(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】時間差を有するポンプ光とプローブ光の位相コード変調を使用する光ファイバBOCDAセンサ
(51)【国際特許分類】
G01D 5/353 20060101AFI20220610BHJP
【FI】
G01D5/353 B
(21)【出願番号】P 2020562148
(86)(22)【出願日】2019-05-16
(86)【国際出願番号】 KR2019005884
(87)【国際公開番号】W WO2019221534
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2020-11-05
(31)【優先権主張番号】10-2018-0055702
(32)【優先日】2018-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】512328201
【氏名又は名称】コリア リサーチ インスティチュート オブ スタンダーズ アンド サイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】クォン イル-ブム
(72)【発明者】
【氏名】ソ デ-チョル
(72)【発明者】
【氏名】キム チ-ヨプ
(72)【発明者】
【氏名】チェ ボ-フン
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/104751(WO,A1)
【文献】特開2015-197384(JP,A)
【文献】特開2009-47455(JP,A)
【文献】国際公開第2007/086357(WO,A1)
【文献】特開2017-15681(JP,A)
【文献】特開2017-53645(JP,A)
【文献】特開2014-44129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/26-5/38、21/02
G01B 11/16
G01K 11/32-11/324
G02B 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブリルアン周波数変異を用いて、感知光ファイバ(140)上の任意の位置での歪率および温度を測定する光ファイバBOCDAセンサ(100)であって、
プローブ光の光ファイバライン(120)およびポンピング光の光ファイバライン(130)それぞれに、互いに独立して制御可能なプローブ光位相変調器(121)およびポンピング光位相変調器(131)が備えられ、
前記プローブ光位相変調器(121)および前記ポンピング光位相変調器(131)それぞれで作られる位相コードパターンに時間差が形成されることで、前記感知光ファイバ(140)上でのポンピング光およびプローブ光の相関関係ピーク位置が調節可能にな
り、
前記光ファイバBOCDAセンサ(100)は、前記感知光ファイバ(140)上の測定を行おうとする位置の区間の長さによって、前記プローブ光位相変調器(121)および前記ポンピング光位相変調器(131)それぞれで作られる位相コードパターンのビット幅を調節できることを特徴とする、光ファイバBOCDAセンサ。
【請求項2】
前記光ファイバBOCDAセンサ(100)は、
前記プローブ光位相変調器(121)および前記ポンピング光位相変調器(131)それぞれで作られる位相コードパターンが互いに同じ形態、且つ時間差だけ存在する形態になるように調節することを特徴とする、請求項1に記載の光ファイバBOCDAセンサ。
【請求項3】
前記光ファイバBOCDAセンサ(100)は、
相関関係ピーク位置が前記感知光ファイバ(140)上の測定を行おうとする位置に相当するように、前記プローブ光位相変調器(121)および前記ポンピング光位相変調器(131)それぞれで作られる位相コードパターンの時間差を調節することを特徴とする、請求項1に記載の光ファイバBOCDAセンサ。
【請求項4】
前記光ファイバBOCDAセンサ(100)は、
相関関係ピーク位置のビット幅が予め決定された第1大きさを有する位相コードパターンを使用して求められたブリルアンスペクトルにおいて、
相関関係ピーク位置のビット幅が前記第1大きさよりも小さい第2大きさを有する位相コードパターンを使用して求められたブリルアンスペクトルを差し引くように制御することを特徴とする、請求項1に記載の光ファイバBOCDAセンサ。
【請求項5】
前記光ファイバBOCDAセンサ(100)は、
光源(110)と、
前記光源(110)から光ファイバを介して進行されて来る光を前記プローブ光の光ファイバライン(120)および前記ポンピング光の光ファイバライン(130)それぞれに進行して行くように分岐する光ファイバカプラ(115)と、
一端が前記プローブ光の光ファイバライン(120)の先端に連結され、他端が前記ポンピング光の光ファイバライン(130)に連結され、プローブ光およびポンピング光の周波数の間にブリルアン周波数だけの差があると、ポンピング光の後方に散乱されるブリルアン散乱光に増幅を引き起こす前記感知光ファイバ(140)と、
前記プローブ光の光ファイバライン(120)上に備えられ、予め決定された位相コードパターンでプローブ光の位相を変調する前記プローブ光位相変調器(121)と、
前記プローブ光の光ファイバライン(120)上に備えられ、前記プローブ光位相変調器(121)から進行されて来るプローブ光を前記感知光ファイバ(140)のブリルアン周波数近くの周波数変調を有するように調整するプローブ光電気-光学変調器(122)と、
前記プローブ光の光ファイバライン(120)上に備えられ、前記プローブ光電気-光学変調器(122)から進行されて来るプローブ光を前記感知光ファイバ(140)の方に進行させ、前記感知光ファイバ(140)から進行されて来る光は遮断させる光ファイバアイソレータ(125)と、
前記ポンピング光の光ファイバライン(130)上に備えられ、前記プローブ光位相変調器(121)で使用される位相コードパターンと時間差が形成された位相コードパターンでポンピング光の位相を変調する前記ポンピング光位相変調器(131)と、
前記ポンピング光の光ファイバライン(130)上に備えられ、前記ポンピング光位相変調器(131)から進行されて来る
ポンピング光を前記感知光ファイバ(140)の方に進行させる光ファイバサーキュレータ(135)と、
前記光ファイバサーキュレータ(135)から進行されて来るブリルアン散乱光を取得する光受信器(150)と、
前記プローブ光位相変調器(121)および前記ポンピング光位相変調器(131)で発生する位相コードパターンを制御する制御部(160)と
、を含むことを特徴とする、請求項1に記載の光ファイバBOCDAセンサ。
【請求項6】
前記光ファイバBOCDAセンサ(100)は、
前記プローブ光の光ファイバライン(120)上の前記光ファイバアイソレータ(125)の前方に備えられ、前記光ファイバアイソレータ(125)に進行されて来るプローブ光を増幅するプローブ光の光ファイバ増幅器123をさらに含むことを特徴とする、請求項
5に記載の光ファイバBOCDAセンサ。
【請求項7】
前記光ファイバBOCDAセンサ(100)は、
前記プローブ光の光ファイバライン(120)上の前記プローブ光電気-光学変調器(122)と前記
光ファイバアイソレータ(125)との間に備えられ、前記プローブ光電気-光学変調器(122)から進行されて来るプローブ光での偏光の影響を除去する偏光スクランブラ124をさらに含むことを特徴とする、請求項
5に記載の光ファイバBOCDAセンサ。
【請求項8】
前記光ファイバBOCDAセンサ(100)は、
前記光受信器(150)の後方に備えられ、前記光受信器(150)で受信するブリルアン散乱光を増幅するロックイン増幅器(155)と、
前記ポンピング光の光ファイバライン(130)上に備えられ、前記ポンピング光位相変調器(131)から進行されて来るポンピング光を正弦波に変調させて前記ロックイン増幅器(155)を駆動するポンピング光電気-光学変調器(132)と
、をさらに含むことを特徴とする、請求項
