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特許7086118L-オルニチンフェニルアセテートおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】L-オルニチンフェニルアセテートおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 227/18 20060101AFI20220610BHJP
   C07C 229/26 20060101ALI20220610BHJP
   C07C 227/42 20060101ALI20220610BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20220610BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20220610BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220610BHJP
   A61P 11/16 20060101ALI20220610BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
C07C227/18
C07C229/26
C07C227/42
A61K31/198
A61P7/00
A61K9/08
A61P11/16
A61P25/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020003346
(22)【出願日】2020-01-14
(62)【分割の表示】P 2018079490の分割
【原出願日】2010-04-01
(65)【公開番号】P2020100624
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2020-01-27
(31)【優先権主張番号】61/166,676
(32)【優先日】2009-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506164729
【氏名又は名称】オセラ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン,ケイス
(72)【発明者】
【氏名】ベーリング,ジム
(72)【発明者】
【氏名】ドーガン,クリスティン,ヘンダーソン
(72)【発明者】
【氏名】ワット,ステファン,ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】マニニ,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】フィギニ,アッティリア
【審査官】高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-178256(JP,A)
【文献】特開2018-138575(JP,A)
【文献】特表2013-542935(JP,A)
【文献】メキシコ公開特許03009902号公報,2005年05月03日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 229/26
C07C 227/42
C07C 227/18
A61K 31/198
A61P 7/00
A61K 9/08
A61P 11/16
A61P 25/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
L-オルニチン塩酸塩、銀酢酸フェニルおよび溶媒を混合して溶液を生成するステップと;
L-オルニチンフェニルアセテートを前記溶液から単離するステップと
を含む、L-オルニチンフェニルアセテートの製造方法。
【請求項2】
L-オルニチン塩酸塩と銀酢酸フェニルのモル比が、70:30~30:70である、請求項に記載の方法。
【請求項3】
L-オルニチン塩酸塩と銀酢酸フェニルのモル比が、40:60~60:40である、請求項に記載の方法。
【請求項4】
L-オルニチン塩酸塩と銀酢酸フェニルのモル比が、1:1である、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記溶液から単離したL-オルニチンフェニルアセテートを再結晶化させるステップをさらに含む、請求項のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2009年4月3日出願の米国仮出願番号第61/166,676号に関す
る優先権の特典を請求するものである。その優先権書類全体を参照により本明細書に組み
込む。
【0002】
本出願は、薬剤化学、生化学および医学の分野に関する。具体的には、本出願はL-オ
ルニチンフェニルアセテート塩ならびにその製造および使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(説明)
高アンモニア血症は肝疾患の特質であり、血流中における過剰なアンモニアを特徴とす
る。肝性脳症は進行性高アンモニア血症の主要な臨床的帰結であり、これは、急性または
慢性の肝不全を悪化させる可能性のある複雑な神経精神症候群である。それは、脳機能の
変化のささいな兆候から、明白な精神医学的および/または神経学的症状、さらには深い
昏睡にわたる広範な神経精神症状を含む精神状態の変化を特徴とする。未代謝アンモニア
の蓄積が肝性脳症の発病に関わる主な要因であると考えられているが、他の機序も関連し
ている可能性がある。
【0004】
L-オルニチン一塩酸塩および他のL-オルニチン塩は、高アンモニア血症および肝性
脳症の治療で使用するのに利用することができる。例えば、米国特許出願公開第2008
/0119554号(その全体を参照により本明細書に組み込む)は、肝性脳症の治療用
のL-オルニチンおよび酢酸フェニルの組成物を記載している。L-オルニチンは酵素的
変換法で調製されている。例えば、米国特許第5,405,761号および同第5,59
1,613号(両方のその全体を参照により本明細書に組み込む)は、L-オルニチン塩
を生成するアルギニンの酵素的変換を記載している。酢酸フェニルナトリウムは市販され
ており、また、急性高アンモニア血症の治療用の注射剤としても入手することができる。
注射剤はAMMONULとして市販されている。
【0005】
塩の形態は分解特性の改善を示すことができるが、特定の塩、特にナトリウムまたはク
ロリド塩は、肝性脳症などの肝疾患に伴う疾患を有する患者を治療する場合、望ましくな
い可能性がある。例えば、高いナトリウム摂取は腹水、体液過剰および電解質平衡異常を
起こす傾向がある肝硬変患者には危険であり得る。同様に、特定の塩は浸透圧が高い、す
なわち溶液が高張性であるため、静脈内で投与するのが困難である。高い濃度の過剰塩は
、静脈内投与のために溶液を大量に希釈する必要があり得、これは、過度の体液過剰をも
たらす。したがって、体液過剰および電解質平衡異常がよく見られる肝性脳症または他の
状態の治療に好都合なL-オルニチンおよび酢酸フェニル塩の調製の必要性が存在してい
る。
【発明の概要】
【0006】
本明細書で開示するいくつかの実施形態は、結晶形態のL-オルニチンフェニルアセテ
ートを含む組成物を含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、その結晶形態は、約6.0°、13.9°、14.8°、1
7.1°、17.8°および24.1°2θからなる群から選択される少なくとも1つの
特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す。いくつかの実施形態では、その結晶形態
は、約6.0°、13.9°、14.8°、17.1°、17.8°および24.1°2
θからなる群から選択される少なくとも3つの特性ピークを含む粉末X線回折パターンを
示す。いくつかの実施形態では、その結晶形態は、約6.0°、13.9°、14.8°
、17.1°、17.8°および24.1°2θにおいて特性ピークを含む粉末X線回折
パターンを示す。
【0008】
いくつかの実施形態では、その結晶形態は約202℃の融点を有する。いくつかの実施
形態では、その結晶形態は、おおよそ以下の結晶パラメーター、すなわち:単位格子寸法
:a=6.594(2)Å、b=6.5448(18)Å、c=31.632(8)Å、
α=90°、β=91.12(3)°、γ=90°;結晶系:単斜晶系;および空間群:
P2を有する単結晶X線結晶学的解析結果を示す。いくつかの実施形態では、その結晶
形態は式[C13][C]で表される。
【0009】
いくつかの実施形態は、約4.9°、13.2°、17.4°、20.8°および24
.4°2θからなる群から選択される少なくとも1つの特性ピークを含む粉末X線回折パ
ターンを示す結晶形態を有する。いくつかの実施形態では、その結晶形態は、約4.9°
、13.2°、17.4°、20.8°および24.4°2θからなる群から選択される
少なくとも3つの特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す。いくつかの実施形態で
は、その結晶形態は、約4.9°、13.2°、17.4°、20.8°および24.4
°2θにおいて特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す。
【0010】
いくつかの実施形態は、水および/またはエタノールの分子を含む結晶形態を有する。
いくつかの実施形態では、その結晶形態は、熱重量分析で測定して約11重量%の前記分
子を含む。いくつかの実施形態では、その結晶形態は、示差走査熱量測定により約35℃
での吸熱を含むと特徴づけられる。いくつかの実施形態では、その結晶は約203℃の融
点を有する。
【0011】
いくつかの実施形態は、おおよそ以下の結晶パラメーター、すなわち:単位格子寸法:
a=5.3652(4)Å、b=7.7136(6)Å、c=20.9602(18)Å
、α=90°、β=94.986(6)°、γ=90°;結晶系:単斜晶系;および空間
群:P2を有する単結晶X線結晶学的解析結果を示す結晶形態を有する。いくつかの実
施形態では、その結晶形態は式[C13][C]EtOH.H
Oで表される。
【0012】
いくつかの実施形態は、約5.8°、14.1°、18.6°、19.4°、22.3
°および24.8°2θからなる群から選択される少なくとも1つの特性ピークを含む粉
末X線回折パターンを示す結晶形態を有する。いくつかの実施形態では、その結晶形態は
、約5.8°、14.1°、18.6°、19.4°、22.3°および24.8°2θ
からなる群から選択される少なくとも3つの特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示
す。いくつかの実施形態では、その結晶形態は、約5.8°、14.1°、18.6°、
19.4°、22.3°および24.8°2θにおいて特性ピークを含む粉末X線回折パ
ターンを示す。
【0013】
いくつかの実施形態では、その結晶形態は、示差走査熱量測定により約40℃での吸熱
を含むと特徴づけられる。いくつかの実施形態では、その結晶形態は約203℃の融点を
有する。
【0014】
いくつかの実施形態では、その結晶形態は、約13.7°、17.4°、19.8°、
20.6°および23.7°2θからなる群から選択される少なくとも1つの特性ピーク
を含む粉末X線回折パターンを示す。いくつかの実施形態では、その結晶形態は、約13
.7°、17.4°、19.8°、20.6°および23.7°2θからなる群から選択
される少なくとも3つの特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す。いくつかの実施
形態では、その結晶形態は、約13.7°、17.4°、19.8°、20.6°および
23.7°2θにおいて特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す。
【0015】
いくつかの実施形態では、その結晶形態は、示差走査熱量測定により約174℃での吸
熱を含むと特徴づけられる。いくつかの実施形態では、その結晶形態は約196℃の融点
を有する。いくつかの実施形態では、その結晶形態は薬学的に許容される担体を含む。
【0016】
本明細書で開示するいくつかの実施形態は:少なくとも約50重量%の結晶形態のL-
オルニチンフェニルアセテート塩および少なくとも約0.01重量%の安息香酸またはそ
の塩を含む組成物を有する。
【0017】
いくつかの実施形態では、その組成物は少なくとも約0.10重量%の安息香酸または
その塩を含む。いくつかの実施形態では、その組成物は5重量%以下の安息香酸またはそ
の塩を含む。いくつかの実施形態では、その組成物は1重量%以下の安息香酸またはその
塩を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、その組成物は少なくとも10ppmの銀をさらに含む。いく
つかの実施形態では、少なくとも20ppmの銀を含む。いくつかの実施形態では、その
組成物は少なくとも25ppmの銀をさらに含む。いくつかの実施形態では、600pp
m以下の銀を含む。いくつかの実施形態では、組成物は100ppm以下の銀を含む。い
くつかの実施形態では、その組成物は65ppm以下の銀を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、水中50mg/mLの組成物は体液と等張性である。いくつ
かの実施形態では、その等張液は、約280~約330mOsm/kgの範囲の浸透圧重
量モル濃度を有する。
【0020】
いくつかの実施形態では、その組成物は約1.1~約1.3kg/mの範囲の密度を
有する。
【0021】
本明細書で開示するいくつかの実施形態は:L-オルニチン塩、安息香酸塩および溶媒
を混合して中間溶液を生成させるステップと;酢酸フェニルを前記中間溶液と混合するス
テップと;少なくとも70重量%の結晶性L-オルニチンフェニルアセテートを含む組成
物を単離するステップとを含むL-オルニチンフェニルアセテート塩の製造方法を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、その方法は、酢酸フェニルを混合する前に、前記中間溶液か
ら塩の少なくとも一部を除去するステップであって、前記塩がL-オルニチン塩でないス
テップを含む。いくつかの実施形態では、その方法は、塩の少なくとも一部を除去する前
