくとも第二の特性に関連する複数の間隔を定義してもよく、各間隔はそれぞれのデューティ比の値と関連付けられている。制御ユニットを使用してデューティ比の値を調整する工程は、エアロゾル発生装置の少なくとも一つの第二の特性の測定値を含む間隔を選択することを含みうる。エアロゾル発生装置の少なくとも第二の特性に関連する値の間隔は、逐次的であってもよい。エアロゾル発生装置の少なくとも第二の特性に関連する値の間隔は、非オーバーラップであってもよい。
【0025】
例えば、電池の第一の特性が電池温度であり、エアロゾル発生装置の第二の特性が発熱体抵抗である場合、電池温度は-2℃となるように決定され、これは上述の例における第二の範囲内であり、その温度範囲のサブルールは以下の通りとなりうる。
2.1/ 発熱体抵抗が0.8~1オームの場合、20%のデューティ比を使用する
2.2/ 発熱体抵抗が1~1.2オームの場合、30%のデューティ比を使用する
2.3/ 発熱体抵抗が1.2~1.4オームの場合、40%のデューティ比を使用する
2.4/ 発熱体抵抗が1.4~1.6オームの場合、50%のデューティ比を使用する
2.5/ 発熱体抵抗が1.6~1.8オームの場合、60%のデューティ比を使用する
2.6/ 発熱体抵抗が1.8オームを超える場合、望ましい任意のデューティ比を使用する
【0026】
所定のルールにおける電池の少なくとも一つの特性に関連する値の各間隔について、異なるサブルールがあってもよい。
【0027】
方法は、さらなる測定された特性に基づく、さらなるレベルのサブルールを使用してもよい。特に、方法は、電池またはエアロゾル発生装置の第三の特性を測定し、所定のサブサブルールとエアロゾル発生装置または電池の少なくとも一つの第三の特性の測定値とに基づいてデューティ比の値を選択する工程を含んでもよく、ここで所定のサブサブルールは、所定のサブルールに基づく所定のサブサブルールと、電池の測定された第二の特性と、電池の測定された少なくとも一つの第一の特性との群から選択される。サブルールにおける第二の特性の値の各間隔について、第三の特性の異なる範囲に関連付けられたデューティ比を指定するサブサブルールの群がありうる。さらなるレベルのルールが、複数の測定された特性に基づく階層のルールで使用されてもよい。
【0028】
方法は、電池の出力電池電圧を定期的に測定する工程と、測定された出力電池電圧に基づいて出力電池電圧の降下率を計算する工程と、出力電池電圧の降下率が閾値を超える場合にデューティ比を低減する工程とをさらに含みうる。これは、制御ユニットが最小の閾値電圧を確実に受けることを確実にすることが依然として可能であるレベルまで出力電池電圧が降下するのを停止または減速させるために有利である。例えば、所定のルールに従って電流のデューティ比が増大した後、抵抗ヒーターが目標温度に達する前に出力電池電圧が最小動作電圧より低い電圧にわずか2、3秒で降下するように、出力電池電圧の降下速度が決定されている場合、その後、デューティ比は5%低減されうる。所定のルールまたはサブルール内の各区間について、出力電池電圧降下率の異なる閾値がありうる。出力電池電圧降下率は、第一の特性が測定されるよりも頻繁に定期的に計算されうる。出力電池電圧降下率は、第二の特性が測定されるよりも頻繁に定期的に計算されうる。
【0029】
出力電池電圧降下率の閾値は、初期出力電池電圧に基づいて設定されうる。一実施例において、出力電池電圧降下率の閾値は、ヒーターがその抵抗を特定の値(例えば3.2Vの電池に対して1.6オーム)に増加させ、従って2Aの電流を引き出すのにかかる最小時間によって定義されることができる。次に、電池電圧は、この最小時間の前に、その最小値(例えば、2.5V)より低く降下させるべきではない。最小時間は、例えば5秒に設定されうる。初期電池電圧値が3.2Vの場合、電池電圧降下率の最大値は、(3.2V - 2.5V) /5 = 0.14V/sとなる。別の方法として、出力電池電圧降下率の閾値は、初期出力電池電圧とは無関係に、例えば0.5V/sといった設定値に指定されてもよい。
【0030】
