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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】排気浄化装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20220613BHJP
   F01N 13/00 20100101ALI20220613BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
F01N3/08 B
F01N13/00 Z
F01N3/24 N
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018013159
(22)【出願日】2018-01-30
(65)【公開番号】P2019132149
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】303002158
【氏名又は名称】三菱ふそうトラック・バス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】大賀 英明
(72)【発明者】
【氏名】片渕 雅之
(72)【発明者】
【氏名】昼間 栄一
【審査官】沼生 泰伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-086816(JP,A)
【文献】特開2009-114910(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0076425(US,A1)
【文献】特開2017-145803(JP,A)
【文献】特開2009-091984(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102016004333(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0237998(US,A1)
【文献】特開2016-217187(JP,A)
【文献】特開2016-217337(JP,A)
【文献】特開2016-186291(JP,A)
【文献】特開2017-180276(JP,A)
【文献】特開2009-027785(JP,A)
【文献】特開2000-302061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00
F01N 3/02
F01N 3/04- 3/38
F01N 9/00-11/00
F01N 1/00- 1/24
F01N 5/00- 5/04
F01N 13/00-99/00
B01D 53/73
B01D 53/86-53/90
B01D 53/94-53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたエンジンの排気が内部を流通する排気管と、
前記排気管内に排気浄化用の添加剤を噴射するインジェクタと、を備え、
前記排気管は、前記インジェクタが取り付けられるボス部を有し、
前記ボス部は、前記排気管の内側に向かって凹んだ有底筒状であり、前記インジェクタの先端が配置される貫通孔が形成された底部と前記底部の外縁から前記排気管の外側に向かって延設された周壁部とを有し、
前記周壁部の内周面には、重力の方向を下方として、前記インジェクタよりも下方で前記底部から前記周壁部の縁部まで下降傾斜する傾斜部が設けられていて、
前記傾斜部の上縁の少なくとも一部が、水平方向から見て前記インジェクタとラップす
ことを特徴とする、排気浄化装置。
【請求項2】
前記傾斜部が平面状である
ことを特徴とする、請求項1に記載の排気浄化装置
【請求項3】
前記インジェクタは、前記添加剤を供給される基端から前記先端に向かう噴射方向が下降傾斜する姿勢で前記ボス部に取り付けられている
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の排気浄化装置。
【請求項4】
前記周壁部の前記縁部が、斜め上方を向く開口をなす
ことを特徴とする、請求項1~の何れか1項に記載の排気浄化装置。
【請求項5】
前記周壁部の前記縁部が、前記インジェクタと同一軸心上に位置し、
前記周壁部の前記内周面は、前記傾斜部以外の部位が、前記インジェクタから離間して前記インジェクタの軸心と平行に延在する
ことを特徴とする、請求項1~の何れか1項に記載の排気浄化装置。
【請求項6】
