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特許7086338担体粉末及びその製造方法、担持金属触媒及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】担体粉末及びその製造方法、担持金属触媒及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/89 20060101AFI20220613BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20220613BHJP
   B01J 35/08 20060101ALI20220613BHJP
   B01J 37/16 20060101ALI20220613BHJP
   B01J 37/00 20060101ALI20220613BHJP
   B01J 23/652 20060101ALI20220613BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20220613BHJP
   H01M 4/90 20060101ALI20220613BHJP
   H01M 4/92 20060101ALI20220613BHJP
   H01M 4/88 20060101ALI20220613BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20220613BHJP
【FI】
B01J23/89 M
B01J37/08
B01J35/08 Z
B01J37/16
B01J37/00 F
B01J23/652 M
H01M4/86 M
H01M4/90 M
H01M4/92
H01M4/88 K
H01M8/10 101
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019532533
(86)(22)【出願日】2018-07-18
(86)【国際出願番号】 JP2018026888
(87)【国際公開番号】W WO2019021904
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-05-28
(31)【優先権主張番号】P 2017143567
(32)【優先日】2017-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 固体高分子形燃料電池利用高度化技術開発事業/普及拡大化基盤技術開発/セルスタックに関わる材料コンセプト創出(高出力・高耐久・高効率燃料電池材料のコンセプト創出)委託研究,産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 克良
(72)【発明者】
【氏名】内田 誠
(72)【発明者】
【氏名】飯山 明裕
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/203679(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/065471(WO,A1)
【文献】特開平10-174864(JP,A)
【文献】特開2017-042759(JP,A)
【文献】特開2017-157353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
H01M 4/86-4/98
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体粉末と、前記担体粉末に担持された金属微粒子とを備える担持金属触媒であって、
前記担体粉末は、担体微粒子の集合体であり、
前記担体微粒子は、複数の結晶子が鎖状に融着結合されて構成された鎖状部を備え、
前記担体微粒子は、酸化チタンを含み、
前記担体粉末は、前記酸化チタンのアナタース相/ルチル相の比が0.2以下であり、
前記金属微粒子は、コアと、これを被覆するスキン層を備え、
前記コアは、白金と遷移金属の合金を含み、
前記スキン層は、白金であり、
熱処理に伴って前記担体微粒子のTi原子が金属微粒子に移動することによって、前記スキン層よりも前記コアにチタンが多く固溶されている、担持金属触媒。
【請求項4】
前記鎖状部は、複数の分枝と、複数の前記分枝の間に存在する孔と、空隙とを備え、
前記空隙は、前記複数の分枝と前記孔とによって取り囲まれる、請求項1~請求項3の何れか1つに記載の担持金属触媒。
【請求項13】
チタン化合物を1000℃以上の高温領域で熱分解反応させて担体微粒子の集合体である担体粉末を生成する担体粉末生成工程を備え、
前記担体粉末生成工程は、筒状のガス貯留部に設けられたスリットを通じて前記高温領域の周囲に冷却ガスを供給しながら行われ、
前記ガス貯留部は、前記ガス貯留部内に前記冷却ガスを導入する冷却ガス導入部を備え、
