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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】ガラス形成装置の融解部
(51)【国際特許分類】
   C03B 5/42 20060101AFI20220610BHJP
   F27B 3/16 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
C03B5/42
F27B3/16
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019570139
(86)(22)【出願日】2018-06-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-31
(86)【国際出願番号】 US2018039872
(87)【国際公開番号】W WO2019006041
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-06-01
(31)【優先権主張番号】62/525,813
(32)【優先日】2017-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】デ アンジェリス,ギルバート
(72)【発明者】
【氏名】ドゥラムリア,メーガン オーロラ
(72)【発明者】
【氏名】リーゲル,ケヴィン スコット
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102643011(CN,A)
【文献】米国特許第04481024(US,A)
【文献】特公昭47-019554(JP,B1)
【文献】特開平10-036122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B
F27B
F27D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスバッチ材料を融解する融解部(101)において、
投入壁部(218)と、
前記投入壁部(218)の反対側に位置する放出壁部(220)と、
前記投入壁部(218)から前記放出壁部(220)に延伸する一対の側壁部(241、242)
を含み、
前記投入壁部(218)、前記放出壁部(220)、および、前記一対の側壁部(241、242)は、前記融解部(101)の床部(207)および最上部(206)に囲まれたガラス融解空間(250)を画定するものであり、
前記投入壁部(218)は、前記床部(207)上に支持されて、前記ガラス融解空間(250)に面し、前記床部(207)から垂直に延伸するガラス接触表面(261)を有するガラス接触壁部(260)と、
ジャックアーチ(280)は、ガラス溶融空間(250)に対して最上部(206)から床部 (207) に向けて垂直方向に延伸する前面(284)と、前記前面 (284)の反対側に位置する背面と、前記前面 (284) から背面に向けて水平方向に延伸する下面(285)を含み、
前記ガラス接触壁部(260)の上方で、該ガラス接触壁部(260)の少なくとも一部および前記ガラス融解空間(250)の少なくとも一部の上方に位置する前記ジャックアーチ(280)と、
を含むものであり、
前記ジャックアーチ(280)の前記(284)の平面(294)と、前記ガラス接触表面(261)の平面(267)は、水平方向に互いにずれたものであり、
前記床部(207)から前記ジャックアーチ(280)前記下面(285)までの垂直距離 は、該床部(207)から前記最上部(206)の下面(286)までの垂直距離 より短いものである、融解部。
【請求項2】
前記ジャックアーチ(280)の前記(284)の前記平面(294)と前記ガラス接触表面(261)の前記平面(267)の間の空間は、少なくとも前記融解部(101)の前記床部(207)、該ジャックアーチ(280)の前記下面(285)、該ジャックアーチ(280)の該(284)の該平面(294)、および、該ガラス接触表面(261)の該平面(267)と境界を接したバッチ受取容積部(275)を、含むものである、請求項1に記載の融解部。
【請求項3】
複数のバーナー(402)を、
更に含み、
前記ジャックアーチ(280)の前記(284)に隣接した前記バーナー(402)は、該ジャックアーチ(280)の前記下面(285)より上の高さに位置するものである、請求項1または2に記載の融解部。
【請求項4】
前記ガラス接触表面(261)の少なくとも一部分は、前記床部(207)の法線に対して、前記融解部(101)の前記ガラス融解空間(250)から離れるように傾いたものである、請求項1から3のいずれか1項に記載の融解部。
【請求項5】
前記ガラス接触壁部(260)は、基部と、前記基部から該ガラス接触壁部(260)前記最上部(206)へと先細である上部を含むものである、請求項4に記載の融解部。
【請求項6】
前記ガラス接触壁部(260)は、ジルコニア耐火材料から形成されたものである、請求項1から5のいずれか1項に記載の融解部。
【請求項7】
前記投入壁部(218)は、該投入壁部(218)を通って延伸する少なくとも3つのバッチ投入口(102)を含むものである、請求項1から6のいずれか1項に記載の融解部。
【請求項8】
前記少なくとも3つの投入口(102)は、前記投入壁部(218)の幅方向に、互いに等間隔で離間したものである、請求項7に記載の融解部。
【請求項9】
前記ジャックアーチ(280)は、前記融解部(101)の外枠部に取り付けられたブラケット(600)によって支持され、前記ブラケット(600)は、前記投入壁部(218)の幅方向に移動して、更に、元に戻ることが可能で、該ジャックアーチ(280)の膨張収縮に適応するものである、請求項1からのいずれか1項に記載の融解部。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2017年6月28日出願の米国仮特許出願第62/525、813号の優先権の利益を主張し、その内容は依拠され、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本明細書は、概して、ガラス製造装置に関し、より具体的には、ガラスバッチ材料を融解して溶融ガラスを形成する融解部、および、それを含むガラス製造装置に関する。
【背景技術】
【0003】
高い光学品質を有するガラスシートが、LCDディスプレイ、LEDディスプレイなどを含む様々な光学表示装置で、一般的に採用されている。様々な製造処理を用いて、高い光学品質のガラスシートを製造している。これらの製造処理は、概して、ガラスバッチ材料をセラミックの耐火炉(つまり、融解部)で融解する工程と、次に、溶融ガラスを形成体から引き出すことによって、ガラスリボンを溶融ガラスから製造する工程とを含む。次に、ガラスリボンを、個々のガラスシートに切断する。