本方法は、出力電池電圧降下率が、出力電池電圧の所定の複数の測定サイクルの閾値を超える場合、デューティ比を後に増加させる工程をさらに含みうる。
【0031】
本方法は、デューティ比を最小デューティ比より低くする必要がある場合に、装置を停止することまたは無効化することを含みうる。
【0032】
第二の態様において、エアロゾル発生装置が提供されていて、この装置は、
エアロゾル発生要素と、
制御ユニットと、
電流をエアロゾル発生要素および制御ユニットに供給するための電池と、
バッテリーの少なくとも一つの第一の特性を測定するために、制御ユニットに接続された測定ユニットと、を備え、
【0033】
制御ユニットが、測定ユニットによって測定された少なくとも一つの電池特性に基づくデューティ比の値を出力する所定のルールに基づき、電池からエアロゾル発生要素に供給される電流のデューティ比を調整するように構成されている、エアロゾル発生装置。
【0034】
エアロゾル発生装置は不揮発性メモリを備えうる。不揮発性メモリは、制御ユニットの一部であってもよい。不揮発性メモリは、所定のルールを保存してもよい。
【0035】
制御ユニットは、本発明の第一の態様による方法を実行するように構成されてもよい。特に、制御ユニットは、本発明の第一の態様に関連して説明した通り、サブルールを使用するように構成されてもよい。制御ユニットは、本発明の第一の態様に関連して説明した通り、出力電池電圧降下率を測定するように構成されてもよい。
【0036】
制御ユニットはスイッチを備えうる。制御ユニットは、スイッチを操作してエアロゾル発生要素への電流供給をオン/オフすることによって、デューティ比を調整するように構成されてもよい。スイッチは、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)などのトランジスタでもよい。
【0037】
少なくとも一つの電池の特性は電池の温度でもよい。測定ユニットは温度センサーを備えうる。別の方法として、少なくとも一つの電池特性は、電池が完了した充放電サイクル数など、電池寿命の測定値を含みうる。充放電サイクル数は記録されて、エアロゾル発生装置内のメモリに保存されうる。別の方法として、少なくとも一つの電池特性は、電池の内部抵抗または電池のインピーダンスを含みうる。電池の内部抵抗およびインピーダンスは、WO2014/029880号に記載の方法など、周知の技法を使用して測定されうる。
【0038】
本明細書で使用される「エアロゾル発生装置」は、エアロゾル形成基体と相互作用してエアロゾルを発生する装置に関する。エアロゾル形成基体はエアロゾル発生物品の一部であってもよい。エアロゾル発生装置は、エアロゾル発生物品のエアロゾル形成基体と相互作用してユーザーの口を通してユーザーの肺に直接吸入可能なエアロゾルを発生する装置であってもよい。エアロゾル発生要素は、エアロゾル形成基体を加熱、または他の方法で霧化してエアロゾルを形成するように構成されうる。エアロゾル形成基体は装置内に完全にまたは部分的に収容されてもよい。
【0039】
エアロゾル形成基体は固体エアロゾル形成基体であってもよい。別の方法として、エアロゾル形成基体は液体でもよく、または固体構成要素と液体構成要素の両方を備えてもよい。エアロゾル形成基体は、加熱に伴い基体から放出される揮発性のたばこ風味化合物を含むたばこ含有材料を含んでもよい。別の方法として、エアロゾル形成基体は非たばこ材料を含んでもよい。エアロゾル形成基体は、エアロゾル形成体をさらに含んでもよい。適切なエアロゾル形成体の例は、グリセリンおよびプロピレングリコールである。
【0040】
エアロゾル形成基体が固体エアロゾル形成基体である場合、固体エアロゾル形成基体は、薬草の葉、たばこ葉、たばこの茎の断片、再構成たばこ、均質化したたばこ、押し出し成形たばこ、キャストリーフたばこ、および膨化たばこのうちの一つ以上を含む、例えば粉末、顆粒、ペレット、断片、スパゲッティ、細片、またはシートのうちの一つ以上を含んでもよい。固体エアロゾル形成基体は、容器に入っていない形態にしてもよく、または適切な容器またはカートリッジで提供されてもよい。随意に、固体エアロゾル形成基体は、基体の加熱に伴い放出される追加的なたばこまたは非たばこ揮発性風味化合物を含んでもよい。固体エアロゾル形成基体はまた、例えば追加的なたばこまたは非たばこ揮発性風味化合物を含むカプセルも含有してもよく、こうしたカプセルは固体エアロゾル形成基体の加熱中に溶けてもよい。
