(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】撮像モジュールのパーティクル欠陥を減少させるCVD製造方法及びその生成物
(51)【国際特許分類】
C23C 16/30 20060101AFI20220610BHJP
C23C 16/40 20060101ALI20220610BHJP
C23C 16/42 20060101ALI20220610BHJP
G02B 1/115 20150101ALI20220610BHJP
G02B 5/28 20060101ALN20220610BHJP
【FI】
C23C16/30
C23C16/40
C23C16/42
G02B1/115
G02B5/28
(21)【出願番号】P 2020537720
(86)(22)【出願日】2020-05-15
(86)【国際出願番号】 CN2020090570
(87)【国際公開番号】W WO2021082400
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2020-07-08
(31)【優先権主張番号】201911060084.7
(32)【優先日】2019-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201911387147.X
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517455340
【氏名又は名称】杭州美迪凱光電科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】葛 文志
(72)【発明者】
【氏名】王 懿偉
(72)【発明者】
【氏名】王 剛
(72)【発明者】
【氏名】翁 欽盛
(72)【発明者】
【氏名】矢島 大和
(72)【発明者】
【氏名】江 駿楠
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105420683(CN,A)
【文献】欧州特許出願公開第2886205(EP,A1)
【文献】特表2012-517716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00-16/56
G02B 1/115-1/116
G02B 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース基板を超音波洗浄して乾燥させ、前処理されたベース基板を得るステップS1と、
前処理されたベース基板を反応キャビティに入れ、真空引きし、微正圧になるまで窒素ガス又は不活性ガスを導入するステップS2と、
シランの流量が10~80sccm、酸素ガスの流量が20~80sccmであるように、500~700℃で、前駆体I及び前駆体IIを同時に導入し、ベース基板上に堆積して低屈折率L層を形成するステップS3と、
前駆体I及び前駆体IIの導入を停止し、窒素ガス又は不活性ガスで反応キャビティをパージするステップS4と、
600~800℃条件において、前駆体IIIの流量が20~90sccm、前駆体IVの流量が20~60sccmであるように、原料ガスである前駆体III及び前駆体IVを導入し、低屈折率L層上に高屈折率H層を堆積するステップS5と、
原料ガスである前駆体III及び前駆体IVの導入を停止し、窒素ガス又は不活性ガスで反応キャビティをパージするステップS6と、
室温に冷却し、異なる屈折率のコーティングを有する光学素子を得るステップS7とを含み、
前記高屈折率H層の屈折率が前記低屈折率L層の屈折率よりも高い
ことを特徴とする撮像モジュールのパーティクル欠陥を減少させるCVD製造方法。
【請求項2】
周期的に繰り返すステップS3~S4及び/又はS5~S6をさらに含む
請求項1に記載の撮像モジュールのパーティクル欠陥を減少させるCVD製造方法。
【請求項3】
前記光学素子のコーティング組合せは、SiO
2低屈折率L層とTiO
2高屈折率H層;SiO
