(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】サクションストレーナ
(51)【国際特許分類】
B01D 35/02 20060101AFI20220610BHJP
B01D 24/00 20060101ALI20220610BHJP
B01D 29/00 20060101ALI20220610BHJP
B01D 29/07 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
B01D35/02 E
B01D29/00 A
B01D29/06 510A
B01D29/06 510D
(21)【出願番号】P 2020190907
(22)【出願日】2020-11-17
(62)【分割の表示】P 2019141972の分割
【原出願日】2019-08-01
【審査請求日】2020-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000178675
【氏名又は名称】ヤマシンフィルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170070
【氏名又は名称】坂田 ゆかり
(72)【発明者】
【氏名】橋本 茂
(72)【発明者】
【氏名】北島 信行
【審査官】寺▲崎▼ 遥
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-006830(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0200764(US,A1)
【文献】特開平09-141011(JP,A)
【文献】特開2004-077923(JP,A)
【文献】登録実用新案第3141574(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 29/00-29/96
B01D 35/00-35/04
F01M 11/00-13/06
F02M 37/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油が貯留されるタンク内に設けられるサクションストレーナであって、
薄板をプリーツ状に折り曲げて形成された略筒状の濾過部と、
前記濾過部の上端全面を覆う上プレートであって、空気抜き孔が形成された上プレートと、
前記空気抜き孔を塞ぐ位置と、前記空気抜き孔を開口させる位置との間で移動可能に設けられた移動部材と、
を備え、
前記移動部材は、上端部に設けられた第1ストッパと、下端部に設けられた第2ストッパと、前記第1ストッパと前記第2ストッパとの間を連結する棒状部材と、を有し、
前記第1ストッパ及び前記第2ストッパは、平面視において直径が前記空気抜き孔の直径より大きく、
前記棒状部材は、平面視において直径が前記空気抜き孔の直径より小さく、
前記第2ストッパ及び前記棒状部材には、長手方向に沿ってすり割りが形成されており、
前記棒状部材には、径方向に沿った孔が設けられており、
前記孔は、前記すり割りにより前記棒状部材の内部に形成された空間と、前記棒状部材の外部とを連通する
ことを特徴とするサクションストレーナ。
【請求項2】
請求項1に記載のサクションストレーナであって、
前記第1ストッパは、略半球形状又は略円錐台形状であり、
前記第1ストッパと前記空気抜き孔とが線で接触する
ことを特徴とするサクションストレーナ。
【請求項3】
請求項1に記載のサクションストレーナであって、
前記第1ストッパは、略板状であり、
前記第1ストッパの下側の面に、突起が設けられて
おり、
前記突起は、平面視略円環形状であり、断面形状が略三角形状又は略半円形状である
ことを特徴とするサクションストレーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サクションストレーナに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ストレーナの第一蓋部材に、一端がストレーナエレメントの内部空間に開口するとともに、他端が作動油タンクの内部に開口する弁通路を有した弁本体と、弁通路に設けた弁座に対して上下方向に移動可能に配設し、自重で弁座に当接して弁通路を閉状態とする弁体と、を有するチェック弁が設けられたストレーナ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、弁通路を有した弁本体を第一蓋部材に設ける必要があり、チェック弁が大型化するという問題がある