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特許7086239可変光学フィルターおよびそれに基づく波長選択型センサー
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】可変光学フィルターおよびそれに基づく波長選択型センサー
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/28 20060101AFI20220610BHJP
   G01J 3/26 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
G02B5/28
G01J3/26
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021009189
(22)【出願日】2021-01-22
(62)【分割の表示】P 2017255285の分割
【原出願日】2014-01-28
(65)【公開番号】P2021076857
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2021-01-22
(31)【優先権主張番号】61/757,846
(32)【優先日】2013-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502151820
【氏名又は名称】ヴァイアヴィ・ソリューションズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Viavi Solutions Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100090583
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 清
(74)【代理人】
【識別番号】100098110
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 みどり
(72)【発明者】
【氏名】カレン デニス ヘンドリックス
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ エイ. ハルス
(72)【発明者】
【氏名】リチャード エイ. ブラッドリー
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー ジェイムズ クーナ
【審査官】酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-114812(JP,A)
【文献】特開2010-186145(JP,A)
【文献】国際公開第2012/014655(WO,A1)
【文献】特開2009-132989(JP,A)
【文献】特開平04-107505(JP,A)
【文献】米国特許第05872655(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/28
G01J 3/26
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学フィルターであって、前記光学フィルターの使用可能な波長範囲の中で横方向に可変の透過波長を有し、前記光学フィルターの厚さ方向の断面を見たとき、
交互の第1の層および第2の層のスタックを含み、前記第1の層が第1の材料を含み、前記第2の層が第2の材料を含む、バンドパス領域を提供する第1のフィルターと、
交互の第3の層および第4の層のスタックを含み、前記第3の層が第3の材料を含み、前記第4の層が第4の材料を含む、ブロッキング領域を提供する第2のフィルターと、
を備え、
前記バンドパス領域は前記透過波長を通過させるものであり、前記ブロッキング領域は前記透過波長よりも短いか、または長い波長範囲内の波長をブロックするものであり、
前記第1の材料および前記第3の材料が、同じ材料を含み、前記第1の材料、前記第2の材料および前記第4の材料が、異なる材料をそれぞれ含み、
前記第1の材料の屈折率が、前記第2の材料の屈折率よりも小さく、前記第2の材料の屈折率が、前記第4の材料の屈折率よりも小さく、および
前記波長範囲において、前記第2の材料の吸収係数が、前記第4の材料の吸収係数よりも小さい、光学フィルター。
【請求項2】
前記第1の材料および前記第3の材料が二酸化ケイ素を含む、請求項1に記載の光学フィルター。
【請求項3】
前記第2の材料が五酸化タンタルを含み、前記第4の材料がシリコンを含む、請求項1に記載の光学フィルター。
【請求項4】
前記第1の層および前記第2の層が、横方向に変化する厚さを有する、請求項1に記載の光学フィルター。
【請求項5】
前記第3の層および前記第4の層が、横方向に変化する厚さを有する、請求項1に記載の光学フィルター。
【請求項6】
前記第1のフィルターが、追加的なシリコン層を含む、請求項1に記載の光学フィルター。
【請求項7】
前記第1の材料および前記第3の材料の屈折率が、1.35から1.6の間である、請求項1に記載の光学フィルター。
【請求項8】
前記第2の材料の屈折率が、1.8から2.5の間である、請求項1に記載の光学フィルター。
【請求項9】
前記第4の材料の屈折率が、2.6から4.5の間である、請求項1に記載の光学フィルター。
【請求項10】
前記第2のフィルターが、わずか60層しか含まない、請求項1に記載の光学フィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルターに関し、とりわけ、空間的に変化するスペクトル特性を有する光学フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
空間的に可変の光学フィルターは、フィルターを横切る横断方向に変化する透過波長を有する。コンパクトな光学分光計は、光検出器アレイを空間的に可変の光学フィルターに取り付けることによって構築することが可能である。フィルターを横切る横断方向の距離とともに線形に変化する透過波長を有するフィルターは、リニア・バリアブル・フィルター(LVF)と呼ばれる。透過波長の距離による線形の変化は、必要ではないが、都合がよい。LVFおよび一定ピッチの光検出器アレイを使用して得られる光学的なスペクトルは、一定の波長ステップを有している。
【0003】
特許文献1のPellicoriらは、LVFを含むウェッジ・フィルター分光計を開示しており、LVFは、高屈折率の屈折材料の第1の複数の層と低屈折率の屈折材料の第2の複数の層とを有し、個別の高屈折率層および低屈折率層は、互いに重ね合わせられており、実質的に線形にテーパーが付けられた厚さを有しており、線形に可変の光学的な薄膜干渉フィルターを形成している。光検出器アレイは、LVFに取り付けられており、非常にコンパクトな全体構造を結果として生じさせている。