【0041】
随意に、固体エアロゾル形成基体は、熱的に安定な担体上に提供されてもよく、またはその中に包埋されてもよい。担体は、粉末、顆粒、ペレット、断片、スパゲッティ、細片またはシートなどの形態を取ってもよい。別の方法として、担体は、その内部表面上、またはその外表面上、またはその内部および外部の表面上の両方に配置された固体基体の薄い層を有する、管状の担体であってもよい。こうした管状の担体は、例えば紙、または紙様の材料、不織布炭素繊維マット、低質量の目の粗いメッシュ金属スクリーン、または穿孔された金属箔、またはその他の任意の熱的に安定した高分子マトリクスで形成されてもよい。
【0042】
固体エアロゾル形成基体は、例えばシート、発泡体、ゲルまたはスラリーの形態で担体の表面上に配置されてもよい。固体エアロゾル形成基体は担体の表面全体の上に堆積されてもよく、または別の方法として、使用中に不均一な風味送達を提供するためのパターンで堆積されてもよい。
【0043】
上記では、固体エアロゾル形成基体を参照したが、その他の形態のエアロゾル形成基体をその他の実施形態で使用しうることが当業者に明らかであろう。例えば、エアロゾル形成基体は液体エアロゾル形成基体としうる。液体エアロゾル形成基体が提供される場合、エアロゾル発生装置は、液体を保持する手段を備えることが好ましい。例えば、液体エアロゾル形成基体は容器内に保持されうる。別の方法として、または追加的に、液体エアロゾル形成基体は多孔性担体材料に吸収されうる。多孔性担体材料は、任意の適切な吸収性のプラグまたは本体、例えば発泡性の金属またはプラスチック材料、ポリプロピレン、テリレン、ナイロン繊維またはセラミックで作成しうる。液体エアロゾル形成基体は、エアロゾル発生装置を使用する前に、多孔性担体材料内に保持されてもよく、または別の方法として、液体エアロゾル形成基体材料は、使用中またはその直前に多孔性担体材料内に放出されてもよい。例えば、液体エアロゾル形成基体はカプセル内に提供されてもよい。カプセルのシェルは、加熱に伴い溶けて、液体エアロゾル形成基体を多孔性担体材料に放出することが好ましい。カプセルは液体と組み合わされて、随意に固体を含む場合がある。別の方法として、担体は、たばこ成分が組み込まれた不織布繊維または繊維の束としうる。不織布繊維または繊維の束は、例えば炭素繊維、天然セルロース繊維、またはセルロース誘導体繊維を含みうる。
【0044】
動作中、エアロゾル形成基体は、エアロゾル発生装置内に完全に収容されうる。その場合、ユーザーはエアロゾル発生装置のマウスピースで吸煙しうる。別の方法として、動作中、エアロゾル形成基体を含むエアロゾル形成物品は、エアロゾル発生装置内に部分的に収容されうる。その場合、ユーザーは直にエアロゾル形成物品で吸煙しうる。
【0045】
エアロゾル形成物品は実質的に円筒状でありうる。エアロゾル形成物品は実質的に細長くてもよい。エアロゾル形成物品は、長さと、その長さに対して実質的に直角を成す円周とを有してもよい。エアロゾル形成基体は実質的に円筒状であってもよい。エアロゾル形成基体は実質的に細長くてもよい。エアロゾル形成基体はまた、長さと、その長さに対して実質的に直角を成す円周とを有してもよい。
【0046】
エアロゾル形成物品の全長は、およそ30mm~およそ100mmであってもよい。エアロゾル形成物品の外径は、およそ5mm~およそ12mmであってもよい。エアロゾル形成物品はフィルタープラグを備えうる。フィルタープラグはエアロゾル形成物品の下流端に位置しうる。フィルタープラグは、酢酸セルロースフィルタープラグであってもよい。一実施形態において、フィルタープラグの長さは、およそ7mmであるが、およそ5mm~およそ10mmであってもよい。
【0047】
