(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】腫大した血管構造を処置するための装置、システム、及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 18/18 20060101AFI20220610BHJP
【FI】
A61B18/18
(21)【出願番号】P 2019572263
(86)(22)【出願日】2018-03-19
(86)【国際出願番号】 BR2018050074
(87)【国際公開番号】W WO2018165731
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2021-02-05
(32)【優先日】2017-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519333837
【氏名又は名称】オリベイラ、エニオ チャベス デ
(73)【特許権者】
【識別番号】519333848
【氏名又は名称】バフット、マウロ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オリベイラ、エニオ チャベス デ
(72)【発明者】
【氏名】バフット、マウロ
【審査官】鈴木 貴雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0257646(US,A1)
【文献】特表2001-500763(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0228371(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0004546(US,A1)
【文献】米国特許第5570692(US,A)
【文献】特表2003-520069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00 - 18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
痔疾患を処置するための装置であって、前記装置が、少なくとも1つの外科的構成部(12)と位置合わせされた少なくとも1つの超音波プローブ(11)を備える、身体の管に挿入されるように適合された少なくとも1つの管状要素(13)を備え、前記超音波プローブ(11)が前記管状要素(13)に固定され、
前記外科的構成部(12)が、少なくとも1つの一次RFエミッタ(12.1)、及び少なくとも1つの二次RFエミッタ(12.2)を備え、
前記一次RFエミッタ(12.1)が、前記二次RFエミッタ(12.2)より長い長さを有し、
前記一次RFエミッタ(12.1)が、処置すべき動脈に到達するように配置され、前記二次RFエミッタ(12.2)が、痔領域(1.1)の周りの結合組織に到達するように配置され、
前記外科的構成部(12)が、前記管状要素(13)に垂直な変位を
実行することを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記装置が、トリガ要素(16)を備える少なくとも1つのベース部(19)をさらに備え、前記ベース部(19)が、前記管状要素(13)を受けるように形状が適合された連結部材を備えることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記装置が、前記トリガ要素(16)に関連付けられたレバー機構(20)をさらに備えることを特徴とする、請求項
2に記載の装置。
【請求項4】
前記管状要素(13)が、
前記外科的構成部(12)を調整するために、前記外科的構成部(12)に関連付けられた少なくとも1つの調整機構(21)を備えることを特徴とする、請求項
3に記載の装置。
【請求項5】
前記レバー機構(20)が、少なくとも1つのリンク要素によって前記調整機構(21)に連結されることを特徴とする、請求項
4に記載の装置。
【請求項6】
痔疾患を処置するためのシステムであって、
a.請求項1に記載の痔疾患を処置するための装置(10)と、
b.少なくとも1つのRF源と、
c.少なくとも1つの超音波装置と
を備え、