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、小型で簡単な構成の空気抜き構造を用いて気泡を除去することができるサクションストレーナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るサクションストレーナは、例えば、油が貯留されるタンク内に設けられるサクションストレーナであって、薄板をプリーツ状に折り曲げて形成された略筒状の濾過部と、前記濾過部の上端全面を覆う上プレートであって、空気抜き孔が形成された上プレートと、前記空気抜き孔を塞ぐ位置と、前記空気抜き孔を開口させる位置との間で移動可能に設けられた移動部材と、を備え、前記移動部材は、上端部に設けられた第1ストッパと、下端部に設けられた第2ストッパと、前記第1ストッパと前記第2ストッパとの間を連結する棒状部材と、を有し、前記第1ストッパ及び前記第2ストッパは、平面視において直径が前記空気抜き孔の直径より大きく、前記棒状部材は、平面視において直径が前記空気抜き孔の直径より小さく、前記第2ストッパ及び前記棒状部材には、長手方向に沿ってすり割りが形成されており、前記棒状部材には、径方向に沿った孔が設けられており、前記孔は、前記すり割りにより前記棒状部材の内部に形成された空間と、前記棒状部材の外部とを連通することを特徴とする。
【0007】
本実施の形態によれば、小型で簡単な構成の空気抜き構造を用いて気泡を除去することができる。特に、空気抜き部を移動部材のみで構成することで、小型で簡単な構成の空気抜き構造とすることができる。また、すり割りを設けることで上プレートに移動部材を容易に設けることができる。さらに、空気抜き孔、すり割り及び孔を介して上プレートの下側に溜まった空気を放出することができる。
【0008】
ここで、前記第1ストッパは、略半球形状又は略円錐台形状であり、前記第1ストッパと前記空気抜き孔とが線で接触してもよい。また、前記第1ストッパは、略板状であり、
前記第1ストッパの下側の面に突起が設けられていてもよい。これにより、移動部材とプレートとの密着を防ぎつつ、移動部材が空気抜き孔を塞ぐことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、小型で簡単な構成の空気抜き構造を用いて気泡を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態であるサクションストレーナ1が内部に設けられた作動油タンク100の概略を示す図である。
【
図2】サクションストレーナ1の概略を示す斜視図である。
【
図5】サクションストレーナ2の概略を示す斜視図である。
【
図6】空気抜き部20Aの概略を示す断面図である。
【
図7】空気抜き部20Aの概略を示す断面図である。
【
図8】変形例に係る空気抜き部20Bの概略を示す断面図である。
【
図9】変形例に係る空気抜き部20Bの概略を示す断面図である。
【
図10】サクションストレーナ3の概略を示す斜視図である。
【
図11】空気抜き部20Cの概略を示す断面図である。
【
図12】空気抜き部20Cの概略を示す断面図である。
【
図13】変形例に係る空気抜き部20Dの概略を示す断面図である。
【
図14】変形例に係る空気抜き部20Dの概略を示す断面図である。
【
図15】変形例に係る空気抜き部20Eの概略を示す断面図である。
【
図16】変形例に係る空気抜き部20Eの概略を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の一実施形態であるサクションストレーナ1が内部に設けられた作動油タンク100の概略を示す図である。
図1では、作動油タンク100の要部を透視して図示している。
【0012】
作動油タンク100は、図示しない作業機械(例えば、油圧装置)に設置されるものであり、この油圧装置へ供給する作動油の油圧回路内に設けられた、作動油を貯留するためのタンクである。油圧回路において、作動油は、油圧装置を通って作動油タンク100へ導入される。作動油タンク100は、例えば箱形のタンク本体101を備えており、このタンク本体101はその内部が空洞となっている。タンク本体101の内側には、主として、サクションストレーナ1と、リターンフィルタ110と、が設けられる。
【0013】
タンク本体101の側面には、作動油をタンク本体101の内部へ流入させる流入口101aが形成される。流入口101aから流入した作動油は、リターンフィルタ110に導かれる。作動油は、リターンフィルタ110により濾過されて、作動油タンク100内に貯留される。
【0014】
