(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】二水素製造器
(51)【国際特許分類】
C01B 3/26 20060101AFI20220610BHJP
B01J 35/04 20060101ALI20220610BHJP
B01J 21/18 20060101ALI20220610BHJP
H01M 8/0606 20160101ALI20220610BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20220610BHJP
【FI】
C01B3/26
B01J35/04 A
B01J21/18 M
H01M8/0606
H01M8/04 J
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020119129
(22)【出願日】2020-07-10
【審査請求日】2020-09-09
(32)【優先日】2019-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンサン・フォシュー
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ・ブランショ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・カプロン
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム・ドゥルマ
(72)【発明者】
【氏名】イザベル・ルジョー
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-514825(JP,A)
【文献】国際公開第2019/077024(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/077023(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/090326(WO,A1)
【文献】特開2003-321202(JP,A)
【文献】特開2007-000774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00 - 3/58
B01J 21/00 - 38/74
H01M 8/0606
H01M 8/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二水素製造器(5)であって、
・触媒と接触して二水素を生成することができる反応性液体(30)を収容するための筐体内部空間(15)を画定する筐体(10)と、
・筐体内部空間に収容された触媒担体(20)であって、多孔質であり、反応性液体によって含浸可能であり、反応性液体から二水素を生成する反応のための触媒を含む、触媒担体(20)と、
・加熱手段(70)とを含み、
触媒担体は、反応性液体との対流熱交換および反応性液体との伝導熱交換および触媒担体から離れた熱源からの放射からなる熱伝達以外の加熱手段によって加熱されるように構成されており、
触媒担体は、
グラファイトの形態の炭素、および/または、
金属
である導電性材料で作られた固体発泡体を含み、
二水素製造器は、筐体内部空間内部に収容された触媒ハウジング(100)を含み、触媒ハウジングは、触媒担体(20)が収容される触媒チャンバ(135)を画定する第1の部分(110)および第2の部分(115)を含み、第1および第2の部分は、触媒チャンバが気密封止されている閉位置と、触媒チャンバが筐体内部空間と流体連通している開位置との間で互いに対して移動可能である、二水素製造器(5)。
【請求項2】
加熱手段が、ジュール効果により触媒担体を加熱するように構成される、請求項1に記載の二水素製造器。
【請求項3】
加熱手段が、触媒担体に電気的に接続された電流発生器(25)を含む、請求項2に記載の二水素製造器。
【請求項4】
加熱手段が、触媒担体に電流を誘導するように構成された電磁界発生器(80)を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の二水素製造器。
【請求項5】
加熱手段が、少なくとも1つの集束マイクロ波を触媒担体中に放出するように構成されたマイクロ波発生器を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の二水素製造器。
【請求項6】
金属が、鉄、コバルト、銅、アルミニウム、ニッケル、マグネシウム、マンガンおよびそれらの合金から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の二水素製造器。
【請求項7】
触媒担体が、発泡体の細孔壁を少なくとも部分的にまたは完全に覆う、触媒を含
む触媒コーティングを有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の二水素製造器。
【請求項8】
触媒が
、プラチノイド金属である、請求項1から7のいずれか一項に記載の二水素製造器。
【請求項9】
筐体が
、リッチ液体有機水素キャリアである反応性液体を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の二水素製造器。
【請求項10】
導電性材料が、250Ω
-1.m
-1より大きい導電率を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の
二水素製造器。
【請求項11】
導電性材料が、1000Ω
-1.m
-1より大きい導電率を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の
二水素製造器。
【請求項12】
導電性材料が、2500Ω
-1.m
-1より大きい導電率を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の
二水素製造器。
【請求項13】
発泡体が、500μmより大きい平均孔径を示す、請求項1から12のいずれか一項に記載の
二水素製造器。
【請求項14】
エネルギー発生装置(335)およびエネルギー発生装置に二水素を供給するための、請求項1から13のいずれか一項に記載の二水素製造器(5)を含む装置(330)であって、二水素の反応による熱および/または電流の形態のエネルギーを形成するように構成され
る、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応性液体の触媒反応による二水素製造器、および二水素を生成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体有機水素キャリア(LOHC)は、水素を凝縮された形態で貯蔵するために使用され得る。
【0003】
LOHCは、燃料電池において電力を生成する目的で工業規模で水素を貯蔵する有望な方法である。
【0004】