【0004】
特許文献2のAnthonは、携帯式の色彩計などのようなカラー・センシング・デバイスの中で使用するために、薄膜干渉LVFと、屈折率分布型レンズのアレイまたはマイクロレンズのアレイを介してLVFに連結されている光検出器アレイとを含む、コンパクトな分光計デバイスを開示している。薄膜干渉LVFベースの分光計の軽量で頑丈な構造は、携帯式の色彩計が、現場条件で物品の色を特徴付けることを可能にする。
【0005】
特許文献3のWeiglらは、空間的な分解能を備えるフロー・セルの中で、蛍光スペクトルおよび吸収スペクトルの測定を行うためのコンパクトなLVFベースの分光計を開示している。フィルターの透過変化がフロー方向に起こるように、光路にLVFを設置することによって、生体細胞のフローの中のタンパク質の染色マーカーの濃度を分光的に決定することが可能である。
【0006】
図1Aを参照すると、Pellicori、Anthon、およびWeiglのデバイスで使用されているものと同様の典型的な先行技術のコンパクトな光学分光計100は、光検出器アレイ104に光学的に連結されているLVF102を含む。透過波長λは、LVF102を横切って、方向106に変化する。動作時に、光108は、LVF102に衝突する。LVF102は、透過波長λの周りの幅の狭い波長バンドだけを通過させ、透過波長λは、光検出器アレイ104に平行な方向106に変化する。結果として、光検出器アレイ104のそれぞれの光検出器105は、光108の異なる波長バンドに応答する。光検出器アレイ104のそれぞれの光検出器105の光電流を測定することによって、光108の光学的なスペクトルを得ることが可能である。
【0007】
LVF102は、基板110によって支持されている薄膜スタック112を含む。図1Bを参照すると、薄膜スタック112は、2つの領域、すなわち、λよりも短い波長およびλよりも長い波長をブロックするためのブロック領域121、ならびに、λの周りに中心を置いた幅の狭い通過帯域だけを透過させるためのバンドパス領域122を含む。2つの領域121および122のそれぞれは、高い屈折率および低い屈折率をそれぞれ有する交互の高屈折率層131および低屈折率層132を含む。高屈折率層131/低屈折率層132の材料は、領域121および122にわたって同じであり、厚さだけが、必要とされる光学的な性能を実現するために変化している。ブロッキング領域121は、λ以外の波長をブロックするための1/4波長スタックを含み、バンドパス領域122は、λの周りに中心を置いた幅の狭い通過帯域を透過させるための1/2波長スタックを含む。材料ペアの中の材料の組合せは、金属酸化物または金属フッ化物を含むことが可能である。
【0008】
LVF102の1つの欠点は、LVF102の光学的な性能と薄膜スタック112の全体厚さとの間の固有のトレードオフである。λ以外の波長の良好なブロッキングを確実にするために、ブロッキング領域121は、多くの層を含まなければならない。低損失酸化物に関して、層の数は、最大100個の層とすることが可能である。λの周りの幅の狭い通過帯域を確実にするために、バンドパス領域122も、多くの層を含み、および/または、厚い中央層を含む必要がある。薄膜スタック112の大きい厚さは、薄膜スタック112の中の内部応力の増加を結果として生じさせ、それが破壊され、および/または、基板110から剥離することを引き起こす。シリコンなどのような高屈折率の材料は、層の総数を低減させるために使用することが可能である。しかし、高屈折率の材料は、典型的に、LVF102の光学的損失を増加させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許第4,957,371号
【文献】米国特許第6,057,925号
【文献】米国特許第6,091,502号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、可変光学フィルターの厚さと光学的な性能との間のトレードオフを緩和することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、可変光学フィルターのブロッキング領域およびバンドパス領域の中の材料に対する重要な光学的要件が、以下の様式で互いに異なるということを認識した。ブロッキング領域では、高屈折率のコントラストが、重要な要件である。高屈折率のコントラストは、層の数を低減させ、ブロッキング効率を増加させることを可能にする。バンドパス領域では、光が、その領域の中で複数の反射を受け、ブロッキング層の中よりも何度もバンドパス領域の層を横断するので、低損失が、高屈折率のコントラストよりも重要である。したがって、高屈折率のコントラストであるが比較的に損失の多い材料の組合せをブロッキング領域の中に提供することとともに、低損失であるが比較的に低屈折率の材料の組合せをバンドパス領域の中に提供することは、低い光学的損失、狭帯域透過ピーク、および、強力なアウト・オブ・バンド拒絶(rejection)を同時に有する、薄くて低応力の可変光学フィルターを結果として生じさせることが可能である。
【0012】
本発明によれば、ある波長範囲の中で横方向に可変の透過波長を有する光学フィルターが適用され、光学フィルターは、
第1および第2の材料をそれぞれ含む交互の第1および第2の層のスタックを含むバンドパス・フィルターであって、バンドパス・フィルターは、横方向に可変の透過波長を提供するために、横方向に変化する厚さを有している、バンドパス・フィルターと、
第3および第4の材料をそれぞれ含む交互の第3および第4の層のスタックを含むブロッキング・フィルターであって、ブロッキング・フィルターは、横方向に可変の透過波長よりも大きいかまたは小さい波長範囲の中の波長をブロックするために、第1および第2の誘電体層の横方向に変化する厚さと調和した横方向に変化する厚さを有している、ブロッキング・フィルターとを含み、
第1、第2、および第4の材料は、異なる材料をそれぞれ含み、第1の材料の屈折率が、第2の材料の屈折率よりも小さく、第2の材料の屈折率が、第4の材料の屈折率よりも小さく、第2の材料の吸収係数が、第4の材料の吸収係数よりも小さくなっている。
【0013】
有利には、バンドパス・フィルターは、少なくとも1つの第5の層をさらに含み、少なくとも1つの第5の層は、第4の材料を含み、バンドパス・フィルターの内側の定在光波の局所的な最小値の領域に配設されており、それによって、バンドパス・フィルターのブロッキング波長領域が広げられ、バンドパス・フィルターの厚さが低減されている。