また、タンク本体101の上端部には、サクションストレーナ1やリターンフィルタ110のメンテナンス等に利用する開口部101b、101cが形成される。開口部101bには、蓋体102が取り付けられ、開口部101cには、蓋体103が取り付けられる。
【0015】
蓋体102、103の周縁部には、ボルト挿通孔が形成される。ボルト挿通孔に挿通されたボルト105をタンク本体101のボルト孔(図示せず)に螺合することにより、蓋体102、103はタンク本体101に締結される。
【0016】
タンク本体101の下端部近傍(本実施の形態では、タンク本体101の側面の、底面に近い位置)には、タンク本体101内の作動油を油圧ポンプ(図示せず)へ流出させる流出口101dが形成される。流出口101dには、タンク本体101の外側から、油圧ポンプ(図示せず)の吸い込みポートへ繋がるサクションパイプ104が嵌挿されている。
【0017】
流出口101dの上側(タンク本体101の内側)には、サクションパイプ104への異物の進入を防止するため、サクションストレーナ1が設けられる。作動油タンク100内に貯留された作動油は、油圧ポンプ(図示せず)に吸引されて、サクションストレーナ1を介してサクションパイプ104へ流出し、再度油圧装置へ供給される。
【0018】
なお、流出口101dは、タンク本体101の下端部近傍であれば、
図1に示す位置に限定されない。例えば、流出口101dをタンク本体101の底面に形成してもよい。
【0019】
タンク本体101の底面には、サクションストレーナ1が設けられる空間と、リターンフィルタ110が設けられる空間と、を分割する仕切板101eが設けられる。なお、仕切板101eは必須ではない。
【0020】
図2は、サクションストレーナ1の概略を示す斜視図である(ただし、断面を示すハッチングを省略している)。サクションストレーナ1は、主として、ストレーナ部10と、空気抜き部20と、ストレーナ部10に接続されるロッド部30とを有する。
【0021】
ストレーナ部10は、略円筒形状の部材であり、流出口101dの上側に載置される(
図1参照)。
【0022】
図2に示すように、ストレーナ部10は、主として、濾過部11と、内筒12と、プレート15、16と、を有する。
【0023】
内筒12は、両端に開口を有する略中空円筒形状の部材であり、耐腐食性の高い材料(例えば、ステンレスや樹脂)を用いて形成される。内筒12には、略全域に作動油が通過する孔が形成されている。
【0024】
内筒12の外側には、濾過部11が設けられる。濾過部11は、径方向に厚みを有する略円筒形状である。濾過部11の高さは、内筒12の高さと略同じである。濾過部11は、略全域に孔が形成されたシート状の薄板をプリーツ状に折り曲げて、折り曲げた薄板の両端を連結して円筒状に丸めることによって形成される。なお、本実施の形態では、濾過部11は、細線がメッシュ状に編みこまれた目の細かな金属(例えば、ステンレス)製の金網により形成されているが、合成樹脂や紙等を用いたろ紙を用いてもよい。濾過部11は作動油を濾過するためのものである。
【0025】
濾過部11及び内筒12の一方の端にはプレート15が設けられ、他方の端にはプレート16が設けられる。プレート15及びプレート16は、略円板状又は有底略円筒形状の部材であり、樹脂又は金属を用いて形成される。
【0026】
プレート15及びプレート16は、濾過部11及び内筒12の端(開口)を覆うように設けられる。言い換えれば、プレート15及びプレート16は、濾過部11及び内筒12を挟持する。
【0027】
プレート15は、濾過部11及び内筒12の上端全面を覆い、濾過部11の軸axと略直交する面15aを有する。面15aには、空気抜き孔15bが形成されている。空気抜き孔15bは、平面視において(z方向から見て)、棒状部材21(後に詳述)の周囲に複数設けられている。本実施の形態では、空気抜き孔15bは、平面視において棒状部材21の中心軸ax2を中心とした円Cに沿って複数設けられている。この円Cの直径は、棒状部材21の直径より大きい。
【0028】
プレート15には、棒状部材21(後に詳述)が設けられている。棒状部材21及び移動部材22は空気抜き部20である。空気抜き部20については後に詳述する。
【0029】
プレート16には、濾過部11及び内筒12の下端全面を覆い、流出口101dに外嵌される円筒状の嵌合部16aが形成される。嵌合部16aの内周面に設けられたシール部材17は、プレート16と流出口101dとの間から、作動油がストレーナ部10内へ浸入するのを防止する。
【0030】
