(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】塵芥車における排出汚水の案内装置
(51)【国際特許分類】
B65F 3/00 20060101AFI20220610BHJP
B60P 3/00 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
B65F3/00 G
B65F3/00 J
B60P3/00 Q
(21)【出願番号】P 2021104129
(22)【出願日】2021-06-23
(62)【分割の表示】P 2017099046の分割
【原出願日】2017-05-18
【審査請求日】2021-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000163095
【氏名又は名称】極東開発工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】特許業務法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前川 亘
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-100780(JP,A)
【文献】特開2008-308291(JP,A)
【文献】特開2003-146405(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第725022(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65F 3/00- 3/28
B60P 3/00- 3/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレーム(F)上に、塵芥収容箱(1)を搭載し、該塵芥収容箱(1)の開口後壁(2)に、塵芥投入箱(6)を後方に起伏回動可能に設け、塵芥投入箱(6)に投入された塵芥を、塵芥収容箱(1)内に押込収容するようにした塵芥車において、
塵芥投入箱(6)には、収容塵芥からでる排出汚水を受け入れる汚水樋(13)と、その汚水樋(13)内の汚水を溜める汚水タンク(15)と、塵芥投入箱(6)の縦中心線(C-C)から左右方向のいずれ
か一方に偏った位置で、汚水樋(13)と汚水タンク(15)とを連通する導水パイプ(P)とが設けられ、
導水パイプ(P)には、塵芥投入箱(6)の起立回動時に、汚水タンク(15)から汚水樋(13)へ逆流する汚水を、車体フレーム(F)
の左右方向内側に導く傾斜面(17)が設けられる
とともに、汚水の逆流方向でその導水パイプ(P)の前記傾斜面(17)の上流側には、塵芥車の走行時に汚水が汚水樋(13)に逆流するのを協働して防止するための導水パイプ(P)の下壁面(16d)と逆流防止板(18)とが、塵芥投入箱(6)の縦中心線(C-C)と直交する方向にそれぞれ延びるようにして設けられることを特徴とする、塵芥車における排出汚水の案内装置。
【請求項2】
前記
導水パイプ(P)の下壁面(16d)は、前記汚水タンク(15)
の壁面を延長して設けられ
ていることを特徴とする、前記請求項1に記載の塵芥車における排出汚水の案内装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車体フレーム上に搭載される塵芥収容箱の開口後壁に、塵芥押込装置を設けた塵芥投入箱を後方に起伏回動可能に設けた塵芥車において、塵芥投入箱の起立回動時に、該塵芥投入箱の汚水槽から排出される汚水の車両の外部への飛散を抑制できるようにした、塵芥車における排出汚水の案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前記塵芥車において、塵芥投入箱に、収容塵芥からでる汚水を受け入れる汚水樋と、その汚水樋内の汚水を溜める汚水タンクと、汚水樋内の汚水を汚水タンクに導く導水パイプとを備えた、塵芥車の汚水漏れ防止装置は公知(後記特許文献1参照)である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、塵芥車による塵芥の処理手順として、塵芥を収集した後の塵芥車は、塵芥処理施設に到達してから後進停車させて、その後部を塵芥処理施設のピットにつけ、塵芥投入箱を後方に起立回動してその出入口を開いた後、塵芥収容箱をダンプもしくはそこに設けた排出板を押し出すことで、塵芥収容箱内に収容塵芥を前記ピット内に排出するようにしており、この際に、汚水タンク内の汚水が導水パイプを通って排出される。