- 前記装置(10)が、プラグ・コネクタ(17)によって前記RF源及び前記超音波装置に連結されており、
- 前記RF源が、前記外科的構成部(12)の前記一次RFエミッタ(12.1)及び前記二次RFエミッタ(12.2)にRFを提供し、
- 前記超音波装置が、前記超音波プローブ(11)に超音波信号を提供し、前記プローブ(11)によって検出された信号を処理する、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫大した血管構造を、患者の身体の管に存在する前記血管構造及び組織にRFを当てることによって処置することに関する。本発明は、医療科学の分野、より詳細には血管構造の処置、及び医療装置に属する。
【背景技術】
【0002】
血管構造に関する、正確には前記構造の腫大又は炎症に関する多くの種類の疾患が存在する。これらの疾患の一実例は、痔である。現在、痔疾患は、世界人口の大部分に広がっている。一部の研究によれば、世界人口のおおよそ50%が何らかの種類の痔疾患に罹っており、45歳~65歳の成人の間で一般的であるが、若年者及び一部の子供が痔疾患を発症しやすいことが示されている。ある研究によれば、欧州及び北米では成人の最大75%が、人生のいずれかの時点で痔を経験することになると示されている(非特許文献1)。また痔は、妊婦が発症することもある。
【0003】
基本的に痔は、肛門管の腫大又は炎症した血管構造である。痔は、これらの構造に過度な圧力がかかることによって引き起こされ、こうした構造は血管から構成されるので、この過度な圧力は、血管が弱くなり損傷して、血液が間違った方向に流れるようになったり、血液を滞らせたりすることを意味し得る。したがって、これらの血管がうっ血して痔になることがある。妊娠、硬い便、及びいきみなどの一部の付加的な要因によって、臨床状態が悪化して痛み及び出血を伴うことがある。そのうちに、痔のクッション部がどんどん大きくなる。
【0004】
痔疾患には2つのタイプ、すなわち内痔及び外痔が見受けられる。内痔は、内痔静脈叢が肥大することに起因して肛門直腸線の高さにおいて肛門管内で発症し、外痔は、肛門の境界において外痔静脈叢が肥大した結果である。肛門外口を通した痔の脱出は、クッション部の肥大、及び静脈叢の下の支持結合組織の劣化によって引き起こされると考えられる。下部直腸の結合組織は、膠原線維及び線維弾性組織の退行過程を呈することがある。
【0005】
最近、痔の処置を目的としたいくつかの方法が使用されている。一般的な方法は、外科的手段による血管構造の除去を示唆しており、この手段では、患者に鎮静剤を投与する必要があり、外科医は、直腸区域を切開して血管構造に到達し、次いでそれを除去する。通常この方法では、手術後にも患者は入院する必要がある。さらにこの方法では、身体の敏感な領域で手術が行われると、患者の回復、及び特に不快感及び肛門痛によって現れる病的状態の回復に時間がかかる。
【0006】
科学及び特許の文献を検索したところ、本発明に関連する文書が示され、これらを以下に述べる。
【0007】
特許文献1は、痔疾患を処置するためのシステム及び方法を開示しており、穴を通過する後退可能で湾曲した電極であって、直腸動脈に高周波を当ててそれを閉じるように構成された電極を備える肛門鏡を提供する。しかし前記文献は、電極の深さを調整する手段を示しておらず、これにより処置すべき動脈への到達に関する結果につながる。さらに特許文献1は、動脈が本当に閉じられたかどうか、また医療手順が正常に完了したかどうかを保証しない。
【0008】
特許文献2は、痔を処置するためのシステム及び方法を開示しており、レーザ・エミッタとしての光ファイバー、及び処置すべき動脈の位置を検出するための超音波プローブを提供する。両方の要素がチューブ内に導入され、このチューブが患者の直腸区域に挿入される。この解決策では2つの実施例が提案され、一方の解決策では、プローブの反対側にある光ファイバーについて述べ、他方の解決策では、プローブに面する光ファイバーについて述べているが、両方の実施例において、装置を使用するためにはさらなる移動が必要である(一方では回転運動を指し、他方では「引き戻し」運動を指す)。さらに、光ファイバー及びプローブは、手動で挿入及び配置しなくてはならず、手順中の医療事故の一因になる。
【0009】