ロッド部30は、主として、ロッド31と、取付部32と、を有する。ロッド31は、ストレーナ部10から上方に向かって延びる姿勢で配置される。ロッド31の上端部には、蓋体103の裏面に形成された取付部(図示せず)に取り付けられる取付部32が設けられる。
【0031】
取付部32の内部には、全長が縮んだ状態でばね(図示省略)が設けられる。ばねは、サクションストレーナ1がタンク本体101の内部に設けられた状態において、ロッド31、すなわちストレーナ部10を下方(-z方向)へ付勢する。
【0032】
蓋体103をタンク本体101から取り外し、ロッド31の上端部を引っ張ることで、メンテナンス時等にサクションストレーナ1をタンク本体101から引き出すことができる。
【0033】
次に、空気抜き部20について説明する。
図3、4は、空気抜き部20の概略を示す断面図である。
図3は、移動部材22が下端位置に位置する場合を示し、
図4は、移動部材22が上端位置に位置する場合を示す。空気抜き部20は、主として、棒状部材21と、移動部材22とを有する。
【0034】
棒状部材21は、プレート15の面15aに固定された部材であり、主として、金属製の本体部211と、樹脂製のガイド部215と、を有する。本体部211は、棒状部212が面15aに形成された孔15cを貫通し、棒状部212の下端部に設けられたストッパ213が面15aの裏面に溶接等により固定されることで、プレート15に設けられる。
【0035】
棒状部212の周囲には、ガイド部215が設けられている。移動部材22は、ガイド部215の外周面に沿って移動する。
【0036】
棒状部212の上端部には、移動部材22の移動を止めるストッパ214が設けられる。ストッパ214の直径は、本体部211及びガイド部215の直径より大きい。
【0037】
移動部材22は、棒状部212が挿入される孔22aが設けられた板状の部材である。移動部材22は、作動油の密度と同程度又はそれ以上の材料(金属でも樹脂でもよい)を用いて形成される。移動部材22の内径は円Cの直径より小さく、移動部材22の外径は円Cの直径より大きい。移動部材22は、面15aとストッパ214との間に設けられており、空気抜き孔15bを塞ぐ位置と、空気抜き孔15bを開口させる位置との間で上下方向(z方向)に移動可能である。
【0038】
移動部材22の下側の面22bには、突起22c、22dが設けられている。突起22c、22dは、平面視略円環形状であり、面22bが面15aと密着してしまうことを防止する。
【0039】
突起22cは移動部材22の内周面(すなわち、孔22a)の近傍に形成され、突起22dは移動部材22の外周面22eの近傍に形成されている。また、
図3の示すような断面視において、空気抜き孔15bは、突起22cと突起22dとの間に位置する。したがって、突起22c、22dが面15aと当接することで、移動部材22により空気抜き孔15bが覆われる。
【0040】
図3に示すように、移動部材22が下端に位置するときは、移動部材22が空気抜き孔15bを塞ぐ。それに対し、移動部材22が上方向(+z方向)に移動してストッパ214と当接する上端位置では、空気抜き孔15bが開口する。
【0041】
次に、このように構成されたサクションストレーナ1の機能について説明する。まず、作動油が貯蔵されたタンク本体101に、サクションストレーナ1を取り付ける。取付部32が上(+z方向)に位置するようにロッド31を保持し、サクションストレーナ1を下方(-z方向)へ押し下げる。
【0042】
ストレーナ部10の上端はプレート15により覆われているため、サクションストレーナ1をタンク本体101内部に取り付けるときには、内筒12の内側、すなわちプレート15の下側に空気が溜まる。プレート15の下側に溜まった空気が空気抜き孔15bを介して移動部材22を+z方向へ押し上げ、その結果空気抜き孔15bが開かれ、プレート15の下側に溜まった空気がストレーナ部10内部からタンク本体101の外に放出される。これにより、サクションストレーナ1がタンク本体101にセットされ、サクションストレーナ1の機能が発揮できるようになる。
【0043】
タンク本体101に貯蔵された作動油は、油圧ポンプ(図示せず)に吸引されると、濾過部11の外側から、サクションストレーナ1のストレーナ部10内部へ吸い込まれる。作動油は、濾過部11で塵埃等が除去されて、内筒12の内部へ流出する。内筒12の内部へ流出した油は、下方からストレーナ部10の外へ流出する。
【0044】