【0005】
ところが、塵芥処理施設における塵芥車の後進停車位置によっては、汚水が全て前記ピットに落ちずに、塵芥処理施設のプラットホーム上に落ちることがあり、また導水パイプからでた汚水は、導水パイプの側壁面に沿って真下に落下して地面から四方に飛散する。
【0006】
このとき、塵芥車の横に、塵芥処理施設の清掃者等の人が待機していると、塵芥車の外側に飛散した汚水がその人に降りかかってしまう虞れがあるという課題がある。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、塵芥を排出する前に、塵芥投入箱を起立回動した際に、汚水を導水パイプに設けた傾斜面により塵芥収容箱の内側に飛散するように導くようにして汚水が人に降りかかることがないようにした、新規な塵芥車における排出汚水の案内装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本請求項1記載の発明は、車体フレーム上に、塵芥収容箱を搭載し、該塵芥収容箱の開口後壁に、塵芥投入箱を後方に起伏回動可能に設け、塵芥投入箱に投入された塵芥を、塵芥収容箱内に押込収容するようにした塵芥車において、
塵芥投入箱には、収容塵芥からでる排出汚水を受け入れる汚水樋と、その汚水樋内の汚水を溜める汚水タンクと、塵芥投入箱の縦中心線から左右方向のいずれか一方に偏った位置で、汚水樋と汚水タンクとを連通する導水パイプとが設けられ、
導水パイプには、塵芥投入箱の起立回動時に、汚水タンクから汚水樋へ逆流する汚水を、車体フレームの左右方向内側に導く傾斜面が設けられるとともには、塵芥車の走行時に汚水が汚水樋に逆流するのを協働して防止するための導水パイプの下壁面と逆流防止板とが、塵芥投入箱の縦中心線と直交する方向にそれぞれ延びるようにして設けられることを特徴としている。
【0009】
上記目的を達成するために、本請求項2記載の発明は、前記請求項1に記載のものにおいて、前記導水パイプの下壁面は、前記汚水タンクの壁面を延長して設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本請求項1,2記載の発明によれば、塵芥収容箱内の収容塵芥を排出する前に、塵芥投入箱を後方に起立回動させた時に、導水パイプ内を流れる汚水を、導水パイプに設けた傾斜面に沿って車両の内側に向かって流して、塵芥処理施設のプラットホーム上に落下させることができ、車両の外部に飛び散りにくくし、塵芥車の左右に居る清掃者に汚水がかかることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の排出汚水の案内装置を備えた塵芥車の側面図
【
図5】(A)は
図3の5A-5A線に沿う拡大断面図、(B)は
図3の5B-5B線に沿う拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態を、添付図面に例示した本発明の実施形態に基づいて以下に具体的に説明する。
【0014】
図1,2において、塵芥車Vの車体フレームFには、塵芥収容箱1が搭載されている。この塵芥収容箱1は箱状に形成され、その後壁2は、上部から下部に向かって後方に傾斜しており、その後壁2に出入口3が開口されている。塵芥収容箱1は後方にダンプ可能であり、その底壁4の後縁部4rは、その全幅にわたり下り勾配の傾斜面に形成されており、その後縁部4rは、後述する汚水樋13の開放上面に臨んでいる。
【0015】
塵芥収容箱1の後壁には塵芥投入箱6が連接される。この塵芥投入箱6は、その前壁上部がヒンジ軸7をもって塵芥収容箱1の後壁2上部に、後方に起立回動できるように連結されている。塵芥投入箱6の前壁には、前記出入口3に連通する塵芥押込口8が開口され、またその後壁の下半部には、作業員などが塵芥を塵芥投入箱6内に投入するための塵芥投入口9が開口される。塵芥投入箱6内には、従来公知の塵芥押込装置10が設けられ、この塵芥押込装置10の作動により、塵芥投入箱6内に投入された塵芥は塵芥収容箱1内に押し込まれる。前記塵芥収容箱1の後壁の左右両側の上部と、塵芥投入箱6の左右側壁の中間部間には、伸縮シリンダ11が連結されており、この伸縮シリンダ11の伸長作動により、塵芥投入箱6を、前記ヒンジ軸7回りに後方に起立回動(