5に記載の光ファイバBOCDAセンサ。
【請求項9】
前記光ファイバBOCDAセンサ(100)は、
前記ポンピング光の光ファイバライン(130)上の前記光ファイバサーキュレータ(135)の前方に備えられ、前記光ファイバサーキュレータ(135)に進行されて来るポンピング光を増幅するポンピング光の光ファイバ増幅器(133)をさらに含むことを特徴とする、請求項
5に記載の光ファイバBOCDAセンサ。
【請求項10】
前記制御部(160)は、
前記プローブ光位相変調器(121)および前記ポンピング光位相変調器(131)と連結され、前記プローブ光位相変調器(121)および前記ポンピング光位相変調器(131)それぞれで使用される位相コードパターンを発生させて印加するパルスパターン発生器(161)と、
前記プローブ光電気-光学変調器(122)と連結され、前記感知光ファイバ(140)のブリルアン周波数近くの電気信号を作って前記プローブ光電気-光学変調器(122)を駆動するRF信号合成器162と
、を含むことを特徴とする、請求項
5に記載の光ファイバBOCDAセンサ。
【請求項11】
前記制御部(160)は、
前記ポンピング光電気-光学変調器(132)および前記ロックイン増幅器(155)と連結され、光を規則的な時間間隔で取り締まるチョッピングモジュール(163)を含むことを特徴とする、請求項
8に記載の光ファイバBOCDAセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバBOCDA(Brillouin Correlation Domain Analysis)センサに関し、より詳細には、光ファイバBOCDAセンサの感知性能および検出精度を向上させる光ファイバBOCDAセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
光が物質の中に生じた音波と相互作用して入射光の周波数とは異なる周波数で散乱する現象をブリルアン散乱といい、この周波数の差をブリルアン周波数変異という。光ファイバBOCDA(Brillouin Correlation Domain Analysis)センサとは、感知光ファイバの長さによってすべての位置でブリルアン周波数変異(ΔνB)を取得する分布測定センサである。ブリルアン周波数変異の検出原理について簡単に説明すると、以下の通りである。被測定光ファイバの両端でポンピング光(pumping light)およびプローブ光(probe light)をそれぞれ入射させ、この際、ポンピング光およびプローブ光の光周波数の差Δνがこの被測定光ファイバのブリルアン周波数変異値であるνBと一致するように光周波数を調整すると、ポンピング光は、誘導ブリルアン散乱によってプローブ光に光エネルギー変換を行い、プローブ光は、この被測定光ファイバ内でブリルアン光増幅を行う。このように増幅されたプローブ光の光信号は、光検出器によって電気信号に変換されることで測定が可能である。
【0003】
かかるブリルアン周波数変異値は、光が進行する物質、すなわち、光ファイバの材料から大きく影響を受けるだけでなく、光ファイバに印加される歪率によって変化する。外部から加えられる応力による光ファイバの歪率をΔεとし、温度変化をΔTとしたときに、ブリルアン周波数変異値の変化量ΔνB値は、数学式1のように表される。下記式において、歪率変換係数Cεおよび温度変換係数CTは、予め知られている値であるが、精度を高めるために、実際の応用条件に応じて正確に調査して使用することがより好ましい。標準単一モード光ファイバを感知光ファイバとして使用する場合、この歪率変換係数Cεは約0.05MHz/με、温度変換係数CTは約1MHZ/oCの値を有するが、正確な値は、実際の応用条件に応じて調査して使用すべきである。
【0004】
【0005】
ブリルアン周波数変異を取得すると、数学式1を用いて感知光ファイバに分布する歪率または温度を測定することができ、かかる原理で作られるセンサを光ファイバBOCDAセンサと言う。かかる感知光ファイバに分布するブリルアン周波数変異を求めるためには、ブリルアンゲインスペクトルを感知光ファイバのすべての位置で取得可能である必要があり、従来の光ファイバBOCDAセンサは、位相コード変調時にその周波数をスキャンする位相コード周波数制御方式を使用する。
【0006】
図1は従来の位相コード周波数制御型光ファイバBOCDAセンサの概略図である。
図1に図示されているように、一つの光源から出た光は、位相変調器(phase modulator)によって疑似ランダムビットシーケンス(PRBS:pseudo random bit sequence)コードパターンで180度の差があるように変調される。このように位相変調された光は、1×2光ファイバカプラによって分岐され、ポンピング光(pumping light)とプローブ光(probe light)として使用される。プローブ光は、電気-光学変調器(electro-optic modulator)によってブリルアン周波数の近くに光周波数が変調された後、感知光ファイバの一方の先端に入射される。一方、ポンピング光は、光学サーキュレータを通過した後、感知光ファイバの他方の先端に入射される。この二つの光が感知光ファイバを進行しながら、位相コードの最初に接するビットで二つの光の位相は常に一致するが、異なるビットの位置では一致しない時間が存在する。このように位相が一致する時間が音波のフォノン寿命10ns以上になると、ブリルアン散乱増幅が発生し、ブリルアン周波数を得ることができる。しかし、二つの光の異なる位置では、位相の一致する時間が音波のフォノン寿命より短くなり、ブリルアン散乱増幅が発生せず、ブリルアンゲインを得ることができない。
【0007】
一方、感知光ファイバの内部で二つの光が最初に接するビットの位置は、PRBSコードの周波数を変更してもビットの位置が変化しない。しかし、二番目以上の相関ビットの位置では、位相コードの周波数を変更すると位置が変更される。したがって、感知光ファイバにおいて任意の位置でのブリルアン増幅信号を得るためには、遅延光ファイバを置くことで二番目以上の相関位置で感知区間が設定されるようにしなければならない。したがって、光受信器(photo receiver)で得るブリルアン散乱増幅光は、PRBSコードの相関ビットでのみ発生する信号を電気信号に変換する。コンピュータでは、アナログ-デジタル変換器を使用して電気信号をデジタル信号に変換することでブリルアンゲインスペクトルを取得し、ブリルアン周波数を求めて、数学式1によって温度または歪率を求める。
【0008】
図2は従来の位相コード周波数制御型光ファイバBOCDAセンサの駆動実施形態であって、
図1の概略図に示されている装置をより具体化して実現した構成例である。
図2の実施形態において全システムは、コンピュータのデータ取得プログラムによって制御される。このプログラムは、パルスパターン発生器(PPG:pulse pattern generator)の作動を調整し、このPPGで発生した信号が位相変調器に入力され、この変調器は、高出力DFB LD(Distributed Feed-Back Laser Diode)から出力された光の位相を変調させる。
図2の実施形態においてLDから出力された光は、ピーク波長は1553nmであり、35mWの強度を有するようにすることができる。PPGは、PRBS(pseudo random bit sequence)パターンの電気信号を発生させるが、この信号の一ビットの持続時間(symbol duration)は、誘導ブリルアン散乱(SBS:stimulated Brillouin scattering)で発生する音波のフォノン寿命よりもはるかに短く設定される。PRBSの一ビットの位相は、0とπの一つに変調され、二つの状態の発生確率は同一である。変調された光信号は、プローブ光とポンプ光の発生のために3dB光ファイバカプラによって分岐される。位相変調されて連続発進するプローブ光とポンプ光は、閉ループの反対方向に進行し、正確にループの中間点で接して相互作用を行い、相関関係ピークを生成する。仮に、位相コードの全長を通過しながらまた二つの光が接すると、その位置で相関関係ピークがまた生成される。
