(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】投射型表示装置
(51)【国際特許分類】
G03B 21/14 20060101AFI20220610BHJP
H04N 5/74 20060101ALI20220610BHJP
G03B 21/28 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
G03B21/14 Z
H04N5/74 Z
G03B21/28
(21)【出願番号】P 2020149059
(22)【出願日】2020-09-04
【審査請求日】2021-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】516257981
【氏名又は名称】株式会社ライトショー・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】特許業務法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山影 明広
(72)【発明者】
【氏名】梅 雨非
【審査官】新井 重雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-225969(JP,A)
【文献】特開2008-176069(JP,A)
【文献】特開2008-191629(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0207818(US,A1)
【文献】特開2001-154267(JP,A)
【文献】特開平4-287086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 21/14
H04N 5/74
G03B 21/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の照明光を画像信号に応じて変調する第1の光変調素子と、
第2の照明光を画像信号に応じて変調する第2の光変調素子と、
前記第1の光変調素子により変調された前記第1の照明光を結像して第1の中間像を形成する第1のリレーレンズと、
前記第2の光変調素子により変調された前記第2の照明光を結像して第2の中間像を形成する第2のリレーレンズと、
前記第1のリレーレンズから入射する光を全反射する第1反射面と、前記第2のリレーレンズから入射する光を全反射する第2反射面とを備え、前記第1反射面と前記第2反射面により頂角が形成されたルーフ状の反射光学素子と、
投射レンズと、を備え、
前記第1の光変調素子により変調された照明光は、前記第1反射面で反射されてから前記第1の中間像を結び、
前記第2の光変調素子により変調された照明光は、前記第2反射面で反射されてから前記第2の中間像を結び、
前記投射レンズの光軸は前記反射光学素子の頂角を通り、前記投射レンズは、前記第1の中間像及び前記第2の中間像を並べて拡大投射する、
ことを特徴とする投射型表示装置。
【請求項2】
前記反射光学素子は、ルーフプリズムか、あるいは板状ミラーを組合わせたルーフ状の反射光学素子のいずれかである、
ことを特徴とする請求項1に記載の投射型表示装置。
【請求項3】
前記頂角の大きさは、60度以上かつ90度以下である、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の投射型表示装置。
【請求項4】
同一光源が発する光が分割されて前記第1の照明光と前記第2の照明光が形成される、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の投射型表示装置。
【請求項5】
前記投射レンズは、フィールドレンズを備え、
前記第1の中間像と前記第2の中間像は、前記フィールドレンズの内部に結像される、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の投射型表示装置。
【請求項6】
前記第1の中間像と前記第2の中間像の結像面は、前記投射レンズの光軸と直交する平面に対して、傾斜又は湾曲している、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の投射型表示装置。
【請求項7】
前記第1の光変調素子および前記第1のリレーレンズの、前記反射光学素子に対する相対位置および姿勢を調整する調整機構、および/または、
前記第2の光変調素子および前記第2のリレーレンズの、前記反射光学素子に対する相対位置および姿勢を調整する調整機構、を備える、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の投射型表示装置。
【請求項8】
前記第1の光変調素子および前記第2の光変調素子は、表示画像の水平方向について、表示画像エリアよりも大きな変調エリアを備え、
前記第1の光変調素子と前記反射光学素子との相対位置に応じて、前記第1の光変調素子の変調エリア内における表示画像エリアの水平方向位置を調整し、
前記第2の光変調素子と前記反射光学素子との相対位置に応じて、前記第2の光変調素子の変調エリア内における表示画像エリアの水平方向位置を調整する、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の投射型表示装置。
【請求項9】
前記第1の光変調素子および前記第2の光変調素子は、表示画像の垂直方向について、表示画像エリアよりも大きな変調エリアを備え、
前記第1の光変調素子と前記反射光学素子との相対位置に応じて、前記第1の光変調素子の変調エリア内における表示画像エリアの垂直方向位置を調整し、
前記第2の光変調素子と前記反射光学素子との相対位置に応じて、前記第2の光変調素子の変調エリア内における表示画像エリアの垂直方向位置を調整する、