一実施形態では、透過波長が、光学フィルターの長さ寸法に沿って単調に可変である。好適な実施形態では、透過波長が、長さ寸法に沿って対数的に可変である。第1および第3の材料が、同じ材料を含むことが可能である。光学フィルターが、3つまたは4つ以上の異なる材料を含むことが可能である。
【0014】
本発明によれば、上記に説明されているような光学フィルターと、光学フィルターに連結されている光検出器のアレイとを含む波長選択型センサーがさらに提供される。光検出器は、長さ寸法に沿って間隔を離して配置されている。結果として、アレイの異なる光検出器が、アレイの反対側から光学フィルターに衝突する光の異なる波長に応答する。
【0015】
好ましくは、光検出器のアレイは、光学フィルターのための基板を含む。光検出器のアレイが、提供されており、アレイによって支持されるバンドパス・フィルターおよびブロッキング・フィルターをそれぞれ形成するように、第1から第5の層が、アレイの直ぐ上に蒸着される。光検出器アレイの直ぐ上に光学フィルターを蒸着させる利点の中には、別々のバルク基板を通って伝搬する必要がない光に起因するスペクトル分解能の向上、近隣の光検出器同士の間の光漏洩の低減、および、信頼性の改善がある。また、光学フィルターは、別々に製造され、アレイに直接的に固定され、たとえば、光学的なエポキシで結合され得る。
【0016】
本発明の別の実施形態によれば、波長選択型センサーがさらに提供され、光検出器アレイは、反対向きの第1および第2の表面を有するデバイス・チップを含む。アレイの光検出器が、デバイス・チップの第1の表面内に配設されており、光学フィルターが、光検出器を覆って第1の表面の上に配設されている。そのような波長選択型センサーは、
(A)デバイス・チップを、
(i)第1および第2の反対向きの表面を有するデバイス・ウエハーを提供し、
(ii)第1の表面の方を向くアレイの光検出器を、デバイス・ウエハーの第2の表面内に形成させ、
(iii)アレイの光検出器を露出させるように、デバイス・ウエハーの第1の表面をポリッシングすることによって、製造するステップと、
(B)光学フィルターのバンドパス・フィルターおよびブロッキング・フィルターを形成するように、ステップ(iii)においてポリッシングされたデバイス・ウエハーの第1の表面の上に、第1から第5の層を蒸着させるステップと
によって製作可能である。
【0017】
本発明の別の実施形態によれば、波長選択型センサーを製造する方法がさらに提供され、方法は、
(a)光検出器のアレイを提供するステップと、
(b)光検出器のアレイの上に、
第1および第2の材料をそれぞれ含む交互の第1および第2の層のスタックを含むバンドパス・フィルターであって、バンドパス・フィルターは、横方向に可変の透過波長を提供するために、横方向に変化する厚さを有している、バンドパス・フィルターと、
第3および第4の材料をそれぞれ含む交互の第3および第4の層のスタックを含むブロッキング・フィルターであって、ブロッキング・フィルターは、横方向に可変の透過波長よりも大きいかまたは小さい波長範囲の中の波長をブロックするために、第1および第2の誘電体層の横方向に変化する厚さと調和した横方向に変化する厚さを有している、ブロッキング・フィルターと
を蒸着させるステップと
を含み、
第1、第2、および第4の材料は、異なる材料をそれぞれ含み、第1の材料の屈折率が、第2の材料の屈折率よりも小さく、第2の材料の屈折率が、第4の材料の屈折率よりも小さく、第2の材料の吸収係数が、第4の材料の吸収係数よりも小さくなっている。
【0018】
一実施形態では、ステップ(a)は、
(i)第1および第2の反対向きの表面を有するデバイス・ウエハーを提供するステップと、
(ii)第1の表面を向く光検出器のアレイを、デバイス・ウエハーの第2の表面内に形成するステップと、
(iii)アレイの光検出器を露出させるように、デバイス・ウエハーの第1の表面をポリッシングするステップと
を含み、
ステップ(b)において、バンドパス・フィルターおよびブロッキング・フィルターが、ステップ(iii)においてポリッシングされたデバイス・ウエハーの第1の表面内に蒸着される。
【0019】
ここで、例示的な実施形態が、図面と併せて説明されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1Aは、薄膜LVFに基づく先行技術の光学分光計の3次元図である。図1Bは、図1AのLVFの薄膜構造体の拡大断面図である。
図2】基板の上の本発明の可変光学フィルターの断面図である。
図3図3Aないし3Cは、透過波長変化の方向に沿って異なる場所における、図2の可変光学フィルターのブロッキング・フィルター・セクションおよびバンドパス・フィルター・セクションの透過スペクトルを示す図である。
図4図4Aは、バンドパス・フィルターおよびブロッキング・フィルター・セクションを示す、図2のラインA-Aに沿って見た、図2のフィルターの概略断面図である。図4Bは、図4Aのフィルターのバンドパス・セクションの拡大断面図である。
図5図5Aおよび5Bは、コリメートされた光によって照射された(図5A)、および発散または収束する光で照射された(図5B)、異なる材料から作製されたバンドパス・フィルター・セクションの透過スペクトルの図である。
図6】異なる材料から作製されたブロッキング・フィルターの透過スペクトルの図である。
図7A】同じ縮尺で描かれた、低損失酸化物だけを含む可変光学フィルターの空間的な屈折率プロットの図である。
図7B-7C】同じ縮尺で描かれた、本発明による材料の組合せを含む可変光学フィルターの空間的な屈折率プロットの図である。 (図7C図7Bの空間的な屈折率プロットの拡大図である。
図7D図7Aおよび図7Bの可変光学フィルターのバンドパス・セクションの透過スペクトルの図である。
図8A図2または図7Bの可変光学フィルターを含む本発明の波長選択型センサーの様々な実施形態の側断面図である。
図8B図2または図7Bの可変光学フィルターを含む本発明の波長選択型センサーの様々な実施形態の側断面図である。
図8C図2または図7Bの可変光学フィルターを含む本発明の波長選択型センサーの様々な実施形態の側断面図である。
図8D図2または図7Bの可変光学フィルターを含む本発明の波長選択型センサーの様々な実施形態の側断面図である。
図9図9Aおよび9Bは、背面をポリッシングされた光検出器アレイ(図9A)およびフリップ・チップ装着されたマルチプレクサー回路(図9B)を有する波長選択型センサーの実施形態の側断面図である。
図10図10Aないし10Cは、製造の異なる段階における図9Aの波長選択型センサーを含むウエハーの側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本教示は、様々な実施形態および例とともに説明されているが、本教示がそのような実施形態に限定されるべきであるということは意図していない。それとは対照的に、本教示は、当業者によって認識されることとなるように、様々な代替例、修正例、および均等物を包含する。