2低屈折率L層とNb
2O
5高屈折率H層;SiO
2低屈折率L層+Ta
3O
5高屈折率H層;MgF
2低屈折率L層とTiO
2高屈折率H層;MgF
2低屈折率L層とNb
2O
5高屈折率H層;Nb
2O
5低屈折率L層とTa
3O
5高屈折率H層;MgF
2低屈折率L層、Al
2O
3高屈折率H層とSiO
2低屈折率L層、Al
2O
3低屈折率L層、H4高屈折率H層及びMgF
2低屈折率L層;Al
2O
3低屈折率L層、ZrO
2高屈折率H層及びMgF
2低屈折率L層を含む
請求項2に記載の撮像モジュールのパーティクル欠陥を減少させるCVD製造方法。
【請求項4】
二成分材料膜構造では、前記高屈折率H層の屈折率と前記低屈折率L層の屈折率との差が0.5以上である
請求項3に記載の撮像モジュールのパーティクル欠陥を減少させるCVD製造方法。
【請求項5】
前記ベース基板は、ガラス、水晶又はサファイア基板である
請求項1に記載の撮像モジュールのパーティクル欠陥を減少させるCVD製造方法。
【請求項6】
前記前駆体IはSiH
4
であり、前記前駆体IIはO
2
であり、前記前駆体IIIはがTiH
4、TiCl
4、NbCl
5、TaCl
5、ZrCl
4のうちの1種であり、前記前駆体IVはO
2、O
3、CO
2、CO、NO
2、NO、H
2O、F
2のうちの1種又は複数種である
請求項3に記載の撮像モジュールのパーティクル欠陥を減少させるCVD製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像モジュール技術分野に関し、特に、撮像モジュールのパーティクル欠陥を減少させるCVD製造方法及びその生成物に関する。
【背景技術】
【0002】
スマート端末、車載機器、スキャナー、スマートフォン、プロジェクター、セキュリティ監視などの産業による、高解像度撮像に対する要求が継続的に向上し、拡張現実、3D技術及びジェスチャー認識技術が人工知能分野において広く応用されるに伴って、光学レンズ及び撮像モジュール産業は、新しい応用要求を満たすように、高速に発展するとともに、絶えず技術を革新している。
【0003】
パーティクルは、光学レンズ及び撮像モジュールに発生した欠陥であり、基板面に形成される点状突起を意味し、この点状突起は、パーティクル(particle)と呼ばれることもある。パーティクルは、主に、現在の光学コーティングプロセス(すなわち、真空熱蒸発及びマグネトロンスパッタリング)で、大きな膜材料パーティクルが不可避的に膜材料の蒸発による蒸気又はスパッタリング粒子とともに基板の表面に堆積してなるものである。点が少ないこともあり、ひどい場合、小さい点が大きく集まることもあり、よりひどい場合、大きなパーティクルが基板面に傷つき、結像効果に深刻な影響を与えていてしまうこともある。従って、結像効果を確保するために、現在、ほとんどのメーカーは、光学素子におけるパーティクルが5μm以下であることを要求している。
【0004】
しかし、現在、特定の光学性能を達成するために、ほとんど全ての光学素子の表面に様々な薄膜をコーティングし、すなわち、光の反射、分岐、色分解、フィルタリング、偏光を減少又は増加させるなどの要求を満たすために、光学部品の表面に1層又は多層の金属又は媒体薄膜をコーティングするプロセスが必要であり、光学コーティングプロセスは、主に真空熱蒸発(蒸着)及びマグネトロンスパッタリングを用い、パーティクルを制御又は減少できるのに有効な手段がない。
【0005】
真空熱蒸発は、真空条件において、物質を加熱蒸発して気化し、基板面に堆積させて固体薄膜を形成することであり、その過程は、以下のとおりである。(1)様々な形態の熱エネルギー変換方式(例えば、抵抗加熱、電子加熱、高周波誘導加熱、アーク加熱、レーザ加熱など)を用い、コーティング材粒子を蒸発又は昇華させ、所定のエネルギーを有するガス粒子にし、(2)ガス粒子があまり衝撃のない直線運動方式によりマトリックスに搬送され、(3)粒子がマトリックスの表面に堆積して凝集し、薄膜になり、(4)薄膜を構成する原子が再配列し又は化学結合が変化する。加熱及び凝集の過程が絶対に均一であることを実現できないため、大きな液滴又は大きな粒子が必然的に生じ、従って、光学コーティングにおけるパーティクル欠陥を効果的に制御できず、粒径が5μmを超えるパーティクルが生じる可能性が高く、これは現在、歩留まりに影響を与える要因である。