【0004】
ガラスリボン製造中に用いる構成要素の劣化は、ガラスリボンに欠陥部を生じて、ガラスリボンを、意図した利用に不適切なものにしうる。例えば、ガラス製造装置の構成要素が、長い時間に亘って、ガラス製造装置内の高温に曝されることは、材料の分解に繋がり、それは、ガラス製造処理において、欠陥を生じさせうる。その代わりに、または、追加で、製造装置の構成要素と溶融ガラスが直に接触することは、材料の腐食に繋がり、それも、ガラス製造処理において、欠陥を生じさせうる。
【0005】
完成したガラスシートが欠陥部を有する場合には、通常、廃棄されて、その結果、製造コストが上昇し、製造効率が低下してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、そこから製造されるガラスリボンに生じる欠陥部を削減する代わりのガラス製造装置、および/または、融解部などのガラス製造装置の構成要素が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態によれば、ガラスバッチ材料を融解する融解部は、投入壁部と、投入壁部の反対側に位置する放出壁部と、投入壁部から放出壁部に延伸する一対の側壁部とを含みうる。投入壁部、放出壁部、および、一対の側壁部は、融解部の床部および最上部に囲まれたガラス融解空間を画定する。投入壁部は、床部上に支持されて、ガラス融解空間に面するガラス接触表面を有するガラス接触壁部を含みうる。上部構造部は、ガラス接触壁部の上方に位置しうる。上部構造部は、ガラス接触壁部の少なくとも一部およびガラス融解空間の少なくとも一部の上方に位置するジャックアーチを含みうる。ジャックアーチの内面の平面と、ガラス接触表面の平面は、水平方向に互いにずれたものである。床部からジャックアーチの下面までの垂直距離は、床部から最上部の下面までの垂直距離より短い。
【0008】
他の実施形態によれば、ガラスバッチ材料を融解する融解部は、投入壁部と、投入壁部の反対側に位置する放出壁部と、投入壁部から放出壁部に延伸する一対の側壁部とを含み、投入壁部、放出壁部、および、一対の側壁部は、融解部の床部および最上部に囲まれたガラス融解空間を画定する。投入壁部は、床部上に支持されたガラス接触壁部を含み、ガラス接触壁部は、ガラス融解空間に面するガラス接触表面を有する。投入壁部は、ガラス接触壁部の上方に位置する上部構造部を更に含みうる。上部構造部は、ガラス接触壁部の少なくとも一部およびガラス融解空間の少なくとも一部の上方に位置するジャックアーチを含みうる。ジャックアーチの内面の平面と、ガラス接触表面の平面は、水平方向に互いにずれたものである。床部からジャックアーチの下面までの垂直距離は、床部から最上部の下面までの垂直距離より短い。更に、少なくとも3つのバッチ投入口が、投入壁部を通って延伸しうる。融解部は、複数のバーナーを更に含み、ジャックアーチの内面に直ぐ隣接したバーナーは、ジャックアーチの下面より上方に位置しうる。
【0009】
本明細書に記載の実施形態の更なる特徴および利点を、次の詳細な記載に示し、それは、部分的には、当業者には、その記載から容易に明らかであるか、または、次の詳細な記載、請求項、および、添付の図面を含む本明細書に記載の実施形態を実施することによって分かるだろう。
【0010】
ここまでの概略的記載および次の詳細な記載の両方が、様々な実施形態を記載し、請求した主題の本質および特徴を理解するための概観または枠組みを提供することを意図すると、理解すべきである。添付の図面は、様々な実施形態の更なる理解のために含められたものであり、本明細書に組み込まれ、その一部を形成する。図面は、本明細書に記載の様々な実施形態を示し、明細書の記載と共に、請求した主題の原理および動作を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本明細書に示し記載した1つ以上の実施形態によるガラス製造装置を示す概略図である。
図2】本明細書に示し記載した1つ以上の実施形態によるガラス製造装置の融解部を概略的に示す等角背面図である。
図3】本明細書に示し記載した1つ以上の実施形態によるガラス製造装置の融解部を概略的に示す等角前面図である。
図4】融解部の断面を、融解部の長さ方向に概略的に示す。
図5図2から4の融解部の投入壁部を、外枠部なしで、概略的に示す。
図6】本明細書に示し記載した1つ以上の実施形態による図5の投入壁部の断面を概略的に示す。
図7A】本明細書に示し記載した1つ以上の実施形態による投入壁部のガラス接触部を形成するのに用いうる耐火ブロックを概略的に示す。
図7B】本明細書に示し記載した1つ以上の実施形態による投入壁部のガラス接触部を形成するのに用いうる耐火ブロックを概略的に示す。
図8】本明細書に示し記載した1つ以上の実施形態による投入壁部のジャックアーチを支持するブラケットを概略的に示す。
図9】本明細書に示し記載した1つ以上の実施形態による融解部の投入壁部の断面を、外枠部と共に、概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで、ガラス形成装置の融解部の実施形態を詳細に記載し、例を、添付の図面に示す。全図を通して、同じ、または、類似の部分を称するには、可能な限り同じ参照番号を用いている。融解部の一実施形態を、図2~4の断面図に概略的に示している。融解部は、概して、投入壁部と、投入壁部の反対側に位置する放出壁部と、投入壁部から放出壁部に延伸する一対の側壁部とを含む。投入壁部、放出壁部、および、一対の側壁部は、融解部の床部および最上部に囲まれたガラス融解空間を画定する。投入壁部は、床部上に支持されてガラス融解空間に面するガラス接触表面を有するガラス接触壁部を含む。上部構造部は、ガラス接触壁部の上方に位置しうる。上部構造部は、ガラス接触壁部の少なくとも一部およびガラス融解空間の少なくとも一部の上方に位置するジャックアーチを含みうる。ジャックアーチの内面の平面と、ガラス接触表面の平面は、水平方向に互いにずれたものである。床部からジャックアーチの下面までの垂直距離は、床部から最上部の下面までの垂直距離より短い。本明細書において、添付の図面を具体的に参照して、融解部、および、融解部の様々な構成要素を、より詳細に記載する。
【0013】
本明細書において、範囲を「約」1つの特定の値から、および/または、「約」他の特定の値までと表しうる。そのような範囲を表した場合には、他の実施形態は、その特定の値から、および/または、他方の特定の値までを含む。同様に、「約」を付けて、値を近似値で表した場合、その特定の値が、他の実施形態を形成するのが分かるだろう。更に、各範囲の端点は、他方の端点との関係でと、他方の端点とは独立にの両方で重要であると理解されるだろう。
【0014】