に、塩酸を加えるステップを含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、L-オルニチン、安息香酸塩および溶媒を混合するステップ
は:L-オルニチン塩を水に分散して第1の溶液を生成させるステップと;安息香酸塩を
DMSOに分散して第2の溶液を生成させるステップと;前記第1の溶液と前記第2の溶
液を混合して前記溶液を生成させるステップとを含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、その組成物は少なくとも約0.10重量%の安息香酸塩を含
む。いくつかの実施形態では、その組成物は5重量%以下の安息香酸塩を含む。いくつか
の実施形態では、その組成物は1重量%以下の安息香酸塩を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、L-オルニチン塩はL-オルニチン塩酸塩である。いくつか
の実施形態では、安息香酸塩は安息香酸銀である。
【0026】
いくつかの実施形態では、その組成物は少なくとも10ppmの銀を含む。いくつかの
実施形態では、その組成物は少なくとも20ppmの銀を含む。いくつかの実施形態では
、その組成物は少なくとも25ppmの銀を含む。いくつかの実施形態では、その組成物
は600ppm以下の銀を含む。いくつかの実施形態では、その組成物は100ppm以
下の銀を含む。いくつかの実施形態では、その組成物は65ppm以下の銀を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、酢酸フェニルはアルカリ金属塩中にある。いくつかの実施形
態では、そのアルカリ金属塩は酢酸フェニルナトリウムである。
【0028】
いくつかの実施形態では、その組成物は100ppm以下のナトリウムを含む。いくつ
かの実施形態では、その組成物は20ppm以下のナトリウムを含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、L-オルニチンはハライド塩中にある。いくつかの実施形態
では、そのハライド塩はL-オルニチン塩酸塩である。
【0030】
いくつかの実施形態では、その組成物は0.1重量%以下のクロリドを含む。いくつか
の実施形態では、その組成物は0.01重量%以下のクロリドを含む。
【0031】
本明細書で開示するいくつかの実施形態は、本明細書で開示する方法のいずれかによっ
て得られる組成物を含む。
【0032】
本明細書で開示するいくつかの実施形態は、少なくとも中間塩が沈澱するまでL-オル
ニチン塩を含む溶液のpH値を増大させるステップであって、前記中間塩がL-オルニチ
ン塩でないステップと;中間塩を前記溶液から単離するステップと;フェニル酢酸を前記
溶液と混合するステップと;L-オルニチンフェニルアセテート塩を前記溶液から単離す
るステップとを含むL-オルニチンフェニルアセテート塩を製造するための方法を含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、そのpH値を少なくとも8.0まで増大させる。いくつかの
実施形態では、そのpH値を少なくとも9.0まで増大させる。いくつかの実施形態では
、pH値を増大させるステップは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメト
キシド、カリウムt-ブトキシド、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、ジブチルアミン、
トリプタミン、水素化ナトリウム、水素化カルシウム、ブチルリチウム、エチルマグネシ
ウムブロミドまたはその組合せからなる群から選択されるpH調節剤を添加するステップ
を含む。
【0034】
本明細書で開示するいくつかの実施形態は、治療有効量の結晶形態のL-オルニチンフ
ェニルアセテート塩を投与することによって、対象の高アンモニア血症を治療または改善
する方法を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、その結晶形態は経口で投与される。
【0036】
いくつかの実施形態では、その結晶形態は形態I、形態II、形態III、形態Vからなる
群から選択され:形態Iは、約4.9°、13.2°、17.4°、20.8°および2
4.4°2θにおいて特性ピークを有する粉末X線回折パターンを示し;形態IIは、約6
.0°、13.9°、14.8°、17.1°、17.8°および24.1°2θにおい
て特性ピークを有する粉末X線回折パターンを示し;形態IIIは、約5.8°、14.1
°、18.6°、19.4°、22.3°および24.8°2θにおいて特性ピークを有
する粉末X線回折パターンを示し;形態Vは、約13.7°、17.4°、19.8°、
20.6°および23.7°2θにおいて特性ピークを有する粉末X線回折パターンを示
す。
【0037】
いくつかの実施形態では、その結晶形態は形態Iである。いくつかの実施形態では、そ
の結晶形態は形態IIである。いくつかの実施形態では、その結晶形態は形態IIIである。
いくつかの実施形態では、その結晶形態は形態Vである。
【0038】
いくつかの実施形態では、形態I、形態II、形態IIIおよび形態Vからなる群から選択
される少なくとも2つの結晶形態を投与する。いくつかの実施形態では、その少なくとも
2つの結晶形態を、ほぼ同じ時間に投与する。
【0039】
いくつかの実施形態では、その結晶形態を日に1~3回投与する。いくつかの実施形態
では、治療有効量は約500mg~約50gの範囲である。
【0040】
いくつかの実施形態では、対象は、肝性脳症を有することが特定されている。いくつか
の実施形態では、対象は、高アンモニア血症を有することが特定されている。
【0041】
本明細書で開示するいくつかの実施形態は:L-オルニチン塩、銀酢酸フェニルおよび
溶媒を混合して溶液を生成させるステップであって、そのL-オルニチン塩がアルカリ金
属塩であるステップと;L-オルニチンフェニルアセテートを前記溶液から単離するステ
ップとを含む、L-オルニチンフェニルアセテート塩を製造するための方法を含む。
【0042】
本明細書で開示するいくつかの実施形態は、治療有効量の、L-オルニチンフェニルア
セテートを含む溶液を静脈内投与することを含む高アンモニア血症を治療または改善する
方法であって、前記治療有効量が、500mL以下の前記溶液を含む方法を含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、その溶液は少なくとも約25mg/mLのL-オルニチンフ
ェニルアセテートを含む。いくつかの実施形態では、その溶液は少なくとも約40mg/
mLのL-オルニチンフェニルアセテートを含む。いくつかの実施形態では、その溶液は
300mg/mL以下を含む。いくつかの実施形態では、その溶液は体液と等張性である
【0044】
本明細書で開示するいくつかの実施形態は、L-オルニチンフェニルアセテートを圧縮
する方法であって、準安定型のL-オルニチンフェニルアセテートに圧力を印加して相変
化を誘発するステップを含む方法を含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、準安定型は無定形である。いくつかの実施形態では、その準
安定型は、約4.9°、13.2°、20.8°および24.4°2θからなる群から選
択される少なくとも1つの特性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す。
【0046】
いくつかの実施形態では、その圧力は、予め決められた時間印加される。いくつかの実
施形態では、その予め決められた時間は約1秒以下である。いくつかの実施形態では、そ
の圧力は少なくとも約500psiである。
【0047】
いくつかの実施形態では、その相変化は、圧力を印加した後、約1.1~約1.3kg
/mの範囲の密度を有する組成物をもたらす。
【0048】
いくつかの実施形態では、その相変化は、約6.0°、13.9°、14.8°、17
.1°、17.8°および24.1°2θからなる群から選択される少なくとも1つの特
性ピークを含む粉末X線回折パターンを示す組成物をもたらす。
【0049】
本明細書で開示するいくつかの実施形態は、準安定型のL-オルニチンフェニルアセテ
ートに圧力を印加して相変化を誘発することによって得られる組成物を含む。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】形態Iの粉末X線回折パターンである。
図2】形態Iについての示差走査熱量測定結果を示す。
図3】形態Iの熱重量的重量/示差熱分析を示す。
図4】形態Iのサンプルから得られたH核磁気共鳴スペクトルを示す。
図5】形態Iについての動的蒸気収着結果を示す。
図6】形態IIの粉末X線回折パターンである。
図7】形態IIについての示差走査熱量測定結果を示す。
図8】形態IIの熱重量的重量/示差熱分析を示す。
図9】形態IIのサンプルから得られたH核磁気共鳴スペクトルを示す。
図10】形態IIについての動的蒸気収着結果を示す。
図11】形態IIIの粉末X線回折パターンである。
図12】形態IIIについての示差走査熱量測定結果を示す。
図13】形態IIIの熱重量的重量/示差熱分析を示す。
図14】形態IIIのサンプルから得られたH核磁気共鳴スペクトルを示す。
図15】形態IIIについての動的蒸気収着結果を示す。
図16】形態Vの粉末X線回折パターンである。
図17】形態Vについての示差走査熱量測定結果を示す。
図18】形態Vの熱重量的重量/示差熱分析を示す。
図19】形態Vのサンプルから得られたH核磁気共鳴スペクトルを示す。
図20】形態Vについての動的蒸気収着結果を示す。
図21】L-オルニチンベンゾエートのサンプルから得られたH核磁気共鳴スペクトルを示す。
図22】L-オルニチンフェニルアセテートのサンプルから得られたH核磁気共鳴スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本明細書で開示するのは、L-オルニチンフェニルアセテート塩、特に、結晶形態の前
記塩を製造する方法である。これらの方法は、経済的プロセスを用いて、薬学的に許容さ
れる形態のL-オルニチンフェニルアセテートの大規模な生産を可能にする。さらに、形
態I、II、IIIおよびVを含む結晶形態のL-オルニチンフェニルアセテートも開示する
。L-オルニチンフェニルアセテート塩は、ごくわずかな付随ナトリウム負荷をもたない
静脈内投与を可能にし、したがって、必要なi.v.流体の量を最少化する。
【0052】
本出願は、新規な結晶形態のL-オルニチンフェニルアセテート塩ならびにL-オルニ
チンフェニルアセテート塩を製造し使用するための方法に関する。この塩は、相当量のナ
トリウムまたはクロリドなしで有利に長期安定性を示す。結果として、L-オルニチンフ
ェニルアセテートは、L-オルニチンおよび酢酸フェニルの他の塩と比べて改善された安
全性プロファイルを提供することが期待される。また、L-オルニチンフェニルアセテー
トは他の塩と比べて低い等張性を示す。そのため、より高い濃度で静脈内に投与すること
ができる。したがって、L-オルニチンフェニルアセテートは、肝性脳症の治療のための
大幅な臨床的改善を提供することが期待される。
【0053】
本出願はまた、L-オルニチンフェニルアセテートの種々の多形体にも関する。様々な
結晶形態の出現(多形性)は、いくつかの分子および分子錯体の特性である。L-オルニ
チンフェニルアセテートなどの塩錯体は、融点、X線回折パターン、赤外吸収指紋および
NMRスペクトルのような独特の物理的特性を有する様々な固体をもたらすことができる
。多形体の物理的特性の違いは、バルク固体中の隣接する分子(錯体)の配向および分子
間相互作用からもたらされる。したがって、多形体は、同じ活性薬剤成分を共有するが、
多形体ファミリーにおける他の形態と比べて独特の有利および/または不利な物理化学的
特性を有する独特の固体であってよい。
【0054】
L-オルニチンフェニルアセテート塩の製造方法
本明細書で開示するいくつかの実施形態は、L-オルニチンフェニルアセテート塩を製
造する方法を含む。L-オルニチンフェニルアセテートは、例えばL-オルニチンベンゾ
エートなどの中間塩を介して製造することができる。スキーム1に示すように、式IのL
-オルニチン塩を式IIの安息香酸塩と反応させて中間体L-オルニチンベンゾエートを
得ることができる。
【0055】
【化1】
【0056】
L-オルニチンの様々な塩を、式Iの化合物において使用することができ、したがって
、式IのXは、安息香酸またはフェニル酢酸以外の、L-オルニチンと塩を形成できる任
意のイオンであってよい。Xは、これに限定されないが、ハライド(例えば、フロリド、
クロリド、ブロミドおよびアイオダイド)などの単原子アニオンであってよい。Xは、こ
れらに限定されないが、酢酸塩、アスパラギン酸塩、ギ酸塩、シュウ酸塩、重炭酸塩、炭
酸塩、ビトレート(bitrate)、硫酸塩、硝酸塩、イソニコチン酸塩、サリチル酸塩、ク
エン酸塩、酒石酸塩、パントテン酸塩、酸性酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、
マレイン酸塩、ゲンチシネート、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロネート(glucuron
ate)、サッカラート、ギ酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン
酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、パモン酸塩(すなわち、1,
1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート)、リン酸塩などの多原子
アニオンであってもよい。いくつかの実施形態では、Xは一価イオンである。いくつかの
実施形態では、Xはクロリドである。
【0057】
同様に、式IIの安息香酸塩は特に限定されず、したがって、式IIのYは、安息香酸
と塩を形成できる適切な任意のイオンであってよい。いくつかの実施形態では、Yは、ア
ルカリ金属イオン(例えば、Li、NaおよびK)および他の一価イオン(例えば
、Ag)などの単原子カチオンであってよい。Yはまた、アンモニウム、L-アルギニ
ン、ジエチルアミン、コリン、エタノールアミン、1H-イミダゾール、トロラミンなど
の多原子カチオンであってもよい。いくつかの実施形態ではYは無機イオンである。いく
つかの実施形態ではYは銀である。
【0058】
L-オルニチンおよび安息香酸の他の可能な多くの塩をそれぞれ式IおよびIIの化合