【0006】
マグネトロンスパッタリングは、真空中において荷電粒子でターゲット表面に衝撃し、衝撃された粒子を基板上に堆積させる技術であり、その過程は、以下のとおりである。(1)電子が電界Eの作用で基板へ飛びながら、アルゴン原子と衝撃し、アルゴン原子を電離させてArプラスイオン及び新しい電子を発生させ、(2)新しい電子が基板へ飛び、Arイオンが電界の作用下でカソードターゲットへ高速で飛び、ターゲット表面に高エネルギーで衝撃し、ターゲット材をスパッタリングさせ、(3)スパッタリング粒子のうち、中性のターゲット原子又は分子が基板上に堆積して薄膜を形成する。同様に、ターゲット材に衝撃する過程で、大きな粒子が生じる可能性が高く、さらに基板上に堆積してパーティクルを形成し、効果的に制御できない。
【0007】
従って、光学レンズ及び撮像モジュールの工業的生産では、パーティクル欠陥の発生及び数を制御するのに有効な制御方法がなく、製品の歩留まりが下がり、生産コストが高まり、より最適化された生産プロセスの開発が必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来技術の欠点に対して、パーティクルの生成経路を根本的に突き止めることができ、粒径がミクロンレベルのパーティクル欠陥が生じないようにすることができる、撮像モジュールのパーティクル欠陥を減少させるCVD製造方法を提供することを第1の目的とする。
【0009】
本発明は、パーティクル欠陥による不良を大幅に減少させる、上記製造方法で得られた多層膜構造、パッケージカバープレート、CLCCパッケージ及び撮像モジュールを提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の技術案は、以下のとおりである。
ベース基板を超音波洗浄して乾燥させ、前処理されたベース基板を得るS1、
前処理されたベース基板を反応キャビティに入れ、真空引きし、微正圧になるまで窒素ガス又は不活性ガスを導入するS2、
シランの流量が10~80sccm、酸素ガスの流量が20~80sccmになるように、500~700℃で、前駆体I及び前駆体IIを同時に導入し、ベース板上に堆積して低屈折率L層を形成するS3、
前駆体I及び前駆体IIの導入を停止し、窒素ガス又は不活性ガスで反応キャビティをパージするS4、
600~800℃条件において、前駆体IIIの流量が20~90sccm、前駆体IVの流量が20~60sccmであるように、原料ガスである前駆体III及び前駆体IVを導入し、低屈折率L層上に高屈折率H層を堆積するS5、
原料ガスである前駆体III及び前駆体IVの導入を停止し、窒素ガス又は不活性ガスで反応キャビティをパージするS6、
室温に冷却し、異なる屈折率のコーティングを有する光学素子を得るS7、前記高屈折率H層の屈折率が前記低屈折率L層の屈折率より高い。
【0011】
さらに、上記製造方法では、周期的に繰り返すステップS3~S4及び/又はS5~S6をさらに含む。
【0012】
さらに、上記製造方法では、前記光学素子のコーティング組合せは、SiO2低屈折率L層とTiO2高屈折率H層;SiO2低屈折率L層とNb2O5高屈折率H層;SiO2低屈折率L層+Ta3O5高屈折率H層;MgF2低屈折率L層とTiO2高屈折率H層;MgF2低屈折率L層とNb2O5高屈折率H層;Nb2O5低屈折率L層とTa3O5高屈折率H層;MgF2低屈折率L層、Al2O3高屈折率H層及びSiO2低屈折率L層;Al2O3低屈折率L層、H4高屈折率H層及びMgF2低屈折率L層;Al2O3低屈折率L層、ZrO2高屈折率H層及びMgF2低屈折率L層を含む。
【0013】