液体有機水素キャリアは、H2リッチ形態と呼ばれる水素に富んだ状態、またはH2リーン形態と呼ばれる水素に乏しい状態にある。リッチLOHCは、関連するリーンLOHCの水素化によって得られ、一般に水の加水分解から生じる二水素を使用する。
【0005】
したがって、LOHC内部では、水素を、有利には、液体状態で安定な分子構造内で、室温および大気圧で貯蔵することができる。LOHCは、自動車において、特に電気自動車において、特に燃料電池と組み合わせて使用するのに特に適している。このように使用するには、車両の起動時間が1秒程度であるため、リッチLOHCをほぼ瞬時に脱水素する必要がある。
【0006】
リッチLOHCの脱水素反応は、通常、触媒の存在下で加速される。それは吸熱性でもある。したがって、脱水素を開始するためには、リッチLOHCを加熱する必要があり、それは通常150℃を超える温度である。
【0007】
米国特許出願公開第2018/0290116号明細書は、リッチLOHCおよび触媒を含む混合物が設置される筐体を備えた脱水素反応器を開示する。伝熱流体を筐体に運搬してリッチLOHCを加熱するためにチューブが使用される。ただし、触媒による脱水素を開始するには、リッチLOHCの全容量を加熱する必要があるため、米国特許出願公開第2018/0290116号明細書の脱水素反応器は、二水素の迅速な生成を必要とする用途には適していない。さらに、リッチLOHCの一部だけを脱水素化する場合でも、リッチLOHCの全容量を加熱する必要がある。最後に、リッチLOHCの全容量を急速に冷却することは難しいため、脱水素反応をすばやく停止することはできない。
【0008】
米国特許出願公開第2013/0197109号明細書は、リザーバーからのリッチLOHCが循環する供給チャネルを備えた反応器について説明する。リッチLOHCを加熱するために、加熱手段が供給チャネルの半径方向外側に配置されている。次いで、リッチLOHCは、アルミナおよび白金で形成された粒子を含む多孔質膜を通過し、その中で脱水素化される。次に、形成された二水素は、リーンLOHCから分離される。加熱手段は、供給チャネルを通って流れる液体のみを加熱するので、リッチLOHCリザーバーの全容量を加熱する必要がない。しかしながら、リッチLOHCの加熱が効果的であるためには、LOHCが供給チャネルを通って流れるよりもかなり前に加熱手段が設定温度に到達することが必要である。米国特許出願公開第2013/0197109号明細書の反応器は、上述した自動車用途での水素の瞬間的な要求を満たすことができない。さらに、膜は、LOHCの脱水素反応速度を遅くする圧力降下を引き起こす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許出願公開第2018/0290116号明細書
【文献】米国特許出願公開第2013/0197109号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、上記の欠点を克服する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の態様によれば、本発明は、以下を含む二水素(dihydrogen)製造器を提案する。
・触媒と接触して二水素を生成することができる反応性液体を収容するための筐体内部空間を画定する筐体、
・筐体内部空間に収容された触媒担体であって、多孔質であり、反応性液体により含浸可能であり、反応性液体から二水素を生成する反応のための触媒を含む、触媒担体、
・加熱手段、
ここで、触媒担体は、反応性液体との対流熱交換および反応性液体との伝導熱交換および触媒担体から離れた熱源からの放射からなる熱伝達以外の加熱手段によって加熱されるように構成される。
【0012】
好ましくは、一実施形態によれば、加熱手段は、ジュール効果によって触媒担体を加熱するように構成され、触媒担体は導電性材料を含む。そのような加熱手段は、二水素製造器に容易に組み込まれ、二水素の発生を誘発するのに十分な量の熱を触媒担体内で迅速に生成する。
【0013】
特に、加熱媒体は抵抗性であってよい。それは、触媒担体に電気的に接続された電流発生器を含んでよい。したがって、電流発生器によって生成された電流が触媒担体を通って流れるとき、触媒担体はジュール効果によって加熱される。電流発生器は、電池であってよく、または電源に接続されていてもよい。たとえば、それは電源コンセントに差し込まれている。
【0014】
あるいは、加熱媒体は誘導性であってよい。それは、触媒担体内に電流を誘導するように構成された電磁場発生器を含んでよい。結果的に、触媒担体は、電磁界によって誘導された電流から生じるジュール効果によって加熱される。特に、電界発生器は、触媒担体から離れていてもよい。それは、好ましくは、触媒担体へのいかなる電気的接続も持たない。
【0015】
別の実施形態によれば、加熱手段は、マイクロ波加熱手段であってよい。それは、少なくとも1つの集束マイクロ波を触媒担体に放出するように構成されたマイクロ波発生器を含み得る。結果的に、触媒担体は、マイクロ波とそれを構成する材料との相互作用によって加熱される。「マイクロ波」とは、0.3GHz~1THzの間の波長を有する波を意味する。
【0016】
第2の態様によれば、本発明は、以下を含む二水素製造器に関する。
・触媒と接触して二水素を生成することができる反応性液体を収容するための筐体内部空間を画定する筐体;
・筐体内部空間に収容された触媒担体であって、多孔質であり、反応性液体によって含浸可能であり、反応性液体から二水素を生成する反応のための触媒を含み、導電性材料を含むか、または導電性材料からなる、触媒担体;
・ジュール効果によって触媒担体を加熱するために触媒担体に電気的に接続された電流発生器。
【0017】
本発明の第1および第2の態様のいずれか1つによる二水素製造器は、触媒担体の特に迅速な加熱を可能にする。反応性液体は、それが担体に含浸するときに、周囲の触媒担体によって加熱され、反応性液体からの二水素の生成は、触媒との接触時に急速に起こる。このようにして、二水素製造器は、それが接続されている燃料電池などの発電装置に、要求に応じて、例えば5秒未満で、さらには1秒未満で、電力を供給することができる。
【0018】
本発明の第1および第2の態様のいずれか1つによる二水素製造器は、単独でまたは組み合わせて、以下に記載される下記の任意の特徴の少なくとも1つを有し得る。
【0019】
触媒担体は多孔質である。好ましくは、触媒担体は固体発泡体を含む。
【0020】
発泡体は、60%~99%の間の多孔度を有してよい。
【0021】
平均細孔径は、好ましくは500μmより大きい。これは、発泡体の細孔への反応性液体の含浸速度を促進し、必要であれば、細孔内への触媒の堆積を促進する。
【0022】
「細孔径」は、細孔の最大寸法である。細孔径は、発泡体表面の画像を分析することで測定できる。「平均細孔径」は、細孔径の算術平均である。
【0023】
発泡体は、円筒形の回転体または球形または環状または平行六面体の形状であってよい。
【0024】
発泡体の体積は、10cm3から10dm3の間であってよい。
【0025】