前記排気管は、前記底部から前記周壁部と離隔する方向に延在するとともに前記インジェクタから噴射された前記添加剤を前記排気と混合させる筒状の混合部を備え、
前記周壁部及び前記混合部の各外周には、前記排気が流通可能な空間が設けられている
ことを特徴とする、請求項1~の何れか1項に記載の排気浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されたエンジンの排気が流通する排気管と、この排気管のボス部に取り付けられたインジェクタとを備えた排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載されたエンジンの排気を浄化する排気浄化装置として、排気管内に添加剤を噴射するインジェクタを備えたものが知られている。例えば、インジェクタにより排気管内に尿素水を噴射し、この尿素水の熱分解によって生成されるアンモニア(NH3)を利用して、排気中の窒素酸化物(NOx)を窒素(N2)に還元するものが普及している。
【0003】
ところで、前述したようなインジェクタが排気管の外側に突出して設けられると、インジェクタと排気管の近傍に配置される他の機器との干渉が問題となりうる。そこで、排気管においてインジェクタが取り付けられるボス部を、排気管の内側に向けて凹ませた形状とすることが提案されている(例えば特許文献1参照)。このようにボス部を凹ませれば、インジェクタの突出量を低減しうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-91984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述したようにボス部を凹ませた構成では、排気浄化装置の搭載角度によってはボス部が下方に向かって窪む容器状となることから、ボス部内に雨水や泥水等(以下、単に「水」という)が溜まる可能性がある。ボス部内に水が溜まった場合には、インジェクタと水とが接触する頻度が高くなるため、改善の余地がある。
【0006】
本件の排気浄化装置は、前述したような課題に鑑み創案されたものであり、排気管においてインジェクタが取り付けられるボス部の排水性を向上させることを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)ここで開示する排気浄化装置は、車両に搭載されたエンジンの排気が内部を流通する排気管と、前記排気管内に排気浄化用の添加剤を噴射するインジェクタと、を備えている。前記排気管は、前記インジェクタが取り付けられるボス部を有する。前記ボス部は、前記排気管の内側に向かって凹んだ有底筒状であり、前記インジェクタの先端が配置される貫通孔が形成された底部と前記底部の外縁から前記排気管の外側に向かって延設された周壁部とを有する。前記周壁部の内周面には、前記インジェクタよりも下方で前記底部から前記周壁部の縁部まで下降傾斜する傾斜部が設けられている。なお、ここでいう「下方」とは、重力の方向である。また、ここでいう「下降傾斜する」とは、水平方向に対して下る方向に傾くことを意味する。
【0008】
(2)前記傾斜部が平面状であることが好ましい。
(3)前記傾斜部の上縁の少なくとも一部が、水平方向から見て前記インジェクタとラップすることが好ましい。
(4)前記インジェクタは、前記添加剤を供給される基端から前記先端に向かう噴射方向が下降傾斜する姿勢で前記ボス部に取り付けられていることが好ましい。
【0009】
(5)前記周壁部の前記縁部が、斜め上方を向く開口をなすことが好ましい。
(6)前記周壁部の前記縁部が、前記インジェクタと同一軸心上に位置し、前記周壁部の前記内周面は、前記傾斜部以外の部位が、前記インジェクタから離間して前記インジェクタの軸心と平行に延在することが好ましい。
【0010】
(7)前記排気管は、前記底部から前記周壁部と離隔する方向に延在するとともに前記インジェクタから噴射された前記添加剤を前記排気と混合させる筒状の混合部を備え、前記周壁部及び前記混合部の各外周には、前記排気が流通可能な空間が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
開示の排気浄化装置によれば、排気管においてインジェクタが取り付けられるボス部の排水性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る排気浄化装置の上面図である。
図2図1の排気浄化装置における要部の断面図(図1のA-A矢視断面図)である。