物に用いることができ、当業者はこれらを容易に調製することができる。例えば、Big
hley L.D.ら、“Salt forms of drugs and abso
rption、” In:Swarbrick J.、Horlan J.C., ed
s. Encyclopedia of pharmaceutical techno
logy、第12巻.New York:Marcel Dekker、Inc.、45
2~499頁(その全体を参照により本明細書に組み込む)を参照されたい。
【0059】
中間体L-オルニチンベンゾエート(すなわち、式III)は、式IおよびIIの化合物
を含む溶液を混合することによって調製することができる。例として、式IおよびIIの
化合物を、水とジメチルスルホキシド(DMSO)にそれぞれ別個に溶解することができ
る。次いで、この2つの溶液を混合して、L-オルニチンと安息香酸を反応して式IIIの
塩を形成させることができる。あるいは、2つの塩化合物を、直接溶解して単一の溶液に
することができる。いくつかの実施形態では、L-オルニチンと安息香酸を別々の溶媒に
溶解し、続いて混合する。いくつかの実施形態では、L-オルニチンを水溶液に溶解させ
、安息香酸を有機溶媒に溶解させ、続いてL-オルニチンの溶液と安息香酸の溶液を混合
する。
【0060】
L-オルニチンと安息香酸塩を混合する場合に使用できる溶媒の非限定的な例には、ア
セトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、シクロヘキサン、エタノール、アセ
トン、酢酸、1-プロパノール、炭酸ジメチル、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)
、酢酸エチル(EtOAc)、トルエン、イソプロピルアルコール(IPA)、ジイソプ
ロピルエーテル、ニトロメタン、水、1,4ジオキサン、tジエチルエーテル(tdiethyl
ether)、エチレングリコール、酢酸メチル(MeOAc)、メタノール、2-ブタノー
ル、クメン、ギ酸エチル、酢酸イソブチル、3-メチル-1-ブタノール、アニソールお
よびその組合せが含まれる。いくつかの実施形態では、L-オルニチンベンゾエート溶液
は水を含む。いくつかの実施形態では、L-オルニチンベンゾエート溶液はDMSOを含
む。
【0061】
L-オルニチンと安息香酸塩を混合したら、対イオンXおよびYは沈殿物を形成するこ
とができ、これは、ろ過、遠心分離などの公知の方法を用いて混合溶液から除去できる。
いくつかの実施形態では、Xはクロリドであり、Yは銀であり、この反応によってAgC
lを有する沈殿物が生成される。スキーム1は、式IおよびIIの化合物を塩として示し
ているが、遊離ベースのL-オルニチンと安息香酸を混合してL-オルニチンベンゾエー
トの中間体を形成させるのも本出願の範囲内である。したがって、沈殿物を生成させて単
離するのは任意選択である。
【0062】
混合するL-オルニチンと安息香酸塩の相対量は限定されないが、L-オルニチンと安
息香酸のモル比は任意選択で約10:90~90:10の範囲であってよい。いくつかの
実施形態では、L-オルニチンベンゾエートのモルは約30:70~30:70の範囲で
あってよい。いくつかの実施形態では、L-オルニチンと安息香酸塩のモル比は約40:
60~60:40の範囲であってよい。いくつかの実施形態では、L-オルニチンと安息
香酸塩のモル比は約1:1である。
【0063】
XとYがどちらも無機イオンである(例えば、XおよびYがそれぞれクロリドおよび銀
である)実施形態では、追加の量のX含有塩を加えて、対イオンYのさらなる沈殿を促す
ことができる。例えば、Xがクロリドであり、Yが銀である場合、L-オルニチン塩酸塩
と安息香酸銀のモル比を1:1より大きくして、銀に対して過剰のクロリドが存在するよ
うにすることができる。したがって、いくつかの実施形態では、L-オルニチンと安息香
酸のモル比は約1:1より大きい。それでも、L-オルニチン塩(例えば、L-オルニチ
ン塩酸塩)から得るために、追加のクロリド塩は必要ではない。例えば、塩酸の希釈溶液
を溶液に加えて、銀をさらに除去することができる。追加のX含有塩をいつ加えるかは特
に限定されないが、AgClを最初に単離する前にそれを加えることが好ましい。
【0064】
スキーム2に示すように、L-オルニチンベンゾエートを、式IVの酢酸フェニル塩と
反応してL-オルニチンフェニルアセテートを生成させることができる。例えば、酢酸フ
ェニルナトリウムを、L-オルニチンベンゾエートの溶液と混合してL-オルニチンフェ
ニルアセテートを生成させることができる。酢酸フェニルの種々の塩を用いることができ
、したがって、式IVのZは、安息香酸またはL-オルニチン以外の、酢酸フェニルと塩
を形成できる任意のカチオンであってよい。いくつかの実施形態では、Zは、アルカリ金
属イオン(例えば、Li、NaおよびK)および他の一価イオン(例えば、Ag
)などの単原子カチオンであってよい。Zは、アンモニウム、L-アルギニン、ジエチル
アミン、コリン、エタノールアミン、1H-イミダゾール、トロラミンなどの多原子カチ
オンであってもよい。いくつかの実施形態ではZは無機イオンである。いくつかの実施形
態ではZはナトリウムである。
【0065】
混合するL-オルニチンと酢酸フェニル塩の相対量もやはり限定されないが;L-オル
ニチンと酢酸フェニルのモル比は任意選択で約10:90~90:10の範囲であってよ
い。いくつかの実施形態では、L-オルニチンと酢酸フェニルのモル比は約30:70~
30:70の範囲であってよい。いくつかの実施形態では、L-オルニチンと酢酸フェニ
ルのモル比は約40:60~60:40の範囲であってよい。いくつかの実施形態では、
L-オルニチンと安息香酸のモル比は約1:1である。
【0066】
【化2】
【0067】
次いで、式VのL-オルニチンフェニルアセテートを、公知の手法を用いて溶液から単
離することができる。例えば、L-オルニチンフェニルアセテートが結晶化するまで溶媒
を蒸発させるか、あるいは、溶液からL-オルニチンフェニルアセテートが沈殿するまで
L-オルニチンフェニルアセテート溶液中に混和性のアンチソルベントを加えることによ
って単離することができる。L-オルニチンフェニルアセテートを単離するための可能な
別の手段は、L-オルニチンフェニルアセテートが沈殿するまで溶液の温度を調節する(
例えば、温度を低下させる)ことである。後段の節でさらに詳細に論じるように、L-オ
ルニチンフェニルアセテートを単離する方法は、得られる結晶形態に影響を及ぼす。
【0068】
単離されたL-オルニチンフェニルアセテートを、乾燥などの様々な追加の工程にかけ
ることができる。いくつかの実施形態では、L-オルニチンフェニルアセテートを、続い
て希薄HCl溶液と混合して残留銀を沈殿させることができる。L-オルニチンフェニル
アセテートを、上記に開示したのと同様の方法を用いて溶液から再度単離することができ
る。
【0069】
当業者に理解されるように、L-オルニチンフェニルアセテートは、本出願の教示にし
たがってL-オルニチンベンゾエート以外の中間塩を用いて同様に調製することができる
。したがって、例えばL-オルニチンまたはその塩(例えば、L-オルニチン塩酸塩)を
、酢酸を含む溶液と混合することができる。次いでL-オルニチン酢酸塩をフェニル酢酸
またはその塩(例えば、酢酸フェニルナトリウム)と混合してL-オルニチンフェニルア
セテートを得ることができる。スキーム4は、中間塩としてL-オルニチン酢酸塩を用い
てL-オルニチンフェニルアセテートを生成させるプロセスの例を示す。いくつかの実施
形態では、中間塩はL-オルニチンの薬学的に許容される塩であってよい。例えば、中間
体L-オルニチン塩は、酢酸塩、アスパラギン酸塩、ギ酸塩、シュウ酸塩、重炭酸塩、炭
酸塩、ビトレート、硫酸塩、硝酸塩、イソニコチン酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒
石酸塩、パントテン酸塩、酸性酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩
、ゲンチシネート、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、サッカラート、ギ酸塩
、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンス
ルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、パモン酸塩(すなわち、1,1’-メチレン-
ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート)またはリン酸塩であってよい。中間体の遊
離酸は、フェニル酢酸より弱い酸であることが好ましい。いくつかの実施形態では、中間
体は、フェニル酢酸のpK値より高いpK値を示すアニオン成分を有するL-オルニ
チン塩である。L-オルニチン酢酸塩についての例としては、酢酸およびフェニル酢酸は
それぞれ約4.76および4.28のpK値を示す。
【0070】
【化3】
【0071】
いくつかの実施形態では、L-オルニチンフェニルアセテートは、L-オルニチンベン
ゾエートなどの中間塩を生成することなく調製することもできる。スキーム4は、中間塩
なしでL-オルニチンフェニルアセテートを調製するプロセスの例を示す。溶液から塩が
沈殿するまで、L-オルニチン塩の溶液(例えば、スキーム4において式Iの化合物で例
示される)にpH調節剤を加えることができる。その塩はL-オルニチン塩ではない。例
として、溶液から塩化ナトリウムが沈殿してL-オルニチンの遊離塩基がもたらされるま
で、ナトリウムメトキシド(NaOMe)をL-オルニチン塩酸塩の溶液に加えることが
できる。沈殿物は任意選択で、ろ過、遠心分離などの公知の手法を用いて溶液から単離す
ることができる。L-オルニチンの遊離塩基(例えば、スキーム4において式I-aの化
合物で例示される)を、フェニル酢酸またはその塩(例えば、スキーム4において式IV
の化合物で例示される)と混合してL-オルニチンフェニルアセテートを得ることができ
る。次いで、式VのL-オルニチンフェニルアセテートを、上記したように単離すること
ができる。
【0072】
【化4】
【0073】
pH調節剤は、塩基性化合物またはその無水前駆体および/または化学的に保護された
塩基を含むことができる。pH調節剤の非限定的な例には、水酸化ナトリウム、水酸化カ
リウム、ナトリウムメトキシド、カリウムt-ブトキシド、炭酸ナトリウム、炭酸カルシ
ウム、ジブチルアミン、トリプタミン、水素化ナトリウム、水素化カルシウム、ブチルリ
チウム、エチルマグネシウムブロミドおよびその組合せが含まれる。加えるpH調節剤の
量はやはり特に限定されないが;L-オルニチンとpH調節剤のモル比は任意選択で約1
0:90~90:10の範囲であってよい。いくつかの実施形態では、L-オルニチンと
pH調節剤のモル比は約30:70~30:70の範囲であってよい。いくつかの実施形
態では、L-オルニチンとpH調節剤のモル比は約40:60~60:40の範囲であっ
てよい。いくつかの実施形態では、L-オルニチンとpH調節剤のモル比は約1:1であ
る。いくつかの実施形態では、pH調節剤を加えて、pH値を少なくとも約8.0;少な
くとも約9.0;または少なくとも約9.5に調節することができる。
【0074】
L-オルニチンフェニルアセテートを生成させる別の方法には、いくつかの実施形態で
は、L-オルニチンのアルカリ金属塩を酢酸フェニル塩と反応させる方法が含まれる。例
として、L-オルニチン塩酸塩を銀酢酸フェニルおよび溶媒と混合することができる。次
いで、AgClを沈殿させ、任意選択で溶液から単離することができる。残留L-オルニ
チンフェニルアセテートを、公知の方法を用いて単離することもできる。この方法は、上
記したのと概ね同じ手順および条件を用いて遂行することができる。例えば、L-オルニ
チンと酢酸フェニルの相対モル量は、10:90~90:10;30:70~70:30
;40:60~60:40;または約1:1であってよい。また、L-オルニチンフェニ
ルアセテートは、溶媒を蒸発させ、アンチソルベントを加え、かつ/または温度を低下さ
せて単離することができる。
【0075】
L-オルニチンフェニルアセテートの組成物
L-オルニチンフェニルアセテートの組成物も本明細書で開示する。本出願の組成物は
、少量の無機塩、特にアルカリ金属塩および/またはハライド塩を有することが有利であ
り、したがって、肝性脳症を有する患者への経口および/または静脈内投与に特に適して
いる。その一方、これらの組成物は、他の塩(例えば、L-オルニチン塩酸塩と酢酸フェ
ニルナトリウムの混合物)と比べて類似した安定性プロファイルを示すことができる。い
くつかの実施形態では、組成物を、本出願で開示する方法の1つによって得ることができ
る。例えば、中間体としてL-オルニチンベンゾエートを用いる開示方法のどれによって
も、本出願の組成物を得ることができる。
【0076】
いくつかの実施形態では、組成物は、結晶形態のL-オルニチンフェニルアセテート(
例えば、本明細書で開示する形態I、II、IIIおよび/またはV)を含むことができる。
いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも約20重量%の結晶形態のL-オルニチ
ンフェニルアセテート(好ましくは少なくとも約50重量%、より好ましくは少なくとも
約80重量%)を含むことができる。いくつかの実施形態では、組成物は、結晶形態のL
-オルニチンフェニルアセテートから本質的になる。いくつかの実施形態では、組成物は
、形態I、II、IIIおよびVの少なくとも2つ(例えば、2つ、3つまたは4つの形態)
の混合物を含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、組成物は形態IIを含む。例えば、組成物は、少なくとも約2
0%;少なくとも約50%;少なくとも約90%;少なくとも約95%;または少なくと
も約99%の形態IIを含むことができる。同様に、組成物は、例えば形態I、IIIまたは
Vも含むことができる。組成物は任意選択で、少なくとも約20%;少なくとも約50%
;少なくとも約90%;少なくとも約95%;または少なくとも約99%の形態I、II、
IIIおよび/またはVを含むことができる。
【0078】
無定形のL-オルニチンフェニルアセテートも本出願の範囲内である。無定形を調製す
るための様々な方法が当業界で知られている。例えば、L-オルニチンフェニルアセテー
トの溶液を、凍結乾燥によって真空下で乾燥して無定形組成物を得ることができる。P.