好ましくは、発泡体と含浸された反応性液体との間の熱交換を促進するために、発泡体材料は熱伝導性である。好ましくは、二水素の生成の開始の間、反応性液体の温度の上昇を加速するために、発泡体材料は2W・m-1・K-1より大きい熱伝導率を有する。
【0026】
発泡体は、導電性材料で作られていてよい。したがって、発泡体は、電流発生器を用いてジュール効果によって加熱することができる。好ましくは、導電性材料は、250 Ω-1・m-1より大きく、好ましくは1000 Ω-1・m-1より大きく、好ましくは2500 Ω-1・m-1より大きい導電率を有する。したがって、電流が流れるとき、発泡体の容積内で温度を均一にすることができる。発泡体の最も高温の領域と最も低温の領域との間の温度差は、10℃未満であってよい。その結果、過度の温度に起因する反応性液体の劣化を回避することができる。特に、反応性液体がLOHCである代替法では、水素キャリア構造の劣化が回避されるので、リッチLOHCの脱水素およびリーンLOHCの水素化の数サイクルを実行し得る。また、LOHCの分解による二水素以外のガスの発生を回避することができる。
【0027】
導電性材料は以下であってよい:
・炭素、特にグラファイトの形態の炭素、および/または
・金属、特に鉄、コバルト、銅、アルミニウム、ニッケル、マグネシウム、マンガンおよびそれらの合金から選択される金属。
【0028】
あるいは、発泡体は、電気絶縁材料、特にセラミック、ガラス、熱可塑性ポリマーおよびそれらの混合物から選択される電気絶縁材料で作製されてよく、発泡体の細孔壁は、少なくとも部分的に導電性の、特に金属のコーティングで覆われている。したがって、導電性コーティングは、電流発生器を用いてジュール効果によって加熱することができ、蓄積した熱を発泡体に伝達する。
【0029】
好ましくは、電気絶縁材料は、セラミック、例えばアルミナである。
【0030】
導電性コーティングは、上記の導電性材料から形成することができる。
【0031】
触媒担体は触媒を含む。
【0032】
好ましくは、触媒は、好ましくは白金、パラジウム、ロジウム、イリジウムおよびそれらの合金から選択されるプラチノイド金属で作られる。
【0033】
好ましくは、触媒担体は、発泡体の細孔壁を少なくとも部分的にまたはさらには完全に覆う、好ましくは触媒によって形成される、触媒コーティングを含む。したがって、触媒担体に含浸された反応性液体は、見かけ上広い触媒表面積に接近することができ、二水素生成の反応を加速する。
【0034】
導電性コーティングは、発泡体と触媒コーティングとの間に配置することができる。 あるいは、導電性コーティングは、好ましくは白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムおよびそれらの混合物から選択される少なくとも1つの金属である触媒コーティングによって形成される。
【0035】
触媒担体は、電流発生器に接続された電気コネクタを含むことができ、導電性コーティングは、電気コネクタ間の電気回路を画定する。電気コネクタは、発泡体または導電性コーティングに溶接されてもよい。
【0036】
好ましくは、触媒担体は、その温度がジュール効果により、5秒未満、好ましくは2秒未満、またはさらには1秒未満で、150℃を超えておよび/または350℃未満に上昇するように構成され、それを通過する電流の通過に続いて、電流は1Aから1000Aの間に含まれる強さを有し、10Vから500Vの間に含まれる電圧で生成される。
【0037】
触媒担体は、0.01Ωよりも大きい、例えば25Ωに等しい電気抵抗を有してよい。
【0038】
電流発生器は、10Wから50kWの間に含まれる、例えば約10kWの電気出力を生成するように構成されてよい。それは、1Aから1000Aの間の、例えば20Aに等しい強度の電流を、10Vから500Vの間の電圧で生成するように構成されてよい。
【0039】
筐体内部空間は、反応性液体を含むことができる。
【0040】
反応性液体は、リッチ液体有機水素キャリア、水素化物水溶液、特に水素化ホウ素、およびそれらの混合物から選択することができる。反応性液体はメタノールとは異なってよい。
【0041】
好ましくは、反応性液体は、リッチ液体有機水素キャリアである。リッチ液体有機水素キャリアは、トルエン、ナフタレン、H0-DBTとも呼ばれるジベンジルトルエン、H0-NECとも呼ばれるN-エチルカルバゾール、およびそれらの混合物から選択することができる。
【0042】
リッチな液体有機水素キャリアは、リーン液体有機水素キャリアと関連付けられる。特に:
・トルエンは、メチルシクロヘキサンと関連付けられ、
・ナフタレンは、デカリンと関連付けられ、
・ジベンジルトルエンは、H18-DBTとも呼ばれるペルヒドロジベンジルトルエンと関連付けられ、
・N-エチルカルバゾールは、H12-NECとも呼ばれるドデカヒドロ-N-エチルカルバゾールと関連付けられる。
【0043】
さらに、製造器は、好ましくは、筐体内部空間に収容された触媒ハウジングを含み、触媒ハウジングは、触媒担体が収容される触媒チャンバを画定する第1および第2の部分を含み、第1および第2の部分は、触媒チャンバが密封されている閉位置と、触媒チャンバが筐体内部空間と流体連通している開位置との間で、互いに対して移動可能である。
【0044】
「開位置」は、触媒チャンバが内部空間と流体連通している任意の位置を意味する。 二水素製造器は、第1の部分と第2の部分との間の距離および/または角度によって互いに異なるいくつかの開位置に配置され得る。特に、二水素製造器は、互いに異なる第1および第2の開位置に配置されてよく、第1の開位置で反応性液体に接近可能な触媒チャンバの容積は、第2の開位置で反応性液体に接近可能な触媒チャンバの容積とは異なる。このようにして、二水素生成の動力学、特に二水素の流量は、2つの異なる開位置の間で第1および第2の部分を互いに対して移動させることによって変更することができる。これにより、発生する二水素の流量を変更することができる。特に、開位置は、アクチュエータのストロークに到達する極端な開位置であってもよい。
【0045】
二水素の生成は、触媒ハウジングによって有利に調整することができる。特に、それはほぼ瞬時に停止する場合がある。例えば、二水素の発生を防止するために、触媒ハウジングを閉位置に配置することができる。二水素発生が必要な場合、例えば二水素製造器が接続されている燃料電池の要求に応じて、触媒ハウジングを開位置に配置して、反応性液体が触媒担体に含浸され、触媒と接触し、触媒の効果の下で反応することができるようにしてよい。
【0046】
好ましくは、触媒ハウジングの閉構成で測定された、触媒チャンバの体積の、触媒担体の体積に対する比は、1%より大きく、好ましくは10%より大きい。したがって、二水素発生の間、触媒ハウジングを閉めた後、触媒チャンバに含まれ、二水素生成に利用可能な反応性液体の体積は少ない。結果的に、二水素の発生はほぼ瞬時に停止する。
【0047】
第1および第2の部分は、X軸に沿って並進移動可能であるか、および/または互いに対してX軸の周りを回転移動可能であってよい。
【0048】
ハウジングが配置される、すなわち開位置または閉位置に配置される構成は、筐体内の二水素圧力に依存する場合がある。