【0009】
図3は従来の位相コード周波数制御型光ファイバBOCDAセンサの駆動時に位相コード周波数変調による光ファイバ内の相関関係ピーク位置の変化を図示した図である。
図3に図示されているように、位相コードビット一つの長さをT時間とすると、プローブ光とポンプ光が接して形成する相関関係ピークの距離幅は、Δd=(1/2)ν
gTで表される(この際、ν
gは、光ファイバの中の光の群速度)。光ファイバのループの長さがPRBSビットの全長よりも長いと、この相関関係ピークは、光ファイバのループに沿って
図3のように周期的に形成される。
【0010】
この際、光信号の分岐点である3dB光ファイバカプラを通過した後、正確に中間位置に形成される相関関係ピークを0次相関関係ピークとするが、この場合は、二つの進行光の経路差がない場合である。感知光ファイバで二つの光の接する位置を正確に中間ではなく離脱した位置にするためには、すなわち、最初に形成される相関関係ピークの次数が0次でないようにするためには、プローブ光とポンプ光が進行する間に意図的な経路差を導入しなければならない。このために、経路差のための時間遅延光ファイバ(Delay fiber、
図1および
図2参照)をプローブ光と近くの位置に挿入する。このように形成される相関関係ピークのループ上での位置は、時間遅延光ファイバの長さによって左右される。相関関係ピークの間の距離Δd
nはΔd
n=NΔd=(1/2)Nν
gTのような式で表すことができ、この際、Nは、PRBSコードの長さである。実験では、この長さとして2
15-1個のビットが使用された。測定のために使用される感知光ファイバの長さをΔd
nよりも短くして、相関関係ピークを閉ループの中でただ一つだけ形成されるようにする。PRBS周波数を変更すると、一ビットの時間幅がTからT´に変わり、全体のPRBSの長さが変わるため、相関関係ピーク位置も移動する。この位置移動位は、相関関係ピークの次数が大きいほどさらに多く移動する。このピークの移動は、測定しようとする光ファイバの距離分解能を保障するためには、ピークの距離幅であるΔdと同一であるか小さい必要がある。かかる説明を式で表すと、以下の通りである。
【0011】
【0012】
ここで、
【数3】
と
【数4】
は、時間遅延光ファイバ長さと相関関係ピークとの距離である。一ビットの時間幅は、変調周波数(BR:modulation bit rate)の逆数であるため、光ファイバの測定位置を移動させるためのBRの変化率は、
【数5】
である。数学式2をこのBR変化率に対する式を用いて単純化すると、数学式3を得ることができる。
【0013】
【0014】
数学式3は、感知光ファイバで測定位置を変化させなければならないBRの間隔を意味する。この間隔は、変調周波数、一ビットの距離幅に比例し、時間遅延光ファイバの長さに反比例する。
【0015】
「Random-access distributed fiber sensing」(Avi Zadok etc, Laser Photonics Rev. 6, No. 5, L1-L5, 2012)などの論文にも、上記で説明したような従来の位相コード周波数変調型光ファイバBOCDAセンサと同様、時間遅延光ファイバ(delay fiber)を含むセンサ構成について開示されている。しかし、かかる従来の技術は、位相コード周波数を変調させることが難しいという問題、位相コード周波数変調による相関関係ピーク幅が変化する問題、遅延光ファイバを設置しなければならないという問題、感知光ファイバに相関関係ピーク位置を如何なるところに位置させるか決定することが容易でないという問題など、様々な問題を有している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【文献】「Random-access distributed fiber sensing」(Avi Zadok etc, Laser Photonics Rev. 6, No. 5, L1-L5, 2012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するために導き出されたものであり、本発明は、二つの位相コードを使用して相関関係ピーク位置を制御することで、従来に比べて、制御設計および装置構成をより単純化し、且つ空間分解能を向上させることで、感知性能および検出精度を向上させる、時間差を有するポンプ光とプローブ光の位相コード変調を使用する光ファイバBOCDAセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記のような目的を達成するための本発明の時間差を有するポンプ光とプローブ光の位相コード変調を使用する光ファイバBOCDAセンサ100は、ブリルアン周波数変異を用いて、感知光ファイバ140上の任意の位置での歪率および温度を測定する光ファイバBOCDAセンサ100であって、プローブ光の光ファイバライン120およびポンピング光の光ファイバライン130それぞれに、互いに独立して制御可能なプローブ光位相変調器121およびポンピング光位相変調器131が備えられ、前記プローブ光位相変調器121および前記ポンピング光位相変調器131それぞれで作られる位相コードパターンに時間差が形成されることで、前記感知光ファイバ140上でのポンピング光およびプローブ光の相関関係ピーク位置が調節可能になることができる。
【0019】
この際、前記光ファイバBOCDAセンサ100は、前記プローブ光位相変調器121および前記ポンピング光位相変調器131それぞれで作られる位相コードパターンが互いに同じ形態、且つ時間差だけ存在する形態になるように調節するようになることができる。
【0020】
また、前記光ファイバBOCDAセンサ100は、相関関係ピーク位置が前記感知光ファイバ140上の測定を行おうとする位置に相当するように、前記プローブ光位相変調器121および前記ポンピング光位相変調器131それぞれで作られる位相コードパターンの時間差を調節するようになることができる。
【0021】
また、前記光ファイバBOCDAセンサ100は、前記感知光ファイバ140上の測定を行おうとする位置の区間の長さによって、前記プローブ光位相変調器121および前記ポンピング光位相変調器131それぞれで作られる位相コードパターンのビット幅を調節するようになることができる。
【0022】
また、前記光ファイバBOCDAセンサ100は、空間分解能を向上させるように、相関関係ピーク位置のビット幅が予め決定された第1大きさを有する位相コードパターンを使用して求められたブリルアンスペクトルにおいて、相関関係ピーク位置のビット幅が前記第1大きさよりも小さい第2大きさを有する位相コードパターンを使用して求められたブリルアンスペクトルを差し引くように制御することができる。
【0023】
より具体的な構成として、前記光ファイバBOCDAセンサ100は、光源110と、前記光源110から光ファイバを介して進行されて来る光を前記プローブ光の光ファイバライン120および前記ポンピング光の光ファイバライン130それぞれに進行して行くように分岐する光ファイバカプラ115と、一端が前記プローブ光の光ファイバライン120の先端に連結され、他端が前記ポンピング光の光ファイバライン130に連結され、プローブ光およびポンピング光の周波数の間にブリルアン周波数だけの差があると、ポンピング光の後方に散乱されるブリルアン散乱光に増幅を引き起こす前記感知光ファイバ140と、前記プローブ光の光ファイバライン120上に備えられ、予め決定された位相コードパターンでプローブ光の位相を変調する前記プローブ光位相変調器121と、前記プローブ光の光ファイバライン120上に備えられ、前記プローブ光位相変調器121から進行されて来るプローブ光を前記感知光ファイバ140のブリルアン周波数近くの周波数変調を有するように調整するプローブ光電気-光学変調器122と、前記プローブ光の光ファイバライン120上に備えられ、前記プローブ光電気-光学変調器122から進行されて来るプローブ光を前記感知光ファイバ140の方に進行させ、前記感知光ファイバ140から進行されて来る光は遮断させる光ファイバアイソレータ125と、前記ポンピング光の光ファイバライン130上に備えられ、前記プローブ光位相変調器121で使用される位相コードパターンと時間差が形成された位相コードパターンでポンピング光の位相を変調する前記ポンピング光位相変調器131と、前記ポンピング光の光ファイバライン130上に備えられ、前記ポンピング光位相変調器131から進行されて来るポンピング光を前記感知光ファイバ140の方に進行させる光ファイバサーキュレータ135と、前記光ファイバサーキュレータ135から進行されて来るブリルアン散乱光を取得する光受信器150と、前記プローブ光位相変調器121および前記ポンピング光位相変調器131で発生する位相コードパターンを制御する制御部160とを含むことができる。
