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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】生体センサ
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/257 20210101AFI20220610BHJP
   A61B 5/332 20210101ALI20220610BHJP
   A61B 5/271 20210101ALI20220610BHJP
【FI】
A61B5/257
A61B5/332
A61B5/271
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021536237
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2021013154
(87)【国際公開番号】W WO2021200765
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2021-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2020059654
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】514283526
【氏名又は名称】合同会社SPChange
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 良真
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 隆嗣
(72)【発明者】
【氏名】平井 雄作
(72)【発明者】
【氏名】植田 昌行
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0206975(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0328327(US,A1)
【文献】特表2016-515022(JP,A)
【文献】特表2016-504159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、
前記本体部の長手方向の一端に第1くびれ部を介して設けられ、生体に貼り付けられる第1電極を有する第1パッド部と、
前記本体部の前記長手方向の他端に第2くびれ部を介して設けられ、生体に貼り付けられる第2電極を有する第2パッド部と、
前記第1電極および前記第2電極を介して生体情報を取得する取得部と、前記取得部が取得した生体情報を送信する無線通信部とが搭載され、前記本体部の前記第1くびれ部側に設けられる部品搭載部と、
前記本体部の前記第2くびれ部側に設けられ、前記部品搭載部に電力を供給するバッテリが装着されるバッテリ装着部と、が一体形成されたフレキシブル基板を有し、
前記バッテリ装着部は、
前記部品搭載部に隣接して設けられ、前記バッテリ装着部上に配置される前記バッテリの第1端子に接続される第1電極パターンと、
前記第1電極パターンに対して前記長手方向の直交方向に第3くびれ部を介して設けられ、前記第3くびれ部を撓ませたときに前記第1電極パターンに対向し、前記バッテリの第2端子に接続される第2電極パターンと、を有することを特徴とする生体センサ。
【請求項2】
前記第1電極パターン上に設けられた導電性の第1粘着剤と、
前記第2電極パターン上に設けられた導電性の第2粘着剤と、を有し、
前記第3くびれ部を撓ませた状態で、前記第1電極パターンは、前記第1粘着剤を介して前記第1端子と接続され、前記第2電極パターンは、前記第2粘着剤を介して前記第2端子と接続されることを特徴とする請求項1に記載の生体センサ。
【請求項3】
前記バッテリ装着部には、前記第1端子が正極で、前記第2端子が負極のコイン型の前記バッテリが装着され、
前記第2電極パターンは、前記第2端子の円形形状の大きさに対応する円形形状を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の生体センサ。
【請求項4】
前記フレキシブル基板において、前記第2パッド部と前記取得部とを接続する配線パターンが形成される面と反対側の面に、前記本体部の前記長手方向に沿って設けられ、前記無線通信部に接続されたアンテナパターンと、を有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の生体センサ。