【0049】
二水素製造器は、第1および第2の部分に取り付けられ、開位置で圧縮された戻り部材を有し得る。結果的に、リッチLOHCと触媒との間の接触に続いて、生成された二水素の圧力は筐体内で増加することができ、第1の部分または第2の部分の二水素圧力によって誘発される力は、戻り部材の圧縮力よりも大きくなる場合があり、ハウジングが閉じるまで、第2の部分に対する第1の部分の動きを誘発する。
【0050】
戻り部材の剛性は、閉鎖圧力を規定するように予め決定され得、その圧力よりも高いか低いかにより触媒ハウジングがそれぞれ開閉される。したがって、二水素製造器によって生成される二水素の流量は、意図される用途に適合され得る。
【0051】
戻り部材は、ばね、特にらせんばね、または弾性膜、特に、力が膜に長手方向に加えられたときにねじれおよび/または圧縮の効果によって長さが減少するものであってよい。
【0052】
好ましくは、触媒ハウジングは、筐体内部空間に配置される。これにより、開位置にある筐体の内部空間への触媒ハウジングの流体接続が容易になる。
【0053】
好ましくは、内部空間は反応性液体を含み、触媒ハウジングは完全に反応性液体に浸される。このような構成では、特に筐体内の二水素の圧力によって触媒ハウジングにどのような圧縮力も生じない場合に、二水素の生成を容易に停止できる。
【0054】
好ましくは、触媒担体は、第1または第2の部分に、特に接着またはねじ止めによって固定される。
【0055】
触媒担体は、開位置から閉位置に移動するときに、筐体に対して移動可能または固定されていてよい。
【0056】
開構成では、触媒ハウジングは、触媒ハウジングに出入りする反応性液体の流れのための少なくとも1つの開口を画定する。触媒ハウジングは、触媒担体に向かう反応性液体の流れを促進するために、好ましくは触媒ハウジングの異なる側に配置された、少なくとも2つの開口部を有することができる。
【0057】
要求に応じて触媒ハウジングを開閉するために、二水素製造器は、触媒システムに接続され、触媒システムを開位置および/または閉位置に配置するように構成されたアクチュエータと、アクチュエータを制御する制御ユニットとを備えることができる。触媒ハウジングの開閉は、筐体内の二水素圧力とは無関係に制御できる。
【0058】
アクチュエータは、触媒ハウジングに取り付けることができる。アクチュエータは、第1の部分および/または第2の部分に取り付けられてよい。
【0059】
アクチュエータは、触媒担体に取り付けられてもよい。
【0060】
アクチュエータは以下から選択できる:
・シリンダー、特に油圧シリンダーまたは電気シリンダーまたは空気圧シリンダー、
・電気モーター、例えばステッピングモーター、
・ピストンがソレノイド内で移動可能な磁気ピストンシリンダー、および
・電磁石。
【0061】
好ましくは、触媒システムの開位置および閉位置の少なくとも一方において、シリンダーの少なくとも一部が触媒チャンバ内に配置される。したがって、反応性液体に接近可能な筐体の容積へのアクチュエータの侵入は制限される。
【0062】
二水素製造器は、触媒ハウジングを開位置または閉位置に配置するために、アクチュエータを制御するための制御ユニットを含み得る。制御ユニットは、触媒ハウジングを開位置または閉位置に配置するために、好ましくは電気的な制御信号を発するように構成され得る。
【0063】
制御ユニットは、少なくとも1つの制御パラメータによって、少なくとも1つのパラメータ化された制御モードに従ってアクチュエータを制御するように構成され得る。
【0064】
制御モードは、以下で説明するように、調整制御モード、または調整制御モードとは異なる特定の制御モードであってよい。
【0065】
制御ユニットは、好ましくは、制御モードの少なくとも1つを実施するための、制御プログラムと呼ばれるコンピュータプログラムを実行するのに適したプロセッサを含む。
【0066】
特に、制御モードに応じて、1つまたは複数の制御パラメータは、好ましくは少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの制御パラメータを含む。
【0067】
好ましくは、制御ユニットは、制御比較と呼ばれる、制御される少なくとも1つの変数と少なくとも1つの制御パラメータとの比較を実行するように構成され、制御比較の結果に応じて制御信号を送信するように構成される。
【0068】
好ましくは、制御モードは、第1および第2の制御パラメータを含む制御パラメータによってパラメータ化され、制御ユニットは、制御される変数を受け取り、触媒システムが、制御される変数が第1の制御パラメータよりも小さく、第2の制御パラメータよりも大きいとき、それぞれ、第1の位置および第2の位置に配置されるようにアクチュエータを制御するように構成される。第1および第2の位置は、好ましくは互いに異なる開位置であってよい。好ましい代替例では、第1の位置は開位置であり、第2の位置は閉位置である。
【0069】
制御される変数は、筐体内部空間における二水素の圧力、二水素製造器が流体連通している装置、好ましくは燃料電池における二水素の圧力、発生する二水素の流量および温度、例えば、液体の温度または触媒の温度または装置の周囲の温度から選択することができる。
【0070】
好ましくは、調整される変数は内部空間の二水素圧力であり、第1および第2の制御パラメータはそれぞれ最小調整圧力および最大調整圧力である。
【0071】
最小制御圧力および/または最大制御圧力は、例えば、装置の使用者によって、または二水素製造器によって電力が供給されるエネルギー発生装置によって変更されてよい。したがって、触媒ハウジングの開時間および/または閉時間ならびに二水素の流量が変化する。二水素の流量は、アクチュエータのストロークを調整することによっても変更できる。
【0072】
好ましくは、制御ユニットは、内部空間のガス圧力が最小調整圧力以下または最大調整圧力以上の場合、触媒システムを第1位置または第2位置にそれぞれ配置するように構成される。第1および第2の位置は、開位置であり得る。好ましくは、第1および第2の位置は、それぞれ、開位置および閉位置である。
【0073】
最小調整圧力および/または最大調整圧力は、二水素製造器の使用者によって設定され得る。特に、それらは、二水素製造器が意図される用途に従って決定され得る。有利には、最小および/または最大調整圧力を変更することにより、二水素製造器は、一定の設定点流量および二水素が意図される用途に適合された圧力でのガス発生を確実にすることができる。例えば、最小調整圧力および/または最大調整圧力は、二水素製造器によって二水素が供給される燃料電池などの装置によって制御ユニットに送られてよい。
【0074】
好ましくは、二水素製造器は、内部空間における二水素圧力、二水素製造器が流体連通している装置、好ましくは燃料電池における二水素圧力、生成された二水素の流量、および温度、例えば反応性液体の温度または触媒温度または二水素製造器の環境の温度から選択される変数を測定するための少なくとも1つのユニットを含む。測定ユニットはさらに、前記測定された変数を制御ユニットに送るように構成される。測定ユニットは、制御ユニットに電気的に接続されてもよく、変数の測定値を電気信号として送信するように構成されてもよい。