【0024】
この際、前記光ファイバBOCDAセンサ100は、前記プローブ光の光ファイバライン120上の前記光ファイバアイソレータ125の前方に備えられ、前記光ファイバアイソレータ125に進行されて来るプローブ光を増幅するプローブ光の光ファイバ増幅器123をさらに含むことができる。
【0025】
また、前記光ファイバBOCDAセンサ100は、前記プローブ光の光ファイバライン120上の前記プローブ光電気-光学変調器122と前記光学アイソレータ125との間に備えられ、前記プローブ光電気-光学変調器122から進行されて来るプローブ光での偏光の影響を除去する偏光スクランブラ124をさらに含むことができる。
【0026】
また、前記光ファイバBOCDAセンサ100は、前記光受信器150の後方に備えられ、前記光受信器150で受信するブリルアン散乱光を増幅するロックイン増幅器155と、前記ポンピング光の光ファイバライン130上に備えられ、前記ポンピング光位相変調器131から進行されて来るポンピング光を正弦波に変調させて前記ロックイン増幅器155を駆動するポンピング光電気-光学変調器132とをさらに含むことができる。
【0027】
また、この際、前記光ファイバBOCDAセンサ100は、前記ポンピング光の光ファイバライン130上の前記光ファイバサーキュレータ135の前方に備えられ、前記光ファイバサーキュレータ135に進行されて来るポンピング光を増幅するポンピング光の光ファイバ増幅器133をさらに含むことができる。
【0028】
また、前記制御部160は、前記プローブ光位相変調器121および前記ポンピング光位相変調器131と連結され、前記プローブ光位相変調器121および前記ポンピング光位相変調器131それぞれで使用される位相コードパターンを発生させて印加するパルスパターン発生器161と、前記プローブ光電気-光学変調器122と連結され、前記感知光ファイバ140のブリルアン周波数近くの電気信号を作って前記プローブ光電気-光学変調器122を駆動するRF信号合成器162とを含むことができる。
【0029】
また、前記制御部160は、前記ポンピング光電気-光学変調器132および前記ロックイン増幅器155と連結され、光を規則的な時間間隔で取り締まるチョッピングモジュール163を含むことができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によると、従来の位相コード周波数変調型光ファイバBOCDAセンサにおいて相関関係ピーク位置を制御するために光周波数を変調していた過程を除き、その代わりに、相関関係ピーク位置を制御するために時間差のある二つの位相コード制御を使用する過程を用いることで、従来に比べて、より単純化した制御設計および装置構成を実現できるという大きな効果がある。これにより、上記で説明した従来の位相コード周波数変調方式の様々な問題を最初から除去することができることは言うまでもない。
【0031】
より具体的には、従来、位相コード周波数を変調させることが難しい問題、位相コード周波数変調による相関関係ピーク幅の変化する問題があったが、本発明では、互いに別に制御することができる位相変調器を使用することから、制御設計がはるかに容易に行われることができる。また、従来、時間遅延光ファイバを設置しなければならないという問題があったが、本発明では、時間遅延光ファイバを設置する必要がなく、装置構成をより簡素化することができる。さらに、従来、感知光ファイバに相関関係ピーク位置を如何なるところに位置させるかを決定することが容易でないという問題があったが、本発明では、相関関係ピーク位置を所望通りに割り当てることができ、また制御設計がはるかに容易に行われる。
【0032】
また本発明によると、相関関係ピーク位置を所望通りに任意に制御できることにより空間分解能を向上させることができ、最後には、感知性能および検出精度を向上させることができるという大きな効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】従来の位相コード周波数制御型光ファイバBOCDAセンサの概略図である。
【
図2】従来の位相コード周波数制御型光ファイバBOCDAセンサの駆動実施形態である。
【
図3】従来の位相コード周波数制御型光ファイバBOCDAセンサ駆動時に位相コード周波数変調による光ファイバ内の相関関係ピーク位置変化を示す図である。
【
図4】本発明の時間差がある二つの位相コードを使用する光ファイバBOCDAセンサの概略図である。
【
図5】本発明の時間差がある二つの位相コードを使用する光ファイバBOCDAセンサの駆動実施形態である。
【
図6】本発明の時間差がある二つの位相コードを使用する光ファイバBOCDAセンサ駆動時にポンプ光およびプローブ光の位相間の時間差の変化による光ファイバ内の相関関係ピーク発生位置調節実施形態である。
【
図7】本発明の時間差がある二つの位相コードを使用する光ファイバBOCDAセンサ駆動実験に使用された感知光ファイバの構成実施形態である。
【
図8】
図7の感知光ファイバを使用して取得したブリルアンゲインスペクトルである。
【
図9】
図8のブリルアンゲインスペクトルから取得したブリルアン周波数である。
【
図10】二つの位相コードパターンの時間差を作る様々な実施形態である。
【
図11】感知光ファイバ上に3個の測定区間がある場合の相関関係ピーク発生区間の長さによるビット幅調節実施形態である。
【
図12】感知光ファイバ上に3個の測定区間がある場合の相関関係ピーク発生区間の長さによるビット幅調節実施形態である。
【
図13】相関位置のビット幅差がある二つのブリルアンゲインを取得してその信号差を得る実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、上記のような構成を有する本発明による時間差を有するポンプ光とプローブ光の位相コード変調を使用する光ファイバBOCDAセンサについて、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0035】
[1]本発明の光ファイバBOCDAセンサの改善原理
上記で説明したように、従来は相関関係ピーク位置を制御するために光周波数を変調しており、この過程で様々な制御設計および装置構成を難解にする問題が発生した。本発明では、かかる従来の光ファイバBOCDAセンサの欠点、すなわち、相関関係ピーク位置を制御するために光周波数を変調する過程を、二つの位相コードを使用する新たな方式に代える光ファイバBOCDAセンサについて開示する。
【0036】
図4は本発明の時間差がある二つの位相コードを使用する光ファイバBOCDAセンサの概略図である。本発明の光ファイバBOCDAセンサ100は、基本的に、ブリルアン周波数変異を用いて、感知光ファイバ140上の任意の位置での歪率および温度を測定する光ファイバBOCDAセンサ100であって、プローブ光の光ファイバライン120およびポンピング光の光ファイバライン130それぞれに、互いに独立して制御可能なプローブ光位相変調器121およびポンピング光位相変調器131が備えられる。この際、本発明の光ファイバBOCDAセンサ100では、前記プローブ光位相変調器121および前記ポンピング光位相変調器131で作られる位相コードパターンに時間差が形成されることで、ポンピング光およびプローブ光の相関関係ピーク位置が調節可能になる。より具体的には、本発明の光ファイバBOCDAセンサ100は、前記プローブ光位相変調器121および前記ポンピング光位相変調器131それぞれで作られる位相コードパターンが互いに同じ形態、且つ時間差だけ存在する形態になるように調節する。