【請求項5】
前記本体部は、前記部品搭載部と前記バッテリ装着部との間に、前記長手方向の直交方向に入り込む切り込みを有することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の生体センサ。
【請求項6】
前記部品搭載部に貼付され、前記部品搭載部の撓みを防止する板部材を有することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の生体センサ。
【請求項7】
前記部品搭載部の前記第1くびれ部側の端部に搭載される押下スイッチを有することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の生体センサ。
【請求項8】
前記本体部が収納され、少なくとも前記第1電極および前記第2電極に対応する位置が開口し、前記第1電極および前記第2電極が露出する面を生体に接着可能な筐体を有することを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の生体センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体センサに関する。
【背景技術】
【0002】
生体に装着して心電図信号等の生体情報を長時間にわたり取得可能なウェアラブルな生体センサが知られている。例えば、この種の生体センサは、長手方向の両側に電極を有し、長手方向を胸骨に揃えて生体の胸部に貼り付けられた後、自動的に生体情報の計測を開始する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2019/0254553号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
生体に装着された生体センサにより生体情報を長時間にわたり取得する場合、生体センサが生体情報を正しく取得できないと、長時間の計測が無駄になってしまう。生体情報を長時間にわたり正しく取得するためには、生体センサが、生体から剥がれることなく生体情報を取得し続ける必要がある。また、生体センサを生体から剥がれにくくするためには、被検者である生体の体動による体表面の変形に追従して生体センサを変形させることが好ましく、その際、生体センサを装着している被検者の違和感を軽減できることが好ましい。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、生体の体動による体表面の変形に追従して変形でき、装着時の違和感を軽減できる生体センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施の形態の生体センサは、本体部と、前記本体部の長手方向の一端に第1くびれ部を介して設けられ、生体に貼り付けられる第1電極を有する第1パッド部と、前記本体部の前記長手方向の他端に第2くびれ部を介して設けられ、生体に貼り付けられる第2電極を有する第2パッド部と、前記第1電極および前記第2電極を介して生体情報を取得する取得部と、前記取得部が取得した生体情報を送信する無線通信部とが搭載され、前記本体部の前記第1くびれ部側に設けられる部品搭載部と、
前記本体部の前記第2くびれ部側に設けられ、前記部品搭載部に電力を供給するバッテリが装着されるバッテリ装着部と、が一体形成されたフレキシブル基板を有し、前記バッテリ装着部は、前記部品搭載部に隣接して設けられ、前記バッテリ装着部上に配置される前記バッテリの第1端子に接続される第1電極パターンと、前記第1電極パターンに対して前記長手方向の直交方向に第3くびれ部を介して設けられ、前記第3くびれ部を撓ませたときに前記第1電極パターンに対向し、前記バッテリの第2端子に接続される第2電極パターンと、を有することを特徴とする生体センサ。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、生体の体動による体表面の変形に追従して変形でき、装着時の違和感を軽減できる生体センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る生体センサを含む生体センサシステムの例を示す全体構成図である。
図2図1のフレキシブル基板の例を示すレイアウト図である。
図3図1の生体センサを被検者の胸部に貼り付けた状態を示す説明図である。
図4図1の生体センサの動作モードの遷移の例を示す状態遷移図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