【0022】
図2、ならびに、図3A図3B、および図3Cを参照すると、光学フィルター200(図2)は、λとλとの間の波長範囲の中の横方向に可変の透過波長λにおいて、幅の狭い通過帯域310(図3Aから図3C)を有している。透過波長λは、図2に示されている方向xに可変である。光学フィルター200は、透明な基板202の上に配設させることが可能である。可変光学フィルター200は、基板202の上に配設されているバンドパス・フィルター204およびブロッキング・フィルター206A、206Bを含む。バンドパス・フィルター204は、第1および第2の材料をそれぞれ含む、交互の第1の層211および第2の層212のスタックを含む。第1の層211および第2の層212は、通過帯域310の横方向に可変の透過波長λを提供するために、方向xに横方向に変化する厚さを有している(図2)。透過波長λは、第1の層211および第2の層212の局所的な厚さにおおよそ比例して変化する。たとえば、透過波長λは、座標xにおいて、波長範囲(λ、λ)の最短波長λに近く(図2および図3A)、座標xにおいて、波長範囲(λ、λ)の中間にあり(図2および図3B)、座標xにおいて、波長範囲(λ、λ)の最長波長λに近い(図2および図3C)。
【0023】
ブロッキング・フィルター206A、206Bは、第3および第4の材料をそれぞれ含む交互の第3の層213および第4の層214のスタックをそれぞれ含む。横方向に可変の透過波長λよりも短いか、または長い波長範囲(λ、λ)内の波長をブロックするために、第3の層213および第4の層214は、第1の層211および第2の層212の横方向に変化する厚さと調和して横方向に変化する厚さを有している。具体的には、上部ブロッキング・フィルター206Aは、λよりも短い波長をブロックするためのものであり(図3A図3B、および図3Cそれぞれにおいて、左側バンド301A、302A、および303A)、下部ブロッキング・フィルター206Bは、λよりも長い波長をブロックするためのものである(図3A図3B、および図3Cそれぞれにおいて、右側バンド301B、302B、および303B)。
【0024】
本発明によれば、第1の層211、第2の層212および第4の層214それぞれの第1、第2、および第3の材料は、すべて、異なる材料を含む。典型的に、第1および第2の材料は、誘電体材料を含み、第3および第4の材料は、誘電体材料または半導体材料を含む。第1の材料の屈折率は、第2の材料の屈折率よりも小さい。第2の材料の屈折率は、第4の材料の屈折率よりも小さい。第2の材料の吸収係数は、第4の材料の吸収係数よりも小さい。換言すれば、第4の材料は、4つすべての中で最も高い屈折率を有するが、また、いくらか吸収性のものとすることが可能である。たとえば、シリコンなどのような半導体材料を、第4の材料のために使用することが可能である。第1および第3の材料は、同じ低屈折率の材料、たとえば、二酸化ケイ素を含まなければならないわけではないが、含むことが可能である。第2の材料は、たとえば、五酸化タンタルなどのような高屈折率の酸化物を含むことが可能である。指針として、第1および第3の材料の屈折率は、1.35から1.6の間とすることが可能であり、第2の材料の屈折率は、1.8から2.5の間とすることが可能であり、第4の材料の屈折率は、2.6から4.5の間とすることが可能である。
【0025】
バンドパス・フィルター204の第1の層211および第2の層212に関して、ならびに、ブロッキング・フィルター206A、206Bの第4の層214に関して、異なる材料を使用することは、以下に詳細に説明されることとなるように、バンドパス・フィルター204およびブロッキング・フィルター206A、206Bの光学的なパラメーターの独立した最適化を可能にする。また、当然のことながら、ブロッキング・フィルター206A、206Bは、互いに隣に配設させられ、単一のブロッキング・フィルターを形成することも可能であり、バンドパス・フィルター204は、単一のブロッキング・フィルターによって支持され、単一のブロッキング・フィルターは、基板202によって支持される。そのうえ、図2に示されている層211から214の厚さは、方向xに左から右へ行くにしたがって、非線形的に増加し、光学フィルター200の非線形的に横方向に可変の透過波長λを提供することが可能である。一実施形態では、透過波長λは、長さ方向xに沿って、対数的に可変である。一定ピッチの光検出器アレイがx方向に沿って配設されているときに、透過波長λの対数的な変化は、方向xに沿って一定の分解能を結果として生じさせる。分解能は、R=λ/Δλとして定義され、ここで、Δλは、透過バンド幅である。
【0026】
図4Aを参照すると、図2の可変光学フィルター200の断面図A-Aは、バンドパス・フィルター204を示しており、バンドパス・フィルター204は、第1のブロッキング・フィルター206Aと第2のブロッキング・フィルター206Bとの間で、光路420の中に配設されており、第1のブロッキング・フィルター206Aおよび第2のブロッキング・フィルター206Bは、バンドパス・フィルター204の透過波長λよりも短い波長および長い波長をそれぞれブロックするためのものである。それぞれのブロッキング・フィルター206Aおよび206Bは、3つの部分431A、432A、および433A、ならびに、431B、432B、および433Bをそれぞれ含む。バンドパス・フィルター204ならびにブロッキング・フィルター部分431A~433Aおよび431B~433Bの厚さは、図2に最良に見られるように、図4Aの平面に対して垂直な方向xに、調和した方式で変化している。
【0027】
ブロッキング・フィルター部分431A~433Aおよび431B~433Bのブロッキング・バンド(図示せず)は、より広い波長範囲をカバーするためにカスケード接続されている。典型的に、可変光学フィルター200の使用可能な波長範囲(λ、λ)を決定付けるのは、ブロッキング波長範囲である。長波長縁部λにおいて、第2のブロッキング・フィルター206Bの部分431B~433Bのブロッキングは、λからλの間に延在しなければならず、また、短波長縁部λにおいて、第1のブロッキング・フィルター206Aの部分431A~433Aのブロッキングは、λからλの間に延在しなければならない。エタロン・タイプの光学フィルターは、光周波数の数オクターブだけ分離された複数の透過ピークを有するので、光学フィルター200の光周波数範囲が1オクターブにわたって広がるときに、ブロッキング・フィルター206Aおよび206Bによって与えられるアウト・オブ・バンド波長ブロッキングは、とりわけ重要である。
【0028】