一つの実施形態において、エアロゾル形成物品の全長はおよそ45mmである。エアロゾル形成物品の外径は、およそ7.2mmとしうる。さらに、エアロゾル形成基体の長さは、およそ10mmであってもよい。別の方法として、エアロゾル形成基体は、およそ12mmの長さを有しうる。さらに、エアロゾル形成基体の直径は、およそ5mm~およそ12mmであってもよい。エアロゾル形成物品は外側紙ラッパーを備えうる。さらに、エアロゾル形成物品は、エアロゾル形成基体とフィルタープラグの間の分離部を備えてもよい。分離部は、およそ18mmであってもよいが、およそ5mm~およそ25mmの範囲であってもよい。
【0048】
エアロゾル発生要素は抵抗ヒーターでもよい。エアロゾル発生要素の少なくとも一つの第二の特性は、抵抗ヒーターの温度または電気抵抗でありうる。
【0049】
抵抗ヒーターは、電気抵抗性の材料を含みうる。適切な電気抵抗性の材料には例えば、ドープされたセラミックなどの半導体、「導電性」のセラミック(例えば、二ケイ化モリブデンなど)、炭素、黒鉛、金属、合金、およびセラミック材料製・金属材料製の複合材料が挙げられるが、これに限定されない。こうした複合材料は、ドープされたセラミックまたはドープされていないセラミックを含んでもよい。適切なドープされたセラミックの例としては、ドープ炭化ケイ素が挙げられる。適切な金属の例は、チタン、ジルコニウム、タンタル プラチナ、金および銀を含む。適切な合金の例としては、ステンレス鋼、ニッケル-、コバルト-、クロミウム-、アルミニウム-チタン-ジルコニウム-、ハフニウム-、ニオビウム-、モリブデン-、タンタル-、タングステン-、スズ-、ガリウム-、マンガン-、金-および鉄を含有する合金、およびニッケル、鉄、コバルト、ステンレス鋼系の超合金、Timetal(登録商標)、および鉄-マンガン-アルミニウム系の合金が挙げられる。複合材料では、電気抵抗性の材料は、必要とされるエネルギー伝達の動態学および外部の物理化学的性質に応じて、随意に断熱材料に包埋、封入、または断熱材料で被覆されてもよく、もしくはその逆であってもよい。
【0050】
エアロゾル発生装置は、内部抵抗ヒーターまたは外部抵抗ヒーター、または内部抵抗ヒーターと外部抵抗ヒーターの両方を含みうるが、ここで「内部」および「外部」は、エアロゾル形成基体についてである。内部抵抗ヒーターは、任意の適切な形態を取りうる。例えば、内部抵抗ヒーターは、加熱用ブレードの形態を取りうる。別の方法として、内部抵抗ヒーターは、異なる導電性部分または電気抵抗性の金属チューブを有するケーシングまたは基体の形態を取りうる。別の方法として、内部抵抗ヒーターは、エアロゾル形成基体の中心を貫通する一つ以上の加熱用の針または棒としうる。その他の代替物は、加熱用のワイヤまたはフィラメント、例えばNi-Cr(ニッケル・クロム)、プラチナ、タングステンまたは金属製のワイヤまたは加熱板を含む。随意に、内部抵抗ヒーターは、固い担体材料内またはその上に配置されてもよい。こうした一つの実施形態において、電気抵抗ヒーターは、温度と比抵抗の間で明確な関係を有する金属を使用して形成しうる。こうした模範的装置において、金属は、セラミック材料などの適切な断熱材料上にトラックとして形成された後、ガラスなどの別の断熱材料内に挟まれることができる。このように形成されたヒーターは、動作中の発熱体の加熱と、その温度の監視の両方に使用しうる。
【0051】
外部抵抗ヒーターは任意の適切な形態を取ってもよい。例えば、外部抵抗ヒーターは、ポリイミドなどの誘電性基体上の一つ以上の柔軟性のある加熱用ホイルの形態を取ってもよい。柔軟性のある加熱ホイルは、基体を受けるくぼみの周辺に適合する形状としうる。別の方法として、外部発熱体は、金属グリッド、柔軟性のあるプリント基板、成形相互接続装置(MID)、セラミックヒーター、柔軟性のある炭素繊維ヒーターの形態を取りうるほか、適切な形状の基体上にプラズマ蒸着などのコーティング技法を使用して形成されうる。外部抵抗ヒーターはまた、温度と比抵抗の間に明確な関係を有する金属を使用して形成されてもよい。こうした例示的な装置において、金属は適切な断熱材料の二層の間のトラックとして形成されうる。この方法で形成された外部抵抗ヒーターは、動作中の外部発熱体の加熱と、その温度の監視との両方に使用されうる。