図1は、一実施形態に係る生体センサを含む生体センサシステムの例を示す全体構成図である。図1に示す生体センサシステムSYSは、生体センサ100、初期動作を確認する動作確認機器310、PC(Personal Computer)320、生体センサ100から生体情報の読み取る読み取り機器410およびPC420を有する。例えば、生体センサ100は、生体から心電図信号を取得するウェアラブルな心電計である。なお、生体センサ100は、心電図信号以外の生体情報を取得する機能を有してもよく、複数種の生体情報を取得する機能を有してもよい。
【0011】
動作確認機器310は、例えば、USB(Universal Serial Bus)インタフェース(有線)を介してPC320に接続される。動作確認機器310は、PC320からの制御に基づいて生体センサ100との間で無線通信する機能を有する。例えば、PC320は、受信した生体情報の時間変化を示す波形(心電図波形等)を画面に表示する機能を有する。
【0012】
読み取り機器410は、例えば、USBインタフェース(有線)を介してPC420に接続される。読み取り機器410は、通信ケーブルを介して生体センサ100との間で通信する機能を有する(有線通信)。
【0013】
生体センサ100は、生体情報の取得と取得した生体情報の処理とを実施する各種部品が搭載されたフレキシブル基板(樹脂基板)110と、筐体120(破線で示す)とを有する。フレキシブル基板110は、本体部121と、本体部121の長手方向の一端に設けられるくびれ部122と、くびれ部122を介して本体部121に接続されるパッド部123とを有する。また、フレキシブル基板110は、本体部121の長手方向の他端に設けられるくびれ部124と、くびれ部124を介して本体部121に接続されるパッド部125とを有する。
【0014】
本体部121、くびれ部122、パッド部123、くびれ部124およびパッド部125は、一体形成されている。生体センサ100の各要素を、フレキシブル基板110を使用して一体形成することで、別々の部品を組み合わせて生体センサ100を組み立てる場合に比べて、生体センサ100の組み立てコストを削減することができ、製造コストを削減することができる。
【0015】
本体部121は、くびれ部122側に設けられる部品搭載部126と、くびれ部124側に設けられ、バッテリ200が装着されるバッテリ装着部127とを有する。部品搭載部126には、読み取り機器410に接続される通信ケーブルのコネクタが接続される外部端子131が形成される。部品搭載部126に搭載される主な部品は、図2で説明する。
【0016】
バッテリ装着部127には、例えば、部品搭載部126に電力を供給するコイン型のバッテリ200が装着される。パッド部123には、生体の体表に貼り付けられる電極パターン132が形成され、パッド部125には、生体の体表に貼り付けられる電極パターン133が形成される。以下では、電極パターン132を電極132とも称し、電極パターン133を電極133とも称する。
【0017】
図2は、図1のフレキシブル基板110の例を示すレイアウト図である。フレキシブル基板110の部品搭載部126には、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)210、SoC(System on a Chip)220、フラッシュメモリ230、スイッチ240およびLED(Light Emitting Diode)250が搭載される。
【0018】
特に限定されないが、フラッシュメモリ230は、例えばNAND型である。LED250として、緑色光を出力するLEDと赤色光を出力するLEDが部品搭載部126に搭載される。以下では、緑色光を出力するLEDをLED(G)とも称し、赤色光を出力するLEDをLED(R)とも称する。
【0019】
生体センサ100は、フレキシブル基板110において、ASIC210およびSoC220等の部品が搭載される部品搭載面(表面)の反対面(裏面)に貼り付けられたステンレス板等の板部材260(図2に太い破線枠で示す)を有する。板部材260により、生体センサ100が貼り付けられた生体の姿勢の変化によりフレキシブル基板110が撓んだ場合にも、部品搭載部126が撓むことを防止することができる。この結果、フレキシブル基板110の撓みによる配線パターンの断線を防止することができ、ASIC210等の電子部品の端子とフレキシブル基板110上のパターンとのはんだ付け部が破損することを防止することができる。