図4Bを参照すると、バンドパス・フィルター204は、誘電体スペーサー層450を含み、誘電体スペーサー層450は、所望の中心波長λにおいて、複数の1/2波長であり、波長λにおいて1/4波長反射体スタック432の間に挟まれている。1/4波長スタック432の反射性を増加させることによって、および/または、スペーサー層450の厚さもしくは1/2波長の数を増加させることによって、バンドパス・フィルター204のバンド幅は、幅を狭くさせられている。いずれのケースでも、透過バンド幅は、スペーサー層450を横切る光440のトラベルの数を増加させることによって低減される。したがって、スペーサー層450材料、および、1/4波長反射体スタック432の隣接する層が、低い光学的損失を有することが重要である。
【0029】
図4Bをさらに参照し、図4Aに戻って参照すると、可変光学フィルター200(図4A)は、典型的に、さまざまな入射角または光円錐を含む光とともに使用される。入射角を備える透過波長のシフトの影響を低減させるために、スペーサー層450材料(図4B)の屈折率が可能な限り高いことが好適である。その目的のために、五酸化タンタル(Ta)、五酸化ニオブ(Nb)、五酸化タンタルおよび五酸化ニオブの合金、または二酸化チタン(TiO)などのような、高屈折率の不応性(refractory)酸化物を使用することが可能である。金属酸化物は、一般的に、非常に低い光学的損失を有しており、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、および二酸化チタンは、900nmから1700nmの間で、関心の波長範囲において、2.0を超える屈折率を有している。反射体スタック432のために使用される適切な低屈折率の材料は、二酸化ケイ素(SiO)であり、それは、上記波長範囲において、約1.5の屈折率を有している。バンドパス・フィルター204、ならびに/または、ブロッキング・フィルター431A、431B、432A、432B、および433A、433Bは、異なる高屈折率の材料、および、異なる低屈折率の材料を含むことが可能であるということが留意される。たとえば、バンドパス・フィルター204は、二酸化ケイ素(SiO)および五酸化タンタル(Ta)の組合せを含むことが可能であり、ブロッキング・フィルター431A、431B、432A、432B、および433A、433Bは、フッ化マグネシウム(MgF)およびシリコン(Si)の組合せを含むことが可能である。目標とされる光学フィルター200のスペクトルの性能に応じて、4つ以上の材料タイプを使用することが可能である。
【0030】
ブロッキング・フィルター部分431A~433Aおよび431B~433Bの光ブロッキングおよびバンド幅の程度は、いわゆる屈折コントラスト、または、ブロッキング・フィルター部分431A~433Aおよび431B~433Bの高屈折率層および低屈折率層の屈折率の比率によって設定される。屈折コントラストを増加させることによって、ブロッキング・フィルター部分431A~433Aおよび431B~433Bの全体厚さを劇的に低減させることが可能である。その理由は、所望のブロッキング・レベルを実現するためにより少ない層しか必要とされないということ、ならびに、ブロッキング・フィルター部分431A~433Aおよび431B~433Bがより幅の広いバンド幅を有することとなり、所望のバンド幅をカバーするためにより少ないスタックしか必要とされないということの両方である。光路420(図4A)に沿って伝搬する光440(図4B)は、バンドパス・フィルター204の中と同じ数ほどには、ブロッキング・フィルター部分431A~433Aおよび431B~433Bを横切って進行せず、したがって、より幅の広い範囲の材料を使用することが可能であり、具体的には、シリコン(Si)を使用することが好ましい。シリコンは、3.0を超える屈折率を有しており、それは、900nmから1700nmの間の波長範囲においていくらかの光学的な吸収を有するとしても、高屈折率の材料として使用することが可能である。また、それは、当然ながら、二酸化ケイ素と互換性があり、二酸化ケイ素は、低い屈折率を有しており、したがって、ブロッキング・フィルター部分431A~433Aおよび/または431B~433Bの中に、求められる高屈折率のコントラストを提供する。
【0031】
異なる材料系の波長選択性および光学的損失についての上記結論は、多層スタックを成長させることによって、および、それらの透過特性を測定することによって、実験的に確認された。図5Aおよび図5Bを参照すると、異なる材料組合せを使用して製造されたバンドパス・フィルター204のコリメートされた光(図5A)、および、コリメートされていない光または「円錐」光(図5B)の中の光学的な透過スペクトルが提示されている。図5Aおよび図5Bでは、「H/L」は、五酸化タンタルおよび二酸化ケイ素の高屈折率/低屈折率の材料の組合せを示しており、「S/L」は、シリコンおよび二酸化ケイ素の材料の組合せを示している。したがって、「Lcav」は、「キャビティー」、または、低屈折率の材料、すなわち、二酸化ケイ素から作製されたスペーサー層450を示している。「Hcav」は、五酸化タンタルから作製されたスペーサー層450を示している。「Scav」は、シリコンから作製されたスペーサー層450を示している。
【0032】
具体的には図5Aを参照すると、スペクトル501および502は、二酸化ケイ素および五酸化タンタルのスペーサー層450をそれぞれ備える、五酸化タンタルおよび二酸化ケイ素の材料の組合せに対応している。コリメートされた光の中で、スペクトル501および502は、実際的には互いに区別ができず、非常に高い(100%に接近する)最大透過を示すということを理解することが可能である。スペクトル503および504は、二酸化ケイ素およびシリコンのスペーサー層をそれぞれ備える、シリコンおよび二酸化ケイ素の材料の組合せに対応している。二酸化ケイ素スペーサー層450に対応するスペクトル503は、シリコン・スペーサー層450に対応するスペクトル504(約38%)よりも高い最大透過(約67%)を示している。これは、上述のように、シリコンは、二酸化ケイ素または五酸化タンタルのいずれかよりもかなり高い光学的な吸収を有しているからであり、また、光440(図4B)はスペーサー層450を何度も横断するので、光学的な透過の相違が非常に顕著になるからである(この例では、38%または67%対100%)。
【0033】