C.T出願WO2007/058634を参照されたい。これは英語で公開されており、
米国を指定している。凍結乾燥の方法についての開示を参照により本明細書に組み込む。
【0079】
組成物は、少量(もしあれば)のアルカリおよびハロゲンイオンまたは塩、特にナトリ
ウムおよびクロリドを有することが好ましい。いくつかの実施形態では、その組成物は、
約100ppm以下(好ましくは約20ppm以下、最も好ましくは約10ppm以下)
のアルカリ金属を含む。いくつかの実施形態では、その組成物は、約100ppm以下(
好ましくは約20ppm以下、最も好ましくは約10ppm以下)のナトリウムを含む。
いくつかの実施形態では、その組成物は、約0.1重量%以下(好ましくは約0.01重
量%以下)のハライドを含む。いくつかの実施形態では、その組成物は、約0.1重量%
以下(好ましくは約0.01重量%以下)のクロリドを含む。
【0080】
アルカリ金属およびハライドの含量を減少させると、濃厚な等張液を調製するのに適し
た組成物が提供される。したがって、これらの組成物は、例えばL-オルニチン塩酸塩と
酢酸フェニルナトリウムの混合物を投与するのに比べて、より簡単に静脈内で投与するこ
とができる。いくつかの実施形態では、水の中のL-オルニチンフェニルアセテートの約
45~約55mg/mL溶液(好ましくは約50mg/mL)が体液と等張性である(例
えば、溶液は約280~約330mOsm/kgの範囲の浸透圧重量モル濃度を示す)。
【0081】
組成物は、L-オルニチンフェニルアセテート組成物の製造プロセス中に生成した中間
塩からの残留量のアニオンも含む可能性がある。例えば、本明細書で開示する方法のいく
つかによって、安息香酸またはその塩を有する組成物がもたらされる。いくつかの実施形
態では、その組成物は、少なくとも約0.01重量%(好ましくは少なくとも約0.05
重量%、より好ましくは約0.1重量%)の安息香酸またはその塩を含む。いくつかの実
施形態では、その組成物は、約3重量%以下(好ましくは約1重量%以下、より好ましく
は約0.5重量%以下)の安息香酸またはその塩を含む。いくつかの実施形態では、組成
物は、約0.01%~約3重量%(好ましくは約0.1%~約1%)の範囲の塩またはそ
の酸を含む。その塩は、酢酸塩、アスパラギン酸塩、ギ酸塩、シュウ酸塩、重炭酸塩、炭
酸塩、ビトレート、硫酸塩、硝酸塩、イソニコチン酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒
石酸塩、パントテン酸塩、酸性酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩
、ゲンチシネート、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、サッカラート、ギ酸塩
、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンス
ルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、パモン酸塩(すなわち、1,1’-メチレン-
ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート)またはリン酸塩から選択される。
【0082】
同様に、酢酸塩中間体を用いて調製される組成物は、残留量の酢酸または酢酸塩を有す
ることができる。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも約0.01重量%(好
ましくは少なくとも約0.05重量%、より好ましくは約0.1重量%)の酢酸または酢
酸塩を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約3重量%以下(好ましくは約1重量
%以下、より好ましくは約0.5重量%以下)の酢酸または酢酸塩を含む。
【0083】
組成物は少量の銀も含むことができる。本明細書で開示する方法の例は、例えば、安息
香酸銀を使用するが、それでも、驚くほど少量の銀しか含まない組成物が得られる。した
がって、いくつかの実施形態では、組成物は約600ppm以下(好ましくは約100p
pm以下、より好ましくは約65ppm以下)の銀を含む。いくつかの実施形態では、組
成物は少なくとも約10ppmの銀(あるいは少なくとも約20または25ppmの銀)
を含む。
【0084】
医薬組成物
本出願のL-オルニチンフェニルアセテートの組成物は、対象に(例えば、ヒト)に投
与するように処方することもできる。L-オルニチンフェニルアセテート、したがって本
明細書で開示する組成物は、薬学的に許容される担体または賦形剤と一緒に投与するよう
に処方することができる。したがってL-オルニチンフェニルアセテートは、薬剤技術分
野で慣行的であるような薬学的に許容される標準的な担体および/または添加剤を含む医
薬品として処方することができる。その処方物の正確な特性は、所望の投与経路を含むい
くつかの要素に依存することになる。一般に、L-オルニチンフェニルアセテートは、経
口、静脈内、胃内、皮下、血管内または腹腔内投与用に処方する。
【0085】
薬剤用の担体または賦形剤は、例えば水または等張液、例えば水または生理食塩水の中
の5%デキストロースであってよい。固体経口剤形は、活性化合物と一緒に、賦形剤、例
えばラクトース、デキストロース、サッカロース、セルロース、コーンスターチまたはバ
レイショデンプン;滑沢剤、例えばシリカ、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネ
シウムまたはステアリン酸カルシウムおよび/またはポリエチレングリコール;結合剤、
例えばデンプン、アラビアゴム、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロ
ースまたはポリビニルピロリドン;崩壊剤、例えばデンプン、アルギン酸、アルギン酸塩
またはデンプングリコール酸ナトリウム;起泡性混合物;染料;甘味剤;湿潤剤、例えば
レシチン、ポリソルベート、ラウリル硫酸;および、一般に、薬剤処方物に使用される非
毒性で薬理学的に不活性な物質を含むことができる。そうした医薬製剤は、例えば、混合
、顆粒化、錠剤化、糖コーティングまたは膜コーティングプロセスによって公知の仕方で
製造することができる。
【0086】
経口投与用の液体分散製剤は、シロップ剤、乳剤または懸濁剤であってよい。シロップ
剤は、担体、例えばサッカロースまたはグリセリンおよび/またはマンニトールおよび/
またはソルビトールと一緒にしたサッカロースを含むことができる。
【0087】
懸濁剤および乳剤は、担体、例えば天然ゴム、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン
、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはポリビニルアルコールを含むこ
とができる。筋肉注射用の懸濁剤または液剤は、L-オルニチンフェニルアセテートと一
緒に、薬学的に許容される担体、例えば滅菌水、オリーブ油、オレイン酸エチル、グリコ
ール、例えばプロピレングリコール、望むなら適切な量のリドカイン塩酸塩を含むことが
できる。
【0088】
医薬品は、L-オルニチンフェニルアセテートおよび薬学的に許容される担体から本質
的になってよい。したがって、そうした医薬品は、L-オルニチンおよび酢酸フェニルに
加えて、他のアミノ酸を実質的に含有しない。さらに、そうした医薬品は、L-オルニチ
ンフェニルアセテートの他には他の塩をごくわずかな量しか含まない。
【0089】
経口処方物は一般に、約500mg~約100gの範囲のL-オルニチンフェニルアセ
テートの投薬量を含むことができる。したがって、いくつかの実施形態では、経口処方物
は、約500mg~約50gの範囲の本明細書で開示するL-オルニチンフェニルアセテ
ート組成物を含む。いくつかの実施形態では、経口処方物は、アルカリ金属塩およびハラ
イドを実質的に含まない(例えば、痕跡量以下のアルカリ金属塩およびハライドしか含ま
ない)。
【0090】
静脈用処方物も一般に、約500mg~約100g(好ましくは約1g~約50g)の
範囲のL-オルニチンフェニルアセテートの投薬量を含むことができる。いくつかの実施
形態では、静脈用処方物は、アルカリ金属塩およびハライドを実質的に含まない(例えば
、痕跡量以下のアルカリ金属塩およびハライドしか含まない)。いくつかの実施形態では
、静脈用処方物は、約5~約300mg/mLのL-オルニチンフェニルアセテート濃度
(好ましくは約25~約200mg/mL、より好ましくは約40~約60mg/mL)
を有する。
【0091】
組成物または前記組成物を含む医薬品は任意選択で、密封した包装にすることができる
。密封した包装物は、水分および/または外気がその組成物または医薬品と接触するのを
軽減するまたは防止することができる。いくつかの実施形態では、その包装物は気密シー
ルを含む。いくつかの実施形態では、その包装物は、真空下または不活性ガス(例えば、
アルゴン)でその密封包装物内に密封される。したがって、包装物は、包装物内に貯蔵さ
れた組成物または医薬品の分解速度を抑制または低下させることができる。種々のタイプ
の密封包装物が当業界で公知である。例えば、米国特許第5,560,490号(その全
体を参照により本明細書に組み込む)は医薬品用の密封包装の例を開示している。
改善された密度を有する組成物
【0092】
出願人らは、驚くべきことに、形態I(以下で説明する)を有する組成物に、形態II(
以下で説明する)への転移を誘発するのに十分な圧力を印加することによって、より高い
密度を有する組成物を得ることができることを見出した。例えば、3トンの力を形態Iお
よび形態IIに90分間印加すると、それぞれ1.197kg/mおよび1.001kg
/mの密度が得られる。驚くべきことに、こうした条件下で形態Iは形態IIに転移する
。したがって、より高い密度は、出発原料とは異なった結晶形態によって説明されるよう
である。
【0093】
したがって、その組成物に、形態IIへの転移を誘発するのに十分な圧力を印加すること
によって、形態Iを有するL-オルニチンフェニルアセテート組成物の密度を増大させる
方法を本明細書で開示する。相変化を誘発させるための適切な力または圧力の量は、力ま
たは圧力が印加される時間量とともに変化し得る。したがって、当業者は、本出願の教示
にしたがって、相変化を誘発するのに適した圧力および時間の量を決定することができる
。いくつかの実施形態では、少なくとも約1トン(好ましくは少なくとも約2トン、より
好ましくは約3トン)の力を印加する。いくつかの実施形態では、少なくとも約500p
si(好ましくは少なくとも約1000psi、より好ましくは少なくとも約2000p
si)の圧力を印加する。
【0094】
圧力を印加する時間量は特に限定されず、上記で論じたように、それは、時間量に応じ
て変わってくる。例えば、典型的な錠剤サイズのパンチに大きな力(例えば、10トン)
を印加する場合、その時間は約1秒以下であってよい。いくつかの実施形態では、圧力印
加のための時間は予め決められた時間である。その時間は、例えば、約0.1秒間;約1
秒間;少なくとも約1分間;少なくとも約5分間;または少なくとも約20分間であって
よい。
【0095】
いくつかの実施形態では、組成物は少なくとも約10重量%の形態Iを含む。いくつか
の実施形態では、組成物は少なくとも約30重量%の形態Iを含む。
【0096】
特定の理論に拘泥するわけではないが、出願人らは、より高い密度は、少なくとも一部
は形態I中に存在するエタノール溶媒和物成分からもたらされると考える。溶媒和物に圧
力を印加すると、欠陥(例えば、粒界)がより少ない密な構造を形成するのを容易にする
ことができる。したがって、いくつかの実施形態では、溶媒和物成分を有するL-オルニ
チンフェニルアセテート組成物の密度を増大させる方法は、形態IIへの転移を誘発するの
に十分な圧力を組成物に印加することを含む。いくつかの実施形態では、その圧力は少な
くとも約500psi(好ましくは少なくとも約1000psi、より好ましくは少なく
とも約2000psi)である。いくつかの実施形態では、圧力を印加する時間は、予め
決められた時間である。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも約10%(好ま
しくは少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも約50%)の溶媒和物形態を含む
【0097】
したがって、本明細書で開示するL-オルニチンフェニルアセテートの組成物は、例え
ば、結晶形態を沈殿させて得られる組成物と比べて、より高い密度を有することができる
。いくつかの実施形態では、その組成物は、少なくとも約1.1kg/m(好ましくは
少なくとも約1.15kg/m、より好ましくは少なくとも約1.18kg/m)の
密度を有する。いくつかの実施形態では、その組成物は、約1.3kg/m以下(好ま
しくは約1.25kg/m以下、より好ましくは約1.22kg/m以下)の密度を
有する。いくつかの実施形態では、その組成物は約1.2kg/mの密度を有する。
L-オルニチンフェニルアセテートの結晶形態
【0098】
結晶形態、特に結晶形態I、形態II、形態IIIおよび形態VのL-オルニチンフェニル
アセテートも本明細書で開示する。いくつかの実施形態では、L-オルニチンフェニルア
セテートを、上記に開示した方法を用いて得、次いでこれを本明細書で開示する方法のい
ずれかを用いて結晶化することができる。
【0099】
形態I
結晶形態Iを形成させるための正確な条件は経験的に決定することができ、それは、実