【0020】
例えば、スイッチ240は、突起部が押し下げられている間にオン状態に設定され、突起部が開放されている間にオフ状態に設定される押下スイッチである。スイッチ240は、くびれ部122に隣接する位置(本体部121の端部)であって、板部材260に対向する位置に搭載される。これにより、生体センサ100が生体に装着された状態でスイッチ240が押下されたとき、押下による応力は、部品搭載部126に端部に掛かる。このため、スイッチ240の押下による部品搭載部126(板部材260)の撓みを最小限にすることができ、部品搭載部126の配線パターンの断線等を防止することができる。以下では、生体センサ100が貼り付けられ、生体センサ100により生体情報が取得される生体を被検者Pとも称する。
【0021】
くびれ部124は、くびれ部122より長く形成される。図3で説明するように、生体センサ100は、パッド部123を上側(首側)に向けて、被検者Pの胸骨に沿って貼り付けられる。このとき、身長が低い被検者Pでは、パッド部125が胸骨の下端側(胃に近い部分)に位置する場合がある。しかしながら、長細いくびれ部124により、被検者Pが体を屈曲させた場合にも、くびれ部124を体の屈曲に追従して変形させることができ、生体センサ100を装着した被検者Pが感じる違和感を軽減することができる。また、くびれ部124が体の屈曲に追従して変化することで、体表面に接着された電極132、133が、被検者Pの体の屈曲により体表面から剥がれる可能性を低くすることができる。
【0022】
なお、電極132、133の被検者Pの体表への接着は、導電性の粘着剤を介して行われてもよく、電極132、133に非導電性の粘着剤を部分的に付け、非導電性の粘着剤を介して行われてもよい。あるいは、電極132、133に貼り付けた生体付着用の電極を、導電性または非導電性の粘着剤を介して被検者Pに貼り付けてもよい。
【0023】
バッテリ装着部127は、パッド部127a、127bおよびくびれ部127cを有する。パッド部127aは、くびれ部124と部品搭載部126との間に設けられる。パッド部127bは、パッド部127aに対して長手方向の直交方向(図2の上側方向)に、パッド部127aから所定間隔離れて設けられる。くびれ部127cは、パッド部127a、127bの間に配置され、パッド部127a、127bを互いに連結する。
【0024】
パッド部127aは、バッテリ200(図1)の正極端子が接続される正電極パターン134を有する。パッド部127bは、バッテリ200の負極端子が接続される負電極パターン135を有する。例えば、正電極パターン134は、角部が面取りされた正方形形状を有し、負電極パターン135は、バッテリ200の負極端子の円形形状の大きさに対応する円形形状を有する。例えば、負電極パターン135の直径は、バッテリ200の直径と等しく、正電極パターン134の対角線の長さと等しい。
【0025】
生体センサ100にバッテリ200を装着する場合、正電極パターン134および負電極パターン135の全体に、粘着テープ等の導電性の粘着剤がそれぞれ取り付けられる。次に、例えば、バッテリ200の正極端子が、正電極パターン134上に貼り付けられる。この後、パッド部127a、127bが互いに対向するようにくびれ部127cを撓ませて、バッテリ200の負極端子の円形形状の位置に合わせて、負電極パターン135がバッテリ200に貼り付けられる。
【0026】
あるいは、生体センサ100にバッテリ200を装着する場合、バッテリ200の負極端子が、外周を負電極パターン135の外周に合わせて、粘着剤を介して負電極パターン135に貼り付けられる。この後、パッド部127a、127bが互いに対向するようにくびれ部127cを撓ませて、バッテリ200の正極端子が粘着剤を介して正電極パターン134に貼り付けられる。なお、図1に示した本体部121は、くびれ部127cを撓めて、バッテリ200を、正電極パターン134と負電極パターン135との間に挟んだ状態でバッテリ装着部127に装着した状態を示している。
【0027】
負電極パターン135の形状を、バッテリ200の負極端子の形状に合わせることで、負電極パターン135が、バッテリ200の側面(正極端子)とショートすることを防止することができる。また、バッテリ200の負極端子の円形形状の位置に合わせて、負電極パターン135をバッテリ200の負極端子に貼り付けることで、バッテリ200の負極端子の周囲が負電極パターン135の周囲からはみ出ることを抑止することができる。したがって、生体センサ100が貼付された被検者Pの姿勢が変化しても、負電極パターン135が、バッテリ200の側面とショートすることを防止することができる。