さらに、上記製造方法では、二成分材料膜構造で、前記高屈折率H層の屈折率と前記低屈折率L層の屈折率との差が0.5以上である。両層の屈折率の差が大きければ、光学性能が良好である。しかし、屈折率の差が大きければ、ワンステッププロセスを用いる実現難度が高い。
【0014】
さらに、上記製造方法では、前記ベース基板は、ガラス、水晶又はサファイア基板である。
【0015】
さらに、上記製造方法では、前記前駆体Iは、SiH4、SiHCl3、SiCl2H2、SiCl4、Al(CH3)3、Cp2Mgのうちの1種であり、前記前駆体IIは、O2、O3、CO2、CO、NO2、NO、H2O、F2のうちの1種又は複数種であり、前記前駆体IIIは、TiH4、TiCl4、NbCl5、TaCl5、ZrCl4のうちの1種であり、前記前駆体IVは、O2、O3、CO2、CO、NO2、NO、H2O、F2のうちの1種又は複数種である。
【0016】
上記CVD製造方法で製造される、ことを特徴とする多層膜構造。
【0017】
さらに、上記多層膜構造では、サイズが1μm以上のパーティクルの数が0である。
【0018】
さらに、上記多層膜構造の表面粗さRa範囲が0.01nm~20nmである。
【0019】
前記パッケージカバープレートは、カバープレート基板と、カバープレート基板上に被覆される機能膜とを備え、前記機能膜は、上記CVD製造方法によって堆積される多層膜構造を含む、ことを特徴とするCLCCパッケージカバープレート。
【0020】
基板を備え、前記基板上には、中央部に位置するCMOS、縁位置に位置するコンデンサ抵抗及び駆動モータが貼り付けられ、前記基板上には仕切り壁台座が設けられ、前記仕切り壁台座において、基板のCMOS、コンデンサ抵抗及び駆動モータに対応する位置には、それぞれCMOSセンサ空位置、コンデンサ抵抗空位置及び駆動モータ空位置が設けられ、前記CMOSセンサ空位置の上面には上記したカバープレートが取り付けられている、ことを特徴とするCLCCパッケージ。
【0021】
上記CLCCパッケージを備える、ことを特徴とする撮像モジュール。
【発明の効果】
【0022】
該技術案の生じた有益な効果は、以下のとおりである。
(1)CVD(Chemical vapor deposition、化学気相堆積)によって、1回で高・低屈折率の膜層を複数層光学素子に交互に堆積することができ、反応材料が気相の形態で反応キャビティにおいて反応してベース基板上に堆積し、蒸発又はスパッタリング過程がなくなり、それによりパーティクル欠陥を引き起こすソースを解消し、従って、大粒子のパーティクル欠陥を形成することがなく、それにより、撮像モジュールの結像品質を大幅に向上させ、撮像モジュールの加工過程におけるCVDの実用性が活用される。
【0023】
(2)本発明による製品は、化学気相堆積によって光学素子への多層コーティングを達成し、反応材料は蒸発又はスパッタリングを行わずに、気相反応によってベース基板上に堆積し、従って、大粒子のパーティクル欠陥を形成することがなく、それにより、撮像モジュールの結像品質を大幅に向上させ、製品歩留まりを向上させ、且つ光学コーティングがより滑らかになり、堅牢度がより高く、実用性がより高い。
【0024】
(3)本発明のカバープレートは、表面を微細に制御することにより、表面に大きなサイズのパーティクルが生じないことを確保し、従来技術により要求される5μmよりも遥かに低く、CMOS画素の向上を制限する不利な要素を解消し、CLCCパッケージ及び撮像モジュールの画素のレベルを大幅に向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図2】本発明に係るCLCCパッケージの構造模式図である。
【
図3】金属顕微鏡の接眼レンズ10X、対物レンズ100Xでの実施例1のカバープレートの模式図である。
【
図4】実施例1のカバープレート表面のAFM図である。
【
図5】実施例1のカバープレート表面の三次元AFM図である。
【