作動油が濾過部11の外側からストレーナ部10内部へ吸い込まれるとき、作動油に含まれる気泡も、作動油と一緒にストレーナ部10内部へ吸い込まれる。ストレーナ部10内部へ吸い込まれた気泡が大きくなって上昇し、ある程度の量の空気がプレート15の下側に溜まると、プレート15の下側に溜まった空気が空気抜き孔15bを介して移動部材22を+z方向へ押し上げ、空気抜き孔15bが開かれ、プレート15の下側に溜まった空気がストレーナ部10内部からタンク本体101の外に放出される。
【0045】
なお、サクションストレーナ1で作動油の濾過及び気泡の除去が行われている間は、油圧ポンプ(図示せず)に吸引される力により移動部材22に下向きの力が付勢される。移動部材22の重力及び移動部材22に作用する下向きの力により、移動部材22が空気抜き孔15bを覆うことで、気泡が除去されていない作動油が内筒12の内側に流入しない。
【0046】
本実施の形態によれば、ストレーナ部10内部、すなわちプレート15の下側に溜まった空気を、ストレーナ部10内部からタンク本体101に放出することができる。また、移動部材22を小型化し、板状の移動部材22を棒状部材21に沿って移動させる簡単な構成の空気抜き部20とすることができる。
【0047】
<第2の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態では、移動部材22を上下方向に移動させて、空気抜き孔15bを開閉したが、空気抜き孔を開閉する形態はこれに限られない。
【0048】
本発明の第2の実施の形態は、板状の移動部材を回動させて空気抜き孔を開閉する形態である。以下、第2の実施の形態にかかるサクションストレーナ2について説明する。なお、第1の実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0049】
図5は、サクションストレーナ2の概略を示す斜視図である(ただし、断面を示すハッチングを省略している)。サクションストレーナ2は、主として、ストレーナ部10Aと、空気抜き部20Aと、ストレーナ部10Aに接続されるロッド部30とを有する。
【0050】
ストレーナ部10Aは、主として、濾過部11と、内筒12と、プレート15A、16と、を有する。空気抜き部20Aは、主として、ヒンジ23と、移動部材24と、を有する。プレート15Aは面15aを有し、面15aには空気抜き孔15dが形成されている。空気抜き孔15dは、平面視において(z方向から見て)、ロッド31の近傍に設けられているが、空気抜き孔15dの位置はこれに限られない。
【0051】
図6、7は、空気抜き部20Aの概略を示す断面図である。
図6は、移動部材24が空気抜き孔15dを覆う位置に配置された場合を示し、
図7は、移動部材24が空気抜き孔を開口させる位置に配置された場合を示す。
【0052】
ヒンジ23は、面15aの空気抜き孔15dに隣接する位置に設けられており、面15aに固定された土台部231と、土台部231に設けられた回動軸232と、を有する。回動軸232は、面15aと略平行であり、サクションストレーナ2がタンク100内部に設けられた状態において水平方向に略沿っている。
【0053】
移動部材24は、作動油の密度と同程度又はそれ以上の材料(金属でも樹脂でもよい)を用いて形成される。移動部材24は、略板状の部材であり、端部24aが回動軸232に設けられている。これにより、移動部材24は、回動軸232を中心に回動可能である。なお、移動部材24の平面視における形状は、略円形でもよいし、略矩形形状でもよい。
【0054】
移動部材24の下側の面24cには、突起24bが設けられている。突起24bは、平面視円環状であり、断面形状が略三角形状又は略半円形状である。したがって、突起24bは、面24cと面15aとが密着することを防止する。
【0055】
次に、サクションストレーナ2の作用について説明する。サクションストレーナ2の作用のうち、サクションストレーナ1の作用と同じ部分については説明を省略する。
【0056】
プレート15の下側に溜まった空気により、空気抜き孔15dを介して移動部材24が押し上げられると、移動部材24は、回動軸232を中心に回動し(
図6矢印参照)、
図6に示す空気抜き孔15dを塞ぐ位置から
図7に示す空気抜き孔15dを開口させる位置へと移動する。その結果、空気抜き孔15dが開放され、プレート15の下側に溜まった空気がストレーナ部10の外へ放出される。
【0057】
タンク本体101に貯蔵された作動油が油圧ポンプ(図示せず)に吸引されると、油圧ポンプ(図示せず)に吸引される力により移動部材24が回動軸232を中心に空気抜き孔15dを塞ぐ方向に回動し(
図7矢印参照)、移動部材24が空気抜き孔15dを覆う。これにより、気泡が除去されていない作動油が内筒12の内側に流入しなくなる。