前記冷却ガス導入部は、前記冷却ガス導入部を通じて前記ガス貯留部内に導入された前記冷却ガスが前記ガス貯留部内で前記ガス貯留部の内周壁に沿って旋回するように構成される、担体粉末の製造方法。
【請求項17】
前記チタン化合物は、原料溶液中に含まれ、
前記原料溶液は、ミスト化されて前記火炎中に導入される、請求項14~請求項16の何れか1つに記載の担体粉末の製造方法。
【請求項19】
前記担体粉末に金属微粒子を担持させる担持工程を備え、
前記担持工程は、吸着工程と、熱処理工程を備え、
前記吸着工程では、前記担体粉末に金属コロイド粒子を吸着させ、
前記熱処理工程では、前記吸着工程の後に、800℃以上で熱処理を行って前記金属コロイド粒子を前記金属微粒子に変化させ、
前記担体粉末は、請求項13~請求項18の何れか1つに記載の方法によって形成される、担持金属触媒の製造方法。
【請求項20】
前記金属コロイド粒子は、貴金属と遷移金属の合金のコロイド粒子を含み、
前記熱処理工程によって、前記コロイド粒子中の前記貴金属の一部が表面に移動して前記金属微粒子に前記貴金属のスキン層が形成される、請求項19に記載の担持金属触媒の製造方法。
【請求項22】
請求項1~請求項9の何れか1つに記載の担持金属触媒を用いた燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、担体粉末及びその製造方法、担持金属触媒及びその製造方法に関する。本発明の担持金属触媒は、燃料電池のカソード電極触媒として好適に用いられる。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、連鎖状または房状のストラクチャ構造を形成して金属酸化物一次粒子融合体が固体高分子形燃料電池の電極触媒用の担体として優れている点が開示されている。特許文献1の実施例3では、オクチル酸チタン及びオクチル酸ニオブをミネラルターペンに溶解させた溶液をミストにして、化学炎中に導入することによって、ニオブでドープされた酸化チタンが生成される点が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2011/065471
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の実施例3の酸化チタンのXRDパターンが特許文献1の図13に開示されており、酸化チタンがほぼアナタース相のみで構成されていることが分かる。アナタース相は、ルチル相に比べて、熱力学的に不安定であったり、導電性が低かったりするという課題を有するが、特許文献1に開示されている製造方法では、ほぼアナタース相のみで構成される酸化チタンしか生成されず、ルチル相が主相である酸化チタンを製造することはできない。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、熱力学的に安定であり且つ導電性を付与しやすい担体粉末を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、担体微粒子の集合体である担体粉末であって、前記担体微粒子は、複数の結晶子が鎖状に融着結合されて構成された鎖状部を備え、前記担体微粒子は、酸化チタンを含み、前記担体粉末は、前記酸化チタンのアナタース相/ルチル相の比が0.2以下である、担体粉末が提供される。
【0007】
本発明の担体粉末は、担体微粒子の集合体であり、担体粉末に含まれる酸化チタンは、アナタース相/ルチル相の比が0.2以下である。このため、本発明の担体粉末は、熱力学的に安定しており、且つ導電性を付与しやすい。また、本発明の担体微粒子は、複数の結晶子が鎖状に融着結合されて構成された鎖状部を備えているので、本発明の担体粉末は、大きな比表面積を有する。このため、本発明の担体微粒子は、担持金属触媒用の担体として好適に利用することができる。また、このような担持金属触媒を用いることによって、安価で高耐久性と触媒活性に優れ長期安定作動と広汎な普及を可能とする固体高分子形燃料電池を作製することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】担持金属触媒100の触媒構造のモデル図である。
図2図1から担体微粒子150を抜き出した図である。
図3図1における担体微粒子150の分枝160の状態を示す図である。
図4図1におけるガス拡散径路を示す図である。
図5】担体粉末に含まれる空隙110の分布の一例を示す。
図6図6A及びCは、それぞれ、実施例1及び2の担持金属触媒100のTEM画像であり、図6B及びDは、それぞれ、実施例1及び2の担持金属触媒100の金属微粒子130の粒子径分布を示す。
図7】燃料電池のモデル図を示す。
図8】担体粉末を製造するための製造装置1の、バーナー2の中央を通る断面図である。
図9図8中の領域Xの拡大図である。
図10図8中のA-A断面図である。
図11】図図10中の領域Yの拡大図である。
図12】金属微粒子130の担持及び還元工程のフローを示す。