特許文献3は、直腸脱又は痔に関する手術手順のための装置及び方法について述べており、外科医が工具を挿入して手順を実行できるように孔が設けられた肛門鏡を含む。この意味でこの解決策は、処置すべき動脈を、縫合糸を用いて閉じることに関する工程を提供する。
【0010】
文献から推論することができるように、本発明の教示を示唆する、又はこれに先行する文献は存在しておらず、したがって、本明細書に提案する解決策は、先行技術にない新規性及び進歩性を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許第7,160,294号明細書
【文献】米国特許出願公開第2012/004546号明細書
【文献】PI0618702-1A2
【非特許文献】
【0012】
【文献】Medical News Today, August 5, 2016
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、身体の管の腫大した血管構造にRF(高周波)を当てて血流の妨害(disruption)を生じさせるために、前記構造を処置するための装置、システム、及び方法を提供する。この処置は、処置すべき区域に装置を配置することを含み、この配置は超音波プローブで行われ、血管構造にRFを当てることは、外科的構成部によって実施される。その後、血管構造が妨害されているかどうかを検証することは、超音波プローブが行う。
【0014】
一実施例では、本発明は痔疾患に関し、処置は、直腸区域に装置を配置するステップ、及び処置すべき動脈を超音波プローブによって検出するステップを含む。さらに、外科的構成部は、処置すべき直腸動脈にRFを当てることができるように配置及び調整される。処置は、直腸動脈がすでに閉じているかどうかを検証するための超音波検出を含む。また、処置は、後退し痔疾を押し上げることがある下の結合組織の炎症過程を促進するために、外科的構成部によって痔疾の下にRFを放射することを含み、痔疾は血液の供給が遮断された後に縮む。こうした処置に関して、処置装置は、この領域へRFを当てやすくする専用の機器を含み、またトリガ機器、及び直腸区域に挿入されるように適合された形状を含む。装置、システム、及び方法は、患者の痛み又は障害を最小に抑え、若しくはなくし、オペレータにとって処置を容易にするために実施された。
【0015】
第1の態様では、本発明は、身体の管の腫大した血管構造を処置するための装置であって、少なくとも1つの外科的構成部(12)と位置合わせされた少なくとも1つの超音波プローブ(11)を備える、身体の管に挿入されるように適合された少なくとも1つの管状要素(13)を備え、超音波プローブ(11)が管状要素(13)に固定された、装置について述べる。
【0016】
第2の態様では、本発明は、身体の管の腫大した血管構造を処置するためのシステムであって、身体の管の腫大した血管構造を処置するための先に定義した装置(10)と、少なくとも1つのRF源と、少なくとも1つの超音波装置とを備え、装置(10)は、プラグ・コネクタ(17)によってRF源及び超音波装置に連結されており、RF源は、外科的構成部(12)の一次RFエミッタ(12.1)及び二次RFエミッタ(12.2)にRFを提供し、超音波装置は、超音波プローブ(11)に超音波信号を提供し、プローブ(11)によって検出された信号を処理する、システムを提供する。
【0017】
第3の態様では、本発明は、身体の管の腫大した血管構造を処置する方法であって、患者の身体の管に管状要素(13)を挿入するステップと、超音波プローブ(11)を使用して腫大した血管構造を検出するステップと、トリガ要素(16)によって、腫大した血管構造に外科的構成部(12)を配置するステップと、調整機構(21)によって外科的構成部(12)を調整するステップと、腫大した血管構造に外科的構成部(12)によってRFを放射して、血流の妨害を生じさせるステップと、血管構造が妨害されたかどうかを超音波プローブ(11)を用いて検証するステップとを含む方法について述べる。
【0018】