【0058】
本実施の形態によれば、ストレーナ部10内部、すなわちプレート15の下側に溜まった空気を、ストレーナ部10内部からタンク本体101の外に放出することができる。また、回動軸232を中心に板状の移動部材24を回動させる構成とすることで、移動部材24が空気抜き孔15dを塞ぐ位置にあるときにプレート15の上側に空気抜き部20Aが突出しないようにすることができる。また、空気抜き部20Aを小型で簡単な構成にすることができる。
【0059】
なお、本実施の形態では、回動軸232を中心に板状の移動部材24を回動させたが、移動部材の形状はこれに限られない。
図8、9は、変形例に係る空気抜き部20Bの概略を示す断面図である。空気抜き部20Bは、主として、ヒンジ23と、移動部材24Aと、を有する。
図8は、移動部材24Aが空気抜き孔15dを覆う位置に配置された場合を示し、
図9は、移動部材24Aが空気抜き孔を開口させる位置に配置された場合を示す。
【0060】
移動部材24Aは、略板状の板状部24dを有し、板状部24dの端部24aが回動軸232に設けられている。これにより、移動部材24Aは、回動軸232を中心に回動可能である。
【0061】
また、板状部24dは、板状部24dから下向きに突出する球状部24eを有する。球状部24eは、半径r2が空気抜き孔15dの半径r1より大きい略半球状に形成されている。球状部24eの先端(下端)が空気抜き孔15dに挿入されることで、移動部材24Aが空気抜き孔15dを塞ぐ。球状部24eと空気抜き孔15dとは線で接触するため、面24cが面15aと密着することを防止する。
【0062】
プレート15の下側に溜まった空気の圧縮力で移動部材24Aが押し上げられると、移動部材24Aは、回動軸232を中心に回動し(
図8矢印参照)、
図8に示す空気抜き孔15dを塞ぐ位置から
図9に示す空気抜き孔15dを開口させる位置へと移動する。その結果、空気抜き孔15dが開放され、プレート15の下側に溜まった空気がストレーナ部10の外へ放出される。
【0063】
タンク本体101に貯蔵された作動油が油圧ポンプ(図示せず)に吸引されると、油圧ポンプ(図示せず)に吸引される力により移動部材24Aが回動軸232を中心に空気抜き孔15dを塞ぐ方向に回動し(
図9矢印参照)、移動部材24Aが空気抜き孔15dを覆う。これにより、気泡が除去されていない作動油が内筒12の内側に流入しなくなる。
【0064】
<第3の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態では、移動部材22を棒状部材21に沿って上下方向に移動させて、空気抜き孔15bを開閉したが、空気抜き孔を開閉する形態はこれに限られない。
【0065】
本発明の第3の実施の形態は、プレートに設けられた移動部材を移動させて空気抜き孔を開閉する形態である。以下、第3の実施の形態にかかるサクションストレーナ3について説明する。なお、第1の実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0066】
図10は、サクションストレーナ3の概略を示す斜視図である(ただし、断面を示すハッチングを省略している)。サクションストレーナ3は、主として、ストレーナ部10Bと、空気抜き部20Cと、ストレーナ部10Bに接続されるロッド部30とを有する。
【0067】
ストレーナ部10Bは、主として、濾過部11と、内筒12と、プレート15B、16と、を有する。空気抜き部20Cは、移動部材25を有する。プレート15Aは面15aを有し、面15aには空気抜き孔15eが形成されている。空気抜き孔15eは、平面視において(z方向から見て)、ロッド31の近傍に設けられているが、空気抜き孔15eの位置はこれに限られない。
【0068】
図11、12は、空気抜き部20Cの概略を示す断面図である。
図11は、移動部材25が空気抜き孔15eを覆う位置に配置された場合を示し、
図12は、移動部材25が空気抜き孔15eを開口させる位置に配置された場合を示す。
【0069】
移動部材25は、作動油の密度と同程度又はそれ以上の材料(金属でも樹脂でもよい)を用いて形成される。移動部材25は、全体として棒状であり、上端部に設けられた第1ストッパ25aと、下端部に設けられた第2ストッパ25bと、第1ストッパ25aと第2ストッパ25bとの間を連結する棒状部材25cと、を有する。
【0070】
第1ストッパ25aは、下向きに突出する略半球形状(略円級の下半分)の部分を有する。第1ストッパ25aと空気抜き孔15eとは線で接触するため、第1ストッパ25aが面15aと密着することを防止する。なお、第1ストッパ25aの形状はこれに限られず、例えば略球形状であってもよい。