【0028】
また、バッテリ200は、導電性の粘着剤を介して正電極パターン134および負電極パターン135に面で接着される。これにより、例えば、板ばね等の端子を介してバッテリ200をバッテリ装着部127に接続する場合に比べて、接触抵抗を下げることができる。また、被検者Pが体をねじる等をした場合にも、バッテリ200がバッテリ装着部127から外れることを防止することができる。
【0029】
さらに、フレキシブル基板110に一体形成されたバッテリ装着部127にバッテリ200を挟み込んで装着することで、フレキシブル基板110と別体のバッテリホルダー等を用いる場合に比べて、生体センサ100の厚さを小さくすることができる。これにより、生体センサ100を被検者Pに貼り付けたときの被検者Pの体表からの突出高さを最小限にすることができる。この結果、生体センサ100を装着した被検者Pが感じる違和感を最小限にすることができる。
【0030】
フレキシブル基板110により生体センサ100を一体形成することで、複数の部品を合わせて生体センサ100を形成する場合に比べて、生体センサ100を軽量化することができる。このため、生体センサ100を装着した被検者Pが感じる違和感をさらに少なくすることができ、生体センサ100が重力により被検者Pから剥がれる可能性を低くすることができる。
【0031】
フレキシブル基板110は、矩形状の部品搭載部126の周囲の一辺側(図2の下側)に、フレキシブル基板110の長手方向に沿って形成されるアンテナパターン136を有する。図示を省略するが、アンテナパターン136の一端は、SoC220に接続される。また、フレキシブル基板110は、電極パターン133からくびれ部124を通ってスイッチ240の近傍まで、本体部121の端(図2の下側)に形成された配線パターン137を有する。配線パターン137により、電極133がASIC210に接続される。
【0032】
ASIC210は、電極132にも接続され、電極132、133を介して被検者Pから生体情報を取得し、取得した生体情報をSoC220に出力する。ASIC210は、取得部の一例である。なお、SoC220は、動作確認機器310と無線通信する無線通信部を有し、後述する動作確認モード中に、ASIC210から受信した生体情報を動作確認機器310に送信する。すなわち、SoC220は、無線通信部として機能する。また、SoC220は、後述する生体情報記録モード中に、ASIC210から受信した生体情報をフラッシュメモリ230に書き込む。
【0033】
動作確認モードは、生体センサ100が生体情報を正しく取得できるか(生体センサ100が正しく被検者Pに貼付されているか、および、生体センサ100が正常に動作するか)を確認するモードである。動作確認モードでは、SoC220は、ASIC210から受信した生体情報を、フラッシュメモリ230に書き込むことなく、内蔵する無線通信部を介して図1に示した動作確認機器310に送信する。
【0034】
生体情報記録モードは、生体センサ100により生体情報を正しく取得できることが動作確認モードで確認された場合、動作確認機器310からの記録開始指示に基づいて、動作確認モードから遷移される動作モードである。生体情報記録モード中、SoC220は、ASIC210が取得した生体情報をフラッシュメモリ230に順次書き込む。
【0035】
アンテナパターン136は、フレキシブル基板110の部品搭載面(表面)側の配線層に形成される。一方、配線パターン137は、フレキシブル基板110の裏面側の配線層に形成される。これにより、例えば、帯電した物体に電極パターン133が接触し、電極パターン133への放電が発生した場合にも、配線パターン137に流れる直流電流がアンテナパターン136に流れることを防止することができる。したがって、放電による直流電流がアンテナパターン136を介してSoC220に流れることを防止することができ、SoC220内の素子が静電破壊することを防止することができる。特に、アンテナパターン136に接続される無線通信部の破損を防止することができる。なお、ASIC210は、配線パターン137が接続される入力回路の形成領域に静電気放電に対する保護素子を有する。
【0036】