第4の態様では、本発明は、痔疾患を処置する方法であって、先に定義した装置を使用し、痔疾患のある患者の直腸区域に管状要素(13)を挿入するステップと、痔領域(1.1)を伴う動脈(1)を、超音波プローブ(11)を使用して検出するステップと、処置すべき動脈(1)にトリガ要素(16)によって外科的構成部(12)を配置するステップであって、外科的構成部(12)が調整機構(21)に連結されている、ステップと、一次RFエミッタ(12.1)を用いて動脈(1)にRFを放射して、血流の妨害を生じさせるステップと、動脈が閉じたかどうか(1.2)を、超音波プローブ(11)を用いて検証するステップとを含む方法を提供する。
【0019】
本発明の上記その他の態様は、当業者によって、且つこの製品セグメントに興味のある企業にとってすぐに理解され、以下の説明において、再現できるように十分詳細に説明される。
【0020】
本発明は、提案する装置、方法、及びシステムの例示的な実施例を定義するために以下の図面を提示するが、これらは保護範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】腫大した血管構造を処置するための装置(10)の一実施例の側面図である。
【
図2】腫大した血管構造を処置するための装置(10)の一実施例の上面図である。
【
図3】腫大した血管構造を処置するための装置(10)の一実施例の後方斜視図である。
【
図4】腫大した血管構造を処置するための装置(10)の一実施例の下方斜視図である。
【
図5】腫大した血管構造を処置するための装置(10)の一実施例の前方斜視図である。
【
図6】腫大した血管構造を処置するための装置(10)の外科的構成部(12)の拡大図である。
【
図7】腫大した血管構造を処置するための装置(10)の断面図である。
【
図8】腫大した血管構造を処置するための装置(10)の調整機構(20)の拡大断面図である。
【
図9】直腸区域の櫛状線又は歯状線(2)及び動脈(1)を示す直腸区域の断面図である。
【
図10】直腸区域の3本の主動脈(1)が、動脈(1)の痔領域(1.1)によって表される痔静脈叢とともに詳細に示された、直腸区域の上方断面図である。
【
図11】患者の直腸区域に管状要素(13)を挿入した後に、痔領域(1.1)内に外科的構成部(12)によってRFを当てる様子を示す図である。
【
図12】処置すべき痔領域(1.1)にトリガ要素(16)によって外科的構成部(12)を配置した様子であって、一次RFエミッタ(12.1)が動脈(1)に又はその上に配置され、二次RFエミッタ(12.2)が、下部直腸の脱出した直腸粘膜の下にある痔領域(1.1)の結合組織内に配置された様子を示す図である。
【
図13】RF放射後の動脈の閉塞(1.2)を示す図である。
【
図14】直腸壁に吸着した、処置後の閉じた動脈(1.2)の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、身体の管に存在する腫大又は炎症した血管構造を抱えた患者に処置を施すための装置、システム、及び方法を開示する。本発明は、そのような血管構造に直接、専用に駆動されるRF放射を含め、患者への障害が最小に抑えられた、又は障害のない、容易で実用的な処置を提供し、RFを当てている間、及びその後に、血管構造の位置、及びそれが閉じられたかどうかを、超音波技術によって検証する。さらに、提案する解決策では簡単な操作が実現され、それにより日帰り施設で処置を施すことが可能になり、すなわち、提案する解決策では、手術施設又は手術手順を実施する必要がなくなる。
【0023】
提案する解決策は、患者身体の管に位置する腫大又は炎症した血管構造に焦点を当てて開発されてきた。たとえば、本発明の範囲を限定することなく、血管構造は血管、動脈、静脈、細動脈、細静脈などとして理解することができ、管は、肛門管、膣管、尿路、尿道、鼻管などとして理解することができる。さらに、こうした実例では、肛門管に位置する腫大した血管構造は、痔として知られている。
【0024】
痔に関する実例では、直腸区域の動脈(1)が筋肉に囲まれており、したがって動脈(1)の位置及び深さは患者ごとに異なることを強調することが重要である。この点に鑑み、医療手順の前とその間の両方で動脈(1)を検出する要素を有することが重要である。また、動脈(1)の深さは、患者ごとに異なることがある。しかし、この問題は痔疾患だけに限ったことではない。
【0025】