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の投射型表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調素子を2つ備え、2画面分の画像を投射可能な投射型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、インターネットを介して複数人が参加可能なテレビ会議システム用のモニターや、複数の監視カメラを備えた監視システム用モニター、あるいは医療用モニターや教育用モニターなど、様々な分野において、大画面かつ多画素の表示装置が求められている。
【0003】
従来から、DMD素子や液晶素子などの光変調素子と投射光学系を備え、画像をスクリーン等に拡大投影して表示する投射型表示装置が知られている。投射型表示装置に用いられる光変調素子は、画素が微細化されて画素数が増加しており、XGA(1024×768画素)、WXGA(1280×800画素)からWUXGA(1920×1200画素)、4Kへと進化している。
【0004】
ただし、光変調素子の画素数を増加させると、製造歩留まりが低下する等の理由により、光変調素子の単価は大幅に上昇してしまう傾向がある。また、光変調素子の画素ピッチを微細化すると、画素配線や駆動トランジスタに対して開口部が占める面積の割合が低下する傾向があり、照明光の利用効率が低下してしまう場合がある。また、画素数を増加させると、駆動時に光変調素子基板の温度が上昇しやすくなる傾向がある。
したがって、単板の光変調素子を用いた投射型表示装置では、画素数を増加させたり画素サイズを微細化するのには限界があった。
【0005】
そこで、比較的簡易に大画面表示を可能にする方法として、複数の投射型表示装置を併設し、投射画像を隣り合わせて表示させる方法が知られている。
例えば、特許文献1には、併設された複数の投射型表示装置から画像を投射する際に、投射型表示装置ごとの輝度や色度の差異が目立たなくなるようにする調整方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
複数の投射型表示装置を併設して投射画像を隣り合わせて表示させれば、大画面表示を簡易に実現できるようにも考えられる。しかしながら、現実には、隣り合わせて表示させる複数の投射画像を見た時に観察者が違和感を感じないようにするためには、投射型表示装置を設置・調整する際に、オペレータに高度な技能と多大な負荷が必要になっていた。
【0008】
というのも、複数の投射型表示装置の各々は、独立した投射光学系と光変調素子を備えている。各装置から投射される隣り合う画像の位置、大きさ、傾き、合焦状態などを、観察者が違和感を感じないレベルに整合させるためには、各画像投射装置を設置する際の位置や、各投射型表示装置の投射光学系の設定を精密に調整する必要があるからである。
【0009】
この点、特許文献1に開示された方法は、投射画像の画面境界で輝度や色度の差異が目立たなくなるようにする駆動調整方法であり、隣り合う画像の位置、大きさ、傾き、合焦状態などを調整するものではない。
【0010】
そこで、2つの光変調素子で変調された画像を隣り合わせて投射して大画面表示をするが、隣り合う画像相互の位置、大きさ、傾き、合焦などの調整に多大な負荷を要しない投射型表示装置が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、第1の照明光を画像信号に応じて変調する第1の光変調素子と、第2の照明光を画像信号に応じて変調する第2の光変調素子と、前記第1の光変調素子により変調された前記第1の照明光を結像して第1の中間像を形成する第1のリレーレンズと、前記第2の光変調素子により変調された前記第2の照明光を結像して第2の中間像を形成する第2のリレーレンズと、前記第1のリレーレンズから入射する光を全反射する第1反射面と、前記第2のリレーレンズから入射する光を全反射する第2反射面とを備え、前記第1反射面と前記第2反射面により頂角が形成されたルーフ状の反射光学素子と、投射レンズと、を備え、前記第1の光変調素子により変調された照明光は、前記第1反射面で反射されてから前記第1の中間像を結び、前記第2の光変調素子により変調された照明光は、前記第2反射面で反射されてから前記第2の中間像を結び、前記投射レンズの光軸は前記反射光学素子の頂角を通り、前記投射レンズは、前記第1の中間像及び前記第2の中間像を並べて拡大投射する、ことを特徴とする投射型表示装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、2つの光変調素子で変調された画像を隣り合わせて投射して大画面表示させるが、隣り合う画像相互の位置、大きさ、傾き、合焦などの調整に多大な負荷を要しない投射型表示装置を提供することができる。また、複数の投射型表示装置を併設する従来の方法に比べて、装置の小型化や低コスト化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態1に係る投射型表示装置の光学的な構成を示す模式図。
【
図2】(a)スクリーンSC上に投射された表示画像の一例を示す図。(b)スクリーンSC上に投射された表示画像の他の一例を示す図。
【
図3】(a)実施形態1におけるリレーレンズ300A、ルーフプリズム401、中間像500Aの位置関係の一例を示す図。(b)実施形態1におけるリレーレンズ300A、ルーフプリズム401、中間像500Aの位置関係の他の一例を示す図。(c)板状ミラーを組合わせて頂角αのルーフを有する反射光学素子を構成した例を示す図。
【
図4】(a)比較例1としての投射型表示装置の光学的な構成を示す模式図。(b)比較例1に用いた偏光ビームスプリッタ800の分光特性を示す図。
【
図5】(a)比較例2としての投射型表示装置の光学的な構成を示す模式図。(b)比較例3としての投射型表示装置の光学的な構成を示す模式図。
【