ここで図5Bを見てみると、すべてのスペクトル501~504は、円錐光の照射に起因する光学的損失の増加を示している。第1の2つのスペクトル501および502のうち、五酸化タンタル・スペーサー層450に対応する第2のスペクトル502は、41%の透過降下(100%最大透過から約59%最大透過へ)を示す、二酸化ケイ素スペーサー層450に対応する第1のスペクトル501よりも低い約32%(100%最大透過から約68%最大透過へ)の透過降下を示している。上記に説明されているように、スペーサー層450材料の屈折率が高ければ高いほど、バンドパス光学フィルター204の角度的な感度が小さくなる。同様の傾向が、シリコン/二酸化ケイ素の材料の組合せに対応する他の2つの光学的なスペクトル503および504において観察される。シリコン・スペーサー層450に対応するスペクトル504に関して、光学的な透過は、単に約3%(38%から35%へ)だけ降下しており、一方、二酸化ケイ素スペーサー層450に対応するスペクトル503に関して、光学的な透過は、約17%(67%透過から50%透過へ)だけ降下している。したがって、低損失であるが高い屈折率の材料が、バンドパス光学フィルター204のスペーサー層450として選択されるべきである。
【0034】
ここで、図4Aをさらに参照して、図6を参照すると、五酸化タンタル/二酸化ケイ素およびシリコン/二酸化ケイ素の材料の組合せからそれぞれ作製された、下側ブロッキング・フィルター206Bの透過スペクトル601および602が提示されている。第1のスペクトル601のバンド幅611は、単に275nmだけであり、それは、第2のスペクトル602のバンド幅612よりもかなり幅が狭く、第2のスペクトル602のバンド幅612は、664nmである。したがって、高屈折率のコントラスト材料の組合せが、ブロッキング・フィルター206Aおよび206Bに関して選択されるべきである。第2のスペクトル602のより幅の広いバンド幅は、かなり薄いフィルターで実現され、それは、五酸化タンタル/二酸化ケイ素スタックの4.9マイクロメートルの厚さと比較して、シリコン/二酸化ケイ素スタックに対しては単に1.7マイクロメートルであるということが留意される。
【0035】
3つの材料系によって与えられる様々なフィルター厚さの低減(最低の屈折率から最高の屈折率へ行くにしたがって、二酸化ケイ素、五酸化タンタル、およびシリコン)が、ここで図示されることとなる。図7Aおよび図7Bを見てみると、空間的な屈折率プロット700Aおよび700Bは、スタック深さ座標dの関数とした屈折率nの依存関係である。図7Aおよび図7Bでは、空間的な屈折率プロット700Aおよび700Bは、同じ縮尺で描かれており、本発明によって実現可能な合計の厚さ低減を図示している。図7Aの屈折率プロット700Aは、二酸化ケイ素/五酸化タンタルの2つの材料系を使用して実装される可変光学フィルターに対応している。二酸化ケイ素層は、より背の低い黒いバー701によって表されており、五酸化タンタル層は、より背の高い灰色のバー702によって表されている。屈折率プロット700Aは、第1のブロッキング・セクション726A、バンドパス・セクション724、および第2のブロッキング・セクション726Bを含む。バンドパス・セクション724は、バンドパス・フィルター・キャビティー(スペーサー)層702Aとして機能する、2つのより厚い五酸化タンタル層702を含む。したがって、バンドパス・セクション724は、2キャビティー式のバンドパス・フィルターである。それぞれのスペーサー層702Aは、それぞれの側部に反射体スタックを有しており、反射体スタックは、スペーサーに対していくらか対称的である。2つのスペーサー702Aの間にある反射体スタックは、1つの反射体スタック724Cに組み合わせられる。2つの材料の可変光学フィルターの厚さに対応する図7Aの屈折率プロット700Aの合計の長さは、40マイクロメートル程度である。
【0036】
図7Bの屈折率プロット700Bは、二酸化ケイ素/五酸化タンタル/シリコンの3つの材料系を使用して実装される可変光学フィルターに対応している。図7Bの拡大図である図7Cを参照すると、二酸化ケイ素層は、最も背の低い黒いバー701によって表されており、五酸化タンタル層は、より背の高い灰色のバー702によって表されており、シリコン層は、最も背の高い黒いバー703によって表されている。
【0037】
屈折率プロット700Bは、第1のブロッキング・セクション746A、バンドパス・セクション744、および第2のブロッキング・セクション746Bを含む。一時的に図2に戻って参照すると、第1のブロッキング・セクション746Aは、図2の光学可変フィルター200の第1のブロッキング・フィルター206Aに対応しており、バンドパス・セクション744は、バンドパス・フィルター204に対応しており、第2のブロッキング・セクション746Bは、第2のブロッキング・フィルター206Bに対応している。第1のブロッキング・セクション746Aおよび第2のブロッキング・セクション746Bは、交互の二酸化ケイ素層701およびシリコン層703を含む。バンドパス・セクション744は、二酸化ケイ素層701、五酸化タンタル層702、およびシリコン層703を含む。図7Bおよび図7Cの光学フィルター700Bのバンドパス・セクション744と、図2の光学フィルター200のバンドパス・フィルター204との間の1つの相違は、光学フィルター700Bのバンドパス・セクション744が、2キャビティー式のバンドパス・フィルターであるということであり、それは、図7Aの光学フィルター700Aの2キャビティー式のバンドパス・セクション724と同様であるが、しかし、以下に説明されているように、2つではなく、3つの異なる材料を使用している。
【0038】
バンドパス・セクション744は、第1のキャビティー744Aおよび第2のキャビティー744Bを含み、それらは、2つの1/4波長反射体セクションの間に五酸化タンタル・スペーサー702Aをそれぞれ含む。シリコン層751は、それぞれの反射体セクションの中へ導入されている。反射体セクションがスペーサー層702Aに対していくらか対称的であるとき、これは、示されているように、4つのシリコン層751をバンドパス・セクション744に加える。バンドパス・セクション744の1/4波長反射体セクションの中へ、H層702の代わりに、少なくとも1つの、および、好ましくはいくつかの随意的な高屈折率のシリコン層を導入することは、二酸化ケイ素(H/L)に対する五酸化タンタルの屈折率の比率と比較して、より高い二酸化ケイ素(S/L)に対するシリコンの屈折率の比率に起因して、同じ反射率がより少ない層を用いて実現されることを可能にする。4つの追加的なシリコン層751を含むことに起因する光学的な透過損失は、光場の局所的な最小値に対応する領域に、すなわち、バンドパス・セクション744内側の透過波長λにおける定在光波の谷の中に、追加的なシリコン層751を設置することによって、低減させることが可能である。図2の3つの材料の様々な可変光学フィルター200の厚さに対応する、図7Bの屈折率プロット700Bの合計長さは、単に10マイクロメートルだけであり、それは、図7Aのものよりも4倍薄い。
【0039】