したがって、第1の態様では、本発明は、身体の管の腫大した血管構造を処置するための装置であって、少なくとも1つの外科的構成部(12)と位置合わせされた少なくとも1つの超音波プローブ(11)を備える、身体の管に挿入されるように適合された少なくとも1つの管状要素(13)を備え、超音波プローブ(11)が管状要素(13)に固定された、装置を提供する。超音波プローブ(11)と外科的構成部(12)が位置合わせされていることによって、医療手順の前、その間、及びその後に血管構造を監視することが可能になる。位置合わせとは、超音波プローブ(11)と外科的構成部(12)が、管状要素(13)の同じ平面に配置されることとして理解することができる。一実施例では、超音波プローブ(11)と外科的構成部(12)の両方が、管状要素(13)の底面に配置される。したがって、RFプローブが処置を実行している間に、超音波プローブ(11)が医者にフィードバックを提供するので、超音波プローブ(11)により、提案する装置(10)が閉ループで動作することが可能になる。
【0026】
さらに、装置(10)は、トリガ要素(16)を備える少なくとも1つのベース部(19)を備え、ベース部(19)は、管状要素(13)を受けるように形状が適合された連結部材を備える。また、トリガ要素(16)は、少なくともレバー機構(20)に関連付けられており、レバー機構(20)は、トリガ要素(16)が作動されたときにレバー運動を提供する。一実施例では、ベース部(19)は少なくとも1つの把持要素(19a)を備え、トリガ要素(16)は、このような把持要素(19a)に配置される。したがって、オペレータは、レバー運動を促進するために、手中のベース部でトリガ要素を押すことができる。
【0027】
一実施例では、レバー機構は、少なくとも1つのリンク要素によって調整機構(21)に連結される。この連結により、トリガ要素(16)を用いて調整機構(21)を作動させることが可能になる。たとえば、本発明の範囲を限定することなく、リンク要素は、レバー(20)と調整機構(21)との連結を促進するためだけに設けられた梁又は軸受である。一実施例では、リンク要素は、管状要素(13)の内側に位置付けられる。
【0028】
前記調整機構(21)は、外科的構成部(12)の調整を行うために、こうした外科的構成部(12)に関連付けられる。この関連付けにより、処置が実施されている間に必要に応じて外科的構成部の配置が可能になる。一実例では、装置(10)のオペレータは、患者内の血管構造を見出すために、外科的構成部(12)の深さを調整することが可能になる。さらに、一実施例では、外科的構成部(12)と調整機構(21)の関連付けは、管状要素(13)に位置付けられる。
【0029】
一実施例では、外科的構成部(12)は、管状要素(13)に垂直な変位を含む。この変位は、上述した外科的構成部(12)と調整機構(21)との関連付けによって実行される。したがって、処置すべき患者の血管構造を見出すために、外科的構成部の深さを正確に調整することが可能になる。
【0030】
さらに、外科的構成部(12)は、少なくとも1つの一次RFエミッタ(12.1)と少なくとも1つの二次RFエミッタ(12.2)とを備え、両方ともRFプローブである。前記一次RFエミッタ(12.1)及び二次RFエミッタ(12.2)は、同じ機能又は異なる機能のために使用することができる。この意味で、両方が同じ周波で動作することも、異なる周波で動作することもできる。一実施例では、一次RFエミッタ(12.1)は、二次RFエミッタ(12.2)よりも長い。
【0031】
別の態様では、本発明は、上述した装置(10)、少なくとも1つのエネルギー源、少なくとも1つのRF源、少なくとも1つの超音波装置を備える、身体の管の腫大した血管構造を処置するためのシステムを開示する。
【0032】
装置(10)は、エネルギー源、RF源、及び超音波装置に、プラグコネクタ(17)によって接続される。
【0033】
RF源は、外科的構成部(12)にRFを提供し、ここでRF波は導線によってプローブに導かれる。一実施例では、RF源は関数発生器であってもよく、それにより周波数を所望の値に調整することができる。一実施例では、RF源は、一次RFエミッタ(12.1)及び二次RFエミッタ(12.2)にRF波を提供する。
【0034】