本明細書で用いるような方向を表す用語、例えば、上に、下に、右、左、前、後ろ、最上部、底部などは、示した図面に関する記載であり、絶対的向きを意味することを意図しない。
【0015】
別段の記載がない限りは、本明細書に示したいずれの方法も、工程が特定の順序で行われることを要するとも、いずれの装置も、特定の向きであることを要するとも、解釈されることを全く意図しない。したがって、方法の請求項が、工程が行われる順序を実際に記載しないか、いずれの装置の請求項も、個々の構成要素の順序も向きも実際に記載しないか、そうではなく、請求項または明細書の記載で、工程は特定の順序に限定されると具体的に記載されることも、装置の構成要素の具体的な順序または向きが記載されることもない限りは、いかなる点でも、順序も向きも推定されることを意図しない。このことは、記載がないことに基づく、いずれの解釈にも当てはまり、そのような解釈は、工程の配列についての論理的事項、動作フロー、構成要素の順序、または、構成要素の向き、文法構造または句読点に由来する単なる意味、並びに、明細書に記載された実施形態の数または種類を含む。
【0016】
本明細書で用いるように、英語の原文で単数の意味の定冠詞または不定冠詞は、文脈からそうでないことが明らかでない限りは、複数のものを含む。したがって、例えば、「単数の意味の」構成要素は、そうでないことが文脈から明らかでない限りは、そのような構成要素を2つ以上有する態様を含む。
【0017】
ガラスシートなどのガラスストック材料は、概して、ガラスバッチ材料を融解して溶融ガラスを形成し、更に、溶融ガラスを、ガラスリボンなどの最終ガラス製品に形成することによって形成されうる。ガラスリボンを形成する例示的な処理は、フロートガラス処理、スロットドロー処理、および、フュージョンダウンドロー処理を含む。
【0018】
例として、図1を参照すると、ガラスリボンを溶融ガラスから形成する例示的なガラス製造装置100を概略的に示し、フュージョンドロー装置を用いて、溶融ガラスをガラスリボンに形成している。ガラス製造装置100は、融解部101、清澄槽103、混合槽104、送出槽108、および、フュージョンドロー機(FDM)120を含む。ガラスバッチ材料が、融解部101に、バッチ投入口102を通って導入される。バッチ材料は、融解部で溶融されて、溶融ガラス106を形成する。清澄槽103は、融解部101から溶融ガラス106を受け付ける高温処理領域を含み、その中で、溶解した気体、および/または、気泡が、溶融ガラス106から除去される。清澄槽103は、接続管105によって、混合槽104に流体連結されている。つまり、清澄槽103から混合槽104に流れる溶融ガラスは、接続管105を通って流れる。混合槽104は、次に、接続管107によって、送出槽108に流体連結して、混合槽104から送出槽108に流れる溶融ガラスが、接続管107を通って流れるようにする。
【0019】
送出槽108は、溶融ガラス106を、降下管109を通してFDM120に供給する。FDM120は、投入部110および形成槽111が中に位置する筐体122を含む。図1に示したように、降下管109からの溶融ガラス106は、形成槽111に繋がる投入部110に流れる。形成槽111は、溶融ガラス106を受け付ける開口部112を含み、その溶融ガラス106は、桶部113に流れ込み、次に、溢れて、2つの収束する面114a、114bを、2つの面が合流する根元部で融合する前に、つまり、溶融ガラス106が接触して下流側方向121に引き出されて連続したガラスリボン148を形成する前に、下方に流れる。
【0020】
図1は、ガラスリボンを、フュージョンドロー機を用いて形成するガラス製造装置100を概略的に示すが、限定するものではないが、フロートガラス処理、スロットドロー処理などを含む他の処理を用いてガラスリボンを形成しうると理解すべきである。更に、ガラス製造装置100を、ガラスリボンの形成に用いるものとして示しているが、同様のガラス製造装置を、限定するものではないが、ガラス管など、ガラスシート以外のガラスストック材料を形成するのに用いうると理解すべきである。
【0021】
融解部101の一部など、ガラス製造装置100の構成要素の劣化は、そこから製造されたガラスリボンでの欠陥部の生成に繋がりうることを見出した。例えば、溶融ガラスを形成するためのバッチ材料は、上記のように、融解部の投入壁部のバッチ投入口を通って、融解部に入りうる。このバッチ投入口は、投入壁部のガラス接触部より上方(つまり、融解部のうち溶融ガラスに直に接触し、概して、例えば、ジルコニア耐火ブロックなどの耐火ブロックから形成された部分より上方に)位置しうる。固体の粒状で融解部に導入されるバッチ材料は、バッチ材料が融解して、融解部に既に存在する溶融ガラス中に溶けるまで、最初は、溶融ガラスの上に「浮かぶ」。バッチ材料の加熱は、溶融ガラスに沈められた電極、溶融ガラスからバッチ材料に伝わる熱、および、溶融ガラスより上の融解部の上部に位置するバーナーまたは他の加熱部から加えられた熱によって行われうる。バッチ材料が、ホウ素またはホウ素化合物などの比較的低い融点を有する構成成分を含む場合、バッチ材料が投入壁部から離れて融解部の放出壁部に向かって流れる前に、これらの成分は、バッチ材料の残りの部分より速く融解して、溶融ガラス中に溶けうる。その結果、バッチ材料が投入壁部近傍の融解部に入ると、低い融点を有する構成成分が急速に溶けることにより、投入壁部のガラス接触部近傍の溶融ガラスは、これらの低い融点を有する構成成分を、より高い濃度で有するものとなりうる。
【0022】
ホウ素またはホウ素化合物を含むバッチ材料について、溶融ガラス中に溶けたホウ素は、投入壁部のガラス接触部の耐火材料に浸透し、耐火材料の粒子を緩めて、粒子が溶融ガラス中に放たれるようにさせる。より小さい耐火材料の粒子は、溶融ガラス中に溶けうる。しかしながら、より大きい耐火材料の粒子は、溶融ガラス中に溶けず、やがて、溶融ガラスから形成されたガラスリボン中の欠陥部(つまり、耐火材欠陥部)となりうる。ガラスリボンに欠陥部を生じるだけではなく、更に、バッチ材料からのホウ素またはホウ素化合物と、ガラス接触部の耐火ブロックとの相互作用は、ガラス接触部を劣化させて、融解部の耐用期間を短縮し、それは、ガラス製造装置の耐用期間を短縮させる。
【0023】
これらの種類の欠陥部のガラスリボン中での発生は、融解部およびガラス製造装置を通るガラス流が増えるにつれて、増加しうる。例えば、融解部を通るガラス流を増加させるには、投入壁部のバッチ投入口を通って融解部に入るガラスバッチ材料の量を増加させる必要がある。その結果、バッチ材料が完全に融解して溶融ガラス中に溶ける前に、バッチ材料が溶融ガラス上に留まる時間も長くなりうる。このように溶融ガラスの表面に長い時間留まる間に、低い融点を有する構成成分が上方からのバーナーまたは他の加熱部に曝されることで、低い融点を有する構成成分(ホウ素またはホウ素化合物など)が、更に高い濃度で、投入壁部のガラス接触部近傍の溶融ガラス中に存在することになりうる。このように低い融点を有する構成成分の濃度が高くなると、それは次に、溶融ガラスおよび結果的に得られるガラスリボン中の耐火材欠陥部の数を増加させて、更に、投入壁部のガラス接触部の耐火ブロックの劣化を加速しうる。