図3図1の排気浄化装置をインジェクタの噴射方向に沿って見た図(図2のB1矢視図)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照して、実施形態としての排気浄化装置について説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0014】
[1.構成]
[1-1.全体構成]
本実施形態に係る排気浄化装置1は、エンジンを搭載した車両に設けられ、このエンジンの排気を浄化するものである。本実施形態では、排気浄化装置1がディーゼルエンジンの排気を浄化する場合について説明する。以下の説明では、排気浄化装置1が適用された車両を基準にして、前後方向及び左右方向を定める。また、重力が作用する方向を下方とし、この逆方向を上方とする。なお、排気浄化装置1が適用された車両は水平な路面上にあるものとする。
【0015】
図1に示すように、排気浄化装置1は、車両に搭載されたエンジンの排気が流通する排気管2と、排気管2内に添加剤を噴射するインジェクタ3とを備えている。インジェクタ3は、排気管2に設けられたボス部4に取り付けられている。以下、排気管2,インジェクタ3,ボス部4について順に説明する。
【0016】
[1-2.排気管]
排気管2は、エンジンの気筒から車両の外部へと排気を導くためのものである。ここでは、排気の流れ方向を基準として上流及び下流を定める。排気管2は、前段酸化触媒51及びDPF(Diesel Particulate Filter)52が設けられた第一ユニット10と、SCR(Selective Catalytic Reduction)53及び後段酸化触媒54が設けられた第二ユニット20とを含んで構成される。本実施形態では、第一ユニット10が第二ユニット20の左方に隣接して配置される場合を例示する。また、第一ユニット10の左方には、前後方向に延びるプロペラシャフト(図示略)が隣接して配置される。
【0017】
第一ユニット10は、第二ユニット20の直上流に設けられる。第一ユニット10は、前段酸化触媒51に排気を送り込む第一入口部11と、前段酸化触媒51を収容する前段ケース部12と、DPF52を収容するDPFケース部13と、DPF52を通過した排気を受ける第一出口部14と、排気に乱流を生じさせる混合部15とで構成される。
【0018】
第一入口部11,前段ケース部12,DPFケース部13及び混合部15は何れも、両端の開口が互いに逆方向を向く略円筒状に形成される。一方、第一出口部14は、下流側の端部が略平板状の端壁部14aで塞がれた略有底円筒状に形成される。第一入口部11,前段ケース部12,DPFケース部13及び第一出口部14は、何れも軸心が前後方向に沿う姿勢とされ、前方から後方に向かってこの順に配置される。
【0019】
これに対し、混合部15は、軸心が左右方向に沿う姿勢とされ、その左側の部分が第一出口部14に入り込んだ状態で配置される。混合部15のうち、第一出口部14内に配置される部分には、排気を混合部15内に取り入れるための複数の孔部15hが形成される。混合部15は、孔部15hから流入した排気と、インジェクタ3から噴射された添加剤との混合を促進する機能をもつ。
【0020】
第二ユニット20は、SCR53に排気を送り込む第二入口部21と、SCR53及び後段酸化触媒54を収容するSCRケース部22と、SCR53及び後段酸化触媒54を通過した排気を下流側へ送る第二出口部23とで構成される。第二入口部21及び第二下口部23は何れも、緩やかに湾曲した略円筒状に形成される。第二入口部21の上流端は、混合部15の下流端に接続される。
【0021】
SCRケース部22は、SCR53及び後段酸化触媒54を収容する部位が略円筒状に形成され、その軸心が前後方向に沿う姿勢とされる。第二入口部21,SCRケース部22及び第二出口部23は、後方から前方に向かってこの順に配置される。なお、SCRケース部22内では、SCR53が後段酸化触媒54よりも上流側に配置される。
【0022】
エンジンの排気は、第一入口部11を通って前段ケース部12に流入し、前段酸化触媒51を通過した後にDPFケース部13内のDPF52を通過して第一出口部14に流れる。そして、この排気は、混合部15の孔部15hから混合部15内に流れ、インジェクタ3から噴射された添加剤と混ざり合いながら第二入口部21に流れる。このように、排気は、第一出口部14の内部で混合部15に流れ込むことで、その流れ方向が後方へ向かう方向から右方へ向かう方向へと略90°変更されて、第二入口部21へと到達する。続いて、この排気は、SCRケース部22に流入し、SCR53及び後段酸化触媒54を順に通過した後に第二出口部23から下流側へと流れる。
【0023】