【0075】
一実施形態では、測定ユニットは内部空間に配置される。
【0076】
二水素製造器は、好ましくは、それぞれが異なる変数を測定するように構成される、少なくとも2つの測定ユニットを有してよい。特に、二水素製造器は、内部空間内のガス圧力を測定するためのユニット、生成されたガスの流量を測定するためのユニット、および温度を測定するための少なくとも1つのユニットを含んでよい。
【0077】
触媒担体は、反応性液体との対流交換によって、および/または反応性液体との伝導熱交換によって、および/または触媒担体から離れた熱源からの放射によって加熱されるようにさらに構成され得る。
【0078】
本発明はさらに、以下を含む二水素を生成する方法に関する:
a)本発明による二水素製造器を提供するステップであって、筐体の内部空間が反応性液体を含んでいる、ステップと、
b)加熱手段により、触媒担体を、反応性液体から二水素を生成するための触媒反応が行われる反応温度以上の温度に加熱するステップ。
【0079】
反応温度は反応性液体の組成に依存し、当業者はそれを通常通りに容易に決定することができる。例えば、リッチLOHCは6.2質量%の二水素を含むH0-DBTである。リッチLOHCの脱水素反応は吸熱反応であり、二水素1モルあたり約70キロジュール(kJ・mol-1 H2)の脱水素エンタルピーによって特徴づけられる。5質量%を超える二水素を含むリッチLOHCの脱水素エンタルピー値は、通常25kJ・mol-1 H2から100kJ・mol-1 H2の間に含まれる。
【0080】
反応性液体がリッチLOHCである別の方法では、反応温度は150℃から350℃の間に含まれ得る。
【0081】
二水素の発生前に、チャンバ内部空間の圧力は、1バールから10バールの間であってよい。特に明記しない限り、「圧力」は絶対圧力、つまり真空中でのゼロ圧力を意味する。
【0082】
加熱は、触媒ハウジングを開く前に行うことができる。このようにして、触媒チャンバに入る反応性液体は、加熱された触媒担体と接触し、それにより、二水素発生の触媒反応速度を加速する。
【0083】
好ましくは、本方法は、制御されるべき変数を測定することと、制御される測定された変数の値の関数として触媒ハウジングの開閉を制御することとを含む。
【0084】
特に、方法は、制御される変数の値が、第1の制御パラメータ以下または第1の制御パラメータ以上および第2の制御パラメータ以上であるときに、触媒ハウジングをそれぞれ開く、または閉じることを含む。
【0085】
制御される変数、ならびに第1および第2の制御パラメータは、上記のとおりであってよい。
【0086】
さらに、本発明は、エネルギー発生装置に二水素を供給するための本発明によるエネルギー発生装置および二水素製造器を含む装置に関し、この装置は、二水素の反応によって熱および/または電流の形でエネルギーを生成するように構成される。
【0087】
エネルギー発生装置は、燃料電池または水素燃焼エンジンであり得る。
【0088】
エネルギー発生装置は、二水素製造器による二水素の生成を制御するための制御モジュールを有することができる。
【0089】
装置は、ドローン、スマートフォン、ポータブルコンピュータ、車、バス、自転車、およびオートバイから選択され得る。
【0090】
さらに、本発明は、1cm3/分を超える二水素流量を発生させるための、本発明による二水素製造器の使用に関する。
【0091】
この使用は、ドローン、スマートフォン、ポータブルコンピュータ、車、バス、自転車、およびオートバイなどの固定装置またはモバイル装置に電力を供給するためのものであり得る。「固定」装置とは、少なくとも1日、または少なくとも1か月間だけ静止している装置を意味する。固定装置は、例えば、発電機などのバックアップステーションである。
【0092】
好ましくは、特に500V未満の電圧で電流を発生させる電流発生器によって触媒担体が加熱される場合、発生する二水素の流量は1m3/分未満である。
【0093】
この使用は、1m3/分を超える二水素の流速を備えた固定装置に供給することを意図している場合がある。次いで、好ましくは、触媒担体は、500Vを超える電圧で電流を発生させる電流発生器によって加熱される。
【0094】
本発明の他の特徴、代替案、および利点は、非限定的な例として提供される詳細な説明および以下の実施例を読み、添付の図面を検討することで、より明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【
図1】本発明による二水素製造器の例を概略的に縦断面図で表す。
【
図2】縦断面から見た、本発明による二水素製造器の第2の例を概略的に表す。
【
図3】開構成で配置された触媒ハウジングを備える、本発明による二水素製造器の第3の例を縦断面図によって概略的に表す。
【
図5】閉構成で配置された触媒ハウジングを備える、本発明による二水素製造器の第4の例を縦断面図によって概略的に表す。
【
図7】本発明による二水素製造器の触媒ハウジングの代替実施形態を縦断面図で表す。
【
図8】閉構成で配置された、本発明による二水素製造器の触媒ハウジングの別の代替実施形態を縦断面で表す。
【
図9】
図8に示された触媒ハウジングを開構成で表す。
【
図10】閉構成で配置された、本発明による二水素製造器の触媒ハウジングの別の代替実施形態を縦断面で表す。
【
図14】本発明による二水素製造器によって二水素が供給されるエネルギー発生装置を含む装置を概略的に表す。
【発明を実施するための形態】
【0096】
図において、二水素製造器を構成する異なる部材およびユニットのスケールおよび比率は、必ずしも重視されているわけではない。さらに、明確にするために、部材およびユニットは、実際には互いに接触していないものとして表される場合がある。異なる参照符号が同じ部材またはユニットを参照する場合がある。
【0097】
図1は、本発明による二水素製造器5の第1の例示的な実施形態を表す。
【0098】
二水素製造器は以下を含む:
・筐体内部空間15を画定する筐体10
・筐体内部空間に収容された触媒担体20
・触媒担体に電気的に接続された電流発生器25。
【0099】
筐体内部空間は、反応性液体30、好ましくはリッチLOHCを含む。筐体は、反応性液体に対して不活性な材料で作られている。 それは、反応性液体からの二水素生成のための触媒反応が起こる温度に耐性のあるポリマー材料で作られていてよい。例えば、筐体はテフロン(登録商標)で作られている。筐体は、長手方向Xに延びる側壁35、長手方向が重力の方向に平行である場合に筐体の底部を画定する下壁40、および二水素のための排出開口部50を有する上壁45を備える。あるいは、排出開口部の上に、バルブ、好ましくは流量調整バルブが配置されてよい。さらに、内部空間内の二水素の圧力が閾値圧力を超えたときに二水素を放出するために、排出開口部の上には、図示されていない過圧バルブが配置されてもよい。
【0100】