【0024】
上記の事項に追加で、耐火性物質から放出された気体により溶融ガラス中に生じた気泡、バッチ材料中に捉えられた空気、および/または、バッチ材料の劣化も、投入壁部のガラス接触部の耐火ブロックの劣化を悪化させうることも見出した。特に、溶けた気体の気泡は、ガラス接触部の表面に沿って、融解部の床部から溶融ガラスの表面に進行する傾向があることを見出した。気泡と、ガラス接触部の耐火ブロックとの相互作用は、耐火ブロックを浸食して、耐火ブロックの表面に溝を形成しうるもので、この過程を「アップワード ドリリング」と称しうる。この過程は、ガラス接触部の耐火ブロックの劣化を、更に加速させる。
【0025】
本明細書に記載のガラス製造装置の融解部は、上記問題の1つ以上を軽減する。更に、本明細書に記載の融解部は、結果的に得られるガラスリボンに存在する欠陥部の数を増加させることなく、ガラス製造装置を通る溶融ガラスの処理量を増加させうる。
【0026】
ここで、図1~4を参照すると、ガラス製造装置100で用いる融解部101を、背後から(図2)、前から(図3)、および、X-Y断面で(図4)、概略的に示している。融解部101は、外枠部130、および、基部170を含む。外枠部130は、概して、外枠部の内側容積部132を画定する。融解部101は、外枠部の内側容積部132内で基部170上に支持されたタンクアセンブリ200を含む。実施形態において、タンクアセンブリ200は、基部170上に支持されて、外枠部130から離間している。融解部101のタンクアセンブリ200は、複数のバッチ投入口102を含む投入壁部218(図2)を含み、ガラスバッチ材料が、複数のバッチ投入口102を通って、融解のためのタンクアセンブリ200の内部に導入されうる。タンクアセンブリ200は、融解部101の長さ方向(つまり、図面に示した座標軸の+/-Y方向)に投入壁部218の反対側に、放出壁部220も含みうる。放出壁部は、放出口223を含み、それを通して、融解部101のタンクアセンブリ200から溶融ガラスを放出する。融解部101のタンクアセンブリ200は、一対の側壁部241、242(側壁部241は、図2、3の各々に示されている。側壁部241、242は、図4に概略的に示したタンクアセンブリの断面に示している)を更に含み、融解部101の幅方向(つまり、図2、3に示した座標軸の+/-X方向)に互いに対向して位置する。一対の側壁部241、242は、投入壁部218と放出壁部220を接続する。本明細書に記載の実施形態において、融解部101は、融解部101の長さ方向に配列した複数のバーナー402を含む。実施形態において、バーナー402は、タンクアセンブリ200の側壁部241、242内、または、それらの上に位置しうる。本明細書に記載したように、バーナー402は、バッチ材料が融解部101に入る時に、バッチ材料を容易に融解させると共に、融解部101内の溶融ガラスの温度を維持するのも助ける。
【0027】
投入壁部218、放出壁部220、および、側壁部241、242に追加で、融解部101のタンクアセンブリ200は、最上部206(「冠部」とも称される)および床部207(図4)を含み、それらは、投入壁部218、放出壁部220、および、側壁部241、242を接続する。投入壁部218、放出壁部220、側壁部241、242、および、床部207が、融解部101のタンクアセンブリ200のガラス融解空間250を囲む。本明細書に記載の実施形態において、投入壁部218、放出壁部220、側壁部241、242、および、床部207は、各々、本明細書において更に詳細に記載するようなセラミック耐火性物質から形成された煉瓦およびブロックなどの耐火材料から構成される。「耐火材料」という用語は、本明細書で用いるように、ガラス製造(具体的には、融解)処理の高温での劣化を最小に抑えて耐えることが可能な材料のことを称する。耐火材料、具体的には、融解部101を構成するのに用いられる耐火ブロックは、概して、アルミナ、ジルコニアなどのセラミック材料であるが、限定するものではないが、耐火金属および耐火合金を含み他の耐火材料も企図していると理解すべきである。
【0028】
更に、図1~4を参照すると、融解部101の外枠部130(図1)は、タンクアセンブリ200に、例えば、圧力ボルトで連結される。いくつかの実施形態において、圧力ボルトは、耐火ブロックの膨張収縮を可能にするバネ荷重圧力ボルトでありうる。実施形態において、圧力ボルトは、支持部材内に位置し、次に、支持部材は、外枠部130に堅く取り付けられる。その代わりに、圧力ボルトを、外枠部130の一部に取り付け(更に、そこを通って延伸するようにし)うる。
【0029】
ここで、図5、6を参照すると、図2~4のタンクアセンブリ200の投入壁部218を、外枠部なしで、概略的に示している。投入壁部218は、概して、ガラス接触部204、および、上部構造部202を含む。ガラス接触部204は、タンクアセンブリ200の下側部分であり、ガラスバッチ材料が加熱されて、溶融ガラスになる部分である。つまり、ガラス接触部204は、融解部101のタンクアセンブリ200のガラス融解空間250内に配置された溶融ガラスと接触することになるタンクアセンブリ200の一部である。上部構造部202は、ガラス接触部204(および、ガラス接触部204のガラス接触壁部260)の上方に位置し、いくつかの実施形態においては、少なくとも部分的には、ガラス接触壁部260上に支持される。上部構造部202は、次に、融解部101のタンクアセンブリ200の最上部206を支持する。実施形態において、融解部101のタンクアセンブリ200内で融解すべきガラスバッチ材料を受け付けるバッチ投入口102は、投入壁部218の上部構造部202に位置する。
【0030】
本明細書に記載の投入壁部218の実施形態において、投入壁部218のガラス接触部204は、床部207およびガラス接触壁部260を含む。ガラス接触壁部260および床部207は、アルミナ、ジルコニア、または、他の適したセラミック耐火材料などの耐火材料から形成されて積み重ねられた耐火ブロック213から構成されうる。ガラス接触壁部260の耐火ブロック213は、床部207上に支持される。実施形態において、ガラス接触壁部260の耐火ブロック213は、外枠部に取り付けられた圧力ボルトで、互いに接触するように付勢されうる。
【0031】
本明細書に記載の実施形態において、ガラス接触壁部260は、タンクアセンブリ200のガラス融解空間250に面したガラス接触表面261を含む。任意で、ガラス接触壁部260のガラス接触表面261の少なくとも一部は、ガラス融解空間250から離れるように傾斜する。これらの実施形態において、ガラス接触表面261の傾斜した部分の傾斜角度αは、垂直方向に対して(つまり、図面に示した座標軸の+/-Z方向に平行な方向に対して)、約5度から約25度でありうる。