追加的なシリコン層751の1つのさらなる利点は、シリコン/二酸化ケイ素の組合せのより高い屈折率の比率が、バンドパス・フィルター・セクション744のブロッキング領域を広げ、下側ブロッカー・セクション746Aおよび上側ブロッカー・セクション746Bの必要とされるブロッキング波長バンドを低減させるということである。図7Dを参照すると、透過スケールは、0%~1%透過であり、ストップバンド性能をより良好に示している。点線781は、2つの材料(五酸化タンタルおよび二酸化ケイ素)を用いて実装された図7Aの可変光学フィルター700Aのバンドパス・フィルター・セクション724の透過プロットである。実線782は、図7Cに示されているように実装されたバンドパス・フィルター・セクション744の透過プロットである。随意的なシリコン層751を使用することが、バンドパス・スペクトル782のウィング(wing)782A、782Bのブロッキング・バンド幅およびブロッキング強度を相当に拡大させることを可能にするということを理解することが可能である。すべてが、図7Bおよび図7Cの可変光学フィルター700Bのバンドパス・フィルター・セクション744のより小さい全体厚さにおいて実現される。
【0040】
図2に戻って参照すると、フィルター200の結果として生じる厚さは、使用される材料に依存し、また、目標の光学的な仕様に依存する。たとえば、バンドパス光学フィルター204の第1の層211は、二酸化ケイ素を含むことが可能であり、第2の層212は、五酸化タンタルまたは五酸化ニオブを含むことが可能であり、ブロッキング光学フィルター206の第3の層も、二酸化ケイ素を含むことが可能であり(第1の層211と同じ)、ブロッキング光学フィルター206の第4の層214は、シリコンを含むことが可能である。結果として生じる3つの材料系は、可変光学フィルター200の厚さを低減させることを可能にする。900nm~1700nmの近赤外線の波長範囲に関して、バンドパス・フィルター204は、わずか20層しか含まないことが可能であり、ブロッキング・フィルター206A、206Bは、合計でわずか60層しか含まないことが可能である。フィルター200の合計の厚さは、好ましくは、1300nmの透過波長に対応する場所において、20マイクロメートル以下であり、より好ましくは、10マイクロメートル以下である。層の数および厚さは、バンドパス幅、必要とされるブロッキング・レベル、および、可変光学フィルター700Bの波長カバー範囲などのような、多くの要因によって決定されることとなる。
【0041】
ここで、図2をさらに参照して図8Aを見てみると、本発明の波長選択型センサー800Aは、図2の可変光学フィルター200、または、図7B図7Cの可変光学フィルター700B、および、可変光学フィルター200に連結されている光検出器アレイ802Aを含み、光検出器アレイ802Aは、x方向に沿って間隔を離して配置された光検出器812を備えており、波長選択型センサー800Aにおいて、層厚さは単調に増加している。透過波長λは、方向xに沿って変化するので、光検出器アレイ802Aの異なる光検出器812は、光検出器アレイ802Aの反対側の側部820から光学フィルター200に衝突する光840の異なる波長に応答する。光検出器812の数は、いくつかの隔離された波長バンドを検出するための2つまたは3つだけの光検出器から、詳細な光学的なスペクトルの測定を行うための数百以上の光検出器まで、変化することが可能である。後者のケースでは、波長選択型センサー800Aは、本質的に、発光分光計として機能する。
【0042】
分光計の実施形態では、光検出器812の数が、数十または数百以上の光検出器の数であるときに、透過波長λは、可変光学フィルター200の長さ寸法に沿って対数的に可変にさせることが可能である。透過波長λの対数的な変化が、光検出器アレイ802Aの光検出器812のさらなるスペーシングと組み合わせられるとき、光学分光計800によって収集されるスペクトル・ポイントの分解能R=λ/Δλは、一定の値であり、それは、たとえば、スペースの用途に関して、好ましい可能性がある。
【0043】
光検出器アレイ802は、光学フィルター200のための基板を含むことが可能である。換言すれば、光検出器アレイ802は、光学フィルター200を支持する基板として機能することが可能である。光学フィルター200と光検出器アレイ802との間のギャップ814は、随意的な接着剤層で充填させることが可能である。代替的に、光検出器アレイ802の上方に光学フィルター200を支持するために、機械的なエンケーシング(図示せず)を使用することが可能である。後者の実施形態では、ギャップ814は、真空、空気、ガスなどを含むことが可能である。そのうえ、光検出器アレイ802は、光学フィルター200の第1の層211から第4の層214の蒸着の間に、基板として使用することが可能である。この実施形態では、ギャップ814は、第1の層211から第4の層214層の蒸着のより良好な均一性のために、平坦化層を含むことが可能であるが、含まなければならないわけではない。平坦化層がギャップ814を充填するとき、アレイ802の異なる光検出器812は、異なる高さを有する可能性がある。たとえば、図8Bを参照すると、波長選択型センサー800Bのアレイ802Bの光検出器812A、812B、および812Cは、異なる高さを有しており、ギャップ814を充填する平坦化層は、光学フィルター200が平らな表面815の上に蒸着されることを確実にする。
【0044】
図8Cを参照すると、本発明の波長選択型センサー800Cは、図8Aおよび図8Bの波長選択型センサー800Aおよび800Bとそれぞれ同様である。図8Cの波長選択型センサー800Cでは、光検出器アレイ802Cの光検出器812は、横方向に間隔を置いて配置されたギャップ813によって分離されており、また、不透明な隔離材料817が、アレイ802Cの個別の光検出器812の電気的なおよび/または光学的な隔離のために、ギャップ813の中に配設されている。不透明な隔離材料は、たとえば、Epoxy Technology、Massachusetts、USAによって製造されている353NDBエポキシなどの、黒いまたは電気的に絶縁するエポキシを含むことが可能である。
【0045】
図8Dを見てみると、本発明の波長選択型センサー800Dは、図8Cの波長選択型センサー800Cと同様である。図8Dの波長選択型センサー800Dでは、光学フィルター200の一部分が、除去され、たとえば、貫通してエッチングされており、光検出器アレイ802Dのピクセル812同士の間のギャップ813の対応する1つの直ぐ上方にそれぞれ配設されたスロット816を形成しており、随意的な不透明な隔離材料817が、より良好な個別の光検出器812同士の間の光学的な隔離および光学的なクロストークの低減のために、スロット816の中に配設されている。
【0046】