筐体は、水素を反応性液体から分離し、筐体からの水素の除去を容易にするために、図示されていない分離膜も含む。排出開口部は分離膜に接続されている。
【0101】
図示の例では、触媒担体は、導電性材料で作られた発泡体と、発泡体の細孔壁を覆う二水素生成反応からの触媒の触媒コーティングとからなる。あるいは、発泡体は、電気絶縁材料で作られてもよく、その細孔は、導電材料のコーティングで覆われてもよい。
【0102】
多孔質である触媒担体は、触媒コーティングと接触している反応性液体で含浸される。
【0103】
触媒担体は筐体の壁に取り付けられている。あるいは、触媒担体は筐体の内部空間に移動することもできる。
【0104】
触媒担体は、互いに距離を置いて配置された2つの電気コネクタ55a-bを有する。コネクタは、加熱回路Ccを形成するように、電源ケーブル60a-bによって電流発生器の各端子65a-bに接続される。したがって、加熱回路に電流が流れるとき、ジュール効果によって触媒担体が加熱される。その結果、電流発生器は、触媒担体のための抵抗加熱手段を画定する。
【0105】
ジュール効果によって発泡体に誘発された温度上昇は、特に伝導によって、触媒コーティングおよび反応性液体に伝達される。したがって、反応性液体からの二水素生成のための触媒反応が起こる反応温度に達するとき、二水素H2が筐体内部空間で生成され、除去開口部を通して排気される。さらに、触媒担体の多孔質構造内での反応後、反応性液体の濃度は、内部空間よりも触媒担体内で低くなる。拡散により、筐体内部空間にある反応性液体が発泡体の細孔に浸透する。したがって、二水素生成反応は、触媒担体の温度が十分に高い限り継続することができる。
【0106】
電気回路への電源がオフになるとき、触媒担体の温度が反応温度を下回るとすぐに、触媒担体が冷却され、二水素生成反応が停止する。
【0107】
図示の例では、電流発生器25は、筐体の外側に配置され、電源ケーブルは、筐体の壁に形成された穴を通して配線される。図示されていない別の例では、それは、例えば触媒担体と接触して、筐体内部空間に収容されてよい。短絡を回避するために、電流発生器は、好ましくは反応性液体液密ボックス内に収容される。
【0108】
電流発生器は、電源に接続され得る。例えば、それは電源コンセント75に差し込まれる。あるいは、電流発生器は電池であってもよい。
【0109】
図2は、本発明による二水素製造器の第2の例を表し、これは、電流発生器ではなく電磁界発生器80を備えるという点で
図1の例とは異なる。
【0110】
電磁界発生器は、例えば銅などの導電性ワイヤの巻線85からなり、電源75に接続されている。したがって、電流が巻線に流れるとき、磁場Bが生成され、これにより発泡体を構成する導電性材料を通って流れる電流が誘導される。これにより、ジュール効果による触媒担体の加熱と、
図1に示す例で説明した条件下での二水素の生成がもたらされる。したがって、電磁界発生器は、触媒担体を加熱する誘導手段70を画定する。
【0111】
説明した例では、電磁界発生器は筐体の外側に配置されている。それは、好ましくは、触媒担体が取り付けられる側95の反対側の側90に配置される。好ましくは、電磁場との相互作用を回避するために、筐体は、磁場に対して不活性な材料、例えば熱可塑性物質で作られている。
【0112】
図3に示される二水素製造器5は、それが触媒ハウジング100およびばね戻り部材105をさらに備える点で、
図1に示される発生器とは異なる。
【0113】
触媒ハウジングは筐体内部空間に収容されている。触媒ハウジングは、それぞれ容器120およびカバー125である第1の部分110および第2の部分115からなる。触媒ハウジングはまた、ガスケット127を有する。
【0114】
容器は筐体の底壁40に取り付けられる。容器は、方向Xに延びる側壁130を有する。シールは、容器とカバーとの間で、容器の長手方向の一方の側に取り付けられる。
【0115】
容器とカバーは共に、触媒担体20が収容される触媒チャンバ135を画定する。
【0116】
触媒担体は、例えばカバーに接着されて固定される。それは円筒形の回転形状を有しているが、環状または平行六面体の形状またはリングの一部など、他の形状も考えられる。
【0117】
カバーは、電源ケーブルが挿入される穴140a-bを有する。好ましくは、最大のジュール効果を得るために、カバーは、好ましくは、電気絶縁材料、好ましくは、ポリマーまたはセラミック材料から形成される。
【0118】
弾性戻り部材は、例えばエラストマーで作られた可撓性膜150からなる。可撓性膜は、概して管状の形状を有する。それは、カバーに固定された底部155を有し、そこから側壁160が方向Xに延びる。図示される例では、膜の側壁は、その展開を容易にするアコーディオンベローズのような形状である。しかしながら、そのような形状は限定的ではない。
【0119】
膜の側壁は、底部の反対側でチャンバの底壁の窓165に開口している。したがって、膜の内部空間の圧力は、例えば大気圧である二水素製造器の外部170の圧力に等しい。
【0120】
図3において、触媒ハウジングは開構成になっており、可撓性膜が平衡位置にあり、筐体内部空間の圧力が大気圧に等しい。カバーは、容器から距離を置いて配置され、したがって、カバーと容器との間に開口部175を画定し、それを通って反応性液体が触媒チャンバに入ることができる。
【0121】
矢印Pで示されるように、反応性液体は、次いで、触媒チャンバに入り、触媒担体の細孔に含浸することができる。触媒担体のジュール加熱により、
図1に示すように二水素が生成され、アルキメデスの推力の影響を受けて反応性液体を通って筐体内部空間に流れ、矢印H
2で示すように、排出開口部50を通って、例えば
図14に示すように、燃料電池のアノードチャンバ内部に、排出される。
【0122】
排出開口部を通って排出される二水素が、例えば燃料電池によって完全に消費されない場合、筐体内での二水素の生成は、筐体内の圧力の増加をもたらす。筐体内の圧力がカバー125に加えられ、結果として、容器の底部に向かう力が生じ、触媒ハウジングが閉じるまで可撓性膜を圧縮する。触媒ハウジングの閉構成において、
図4に示すように、カバーはシーリングガスケット127の間に挟まれる。したがって、触媒チャンバの外側に含まれる反応性液体は入ることができない。
【0123】
したがって、触媒チャンバがもはや十分な反応性液体を含まなくなるとすぐに、二水素の生成が停止する。
【0124】
さらに、二水素製造器は、触媒ハウジングの開放または閉鎖について通知するための電気スイッチ180を備えていてよい。
図3に示す例では、電気スイッチは、カバーに取り付けられた金属タブ185と、容器の側壁から突出する金属ピン190とを有する。ピンおよびタブはそれぞれ、電流発生器に電気的に接続されている。
【0125】
触媒ハウジングの閉構成において、タブはピンと接触しているため、ピン、タブ、および発生器によって形成される電気回路は閉じている。したがって、発電機は、ハウジングが閉じられたときに通知を受け、触媒担体への電力供給を遮断するように構成することができる。
【0126】