【0032】
実施形態において、ガラス接触壁部260は、図6に示したように、床部207上に支持された基部262、および、基部262上に支持された上部263を含む。これらの実施形態において、基部262のガラス接触表面は、略垂直であり、上部263のガラス接触表面は、上記のような傾斜角度αで向いている。これらの実施形態において、上部263は、基部262からガラス接触壁部260の最上部へと先細である。他の実施形態において(不図示)、全ガラス接触表面261が、垂直に対して、傾斜角度αで向く。
【0033】
ガラス接触壁部260のガラス接触表面261の少なくとも一部が、タンクアセンブリ200のガラス融解空間250から離れるように傾く実施形態において、ガラス接触表面261の少なくとも一部の傾斜角度αは、ガラス接触壁部260の耐火ブロック213の劣化防止を助けうる。例として、図1および図6から7Aを参照すると、ガラス製造装置100の動作中に、融解部101は溶融ガラス106を収容する。融解部101内の溶融ガラス106は、ガラス接触壁部260が溶融ガラス106の表面より下方となるような表面高さである。つまり、ガラス接触壁部260のガラス接触表面261は、溶融ガラス106中に沈んでいる。溶融ガラス106中の気泡が、上記のようにガラス接触壁部260のガラス接触表面261に沿って進行する場合に、ガラス接触表面261の傾斜角度αは、図7Aに示すように、気泡902をガラス接触表面261から解放して、垂直に上向きにガラス接触表面261から離れるように進行させる。これにより、気泡902によるガラス接触表面261の浸食を軽減する。
【0034】
これに対して、図7Bは、ガラス接触表面261が垂直に向いたガラス接触壁部260の一部を示している。ガラス接触壁部260のガラス接触表面261が垂直に向いた場合、垂直に上向きに進行する気泡902は、ガラス接触表面261と接触したままであり、潜在的に、ガラス接触表面261に浸食を生じる。
【0035】
再び、図5、6を参照すると、投入壁部218の上部構造部202は、耐火ブロック270を通って延伸する少なくとも1つのバッチ投入口102を含み、いくつかの実施形態では、複数のバッチ投入口を含みうる。本明細書で記載したように、少なくとも1つのバッチ投入口102は、バッチ材料を融解部101のタンクアセンブリ200のガラス融解空間250に容易に導入させる。任意で、投入壁部218は、少なくとも2つのバッチ投入口、例えば、図5に示したように、少なくとも3つ以上のバッチ投入口102を含みうる。これらの投入口102は、投入壁部218の幅方向に、互いに等間隔でありうる。
【0036】
実施形態において、少なくとも3つのバッチ投入口102など、2つより多くのバッチ投入口102を投入壁部218に組み込むことで、ガラス製造装置100によって形成されたガラスリボンの耐火材欠陥部の数を増加させることなく、融解部101を通る溶融ガラスの流れを容易に増やす。具体的には、バッチ投入口102の数を増やすことで、融解部101に入るバッチ材料の量を増加させることが可能になる。バッチ投入口102の数を増やすことで、バッチ材料を、溶融ガラスの表面に亘って、投入壁部218の幅方向により均一に分布させることも容易になる。バッチ材料を溶融ガラスの表面に亘って、より均一に分布させることによって、ホウ素およびホウ素化合物などの低い融点を有する構成成分の濃度は、溶融ガラス中で、より均一に分布し、それによって、ホウ素がガラス接触壁部260の耐火ブロックに浸透するのを削減または軽減して、ガラス製造装置100によって形成されたガラスリボンの欠陥部の数を削減する。
【0037】
更に、図5、6を参照すると、投入壁部218の上部構造部202は、ジャックアーチ280を更に含む。ジャックアーチ280は、アルミナ、ジルコニア、または、他の適したセラミック耐火材料などの耐火材料から形成された耐火ブロックから構成される。図5、6に示した投入壁部218の実施形態において、ジャックアーチ280は、斜切ブロック281およびウェッジブロック282を含む。斜切ブロック281は、少なくとも部分的には、融解部101のタンクアセンブリ200の側壁部241、242(図2~4)上に支持され、部分的には、アーチの横方向の荷重が外枠部130に伝達されるように、融解部の外枠部130によって支持される。例えば、実施形態において、斜切ブロック281は、本明細書で更に詳しく記載するように外枠部130に取り付けられた支持ブラケット600の一部(図8)を受け付ける支持ノッチ283を含む。支持ブラケット600は、ジャックアーチ280を、融解部101の外枠部130に連結する。
【0038】
更に、図5、6を参照すると、ジャックアーチ280が投入壁部218の幅方向に亘って延伸するように、複数のウェッジブロック282が斜切ブロック281の間に配置される。ウェッジブロック282は、斜め嵌合面を有して形成されて、ウェッジブロックを組み立てた時に、隣接したブロックの斜め嵌合面が垂直方向に互いにずれるのを防ぐようにする。例えば、第1のウェッジブロックは、+30°の角度をなす斜め嵌合面を有し、隣接したウェッジブロックは、-60°の角度をなす斜め嵌合面を有する。ウェッジブロック282を、嵌合面が互いに接触するように組み立てた場合、ウェッジブロック282の質量(したがって、ジャックアーチ280の質量、および、ジャックアーチ280が支持する任意の他の荷重)が横方向に(つまり、投入壁部218の幅方向に)斜切ブロック281に伝達されて、次に、融解部101の外枠部130に伝達される。
【0039】
ここで、図5、8を参照すると、ジャックアーチ280の斜切ブロック281を融解部101の外枠部130の直立部材134上に支持する支持ブラケット600を、概略的に示している。図8は、直立部材134に位置する支持ブラケット600の垂直断面を概略的に示している。図8では、単一の支持ブラケット600を概略的に示しているが、支持ブラケットは、図8に示した座標軸の+/-X方向のジャックアーチ280の両端部に位置してもよいと、理解すべきである。支持ブラケットは、+/-X方向(つまり、投入壁部の幅方向)に移動して、更に、元に戻ることが可能で、熱サイクルの間のジャックアーチ280の膨張収縮に適応しうる。
【0040】