図6】実施形態2における画像の水平方向の位置調整方法を説明するための模式図。
【
図7】実施形態2における画像の垂直方向の位置調整方法を説明するための模式図。
【
図8】反射型光変調素子を備えた実施形態3にかかる投射型表示装置の光学的な構成を示す模式図。
【
図9】頂角αが60度のルーフプリズム402を備えた実施形態4にかかる投射型表示装置の光学的な構成を示す模式図。
【
図10】中間像を凸レンズ内に形成した実施形態5にかかる投射型表示装置の光学的な構成を示す模式図。
【
図11】(a)中間像の結像面を湾曲させた実施形態6にかかる投射型表示装置の光学的な構成を示す模式図。(b)中間像の結像面を傾斜させた実施形態6にかかる投射型表示装置の光学的な構成を示す模式図。
【
図12】(a)表示画像700Aと表示画像700Bを水平に並べて投射した実施形態の図。(b)表示画像700Aと表示画像700Bを垂直に並べて投射した実施形態の図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施形態1]
図1は、実施形態1にかかる投射型表示装置の光学的な構成を示す模式図である。投射型表示装置1は、透過型光変調素子201A(第1の光変調素子)および透過型光変調素子201B(第2の光変調素子)を備えている。透過型光変調素子201Aは、照明用光源100Aから照射される照明光ILA(第1の照明光)を画像信号に基づいて変調し、透過型光変調素子201Bは、照明用光源100Bから照射される照明光ILB(第2の照明光)を画像信号に基づいて変調する。尚、透過型光変調素子201Aおよび透過型光変調素子201Bとしては、例えば透過型液晶パネルが用いられ、照明用光源100Aおよび照明用光源100Bとしては、例えばレーザダイオードやLED等の発光素子が用いられる。照明用光源100Aと照明用光源100Bは、それぞれ個別に発光素子を配置して構成してもよいし、同一光源から出る光を分割して各光変調素子に別光路で導くようにして実効的に2つの照明用光源が存する構成にしてもよい。
【0015】
透過型光変調素子201Aから出射される表示光は、光軸がY方向と平行なリレーレンズ300A(第1のリレーレンズ)にて集光され、所定の位置に中間像500A(第1の中間像)を結ぶ。ただし、透過型光変調素子201Aから出射される表示光はルーフプリズム401の斜面(第1反射面)にて全反射されるようにし、中間像500Aの結像位置を、ルーフプリズム401の頂点よりもX方向に進んだ位置に設定する。同様に、透過型光変調素子201Bから出射される表示光は、光軸がY方向を平行なリレーレンズ300B(第2のリレーレンズ)にて集光されるが、ルーフプリズム401の別の斜面(第2反射面)にて全反射されるようにし、中間像500B(第2の中間像)の結像位置をルーフプリズム401の頂点よりもX方向に進んだ位置に設定する。これらの位置関係の設定については、後に
図3(a)、
図3(b)を参照して説明する。
【0016】
本実施形態の投射型表示装置1は、リレーレンズ300Aにて形成された中間像500Aと、リレーレンズ300Bにて形成された中間像500Bを、一括して拡大投射するための投射レンズ600を備えている。投射レンズ600の光軸LXはX方向と平行とし、光軸LXはルーフプリズム401の頂角を通るように位置決めされている。尚、
図1では、投射レンズ600により投射される光束の内、透過型光変調素子201Aから出射された表示光のごく一部のみが示されている。
【0017】
図2(a)は、スクリーンSC上に投射された表示画像の一例を示し、表示画像700Aは中間像500Aが拡大投射されたものであり、表示画像700Bは中間像500Bが拡大投射されたものである。
【0018】
また、
図3(a)は、リレーレンズ300A、ルーフプリズム401、中間像500Aの位置関係を示す図である。尚、図示の便宜のためリレーレンズ300Bと中間像500Bを省略しているが、リレーレンズ300Bは、投射レンズ600の光軸LXに対してリレーレンズ300Aと対称に配置され、中間像500Bは、投射レンズ600の光軸LXに対して中間像500Aと対称な位置に形成される。
【0019】
ルーフプリズム401の頂角αは、例えば90度とする。その場合、投射レンズの光軸LXに対してルーフプリズムの左右の反射面がなす角度は、ともに45度で対称となるようにルーフプリズムの向きを設定する。そして、リレーレンズ300Aの光軸LAが投射レンズの光軸LXに対してなす角度を90度とする。すなわち、リレーレンズ300Aを通過する表示光の主光線がルーフプリズム401の斜面に入射する入射角度を45度にする。尚、ルーフプリズムの頂角αは、後述する実施形態のように、90度以外の角度にして光学系を構成することも可能である。ただし、各光学素子のレイアウトに鑑みれば、投射型表示装置が大掛かりにならないようにするために、頂角αは60度以上で90度以下の範囲内に設定するのが好ましい。
【0020】
ルーフプリズム401として、例えば光学ガラスより成る母材の表面を鏡面加工したプリズムを用いることができるが、これに限られるわけではなく、頂角の両側から入射する表示光を高い効率で反射して、投射レンズに向けて偏向できる反射光学素子であればよい。例えば、
図3(c)に示すように、板状ミラー403Aと板状ミラー403Bを組合わせて、頂角αを構成したルーフ状の反射光学素子を用いてもよい。
【0021】
投射レンズ600のFナンバーは、照明系のエタンデューによりF2.3~F2.8に設定されるが、光束角は、例えばF2.5では±12度である。(すなわち、
図3(a)に示すθの大きさは、12度である。)
リレーレンズ300Aで結ばれる表示光を損失無く利用するには、±12度の光束を全てルーフプリズム401で反射させる。この時、
図3(a)に示すように、ルーフプリズム401の頂点と中間像500AのX方向の距離をLとし、ルーフプリズム401の頂点と中間像500AのY方向の距離(すなわち、投射レンズの光軸LXとの距離)をhとすれば、tanθ=h/Lが成り立つ。