触媒ハウジングの閉鎖に起因して二水素の発生が停止すると、二水素は排出開口部を通って筐体から徐々に排出される。筐体内の二水素圧力が低下する。したがって、カバーに二水素圧力によって加えられる力は、膜150によって加えられる力および膜内の圧力よりも小さくなる。次に、膜は
図3に示す平衡位置まで広がる。さらに、タブ185がピンから離れ、電流発生器と電気スイッチによって形成された回路が開き、これにより、電流発生器による触媒担体への電力供給が開始される。その後、二水素が再び生成される。
【0127】
図4の二水素製造器による二水素の生成は受動的である。つまり、触媒ハウジングは、筐体内の二水素圧力の結果としてのみ開閉する。
【0128】
図5および6は、二水素の生成が活発に行われている、本発明による生成器の別の例示的な実施形態を示している。
【0129】
二水素製造器5は以下を含む:
・筐体10、触媒ハウジング100、触媒支持体20および上記の電流発生器25、ならびに圧力測定ユニット195;
・筐体および触媒担体に固定された空気圧シリンダー205の形態のアクチュエータ200;
・一方ではシリンダーと流体連通し、加圧流体をシリンダーに送り、他方では流体カートリッジ215と流体連通する、制御バルブ210;および
・制御バルブ、圧力測定ユニットおよび電流発生器に電気的に接続された制御ユニット220。
【0130】
二水素製造器はまた、制御ユニットおよび制御バルブに電力を供給するための電池225を含む。代替として、二水素製造器は、そのような電池を含まなくてもよく、制御ユニットおよび制御バルブへの電力供給は、電流発生器によって提供されてもよい。
【0131】
さらに、二水素製造器は、制御ユニットに接続されたスイッチ230を有することができ、そのため、スイッチがオフ位置にあるとき、制御ユニットは電力供給されず、電流発生器は、触媒担体に電流を供給しない。次に、好ましくは、触媒ハウジング100は、閉位置に配置される。スイッチが開始位置にあるとき、制御ユニットには電気が供給される。
【0132】
圧力測定ユニット195は、筐体内部空間に配置される。
図5に示される例では、それは排出開口部50の近くに配置される。しかしながら、他の配置も可能である。
【0133】
さらに、容器の底壁と筐体の下壁に穴が形成されている。それらは、前記壁のそれぞれの厚さを通過し、互いに反対側に固定され、同一の形状を有することができる。
【0134】
シリンダーは前記穴に配置され、筐体にしっかりと固定されている。それは、円筒形本体230と、円筒形本体に収容され、円筒形本体に対して移動可能なピストン235とを備える。シリンダーはつる巻ばねも有する。ばねは両端が本体とピストンに固定されており、戻り機能を有する。一代替形態では、シリンダーは「複動」タイプであってよく、それぞれ圧縮性流体が供給される2つのチャンバを有し、チャンバの1つは戻り機能を提供する。
図5に示す二水素製造器の閉位置では、ばねはピストンに戻り力を及ぼさない平衡位置にある。
【0135】
シリンダーは、
図5に示す閉位置と
図6に示す開位置との間でピストンを移動させるために、加圧流体を収容するシリンダーチャンバを画定する。シリンダー、特にピストンは、触媒担体に取り付けられている。したがって、触媒担体に固定されているカバーは、開位置と閉位置との間で筐体および容器に対して並進移動可能である。
【0136】
制御バルブは、入口ホースによって流体カートリッジに接続された入口240を有する。それは、ホースによってシリンダーチャンバに接続された供給出口245を有する。それは、ブリード出口250をさらに有し、圧力がカートリッジ内の圧力より低く、好ましくは大気圧である二水素製造器の外側の環境につながる。バルブは、ケーブル255を介して、電気制御信号Scを制御バルブに送信するように構成された制御ユニットに電気的に接続され、制御バルブは、前記信号を受信するように構成される。
【0137】
制御信号は、制御バルブを開くための制御信号であってよい。制御バルブがそのような開放コマンド信号を受信するとき、制御バルブは、ブリード出口が閉鎖される構成に配置され、加圧流体カートリッジは、シリンダーチャンバと流体連通するように配置される。次に、矢印A
fで示すように、流体はカートリッジから制御バルブの供給入口および出口を通ってシリンダーチャンバ内に流れることができる。したがって、ピストンは、
図6に示すように、閉位置から開位置に移動するか、または開位置に保持されてよい。
【0138】
制御信号は、近接制御信号であってよい。制御バルブが閉鎖コマンド信号を受信するとき、制御バルブ入口が閉鎖され、パージ出口および供給出口が開放され、流体連通する構成に配置される。シリンダーチャンバ内の流体は、供給ラインを通って、パージ出口を通って二水素製造器の外部に流れる。シリンダーチャンバ内の圧力が低下すると、ピストンが動き、ばねが戻る力またはシリンダーが「複動」タイプである代替手段では背圧の影響を受けて、触媒システムが閉じた状態になる。
【0139】
制御ユニットから制御バルブに送信される電気信号は、一方では、最小調整圧力および/または最大調整圧力と、他方では圧力測定ユニット195によって測定される、筐体内の二水素の圧力との間の比較の、制御ユニットによって取得された、結果の関数である。
【0140】
図5および6の実施例において、圧力測定ユニットは、筐体内の二水素の圧力を測定するための圧力センサーを有する。圧力測定ユニットは、それが測定する二水素圧力P
H2を制御ユニット220に送り、制御ユニット220はP
H2を受け取り、それを最小および最大制御圧力と比較する。二水素の圧力が最小調整圧力を下回るとき、制御ユニットは、シリンダーが触媒ハウジングを開位置に動かすまで、開コマンド信号を制御バルブに送信する。制御ユニットはさらに電流発生器に信号を送り、電流を発生させてジュール効果により触媒担体を加熱し、二水素発生を誘発する。
【0141】
上述のように、二水素の生成は、筐体内の圧力の増加を伴う。二水素圧力が最大調整圧力より高いとき、制御ユニットは、触媒ハウジングが閉位置にあるように、制御バルブに閉コマンド信号を送信する。その後、二水素の生成が停止する。筐体内部空間に残っている二水素は排出されるため、筐体内の二水素圧力は最小制御圧力より低くなる。次に、触媒ハウジングの開放を伴う新しい二水素生成サイクルを開始することができる。
【0142】
図7は、
図5に示す例の代替例を示し、触媒ハウジングは、筐体に取り付けられたトレイ240である第1の部分110と、触媒ハウジングの閉位置でトレイ上にあるベル245である第2の部分115とを有する。触媒担体はトレイに取り付けられている。ベルはシリンダーに取り付けられており、触媒ハウジングの開位置と閉位置との間で筐体に対して移動可能である。
【0143】
図8および9は、それぞれ閉位置および開位置にある本発明による二水素製造器の触媒ハウジングの別の代替例を示している。
【0144】
図8および9に示される触媒ハウジングは、筐体から離れて配置された底壁250を有する容器の形態の第1の部分110を有するという点で、