【0037】
図1に図示されている従来の光ファイバBOCDAセンサと
図4に図示されている本発明の光ファイバBOCDAセンサ100を直観的に比較すると、従来の光ファイバBOCDAセンサは、プローブ光の光ファイバラインおよびポンピング光の光ファイバラインに同じ位相コードパターンを有する光が入射され、この際、感知光ファイバ上の任意の位置でのブリルアン増幅信号が得られるようにするために、プローブ光の光ファイバライン上に時間遅延光ファイバ(Delay fiber)を備える。一方、本発明の光ファイバBOCDAセンサ100は、前記プローブ光の光ファイバライン120および前記ポンピング光の光ファイバライン130それぞれに、互いに独立して制御可能な前記プローブ光位相変調器121および前記ポンピング光位相変調器131が備えられる。すなわち、本発明では、プローブ光およびポンピング光の位相コードの間に時間遅延を発生させるためには、単にそれぞれの位相変調器121、131が作り出す光の間に時間遅延が形成されるように、それぞれの位相コードパターンを適切に設定すればよい。すなわち、本発明では、従来の光ファイバBOCDAセンサで必ず必要であった時間遅延光ファイバを備える必要が無くなる。
【0038】
この際、上述したように、従来の光ファイバBOCDAセンサでは、変調周波数、変調周波数の変化率、時間遅延光ファイバの長さおよび相関関係ピーク間の距離の間に所定の関係が形成されることから、感知光ファイバに相関関係ピーク位置が如何なるところに位置するようにするかを予め決定し、これを考慮して時間遅延光ファイバ長さなどを決定しなければならないなど、制御設計および装置構成において難解な問題がある。しかし、本発明では、時間遅延光ファイバ自体が構成から削除されるため、時間遅延光ファイバと関連する制御設計や装置構成における難解さが最初から除去される。さらに、それぞれの位相変調器121、131は、互いに独立して制御可能であるため、一つの位相変調器で如何なる位相コードパターンで変調を行うように設定し、他の一つの位相変調器ではかかる位相コードパターンで変調を行うように設定することができるが、このそれぞれの位相コードパターンが互いに同じ形態を有し、時間遅延があるパターンであるように設定することも自由にいくらでも可能である。この時間遅延値を決定する際にも何の制限なく所望通りに自由に設定することができ、結果、制御設計および装置構成を従来に比べてはるかに容易に行うことができる。
【0039】
[2]本発明の光ファイバBOCDAセンサの動作原理
図4を参照して、本発明の光ファイバBOCDAセンサ100の基本的な構成および動作原理についてより詳細に説明する。本発明の光ファイバBOCDAセンサ100は、基本的に、光源110と、光ファイバカプラ115と、プローブ光の光ファイバライン120と、ポンピング光の光ファイバライン130と、感知光ファイバ140とを含み、これに、プローブ光位相変調器121、プローブ光電気-光学変調器122、光ファイバアイソレータ125、ポンピング光位相変調器131、光ファイバサーキュレータ135、光受信器150、制御部160が備えられてなることができる。各部について簡単に説明すると、以下の通りである。
【0040】
先ず、基本的な構成部品である前記光源110、前記光ファイバカプラ115、前記感知光ファイバ140それぞれについて簡単に説明する。
【0041】
前記光源110は、センサの全体的な動作のための光を出力する。この際、動作効率を良くするためには、前記光源110から出力される光が可干渉性が良いことが好ましく、具体的な例示として、前記光源110は、一つのDFBレーザダイオード(Distributed Feed-Back Laser Diode)からなることができる。
【0042】
前記光ファイバカプラ115は、1×2光ファイバカプラ形態からなり、前記光源110から光ファイバを介して進行されて来る光を、前記プローブ光の光ファイバライン120および前記ポンピング光の光ファイバライン130それぞれに進行して行くように分岐する役割をする。
【0043】
前記感知光ファイバ140は、取得しようとする感知信号が発生する部分であって、一端が前記プローブ光の光ファイバライン120の先端に連結され、他端が前記ポンピング光の光ファイバライン130に連結される。これにより、前記感知光ファイバ140の両端それぞれからプローブ光およびポンピング光が進行されて来て、前記感知光ファイバ140内で二つの光が互いに接する。この際、プローブ光およびポンピング光の周波数の間にブリルアン周波数だけの差があると、ポンピング光の後方に散乱されるブリルアン散乱光が増幅される。上記で説明したように、かかるブリルアン散乱光の周波数変異値は、前記感知光ファイバ140上の任意の位置での歪率および温度と直接的な関係がある。したがって、ブリルアン散乱光を取得してブリルアン周波数変異を測定することで、最後には、前記感知光ファイバ140上の任意の位置での歪率および温度変化を測定することができる。
【0044】
次に、前記プローブ光の光ファイバライン120上に配置される前記プローブ光位相変調器121、前記プローブ光電気-光学変調器122、前記光ファイバアイソレータ125それぞれについて簡単に説明する。
【0045】
前記プローブ光位相変調器121は、前記プローブ光の光ファイバライン120上に備えられ、予め決定された位相コードパターンでプローブ光の位相を変調する役割をする。前記位相コードパターンは、ユーザが所望通りに適切且つ自由に設定することができる。
【0046】
前記プローブ光電気-光学変調器122は、前記プローブ光の光ファイバライン120上に備えられ、前記プローブ光位相変調器121から進行されて来るプローブ光を前記感知光ファイバ140のブリルアン周波数近くの周波数変調を有するように調整する役割をする。
【0047】
前記光ファイバアイソレータ125は、前記プローブ光の光ファイバライン120上に備えられ、前記プローブ光電気-光学変調器122から進行されて来るプローブ光を前記感知光ファイバ140の方に進行させる役割をする。また、前記光ファイバアイソレータ125は、前記感知光ファイバ140から進行されて来る光は遮断する役割も兼ねる。
【0048】
次に、前記ポンピング光の光ファイバライン130上に配置される前記ポンピング光位相変調器131、前記光ファイバサーキュレータ135それぞれについて簡単に説明する。
【0049】
前記ポンピング光位相変調器131は、前記ポンピング光の光ファイバライン130上に備えられ、前記プローブ光位相変調器121と同様に、ポンピング光の位相を変調する役割をする。この際、本発明において、前記ポンピング光位相変調器131で使用される位相コードパターンは、前記プローブ光位相変調器121で使用される位相コードパターンと時間差が形成されるパターンである。
【0050】
前記光ファイバサーキュレータ135は、前記ポンピング光の光ファイバライン130上に備えられ、前記光ファイバアイソレータ125と同様に、前記ポンピング光位相変調器131から進行されて来るポンピング光を前記感知光ファイバ140の方に進行させる役割をする。
【0051】
最後に、光を取得し制御する前記光受信器150、前記制御部160それぞれについて簡単に説明する。
【0052】
前記光受信器150は、前記光ファイバサーキュレータ135から進行されて来るブリルアン散乱光を取得する役割をする。前記光受信器150は、前記制御部160と連結されて、前記制御部160に取得した光信号データを伝達することで、信号分析が行われるようにする。
【0053】
前記制御部160は、最も基本的には、前記プローブ光位相変調器121および前記ポンピング光位相変調器131で発生する位相コードパターンを制御する役割をし、その他にも、様々な他の装置を制御し分析するなどの役割をする。