一実施例では、超音波装置は、超音波プローブ(11)への超音波信号を生成し、反射波によって超音波検出が作動すると、プローブ(11)によって検出された信号を処理することができる。
【0035】
一実施例では、システムは、プラグコネクタ(17)によって装置(10)に関連付けられる水源を備え、処置を施す前に処置するべき区域の洗浄を可能にする。
【0036】
別の態様では、本発明は、身体の管の腫大した血管構造を処置する方法であって、少なくとも以下のステップ、すなわち患者の身体の管に管状要素(13)を挿入するステップと、超音波プローブ(11)を使用して腫大した血管構造を検出するステップと、トリガ要素(16)によって、腫大した血管構造に外科的構成部(12)を配置するステップと、調整機構(21)によって外科的構成部(12)を調整するステップと、腫大した血管構造に外科的構成部(12)によってRFを放射して、血流の妨害を生じさせるステップと、血管構造が妨害されたかどうかを超音波プローブ(11)を用いて検証するステップを含む方法を開示する。
【0037】
前記方法は、先に定義した装置(10)を用いて実行される。この意味で、この方法は、患者身体の管に位置する腫大又は炎症した血管構造に関連するあらゆる種類の疾患を処置することができる。
実例
【0038】
痔は、患者の肛門管内に位置する腫大又は炎症した動脈若しくは細動脈としてすぐに説明できることから、この実例では、本発明は痔疾患の処置に焦点を当てる。
【0039】
したがって、本発明による処置は、痔疾患を示す痔動脈及びその下の炎症を起こした組織に高周波を当てることに基づく。RFを当てることによって、痔領域(1.1)でわずかな制御された損傷しか引き起こさずに血流の妨害を生じさせ、この妨害により動脈(1)の収縮が生じる。RFは、動脈(1)に挿入された、又は動脈(1)の近くに配置されたプローブによって当てられ、特定の周波数の電磁波を放射する。この特定の周波数は、当業者には知られており、血管及び血管構造に関する医療手順において一般的に使用されている。
【0040】
したがって、上記の指摘に鑑み、
図1に見られる装置が提示され、この装置は、痔疾患としての血管構造を処置するための装置(10)を指し、この装置(10)は、把持要素(19a)を備える少なくとも1つのベース部(19)であって、いずれも把持要素(19a)に配置された支持要素(15)及びトリガ要素(16)を備えるベース部(19)と、少なくとも1つの外科的構成部(12)と位置合わせされた少なくとも1つの超音波プローブ(11)を備える少なくとも1つの管状要素(13)であって、管状要素(13)の前方領域に照明装置(14)が配置され、管状要素(13)の上面に目盛(18)が配置された管状要素(13)とを備える。ここで、ベース部(19)は、管状要素(13)を受けるように形状が適合された連結部材を備える。
【0041】
装置(10)の患者への挿入は、管状要素(13)を備えることにより形状が適合された形になっており、目盛(18)を含むベース部(19)に照明装置(14)が関連付けられていることにより、容易になる。したがって、オペレータは、目盛(18)を確認し、照明装置(14)で挿入方向を確認することによって、挿入深さを制御することができる。いくつかの実施例では、照明装置(14)は、装置を挿入する際にオペレータを補助するLED又は任意の他の光源である。
【0042】
一実施例では、ベース部(19)は、非永久的な関連付け、たとえばねじ、又は嵌めあいにより管状要素(13)に関連付けられて、適切な洗浄又は消毒のために要素を分離することが可能になる。
【0043】
装置(10)は、RFを当てることを容易にするためのトリガ要素(16)及びインジケータ要素(15)を有する把持要素(19a)をさらに提示する。したがって、トリガ要素(16)が変位したときに、インジケータ要素(15)も動くように、トリガ要素(16)はインジケータ要素(15)に関連付けられる。一実施例では、この関連付けは、歯車のセットによって行われる。
【0044】
図7に示すように、トリガ要素(16)は、レバー機構(20)にも関連付けられ、前記レバー機構(20)は、少なくとも1つのリンク要素によって調整機構(21)に関連付けられる。したがって、トリガ要素(16)の動作によって、インジケータ要素(15)が変化し、レバー機構(20)が動き、それにより調整機構(21)がレバー機構(20)によって作動される。