【0052】
抵抗ヒーターは有利なことに、伝導によってエアロゾル形成基体を加熱する。発熱体は基体と、または基体が堆積されている担体と、少なくとも部分的に接触してもよい。別の方法として、内部または外部ヒーターのいずれかからの熱は、熱伝導性要素によって基体に伝導しうる。
【0053】
電池は再充電可能電池としうる。電池は、リチウムイオン電池、例えばリチウムコバルト電池、リン酸鉄リチウム電池、チタン酸リチウム電池、またはリチウムポリマー電池であってもよい。別の方法として、電池はニッケル水素電池またはニッケルカドミウム電池など、別の形態の再充電可能電池でもよい。
【0054】
測定ユニットは電池と一体型であってもよく、または電池ハウジング上または電池ハウジング内に位置してもよい。
【0055】
制御ユニットはマイクロコントローラユニット(MCU)を備えうる。制御ユニットはプログラム可能でありうる。制御ユニットは、エアロゾル発生要素と直列に電池に接続されたスイッチを備えうる。
【0056】
装置は、片手の指の間に保持するのが快適な携帯型または手持ち式の装置であることが好ましい。装置は実質的に円筒状で、70~120mmの長さを有しうる。装置の最大直径は、10~20mmであることが好ましい。一実施形態において、装置は多角形の断面を有し、一方の面上に形成された突出したボタンを有する。この実施形態において、装置の直径は、一方の平坦な面から反対側の平坦な面までで12.7~13.65mmであり、一方の端から反対側の端まで(すなわち、装置の一方の側の2つの面の交差するところから他方の側の対応する交差するところまで)で13.4~14.2mmであり、ボタンの上部から反対側の底部の平坦な面までで14.2~15mmである。
【0057】
エアロゾル発生装置は、電気加熱式のエアロゾル形成装置としうる。 本発明の第三の態様において、電気的に作動するエアロゾル発生装置の制御ユニット内のプログラム可能電気回路上での動作時に、エアロゾル発生要素と、エアロゾル発生要素および制御ユニットに電力を供給するための電池とを備えるエアロゾル発生装置が、本発明の第一の態様による方法をプログラム可能電気回路に実施させるコンピュータプログラムが提供されている。
【0058】
開示について異なる態様を参照することによって説明してきたが、開示の一つの態様に関連して説明した特徴が、開示のその他の態様に適用されうることは明らかである。
【0059】
ここで本発明の例を、以下の添付図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1図1は、本発明の一実施形態による装置の概略図である。
図2図2は、本発明による方法にかかわる装置の構成要素の接続を図示する。
図3図3は、本発明の実施形態によるサブルールの組を図示したものである。
図4図4は、本発明の実施形態による制御プロセスを図示する流れ図である。
図5図5は、本発明の実施形態で使用される追加的な制御プロセスである。
【発明を実施するための形態】
【0061】
図1では、電気加熱式のエアロゾル発生装置1の実施形態の構成要素を簡略化された方法で示す。電気加熱式のエアロゾル発生装置1の要素は、図1では等尺度で描かれていない。本実施形態の理解に関連性のない要素は、図1を簡略化するために、省略されている。
【0062】
電気加熱式のエアロゾル発生装置1は、ハウジング10とエアロゾル形成基体12(例えば紙巻たばこなどのエアロゾル形成物品)とを含む。エアロゾル形成基体12は、ハウジング10内に押し込まれ、ヒーター4と熱的に近接するようになる。この例において、ヒーターはエアロゾル形成基体内に延びるブレードである。エアロゾル形成基体12は異なる温度で、ある範囲の揮発性化合物を放出する。ヒーターの最大動作温度を、一部の揮発性化合物の放出温度よりも低く制御することによって、これらの煙成分の放出または形成を回避できる。典型的にエアロゾル形成基体は、250~450℃の温度に加熱される。ハウジング10内には、電池2、例えば充電式リチウムイオン電池がある。制御ユニット3は、発熱体2、電池2、およびユーザーインターフェース6(例えばボタンまたはディスプレイ)に接続されている。このタイプのシステムは、例えばEP2800486号に記載されている。