図1鎖線位置)することができ、塵芥収容箱1を後方にダンプもしくはその内部に設けた排出板(図示せず)で押し出すことにより、その内部の収容塵芥を外部に排出することができる。
【0016】
ところで、押込作動時の塵芥や、塵芥収容箱1内に収容された塵芥からは汚水が流れ出るが、この汚水は、後述の汚水タンク15内に回収され、塵芥車Vの外に漏れ出ることがない。
【0017】
図2~5に示すように、塵芥投入箱6の塵芥押込口8の下方には、その略全幅にわたり、汚水樋13が一体に横架されている。この汚水樋13は、横断面U字状に形成されており、その左右両開口端部は端壁14により閉じられている。この汚水樋13は、塵芥収容箱1の底壁4の後縁下に位置しており、塵芥収容箱1および塵芥投入箱6内の塵芥から出る汚水が、その内部に流れ込むようになっている。
【0018】
塵芥投入箱6の底壁下部には、密閉状の汚水タンク15が設けられ、この汚水タンク15は、塵芥投入箱6の横幅と略同じ幅を有しており、その上壁15uは、塵芥投入箱6の底壁を利用して形成されており、汚水タンク15は全体として上下方向に偏平に形成されていて、この汚水タンク15の地上高は、塵芥車Vが走行するに支障のない高さに保たれる。前記上壁15uには、排水口15hが穿設されており、塵芥投入箱6に溜まった汚水は、この排水口15hを通って汚水タンク15に流れる。
【0019】
図3、4に示すように、塵芥投入箱6の縦中心線C-Cと、その左、右側壁との間において、前記汚水樋13と、汚水タンク15との間には、それらを連通する対をなす導水パイプP,Pが左右対称的に設けられており、汚水樋13内に流れ込んだ汚水は、実線矢印aに示すように、それらの導水パイプP,Pを通り、汚水タンク15に導かれるようにされている。
【0020】
左右一対の導水パイプP,Pは何れも同じ構造であるので、その一方の具体的構造について主に
図2~4を参照して説明すると、導水パイプPは、前後方向に偏平なチャンネル状に形成されていて、塵芥投入箱6の前壁6fに液密に溶接して構成されている。
【0021】
前記導水パイプPは、内、外側縦壁面16i,16o、縦前壁面16fおよび上、下壁面16u,16dとを有して、横断面チャンネル状に形成されており、その開口後縁が塵芥投入箱6の前壁6fに液密に溶接されている。導水パイプPの入口は汚水樋13に、その下壁面16dの出口は前記汚水タンク15に連通されている。
【0022】
図3に明瞭に示すように、導水パイプPの上部には、その導水パイプP内を流れる汚水を汚水樋13に向けて案内する傾斜面17が設けられる。この傾斜面17は、導水パイプPの外側縦壁面16oからその内側縦壁面16i、すなわち車両の内側に向かって上り勾配に傾斜しており、
図5(B)に示すように、傾斜面17の上縁17uは傾斜して導水パイプPの上壁面16uに接続されている。そして傾斜面17は、後に述べるように、導水パイプP内を汚水樋13に向かって流れる汚水を導水パイプPの入口に導くようにされている。
【0023】
また、前記傾斜面17よりも汚水タンク15側(車両下方側)において、導水パイプPの内側縦壁面16iには逆流防止板18が設けられる。この逆流防止板18は内側縦壁面16iから導水パイプPの途中まで内方に向かって導水パイプPの出口と対面するように、その下壁面16dと略平行に延びている。そしてこの逆流防止板18は、矢印bに示すように、導水パイプP内を汚水樋13に向かって逆流する汚水を前記傾斜面17に当て易くすることができる。
【0024】
図2,6に示すように、汚水タンク15の一側面には、そこに貯留される汚水を排出するための長方形状の排水口20が開口され、この排水口20は汚水蓋21により開閉される。この汚水蓋21は、その外面の中央部が、一端を汚水タンク15に回動自在に軸支23される開閉アーム22に揺動可能に軸支25され、その汚水蓋21の内面には、排水口20を液密に密閉し得るシール部材24が設けられる。開閉アーム22の自由端には、汚水蓋21を閉じ位置に固縛するためのトグルリンクよりなる固縛具26が設けられる。この固縛具26は、開閉アーム22の自由端に回動自在に軸支28されるL型のレバー27と、このレバー27の中間部に回動自在に連結30される係合部材29とより構成される。係合部材29の係合部29aを、汚水タンク15に突設した係止片31に係合してレバー27を汚水タンク15側に回動し、前記連結点30が、前記軸支点28と、係合部材29の係合部を結ぶ線L-Lを越えれば、