【0071】
平面視において、棒状部材25cの直径d4は、空気抜き孔15eの直径d1より小さい。また、平面視において、第1ストッパ25aの直径d2及び第2ストッパ25bの直径d3は、空気抜き孔15eの直径d1より大きい。したがって、移動部材25は、空気抜き孔15eの内部を上下方向(z方向)に移動し、第1ストッパ25a及び第2ストッパ25bにより移動部材25が空気抜き孔15eから抜けないようにしている。
【0072】
第2ストッパ25b及び棒状部材25cには、長手方向に沿ってすり割り25dが形成されている。したがって、第2ストッパ25b及び棒状部材25cは直径が細くなる方向に変形可能であり、移動部材25を上(+z側)から空気抜き孔15eに押し込むことにより、移動部材25が面15aに設けられる。
【0073】
次に、サクションストレーナ3の作用について説明する。サクションストレーナ3の作用のうち、サクションストレーナ1の作用と同じ部分については説明を省略する。
【0074】
プレート15の下側に溜まった空気により、移動部材25が上方向(+z方向)に押し上げられる。その結果、
図11に示す移動部材25が空気抜き孔15eを塞ぐ位置から、
図12に示す空気抜き孔15eを開口させる位置へと移動する。棒状部材25cには径方向に沿った孔25fが設けられており、空気抜き孔15e、すり割り25d及び孔25fを介してプレート15の下側に溜まった空気がストレーナ部10の外へ放出される(
図12矢印参照)。
【0075】
タンク本体101に貯蔵された作動油が油圧ポンプ(図示せず)に吸引されると、油圧ポンプ(図示せず)に吸引される力により移動部材25が下方向(-z方向)に移動し、移動部材25(第1ストッパ25a)が空気抜き孔15eを覆う。これにより、気泡が除去されていない作動油が内筒12の内側に流入しなくなる。
【0076】
本実施の形態によれば、ストレーナ部10内部、すなわちプレート15の下側に溜まった空気を、ストレーナ部10内部からタンク本体101の外に放出することができる。また、空気抜き部20Cが移動部材25のみで構成されているため、小型で簡単な構成の空気抜き構造とすることができる。
【0077】
なお、本実施の形態では、移動部材25を用いたが、移動部材の形状はこれに限られない。
図13、14は、変形例に係る空気抜き部20Dの概略を示す断面図である。空気抜き部20Dは、移動部材26を有する。
図13は、移動部材26が空気抜き孔15eを覆う位置に配置された場合を示し、
図14は、移動部材26が空気抜き孔15eを開口させる位置に配置された場合を示す。
【0078】
移動部材26は、全体として棒状であり、上端部に設けられた第1ストッパ26aと、下端部に設けられた第2ストッパ26bと、第1ストッパ26aと第2ストッパ26bとの間を連結する棒状部材26cと、を有する。移動部材26を上(+z側)から空気抜き孔15eに押し込めるように、第2ストッパ26b及び棒状部材26cには、長手方向に沿ってすり割り26dが形成されている。第2ストッパ26b、棒状部材26c及びすり割り26dは、第2ストッパ25b、棒状部材25c及びすり割り25dと同様であるため、説明を省略する。
【0079】
第1ストッパ26aは、略板状であり、その直径d5は空気抜き孔15eの直径d1より大きい。したがって、移動部材26は、空気抜き孔15eの内部を上下方向(z方向)に移動し、第1ストッパ26a及び第2ストッパ26bにより移動部材26が空気抜き孔15eから抜けないようにしている。
【0080】
プレート15の下側に溜まった空気により、空気抜き孔15eを介して移動部材26が押し上げられると、移動部材26は、
図13に示す空気抜き孔15eを塞ぐ位置から
図14に示す空気抜き孔15eを開口させる位置へと移動する。棒状部材26cには径方向に沿った孔26fが設けられており、空気抜き孔15e、すり割り26d及び孔26fを介してプレート15の下側に溜まった空気がストレーナ部10の外へ放出される(
図14矢印参照)。
【0081】
タンク本体101に貯蔵された作動油が油圧ポンプ(図示せず)に吸引されると、油圧ポンプ(図示せず)に吸引される力により、移動部材26が下向きに移動し、移動部材26が空気抜き孔15eを覆う。これにより、気泡が除去されていない作動油が内筒12の内側に流入しなくなる。
【0082】
なお、第1ストッパ26aの下側(-z側)の面に、突起を設けてもよい。この突起は、突起24bと同様、平面視略円環状であり、断面形状が略三角形状又は略半円形状である。これにより、第1ストッパ26aと面15aとが密着しないようにすることができる。