ここで、第一出口部14の詳細な構成について説明する。
本実施形態の第一出口部14は、その内側に向かって凹んだ凹部14bと、凹部14bから更に内側に向かって凹んだボス部4とを有する。本実施形態では、凹部14b及びボス部4が、第一出口部14の左側の部位に形成されている場合を例示する。すなわち、凹部14b及びボス部4は何れも、第一出口部14において、プロペラシャフトから離隔する方向(右方)に向かって凹んだ部位である。
【0024】
凹部14b及びボス部4は、インジェクタ3の突出量(第一ユニット10の左側面から左側へ突出する長さ)を低減する機能をもつ。具体的には、凹部14b及びボス部4のそれぞれが凹むことによって形成される空間にインジェクタ3が配置されることで、インジェクタ3の左方への突出量が低減され、インジェクタ3とプロペラシャフトとの干渉が抑制される。
【0025】
第一出口部14は、ボス部4を除く部分が二重の構造とされている。具体的には図2に示すように、第一出口部14は、内壁材41と、内壁材41よりも一回り大きく形成されて内壁材41の外側に配置された外壁材42とを有する。内壁材41及び外壁材42は何れも、前述した凹部14bを構成するように略筒状に形成されている。
【0026】
内壁材41は、ボス部4が配置される空間(孔部)を囲む環状の第一縁部43と、混合部15が配置される空間(孔部)を囲む環状の第二縁部44とを有する。第一縁部43にはボス部4が固定され、第二縁部44には混合部15の外周面が固定される。なお、図示は省略するが、第一出口部14の端壁部14aも同様に、内壁材と外壁材とで二重の構造とされている。
【0027】
[1-3.インジェクタ]
図2に示すように、インジェクタ3は、その基端に設けられた供給孔31に供給される添加剤を、その先端に設けられた噴射孔32から混合部15内に噴射するものである。本実施形態のインジェクタ3は、添加剤の単位時間当たりの噴射量を所定量に調整したうえで、混合部15の軸心C1に沿って添加剤を噴射する。また、本実施形態では、インジェクタ3が圧縮空気を用いない所謂エアレス式のものであるとともに、水冷式の構造をもつ場合について説明する。なお、図2には、インジェクタ3の断面を簡素化して示している。
【0028】
インジェクタ3が噴射する添加剤としては、尿素水,アンモニア水,無水アンモニア(NH3)が挙げられる。インジェクタ3が尿素水を噴射する場合、排気管2内では、尿素水の熱分解によってNH3が生成される。また、インジェクタ3がアンモニア水を噴射する場合、排気管2内では、アンモニア水の加水分解によってNH3が生成される。すなわち、インジェクタ3が尿素水,アンモニア水,無水アンモニアの何れを噴射する場合も、排気管2内ではNH3が排気と混ざり合って流れる。排気と混ざり合ったNH3は、SCR53で還元剤として機能し、排気中の窒素酸化物(NOx)を窒素(N2)に還元する。
【0029】
供給孔31と噴射孔32とは、同一の軸心C2上に設けられる。インジェクタ3は、この軸心C2に沿って添加剤を噴射する。以下、この軸心C2を「インジェクタ3の軸心C2」ともいい、供給孔31から噴射孔32に向かう方向(すなわち、インジェクタ3が添加剤を噴射する方向)を噴射方向Dともいう。
【0030】
インジェクタ3の軸心C2は、インジェクタ3がボス部4に取り付けられた状態で、混合部15の軸心C1上に位置する。言い換えると、インジェクタ3は、混合部15と同一軸心上に位置する(すなわち、インジェクタ3の軸心C2が混合部15の軸心C1と重なる)ように、ボス部4に対して位置決めされる。また、本実施形態のインジェクタ3は、噴射方向Dが水平方向に対して下降傾斜する姿勢でボス部4に取り付けられている。より具体的には、本実施形態の噴射方向Dは、左方から右方に向かって下降傾斜する方向である。なお、インジェクタ3は、ボス部4に取り付けられた状態で、ボス部4よりも第一出口部14の外側(本実施形態では左方)に突出する。
【0031】
図3に示すように、インジェクタ3は、前述した供給孔31及び噴射孔32が形成された噴射部33と、ボルト30が挿通された複数の取付部34と、冷却水が供給又は排出される二つの給排部35と、電力が供給されるコネクタ部36とを備えている。噴射部33は、インジェクタ3の軸心C2上に延在する部位であって、供給孔31側の部分が略円筒状に形成されている。
【0032】
各取付部34は、インジェクタ3の軸心C2と平行に延びる略円筒状に形成される。本実施形態では、三つの取付部34が、噴射方向Dに沿って見て噴射部33のまわりに分散して配置されている場合を例示する。インジェクタ3は、各取付部34に挿通されたボルト30がボス部4に締結されることにより、ボス部4に取り付けられる。