図13】実施例1の担体粉末、実施例1及び2の担持金属触媒100についてXRDパターンを示す。
図14】加速耐久試験でのサイクル数と電気化学的活性表面積(ECA)の関係を示すグラフである。
図15図15Aは、加速耐久試験後の実施例1の担持金属触媒100のTEM画像であり、図15Bは、加速耐久試験前後の実施例1の担持金属触媒100の金属微粒子130の粒子径分布を示す。
図16図16Aは、実施例1の担持金属触媒100の拡大図であり、図16Bは、図16A中の矢印Xに沿って分析したSTEM-EDXのライン分析の結果を示すグラフである。
図17】ルチル相/アナタース相の割合(R/A Ratio)と導電率の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0010】
1.担持金属触媒100
図1図4に示すように、担持金属触媒100は、複数の結晶子120が鎖状に融着結合されて構成された鎖状部を有する担体微粒子150の集合体である担体粉末と、担体粉末に担持される金属微粒子130とを備える。担体粉末に含まれる酸化チタンは、アナタース相/ルチル相の比が0.2以下である。以下、各構成について説明する。
【0011】
1-1.担体微粒子150及び担体粉末
図1に示すように、担体微粒子150には、その分枝160及びその複数の分枝間に存在する孔で取り囲まれた立体的な空隙110が形成されている。分枝160は、担体微粒子150を構成する複数の結晶子120が鎖状に融着結合されて構成された鎖状部が枝として分かれた部分である。酸化剤である酸素及びまたは燃料である水素を拡散させ、担持金属触媒100上へ輸送するガス拡散経路を上記した担体微粒子150の立体配置により形成されている。
【0012】
図1図3に担持金属触媒の構造モデルの例として示したように、担体微粒子150は、分枝同士がつながる点(分岐点、以下単に分岐と称す場合もあり)b1、b2、b5、b4、b1で囲まれた第1の孔部、分岐点b1、b2、b3、b1で囲まれた第2の孔部、分岐点b2、b3、b6、b7、b5、b2で囲まれた第3の孔部、分岐点b1、b3、b6、b7、b5、b4、b1で囲まれた第4の孔部の計4つの孔部を備える。ここで各孔部(第1~第4の孔部)の分岐点で囲まれた面を孔面とすると、空隙110はこれら4つの孔面で囲まれる立体的空間である。担体微粒子150は、このように複数の分枝同士がつながる複数の分岐点で囲まれる孔部を複数備える。そして複数の孔部によって囲まれる立体的空間(空隙)が互いに連続して備えられた構造となっている。したがってこの空隙が酸素や水素などのガス拡散径路(ガス拡散パス)となる。図4は、図1におけるガス拡散径路を示す図である。図4では、空隙110のガス拡散径路(ガス拡散パス)の一例を示している。酸化剤(ガス)、燃料ガス等の流れ(ガス拡散径路)170は図4に示すように空隙110を介して所望の方向に流れることができる。つまりこの空隙110がガス拡散径路となる。
【0013】
なお、担体微粒子150の簡素な構成としては、単に1つの孔部(たとえば分岐点b1、b2、b5、b4、b1で囲まれた第1の孔部)を備えるようにしてもよい。この場合は、結晶子120の結晶子粒の厚みの分の空隙110を備えることになる。さらに簡素な構成としては、担体微粒子150は1つ以上の分枝を持つものであってもよい。この場合であっても担体微粒子150同士間に分枝があるために密着できずその間に空隙110を備えることができる。
【0014】
なお、上記で孔部と記したところは、閉曲線(クローズドループ)と言い換えてもよい。あるいは、複数の上述した分岐点(たとえば分岐点b1~b7)を含む閉曲面に囲まれた空隙110を有すると言い換えることもできる。分岐点b1~b7としては、分枝同士がつながる担体微粒子150を構成する金属酸化物の結晶子の重心としてとらえることもできるし、あるいはこの結晶子上の任意の1点としてもよい。
【0015】
結晶子120のサイズは、1~30nmが好ましく、5~15nmがさらに好ましい。このサイズは、具体的には例えば、1、5、10、15、20、25、30nmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。結晶子120のサイズ(結晶子径)は、XRDパターンのピークの半値幅からシェラー式に基づいて求めることができる。
【0016】
担体微粒子150の集合体は、粉末状である。このような集合体を「担体粉末」と称する。
【0017】
担体粉末中の担体微粒子150の平均粒子径は、0.1μm~4μmであり、0.5μm~2μmが好ましい。担体微粒子150の平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置によって測定することができる。
【0018】
担体粉末の比表面積は、12m/g以上が好ましく、25m/g以上がさらに好ましい。この比表面積は、例えば12~100m/gであり、具体的には例えば、12、15、20、25、30、35、40、45、50、100m/gであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0019】