【0022】
したがって、
図3(b)に示すように、リレーレンズ300Aとルーフプリズム401を隔てるY方向の距離を、
図3(a)よりも若干大きくして、ルーフプリズム401の頂点と中間像500AのX方向の距離であるLを小さくすれば、ルーフプリズム401の頂点と中間像500AのY方向の距離であるhも小さくすることができる。そのため、
図2(b)に示すように、スクリーンSC上の表示画像700Aと表示画像700Bを隔てるY方向の距離を、
図2(a)よりも小さくすることができる。
【0023】
理論的には、ルーフプリズム401の頂点と中間像500AのX方向の距離であるLをゼロに近づければ近づけるほど、スクリーンSC上の表示画像700Aと表示画像700Bを隔てるY方向の距離をゼロに近づけることができる。
【0024】
現実的には、ルーフプリズム401の頂点と中間像500AのX方向の距離を完全にゼロにする必要はない場合もあり、それは以下の理由による。一般に、光変調素子においては、各画素の開口部どうしが隙間なく隣接しているわけではない。例えば液晶素子であれば、画素配線や駆動トランジスタにより画素の開口どうしは隔てられており、この開口どうしを隔てる部分は光学的にマスクされている。また、例えばDLP素子であれば、各画素の反射面を独立して動作可能にするために、反射面と反射面の間には隙間が設けられている。この隙間部分に照射された照明光は、表示画像の一部として投射されることはない。このように、スクリーンSCに拡大投射される表示画像の画素間には、微視的には黒色の帯あるいは格子が存在する。
【0025】
そこで、
図2(a)において、中間像500Aと中間像500Bを隔てる2×hの距離をゼロにしなくても、2×hと中間像の画素間に存する黒色の帯あるいは格子の幅との差が顕著ではないレベルまでリレーレンズの位置を調整すれば、観察者にとって表示画像700Aと表示画像700Bの境界は目立たなくなるのである。
【0026】
以上説明したように、本実施形態の投射型表示装置1では、ルーフプリズム401を挟んで透過型光変調素子201Aと透過型光変調素子201Bを配置し、各々の透過型光変調素子とルーフプリズムの間には、中間像を結像するためのリレーレンズを設ける。各々のリレーレンズが結像する中間像が、ルーフプリズムの頂点近傍において投射レンズ600の光軸LXに対して対称に配置されるように、予め透過型光変調素子、ルーフプリズム、リレーレンズの相対位置関係を調整し、投射型表示装置1のフレームあるいは筐体等に各光学素子を固定しておく。不図示ではあるが、透過型光変調素子201Aとリレーレンズ300Aをユニットとしてみた時、当該ユニットのルーフプリズムに対する相対位置および姿勢(垂直方向、水平方向、回転方向)を調整するための調整機構を設けておくのが望ましい。同様に、透過型光変調素子201Bとリレーレンズ300Bをユニットとしてみた時、当該ユニットのルーフプリズムに対する相対位置および姿勢(垂直方向、水平方向、回転方向)を調整するための位置決め機構を設けておくのが望ましい。
【0027】
そして、透過型光変調素子201Aから出射した表示光および透過型光変調素子201Bから出射した表示光を、ルーフプリズム401を用いて全反射させ、ロスなく投射レンズ600の方向に偏向する。
【0028】
係る構成を有する本実施形態の投射型表示装置は、2つの光変調素子からの表示画像をスクリーン上に隣り合わせて表示するが、あらかじめ2つの中間像の位置、大きさ、傾き、合焦状態が整合されている。このため、オペレータは、例えばズーム倍率や画像全体の合焦の調整を行う必要がある時に、投射レンズ600のみを調整すればよく、従来のように2つの光変調素子それぞれの投射光学系を個別に調整する必要がない。また、投射レンズが1本で済むため、投射型表示装置の小型化や低コスト化を実現することができる。
【0029】
尚、スクリーンSCは、投射型表示システムの構成要素として、投射型表示装置1と常にセットで用いてもよいが、本発明の実施形態はそれに限られるわけではない。上述したように、実施形態に係る投射型表示装置1は、表示画像を光学的に調整する際の操作が簡単なので可搬用途にも適しており、例えばスクリーンを設置していない建築物の壁など、任意の場所の任意の面に容易に表示画像を投射することができる。
【0030】
次に、比較例を挙げて、実施形態1の比較例に対する長所を説明する。尚、比較例の構成要素の中で実施形態1の構成要素と機能が共通するものについては、実施形態1と同じ参照番号を付して図示し、説明を省略するものとする。
【0031】
[比較例1]
図4(a)は、比較例1としての投射型表示装置の光学的な構成を示す模式図である。比較例1は、透過型光変調素子201Aと透過型光変調素子201Bを用いて照明光を変調し、両方の光変調素子により変調された表示光を一つの投射レンズ600を用いてスクリーンSCに投射する点で、実施形態1と共通する。
【0032】
ただし、実施形態1はルーフプリズム401を備え、2つの光変調素子から出射した表示光をルーフプリズム401の2面で全反射させて投射レンズ600の方向に偏向させたのに対して、比較例1は、ルーフプリズム401ではなく偏光ビームスプリッタ800を用いて2つの光変調素子から出射した表示光を投射レンズ600の方向に導いている。
【0033】
比較例1では、まず偏光ビームスプリッタ803を用いて、照明光をP偏光成分とS偏光成分に分離させる。すなわち、偏光ビームスプリッタ803は、誘電体多層膜が形成された対角面において、S偏光を選択的に反射してP偏光を選択的に透過させる光学素子である。照明光のうち、反射されたS偏光成分はミラー802を経由して透過型光変調素子201Bに導かれ、透過したP偏光成分はミラー802を経由して透過型光変調素子201Aに導かれる。
【0034】