【0083】
図15、16は、別の変形例に係る空気抜き部20Eの概略を示す断面図である。空気抜き部20Eは、移動部材27を有する。
図15は、移動部材27が空気抜き孔15eを覆う位置に配置された場合を示し、
図16は、移動部材27が空気抜き孔15eを開口させる位置に配置された場合を示す。
【0084】
移動部材27は、全体として棒状であり、上端部に設けられた第1ストッパ27aと、下端部に設けられた第2ストッパ27bと、第1ストッパ27aと第2ストッパ27bとの間を連結する棒状部材27cと、を有する。移動部材27を上(+z側)から空気抜き孔15eに押し込めるように、第2ストッパ27b及び棒状部材27cには、長手方向に沿ってすり割り27dが形成されている。第2ストッパ27b、棒状部材27c及びすり割り27dは、第2ストッパ25b、棒状部材25c及びすり割り25dと同様であるため、説明を省略する。
【0085】
第1ストッパ27aは、略円錐台形状であり、底面(大きい円)が上側(+z側)を向き、上面(小さい面)が下側(-z側)を向いている。底面の直径d6は空気抜き孔15eの直径d1より大きい。第1ストッパ27aの上面は、棒状部材27cと連結しており、その直径d4は空気抜き孔15eの直径d1より小さい。したがって、移動部材27は、空気抜き孔15eの内部を上下方向(z方向)に移動し、第1ストッパ27a及び第2ストッパ27bにより移動部材27が空気抜き孔15eから抜けないようにしている。
【0086】
プレート15の下側に溜まった空気により移動部材27が押し上げられると、移動部材26は、
図15に示す空気抜き孔15eを塞ぐ位置から
図16に示す空気抜き孔15eを開口させる位置へと移動する。棒状部材27cには径方向に沿った孔27fが設けられており、空気抜き孔15e、すり割り27d及び孔27fを介してプレート15の下側に溜まった空気がストレーナ部10の外へ放出される(
図16矢印参照)。
【0087】
タンク本体101に貯蔵された作動油が油圧ポンプ(図示せず)に吸引されると、油圧ポンプ(図示せず)に吸引される力により、移動部材27が下向きに移動し、移動部材27(第1ストッパ27a)が空気抜き孔15eを覆う。これにより、気泡が除去されていない作動油が内筒12の内側に流入しなくなる。
【0088】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、実施形態の構成に他の構成の追加、削除、置換等をすることが可能である。
【0089】
また、本発明において、「略」とは、厳密に同一である場合のみでなく、同一性を失わない程度の誤差や変形を含む概念である。例えば、「略直交」とは、厳密に直交の場合には限られず、例えば数度程度の誤差を含む概念である。また、例えば、単に直交、平行、一致等と表現する場合において、厳密に直交、平行、一致等の場合のみでなく、略平行、略直交、略一致等の場合を含むものとする。
【0090】
また、本発明において「近傍」とは、基準となる位置の近くのある範囲(任意に定めることができる)の領域を含むことを意味する。例えば、端近傍という場合に、端の近くのある範囲の領域であって、端を含んでもいても含んでいなくてもよいことを示す概念である。
【符号の説明】
【0091】
1、2、3:サクションストレーナ
10、10A、10B:ストレーナ部
11 :濾過部
12 :内筒
15、15A、15B:プレート
15a :面
15b、15d、15e:空気抜き孔
15c :孔
16 :プレート
16a :嵌合部
17 :シール部材
20、20A、20B、20C、20D、20E:空気抜き部
21 :棒状部材
22 :移動部材
22a :孔
22b :面
22c、22d:突起
22e :外周面
23 :ヒンジ
24、24A:移動部材
24a :端部
24b :突起
24c :面
24d :板状部
24e :球状部
25、26、27:移動部材
25a、26a、27a:第1ストッパ
25b、26b、27b:第2ストッパ
25c、26c、27c:棒状部材
25d、26d、27d:すり割り
25f、26f、27f:孔
30 :ロッド部
31 :ロッド
32 :取付部
100 :作動油タンク
101 :タンク本体
101a :流入口
101b :開口部
101c :開口部
101d :流出口
101e :仕切板
102、103:蓋体
104 :サクションパイプ
105 :ボルト
110 :リターンフィルタ
211 :本体部
212 :棒状部
213、214:ストッパ
215 :ガイド部
231 :土台部
232 :回動軸