本明細書に記載の実施形態において、支持ブラケット600は、概して、L型ブラケット部602、および、膨張収縮スリーブ604を含む。L型ブラケット部602は、ジャックアーチ280の斜切ブロック281に形成された支持ノッチ283と係合して、L型ブラケット部602が斜切ブロック281およびジャックアーチ280の質量の少なくとも一部を支持するようにする。支持ブラケット600は、下側枢動中心608でピンとクレビスの接続部を通してL型ブラケット部602に枢動自在に連結された垂直支持ストラット606も含み、垂直支持ストラット606は、L型ブラケット部602に対して図面に示した座標軸のX-Z平面で枢動可能である。垂直支持ストラット606は、上側枢動中心610でピンとクレビスの接続部を通して直立部材134にも連結されて(つまり、上側枢動中心610は、支持ブラケット600のL型ブラケット部602の上方に位置する)、垂直支持ストラット606が直立部材134に対して図面に示した座標軸のX-Z平面で枢動可能である。実施形態において、垂直支持ストラット606は、ねじ山を有しうるもので、垂直支持ストラット606を上側枢動中心610に連結するナット612を含む。ナット612と、ねじ山を有する垂直支持ストラット606とを組み合わせることで、ねじ山を有する垂直支持ストラット606上のナット612の位置を調節することによって、+/-Z方向のL型ブラケット部602の高さ(したがって、斜切ブロック281およびジャックアーチ280の高さ)を容易に調節しうる。下側および上側枢動中心608、610は、熱サイクルに起因するジャックアーチの膨張収縮による支持ブラケット600のL型ブラケット部602の+/-X方向のずれに適応する。
【0041】
更に、図8を参照すると、支持ブラケット600のL型ブラケット部602は、垂直方向中間枢動中心614でピンとクレビスの接続部を通して膨張収縮スリーブ604に枢動自在に連結される。図8に示した実施形態において、垂直方向中間枢動中心614でのピンとクレビスの接続部のクレビス部分は、+/-Z方向に長いスロット615を含み、支持ブラケット600のL型ブラケット部602の高さ調節に適応する(つまり、垂直方向中間枢動中心614は、支持ブラケット600のL型ブラケット部602の垂直方向の調節を容易にする)。
【0042】
膨張収縮スリーブ604は、直立部材134に形成された開口部を通って延伸し、膨張収縮スリーブ604が、図面に示した座標軸の+/-X方向に、直立部材134に対して摺動自在に移動する。膨張収縮スリーブ604は、膨張収縮スリーブ604を通って延伸するバネボルトアセンブリ616を含む。バネボルトアセンブリ616は、水平方向中間枢動中心618でピンとクレビスの接続部を通して、膨張収縮スリーブ604に摺動自在に連結される。図8に示した実施形態において、水平方向中間枢動中心618でのピンとクレビスの接続部のクレビス部分は、+/-X方向に長いスロット619を含み、斜切ブロック281およびジャックアーチ280の膨張収縮に起因する支持ブラケット600の膨張収縮スリーブ604の直立部材134およびバネボルトアセンブリ616に対する移動に適応する(つまり、水平方向中間枢動中心618は、支持ブラケット600の膨張収縮スリーブ604の水平方向の移動を容易にする)。
【0043】
より具体的には、直立部材134は、膨張収縮スリーブ604に対して機械的に固定される。水平方向中間枢動中心618でのピンとクレビスの接続部のピン部分621は、直立部材134の対応する開口部(不図示)を通って延伸し、バネボルトアセンブリ616を直立部材134に取り付ける。実施形態において、直立部材の開口部は、バネボルトアセンブリ616の+/-X方向または+/-Z方向のいずれの方向の平行移動も防ぐサイズである。したがって、バネボルトアセンブリ616と直立部材134の接続部は、膨張収縮スリーブ604がバネボルトアセンブリ616と直立部材134の両方に対して平行移動するのを可能にする。
【0044】
バネボルトアセンブリ616は、概して、水平方向中間枢動中心618でのピンとクレビスの接続部のクレビス622と係合した、ねじ山付きロッド620を含む。ねじ山付きロッド620は、L型ブラケット部602とは反対側の膨張収縮スリーブ604の端部(つまり、L型ブラケット部602に対して、膨張収縮スリーブ604の遠端部)に取り付けられた端部プレート630を通って延伸する。バネボルトアセンブリ616は、圧縮バネ、バネワッシャ、または、それらの組合せなどの複数の付勢部624も含む。付勢部624は、ねじ山付きロッド620の周りに配置されて、端部プレート630と、ねじ山付きロッド620の遠端部に位置するワッシャ625およびナット626との間に位置する。付勢部624は、膨張収縮スリーブ604に力を加えて、膨張収縮スリーブ604をジャックアーチ280に向かって付勢し、それにより、圧縮力をジャックアーチ280に加えて、ジャックアーチ280のブロック(つまり、斜切ブロック281およびウェッジブロック282)を正しい位置に維持する。ナット626とねじ山付きロッド620を組み合わせることで、ねじ山付きロッド620上のナット626の位置を調節することによって、膨張収縮スリーブ604とL型ブラケット部602の水平位置(したがって、ジャックアーチ280に加わった圧縮力)を+/-X方向に容易に調節する。更に、膨張収縮スリーブ604を直立部材134に対して摺動自在に移動できることで、付勢部624と共に、ジャックアーチ280に加わる圧縮力を一定に維持してジャックアーチのブロックを正しい位置に保持しながら、融解部の熱サイクル中のジャックアーチ280の膨張収縮に適応する。
【0045】
本明細書に記載の実施形態において、ジャックアーチ280は、融解部101にバッチ投入口102を通って導入されたバッチ材料を少なくともバッチ投入口102に最も近いバーナー402(または、加熱部)から遮蔽するように向けられて、ガラス融解空間250に配置される。具体的には、床部207からジャックアーチ280の下面285までの垂直距離Dは、床部207から最上部206の下面286まで垂直距離Dより短い。ジャックアーチ280も、図6に示したように、ガラス接触壁部260の少なくとも一部、および、ガラス融解空間250の少なくとも一部の上方に位置する。更に、ジャックアーチ280の前面284の平面294と、ガラス接触表面261の平面267は、水平方向(つまり、図面に示した座標軸の+/-Y方向に平行な方向)に互いにずれている。ジャックアーチ280の前面284の平面294は、本明細書で用いるように、図6に示したようなガラス融解空間250内に+Y方向に最も遠くまで延伸するジャックアーチ280の一部が位置するX-Z平面のことを称する。ガラス接触表面261の平面267は、本明細書で用いるように、図6に示したようなガラス融解空間250内に+Y方向に最も遠くまで延伸するガラス接触表面261の一部が位置するX-Z平面のことを称する。本明細書に記載の実施形態において、X-Z平面は、放出壁部220に略平行で、側壁部221、222に略垂直な垂直平面である。
【0046】