【0063】
制御ユニット3は、電流のデューティ比を変化させることによってその温度を調整するために発熱体4に供給される電力を制御する。図2は、図1の装置内の電池、制御ユニット、抵抗ヒーターの接続を図示したものである。
【0064】
電池2は、内部抵抗22とともに理想的な電池21として図示されている。電池は、制御ユニットを通して抵抗ヒーター4に接続されている。制御ユニットは、マイクロプロセッサユニット(MCU)20およびスイッチ23を備える。MCUは、ヒーター4に供給される電流のデューティ比を制御するためのスイッチの操作を制御する。MCU 20は不揮発性メモリ27を備える。
【0065】
装置はまた、電池2の温度を測定するように位置付けられた温度センサー25を備える。例えば、温度センサーは、温度のアナログ測定を提供するためのサーミスタ、またはデジタル温度センサー(NXPのLM75ADPなど)であってもよい。温度センサー25の出力は、MCU 20に接続されている。温度センサー25によって測定される電池の温度は、以下に説明する通り、不揮発性メモリ27に保存された少なくとも一つのルールに基づいて、スイッチ23の動作を制御するために使用される。
【0066】
装置は、ユーザーインターフェース6を使用してユーザーによって起動されてもよい。装置が起動された時、電流が電池からスイッチ23を通してヒーターに供給される。
【0067】
理想的には、MCUが適切な機能のために十分な電圧を受けることを確実にしつつ、ヒーターは起動後できるだけ迅速に目標温度まで上昇する。起動開始時、電池が冷たい時に、電池は比較的高い内部抵抗を有し、これは電池が熱くなった後に内部抵抗の両端での電池の電圧低下の割合がより大きいことを意味する。これは、電池がより冷たい時に、MCUが少なくとも最小動作電圧を受けることを確実にするために、電流のより低いデューティ比が望ましいことを意味する。
【0068】
MCUが受ける電圧はまた、ヒーター4の抵抗による影響を受ける。ヒーター4の抵抗は典型的に、ヒーターが加熱すると、装置の動作中に変化する。ヒーター温度制御のためのヒーターの温度の測定値としてヒーターの抵抗を使用できるように、ヒーターは温度に対して著しい変動を有する材料から形成されうる。この例のヒーターは、ヒーター温度が上昇するにつれてヒーターの抵抗が増加するように、正の温度係数を有する。
【0069】
MCUは、ヒーター4の電気抵抗を測定するように構成されてもよい。これは、ヒーター4と直列の(非常に低抵抗の)分路抵抗器を使用することによって達成されうる。分路抵抗器を流れる電流(これはまた、ヒーターを流れる電流である)は、分路抵抗器に並列に接続された増幅器を使用して測定することができる。ヒーターの両端での電圧は直接測定することができ、次にヒーターの抵抗はオームの法則を用いて計算できる。これは周知の測定技法である。
【0070】
MCUは、MCUのメモリに保存されているルールに従いスイッチの動作を制御する。図3は、MCUが使用できるルール30の一例を図示する。ルールは、電池の測定された温度Tbat、および出力デューティ比に対するヒーターの測定された電気抵抗Rhに関する。ルールは複数のサブルールを含み、それぞれが電池温度の範囲に関連付けられている。電池温度の範囲は逐次的であるが、相互に重複しない。それぞれのサブルール内に複数のデューティ比があり、それぞれがヒーターの抵抗の明確な範囲に関連付けられている。ヒーターの抵抗の範囲は逐次的であるが、相互に重複しない。使用するデューティ比を決定するために、MCUはまず、測定された電池温度31が下降する電池温度の範囲に関連付けられたサブルールを選択する。図3に図示した例において、これは範囲2であり、点線ボックス32によって図示される通り、T2~T3の温度範囲にわたる。次にMCUは、範囲2に関連付けられたサブルール内からデューティ比を選択する。選択されるデューティ比は、測定されたヒーター抵抗33が低下するヒーターの抵抗の範囲と関連付けられているデューティ比である。図3に示す例において、これは、点線のボックス34で図示する通り、抵抗範囲Rh5~Rh6に関連付けられたデューティ比DC8である。ルール30からの出力は従って、ボックス36によって示す通り、DC8である。