フレキシブル基板110は、部品搭載部126とバッテリ装着部127との間の外周部に、長手方向の直交方向に入り込む切り込み128を有する。切り込み128を設けることで、生体センサ100が貼り付けられた被検者Pの姿勢の変化によりフレキシブル基板110に応力が掛かった場合、フレキシブル基板110を切り込み128部分で湾曲させることができる。したがって、被検者Pの体動による体表の変形に追従して本体部121を切り込み128部分で撓ませることができ、生体センサ100の装着中の違和感を軽減することができる。
【0037】
図3は、図1の生体センサ100を被検者Pの胸部に貼り付けた状態を示す説明図である。例えば、生体センサ100は、長手方向を被検者Pの胸骨に揃え、パッド部123を上側、パッド部125を下側にして被検者Pに貼り付けられる。すなわち、生体センサ100は、長さの長いくびれ部124を下側にして、被検者Pに貼り付けられる。なお、生体センサ100の本体部121の裏面には、本体部121を被検者Pの体表に貼り付けるための粘着テープまたは粘着剤が取り付けられる。
【0038】
生体センサ100の筐体120は、本体部121が収納された状態で、少なくとも電極132、133に対応する位置に開口を有し、開口から露出する電極132、133を被検者Pに接着可能である。生体センサ100は、被検者Pに貼り付けられて被検者Pの体表に電極132、133が接着された状態で、動作確認機器310(図1)と無線通信する。そして、生体センサ100は、被検者Pから取得した心電図信号等の生体情報を、動作確認機器310を介してPC320(図1)に送信する。
【0039】
この後、PC320の画面に表示された心電図波形等に基づいて、生体センサ100が正しい位置に貼り付けられていることが医師等により確認される。そして、生体センサ100は、医師等によるPC320の操作に基づいて、動作確認機器310を介してPC320から送信される記録開始コマンドに基づいて、生体情報の本計測を開始する。
【0040】
生体センサ100は、本計測中に被検者Pから順次取得する生体情報を、時間情報とともにフラッシュメモリ230に書き込む。また、生体センサ100は、本計測中にスイッチ240が押下された場合、スイッチ240のオン状態が継続している間、現在時刻に対応する時間情報(オン状態を示す)をフラッシュメモリ230に順次書き込む。
【0041】
生体センサ100を装着した被検者Pは、動悸または息切れ等の不調を感じた場合、スイッチ240を押下する。スイッチ240は、不調を感じている間、押下され続けてもよい。本計測の完了後、例えば、読み取り機器410は、心電図信号等の生体情報と、生体情報に付属するタイムカウンタと、スイッチ240のオン状態を示すタイムカウンタとを生体センサ100のフラッシュメモリ230から読み出す。
【0042】
読み取り機器410(図1)は、フラッシュメモリ230から読み出した各種情報をPC420(図1)に転送する。各種情報を受信したPC420は、画面に心電図波形等の生体情報とスイッチ240が押下されたタイミングとを表示する。これにより、PC420を操作する医師等は、被検者Pが不調を感じていたときの心電図波形等に異常が見られるか判定することが可能になる。
【0043】
なお、例えば、本計測期間は、バッテリ200からの電力により生体センサ100が動作可能な期間に応じて設定される。例えば、本計測期間は、24時間(1日)であるが、バッテリ200の容量および生体センサ100の消費電力に応じて、さらに長い時間に設定されてもよい。
【0044】
図4は、図1の生体センサ100の動作モードの遷移の例を示す状態遷移図である。例えば、図4の状態遷移は、SoC220に内蔵されるMCUが制御プログラムを実行することで実現される。なお、SoC220が実行する制御プログラムは、生体センサ100の全体の動作を制御するプログラムである。
【0045】
生体センサ100は、バッテリ200がバッテリ装着部127に装着され、生体センサ100に電源電圧の供給が開始されたとき、初期化モードに遷移する。生体センサ100は、初期化モードにおいて、ハードウェア等の初期設定を行う。初期化の完了後、動作モードは、ディープスリープモードに遷移する。ディープスリープモードは、生体センサ100がスイッチ240の押下による割り込みを受け付けるモードであり、ASIC210および動作確認機器310との無線通信機能は停止している。
【0046】
ディープスリープモードにおいて、生体センサ100は、スイッチ240の長押し(例えば、2秒)を検出した場合、ペアリングモードに遷移し、スイッチ240の押下時間が2秒より短い場合、ディープスリープモードを維持する。また、ディープスリープモードにおいて、生体センサ100は、読み取り機器410が外部端子に接続された場合、データ出力モードに遷移する。