透過型光変調素子201Aで変調されたP偏光の表示光と、透過型光変調素子201Bで変調されたS偏光の表示光は、異なる方向から偏光ビームスプリッタ800に入射する。偏光ビームスプリッタ800は、誘電体多層膜が形成された対角面において、P偏光を選択的に透過させてS偏光を選択的に反射させる光学素子である。したがって、透過型光変調素子201Aからの表示光は偏光ビームスプリッタ800を透過して投射レンズ600に向けて進み、透過型光変調素子201Bからの表示光は偏光ビームスプリッタ800の対角面で反射されて投射レンズ600に向けて偏向される。透過型光変調素子201A、透過型光変調素子201B、偏光ビームスプリッタ800の相対位置を適宜調整しておけば、2つの光変調素子からの表示画像を隣り合わせて表示することができる。
【0035】
比較例1と実施形態1について、スクリーンSC上に表示される画面サイズが同等になる条件でカラー画像表示を行い、画質を比較したところ、実施形態1に比べて比較例1は色むらが大きく、画質が劣っていた。それは、以下の理由による。
【0036】
比較例1と実施形態1とは、同じ投射レンズ600を用いているが、先に述べたように例えば投射レンズ600のFナンバーがF2.5であれば、光束角度は±12度である。
偏光ビームスプリッタ800の対角面と表示光の主光線の成す角度を45度に設定した場合には、偏光ビームスプリッタ800の対角面に入射する光束の入射角度は、33度~57度の範囲となる。
【0037】
ところで、偏光ビームスプリッタのS/P分離能が、入射角度と波長に依存して変化することはよく知られている。
図4(b)に、比較例1に用いた偏光ビームスプリッタ800の分光特性を示すが、グラフからS偏光とP偏光の分離能は、入射角と波長に依存して変化しているのがわかる。光軸に相当する入射角45度についてみれば、可視波長域のほぼ全域で、P偏光の透過率は高く、S偏光の透過率は低い(つまり反射率は高い)のがわかる。
【0038】
しかし、入射角33度においては、P偏光は可視波長域内の長波長側で透過率が低下し、S偏光は可視波長域内の短波長側で透過率が高く(つまり反射率が低く)なっているのがわかる。これは、透過型光変調素子201Aから偏光ビームスプリッタ800に入射角33度で入射する表示光は長波長成分がロスし、透過型光変調素子201Bから入射角33度で入射する表示光は短波長側が大きくロスすることを意味する。
【0039】
また、入射角57度についてみても、可視波長域内におけるP偏光とS偏光の分光特性がアンバランスであるため、透過型光変調素子201A側の表示光と透過型光変調素子201B側の表示光を比べると、偏光ビームスプリッタ800でロスが発生する波長域が異なっている。
【0040】
以上の事から、比較例1の投射型表示装置では、偏光ビームスプリッタ800で上述したアンバランスなロスが発生するため、実施形態1に比べて照明光の利用効率が低下するだけでなく、隣り合わせて投射される2画面の表示画像間の色バランスが不良であった。すなわち、実施形態1の投射型表示装置の方が、表示画像の画質が優れていた。
【0041】
[比較例2]
図5(a)は、比較例2としての投射型表示装置の光学的な構成を示す模式図である。比較例2は、透過型光変調素子201Aと透過型光変調素子201Bを用いて照明光を変調し、両方の光変調素子により変調された表示光を一つの投射レンズ600を用いてスクリーンSCに投射する点で、実施形態1および比較例1と共通する。
【0042】
比較例1では、偏光ビームスプリッタ800を用いて2つの光変調素子から出射した表示光を投射レンズ600の方向に導いていたのに対して、比較例2では偏光ビームスプリッタ800の代わりにハーフミラー804を用いて2つの光変調素子から出射した表示光を投射レンズ600の方向に導く。すなわち、透過型光変調素子201Aからの表示光の半分がハーフミラー804を透過して投射レンズ600に向けて進み、透過型光変調素子201Bからの表示光の半分がハーフミラー804で反射されて投射レンズ600に向けて偏向される。透過型光変調素子201A、透過型光変調素子201B、ハーフミラー804の相対位置を適宜調整しておけば、透過型光変調素子201Aからの表示画像701Aと透過型光変調素子201Bからの表示画像701Bを、隣り合わせて表示することができる。
【0043】
比較例2ではハーフミラー804を用いるため、比較例1で用いる偏光ビームスプリッタ800と異なり、透過型光変調素子201A側の表示光と透過型光変調素子201B側の表示光で分光特性にアンバランスが生じることは抑制できる。
【0044】
しかしながら、透過型光変調素子201Aからの表示光の半分はハーフミラー804にてY方向に反射され、透過型光変調素子201Bからの表示光の半分はハーフミラー804にてY方向に透過し、これらはいずれも投射レンズ600には向かわないので表示に活用されない損失光となる。
【0045】
したがって、比較例2と実施形態1について、スクリーンSC上に表示される画面サイズが同等になる条件でカラー画像表示をしたところ、照明光の強度を同一にする条件の下では、実施形態1に比べて比較例2は表示画像の輝度が大幅に低下した。また、表示画像の輝度を同一にする条件の下では、比較例2は照明光の強度を大幅に増大させる必要があり、比較例2は実施形態1に比べて消費電力が大幅に増加した。
【0046】
以上の事から、比較例2の投射型表示装置では、ハーフミラー804で上述したロスが発生するため、実施形態1に比べて照明光の利用効率が極めて低くなっていた。すなわち、実施形態1の投射型表示装置の方が、電力効率が優れていた。
【0047】
[比較例3]
図5(b)は、比較例3としての投射型表示装置の光学的な構成を示す模式図である。比較例3は、透過型光変調素子201Aと透過型光変調素子201Bを用いて照明光を変調し、両方の光変調素子により変調された表示光を一つの投射レンズ600を用いてスクリーンSCに投射する点で、実施形態1および他の比較例と共通する。
【0048】