際に適していることが分かっているいくつかの方法を実施することによってのみ可能であ
る。
【0100】
したがって、例えば、結晶形態Iは一般に、制御された条件下で、L-オルニチンフェ
ニルアセテートを結晶化させることによって得ることができる。例として、低温(例えば
、4℃または-21℃)でエタノールを加えることによって、飽和溶液からL-オルニチ
ンフェニルアセテートを沈殿させることができる。エタノールを加えると結晶形態Iをも
たらす溶液のための溶媒の例には、これらに限定されないが、シクロヘキサノン、1-プ
ロパノール、炭酸ジメチル、N-メチルピロリジン(NMP)、ジエチルエーテル、2-
ブタノール、クメン、ギ酸エチル、酢酸イソブチル、3-ネチル-1-ブタノール(3-ne
thyl-l-butanol)およびアニソールが含まれる。
【0101】
したがって、上記に開示したL-オルニチンフェニルアセテートを製造するためのプロ
セスの関連では、そのプロセスは、特定の単離方法を用いて形態Iを提供することができ
る。例えば、エタノールを低温で加えることによって、L-オルニチンフェニルアセテー
トを単離させて形態Iを得ることができる。
【0102】
実験方法の部でさらに詳細に説明する様々な手法を用いて、結晶形態Iの特性評価をし
た。図1は粉末X線回折(XRPD)で測定した形態Iの結晶構造を示す。上記に開示し
た方法で得られる形態Iは約4.9°、13.2°、17.4°、20.8°および24
.4°2θで特性ピークを示す。したがって、いくつかの実施形態では、結晶形態のL-
オルニチンフェニルアセテートは、約4.9°、13.2°、17.4°、20.8°お
よび24.4°2θから選択される1つまたは複数の特性ピーク(例えば、1つ、2つ、
3つ、4つまたは5つの特性ピーク)を有する。
【0103】
当業界ではよく理解されているように、X線回折パターンを異なる機器で測定した場合
の実験的な変動性のため、2シータ(2θ)値が0.2°内(すなわち、±0.2°)で
一致すれば、そのピーク位置は同等であると見なされる。例えば、米国薬局方は、10個
の最強回折ピークの角度設定が±0.2°以内で標準物質のそれと一致し、かつ、そのピ
ークの相対強度が20%を超えて変動しなければ、その同一性は確認されたものとすると
述べている。したがって、本明細書で示す位置の0.2°以内のピーク位置は同一である
と見なす。
【0104】
図2は、形態Iについての示差走査熱量測定(DSC)によって得られた結果を示す。
これらの結果は35℃での吸熱を示しており、これは多分、形態IIへと脱溶媒和および/
または脱水していることと関連している。約203℃での第2の転移は結晶の融点を示し
ている。脱溶媒和および/または脱水転移の存在の可能性を調べるため、形態Iを熱重量
的重量/示差熱分析(TG/DTA)で分析した。これを図3に示す。形態Iは約35℃
で11.28%の重量損失を示しており、したがって、これらの結果は、形態Iが約35
℃で脱溶媒和および/または脱水転移を示していることをさらに示唆している。約203
℃の融点は、TGA試験によっても観察することができる。したがって、いくつかの実施
形態では、結晶形態のL-オルニチンフェニルアセテートは、示差走査熱量測定により約
35℃で吸熱を有すると特徴づけられる。いくつかの実施形態では、結晶形態のL-オル
ニチンフェニルアセテートは、TGAで測定して約35℃で約11%の重量損失を示す。
いくつかの実施形態では、結晶形態のL-オルニチンフェニルアセテートは約203℃の
融点を示す。
【0105】
図4は、形態Iについての核磁気共鳴(NMR)積分および化学シフトを示す。この積
分によって、L-オルニチンフェニルアセテート:7.5(芳香族CH)、3.8(NH
に隣接したCH)、3.6(酢酸フェニルのCH単位)、3.15(NHに隣接し
たCH)および1.9(脂肪族CH単位)ppm(積:5:1:2:2:4プロトン
;1.2、0.25、0.5、0.5、1.0)の存在が確認される。アミンプロトンお
よびヒドロキシルプロトンは、両性イオンと塩形成の部位とのプロトン交換のため観察さ
れなかった。その一方、図5は、形態Iについての動的蒸気収着(DVS)結果を示し、
約0.2重量%の水の取り込みを示す。DVA分析(示していない)に続くXRPD結果
によって、形態Iは異なる多形体へ転移していなかったことが確認される。したがって、
形態Iは、非吸湿性であり、広範な湿度にわたって安定であると特徴づけることができる
【0106】
40℃/75%RHでの形態Iの7日間安定性試験は、これらの条件下で形態IIへの
転移が起こったことを示した。形態Iはまた、高温(例えば、80℃または120℃)で
も、真空をかけてもかけなくても、7日または14日後、形態IIに転換される。したがっ
て、形態Iは準安定性である。
【0107】
-20℃および-123℃での形態Iの構造を決定するために単結晶X線回折(SXR
D)も用いた。その結果を表1および表2にまとめる。その結果から、形態Iが、単位格
子内にエタノールおよび水分子を有する溶媒和物であることが確認される。いくつかの実
施形態では、結晶形態のL-オルニチンフェニルアセテートは式C28で表
すことができる。いくつかの実施形態では、結晶形態のL-オルニチンフェニルアセテー
トは式[C13][C]EtOH.HOで表すことができる。
いくつかの実施形態では、結晶形態のL-オルニチンフェニルアセテートは、おおよそ以
下の結晶パラメーター、すなわち:a=5.3652(4)Å、b=7.7136(6)
Å、c=20.9602(18)Å、α=90°、β=94.986(6)°、γ=90
°の単位格子寸法;単斜晶系およびP2空間群を有する単結晶X線結晶学的解析結果を
示す。
【0108】
【表1】
【0109】
【表2】
【0110】
形態II
結晶形態IIを形成させるための正確な条件は経験的に決定することができ、それは、実
際に適していることが分かっているいくつかの方法を実施することによってのみ可能であ
る。
【0111】
したがって、例えば、結晶形態IIは、制御された条件下で結晶化させることによって調
製することができる。結晶形態IIは、例えばL-オルニチンフェニルアセテートの飽和有
機溶液を蒸発させることによって調製することができる。形態IIを得るのに使用できる
有機溶液の非限定的例には、エタノール、アセトン、ベンゾニトリル、ジクロロメタン(
DCM)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル(EtOAc)、アセトニト
リル(MeCN)、酢酸メチル(MeOAc)、ニトロメタン、tert-ブチルメチル
エーテル(TBME)、テトラヒドロフランおよびトルエンが含まれる。これらに限定さ
れないが、1,4ジオキサン、1-ブタノール、シクロヘキサン、IPA、THF、ME
K、MeOAcおよび水などの他の溶媒は、形態Iと形態IIの混合物をもたらすことがで
きる。
【0112】
形態IIは、IPAなどのL-オルニチンフェニルアセテートのためのアンチソルベン
トを加えて、飽和有機溶液からL-オルニチンフェニルアセテートを沈殿させることによ
っても得ることができる。形態IIは、広い温度範囲(例えば、室温、4℃および-21℃
)にわたって沈殿させることができる。飽和有機溶液に適した溶媒の非限定的な例には、
シクロヘキサノン、1-プロパノール、炭酸ジメチル、N-メチルピロリドン(NMP)
、ジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテル、エチレングリコール、ジメチルホルムア
ミド(DMF)、2-ブタノール、クメン、酢酸イソブチル、3-メチル-1-ブタノー
ルおよびアニソールが含まれる。あるいは、ここに挙げた同じ溶媒(例えば、シクロヘキ
サノン)を、L-オルニチンフェニルアセテートの溶液を生成させるのに用いることがで
き、形態IIは、周囲条件でエタノールを加えることによって沈殿させることができる。別
の例として、形態IIは、上記に挙げた有機溶媒を用いてL-オルニチンフェニルアセテー
トのスラリーを形成させ、25℃と40℃の間を4時間ごとに約18サイクル(すなわち
72時間)繰り返すことによっても得ることができる。
【0113】
したがって、上記に開示したL-オルニチンフェニルアセテートを製造するためのプロ
セスの関連では、そのプロセスは、特定の単離方法を用いて形態IIを提供することができ
る。例えば、IPAを加えるか、または有機溶媒を蒸発させることによってL-オルニチ
ンフェニルアセテートを単離して形態IIを得ることができる。
【0114】
図6は、XRPDで測定した形態IIの結晶構造を示す。上記に開示した方法で得られる
形態IIは約6.0°、13.9°、14.8°、17.1°、17.8°および24.
1°2θで特性ピークを示す。したがって、いくつかの実施形態では、結晶形態のL-オ
ルニチンフェニルアセテートは、約6.0°、13.9°、14.8°、17.1°、1
7.8°および24.12°θから選択される1つまたは複数の特性ピーク(例えば、1
つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つの特性ピーク)を有する。
【0115】
図7は、形態IIについての示差走査熱量測定(DSC)によって得られた結果を示す。
これらの結果は約202℃の融点を示しており、形態Iの融点とほぼ同じである。これは
、約35℃超で加熱すると、形態Iが形態IIに転移したことを示唆している。図8に示す
ように、形態IIも、やはりTG/DTAを用いて分析した。これは、残留溶媒に伴う約9
.7%の重量損失を示している。約202℃の融点は、TGA試験によっても観察するこ
とができる。したがって、いくつかの実施形態では、結晶形態のL-オルニチンフェニル
アセテートは約202℃の融点を示す。
【0116】
40℃/75%RHでの形態IIの7日間安定性試験では、観測できる相変化を得ること
はできなかった。実際、高温、様々なpH、紫外線または酸素に曝露しても、形態IIは1
4日間安定であった。したがって、形態IIは安定であると考えられる。
【0117】
図9は、形態IIについての核磁気共鳴(NMR)積分および化学シフトを示す。この積
分から、L-オルニチンフェニルアセテート:7.5(芳香族CH)、3.8(NH2に
隣接したCH)、3.6(酢酸フェニルのCH2単位)、3.15(NH2に隣接したC
H2)および1.9(脂肪族CH2単位)ppm(積:5:1:2:2:4プロトン;7
.0、1.4、2.9、3.0、5.9)の存在が確認される。アミンプロトンおよびヒ
ドロキシルプロトンは、両性イオンと塩形成の部位とのプロトン交換のため観察されなか
った。その一方、図10は、形態IIについての動的蒸気収着(DVS)結果を示し、約
0.3重量%の水の取り込みを示す。DVA分析(示していない)に続くXRPD結果に
よって、形態IIは異なる多形体へ転移していなかったことが確認される。したがって、形
態IIは、非吸湿性であり、広範な湿度にわたって安定であると特徴づけることができる。
【0118】
23℃および-123℃での形態IIの構造を決定するために単結晶X線回折(SXRD
)も用いた。結果を表3および表4にまとめる。その結果は、形態IIは無水であり、した
がって構造的に形態Iと異なっていることを示している。いくつかの実施形態では、結晶
形態のL-オルニチンフェニルアセテートは式C1320で表すことができる
。いくつかの実施形態では、結晶形態のL-オルニチンフェニルアセテートは式[C
13][C]で表すことができる。いくつかの実施形態では、結晶形
態のL-オルニチンフェニルアセテートは、おおよそ以下の結晶パラメーター、すなわち
:a=6.594(2)Å、α=90°、b=6.5448(18)Å、β=91.12
(3)°、c=31.632(8)Å、γ=90°の単位格子寸法;単斜晶系;およびP
空間群を有する単結晶X線結晶学的解析を示す。
【0119】
【表3】
【0120】
【表4】
【0121】
形態III
結晶形態IIIを形成させるための正確な条件は経験的に決定することができ、それは、
実際に適していることが分かっているいくつかの方法を実施することによってのみ可能で
ある。
【0122】
したがって、例えば、形態IIIは、L-オルニチンフェニルアセテートの飽和溶液を、
約-21℃の冷却した温度環境に置くことによって得ることができる。この溶液はアセト
ンと水の混合液である(例えば、等体積部のアセトンと水)。別の例として、2-ブタノ
ール中のL-オルニチンフェニルアセテートの飽和溶液にIPAを加えて周囲条件で完結
させると、形態IIIを得ることができる。さらに、形態IIIは、例えば酢酸イソブチル中の
L-オルニチンフェニルアセテートの飽和溶液にIPAを加えて約-21℃の低温で完結
させることによって得ることができる。
【0123】
したがって、上記に開示したL-オルニチンフェニルアセテートを製造するためのプロ
セスの関連では、そのプロセスは、特定の溶媒および単離方法を用いて形態IIIを提供す
ることができる。例えば、L-オルニチンフェニルアセテートを、アセトンと水の混合液
中で生成させ、続いて約-21℃の冷却環境に置いて形態IIIを生成させることができ
る。
【0124】
図11は、XRPDで測定した形態IIIの結晶構造を示す。上記に開示した方法で得ら
れる形態IIIは約5.8°、14.1°、18.6°、19.4°、22.3°および
24.8°2θで特性ピークを示す。したがって、いくつかの実施形態では、結晶形態の
L-オルニチンフェニルアセテートは、約5.8°、14.1°、18.6°、19.4
°、22.3°および24.8°2θから選択される1つまたは複数の特性ピーク(例え