【0054】
このようになる本発明の光ファイバBOCDAセンサ100の全般的な動作について説明すると、以下の通りである。
【0055】
前記光源110から出た光は、前記光ファイバカプラ115で分岐されてプローブ光およびポンピング光として使用される。この二つの光は、前記それぞれの位相変調器121、131によってPRBSコードパターンで位相変調され、この際、この二つのPRBSコードパターンの間には時間差がある。プローブ光は、前記プローブ光電気-光学変調器122によってブリルアン周波数近くの周波数変調を有するように調整された後、前記感知光ファイバ140の一方の先端に入力される。一方、ポンピング光は、前記光ファイバサーキュレータ135を通過した後、前記感知光ファイバ140の他方の先端に入力される。このようにポンピング光およびプローブ光が前記感知光ファイバ140の内部で接する時に、二つの光の周波数の間に前記感知光ファイバ140のブリルアン周波数だけの周波数差があると、ポンピング光の後方に散乱される光に増幅が生じる。この増幅されポンピング光の後方に進行するブリルアン散乱光の周波数は、前記感知光ファイバ140の歪率や温度に比例する。
【0056】
しかし、ポンピング光およびプローブ光は、前記感知光ファイバ140に入射される前にPRBSコードで位相変調されているため、前記感知光ファイバ140の中で二つのコードが初めて接するビット幅だけの位置では常に位相が一致し、それ以外のPRBSコードの他の位置では位相が一致しない時間が存在する。したがって、後方散乱光が大きくなるブリルアン増幅は、前記感知光ファイバ140の内部のポンピング光およびプローブ光のPRBSコードパターンの位相が一致するビット位置でのみ発生する。
【0057】
かかる理由によってブリルアン散乱光を取得する前記光受信器150は、PRBSコードの一ビット幅だけの位置でのみ作られるブリルアン散乱光ゲイン信号を取得する。このようにブリルアン散乱ゲイン信号が最大に得られる条件でのプローブ光変調周波数は、前記感知光ファイバ140の該当位置でのブリルアン周波数であるため、数学式1によって歪率または温度を求めることができる。一方、前記感知光ファイバ140の他の位置でのブリルアン周波数を求めるためには、ポンピング光およびプローブ光の位相変調パターンであるPRBSコードの時間差を変更すれば良い。
【0058】
[3]本発明の光ファイバBOCDAセンサの駆動実施形態
図5は本発明の時間差がある二つの位相コードを使用する光ファイバBOCDAセンサの駆動実施形態を図示している。
図5の実施形態は、
図4に示されている構成部品とともに、プローブ光の光ファイバ増幅器123と、偏光スクランブラ124と、ポンピング光電気-光学変調器132と、ポンピング光の光ファイバ増幅器133と、ロックイン増幅器155とをさらに含むことができる。また、前記制御部160は、パルスパターン発生器161と、RF信号合成器162と、チョッピングモジュール163とを含むことができる。各部について簡単に説明すると、以下の通りである。
【0059】
先ず、前記光ファイバBOCDAセンサ100にさらに含まれる構成部品それぞれについて簡単に説明する。
【0060】
前記プローブ光の光ファイバ増幅器123および前記ポンピング光の光ファイバ増幅器133は、それぞれ前記感知光ファイバ140に入るポンピング光およびプローブ光を増幅する役割をする。具体的には、前記プローブ光の光ファイバ増幅器123は、前記プローブ光の光ファイバライン120上の前記光ファイバアイソレータ125の前方に備えられ、前記光ファイバアイソレータ125に進行されて来るプローブ光を増幅する。また、前記ポンピング光の光ファイバ増幅器133は、前記ポンピング光の光ファイバライン130上の前記光ファイバサーキュレータ135の前方に備えられ、前記光ファイバサーキュレータ135に進行されて来るポンピング光を増幅する。
【0061】
前記偏光スクランブラ124(PS:polarization scrambler)は、前記プローブ光の光ファイバライン120上の前記プローブ光電気-光学変調器122と前記光学アイソレータ125との間に備えられ、前記プローブ光電気-光学変調器122から進行されて来るプローブ光での偏光の影響を除去する役割をする。
【0062】
前記ポンピング光電気-光学変調器132および前記ロックイン増幅器155は、ともに備えられなければならないが、先ず、前記ロックイン増幅器155は、前記光受信器150の後方に備えられ、前記光受信器150で受信するブリルアン散乱光を増幅する役割をする。また、前記ポンピング光電気-光学変調器132は、前記ポンピング光の光ファイバライン130上に備えられ、前記ポンピング光位相変調器131から進行されて来るポンピング光を正弦波に変調し、前記ロックイン増幅器155を駆動する役割をする。
【0063】
次に、前記制御部160に含まれるパルスパターン発生器161(PPG:pulse pattern generator)、RF信号合成器162(RF signal synthesizer)、チョッピングモジュール163(chopping module)それぞれについて簡単に説明する。
【0064】
前記パルスパターン発生器161は、前記プローブ光位相変調器121および前記ポンピング光位相変調器131と連結され、前記プローブ光位相変調器121および前記ポンピング光位相変調器131それぞれで使用される位相コードパターンを発生させて印加する役割をする。前記パルスパターン発生器161で発生させるパターンは、ユーザが自由且つ任意に調節することができる。
【0065】
前記RF信号合成器162は、前記プローブ光電気-光学変調器122と連結され、前記感知光ファイバ140のブリルアン周波数近くの電気信号を作り、前記プローブ光電気-光学変調器122を駆動する役割をする。
【0066】
前記チョッピングモジュール163は、光を規則的な時間間隔で取り締まる役割をするものであり、図示されているように、前記ポンピング光電気-光学変調器132および前記ロックイン増幅器155と連結される。以降、より詳細に説明するが、前記ポンピング光電気-光学変調器132および前記ロックイン増幅器155は、本発明の光ファイバBOCDAセンサ100の制御方式に従って除去され得るが、この場合、前記チョッピングモジュール163もともに除去され得る。
【0067】
このようになる本発明の光ファイバBOCDAセンサ100の具体的な動作を説明すると、以下の通りである。
【0068】
図4の実施形態と同様、高出力DFBレーザダイオードからなる前記光源110から出た光は、3dB光ファイバカプラ115で分岐されてプローブ光およびポンピング光として使用される。この二つの光は、前記それぞれの位相変調器121、131によって位相変調されるが、
図5の実施形態では、前記それぞれの位相変調器121、131にコンピュータによって制御され、二つのチャンネルを有する前記パルスパターン発生器161が連結され、前記それぞれの位相変調器121、131で発生するPRBSコードパターンを調節する。PRBSの一ビットの位相は0とπの一つであり、二つの位相ビットの発生確率は一つのコード内でほぼ同一である。
【0069】
図6は本発明の時間差がある二つの位相コードを使用する光ファイバBOCDAセンサ駆動時にポンプ光およびプローブ光の位相間の時間差の変化による光ファイバ内の相関関係ピーク発生位置調節実施形態である。上記の説明での二つのPRBSコードパターンは、完全に同一であり、且つ時間差だけ存在するパターンであって、二つのパターンの間の時間差はコンピュータで任意に制御することができる。したがって、位相コード変調されたポンピング光およびプローブ光の間の位相が一致する位置、すなわち、
図6に図示されているように、相関関係ピーク発生位置を任意の位置に調整することができる。換言すると、相関関係ピーク領域は、前記プローブ光位相変調器121および前記ポンピング光位相変調器131を使用して、非常に短い位相コード一つのビット幅が前記感知光ファイバ140上の任意の位置で位相が常に一致するようにして得ることができ、この際、ブリルアンゲインを得ることができる。この相関関係ピークの距離幅Δdは、Δd=(1/2)ν