担体粉末に含まれる空隙110の分布の一例を図5に示す。空隙110の分布は、水銀ポロシメータを用いて担体粉末の立体的な空隙の容積を測定することによって求めることができる。図5は、測定された容積値と空隙の数とから空隙1つあたりの容積を求め、求められた容積と同じ容積の球の直径に換算した値(水銀圧入法による球相当径)の積算分布を示している。図5に示すように、担体粉末には、11nm以下の空隙(一次孔)と11nmより大きな空隙(二次孔)が存在するが好ましい。これによって、燃料電池の触媒層におけるガス拡散経路が確保される。
【0020】
担体粉末は、空隙率が50%以上であることが好ましく、60%以上であることがさらに好ましい。空隙率は、例えば50~80%であり、具体的には例えば、50、55、60、65、70、75、80%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。空隙率は、水銀圧入法またはFIB-SEMによって求めることができる。
【0021】
担体粉末は、安息角が50度以下であることが好ましく、45度以下であることがさらに好ましい。この場合、担体粉末は小麦粉と同程度の流動性を有しており、取り扱いが容易である。この安息角は、例えば20~50度であり、具体的には例えば、20、25、30、35、40、45、50度であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。安息角は、落下体積法によって求めることができる。
【0022】
担体微粒子150は、チタンとは原子価の異なる元素がドープされていることが好ましい。チタンとは原子価の異なる元素としては、イットリウムを代表とする希土類元素、ニオブ、タンタルを代表とする5属元素、タングステンを代表とする6属元素およびアンチモンを代表とする15属元素の中から少なくとも1つが選ばれる。このような元素でドーピングすることによって担体微粒子に対して導電性を付与することができる。このような元素のうち、ニオブ、タンタルを代表とする5属元素、又はタングステンを代表とする6属元素が好ましく、タンタル又はタングステンが特に好ましい。タンタル又はタングステンの2つは固溶限が大きいため特に好ましい。ところで、酸化チタンのアナタース相はノンドープの場合には500℃程度の熱処理でルチル相に変化させることができるが、ドーパントの固溶置換に伴って相変化温度が1000℃以上にまで上昇することがある。このため、担体微粒子150の酸化チタンがドーパントを含む場合には、後述する「3.担体粉末の製造方法」で説明した方法によって担体微粒子150及び担体粉末を製造する意義が特に大きい。
【0023】
担体粉末の導電率は、0.001S/cm以上であることが好ましく、0.01S/cm以上であることがさらに好ましい。この導電率は、例えば0.01~1000S/cmであり、具体的には例えば、0.01、0.1、1、10、100、1000S/cmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。導電率は、JIS規格(JIS K 7194)に基づいて測定することができる。
【0024】
担体微粒子150は、複数の結晶子120が鎖状に融着結合されて構成された鎖状部からなる分枝160を有しており、これ自身が電子を流す性質を備える。担体微粒子150は図1図4に示すように、複数の分枝160を持ち、分枝同士が互いにつながる分岐点(b1~b7)を介して分枝同士がネットワークを組んだ状態となっており、これらの間は電気的に導電性の性質を有することになる。従って図1のP0点から点線で示した担体微粒子150の分枝160は、これ自体が電子伝導径路(電子伝導パス)140を構成している。
【0025】
本実施形態では、担体微粒子150は、酸化チタンを含んでおり、担体微粒子150に含まれる金属酸化物中の酸化チタンの割合は、50mol%以上が好ましい。この割合は、具体的には例えば、50、60、70、80、90、95、100mol%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0026】
担体粉末中の酸化チタンは、アナタース相/ルチル相の比が0.2以下である。この場合、ルチル相の特徴が強く現れることになるので、熱力学的安定性が高まり、且つドーピングしたときに導電性を付与されやくなる。この比は、具体的には例えば、0、0.05、0.1、0.15、0.2であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。この比は、XRDパターンでの(2θ=25.16度のピーク強度)/(2θ=27.24度のピーク強度)によって求めることができる。2θ=25.16度及び27.24度は、それぞれ、アナタース相及びルチル相の存在に起因するピークであるからである。