【0033】
各給排部35は、インジェクタ3の軸心C2と交差する方向に延びる略円筒状に形成される。本実施形態の各給排部35は、軸心が第一出口部14の内側に向かって下降傾斜する姿勢とされている。各給排部35には、図示しない管部材(チューブやパイプ等)が接続される。二つの給排部35の一方には、インジェクタ3を冷却するための冷却水(例えばエンジン冷却水)が管部材から供給される。また、この冷却水は、インジェクタ3の内部を流通した後、二つの給排部35の他方から管部材に排出される。
【0034】
コネクタ部36は、図示しない端子を接続可能なソケット状に形成される。インジェクタ3は、コネクタ部36に供給された電力により作動する。なお、本実施形態では、各給排部35が噴射部33の後方に配置され、コネクタ部36が噴射部33の前方に配置される場合を例示する。
【0035】
[1-4.ボス部]
図2及び図3に示すように、ボス部4は、第一出口部14の内側へ向かって凹んだ有底筒状に形成される。本実施形態のボス部4は、鋳造により、第一出口部14の他の部位とは別体で形成されている。ボス部4は、略平板状に形成された底部5と、略円筒状に形成された周壁部6とを有する。
【0036】
図2に示すように、底部5は、その法線が左方から右方に向かって下降傾斜する姿勢で、内壁材41の第一縁部43よりも第一出口部14の内側(右方)に配置される。底部5の外周面は、円柱面状に形成される。底部5の外周面には、混合部15の左端部が例えば溶接により固定される。なお、混合部15は、このように底部5に固定された状態では、底部5から周壁部6と離隔する方向に延在する。
【0037】
底部5には、インジェクタ3の噴射孔32が配置される貫通孔7が形成される。貫通孔7は、底部5の略中心に設けられ、その軸心C3は、底部5の法線と平行に延び、混合部15及びインジェクタ3のそれぞれがボス部4に取り付けられた状態では混合部15及びインジェクタ3の各軸心C1,C2と重なる(一致する)。
【0038】
周壁部6は、底部5の外縁から第一出口部14の外側に向かって延設される。本実施形態の周壁部6は、その縁部6aが斜め上方を向く開口をなす。すなわち、周壁部6の縁部6aがなす開口の軸心は、第一出口部14の外側に向かって上り傾斜している。また、周壁部6の縁部6aの外周面は、円柱面状に形成される。周壁部6の縁部6aの外周面は、内壁材41の第一縁部43に固定される。ボス部4は、このように周壁部6の縁部6aが内壁材41の第一縁部43に固定されることで、第一出口部14の他の部位(ボス部4以外の部位)と一体化される。なお、周壁部6の縁部6aは、周壁部6の端面から内壁材41の第一縁部43が固定される部位までを含む端部を指す。
【0039】
周壁部6は、縁部6aを除く部位が内壁材41と非接触に設けられる。すなわち、ボス部4が内壁材41に固定された状態で、周壁部6の外周には排気が流通可能な空間が設けられる。また、底部5に固定された混合部15の外周にも同様に、排気が流通可能な空間が設けられる。
【0040】
ここで、周壁部6の内周面について詳述する。本実施形態の周壁部6の内周面には、略同一の曲率で形成された曲面状の筒面部8と、水平面Hに対して傾斜する平面状の傾斜部9とが設けられている。傾斜部9は、インジェクタ3よりも下方に設けられる。また、筒面部8は、周壁部6の内周面のうち、傾斜部9以外の部位に相当する。
【0041】
筒面部8は、底部5の外縁から第一出口部14の外側に向かって立設された面である。筒面部8は、インジェクタ3から離間(離隔)して、底部5の法線及び各軸心C1,C2,C3と平行に延在する。また、本実施形態の筒面部8は、混合部15,インジェクタ3,貫通孔7の各軸心C1,C2,C3と同一軸心上に位置する。筒面部8とインジェクタ3との間には、傾斜部9とインジェクタ3との間に比べて大きな隙間Wが確保される。
【0042】
傾斜部9は、インジェクタ3の下方において、底部5の外縁から周壁部6の縁部6aまで下降傾斜する面である。ここでいう「下降傾斜する」とは、水平方向に対して下る方向に傾いていることを意味する。本実施形態の傾斜部9は、底部5から底部5の左側に位置する縁部6aまで延在するため、底部5から左方(第一出口部14の外側)に向かって下る方向に傾いた面である。傾斜部9は、ボス部4内(周壁部6で囲まれる空間)に入り込んだ雨水や泥水等(以下、単に「水」という)をボス部4から排出する機能をもつ。
【0043】