gTの式で求めることができ、ここでν
gは、光ファイバの内部を進行する光の群速度であり、Tは、PRBS信号の一ビットの時間幅である。この一ビットの持続時間(symbol duration)は、一般的に誘導ブリルアン散乱(SBS:stimulated Brillouin scattering)を引き起こす最小時間の10nsよりもはるかに短く設定される。すなわち、空間分解能が1mよりも短く作動させることが可能になる。
【0070】
一方、ブリルアン周波数(ν
B)を探すためには、ポンピング光およびプローブ光の間の周波数差を制御しなければならないが、本発明では、プローブ光の周波数を前記プローブ光電気-光学変調器122によって変調させる方法でかかる周波数差の制御を行う。具体的には、プローブ光を前記RF信号合成器162を用いて、ブリルアン周波数近くの電気信号に作り、増幅器(
図5においてRF信号合成器162とプローブ光電気-光学変調器122との間に備えられる増幅器)で増幅して前記プローブ光電気-光学変調器122を駆動し、プローブ光の周波数を変調する。このようにブリルアン周波数帯域で変調されたプローブ光は、前記プローブ光の光ファイバ増幅器123によって増幅される。プローブ光に対して前記感知光ファイバ140の内部で偏光の影響を除去するために、偏光スクランブラ124でランダムに偏光方向を調整することが好ましく、このように様々な変調および調整が完了したプローブ光は、前記光ファイバアイソレータ125を経て前記感知光ファイバ140に入射される。一方、ポンピング光は、前記ポンピング光電気-光学変調器132でオン-オフ変調を行い、前記ロックイン増幅器155のトリガリングのための信号として使用される。この際、かかるオン-オフ変調がスムーズに行われるようにするために、前記チョッピングモジュール163が使用される。その後、ポンピング光は、前記ポンピング光の光ファイバ増幅器133によって増幅され、前記光ファイバサーキュレータ135を経て前記感知光ファイバ140に入射される。
【0071】
このように、前記感知光ファイバ140の内部に入射され進行するポンピング光は、プローブ光と相関関係ピーク位置でブリルアン増幅を引き起こした後、後方に散乱されて戻る。このブリルアン散乱光は、前記光学サーキュレータ135を経て前記光受信器150を通過しながら電気信号に変換される。この信号は、前記ロックイン増幅器155で増幅され、前記制御部160のデータ取得プログラムによってデジタル信号に変換され保存される。前記制御部160によって作動するデータ取得および制御プログラムは、前記パルスパターン発生器161、前記RF信号合成器162、前記チョッピングモジュール163を制御し、前記光受信器150と連結された前記ロックイン増幅器155の信号を取得する。
【0072】
かかる本発明の光ファイバBOCDAセンサ100の駆動実施形態を用いて実際実験を行い、この際の詳細的な作動条件は、以下の通りである。PRBSパターンの位相コードの周波数は5GHzとし、空間分解能を2cmと設定した。また、PRBSパターンの長さは27-1=511と設定し、使用可能な感知光ファイバの最大長さが511×2cm=1,022cmになるようにした。一方、ブリルアン周波数探索のための前記プローブ光電気-光学変調器122は、10.4GHzから11GHzまで0.6GHz範囲をスキャンするように設定した。また、ブリルアン周波数探索1周期の時間は50msecと設定し、周波数スキャン時に24kHzの速度でデータを取得してブリルアンゲインスペクトルを10個取得し、平均値を求め、最大値を得てブリルアン周波数を求めた。
【0073】
図7は本発明の時間差がある二つの位相コードを使用する光ファイバBOCDAセンサ駆動実験に使用された感知光ファイバの構成実施形態であって、
図7の実施形態において前記感知光ファイバ140は、単一モード光ファイバと分散移動光ファイバ(DSF:dispersion shift fiber)を融着接続して作られ、それぞれの光ファイバに対してブリルアン周波数を検出して歪率測定可能性を確認した。単一モード光ファイバの場合、4種類のブリルアン周波数が異なる光ファイバを融着接続した。
【0074】
図8は
図7の感知光ファイバを使用して取得したブリルアンゲインスペクトルを示している。
図8の(A)は3次元的に示した図であり、
図8の(B)は
図8の(A)での高さの値を色で表して2次元的に示した図である。
図8によく示されているように、それぞれの位置で明確にゲインピークを決定することができるブリルアンゲイン分布を得ることができた。特に、
図7の感知光ファイバで分散移動光ファイバが30cmずつ3個の部分で連結されており、この部分のゲインスペクトルが2次元スペクトルで非常に明確に区分されていることが認められる。一方、ゲインが存在しない部分があるが、この部分は、光ファイバが存在しない位相コードの残り部分である。すなわち、1,022cmをスキャンする位相コードを使用しているが、8.6mから9.4m部分は、光ファイバがない部分である。
【0075】
図9は
図8のブリルアンゲインスペクトルから取得したブリルアン周波数を示した図である。すなわち、
図8のブリルアンゲインスペクトルからゲインの最大値を有する部分の周波数を取得し、
図9のようにブリルアン周波数と決定するが、この値がまさに歪率または温度に相当する値である。
図9のグラフにおいて前記感知光ファイバ140の実際存在領域は、x軸の0.12mから始まり7.14mまでの総6.62mの長さに相当する部分である。
図7の前記感知光ファイバ140の左側から比較すると、82cmの長さだけブリルアン周波数が10.82GHzである単一モード光ファイバがあり、その後に210cmの他のブリルアン周波数である10.85GHzを有する単一モード光ファイバがあり、10.53GHzのブリルアン周波数を有する分散移動光ファイバが30cm連結されており、また、2個がさらに連結されていることがよく示されている。その後にはまた210cm長さの単一モード光ファイバが連結されているが、ブリルアン周波数は、10.83GHzと先方のものより若干小さい値を示した。その後にまた88cm長さの単一モード光ファイバが10.83GHzのブリルアン周波数を示した。すなわち、
図9のグラフから本発明による光ファイバBOCDAセンサ100は空間分解能2cmを見事に達成していることが分かり、ブリルアン周波数分解能は0.5MHzであり、測定誤差は1MHzであることが分かった。
【0076】
[4]本発明の光ファイバBOCDAセンサの詳細な原理:時間差の生成
上記で説明したように、本発明の核心は、つまり、二つの同じ位相コードパターンを時間差を有するようにし、これを用いてポンピング光およびプローブ光の相関関係ピーク位置を制御することである。したがって、二つの位相コードパターンの時間差を作る過程が重要である。最も簡単な方法は、
図10の(A)に示されているように、一つの位相コードを作り、そのコードのビットを感知光ファイバの測定を所望する位置だけビット数を移動させる方法である。また他の方法は、
図10の(B)に示されているように、二つの同じパターンの位相コードを時間差を置いて連続発生させて相関位置を制御する方法である。
【0077】
この際、本発明の光ファイバBOCDAセンサ100は、相関関係ピーク位置が前記感知光ファイバ140上の測定を行おうとする位置に相当するように、前記プローブ光位相変調器121および前記ポンピング光位相変調器131それぞれで作られる位相コードパターンの時間差を調節することができる。具体的に説明すると、本発明では、二つの位相コード間の時間差をプログラムで作り、前記パルスパターン発生器161に入力して使用することから、前記感知光ファイバ140上で測定を所望する如何なる位置にも相関関係ピーク位置をプログラムで割り当てることができる。従来のブリルアンセンサシステムは、ほとんどが感知光ファイバの全位置をスキャンしながら測定していたが、本発明の光ファイバBOCDAセンサ100を使用すると、二つの位相コードの間の時間差さえ選択すれば、それによる感知光ファイバの該当位置でのみ測定を行うように簡単に制御することができる。