【0045】
次いで、調整機構(21)は、
図8に詳細に示されるように、外科的構成部(12)に関連付けられる。したがって、上に述べ、図に示した関連付けによって、トリガ要素(16)は外科的構成部(12)の位置を制御することができる。したがって一実施例では、オペレータは、インジケータ要素(15)で外科的構成部(12)の位置を確認し、トリガ要素(16)を操作することによって位置を調節する。
【0046】
一実施例では、外科的構成部(12)はRFプローブにより構成され、これは管状要素(13)の下面に配置される。さらに外科的構成部(12)は、管状要素(13)に垂直な変位を含み、すなわち、管状要素(13)から外向きの変位も内向きの変位も行うことができる。別の実施例では、外科的構成部(12)は、管状要素(13)に対して傾斜した変位を行うRFプローブにより構成される。
【0047】
先に述べたように、動脈(1)の深さは患者によって異なり、したがって外科的構成部(12)によって行われる変位により、RFプローブの深さ調整ができるようになり、これは調整機構(21)によって可能になる。したがって、トリガ要素(16)と、レバー機構(20)と、調整機構(21)との関連付けによって、外科的構成部(12)の深さ制御が定義される。こうして、装置(10)の操作において、オペレータは、外科的構成部(12)のプローブがどのくらい深く患者の血管構造に挿入されるか、又は近づけられるかを制御することができる。この手順は、プローブが動脈(1)のちょうど上に、又はそのすぐ近くに確実に導入されるようにするために実行される。一実施例では、外科的構成部(12)は、3~13ミリメートルの深さに到達してもよい。
【0048】
外科的構成部(12)は、少なくとも1つの一次RFエミッタ(12.1)と少なくとも1つの二次RFエミッタ(12.2)とを備え、これらの両方がRFプローブである。一次RFエミッタ(12.1)は、処置すべき動脈(1)のちょうど上又はそのすぐ近くにRFを当てるため、したがって血流を妨害するために使用される。二次一次RFエミッタ(12.2)は、下部直腸の脱出した直腸粘膜の下にある痔領域(1.1)の結合組織を縛るために使用され、ここでこのようにRFを当てることは、痔領域(1.1)の劣化した支持組織において行われる。したがって、この装置(10)は、痔領域(1.1)を結紮し、下部直腸壁及び肛門管の変位した結合組織を固定するために使用される。
【0049】
図6は、外科的構成部(12)が、3つの一次RFエミッタ(12.1)と2つの二次RFエミッタ(12.2)とを備える実施例を示す。一実施例では、一次RFエミッタ(12.1)は、二次RFエミッタ(12.2)よりも長さが長く、この構成によって、一次RFエミッタ(12.1)が動脈(1)に到達し、二次RFエミッタ(12.2)が痔領域(1.1)の周りの結合組織に到達して、それらを直腸壁に固定することが可能になる。
【0050】
一実施例では、トリガ要素(16)は、一次RFエミッタ(12.1)及び二次RFエミッタ(12.2)を独立して制御することも同時に制御することもできる。また、インジケータ要素(15)は、RFエミッタの位置を独立して、又は同時に表示する。
【0051】
さらに、超音波プローブ(11)が、外科的構成部(12)と位置合わせされて、同じく管状要素(13)の底面において装置(10)に配置されている。超音波プローブ(11)は、処置すべき動脈(1)を、血流により生じるその脈拍によってそれを感知して、検出するために使用される。超音波プローブ(11)は、処置に関与した動脈(1)が閉じているか、又はまだ開いているかを検証するために、全手順の間とどまり、すなわち超音波プローブ(11)が脈拍を感知する場合には、動脈(1)がまだ開いていることを示し、一方超音波プローブ(11)が脈拍を感知しない場合には、動脈が閉じていることを示す(1.2)。したがって、オペレータは、手順が十分行われて終了できるか、又は手順を継続すべきかの情報が与えられる。
【0052】
また装置(10)は、エネルギー源、水源、超音波源、RF源、及び光源などの外部リソースとの関連付けのために、ベース部(19)にプラグ・コネクタ(17)も含んでいる。
【0053】