【0071】
ルールでヒーター抵抗を使用する代わりに、ヒーター温度など別のパラメータを使用できる。装置はヒーターに近い温度センサーを含みうる。温度センサーの出力は、MCUに接続されることになる。
【0072】
範囲およびサブ範囲の数は、特定の設計要件、およびヒーター4の構造に従って選択することができる。図4に示す例は、4つの電池温度範囲、および4つのヒーター抵抗範囲を含む。別の実施形態において、次の通り7つの電池温度範囲がある。
1/ -10℃~-5℃
2/ -5℃~0℃
3/ 0℃~5℃
4/ 5℃~10℃
5/ 10℃~15℃
6/ 15℃~20℃
7/ 20℃を超える。
【0073】
また次の通り、各サブルールで使用される6つのヒーター抵抗範囲がある。
1/ 0.8~1オーム
2/ 1~1.2オーム
3/ 1.2~1.4オーム
4/ 1.4~1.6オーム
5/ 1.6~1.8オーム
6/ 1.8オームを超える。
【0074】
各サブルールの各範囲に関連付けられたデューティ比の値は、MCUの適切な機能に必要な少なくとも最小動作電圧をMCUが必ず受けることを確実にするように選択されるべきである。電池温度が-10℃よりも低い場合、装置は無効化される。
【0075】
ヒーターに送達される電流のデューティ比を調整するためのプロセスは、ヒーターが目標温度または目標抵抗に達するまで、例えば装置の起動後0.5秒ごとに定期的に実行される。そのため、電池温度およびヒーター抵抗の変化に応じて、0.5秒ごとに新規のサブルールが適用されうる。
【0076】
ヒーターが目標温度(例えば、350℃)に一定時間(例えば、30秒)で達しない場合、加熱プロセスは停止する。この状況において、電池は十分な電力をヒーターに供給できない。これは電池が古いためでありうる。
【0077】
図4は、上述のタイプのルールを使用する制御プロセスの例を示すフローチャートである。装置は工程40で起動される。起動後の第一の工程41において、電池の温度が測定される。次に、工程42では、電流のデューティ比が電池温度に基づいて選択される。この段階で、ヒーターに電流が流される前に、ヒーター抵抗は最大値であると仮定される。工程43では、MCUは選択されたデューティ比に従ってスイッチを操作して、電流をヒーターに供給する。このデューティ比は、0.5秒など所定の期間維持される。この期間中、工程44ではヒーターの電気抵抗が測定される。工程45では、測定された電気抵抗は、目標ヒーター温度に対応する目標抵抗と比較される。ヒーター抵抗が目標抵抗と等しいかまたはそれより大きい場合、プロセスは工程46で終了する。ヒーター抵抗が目標抵抗よりも小さい場合、これはヒーターが目標温度に達していないことを示し、プロセスは電池温度が再び測定された時に工程41に戻る。工程42では、デューティ比が、今回は電池温度とヒーター抵抗の両方に基づく所定のルールを使用して、再び選択される。プロセスは、目標抵抗に達するまで、または起動後30秒経過するまでのいずれか早い方で、繰り返される。
【0078】
図4を参照して説明したプロセスの利点は、ヒーターを迅速に加熱するために電池から最大電力が引き出されることを可能にしつつ、十分な安全域のある所定の閾値を超える電池電圧が保たれることである。ヒーター抵抗が上昇し、電池温度が上昇するにつれて、デューティ比は低い値で開始され、できるだけ迅速に徐々に上昇される。これは、ヒーターが迅速に、かつ確実にその目標温度に加熱されることを意味する。
【0079】
図5は、装置の動作中にMCUが常に、十分な電圧を受けることをさらに確実にするために使用されうる追加的な制御プロセスを図示する。
【0080】
図5のプロセスでは、出力電池電圧降下率の最大限度が設定されていて、ここでは電圧降下率の限度と呼ばれる。電圧降下率の限度は、異なるサブルール別に、または異なる測定された電池電圧別に異なってもよい。