図6】金属顕微鏡の接眼レンズ10X、対物レンズ100Xでの比較例のカバープレートの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面及び実施形態と組み合わせて本発明についてさらに説明する。本明細書に記載の屈折率は、He光源のd線で取得されるように設定され、前記d線の波長が587.56nmである。
【0027】
ベース基板を超音波洗浄して乾燥させ、前処理されたベース基板を得るステップS1と、
前処理されたベース基板を反応キャビティに入れ、真空引きし、微正圧になるまで窒素ガス又は不活性ガスを導入するステップS2と、
シランの流量が10~80sccm、酸素ガスの流量が20~80sccmであるように、500~700℃で、前駆体I及び前駆体IIを同時に導入し、ベース基板上に堆積して低屈折率L層を形成するステップS3と、
前駆体I及び前駆体IIの導入を停止し、窒素ガス又は不活性ガスで反応キャビティをパージするステップS4と、
600~800℃条件において、前駆体IIIの流量が20~90sccm、前駆体IVの流量が20~60sccmであるように、原料ガスである前駆体III及び前駆体IVを導入し、低屈折率L層上に高屈折率H層を堆積するステップS5と、
原料ガスである前駆体III及び前駆体IVの導入を停止し、窒素ガス又は不活性ガスで反応キャビティをパージするステップS6と、
室温に冷却し、異なる屈折率のコーティングを有する光学素子を得るステップS7とを含み、前記高屈折率H層の屈折率が前記低屈折率L層の屈折率より高い、ことを特徴とする撮像モジュールのパーティクル欠陥を減少させるCVD製造方法。上記光学素子は、二次熱処理、プラズマ処理などによって光学性能をさらに向上させることができる。
【0028】
さらに、上記製造方法では、周期的に繰り返すステップS3~S4及び/又はS5~S6をさらに含む。
【0029】
さらに、上記製造方法では、前記光学素子のコーティング組合せは、SiO2低屈折率L層とTiO2高屈折率H層;SiO2低屈折率L層とNb2O5高屈折率H層;SiO2低屈折率L層+Ta3O5高屈折率H層;MgF2低屈折率L層とTiO2高屈折率H層;MgF2低屈折率L層とNb2O5高屈折率H層;Nb2O5低屈折率L層とTa3O5高屈折率H層;MgF2低屈折率L層、Al2O3高屈折率H層及びSiO2低屈折率L層;Al2O3低屈折率L層、H4高屈折率H層及びMgF2低屈折率L層;Al2O3低屈折率L層、ZrO2高屈折率H層及びMgF2低屈折率L層を含む。
【0030】
さらに、上記製造方法では、二成分材料膜構造(すなわち、構造には2種の材料で製造された膜のみが含まれる)で、前記高屈折率H層の屈折率と前記低屈折率L層の屈折率との差が0.5以上である。両層の屈折率の差が大きければ、光学性能が良好である。
【0031】
さらに、上記製造方法では、前記ベース基板は、ガラス、水晶又はサファイア基板である。
【0032】
さらに、上記製造方法では、前記前駆体Iは、SiH4、SiHCl3、SiCl2H2、SiCl4、Al(CH3)3、Cp2Mgのうちの1種であり、前記前駆体IIは、O2、O3、CO2、CO、NO2、NO、H2O、F2のうちの1種又は複数種であり、前記前駆体IIIは、TiH4、TiCl4、NbCl5、TaCl5、ZrCl4のうちの1種であり、前記前駆体IVは、O2、O3、CO2、CO、NO2、NO、H2O、F2のうちの1種又は複数種である。
【0033】
多層膜構造であって、
図1に示すように、上記ALD製造方法で製造され、サイズが1μm以上のパーティクルの数が0であり、表面粗さRa範囲が0.01nm~20nmである。ALD製造方法では、各層の膜構造の堆積完了後、次の層の膜構造の堆積前、プラズマを用いて現在の堆積層に対して衝撃改質を行うステップを含む。改質に用いられるプラズマ電圧が100~1000V、電流が100~1000mA、時間が1~2分間であることが好ましく、さもないと、堆積された膜層の性能と厚みに影響を与える恐れがある。
【0034】