別の態様では、本発明は、上述した装置を使用して、痔疾患を処置する方法であって、痔疾患のある患者の直腸区域に管状要素(13)を挿入するステップと、痔領域(1.1)を伴う動脈(1)(又は痔静脈叢)を、超音波プローブ(11)によって検出するステップと、トリガ要素(16)によって、処置すべき動脈(1)に外科的構成部(12)を配置するステップであって、外科的構成部(12)が調整機構(21)に連結されている、ステップと、一次RFエミッタ(12.1)を用いて動脈(1)にRFを放射して、血流の妨害を生じさせるステップと、動脈が閉じたかどうか(1.2)を、超音波プローブ(11)を用いて検証するステップとを含む方法を開示する。
【0054】
最初にオペレータは、管状要素(13)を患者の直腸区域に挿入し、このステップは、管状要素(13)の形状と、RFを当てるためには管状要素(13)をどのくらい患者に挿入すべきかを検証するための目盛(18)とによって、容易になる。次いで、オペレータは、超音波プローブ(11)によって動脈(1)の痔領域(1.1)を検出する手順を開始し、動脈(1)が検出されるまで装置(10)を回転させる。
【0055】
こうしてオペレータは、処置すべき区域に外科的構成部(12)を配置し、このステップはトリガ要素(16)によって行われ、外科的構成部(12)の深さを示すインジケータ要素(15)によって容易になる。
【0056】
さらに、外科的構成部(12)を区域内に配置した後に、オペレータは、外科的構成部(12)が所望の領域に到達するまで同構成部の深さを調節する。したがって、外科的構成部(12)が到達する深さは、痔疾患のある患者の直腸区域の動脈(1)の深さに応じて定義される。したがって、一次RFエミッタ(12.1)が、痔領域(1.1)を伴う患者の動脈(1)(又は痔静脈叢)に到達すると、オペレータは、次のステップを開始することができる。
【0057】
適切に配置された後、一次RFエミッタ(12.1)は動脈(1)に挿入され、又は動脈(1)の近くに配置され、直腸動脈(1)にRFを放射する。こうした工程は、この手順の前、その間、及びその後に動脈(1)の脈拍を検出する超音波プローブ(11)によって検証される。したがって、超音波プローブ(11)が動脈(1)の脈拍を検出しないので、血流はすでに妨害されている。
【0058】
一実施例では、外科的構成部(12)は、櫛状線又は歯状線(2)の上に配置され、したがって、患者にとって痛みのない、又は不快感のない痔疾患処置が実現される。
【0059】
さらに、処置を完了し改善するために、本方法は、二次RFエミッタ(12.2)によって動脈(1)の痔領域(1.1)にRFを当てるステップを提供する。直腸動脈の処置により、痔領域(1.1)に起因した何らかの突出した皮膚区域又は組織が生じることがあり、したがって、二次RFエミッタ(12.2)を用いてRFを放射するこのステップによって、痔領域(1.1)によって生じた突出した皮膚又は組織を固定することができ、ここでそれらの皮膚又は組織は直腸壁に固定されて、患者の術後の合併症が回避される。
【0060】
一実施例では、痔領域(1.1)にRFを当てて、直腸壁の下部直腸の脱出した直腸粘膜の下にある痔領域(1.1)の結合組織を縛ることは、動脈(1)にRFを当てるのと同時に行われる。別の実施例では、痔領域(1.1)にRFを当てて、直腸壁の前記痔領域(1.1)に関連した下部直腸の脱出した直腸粘膜の下にある結合組織を縛ることは、動脈(1)にRFを当てるのとは無関係に行われる。
【0061】
したがって、本発明のこの実例によって、患者にとって痛みのない、不快感が最小に抑えられた、オペレータにとって工程を容易にする、安全で、実用的で、正確な痔疾患の処置が促進される。最後に、提案する装置、システム、及び方法は、痔疾患の場合に有効な処置を確実にするために開発されたものであり、ここでこの解決策は、別個の区域で動作する少なくとも2つのプローブ(又はプローブの2つのセット)により高周波を当てること、及び動脈(1)が閉じているかどうかをその脈拍を感知して検出するための超音波プローブ(11)によって、痔動脈の結紮、及び場合によっては直腸壁の組織の正常な位置への置換を実現する。
【0062】
当業者は、本明細書の知識を評価し、提供された方法、及び他の変形形態で本発明を再現することができ、これらは添付の特許請求の範囲内に含まれる。