なお、本実施形態の傾斜部9は、前述したように水平面Hに対して上下方向には傾斜しているものの、前後方向には傾斜していない。言い換えると、傾斜部9は、図2に示すように左右方向に延びる鉛直断面では左方に向かって下降傾斜する直線をなすのに対し、前後方向に延びる鉛直断面では水平な直線をなす。
【0044】
本実施形態の傾斜部9は、インジェクタ3の噴射部33よりも下方に設けられている。また、傾斜部9の上縁9aの一部は、水平方向においてインジェクタ3の下端部と並ぶように設けられる。言い換えると、傾斜部9の上縁9aの一部は、水平方向から見て(図2のB2矢視で)インジェクタ3とラップする。ただし、傾斜部9は、インジェクタ3と非接触に設けられる。傾斜部9は、インジェクタ3との間に僅かな隙間が確保されつつも、インジェクタ3に近接して配置されている。
【0045】
図3に示すように、本実施形態の周壁部6の縁部6aは、円形状に形成され、混合部15,インジェクタ3,貫通孔7のそれぞれと同一軸心上に配置されている。すなわち、周壁部6の縁部6aがなす円の中心は、混合部15とインジェクタ3と貫通孔7とのそれぞれの軸心C1,C2,C3上に位置する。
【0046】
[2.作用,効果]
(1)排気浄化装置1によれば、排気管2においてインジェクタ3が取り付けられるボス部4の周壁部6の内周面に、インジェクタ3よりも下方で底部5から縁部6aまで下降傾斜する傾斜部9が設けられている。このため、ボス部4に入り込んだ水を傾斜部9に伝わせて重力により下方へと流すことができる。そして、図3に破線矢印で示すように、この水をボス部4から排出することができる。したがって、ボス部4の排水性(水抜性)を高めることができる。
【0047】
これにより、ボス部4内に水が溜まりにくくなることから、インジェクタ3の劣化を抑制することができる。特に、インジェクタ3が金属(鉄やアルミ等)で形成されている場合、インジェクタ3に水が頻繁に触れると錆の発生を招く虞があるが、前述した傾斜部9が設けられていればボス部4の排水性が向上するため、インジェクタ3における錆の発生を抑えることができる。
【0048】
(2)傾斜部9が平面状であるため、傾斜部9を曲面状とする場合と比べて、周壁部6の成形を容易にすることができる。また、傾斜部9が平面状であれば、傾斜部9上で水がより均等に流れやすくなる(一箇所に集まりにくくなる)ため、ボス部4の排水性をより高めることができる。
【0049】
(3)傾斜部9の上縁9aの一部が水平方向から見てインジェクタ3とラップするため、傾斜部9をインジェクタ3に近づけて配置することができる。これにより、ボス部4のサイズを抑えながら傾斜部9の面積及び傾斜角度を大きく設定することが容易となる。よって、ボス部4のサイズを抑えつつ、その排水性をより高めることができる。
【0050】
(4)インジェクタ3は、噴射方向Dが下降傾斜する姿勢でボス部4に取り付けられているため、インジェクタ3の噴射力に対して重力が抵抗となることを抑制でき、インジェクタ3の噴射効率を高めることができる。一方、インジェクタ3を噴射方向Dが下降傾斜する姿勢とすると、水がインジェクタ3(具体的には、噴射部33)を伝ってボス部4に入り込みやすくなる虞がある。
【0051】
これに対し、排気浄化装置1では、前述したようにボス部4の周壁部6の内周面に傾斜部9が設けられているため、たとえ水がインジェクタ3を伝ってボス部4に入り込んだとしても、この水を傾斜部9に伝わせて重力により下方へと流すことができる。よって、インジェクタ3の噴射効率を高めながら、ボス部4の排水性を向上させることでインジェクタ3の劣化を抑制することができる。
【0052】
また、本実施形態では、インジェクタ3の各給排部35も軸心が第一出口部14の内側に向かって下降傾斜する姿勢とされているため、水が各給排部35を伝ってボス部4に入り込みやすくなる虞がある。これに対し、排気浄化装置1では、前述したように傾斜部9が設けられているため、たとえ水が各給排部35を伝ってボス部4に入り込んだとしても、この水を傾斜部9に伝わせて重力により下方へと流すことができる。よって、ボス部4の排水性を向上させることでインジェクタ3の劣化を抑制することができる。
【0053】
(5)周壁部6の縁部6aが斜め上方を向く開口をなすため、この縁部6aが例えば水平方向あるいは下方を向く開口をなす場合と比べて、インジェクタ3をボス部4に取り付けやすくすることができる。一方、周壁部6の縁部6aがなす開口が斜め上方を向いていると、上方から降ってくる水がこの縁部6aがなす開口を通じてボス部4に入り込みやすくなる虞がある。
【0054】