比較例3では、透過型光変調素子201Bからの表示光を投射レンズ600の方向に偏向するための全反射ミラー805を設けるが、透過型光変調素子201Aからの表示光は光学素子を経由させずに投射レンズ600に入射させる。透過型光変調素子201A、透過型光変調素子201B、全反射ミラー805の相対位置を適宜調整しておけば、透過型光変調素子201Aからの表示画像702Aと透過型光変調素子201Bからの表示画像702Bを、隣り合わせて表示することができる。
【0049】
比較例3では、比較例1のような偏光ビームスプリッタ800に起因した色むらの発生や、比較例2のようなハーフミラー804に起因した光量損失の発生は、抑制され得る。しかしながら、比較例3では、透過型光変調素子201Aからの表示画像702Aと透過型光変調素子201Bからの表示画像702Bの境界近傍の輝度が低下するために、画面の境界が目立つという問題が生じた。
【0050】
というのも、表示画像702Aと表示画像702Bをスクリーン上で隣接させようとすると、表示画像702Aからの表示光の光軸を全反射ミラー805の端に一致させるとともに、表示画像702Bからの表示光の光軸を全反射ミラー805の端に一致させる必要がある。先に述べたように例えば投射レンズ600のFナンバーがF2.5であれば、光束は±12度の角度範囲から入射し、しかも全反射ミラー805は厚みを有している。このため、全反射ミラー805の端部付近においては、透過型光変調素子201Bからの表示光の一部が全反射ミラー805で反射されなかったり、透過型光変調素子201Aからの表示光の一部が全反射ミラー805により遮蔽されたりして、ロスが生じるのである。
【0051】
以上の事から、比較例3の投射型表示装置では、全反射ミラー805の端部付近において上述したロスが発生するため、実施形態1に比べて画面の境界が目立っていた。すなわち、実施形態1の投射型表示装置の方が、表示画像の画質が優れていた。
【0052】
[実施形態2]
実施形態1では、透過型光変調素子、ルーフプリズム、リレーレンズの相対位置関係を予め機械的に調整することで、隣り合う表示画像700Aと表示画像700Bの画面の境界は目立たなくしていた。すなわち、各々の透過型光変調素子から出射された表示画像の端部がルーフプリズムの頂点にできるだけ近接するように、各光学素子の相対位置関係を機械的に調整していた。
【0053】
実施形態2では、機械的に必要とされる調整精度を緩和するため、光変調素子の変調エリアサイズを表示画像エリアサイズよりも大きくし、サイズ的に冗長性を持たせておく。そして、変調エリアがカバーする領域内に、ルーフプリズムの頂点が包含されるように、透過型光変調素子、ルーフプリズム、リレーレンズの相対位置関係を機械的に調整する。この時に必要な機械的な調整精度は、実施形態1よりも緩いものでよい。そして、機械的な調整結果に基づいて光変調素子の駆動を電気的に補正する。すなわち、変調エリア内における表示画像の位置を、機械的な調整結果に基づいて補正する。
【0054】
まず、
図2(b)に示したスクリーンSC上の表示画像700Aと表示画像700Bを、Y方向に沿って隙間なく隣接させるための水平方向位置の調整方法を説明する。
図6は、実施形態2に係る調整方法を説明するための模式図で、透過型光変調素子201A、リレーレンズ300A、ルーフプリズム401、および中間像500Aの位置関係が、図の中央に示されている。また、図の右側のエリア4Aには、透過型光変調素子201Aをリレーレンズ300A側から見た平面図が示され、図の上側のエリア4Bには、中間像500Aをルーフプリズム401側から見た平面図が示されている。尚、透過型光変調素子201B、リレーレンズ300B、および中間像500Bについては図示と説明を省略するが、以下の説明を参酌のうえ、投射レンズの光軸に対して対称に配置されていると考えれば、容易に理解できるであろう。
【0055】
エリア4Aに示されるように、透過型光変調素子201Aは、表示する画像の水平サイズDXよりも大きな変調エリアMXを備えている。そして、透過型光変調素子201Aからリレーレンズ300Aを経て照射される光束の範囲内に、ルーフプリズム401の頂点が包含されるように、透過型光変調素子201A、リレーレンズ300A、ルーフプリズム401の位置関係を調整する。すると、リレーレンズ300Aを経た光束のうち、ルーフプリズム401の頂点よりもX方向を通過する光線は、ルーフプリズム401で反射されることはない。そこで、まさにルーフプリズム401の頂点に表示画像の水平端が位置するように、透過型光変調素子201Aの変調エリアMX内における画像表示位置を補正する。具体的には、透過型光変調素子201Aを駆動するための画像信号において、水平同期信号を基準にして、表示を行わない水平ブランキング期間の長さを調整し、変調エリアMX内に適宜の幅の非表示領域BLHを設定する。これにより、ルーフプリズム401の頂点に照射される位置に表示画像の水平端が位置することになり、
図2(a)のように表示画像が水平方向に離れることなく、
図2(b)のように2画面の画像を水平方向に隣接させることができる。尚、透過型光変調素子201Aの非表示領域BLHから出射される光は、
図6に示したようにルーフプリズム401で反射されることはないが、投射型表示装置内における迷光を防止するために、非表示領域BLHは表示画像における黒と同一の輝度レベルになるよう照明光を変調し、光変調素子から光が出射しないように制御するのが望ましい。
【0056】
本実施形態では、光変調素子は、変調エリアMXと表示画像の水平サイズDXの差分に相当する冗長性を有しており、水平方向の画像表示位置を調整できるため、機械的な位置調整の要求精度が緩和されている。
【0057】
次に、
図2(b)に示した表示画像700Aと表示画像700Bが、スクリーンSC上でZ方向にずれないように垂直方向位置を調整する方法を説明する。