CLCCパッケージカバープレートであって、カバープレート基板と、カバープレート基板上に被覆される機能膜とを備え、前記機能膜は、上記ALD製造方法によって堆積される多層膜構造を含み、各層の膜構造の堆積完了後、次の層の膜構造の堆積前、プラズマを用いて現在の堆積層に対して衝撃改質を行うステップを含む。通常のALD堆積プロセスは、単層膜の堆積のみに適用でき、多層膜構造の堆積過程に、現在の膜が堆積された後、堆積面が変化したため、次の膜を順調に堆積できない状況が生じ、本発明は、各層の膜構造の後、プラズマ衝撃によって表面改質を行うことによって、多層膜の順調な堆積を実現する。
【0035】
CLCCパッケージであって、
図2に示すように、基板1を備え、前記基板1上には、中央部に位置するCMOS 2、縁位置に位置するコンデンサ抵抗3及び駆動モータ4が貼り付けられ、前記基板1上には仕切り壁台座5が設けられ、前記仕切り壁台座5において、基板のCMOS 2、コンデンサ抵抗3及び駆動モータ4に対応する位置には、それぞれCMOSセンサ空位置、コンデンサ抵抗空位置及び駆動モータ空位置が設けられ、前記CMOSセンサ空位置の上面には、カバープレート6が取り付けられている。
【0036】
撮像モジュールであって、上記CLCCパッケージを備える。
【0037】
実施例1
撮像モジュールであって、
図3~5に示すように、CLCCパッケージを備え、CLCCパッケージは、基板1を備え、前記基板1上には、中央部に位置するCMOS 2、縁位置に位置するコンデンサ抵抗3及び駆動モータ4が貼り付けられ、前記基板1上には仕切り壁台座5が設けられ、前記仕切り壁台座5において、基板のCMOS 2、コンデンサ抵抗3及び駆動モータ4に対応する位置には、CMOSセンサ空位置、コンデンサ抵抗空位置及び駆動モータ空位置が設けられ、前記CMOSセンサ空位置の上面には、カバープレート6が取り付けられており、カバープレート6の表面パーティクルのサイズが10nm以下であり、粗さRaが1.135nmである。
【0038】
上記カバープレートは、ガラス基板にシリカ低屈折率層L及び二酸化チタン高屈折率層Hが被覆される撮像モジュールの光学素子である。低屈折率層L層は、厚みが100~200nm、屈折率が1.46~1.50であり、高屈折率層H層は、厚みが350~650nm、屈折率が2.28~2.35である。
【0039】
上記カバープレートは、過程が以下のCVD製造方法を用いる。
前処理を行い、まず、ガラスベース基板を超音波洗浄機に入れて60min洗浄し、乾燥させ、前処理されたベース基板を得るステップS1、
前処理されたガラスベース基板を反応キャビティに入れ、0.1~5Torrまで真空引き、窒素ガス又は不活性ガスを導入するステップS2、
次に650~700℃で、それぞれ60sccm及び30sccmのレートで前記反応キャビティ内にシラン及び酸素ガスを0.015sパルスで導入し、2000回繰り返して導入し、ベース基板上にシリカを堆積して、厚み100~200nmの低屈折率L層を形成するステップS3、
原料ガスであるシラン及び酸素ガスの導入を停止し、窒素ガス又は不活性ガスで反応キャビティをパージし、プラズマ衝撃によって表面改質を行うステップS4、
700~800℃で、それぞれ30sccm及び30sccmのレートで前記反応キャビティ内にTiCl4及びO2を0.015s導入し、2000回繰り返して導入し、低屈折率L層上に厚み350~650nmの高屈折率H層TiO2を反応によって堆積するステップS5、
原料ガスTiCl4及びO2の導入を停止し、窒素ガス又は不活性ガスで反応キャビティをパージするステップS6、
室温に冷却し、異なる屈折率のコーティングを有する光学素子を得るステップS7。
【0040】
本実施例では、直径300mmのシートをバッチ生産し、1カートンあたり、12枚とし、金属顕微鏡によってパーティクルの状況を監視したところ、すべてのカバープレートには、粒径が1μmより大きいパーティクルが観察されておらず、歩留まりが100%であり、パーティクルのサイズをさらに観察し、粒径が10nmより大きいパーティクルが観察されてなかった。
【0041】
実施例2