図5に示される触媒ハウジングとは異なる。それは、容器を閉じるためのカバーを画定する上壁255を有する第2の部分115をさらに含む。管状部分260は、第2の部分の上壁から突出する。シリンダー205は、管状部分に部分的に収容されている。さらに、第2の部分は、カバーによって閉じられたものと反対のその端部に、シリンダーの長手方向Yに対して横方向に延びる下壁265を有する。
【0145】
第1および第2の部分の下壁はそれぞれ、その厚さ方向に前記壁のそれぞれを通過する少なくとも1つの、好ましくはいくつかの窓270、275によって貫通されている。第1および第2の部分の下壁の窓は、
図8に示すように、閉位置で、第1および第2の部分の前記下壁が反応性液体液密アセンブリを形成し、触媒チャンバ135を筐体内部空間15から隔離するように、開位置で、
図9に示すように、第1および第2の部分の前記下壁を通る、矢印C
1で表される筐体内部空間と触媒チャンバとの間の流体アクセス経路を画定するように配置される。したがって、開位置では、触媒ハウジングは、第2の部分の上壁と第1の部分の側壁との間に矢印C
2で示される流体アクセス経路、および第1および第2の部分の下壁の間の矢印C
1で示される少なくとも1つのアクセス経路を画定する。したがって、触媒チャンバ内の反応性液体の対流が改善され、それによって二水素生成反応の効率が最適化される。
図8および9に示す例では、開位置から閉位置への変更は、Y方向に沿って、第1の部分に対して第2の部分を移動することによって行われる。
【0146】
図10から13は、本発明による二水素製造器の別の代替例を示し、第1および第2の部分は、軸Yの周りの開位置と閉位置との間で互いに対して回転可能である。
【0147】
第1の部分は、中空円筒形の回転管状部分の一般的な形状を有し、管状部分の回転軸Yを横切る方向に延在する下壁270および上壁275によってそれぞれ両端が閉じられている。
【0148】
第1の部分の底壁は、その厚さ方向に底壁を貫通し、そこからスペーサー280が突出する凹部を有する。スペーサーは、第1の部分の管状部分を筐体から一定の距離に保つ。スペーサーは、第1の部分の管状部分と同軸の、好ましくは回転する、中空の円筒管の形状を有する。
【0149】
さらに、第1の部分の下壁、上壁、および側壁は、それぞれの前記壁をその厚さ方向に通過する少なくとも1つの、好ましくは複数の窓295を含む。別の方法では、第1の部分の前記壁の少なくとも1つに窓がなくてもよい。
【0150】
第2の部分115は、反対側の端部に下壁300および取り外し可能な上壁305が上に置かれた中空の円筒形回転管の一般的な形状を有する。したがって、第2の部分は、触媒担体20が収容される触媒チャンバ135を画定する。
【0151】
さらに、第2の部分の下壁、上壁、および側壁は、それぞれの前記壁をその厚さ方向に通過する少なくとも1つの、好ましくは複数の窓305を備える。代替案では、第2の部分の前記壁の少なくとも1つに窓がなくてもよい。
【0152】
図9に示されるように、第2の部分は、完全ではないにしても、少なくとも部分的に第1の部分の管状部分の内部空間315に受け入れられる。
【0153】
閉位置では、
図10および12に示すように、第1および第2の部分の底壁がそれぞれ第1および第2の部分の窓を塞いでおり、反応性液密ユニットを形成し、筐体内部空間から触媒チャンバを隔離し、開位置では、
図11および13に示すように、矢印C1で示されている、第1および第2の部分の前記底壁、側壁、および上壁を介して触媒チャンバと筐体内部空間との間に流体経路を画定するように、第1および第2の部分の底壁、側壁、および上壁の窓はそれぞれ配置される。
図12では、第2の部分の窓305は、第1の部分の窓295に対するそれらの角度位置を示すために点線で示されている。
【0154】
閉位置から開位置への変更は、軸Yの周りに角度αだけ、第1の部分に対して第2の部分を回転させることによって行われる。この目的のために、第2の部分は、ステッパーモーター320のシャフトに固定され、それはスペーサーに係合している。
【0155】
図14は、本発明による二水素製造器5によって二水素が供給される燃料電池335を含む装置330を示す。
【0156】
燃料電池は、アノード345、電解質膜350およびカソード355のスタックを含む酸化ユニット340からなる。それは、二水素をアノードに分配するためのアノードチャンバ360、および酸素をカソードに分配するためのカソードチャンバ365をさらに画定する。
【0157】
アノードチャンバはまた、二水素を供給するための入口ポート370を有し、これは、中空輸送管380によって二水素製造器の排出開口部に接続される。
【0158】
図14に示される二水素製造器は、圧力測定ユニット195が燃料電池のアノードチャンバ385に配置されることを除いて、
図5に記載されるものと同一である。図示されていない別の代替例では、圧力測定ユニット25は、中空管410内に配置されてよい。
【0159】
したがって、動作中、二水素生成は、燃料電池の二水素要件に適合される。
【0160】
本発明による二水素製造器の例が記載され、二水素製造器は以下を含む。
・体積100cm3の触媒担体。触媒担体は、アルミナ発泡体で形成され、60%から70%の間の気孔率を有し、細孔径が500μmを超えており、ニッケル層および2gの白金コーティングで被覆されている。
・500V未満の電圧で動作し、20Aの電流を供給し、触媒担体中に10kWの加熱電力を生成する電流発生器。
【0161】
触媒担体の抵抗は25Ωである。
【0162】
このような発生器は、H0-DBTから1分あたり20gの二水素、または同等の1分あたり250Lの二水素を生成することができる。これは、25kWの電気エネルギーを生成する燃料電池に電力を供給するのに適する。
【0163】
もちろん、本発明は、上記の本発明による二水素製造器の実施例および実施形態に限定されない。特に、水素源の存在下でのリーンLOHCの水素化反応は、本発明による二水素製造器を用いて行うことができる。
【符号の説明】
【0164】
5 二水素製造器
10 筐体
15 筐体内部空間
20 触媒担体
25 電流発生器
30 反応性液体
35 側壁
40 下壁
45 上壁
50 排出開口部
55a-b 電気コネクタ
60a-b 電源ケーブル
65a-b 端子
70 誘導手段
75 電源
80 電磁界発生器
85 巻線
100 触媒ハウジング
105 ばね戻り部材
110 第1の部分
115 第2の部分
120 容器
125 カバー
127 ガスケット
130 側壁
135 触媒チャンバ
140a-b 穴
150 可撓性膜
155 底部
160 側壁
165 窓
170 外部
175 開口部
180 電気スイッチ
185 金属タブ
190 金属ピン
195 圧力測定ユニット
200 アクチュエータ
205 空気圧シリンダー
210 制御バルブ
215 流体カートリッジ
220 制御ユニット
230 円筒形本体
235 ピストン
330 装置
335 電池
340 酸化ユニット
345 アノード
350 電解質膜
355 カソード
360 アノードチャンバ
365 カソードチャンバ
370 入口ポート
380 中空輸送管
385 アノードチャンバ
410 中空管