これに対し、排気浄化装置1では、前述したようにボス部4の周壁部6の内周面に傾斜部9が設けられているため、たとえ水が周壁部6の縁部6aがなす開口を通じてボス部4に入り込んだとしても、この水を傾斜部9に伝わせて重力により下方へと流すことができる。よって、インジェクタ3の取付性を高めながら、ボス部4の排水性を向上させることでインジェクタ3の劣化を抑えることができる。
【0055】
(6)周壁部6の縁部6aが、インジェクタ3と同一軸心上に位置し、筒面部8がインジェクタ3から離間してインジェクタ3の軸心C2と平行に延在するため、傾斜部9とインジェクタ3との間に比べて、筒面部8とインジェクタ3との間に隙間Wを確保しやすくすることができる。言い換えると、周壁部6の内周面のうち、傾斜部9以外の部位を、インジェクタ3と同一軸心上に延在する筒の内面形状とすることで、インジェクタ3に対して傾斜部9よりも筒面部8を離隔させて配置することが容易となる。このため、ボス部4のサイズを大きくしなくても、筒面部8とインジェクタ3と間に放熱用の隙間Wを確保することができる。よって、傾斜部9によりボス部4の排水性を高めつつ、ボス部4のサイズを抑えながらインジェクタ3の放熱性を向上させることができる。
【0056】
(7)排気管2にはボス部4の底部5から周壁部6と離隔する方向に延在する筒状の混合部15が設けられており、周壁部6及び混合部15の各外周には排気が流通可能な空間が設けられているため、周壁部6及び混合部15の各外周に排気を回り込ませることができる。これにより、混合部15に流入する排気に乱流が生じやすくなるとともに、混合部15の全周から混合部15内に排気を流入させることができる。よって、インジェクタ3から噴射された添加剤と排気との混合を混合部15内でより促進することができる。したがって、排気浄化性能の向上に寄与することができる。
【0057】
[3.変形例]
傾斜部9は、インジェクタ3よりも下方で底部5から周壁部6の縁部6aまで下降傾斜していればよく、水平面Hに対して前後方向に傾斜した平面状であってもよいし、曲面状であってもよい。また、傾斜部9は、その上縁9aの一部又は全てが水平方向から見てインジェクタ3とラップしていてもよい。傾斜部9の上縁9aの少なくとも一部が水平方向から見てインジェクタ3とラップしていれば、前述したように傾斜部9をインジェクタ3に近づけて配置でき、ボス部4のサイズを抑えながら傾斜部9の面積及び傾斜角度を大きく設定することが容易となる。
【0058】
ボス部4の周壁部6は、角筒状であってもよい。また、周壁部6の外周面の形状は特に限定されない。周壁部6は、例えば、一様な厚みとなるようにその外周面が内周面に対応した形状とされてもよい。さらに、周壁部6の縁部6aがなす開口は、斜め上方以外を向いていてもよい。
【0059】
前述したインジェクタ3の構成,配置は一例である。インジェクタ3は、圧縮空気を用いて添加剤を噴射する方式のものであってもよいし、水冷式の構造が省略されてもよい。また、インジェクタ3は、その噴射方向Dが下降傾斜する姿勢とされてなくてもよい。
前述した前段酸化触媒51,DPF52,SCR53及び後段酸化触媒54は、排気浄化装置1で浄化する排気の成分に応じて適宜設けられればよく、これらの一部が省略されてもよい。また、排気管2内には、これら以外の触媒やフィルタが更に設けられてもよい。
【0060】
なお、インジェクタ3の下流に酸化触媒及びフィルタを設けるとともに、インジェクタ3によって噴射する添加剤として未燃燃料を採用してもよい。この場合、インジェクタ3から噴射された未燃燃料が酸化触媒において酸化することで排気温度が上昇するため、フィルタに捕集された排気中のPM(Particulate Matter;粒子状物質)を燃焼させることができる。よって、排気の浄化を促進することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 排気浄化装置
2 排気管
3 インジェクタ
4 ボス部
5 底部
6 周壁部
6a 縁部
7 貫通孔
8 筒面部
9 傾斜部
9a 上縁
10 第一ユニット
11 第一入口部
12 前段ケース部
13 DPFケース部
14 第一出口部
14a 端壁部
14b 凹部
15 混合部
15h 孔部
20 第二ユニット
21 第二入口部
22 SCRケース部
23 第二出口部
30 ボルト
31 供給孔
32 噴射孔
33 噴射部
34 取付部
35 給排部
36 コネクタ部
41 内壁材
42 外壁材
43 第一縁部
44 第二縁部
51 前段酸化触媒
52 DPF
53 SCR
54 後段酸化触媒
C1 混合部15の軸心
C2 インジェクタ3の軸心
C3 貫通孔7の軸心
D 噴射方向
H 水平面
W 隙間
図1
図2
図3