撮像モジュールであって、CLCCパッケージを備え、CLCCパッケージは、基板1を備え、前記基板1上には、中央部に位置するCMOS 2、縁位置に位置するコンデンサ抵抗3及び駆動モータ4が貼り付けられ、前記基板1上には仕切り壁台座5が設けられ、前記仕切り壁台座5において、基板のCMOS 2、コンデンサ抵抗3及び駆動モータ4に対応する位置には、CMOSセンサ空位置、コンデンサ抵抗空位置及び駆動モータ空位置が設けられ、前記CMOSセンサ空位置の上面には、カバープレート6が取り付けられており、カバープレート6の表面パーティクルのサイズが10nm以下であり、粗さRaが0.433nmである。
【0042】
上記カバープレートは、水晶基板上にSiO2低屈折率層L及びNb2O5高屈折率層Hが被覆される撮像モジュールの光学素子である。低屈折率層L層は、厚みが20~50nm、屈折率が1.46~1.50であり、高屈折率層H層は、厚みが10~100nm、屈折率が2.1~2.3である。
【0043】
上記カバープレートは、過程が以下のCVD製造方法を用いる。
前処理を行い、まず、水晶ベース基板を超音波洗浄機に入れて60min洗浄し、乾燥させ、前処理されたベース基板を得るステップS1、
前処理された水晶ベース基板を反応キャビティに入れ、0.1~5Torrまで真空引き、窒素ガス又は不活性ガスを導入するステップS2、
次に550~650℃で、それぞれ10sccm及び20sccmのレートで前記反応キャビティ内にシラン及び酸素ガスを0.010s導入し、1000回繰り返して導入し、ベース基板上にシリカを堆積して、厚み20~50nmの低屈折率L層を形成するステップS3、
原料ガスであるシラン及び酸素ガスの導入を停止し、窒素ガス又は不活性ガスで反応キャビティをパージし、プラズマ衝撃によって表面改質を行うステップS4、
700~800℃で、それぞれ20sccm及び20sccmのレートで前記反応キャビティ内にNbCl5及びオゾンを0.01s導入し、1000回繰り返して導入し、低屈折率L層上に厚みが10~100nmの高屈折率H層Nb2O5を反応によって堆積するステップS5、
NbCl5及びオゾンの導入を停止し、窒素ガス又は不活性ガスで反応キャビティをパージするステップS6、
室温に冷却し、異なる屈折率のコーティングを有する光学素子を得るステップS7。
【0044】
本実施例では、サイズが80×76×0.21mmの製品をバッチ生産し、1カートンあたり、156枚とし、金属顕微鏡によってパーティクルの状況を監視したところ、すべてのカバープレートには、粒径が1μmより大きいパーティクルが観察されておらず、パーティクルのサイズをさらに観察し、粒径が10nmより大きいパーティクルが観察されてなかった。
【0045】
実施例3
撮像モジュールであって、CLCCパッケージを備え、CLCCパッケージは、基板1を備え、前記基板1上には、中央部に位置するCMOS 2、縁位置に位置するコンデンサ抵抗3及び駆動モータ4が貼り付けられ、前記基板1上には仕切り壁台座5が設けられ、前記仕切り壁台座5において、基板のCMOS 2、コンデンサ抵抗3及び駆動モータ4に対応する位置には、CMOSセンサ空位置、コンデンサ抵抗空位置及び駆動モータ空位置が設けられ、前記CMOSセンサ空位置の上面には、カバープレート6が取り付けられており、カバープレート6の表面パーティクルのサイズが100nm以下であり、粗さRaが5.962nmである。
【0046】
上記カバープレートは、ガラス基板にMgF2低屈折率L1層、Al2O3高屈折率H層及びSiO2低屈折率L2層が被覆される撮像モジュールの光学素子である。MgF2低屈折率L1層は、厚みが10~20nm、屈折率が1.35~1.4であり、Al2O3高屈折率H層は、厚みが100~200nm、屈折率が1.54~1.62であり、SiO2低屈折率L2層は、厚みが200~300nm、屈折率が1.45~1.47である。
【0047】
上記カバープレートは、過程が以下のCVD製造方法を用いる。
前処理を行い、まず、サファイアベース基板を超音波洗浄機に入れて60min洗浄し、乾燥させ、前処理されたベース基板を得るステップS1、