図6実線に示すように、固縛具26がロック状態となり、前記排水口20を汚水蓋21により閉鎖することができ、またレバー27を、汚水タンク15から離れる方向(
図7反時計方向)に回動して前記連結点30が、前記線L-Lを越えれば、
図6鎖線に示すように、固縛具26はアンロックされ、汚水蓋21を開放して、汚水タンク15に貯留された汚水を外部に排出することができる。
【0025】
つぎに、この実施例の作用について説明する。
【0026】
塵芥投入箱6から塵芥収容箱1内に押し込まれる押込塵芥や、塵芥収容箱1内に収容された収容塵芥から流れ出る汚水は、
図2~5に実線矢印aにて示すように、汚水樋13に流れ落ち、そこから左右一対の導水パイプPを経て汚水タンク15に溜められる。そして、汚水タンク15内の貯留汚水は、汚水蓋21の開放により排水口20より外部に排出される。
【0027】
ところで、塵芥収集車による塵芥の処理行程では、塵芥収容箱1内に収集された塵芥を、塵芥処理施設のピット等に排出するようにされるが、その際に、塵芥収容箱1内の収容塵芥を排出する前に、塵芥投入箱6を後方に起立回動(
図1鎖線位置)させて塵芥収容箱1の後壁2を開放する必要があるが、その時に、汚水タンク15内の汚水は、導水パイプP、汚水樋13を経て外部に排水されるが、その際に導水パイプP内を流れる汚水は、
図3、4に2点鎖線矢印bに示すように、前記傾斜面17に沿って車両の内側に向かって流れて、塵芥処理施設のプラットホーム上に落下させることができ、内側に向かって勢いづいて地面に当たり内側に多く飛散させることができるため、汚水が車両の外部に飛び散りにくい。これにより塵芥車の左右に居る清掃者に汚水がかかりにくい。
【0028】
清掃者は、塵芥車Vによる塵芥排出後、塵芥処理施設のプラットホームをすぐに掃除するため、塵芥車Vの横で、塵芥の排出が終わるまで待機する場合がある。
【0029】
図3に示すように、逆流防止板18の右端と導水パイプPの下壁面16dの左端とが上下方向でラップしているため、車両走行時中の急停止時に汚水タンク15内の汚水が導水パイプP内に逆流するとき、逆流防止板18と下壁面16dと
の協働で汚水をせき止めることができる。
【0030】
また、
図3に2点鎖線矢印に示すように、導水パイプP内に設けられる逆流防止板18は、汚水タンク15から導水パイプP内に流れる汚水を、前記傾斜面17に当て易く誘導することができ、導水パイプPの入口の広さを確保しながら斜め方向に排出される汚水の排出を補助することができる。逆流防止板18は、車両走行中の急停止時に汚水の逆流を阻止する機能と、塵芥投入箱6の起立回動時に汚水の斜め方向への排出を補助する機能とを兼用できる。
【0031】
前記傾斜面17は、導水パイプP内を逆流する汚水を車両の内側に向かって誘導して塵芥処理施設のプラットホーム上に落下させることができ、前記逆流防止板18は導水パイプPから傾斜面17に当たらず真っ直ぐに落下する汚水を傾斜面17に向けて誘導するように作用して、傾斜面17による汚水の誘導を補助することができる。
【0032】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はその実施形態に限定されることなく、本発明の範囲内で種々の実施形態が可能である。
【0033】
たとえば、傾斜面は、導水パイプの外側縦壁面自体を内側に傾斜して形成してもよい。また、導水パイプは一つあるいは三つ以上であってもよい。さらに塵芥投入箱内に設けられる積込装置は、前記実施形態のものに限定されない。
【符号の説明】
【0034】
1・・・・・塵芥収容箱
6・・・・・塵芥投入箱
13・・・・汚水樋
15・・・・汚水タンク
16d・・・導水パイプの下壁面
17・・・・傾斜面
18・・・・逆流防止板
F・・・・・車体フレーム
P・・・・・導水パイプ
C-C・・・縦中心線