ば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つの特性ピーク)を有する。
【0125】
図12は、形態IIIについての示差走査熱量測定(DSC)によって得られた結果を示
す。これらの結果は約203℃の融点を示しており、形態Iおよび形態IIの融点とほぼ同
じである。さらに、形態IIIは約40℃での吸熱を示す。図13に示すように、形態IIIも
TG/DTAで分析した。これは、融点前での有意の重量損失を示していない。したがっ
て、形態IIIは無水であると特徴づけることができる。約203℃の融点は、TGA試
験によっても観察することができる。したがって、いくつかの実施形態では、結晶形態の
L-オルニチンフェニルアセテートは約203℃の融点を示す。いくつかの実施形態では
、結晶形態のL-オルニチンフェニルアセテートは、示差走査熱量測定により約40℃で
の吸熱を有すると特徴づけられる。いくつかの実施形態では、結晶形態のL-オルニチン
フェニルアセテートは無水である。
【0126】
40℃/75%RHでの形態IIIの7日間安定性試験は、これらの条件下で形態IIへの
転移が起こったことを示している。これに対して、形態IIは、真空下であっても真空下で
なくても、高温で7日間または10日間安定である。したがって、形態IIIはたぶん準安
定性である。しかし、形態Iより安定である。
【0127】
図14は、形態IIIについての核磁気共鳴(NMR)積分および化学シフトを示す。こ
の積分から、L-オルニチンフェニルアセテート:7.5(芳香族CH)、3.8(NH
2に隣接したCH)、3.6(酢酸フェニルのCH2単位)、3.15(NH2に隣接し
たCH2)および1.9(脂肪族CH2単位)ppm(積:5:1:2:2:4プロトン
;4.2、0.8、1.7、1.7、3.0)の存在が確認される。アミンプロトンおよ
びヒドロキシルプロトンは、両性イオンと塩形成の部位との両方におけるプロトン交換の
ため観察されなかった。その一方、図15は、形態IIIについての動的蒸気収着(DVS
)結果を示し、約2.0重量%の水の取り込みを示す。DVS分析(示していない)に続
くXRPD結果によって、形態IIIは異なる多形体へ転移していなかったことが確認され
る。したがって、形態IIIは、形態IおよびIIと比べてより大きい水の取り込みを示すが
;形態IIIはそれでも、非吸湿性であり、室温で広範な湿度にわたって安定であると特徴
づけることができる。
【0128】
形態V
結晶形態Vを形成させるための正確な条件は経験的に決定することができ、それは、実
際に適していることが分かっているいくつかの方法を実施することによってのみ可能であ
る。
【0129】
したがって、例えば、形態Vは、L-オルニチンフェニルアセテートの飽和溶液を、約
-21℃の冷却した温度環境に置くことによって得ることができる。この溶液はシクロヘ
キサノンである。別の例として、溶媒を蒸発させると、同じ飽和溶液によって形態Vが得
られる。
【0130】
形態Vはまた、溶媒としてジイソプロピルエーテルを含むL-オルニチンフェニルアセ
テートの飽和溶液から形成される。例えば、約1~2のジイソプロピルエーテルとIPA
の溶媒比を有する飽和溶液は、約4℃の冷却した温度環境に置くと形態Vをもたらす。同
様に、溶媒ジイソプロピルエーテルだけを含む溶液は、約-21℃の冷却した温度環境に
置くと形態Vをもたらすことができる。
【0131】
図16は、XRPDで測定した形態Vの結晶構造を示す。上記に開示した方法で得られ
る形態Vは、約13.7°、17.4°、19.8°、20.6°および23.7°2θ
で特性ピークを示す。したがって、いくつかの実施形態では、結晶形態のL-オルニチン
フェニルアセテートは、約13.7°、17.4°、19.8°、20.6°および23
.7°2θから選択される1つまたは複数の特性ピーク(例えば、1つ、2つ、3つ、4
つまたは5つの特性ピーク)を有する。
【0132】
図17は、形態Vについての示差走査熱量測定(DSC)によって得られた結果を示す
。これらの結果は約196℃の融点を示しており、これは他の形態の融点より低い。形態
Vはまた約174℃での吸熱も示す。図18に示すように、形態Vも熱重量分析(TGA
)を用いて分析した。これは、融点前での有意の重量損失を示していない。したがって、
形態Vは無水であると特徴づけることができる。約196℃の融点は、TGA試験によっ
ても観察することができる。したがって、いくつかの実施形態では、結晶形態のL-オル
ニチンフェニルアセテートは約196℃の融点を示す。いくつかの実施形態では、結晶形
態のL-オルニチンフェニルアセテートは、示差走査熱量測定により約174℃での吸熱
を有すると特徴づけられる。いくつかの実施形態では、結晶形態のL-オルニチンフェニ
ルアセテートは無水である。
【0133】
図19は、形態Vについての核磁気共鳴(NMR)積分および化学シフトを示す。この
積分から、L-オルニチンフェニルアセテート:7.5(芳香族CH)、3.8(NH2
に隣接したCH)、3.6(酢酸フェニルのCH2単位)、3.15(NH2に隣接した
CH2)および1.9(脂肪族CH2単位)ppm(積:5:1:2:2:4プロトン;
4.2、0.8、1.7、1.7、3.0)の存在が確認される。アミンプロトンおよび
ヒドロキシルプロトンは、両性イオンと塩形成の部位との両方におけるプロトン交換のた
め観察されなかった。その一方、図19は、形態Vについての動的蒸気収着(DVS)結
果を示し、約0.75重量%の水の取り込みを示す。DVS分析(示していない)に続く
XRPD結果によって、形態Vが形態IIに転移していることが示唆されるが、その化学組
成は変化していなかった。したがって、形態Vは、非吸湿性であるが、広範な湿度にわた
って安定でないと特徴づけることができる。
【0134】
40℃/75%RHでの形態Vの7日間安定性試験は、これらの条件下で形態IIへの転
移が起こったことを示しているが、化学組成は変化していなかった。したがって、形態V
はたぶん準安定性である。
【0135】
肝臓代償不全または肝性脳症の治療方法
L-オルニチンフェニルアセテート、およびそれに応じた本明細書で開示するL-オル
ニチンフェニルアセテートの組成物のいずれかを、肝臓代償不全または肝性脳症の発症を
治療または改善するために対象に投与することができる。したがって、L-オルニチンフ
ェニルアセテートを、対象、例えば誘発事象に続く慢性の肝疾患に苦しむ患者の状態を改
善するために投与することができる。別の例として、L-オルニチンフェニルアセテート
を、肝臓代償不全または肝性脳症の発症と闘うかまたはそれを遅延させるために投与する
ことができる。
【0136】
L-オルニチンフェニルアセテートは、肝性脳症を治療するために対象に組み合わせて
投与することができる。L-オルニチンフェニルアセテートは、肝性脳症に苦しむ患者の
状態を改善するために投与することができる。L-オルニチンフェニルアセテートは、肝
性脳症に伴う症状を緩和させるために投与することができる。L-オルニチンフェニルア
セテートは、肝性脳症と闘うために投与することができる。L-オルニチンフェニルアセ
テートは、肝性脳症エピソードのリスクがあるヒトの初期肝性脳症エピソードの可能性を
防止または軽減するために投与することができる。L-オルニチンフェニルアセテートは
、肝性脳症エピソードのリスクがあるヒトの初期肝性脳症エピソードの重症度を軽減する
ために投与することができる。L-オルニチンフェニルアセテートは、肝性脳症エピソー
ドのリスクがあるヒトの初期肝性脳症エピソードを遅延させるために投与することができ
る。
【0137】
肝臓代償不全および肝性脳症の発症は一般に、「誘発事象」(または「急性発作」)を
伴う。そうした誘発事象には、胃腸出血、感染症(敗血症)、門脈血栓症および脱水が含
まれる。そうした急性発作の発症は、入院に至る可能性がある。患者は、これらの急性発
作の1つまたはこれらの急性発作の組合せに苦しむ可能性がある。
【0138】
急性発作起こすかまたは起こしたことが疑われる患者を、L-オルニチンフェニルアセ
テートを用いて本発明にしたがって治療して、肝臓が代償不全状態へと進行する可能性を
防止または軽減させる。その結果として、L-オルニチンフェニルアセテートは、肝性脳
症などの肝臓代償不全の医学的結果の可能性を防止または軽減させることができる。L-
オルニチンフェニルアセテートは、肝機能を保持するために使用することができる。した
がって、L-オルニチンフェニルアセテートの使用は、肝疾患を有する患者の生活にまで
拡大される。一実施形態では、高アンモニア血症などの胃腸出血、ヒポイソリューケミア
(hypoisoleucemia)および出血後の期間の低タンパク質合成の代謝結果がもたらされる
のを防止する。
【0139】
一般に、対象の治療は、誘発事象(急性発作)が発現しているかまたはその発現が疑わ
れた後、できるだけ速やかに開始される。対象の治療は、急性発作が繰り返される前に開
始されることが好ましい。対象の治療は、最初の急性発作に続いて開始されることがより
好ましい。したがって、いくつかの実施形態では、L-オルニチンフェニルアセテートで
治療される対象は、誘発事象(急性発作)が発現しているかまたはその発現の疑いがある
ことが特定されている。
【0140】
治療は通常、急性発作が始まった後、早急になされる。治療は、例えば内科医などの医
者、診療補助者または看護婦によって、急性発作の症状または急性発作の疑いが検出され
た後、開始され得る。治療は、対象が入院したら開始することができる。したがって、治
療を、急性発作の症状または急性発作の疑いが検出された後、6時間以内、3時間以内、
2時間以内または1時間以内に開始することができる。したがって、対象の治療を、急性
発作の症状または急性発作の疑いが検出された後、1~48時間、例えば1~36時間ま
たは1~24時間で開始することができる。
【0141】
治療は、急性発作の症状または急性発作の疑いが検出された後、最大で8週間、例えば
最大で6週間、最大で4週間または最大で2週間行うことができる。したがって、治療は
、急性発作の症状または急性発作の疑いが検出された後、最大で48時間、例えば最大で
36時間または最大で24時間行うことができる。一般に、治療は、急性誘発事象からの
回復が明らかになる時まで行う。
【0142】
L-オルニチンフェニルアセテートは、高アンモニア血症を治療または改善するために
も用いることができる。したがって、L-オルニチンフェニルアセテートは、過剰の血中
アンモニア濃度を有すると特定された患者、または過剰の血中アンモニアの症状を示す患
者に投与することができる。L-オルニチンフェニルアセテートは、高アンモニア血症の
リスクを低下させるためにも投与することができる。いくつかの実施形態では、L-オル
ニチンフェニルアセテートは、無期限に毎日投与することができる。例えば、1日の服用
量を、一生患者に投与するか、または、患者に高アンモニア血症のリスクがもはや見られ
ないと内科医が判断するまで投与することができる。いくつかの実施形態では、治療有効
量のL-オルニチンフェニルアセテートを投与すると、高アンモニア血症のリスクが軽減
される。いくつかの実施形態では、治療有効量のL-オルニチンフェニルアセテートを、
高アンモニア血症の予防のために経口で投与する。
【0143】
治療有効量のL-オルニチンフェニルアセテートを対象に投与する。当業者には容易に
分かるように、投与されるインビボでの有用な投薬量および具体的な投与方式は、年齢、
体重、苦痛の重症度および治療を受ける哺乳類種、使用する具体的な化合物ならびにその
ためにこれらの化合物を用いる具体的な使用に応じて変わってくる(例えば、Fingl
ら、1975年、“The Pharmacological Basis of Th
erapeutics”を参照されたい。特に1章、1頁を参照して、この全体を参照に
より本明細書に組み込む)。当業者は、所望の結果を実現するのに必要な投薬量レベルで
ある有効な投薬量レベルの判定を、慣用的な薬理学的方法を用いて実施することができる
。一般に、生産物のヒトへの臨床的応用は、低い投薬量レベルで開始され、所望の効果が
達成されるまで投薬量レベルを増大させてゆく。あるいは、許容されるインビトロでの試
験を用いて、確立された薬理学的方法を用いて本発明により特定された組成物の有用な用
量および投与経路を確立することができる。
【0144】
L-オルニチンフェニルアセテートの典型的な用量は、約0.02~約1.25g/k
g体重(好ましくは約0.1~約0.6g/kg体重)であってよい。したがって、投薬
量は約500mg~約50g(好ましくは約5g~約40g、より好ましくは約10g~
約30g)であってよい。
【0145】
単一の日用量を投与することができる。あるいは、複数用量、例えば2、3、4または
5用量を投与することができる。そうした複数用量を、1か月、2週間または1週間にわ
たって投与することができる。いくつかの実施形態では、単一用量、または2、3、4ま
たは5用量などの複数用量を毎日投与することができる。
【0146】
実施例および実験方法
追加の実施形態を、以下の実施例でさらに詳細に開示する。これらは、特許請求の範囲
を限定しようとするものではない。
【0147】
粉末X線回折(XRPD)
XRPD分析は、Bruker D8 advanceまたはSeimens D50
00を用いて、サンプルを4°~50°2θでスキャニングして実施した。Bruker
D8装置を用いた実施形態では、約5mgのサンプルを、XRPDゼロバックグラウン
ドの単一96ウェルプレートサンプル保持器上で穏やかに圧縮した。次いで、サンプルを
、Bruker D8-Discover回折計に透過モードでロードし、以下の実験条
件を用いて分析した。
オペレーター D8-Discover