前処理されたサファイアベース基板を反応キャビティに入れ、0.1~5Torrまで真空引き、窒素ガス又は不活性ガスを導入するステップS2、
次に500~700℃で、それぞれ80sccm及び80sccmのレートで前記反応キャビティ内にCp2Mg(ビス(シクロペンタジエニル)マグネシウム)及びフッ素ガス(F2)を0.005s導入し、800回繰り返して導入し、ベース基板上にMgF2を堆積して、厚み10~20nmの低屈折率L1層を形成するステップS3、
Cp2Mg(ビス(シクロペンタジエニル)マグネシウム)及びフッ素ガス(F2)の導入を停止し、窒素ガス又は不活性ガスで反応キャビティをパージし、プラズマ衝撃によって表面改質を行うステップS4、
600~750℃で、それぞれ90sccm及び60sccmのレートで前記反応キャビティ内にAl(CH3)3及びCO2を0.015s導入し、2000回繰り返して導入し、低屈折率L層上に厚み100~200nmの高屈折率H層Al2O3を反応によって堆積するステップS5、
Al(CH3)3及びCO2の導入を停止し、窒素ガス又は不活性ガスで反応キャビティをパージするステップS6、
次に650~700℃で、それぞれ80sccm及び80sccmのレートで前記反応キャビティ内にシラン及び酸素ガスを0.025s導入し、3000回繰り返して導入し、ベース基板上にシリカを堆積して、厚み200~300nmの低屈折率L2層を形成するステップS7、
原料ガスであるシラン及び酸素ガスの導入を停止し、窒素ガス又は不活性ガスで反応キャビティをパージするステップS8、
室温に冷却し、異なる屈折率のコーティングを有する光学素子を得るステップS9。
【0048】
本実施例では、直径200mmのシートをバッチ生産し、1カートンあたり、合計21枚とし、金属顕微鏡によってパーティクルの状況を監視したところ、すべてのカバープレートには、粒径が1μmより大きいパーティクルが観察されておらず、歩留まりが100%であり、パーティクルのサイズをさらに観察し、粒径が100nmより大きいパーティクルが観察されてなかった。
【0049】
比較実施例
本実施例のターゲット製品は、実施例1と同様であり、用いる真空熱蒸発の製造方法のプロセスは、以下のとおりである。
まずベース基板ガラスを治具に入れ、治具をドームホルダーに置き、ドームホルダーをコーティング機のチャンバーに入れるステップS1。
【0050】
SiO2(シリカ)及びTiO2(二酸化チタン)をそれぞれチャンバーにおける左側及び右側の坩堝に入れ、チャンバードアを閉め、0.0001~0.001Paまで真空引きし、温度を50~400℃範囲に設定し、チャンバー内部を真空引きの範囲に維持するステップS2。
【0051】
SiO2(シリカ)の所在する位置の電子銃を起動し、電子銃が設定された膜厚になるまで作動し、作動終了後、残りの分子がガスにより吸引され、TiO2(二酸化チタン)の位置での電子銃が自動的に起動されてコーティングするステップS3。
【0052】
機器が設定されたフィルムコーティングの層数に応じてコーティングを繰り返すステップS4。
【0053】
比較実施例の製品については、金属顕微鏡によってパーティクルの状況を監視した結果、
図6に示すように、粒径が5μm以上のパーティクル欠陥が観察された。バッチ試験によれば、該製造方法で得られた生成物は、パーティクル欠陥(粒径が5μm以上)による不良率が70%であった。
【0054】
以上の実施形態は、本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明を制限するものではなく、当業者であれば、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、さらに様々な変化及び変形を行うことができ、従って、すべての等価技術案も本発明の範囲に属し、本発明の特許範囲が請求項で限定される。
【符号の説明】
【0055】
1 基板
2 CMOS
3 コンデンサ抵抗
4 駆動モータ
5 仕切り壁台座
6 カバープレート。