図9Aを参照すると、本発明の波長選択型センサー900Aは、図8Aの波長選択型センサー800Aの変形例である。図9Aの波長選択型センサー900Aは、図2の光学フィルター200、および、光検出器912Aのアレイ902Aを含む。アレイ902Aは、効果的に、光学フィルター200のための基板である。光学フィルター200は、アレイ902Aの直ぐ上に配設され、したがって、光学フィルター200を支持するための別々の厚い基板、たとえば、少なくとも0.8mm厚さの別々のガラス基板の必要性を除去することが可能である。アレイ902Aは、反対向きの第1の表面921および第2の表面922を有するデバイス・チップ920を含む。アレイ902Aの光検出器912Aは、デバイス・チップ920の第1の表面921の中に配設されている。光学フィルター200は、光検出器912Aを覆って第1の表面921の上に配設されている。図9Aに示されているように、結合パッド929Aが、たとえば、光学フィルター200の反対側に、デバイス・チップ920を通して延在することが可能である。キャリアー・チップ930は、デバイス・チップ920の随意的なポリッシングの間に(以下を参照)、デバイス・チップ920を強化するために、デバイス・チップ920の第2の表面922に結合させることが可能である。
【0047】
ここで図9Bを見てみると、本発明の波長選択型センサー900Bは、図8Aの波長選択型センサー800Aおよび図9Aの波長選択型センサー900Aの変形例である。図9Bの波長選択型センサー900Bは、図2の光学フィルター200、および、光検出器912Bのアレイ902Bを含む。アレイ902Bは、反対向きの第1の表面941および第2の表面942を有するアレイ基板940を含む。アレイ902Bの光検出器912Bは、第1の表面941の中に配設されており、光学フィルター200は、アレイ基板940の第2の表面942の上に配設されている。この実施形態では、光840は、アレイ基板940を通って伝搬することによって、アレイ902Bの光検出器912Bに到達する。
【0048】
好適な実施形態では、また、波長選択型センサー900Bは、マルチプレクサー・チップ950を含み、マルチプレクサー・チップ950は、アレイ902Bの光検出器912Bの光電信号を読み取るためのマルチプレクサー回路955を含む。マルチプレクサー・チップ950は、アレイ基板940の第1の表面941にフリップ・チップ接合されている。結合パッド929Bは、マルチプレクサー・チップ950とアレイ902Bの光検出器912Bとの間に電気的接触を確立させるために、マルチプレクサー・チップ950とアレイ基板940との間に延在することが可能である。
【0049】
図7Bの可変光学フィルター700Bは、図8A図8D、および図9A図9Bのそれぞれの波長選択型センサー800A~800D、900A、900Bの中で、可変光学フィルター200の代わりに使用することが可能である。フィルター200、700Bは、3つの材料系の中だけでなく、4つ以上の材料を含む材料系の中に実装することが可能である。第1の材料は、二酸化ケイ素を含むことが可能であり、第2の材料は、五酸化タンタルを含むことが可能であり、第3の材料は、シリコンを含むことが可能である。材料の適正な選択によって、可変光学フィルター200は、20マイクロメートル以下、好ましくは10マイクロメートル以下の厚さを有することが可能であり、可変光学フィルター200の中の機械的な応力を大きく低減させ、製造量を増加させる。
【0050】
好ましくは、可変光学フィルター200または700Bは、図8A図8D図9A、および図9Bそれぞれの光検出器アレイ802A~802D、902A、および902Bの直ぐ上に配設されている。これらの実施形態では、光検出器アレイ802A~802D、902A、および902Bは、交互になる第1の層211および第2の層212、ならびに、交互になる第3の層213および第4の層214の蒸着の間に、効果的に、可変光学フィルター200または700Bのための基板となり、提供される光検出器アレイ802A~802D、902A、および902Bの上に、バンドパス204およびブロッキング・フィルター206A、206Bをそれぞれ形成するようになっている。図8A図8D図9A、および図9Bの光検出器アレイ802A~802D、902A、および902Bの直ぐ上に光学フィルター200または700Bを配設することは、よりコンパクトな全体構造を結果として生じさせ、また、光が、光検出器812、812A、812B、812C、912A、および912Bまでより短い距離を進行し、随意的なバルク基板202(図2)を含む光学フィルター200の実施形態と比較して発散することがより少ないので、対応する波長選択型センサー800A~800D、900A、および900Bのスペクトル分解能を改善させる。
【0051】
図9Aをさらに参照して、図10A図10B、および図10Cを参照すると、波長選択型センサー900A(図9A)を製造する方法が図示されている。反対向きの第1の表面1021および第2の表面1022を有するデバイス・ウエハー1020(図10A)が準備される。次いで、光検出器912Aおよび随意的な結合パッド929Aが、第2の表面1022の中に形成され、光検出器912Aがデバイス・ウエハー1020(図10A)の内側から第1の表面1021を向くようになっている。次いで、デバイス・ウエハー1020は、随意的なキャリアー・ウエハー1030に結合され、第1の表面1021が、アレイ902の光検出器912A、および、結合パッド929Aを露出させるようにポリッシングされる(図10B)。キャリアー・ウエハー1030は、ポリッシングをしやすくするために、機械的な強度を提供するために結合される。次いで、光学フィルター200は、結合パッド929Aと結合パッド929Aとの間に第1の表面1021(図10C)の上に、層ごとに蒸着される。次いで、デバイス・ウエハー1020は、個別のデバイス・チップ920へとダイスカットすることが可能である。
【0052】
本発明の1つまたは複数の実施形態の先述の説明は、例証および説明の目的のために提示されてきた。それは、包括的であること、または、開示されている正確な形態に本発明を限定することを意図していない。上記教示を考慮して、多くの修正例および変形例が可能である。本発明の範囲は、この詳細な説明によって限定されるべきではなく、これに添付されている請求項によって限定されるべきであるということが意図されている。
【符号の説明】
【0053】
200 光学フィルター
202 バルク基板
204 バンドパス・フィルター
206A ブロッキング・フィルター
206B ブロッキング・フィルター
211 第1の層
212 第2の層
213 第3の層
214 第4の層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B-7C】
図7D
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10