図7は、実施形態2に係る調整方法を説明するための図で、ルーフプリズム401と中間像500Aおよび中間像500Bの位置関係が、図の下部に示されている。また、図の上側のエリア5Aには、中間像500Aと中間像500Bをルーフプリズム401側から見た平面図が示されている。
【0058】
エリア5Aに示された中間像からわかるように、透過型光変調素子201Aおよび透過型光変調素子201Bは、表示する画像の垂直サイズDZよりも大きな変調エリアMZを備えている。すなわち、光変調素子は、変調エリアMZと表示画像の垂直サイズDZの差分に相当する冗長性を有している。透過型光変調素子201Aと透過型光変調素子201Bの位置調整がZ方向にずれていた場合には、各々の変調エリア内における画像表示位置を補正する。具体的には、透過型光変調素子201Aを駆動するための画像信号において、垂直同期信号を基準にして、表示を行わない垂直ブランキング期間を設定し、変調エリアMZ内に非表示領域BLVAを設定する。同様に、透過型光変調素子201Bを駆動するための画像信号において、垂直同期信号を基準にして、表示を行わない垂直ブランキング期間を設定し、変調エリアMZ内に非表示領域BLVBを設定する。非表示領域BLVAと非表示領域BLVBの位置と大きさを、光変調素子のZ方向の位置ずれに応じて調整することにより、中間像500Aと中間像500BのZ方向の位置を合わせることができる。尚、非表示領域BLVAと非表示領域BLVBについては、表示画像における黒と同一の輝度レベルになるよう照明光を変調し、光変調素子から光が出射しないように制御する。
【0059】
本実施形態では、光変調素子は、変調エリアMZと表示画像の垂直サイズDZの差分に相当する冗長性を有しており、垂直方向の画像表示位置を調整できるため、機械的な位置調整の要求精度が緩和されている。
【0060】
尚、表示画像の水平方向と垂直方向の両方について光変調素子に冗長性を持たせてもよいし、いずれか一方だけに冗長性を持たせてもよい。冗長性を持たせた方向について、光変調素子の機械的な位置調整の要求精度を緩和させることができる。
【0061】
[実施形態3]
実施形態1~実施形態2では、透過型光変調素子を用いて投射型表示装置を構成する例を示したが、本発明は、反射型光変調素子を用いて実施することも可能である。すなわち、マイクロミラーデバイスをアレイ状に設けたDMDや反射型液晶デバイスのような反射型光変調素子を用いて、実施形態1~実施形態2に対応する投射型表示装置を構成することも可能である。
【0062】
図8は、実施形態3にかかる投射型表示装置の光学的な構成を示す模式図である。投射型表示装置は、反射型光変調素子200Aおよび反射型光変調素子200Bを備えている。例えばレーザダイオードやLED等の発光素子を備えた光源装置100が発する照明光は、ハーフミラー190により半分が反射されて、反射型光変調素子200Aに入射する。画像信号に応じて変調された照明光は、リレーレンズ300Aに向けて表示光として反射される。一方、ハーフミラー190を透過した半分の照明光は、全反射ミラー191を経て、反射型光変調素子200Bに入射する。画像信号に応じて変調された照明光は、リレーレンズ300Bに向けて表示光として反射される。そして、リレーレンズ、ルーフプリズム、投射レンズは、透過型光変調素子を用いた実施形態1~実施形態2と同様の作用効果を奏することができるが、ここでは重複する説明は省略する。
【0063】
反射型光変調素子を用いて構成される本実施形態の投射型表示装置も、2つの光変調素子からの表示画像をスクリーン上に隣り合わせて表示するが、あらかじめ中間像相互の位置、大きさ、傾き、合焦状態が整合されている。このため、オペレータは、例えばズーム倍率や画像全体の合焦の調整を行う必要がある時に、投射レンズのみを調整すればよく、従来のように2つの光変調素子それぞれの投射光学系を調整する必要がない。
【0064】
[実施形態4]
実施形態1にて説明したように、ルーフプリズムの頂角αは、例えば90度とすることができるが、90度以外であっても、60度以上で90度以下の範囲内であれば好適に光学系を構成することが可能である。
図9は、実施形態3と同様に反射型の光変調素子を備えるが、頂角αが90度ではなく60度のルーフプリズム402を備えた実施形態4にかかる投射型表示装置の光学的な構成を示す模式図である。
【0065】
ルーフプリズムの頂角αが90度の実施形態3では、リレーレンズを通る主光線が、ルーフプリズムの反射面に入射する入射角を45度に設定していた。これに対して、本実施形態では、ルーフプリズム402の頂角αを60度とし、リレーレンズ300A(及びリレーレンズ300B)の光軸LA(及び光軸LB)を通る主光線が、ルーフプリズム402の反射面に入射する入射角を60度に設定した。また、本実施形態では、反射型光変調素子に照明光を導くのに、実施形態3とは異なり全反射ミラー191を用いずにハーフミラー190のみで導いている。
【0066】
このように、ルーフプリズムの頂角αを60度以上で90度以下の範囲内において適宜に設定することにより、リレーレンズの光軸LAおよび光軸LBと、投射レンズ600の光軸LXとが交差する角度を、90度から適宜ずらすことができる。投射型表示装置内における光学素子のレイアウトが変更できるため、投射型表示装置のY方向の外寸を小型化したり、投射型表示装置内の冷却構造を最適化することができる。
【0067】
[実施形態5]
図10は、実施形態5にかかる投射型表示装置の光学的な構成を示す模式図である。
本実施形態では、投射レンズとして、レンズ601とフィールドレンズ602を備えたフィールドレンズ型投射レンズを用いている。この場合、リレーレンズの中間像500Aおよび中間像500Bの位置が、凸レンズであるフィールドレンズ602の内部になるように、ルーフプリズム、リレーレンズ、光変調素子を配置することができる。尚、光変調素子は、透過型光変調素子でも反射型光変調素子でもよい。