生データ由来 BRUKERバイナリV3(.RAW)
走査軸 Gonio
開始位置[°2θ] 4.0000
終了位置[°2θ] 49.9800
ステップサイズ[°2θ] 0.0200
走査ステップ時間[s] 39.1393
走査タイプ 連続
オフセット[°2θ] 0.0000
発散スリットタイプ 固定型
発散スリットサイズ[°] 2.0000
試料長さ[mm] 10.00
受光スリットサイズ[mm] 0.1000
測定温度[℃] 25.00
陽極材料 Cu
K-α1[Å] 1.54060
K-α2[Å] 1.54443
K-β[Å] 1.39225
K-A2/K-A1比 0.50000
発電機設定 40mA、40kV
回折計タイプ 不明
回折計数 0
ゴニオメーター半径[mm] 250.00
焦点距離(Dist. Focus)-発散スリット[mm] 91.00
入射ビームモノクロメーター なし
回転 なし
【0148】
Seimens D5000装置を用いた実施形態では、約5mgのサンプルを、保持
用グリースの薄層を含むスライドガラス上に穏やかに圧縮した。次いでサンプルを反射モ
ードで稼働するSeimens D5000回折計にロードし、回転させながら、以下の
実験条件を用いて分析した。
生データ由来 SiemensバイナリV2(.RAW)
開始位置[°2θ] 3.0000
終了位置[°2θ] 50.000
ステップサイズ[°2θ] 0.0200
走査ステップ時間[s] 0.8
走査タイプ 連続
オフセット[°2θ] 0.0000
発散スリットタイプ 固定型
発散スリットサイズ[°] 1.0000
試料長さ[mm] さまざま
受光スリットサイズ[mm] 0.2000
測定温度[℃] 20.00
陽極材料 Cu
K-α1[Å] 1.54060
K-α2[Å] 1.54443
K-β[Å] 1.39225
K-A2/K-A1比 0.50000(公称)
発電機設定 40mA、40kV
回折計タイプ d5000
回折計数 0
ゴニオメーター半径[mm] 217.50
入射ビームモノクロメーター なし
回折ビームモノクロメーター(黒鉛)
回転 有り
【0149】
単結晶X線回(SXRD)
すべての測定を、Mo-Kα放射線で操作するBruker Smart Apex回
折計を用いて実施した。別段の指定のない限り、データは、2θおよびφの3つの別個の
設定で集めた60ω-スキャン10sイメージで得た。
【0150】
示差走査熱量測定(DSC)
約5mgのサンプルを、アルミ製DSCパン中に量り込み、穴のあいたアルミふた(密
閉せずに)でシールした。次いで、サンプルパンをSeiko DSC6200(冷却器
付き)にロードし、冷却し、25℃で保持した。安定した熱流応答が得られたら、サンプ
ルと標準品を10℃/分の走査速度で約250℃に加熱し、得られる熱流応答をモニター
した。分析する前に、装置を、インジウム参照標準品を用いて温度と熱流について較正し
た。サンプル分析を、熱事象の温度を開始温度の値とするMuse測定ソフトウェアで実
施し、メーカーの仕様書にしたがって測定した。
【0151】
熱重量分析重量/示差熱分析(TG/DTA)
約5mgのサンプルを、アルミ製パン中に量り込み、熱重量/示差熱同時分析器(DT
A)にロードし、室温で保持した。次いで、サンプルを、10℃/分の速度で25℃から
300℃まで加熱した。その間、サンプル重量の変化を熱事象(DTA)とともにモニタ
ーした。パージガスとして窒素を20cm/分の流量で使用した。分析する前に、装置
を、100mg参照重量とインジウム参照標準品をそれぞれ用いて温度と熱流について較
正した。
【0152】
動的蒸気収着(DVS)
約10mgのサンプルを金網式蒸気収着バランスパンに入れ、Scientific
and Medical Systems(SMS)より入手したDVS-I動的蒸気収
着バランスにロードした。次いで、サンプルを、重量変化が認められなくなるまで0%の
湿度環境に保持して乾燥した。次いで、サンプルを、各ステップで安定重量が達成される
まで(99.5%、ステップが完了するまで)サンプルを保持しながら、10%の増分で
0から90%の相対湿度(RH)の傾斜プロファイルにかけた。収着サイクルが完了した
後、同じ手順を用いてサンプルを乾燥した。サンプルの吸湿特性を測定できるようにする
ために、収着/脱着サイクルの間の重量変化をプロットした。
【0153】
H核磁気共鳴(NMR)
H NMRはBruker AC200を用いて実施した。各サンプルのNMRをd
-HOで実施し、各サンプルを約5mgの濃度で調製した。L-オルニチンベンゾエー
トおよびL-オルニチンフェニルアセテートについてのNMRスペクトルを、それぞれ図
21および図22に示す。
【0154】
溶解度近似
おおよそ、25mg部のサンプルをバイアルに入れ、適切な溶媒系を5倍の体積増分で
加えた。各添加の間に、その溶解について混合物をチェックし、溶解が明らかでなかった
場合、混合物を50℃に加温し、再度チェックした。溶解が認められるか、または、10
0倍の体積の溶媒が加えられるまでこの手順を続行した。
【0155】
HPLC溶解度測定
各溶媒のスラリーを調製し、サンプルを25℃で約48時間振とうさせた。次いで、フ
ィルターを通して各サンプルを取り出し、ろ液を分析用のHPLCバイアルに移した。デ
ータから、各溶媒についてのL-オルニチンフェニルアセテートの溶解度を決定した。
【0156】
温度サイクル実験
溶解度近似により集めた情報を用いて、サンプルのスラリーを24の選択された溶媒系
で調製した。スラリーを、4時間サイクルで72時間、40℃または25℃での温度サイ
クルにかけた。固体を、何らかの明白な分解の兆候(すなわち、色の変化)がないか目視
でチェックし、分解していなかったら、ろ過により単離した。分析する前に、固体を周囲
条件で約24時間乾燥させた。
【0157】
急速冷却(Crash Cooling)実験
急速冷却実験を、サンプルの飽和溶液を、4℃および-21℃の環境で約48時間、2
4の選択された溶媒系中に置いて実施した。固体物質をすべて回収し、分析する前に、固
体を周囲条件で約24時間乾燥させた。
【0158】
蒸発実験
蒸発実験を、周囲条件でサンプルの飽和溶液を自由に蒸発させて実施した。次いで、乾
燥するまで蒸発させた後、固体物質を回収して分析した。
【0159】
アンチソルベント添加実験
アンチソルベント添加実験を、アンチソルベントをサンプルの飽和溶液に加えて実施し
た。さらなる沈殿が無くなるまで添加を続行し、サンプルを24時間様々な温度、高周囲
温度、4℃または-21℃に調節した。次いで固体を単離し、周囲条件で約24時間かけ
て乾燥して分析した。
【0160】
偏光顕微鏡法(PLM)
高解像度Leicaカメラおよび画像キャプチャソフトウェア(Firecam V.
1.0)を備えたLeica Leitz DMRB偏光型光学顕微鏡を用いて、結晶性
(複屈折)の存在を判定した。別段の言及のない限り、画像はすべて10×対物レンズを
用いて記録した。
【0161】
銀分析
銀分析はすべてAgilent7500ce ICP-MSで実施した。
【0162】
固有溶解速度
物質を金型(直径12mm)に入れ、液圧プレスで5トンの圧力を約2分間金型にかけ
ることによって、約100mgの各形態を圧縮してディスクにした。溶解装置Sotax
AT7はEP2およびUSP2で適合するものであり、ここでは、パドルを用いて媒体
を攪拌した。各形態を、静止ディスクモード(すなわち、ディスクを時間=0秒の時点で
加え、媒体の底部に沈めた)で、以下のpH条件下、すなわち;1.0、4.5および6
.7で試験した。1cmの分量の媒体を、溶解ポットから10、20、30、40、5
0、60、70、80および120秒の時点で抜き出し、HPLCでAPI濃度を試験し
た。溶解曲線をプロットし、曲線上の最初の6点または7点から、固有溶解速度曲線を算
出した。すべての試験を37℃、150rpmのパドル速度で実施した。
HPLC-UV 装置詳細
装置: Agilent 1200
カラム: Gemini C18、5μm、150.0×4.6mm
カラム温度: 40℃
移動相A: リン酸緩衝液
移動相B: アセトニトリル
溶出: 勾配法
λ: 210nm
注入量: 10μL
流量: 1mL/分
【0163】
薄層クロマトグラフィー(TLC)
サンプルを含む溶液の小スポットを、プレートの基底から約1cmの位置に塗布した。
次いでプレートを、メタノール:酢酸エチル(95:5)の混合溶媒を入れたTLC槽(
密封容器)中に浸漬させる。溶媒は毛細管作用によりプレート上を移動しサンプル混合物
と出会い、この混合物は溶解され、混合溶媒によりプレートの上方へ運ばれる。スポット
数を記録し、各スポットについてR値を算出した。
【0164】
赤外(IR)
赤外線分光分析をBruker ALPHA P分光計で実施した。十分な量の物質を
、分光計のプレート上の中心に置き、以下のパラメーターを用いてスペクトルを得た:
分解能: 4cm-1
バックグラウンド走査時間: 16スキャン
サンプル走査時間: 16スキャン
データ収集: 4000~400cm-1
結果スペクトル: 透過
ソフトウェア: OPUSバージョン6
【0165】
安定性試験:pH1、4、7、10および14の環境
スラリー(過飽和溶液:溶解がそれ以上認められなくなるまで約250μlのpH溶液お
よび固体を加え、約100mgの固体がスラリー中に存在した)を、各形態について、様
々なpH環境、すなわち;1、4、7、10および13.2で調製した。スラリーを14
日間絶えず振とうさせ、7日目と14日目に測定を行った。各pHについて適切な緩衝液
を調製した。さらに詳細に以下で説明する。
【0166】
pH値1を有する緩衝液を、372.75mgの塩化カリウムを25mlの脱イオン水
に溶解して0.2M溶液を得ることによって調製した。続いて、67mlの0.2M塩酸
(これは5M溶液から調製した;10mlを40mlの脱イオン水に加えて1M溶液を得
、これをさらに希釈した;20mlを80mlの脱イオン水に加えて所定の0.2M溶液
を得た)を加えて所望のpHを得た。
【0167】
pH値4を有する緩衝液を、1.02gのフタル酸水素カリウムを50mlの脱イオン
水に溶解して0.1M溶液を得ることによって調製した。
【0168】
pH値7を有する緩衝液を、680.00mgの一塩基性リン酸カリウムを50mlの
脱イオン水に溶解して0.1M溶液を得ることによって調製した。続いて、29.1ml
の0.1M水酸化ナトリウム(これは1M溶液から調製した;5mlを45mlの脱イオ
ン水に加えて所定の0.1M溶液を得た)を加えて所望のpHを得た。
【0169】
pH値10を有する緩衝液を、210.00mgの重炭酸ナトリウムを50mlの脱イ
オン水に溶解して0.05M溶液を得ることによって調製した。続いて、10.7mlの
0.1M水酸化ナトリウム(これは1M溶液から調製した;5mlを45mlの脱イオン
水に加えて所定の0.1M溶液を得た)を加えて所望のpHを得た。
【0170】
pH値13.2を有する緩衝液を、372.75mgの塩化カリウムを25mlの脱イ
オン水に溶解して0.2M溶液を得ることによって調製した。続いて、66mlの0.2
M水酸化ナトリウム(これは1M溶液から調製した;20mlを80mlの脱イオン水に
加えて所定の0.2M溶液を得た)を加えて、pHを13にした。次いで1M水酸化ナト
リウムを滴下して所望のpHを得た。
【実施例1】
【0171】
結晶形態の沈澱化
L-オルニチンフェニルアセテートの飽和溶液に、上記したような温度サイクル、急速
冷却、蒸発またはアンチソルベント添加を施した。沈殿物をPLMおよびXRPDで分析
して結晶形態(もしあれば)を判定した。結果を表5にまとめる。
【0172】
沈殿試験により、6つの独特の結晶形態、形態I~VIを特定した。しかし、形態IV
およびVIは酢酸の溶液から得られ、NMR結果よりこれらの例がL-オルニチン酢酸塩
であることが確認された。その一方、試験540~611では、もともとエタノールアン
チソルベントを添加して単離したL-オルニチンフェニルアセテートのサンプルを用いた
。これらの例の多くは、エタノール溶媒和物である形態Iをもたらした。したがって、こ
れらのサンプルは、もともと残留エタノールを含んでいたと考えられる。したがって、も
とのサンプルが残留エタノールを含んでいない場合、形態Iは特定の条件についてそれを
再現することはできない。
【0173】
【表5】
【実施例2】
【0174】
固有溶解試験
形態I、IIおよびIIIについての固有溶解速度を1.0、4.5および6.7のpH条
件で測定した。結果を下記表6に再現する。それぞれの場合、3分未満で完全な溶解が達
成された。驚くべきことに、形態IIについては、pHとともに固有溶解速度が増大するp
H依存性が観察された。これに対して、形態IおよびIIIは、pHとは独立した速度で溶
解するようである。
【0175】
【表6】
【実施例3】
【0176】
溶解度試験
上記に開示した方法にしたがって、L-オルニチンフェニルアセテートの溶解度の概略
値を得た。24の溶媒系を試験した:1,4ジオキサン、1-ブタノール、エタノール、
アセトン、ベンゾニトリル、シクロヘキサン、DCM、DMSO、EtOAc、ヘプタン
、IPA、IPA(1%HO)、MeCN、MeCn(1%HO)、MEK、MeO
Ac、メタノール、MIBK、ニトロメタン、THF、THF(1%HO)、トルエン
および水。L-オルニチンフェニルアセテートは、水への溶解性を示したが、L-オルニ
チンフェニルアセテートは、残りの溶媒系にはほぼ不溶性であった。
【0177】
L-オルニチンフェニルアセテートの水スラリーも調製し、スラリーをろ過した。ろ液
濃度をHPLCで分析した。結果はL-オルニチンフェニルアセテートの溶解度が約1.