【0047】
ペアリングモードにおいて、生体センサ100は、SoC220の無線通信部に動作確認機器310との間でペアリングを実施させる。ペアリングが完了した場合、生体センサ100は、コマンド待ちモードに遷移する。ペアリング時にエラーが発生した場合、生体センサ100は、エラー処理モードに遷移し、エラー処理を実施する。生体センサ100は、エラー処理モードに遷移中、LED(R)を所定のパターンで点滅させる(例えば、1秒間隔)。
【0048】
コマンド待ちモードにおいて、生体センサ100は、動作確認機器310を介してPC320から波形確認コマンドを受信した場合、動作確認モードに遷移する。コマンド待ちモードにおいて、エラーが発生した場合、生体センサ100は、エラー処理モードに遷移する。
【0049】
動作確認モードにおいて、生体センサ100は、ASIC210に生体情報の取得を指示し、ASIC210が取得した生体情報を順次受信する。生体センサ100は、受信した生体情報を、動作確認機器310を介してPC320に送信する。生体センサ100は、動作確認モード中、動作確認機器310を介してPC320から通信停止の指示を受信した場合、ASIC210に生体情報の取得を停止させ、コマンド待ちモードに戻る。動作確認モードにおいて、エラーが発生した場合、生体センサ100は、エラー処理モードに遷移する。
【0050】
また、動作確認モード中、生体センサ100は、動作確認機器310を介してPC320から記録開始コマンドを受信した場合、生体情報記録モードに遷移する。動作確認モードから生体情報記録モードに遷移する場合、例えば、ASIC210による生体情報の取得は継続される。なお、ペアリングモード、コマンド待ちモード、動作確認モードおよびエラー処理モードにおいて、スイッチ240が長押しされた場合(例えば、10秒)、動作モードは、ディープスリープモードに戻る。
【0051】
生体情報記録モードにおいて、生体センサ100は、ASIC210から受信する生体情報をフラッシュメモリ230に順次書き込む。また、生体情報記録モード中にスイッチが押下された場合、生体センサ100は、スイッチ240がオフ状態になるまでイベント記録モードに遷移する。イベント記録モードでは、生体センサ100は、ASIC210から受信する生体情報と、時間情報とをフラッシュメモリ230に順次書き込む。すなわち、イベント記録モードの動作は、生体情報記録モードの動作と重複して実施される。
【0052】
生体情報記録モードにおいて、所定の設定時間が経過した場合(例えば、24時間)、生体センサ100は、ASIC210に生体情報の取得の停止を指示し、データ出力待ちモードに遷移する。データ出力待ちモードにおいて、生体センサ100は、読み取り機器410が外部端子131に接続されるのを待つ。読み取り機器410が外部端子131に接続された場合、生体センサ100は、データ出力モードに遷移する。データ出力モードでは、読み取り機器410が、外部端子131を介してフラッシュメモリ230にアクセスし、フラッシュメモリ230に記憶された生体情報および時間情報等を読み出す。データ出力待ちモードおよびデータ出力モードにおいて、スイッチ240が長押しされた場合(例えば、5秒)、動作モードは、初期化モードに戻り、初期設定が実施される。
【0053】
図4に示すように、生体センサ100は、スイッチ240の押下時間とスイッチ240が押下されたときの動作モードとに応じて、動作モードを他の様々な動作モードに遷移させることができる。このため、上述したように、1つのスイッチ240により複数のイベントを検出可能なソフトスイッチを実現することができる。この結果、生体センサ100にスイッチ240を1つのみ搭載すればよいため、生体センサ100を小型化でき、生体センサ100のコストを削減することができる。
【0054】
以上、図1から図4に示した実施形態では、生体センサ100の各要素を、フレキシブル基板110を使用して一体形成することで、別々の部品を組み合わせて生体センサ100を組み立てる場合に比べて、生体センサ100を簡易な構造にすることができる。これにより、生体センサ100の製造コストおよび組み立てコストを削減することができる。
【0055】
フレキシブル基板110を使用して生体センサ100を一体形成することで、被検者Pに貼り付けられた生体センサ100を、被検者Pの体動による体表面の変形に追従して変形させることができる。これにより、フレキシブル基板110の撓みによる配線パターンの断線等の不具合を防止することができる。また、被検者Pに接着された電極132、133が屈曲により体表面から剥がれる可能性を低くすることができ、生体センサ100の装着中の違和感を軽減することができる。