【0081】
電圧降下率が電圧降下率の限度よりも大きい場合、電圧降下率を抑えるために電流のデューティ比が低減される。
【0082】
図5に示すプロセスは、工程50から始まり、この工程では電池電圧が測定される。工程51では、電池電圧降下率は、測定された電池電圧から計算、およびプロセスの前のサイクルで測定された電池電圧測定値から計算される。工程52では、MCUは電池電圧降下率が閾値よりも大きいか(または電池電圧の変化率が閾値よりも低いか)どうかを判断する。電池電圧降下率が電池電圧降下率の限度よりも大きい場合、工程53において、デューティ比は所定の分だけ低減される。その後、プロセスはステップ50に戻る。例えば、現行のデューティ比が20%である場合、電池電圧降下率の最大値は0.5V/sと定義されうる。電池電圧降下率は、例えば200ミリ秒間隔ごとに測定される。工程52で、電池電圧降下率が閾値より大きい場合、デューティ比は20%から15%に低減し、次のサイクルでさらなる200msの後、電池降下率が依然として0.5V/sより高い場合、さらに15%から10%に低減する。デューティ比の下限を5%に設定しうる。プロセスがデューティ比を5%未満に低減させる必要がある場合、装置は停止されうる。
【0083】
このプロセスは、デューティ比の変化後の急速な電圧降下の結果として、MCUの電圧が最小動作電圧より低くなることを防ぐため、有利である。例えば、出力電池電圧が3.4Vで始まり、電池電圧が0.5V/sの率で降下する場合、2.4Vの電圧に2秒未満で達することになる。この電圧は、最小動作電圧2.5Vよりも低く、わずか2秒で達し、ヒーターを有意に加熱するのに十分な時間ではない。
【0084】
図5のプロセスはまた、電池電圧降下率が増大する場合、デューティ比が低減後に増大されることを可能にする。ところが、プロセスでは、デューティ比が増大する前の2サイクルの間、電圧降下率が閾値より低くなることが必要である。これを行うために、カウントは、電池電圧降下率が電池電圧降下率の限度より低い初期デューティ比降下後の毎回のサイクルで増加される。電圧降下率が下限よりも低い場合、工程54でカウントは一つずつ増やされる。電圧降下率が上限よりも高い場合、工程53でカウントはゼロにリセットされる。工程55でカウントが2に等しいと判断された場合のみ、工程56でデューティ比は増大する。そうでない場合、デューティ比は変化しない。説明した例において、これは、電池電圧降下率が、5%の工程で上昇し戻る前に、(5%の工程で低下する時の200msの代わりに)400ms間で0.5V/s未満でなければならないことを意味する。このヒステリシスはシステムに安定性を提供する。
【0085】
電池の寿命(実施された充放電サイクル回数として測定されうる)、電池の内部抵抗、または電池の内部インピーダンスなど、使用する理想的なデューティ比に影響を与える他の変数がありうる。これらの変数のうちの一つ以上は、第一または第二の特性として使用されうる。別の方法として、デューティ比のよりきめ細かい制御を提供するために、これらの変数のうちの一つ以上に基づくルールおよびサブルールの階層内のさらなる段階(複数可)のルールを使用することが可能である。例えば、第三の特性は、電池が経験した充放電サイクル数であってもよい。電池が経験した充放電サイクル数は記録され、制御ユニット内のメモリ内に保存されうる。図3の実施形態を変更し、ヒーター抵抗に基づき、それぞれのサブルールは、各々の測定されたヒーター抵抗に対して使用するデューティ比を指定する代わりに、ヒーター抵抗の各値に使用する複数のサブサブルールを指定しうる。それぞれのサブサブルールは、電池が経験した充放電サイクル数の値の範囲で、使用するデューティ比を指定しうる。使用されるサブサブルールは、制御ユニットのメモリ内に保存された充放電サイクル数に基づいて選択される。このようにして、デューティ比は、電池の温度、ヒーターの抵抗、電池が完了した充放電サイクル数に基づいて選択される。測定された特性がルール、サブルール、サブサブルールに割り当てられる順序は様々であってもよい。
図1
図2
図3
図4
図5