中間像を凸レンズの内部に配置することにより、投射レンズにおける収差の補正量を軽減することができるため、投射レンズを構成するレンズ枚数を削減することができ、装置の小型化、低コスト化を図ることができる。
【0068】
[実施形態6]
以上の実施形態1~実施形態5では、リレーレンズによる中間像が投射レンズの光軸と直交する平面上に結像される例を説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限られるわけではなく、中間像の結像面を湾曲させたり、中間像の結像面が投射レンズの光軸とは直交しないように傾けたりすることができる。
【0069】
例えば、
図11(a)は、実施形態5にかかる投射型表示装置の光学的な構成を示す模式図である。ルーフプリズム401の反射面401RAと反射面401RBを、平坦面ではなく曲面形状にし、中間像500Aの結像面と中間像500Bの結像面をそれぞれ湾曲させている。そして、中間像500Aと中間像500Bが投射レンズ600の光軸LX付近にて球面Rに沿ってスムーズに隣接するように、リレーレンズ300Aの光軸LAとリレーレンズ300Bの光軸LBをそれぞれY方向に対して傾斜させている。尚、
図11(a)においては、反射面401RAと反射面401RBの曲面形状と、光軸LAと光軸LBの傾斜は簡単に図示されており、厳密に図示されているわけではない。尚、中間像の結像面を湾曲させるには、リレーレンズの設計を変更し、収差を意図的にコントロールすることにより結像面を湾曲させてもよい。
【0070】
このように、中間像500Aの結像面と中間像500Bの結像面を湾曲させて、球面に近似して接続するように配置した本実施形態の投射型表示装置では、投射レンズ600の像面湾曲収差の影響を小さくできるため、実施形態1~実施形態5に比べて投射される表示画像の画質を向上することができる。あるいは、投射される表示画像の像面湾曲収差が実施形態1~実施形態5と同等で可とするなら、本実施形態では投射レンズ600における像面湾曲補正が軽度で済むため、投射レンズ600を構成するレンズの枚数を削減することが可能となり、装置の小型軽量化や低コスト化につながる。
【0071】
また、
図11(b)は、実施形態5の別の例にかかる投射型表示装置の光学的な構成を示す模式図である。
図11(a)の例では、ルーフプリズム401の反射面401RAと反射面401RBの形状を曲面形状にしたが、
図11(b)では、反射面は平坦面のままリレーレンズの中間像の結像面が投射レンズの光軸とは直交しないようにしている。この例では、中間像500Aと中間像500Bのそれぞれの結像面は平坦であるが、投射レンズ600の光軸LXから遠い位置ほど結像面が投射レンズ600に近づくように傾斜させている。すなわち、
図11(b)において、中間像500Aと中間像500Bの結像面は、投射レンズの光軸LXを対称軸としてV字型になるよう配置されている。中間像をこのように配置するためには、リレーレンズ300Aの光軸LAとリレーレンズ300Bの光軸LBをそれぞれY方向に対して傾斜させるか、あるいはルーフプリズム401の頂角αをより大きくするか、あるいはその両方を行うかすればよい。
【0072】
図11(b)の例は、ルーフプリズム401の反射面を曲面にする必要がないため、
図11(a)例よりもルーフプリズムの製造が簡単である。この例でも、中間像500Aと中間像500Bのそれぞれの結像面は、投射レンズ600の光軸LXから遠い位置ほど結像面が投射レンズ600に近づくため、投射レンズ600の像面湾曲収差の影響を小さくすることができ、実施形態1~実施形態4に比べて投射される表示画像の画質を向上することができる。あるいは、投射される表示画像の像面湾曲収差が実施形態1~実施形態5と同等で可とするなら、本実施形態では投射レンズ600における像面湾曲補正が軽度で済むため、投射レンズを構成するレンズの枚数を削減することが可能となり、装置の小型軽量化や低コスト化につながる。
【0073】
[その他の実施形態]
本発明の実施は、上述した実施形態や具体的な実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で多くの変形が可能である。上述した各実施形態は、単独で実施してもよいし、一つの投射型表示装置において複数の実施形態を組合わせて実施してもよい。
【0074】
2つの光変調素子に入力する画像信号は、単一の画像を分割した分割画像でもよいし、全く別の画像でもよい。画像信号の供給源は、単一のコンピュータでもよいし、別のコンピュータでもよい。
【0075】
例えば、
図12(a)に示すように、別々のコンピュータから入力される画像信号を、投射型表示装置内の別々の光変調素子に入力し、表示画像700Aと表示画像700Bを水平に並べて投射してもよい。
【0076】
あるいは、
図12(b)に示すように、別々のコンピュータから入力される画像信号を、投射型表示装置内の別々の光変調素子に入力し、表示画像700Aと表示画像700Bを垂直に並べて投射してもよい。
【符号の説明】
【0077】
1・・・投射型表示装置/100A、100B・・・照明用光源/200A、200B・・・反射型光変調素子/201A、201B・・・透過型光変調素子/300A、300B・・・リレーレンズ/401・・・ルーフプリズム/401RA、401RB・・・反射面/402・・・ルーフプリズム/403A、403B・・・板状ミラー/500A、500B・・・中間像/600・・・投射レンズ/602・・・フィールドレンズ/700A、700B、701A、701B、702A、702B・・・表示画像/800・・・偏光ビームスプリッタ/802・・・ミラー/803・・・偏光ビームスプリッタ/804・・・ハーフミラー/805・・・全反射ミラー/BLVA、BLVB・・・非表示領域/BLH・・・非表示領域/DX・・・表示する画像の水平サイズ/DZ・・・表示する画像の垂直サイズ/ILA、ILB・・・照明光/LX・・・投射レンズの光軸/MX・・・変調エリア/MZ・・・変調エリア/SC・・・スクリーン