ジャックアーチ280の下面285までの垂直距離を、最上部206の下面286までの距離と比べて短くすることを、ジャックアーチ280の前面284をガラス接触部204のガラス接触表面261に対して、ずらして位置させることと組み合わせることで、ジャックアーチ280の下に窪みを生成し、それが、少なくとも部分的には、ガラス融解空間250にバッチ投入口102を通って入るガラスバッチ材料を、ガラス融解空間250での放射熱から遮蔽する。この遮蔽効果は、バッチ材料の比較的低い融点を有する構成成分が融解して溶融ガラスに溶ける速度を低下させて、それにより、これらのバッチ材料の構成成分が融解して溶融ガラスに溶ける前に、投入壁部218から離れて流れるのに十分な時間を提供する。その結果、ガラス接触表面261近傍の溶融ガラス中のこれらの構成成分の濃度は低下し、次に、これらの構成成分のガラス接触壁部260の耐火ブロックへの浸透を削減し、耐火材欠陥部が溶融ガラスに生じるのを軽減する。
【0047】
実施形態において、ジャックアーチ280の前面284の平面294とガラス接触表面261の平面267の間の空間は、少なくとも融解部101の床部207、ジャックアーチ280の下面285、ジャックアーチ280の前面284の平面294、および、ガラス接触表面261の平面267と境界を接するバッチ受取容積部275を含む。バッチ受取容積部275は、概して、バッチ材料が溶融ガラスの表面に導入されて、ガラス融解空間250内で放射熱から遮蔽される、ガラス融解空間250内でガラス接触表面261に対して最も進行側の位置を画定する。
【0048】
いくつかの実施形態において、1つ以上のバーナー402は、ジャックアーチ280と相対的に配置されて、ジャックアーチ280の遮蔽効果を更に高める。例えば、いくつかの実施形態において、少なくともジャックアーチ280の前面284に直ぐに隣接したバーナー402は、ジャックアーチ280の下面285より上の高さで側壁部に配置されて、ガラス融解空間250に入るバッチ材料が、これらのバーナー402から加えられる直接の熱から遮蔽されるようにする。
【0049】
再び、図2~4を参照すると、放出壁部220および側壁部241、242は、ジャックアーチ以外は、投入壁部218と同様の構成を有する。つまり、放出壁部220および側壁部241、242は、各々、耐火材料のブロックから構成され、各々が、投入壁部218について記載したように、ガラス接触部、および、ガラス接触部の上の上部構造部を含む。しかしながら、本明細書に記載の実施形態において、放出壁部220および側壁部241、242の各々の上部構造部は、図4に示したように、ジャックアーチを有さずに、何段かの耐火ブロックを含む。例えば、図4の側壁部242は、本明細書で投入壁部218について記載したように、ガラス接触壁部を含むガラス接触部を含む。側壁部242の上部構造部は、幾段かの耐火ブロックを含む。耐火ブロックは、本明細書で図4、5を参照して記載したように、ガラス接触壁部上に、または、その上方に支持される。放出壁部220および側壁部241の各々は、同様に構成されうる。
【0050】
図2~3を参照すると、タンクアセンブリ200の最上部206は、同様に、耐火ブロックから構成される。最上部206を形成するには、耐火ブロックを積み重ねて、バレルヴォールト部を、融解部101のタンクアセンブリ200のガラス融解空間250(図4)の上方に、アーチおよび/またはヴォールトを形成する従来の石積み技術を用いて形成する。
【0051】
上記のように、タンクアセンブリ200を利用して、ガラスバッチ材料を加熱し、それにより、溶融ガラスを、タンクアセンブリのガラス接触部204で形成する。様々な技術を利用して、タンクアセンブリ200を加熱しうる。例えば、図2~4に示したタンクアセンブリ200の実施形態において、タンクアセンブリを、電気的に加熱する。具体的には、タンクアセンブリ200は、側壁部241、242および/または床部207の耐火ブロックを通って延伸する複数の電極(不図示)を更に含む。電極は、電気エネルギーを、タンクアセンブリ200に収容された溶融ガラスおよび/またはガラスバッチ材料に送る。様々な構成の電極214を利用して、タンクアセンブリ200のガラス接触部204を加熱する。更に、上記のように、複数のバーナー402を、タンクアセンブリ200の側壁部241、242に配置して、電極214による加熱を補いうる。
【0052】
本明細書に記載の融解部101の実施形態において、耐火ブロックは、外枠部、および、取り付けられた基部によって、支持補強される。ここで、例として、図9を参照すると、外枠部130は、基部170に堅く連結されて、概して、複数の直立部材134、複数の交差部材138、および、複数の長尺部材146を含む。本明細書に記載の実施形態において、複数の直立部材、複数の交差部材、および、複数の長尺部材は互いに接続されて、外枠部の内側容積部132を囲む外枠部130を形成する。複数の直立部材134は、溶接および/または機械的な固定部によって、基部170に堅く取り付けられ、基部170から、略垂直方向(つまり、図9に示した座標軸の+Z方向)に上向きに延伸する。複数の長尺部材146は、縦方向(つまり、図9に示した座標軸の+/-Y方向)に延伸し、直立部材134を交差部材138に連結する。
【0053】
ここで、図2~3、および、図9を参照すると、タンクアセンブリ200は、基部170上で、タンクアセンブリ200が外枠部の内側容積部132内に、外枠部130から離間して位置するように構成される。タンクアセンブリ200が構成されると、タンクアセンブリは、タンクアセンブリ200を外枠部130に連結することによって強化される。実施形態において、タンクアセンブリ200の外枠部130への連結は、圧力ボルト150を用いて実現されうる。
【0054】
ここで、本明細書に記載のガラス形成装置の融解部は、融解部の溶融ガラスに耐火材欠陥部が生成されるのを軽減し、次に、ガラス形成装置を用いて形成されるガラスリボンでの耐火材欠陥部の発生を削減すると理解すべきである。耐火材欠陥部の削減は、バッチ材料が融解部に最初に入った時に、バッチ材料が直接加熱から遮蔽されることに起因し、更に、多数のバッチ投入口を用いることで、バッチ材料を溶融ガラスの表面に亘って均一に分布させることで高められる。多数のバッチ投入口を用いることは、更に、ガラス製造装置を通るガラス流を増加させる利点も有し、それにより、製造収率および効率を高めうる。バッチ材料が融解部に最初に入った時に、バッチ材料が直接加熱から遮蔽されることの他の利点は、融解部のガラス接触部を形成する耐火ブロックの劣化を減らすことであり、それにより、融解部およびガラス製造装置の耐用期間を延ばす。この結果は、「アップワード ドリリング」に起因するガラス接触壁部の劣化を軽減する斜めの面を有するガラス接触表面を含むガラス接触壁部を用いることで、更に高められうる。
【0055】
当業者には、請求した主題の精神および範囲を逸脱することなく、本明細書に記載の実施形態に様々な変更および変形が可能なことが明らかだろう。したがって、本明細書は、本明細書に記載の様々な実施形態の変更例および変形例を、添付の請求項および等価物の範囲である限りは、網羅することを意図する。