【0056】
パッド部123、125に印加される静電気による電流がアンテナパターン136に流れることを防止でき、アンテナパターン136の破損を防止できる。また、アンテナパターン136を介して電流が部品搭載部126に侵入することを防止でき、部品搭載部126に搭載されるSoC220等の電子部品の静電破壊を防止することができる。
【0057】
バッテリ装着部127をフレキシブル基板110により一体形成できるため、生体センサ100を簡易な構造にでき、製造コストを削減できる。また、生体センサ100の厚さを小さくすることができるため、被検者Pに貼り付けたときの突出高さを最小限にできる。さらに、部品搭載部126への搭載部品以外は、導電パターンで形成できるため、製造コストおよび組み立てコストを低減することができる。
【0058】
負電極パターン135の形状は、バッテリ200の負極端子の円形形状に合わせて形成される。このため、バッテリ200の負極端子を負電極パターン135に合わせて貼り付けたとき、バッテリ200の負極端子の周囲が負電極パターン135の周囲からはみ出ることを抑止することができる。したがって、生体センサ100が貼付された被検者Pの姿勢がどのように変化しても、負電極パターン135が、バッテリ200の側面とショートすることを防止することができる。
【0059】
また、バッテリ200は、導電性の粘着剤を介して正電極パターン134および負電極パターン135に面で接着される。これにより、例えば、板ばね等の端子を介してバッテリ200をバッテリ装着部127に装着する場合に比べて、接触抵抗を下げることができるとともに、バッテリ200がバッテリ装着部127から外れることを防止することができる。
【0060】
さらに、フレキシブル基板110に一体形成されたバッテリ装着部127にバッテリ200を挟み込んで装着することで、フレキシブル基板110と別体のバッテリホルダー等を用いる場合に比べて、生体センサ100の厚さを小さくすることができる。これにより、生体センサ100を被検者Pに貼り付けた場合に、被検者Pの体表からの突出高さを最小限にすることができる。この結果、生体センサ100を装着した被検者Pが感じる違和感を最小限にすることができる。
【0061】
切り込み128により、生体センサ100の被検者Pへの装着中に、体動による生体表面の変形に追従して本体部121を切り込み128の周囲で撓ませることができ、生体センサ100を装着中の違和感を軽減することができる。生体表面の変形により本体部121に掛かる応力を、切り込み128の周囲が撓むことにより逃がすことができ、部品搭載部126に応力が掛かることを防止することができる。これにより、部品搭載部126の配線パターン等の破損を防止することができる。
【0062】
板部材260の剛性により、部品搭載部126の撓みを軽減でき、部品搭載部126の配線パターンの破損を防止することができる。スイッチ240が押下されたときの応力が部品搭載部126に端部に掛かるため、部品搭載部126の撓みを軽減することができる。
【0063】
以上、各実施形態に基づき本発明の説明を行ってきたが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、これらの点に関しては、本発明の主旨をそこなわない範囲で変更することができる。
【0064】
本出願は、2020年3月30日に日本国特許庁に出願した特願2020-059654号に基づく優先権を主張し、前記出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【符号の説明】
【0065】
100 生体センサ
110 フレキシブル基板
120 筐体
121 本体部
122 くびれ部
123 パッド部
124 くびれ部
125 パッド部
126 部品搭載部
127 バッテリ装着部
127a、127b パッド部
127c くびれ部
128 切り込み
131 外部端子
132、133 電極パターン
134 正電極パターン
135 負電極パターン
136 アンテナパターン
200 バッテリ
210 ASIC
220 SoC
230 フラッシュメモリ
240 スイッチ
250 LED
260 板部材
310 動作確認機器
320 PC
410 読み取り機器
420 PC
P 被検者
SYS 生体センサシステム
図1
図2
図3
図4