072mg/mLであることを示す。
【0178】
HPLCによる溶解度測定は、5つの溶媒:エタノール、アセトン、メタノール、DM
SOおよびIPAについても実施した。これらの結果を表7にまとめる。
【0179】
【表7】
【0180】
これらの結果は、アセトンとIPAの両方が、アンチソルベントとしてL-オルニチン
フェニルアセテートを沈殿させるのに適していることを示している。これに対して、測定
可能な溶解度を有する溶媒は、結晶形態のL-オルニチンフェニルアセテートを沈殿させ
るのには好都合ではない。
【0181】
最後に、HPLCを用いてIPAと水の様々な混合液へのL-オルニチンフェニルアセ
テートの溶解度を測定した。結果を表8に示す。
【0182】
【表8】
【実施例4】
【0183】
L-オルニチンフェニルアセテートを作製するための小規模回分プロセス
約8.4g(0.049モル)のL-オルニチンHClを42mLのHOに溶解させ
、別途、約11.4gの安息香酸銀を57mLのDMSOに溶解させた。続いて、安息香
酸銀溶液をL-オルニチンHCl溶液に加えた。2つの混合物を一緒にすると発熱的沈殿
により、中間体のクリーム状白色固体(AgCl)が得られた。固体を真空ろ過により除
去すると、ろ液(溶液中のL-オルニチンベンゾエート)が得られた。200mLのIP
Aをろ液に加え、混合物を4℃に冷却した。約3時間後に結晶性固体(L-オルニチンベ
ンゾエート)が沈澱した。これを真空ろ過により単離した。収率:60%
【0184】
7.6g(0.03モル)のL-オルニチンベンゾエートを38mLのHOに溶解し
、約4.4gの酢酸フェニルナトリウムを22mLのHOに溶解した。続いて、酢酸フ
ェニルナトリウム溶液をL-オルニチンベンゾエート溶液に加え、約10分間攪拌した。
約240mLのIPA(8:2 IPA:HO)を加え、溶液を30分間攪拌し、次い
で4℃に冷却した。4℃で約3時間後に結晶性固体が沈澱した(L-オルニチンフェニル
アセテート)。真空ろ過により沈殿物を単離し、48~144mLのIPAで洗浄した。
収率:57%。
【実施例5】
【0185】
L-オルニチンフェニルアセテートを作製するための大規模回分プロセス
L-オルニチンフェニルアセテートの2つの別個のバッチを以下のようにして調製した
【0186】
約75KgのL-オルニチン一塩酸塩を227kgの水に溶解した。得られた溶液に、
266kgのDMSOに溶解した102Kgの安息香酸銀を室温で2時間以内に加えた。
最初に、激しい発熱が観察され、塩化銀が沈澱してきた。次いで、溶液を含む受器を、反
応マスに加えた14KgのDMSOで洗浄した。生成した塩化銀を除去するために、反応
マスを、10kgのセライト(Celite)と1mmのGAFフィルターで作製したレンズフ
ィルターでろ過した。ろ過後、フィルターを追加の75kgの水で洗浄した。次いで反応
マスを35±2℃で加熱し、80kgの酢酸フェニルナトリウムを加えた。この時点で、
反応マスを35±2℃で少なくとも30分間攪拌した。
【0187】
最終APIを沈澱させるために、353kgのイソプロピルアルコールを反応マスに加
えた。次いで反応マスを6時間以内に0±3℃に冷却し、1時間攪拌し、次いで生成物を
遠心分離機で単離した。
【0188】
約86kgの最終湿潤生成物を得た。次いで、生成物を40±5℃で約6.5~8時間
かけて乾燥して約75kgのL-オルニチンフェニルアセテートを得た。収率:63.2
5。表9に最終生成物に関する測定をまとめる。
【0189】
【表9】
【実施例6】
【0190】
L-オルニチンフェニルアセテート中の銀含量の低減
実施例5からのバッチ2は多量の銀(157ppm)を示した。したがって、銀含量を
低減させるための手順を試験した。9つの試行を実施した;それぞれ概略、バッチ2から
の約20gのL-オルニチンフェニルアセテートを1.9部の水に溶解するステップと、
次いで10.8部のIPAを加えるステップを含む。結晶形態はろ過により0℃で単離し
た。
【0191】
4つの試行については、8.0mgまたは80mgの重金属捕捉剤SMOPEX102
またはSMOPEX112をその水溶液に加え、2時間攪拌した。捕捉剤は、銀含量を1
26ppm未満に低減することはできなかった。その一方、他の試行では上記に開示した
一般条件を施して銀含量は179ppmに減少した。さらに他の試行では、L-オルニチ
ンフェニルアセテートを、結晶化させるのではなく、IPAの溶液中にスラリー化した。
この試行でも銀含量を144ppm未満に低減することはできなかった。
【0192】
最後の3つの試行では、希薄HClを溶液に加えて残留量の銀をAgClとして沈澱さ
せた。次いで沈殿物を の前にろ過により除去した。3つの試行は:(1)20℃で1
.0gの0.33%HCl;(2)30℃で1.0gの0.33%HCl;および(3)
20℃で0.1gの3.3%HClを加えることを含んだ。3つの試行により、銀含量は
それぞれ30ppm、42ppmおよび33ppmに低減され、各試行により90%超の
L-オルニチンフェニルアセテートが得られた。したがって、HClの添加は、残留する
銀の量を低減させるのに効果的であった。
[実施例6]
【0193】
中間塩なしでL-オルニチンフェニルアセテートを調製するためのプロセス
一般的手順として、L-オルニチン塩酸塩を溶媒に懸濁させた。次いで反応マスを加熱
し、塩基、ナトリウムメトキシドを加えた。NaClが生成し、これをろ過により系から
除去した。反応マスを冷却し、L-オルニチンフェニルアセテートを生成させるためにモ
ル当量のフェニル酢酸を反応マスに加えた。最終生成物を単離し、洗浄し乾燥した。この
プロセスについての試行のまとめを表10に示す。
【0194】
【表10】
【0195】
得られたL-オルニチンフェニルアセテートは多量のクロリド(少なくとも約1重量%
)を示すことが分かった。これは同様の量のナトリウムを含むと推定される。試行2、4
および5についての収率は約50%であった。
【実施例7】
【0196】
形態I、IIおよびIIIの熱安定性試験
形態I、IIおよびIIIのサンプルを高い温度で保存した。指定した条件の概要を表11
に示す。600psiに真空をかけて減圧を達成した。その物質のいかなる変化も測定す
るため、最終組成物をXRPD、NMR、IRおよびHPLCにより試験した。
【0197】
最も顕著には、形態IIIは真空下、120℃で形態IIに転移しないが、これらの条件下
での形態IおよびIIと比べてより顕著な化学的分解を示す。その一方、形態IIIは形態II
に転移し、真空をかけないで、120℃で実質的な化学的分解を示す。
【0198】
形態Iは、すべての試行において形態IIに転移したが、非常に興味深いことに、形態I
は真空をかけないで、120℃で実質的な化学的分解を示す。したがって、形態Iからの
転移は、形態IIと同じような化学的安定性を示さない。これは、その物質が容易に形態II
に転移することを考慮すると驚くべきことである。
【0199】
すべての試行において、形態IIは安定であり、化学的に分解しなかった。したがって、
形態IIは最も安定な形態である。その一方、形態IIIは形態Iより安定であるがどちら形
態も、真空をかけないで、120℃で実質的な化学的分解を示す。
【0200】
【表11】
【0201】
化学的分解を示す試行(例えば、表11からの試行10)についてのHPLC結果を表
12にまとめる。それぞれの分解物質は、1.9、2.2、2.4および2.7の相対保
持時間(RRT)で共通ピークを示す。これは、様々な形態について分解経路が共通して
いることを示唆している。
【0202】
【表12】
【実施例8】
【0203】
形態I、IIおよびIIIの酸素安定性試験
形態I、IIおよびIIIのサンプルを、100%酸素環境中に7日間または14日間保存
し、NMRおよびIRで分析した。結果は、形態IおよびIIが14日後でも分解の兆候を
見せていないことを立証している。IR結果だけは形態IIIについて7日間で完了した。
これらの結果は有意の分解が認められないことを確認するものである。すべてのサンプル
についてのTLC結果は、類似したR値を有する単一スポットを示した。
【実施例9】
【0204】
形態I、IIおよびIIIのUV安定性試験
形態I、IIおよびIIIのサンプルを紫外線(UV)照射に7日間または14日間曝露し
た。CAMAGユニバーサルUVランプで、サンプルに、254mμの設定で照射した。
NMRおよびIR結果では、14日後で形態IおよびIIの分解は認められない。同様に
、形態IIIは、NMRおよびIRで測定して7日後で分解は認められない。すべてのサン
プルについてのTLC結果は、類似したR値を有する単一スポットを示した。
【実施例10】
【0205】
形態I、IIおよびIIIのpH安定性試験
形態I、IIおよびIIIのスラリーを、水を用いて生成させ、pH値を1.0、4.0、
7.0、10.0および13.2に調節した。スラリーを7日間または14日間保存し、
次いで固体をろ過により除去した。すべてのサンプルにおいて形態Iは形態IIに転移し
た。NMRおよびIR結果は、形態IおよびIIが様々なpHで14日間でも分解しなかっ
たことを示しており、同様にHPLC結果は、これらのサンプルについて約98%以上の
純度であることを示している。NMRおよびIR結果によって、形態IIIも7日後、やは
り分解していないことが示された。HPLC試験は約95%以上の純度を示しているが、
IR結果は7日間の試験で形態IIIが形態IIに転換したことを示している。すべてのサン
プルについてのTLC結果は、類似したR値を有する単一スポットを示した。
【実施例11】
【0206】
形態I、IIおよびIIIの圧縮試験
形態I、IIおよびIIIのサンプルに、Moore液圧プレスを用いて3トンの力を約9
0分間かけた。得られた錠剤の質量、直径および厚さを測定して密度を求めた。錠剤を、
NMRおよびIRによっても分析した。形態Iは、1.197kg/mの密度を有する
形態IIの組成物に転移した。形態IIは転移を示さず、1.001kg/mの最終密度
を有した。最後に、形態IIIは転移を示さず、1.078kg/mの最終密度を有した
【実施例12】
【0207】
酢酸中間体を介してL-オルニチンフェニルアセテートを製造するためのプロセス
25mgのL-オルニチンHClを5倍体積のHOに溶解し、次いで過剰の酢酸(約
5倍体積)を加えてスラリーを生成させた。スラリーを、25℃から40℃の温度サイク
ルに、4時間ごとに約3日間かける。1当量のフェニル酢酸(L-オルニチンに対して)
を加え、約4~6時間攪拌する(場合により加熱して)。アンチソルベントとしてIPA
を用い、70:30(IPA:HO)の比を得るのに十分な量加える。真空ろ過により
単離し、80℃で約4~8時間乾燥して残留酢酸を除去する。
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