【0056】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0057】
実施形態1
ガラスバッチ材料を融解する融解部において、
投入壁部と、
前記投入壁部の反対側に位置する放出壁部と、
前記投入壁部から前記放出壁部に延伸する一対の側壁部と
を含み、
前記投入壁部、前記放出壁部、および、前記一対の側壁部は、前記融解部の床部および最上部に囲まれたガラス融解空間を画定するものであり、
前記投入壁部は、
前記床部上に支持されて、前記ガラス融解空間に面するガラス接触表面を有するガラス接触壁部と、
前記ガラス接触壁部の上方で、該ガラス接触壁部の少なくとも一部および前記ガラス融解空間の少なくとも一部の上方に位置するジャックアーチを含む上部構造部と
を含むものであり、
前記ジャックアーチの内面の平面と、前記ガラス接触表面の平面は、水平方向に互いにずれたものであり、
前記床部から前記ジャックアーチの下面までの垂直距離は、該床部から前記最上部の下面までの垂直距離より短いものである融解部。
【0058】
実施形態2
前記ジャックアーチの前記内面の前記平面と前記ガラス接触表面の前記平面の間の空間は、少なくとも前記融解部の前記床部、該ジャックアーチの前記下面、該ジャックアーチの該内面の該平面、および、該ガラス接触表面の該平面と境界を接したバッチ受取容積部を、含むものである、実施形態1に記載の融解部。
【0059】
実施形態3
複数のバーナーを、
更に含み、
前記ジャックアーチの前記内面に直ぐ隣接した前記バーナーは、該ジャックアーチの前記下面より上の高さに位置するものである、実施形態1に記載の融解部。
【0060】
実施形態4
前記ガラス接触表面の少なくとも一部分は、垂直方向に対して、前記融解部の前記ガラス融解空間から離れるように傾いたものである、実施形態1に記載の融解部。
【0061】
実施形態5
前記ガラス接触壁部は、基部と、前記基部から該ガラス接触壁部の最上部へと先細である上部とを含むものである、実施形態4に記載の融解部。
【0062】
実施形態6
前記ガラス接触表面の前記部分は、垂直方向に対して、約5度から約25度の傾斜角度で傾斜したものである、実施形態4に記載の融解部。
【0063】
実施形態7
前記ガラス接触壁部は、ジルコニア耐火材料から形成されたものである、実施形態1に記載の融解部。
【0064】
実施形態8
前記投入壁部は、該投入壁部を通って延伸する少なくとも3つのバッチ投入口を含むものである、実施形態1に記載の融解部。
【0065】
実施形態9
前記少なくとも3つの投入口は、前記投入壁部の幅方向に、互いに等間隔で離間したものである、実施形態8に記載の融解部。
【0066】
実施形態10
前記少なくとも3つのバッチ投入口は、前記投入壁部の前記上部構造部に位置するものである、実施形態8に記載の融解部。
【0067】
実施形態11
前記ジャックアーチは、前記融解部の外枠部に取り付けられたブラケットによって支持され、前記ブラケットは、前記投入壁部の幅方向に移動して、更に、元に戻ることが可能で、該ジャックアーチの膨張収縮に適応するものである、実施形態1に記載の融解部。
【0068】
実施形態12
ガラスバッチ材料を融解する融解部において、
投入壁部と、
前記投入壁部の反対側に位置する放出壁部と、
前記投入壁部から前記放出壁部に延伸する一対の側壁部と
を含み、
前記投入壁部、前記放出壁部、および、前記一対の側壁部は、前記融解部の床部および最上部に囲まれたガラス融解空間を画定するものであり、
前記投入壁部は、
前記床部上に支持されて、前記ガラス融解空間に面するガラス接触表面を有するガラス接触壁部と、
前記ガラス接触壁部の上方に位置して、該ガラス接触壁部の少なくとも一部および前記ガラス融解空間の少なくとも一部の上方に位置するジャックアーチを含む上部構造部と、
複数のバーナーと
を含むものであり、
前記ジャックアーチの内面の平面と、前記ガラス接触表面の平面は、水平方向に互いにずれたものであり、
前記床部から前記ジャックアーチの下面までの垂直距離は、該床部から前記最上部の下面までの垂直距離より短く、
少なくとも3つのバッチ投入口が、前記投入壁部を通って延伸し、
前記ジャックアーチの前記内面に直ぐ隣接した前記バーナーは、該ジャックアーチの下面より上方に位置するものである融解部。
【0069】
実施形態13
前記ジャックアーチの前記内面の前記平面と前記ガラス接触表面の前記平面の間の空間は、少なくとも前記融解部の前記床部、該ジャックアーチの前記下面、該ジャックアーチの該内面の該平面、および、該ガラス接触表面の該平面と境界を接したバッチ受取容積部を、含むものである、実施形態12に記載の融解部。
【0070】
実施形態14
前記ガラス接触表面の少なくとも一部は、垂直方向に対して、前記融解部の前記ガラス融解空間から離れるように傾いたものである、実施形態12に記載の融解部。
【0071】
実施形態15
前記ガラス接触壁部は、基部と、前記基部から該ガラス接触壁部の最上部へと先細である上部とを含むものである、実施形態14に記載の融解部。
【0072】
実施形態16
前記ガラス接触表面の前記少なくとも一部は、垂直方向に対して、約5度から約25度の傾斜角度で傾斜したものである、実施形態14に記載の融解部。
【0073】
実施形態17
前記ガラス接触壁部は、ジルコニア耐火材料から形成されたものである、実施形態12に記載の融解部。
【0074】
実施形態18
前記少なくとも3つの投入口は、前記投入壁部の幅方向に、互いに等間隔で離間したものである、実施形態12に記載の融解部。
【0075】
実施形態19
前記少なくとも3つのバッチ投入口は、前記投入壁部の前記上部構造部に位置するものである、実施形態12に記載の融解部。
【0076】
実施形態20
前記ジャックアーチは、前記融解部の外枠部に取り付けられたブラケットによって支持され、前記ブラケットは、前記投入壁部の幅方向に移動して、更に、元に戻ることが可能で、該ジャックアーチの膨張収縮に適応するものである、実施形態12に記載の融解部。
【符号の説明】
【0077】
101 融解部
102 バッチ投入口
130 外枠部
132 外枠部の内側容積部
170 基部
200 タンクアセンブリ
202 上部構造部
204 ガラス接触部
206 最上部
207 床部
213 耐火ブロック
218 投入口壁部
220 放出壁部
223 放出口
241 側壁部
250 ガラス融解空間
260 ガラス接触壁部
261 ガラス接触表面
275 バッチ受取容積部
280 ジャックアーチ
281 斜切ブロック
282 ウェッジブロック
402 バーナー
600 支持ブラケット
602 L型ブラケット部
604 膨張収縮スリーブ
606 垂直支持ストラット
614 垂直方向中間枢動中心
616 バネボルトアセンブリ
618 水平方向中間枢動中心
624 付勢部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9