【0078】
[5]本発明の光ファイバBOCDAセンサの詳細な原理:ビット幅の調節
本発明の光ファイバBOCDAセンサ100は、前記感知光ファイバ140上の測定を行おうとする位置の区間の長さによって、前記プローブ光位相変調器121および前記ポンピング光位相変調器131それぞれで作られる位相コードパターンのビット幅を調節する。測定しようとする区間の長さが短いか長い場合に対応してビット幅を調整して作動させることも可能である。
【0079】
図11および
図12は感知光ファイバ上に3個の測定区間がある場合の相関関係ピーク発生区間の長さによるビット幅調節実施形態を示す図である。先ず、
図11では、感知光ファイバの上に測定区間#1、#2と#3がある場合を想定した。かかる場合、相関関係ピーク位置を20ビット(bit)の位置で生じるようにすると、測定区間#1位置での1個のビット幅に相当するブリルアンゲインスペクトルを得て、このスペクトルから最大値を与えるブリルアン周波数を決定すると、数学式1によって歪率や温度を求めることになる。測定区間#2の長さは、3個のビット幅だけ長く、ピーク位置を46、47、48ビット(bit)で作られるようにすると、該当位置で3個の歪率や温度を求めることができる。また、測定区間#3の長さは、2個ビット幅を有しているため、ピーク位置が62、63ビット位置で発生するようにして、2個の歪率や温度を測定することになる。一方、
図12を参照すると、疑似ランダムビットシーケンスのビット幅を感知光ファイバの各測定区間の長さとほぼ一致させ、該当位置で相関関係ピークが発生するように時間差を設定して作動させると、それぞれの測定位置で一回だけ測定しても良い。
【0080】
[6]本発明の光ファイバBOCDAセンサの詳細な原理:空間分解能の向上
一方、前記感知光ファイバ140の長さが長い場合、ブリルアンゲインを大きくするために相関関係ピーク位置のビット幅を増加させて測定するが、このようにビット幅を増加させる場合、空間分解能をそれだけ失うことになる。この際、相関位置のビット幅差がある二つのブリルアンゲインを取得し、その信号差を得ることで、空間分解能を向上させることができる。すなわち、相関関係ピーク位置のビット幅を若干大きいものと小さいものを用いてブリルアンスペクトルを求めた後、その差を求めると、相関関係ピーク位置のビットの間の差に相当する向上した空間分解能に相当する値を得ることができる。この方法は、前記ポンピング光電気-光学変調器132および前記ロックイン増幅器155を使用しなくても測定を行える可能性を有する。
【0081】
まとめると、前記光ファイバBOCDAセンサ100は、空間分解能を向上させるように、相関関係ピーク位置のビット幅が予め決定された第1大きさを有する位相コードパターンを使用して求められたブリルアンスペクトルで、相関関係ピーク位置のビット幅が前記第1大きさよりも小さい第2大きさを有する位相コードパターンを使用して求められたブリルアンスペクトルを差し引くように制御することができる。具体的な例示を挙げて説明すると、以下の通りである。
【0082】
図13は相関位置のビット幅差がある二つのブリルアンゲインを取得し、その信号差を得る実施形態を図示している。相関関係ピーク位置の開始位置が一致する大きいビット幅で作動して得られたブリルアンゲインスペクトルで、若干小さいビット幅で作動して得られたブリルアンゲインスペクトルを差引処理し、差に相当するビット幅の情報を得るようにするために、
図13のように相関関係ピーク位置を測定しようとする総ビット幅の半分だけ差があるようにし、大きいビット幅で差引処理して残った部分のビット幅だけ測定されるようにする。
図13の例示では、大きいビット幅で4個ビット部分のブリルアンゲインスペクトルを得て、相関関係ピーク位置を1/2ビットだけ差があるようにし、小さなビット幅で作動して得たブリルアンゲインスペクトルを得た後、差し引いた。
【0083】
位相コードパターンのビット幅を増加させると、ブリルアンゲインが増加する。しかし、無限に増加させることはできない。その理由は、相関関係ピーク位置以外の部分でも位相の同じ時間が音波フォノン寿命よりも長くなると、ブリルアンゲインが発生するためである。したがって、位相コードパターンのビット幅を最大に設定し得る値が存在する。この値は、つまり、相関関係ピーク位置で発生するブリルアンゲイン値とそれ以外の位置で発生するブリルアンゲイン値の差を区別できなくなる条件でのビット幅になる。ところが、相関関係ピーク位置以外のブリルアンゲインは、つまり、感知光ファイバの全長から相関関係ピーク位置を除いたすべての部分である。
【0084】
そうすると、感知光ファイバ長さLの時、位相コードのビット幅をlとすると、感知光ファイバ長さ全体にビット数N=L/lになる。この中で相関関係ピーク位置は1個であるため、非相関位置のビット数全体はN-1である。位相コードビット幅を増加させると、相関位置でのブリルアンゲインが増加するとともに、非相関位置N-1個ビットでもブリルアンゲインが増加する。このようにビット幅を増加させて行くときに、相関位置1個ビットでのブリルアンゲインがI0とすると、非相関位置N-1個ビットでのブリルアンゲイン全体の合計がI0と一致すると、相関位置のゲインを区別できなくなる。したがって、位相コードビット幅をそれ以上増加させることができなくなる。すなわち、この際のビット幅が使用する感知光ファイバの最大ビット幅になる。仮に、非相関位置の一つのビットでのブリルアンゲインをInとすると、In×(N-1)=I0であるため、この際のビット幅が最大値になる。
【0085】
一方、位相コードパターンのビット幅の最小値の決定は、以下の通り行われ得る。位相コードパターンを減少させる時に、位相コードパターンの位相角が180度まで完璧に制御されなければ、すべての位相コードパターンで若干のブリルアンゲインIc0が発生する。したがって、位相コードパターンの相関関係ピーク位置で発生するブリルアンゲインI0が感知光ファイバの全長で発生するIc0よりも大きくなければならない。すなわち、I0=Ic0の条件が形成される時が、位相コードパターンのビット幅を最小にすることができる場合である。しかし、位相変調がよく行われて非相関位置でのブリルアンゲインが基本的な信号雑音よりも小さいと、この際の最小ビット幅は、相関位置でのブリルアンゲインが信号雑音と一致する時のビット幅になる。
【0086】
本発明は、上記の実施形態に限定されず、適用範囲が様々であることは言うまでもなく、請求の範囲で請求する本発明の要旨を逸脱することなく当該本発明が属する分野において通常の知識を有する者であれば誰でも様々な変形実施が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明によると、従来の光周波数変調過程を排除し、時間差がある二つの位相コード制御を使用する過程を代わりに用いることで、従来に比べてはるかに単純化した制御設計および装置構成を実現することができる。これにより、上記で説明した従来の位相コード周波数変調方式の様々な問題を最初から除去することができる。また、これにより、制御設計がはるかに容易になり、装置構成がより簡素化し、空間分解能、感知性能、検出精度が向上する。
【符号の説明】
【0088】
100 光ファイバBOCDAセンサ
110 光源
115 光ファイバカプラ
120 プローブ光の光ファイバライン
121 プローブ光位相変調器
122 プローブ光電気-光学変調器
123 プローブ光の光ファイバ増幅器
124 偏光スクランブラ
125 光ファイバアイソレータ
130 ポンピング光の光ファイバライン
131 ポンピング光位相変調器
132 ポンピング光電気-光学変調器
133 ポンピング光の光ファイバ増幅器
135 光ファイバサーキュレータ
140 感知光ファイバ
150 光受信器
155 ロックイン増幅器
160 制御部
161 パルスパターン発生器
162 RF信号合成器
163 チョッピングモジュール