【0027】
1-2.金属微粒子130
金属微粒子130は、触媒として機能しうる金属又は合金の微粒子である。担体粉末に担持される多数の金属微粒子130の平均粒子径は、1~20nmであることが好ましく、3~10nmであることがさらに好ましい。この平均粒子径は、具体的には例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20nmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。金属微粒子130の平均粒子径が1nm未満であれば、電極反応の進行と共に溶解し、また20nmより大きくなると電気化学的活性表面積が小さくなり所望の電極性能が得られない。金属微粒子130の平均粒子径は、図6A及び図6Cに示すような担持金属触媒100のTEM画像に写っている全ての金属微粒子130の外接円の直径を測定し、その算術平均によって求めることができる。
【0028】
金属微粒子130は、コアと、これを被覆するスキン層を備えることが好ましい。コアは、貴金属と遷移金属の合金を含むことが好ましい。スキン層は、貴金属を含むことが好ましい。貴金属としては、白金が好ましく、遷移元素としてはコバルト(Co)あるいはニッケル(Ni)が好ましく、特にコバルトが好適である。
【0029】
金属微粒子130には、チタンが固溶されていることが好ましく、スキン層よりもコアにチタンが多く固溶されていることが好ましい。このように、コアに多くのチタンが固溶されることによってコアの活性が向上する。
【0030】
金属微粒子130の担持量は、1~50質量%が好ましく、5~25質量%がさらに好ましい。この担持量は、具体的には例えば、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0031】
担持金属触媒100の電気化学的活性表面積は、20m/g以上であることが好ましい。この表面積は、例えば20~200m/gであり、具体的には例えば、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200m/gであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。電気化学的活性表面積は、サイクリックボルタンメトリーによって求めることができる。
【0032】
2.燃料電池200
図7に本発明の燃料電池のモデル図を示す。図7において、燃料電池(燃料電池セル)200は、電解質膜230を挟んでアノード201側の触媒層220A、ガス拡散層210Aとカソード202側の触媒層220K、ガス拡散層210Kがそれぞれ対向するように構成される。アノード側ガス拡散層210A、アノード側触媒層220A、電解質膜230、カソード側触媒層220K、カソード側ガス拡散層210Kがこの順に並ぶ構成である。アノード側の触媒層220Aは、担持金属触媒100を含む。アノード側の触媒層220Aも担持金属触媒100を含んでもよいが、酸化チタンの代わりに酸化スズを含む担持金属触媒を含んでもよい。固体高分子形燃料電池200のアノード201とカソード202の間に負荷203を接続することにより、負荷203に対し電力を出力する。
【0033】
3.担体粉末の製造方法
まず、図8図11を用いて、担体粉末の製造に利用可能な製造装置1について説明する。製造装置1は、バーナー2と、原料供給部3と、反応筒4と、回収器5と、ガス貯留部6を備える。原料供給部3は、外筒13と、原料流通筒23を備える。
【0034】
バーナー2は、筒状であり、原料供給部3は、バーナー2の内部に配置されている。バーナー2と外筒13の間にバーナーガス2aが流通される。バーナーガス2aは、着火により、バーナー2の先端に火炎7を形成するために用いられる。火炎7によって、1000℃以上の高温領域が形成される。バーナーガス2aは、プロパン、メタン、アセチレン、水素もしくは亜酸化窒素等の可燃性ガスを含むことが好ましい。一例では、バーナーガス2aとして、酸素及びプロパンの混合ガスを用いることができる。高温領域の温度は、例えば1000~2000℃であり、具体的には例えば、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000℃であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0035】
原料流通筒23には、担体粉末を生成するための原料溶液23aが流通される。原料溶液23aとしては、チタン化合物を含むものが用いられる。チタン化合物としては、脂肪酸チタンが例示される。脂肪酸の炭素数は、例えば2~20であり、4~15が好ましく、6~12がさらに好ましい。脂肪酸チタンとしては、オクチル酸チタンが好ましい。原料溶液23aには、担体微粒子150をドーピングするための金属化合物を含んでもよい。金属化合物としては、脂肪酸金属(Nb,Ta,Wなど)塩が例示される。脂肪酸の炭素数は、例えば2~20であり、4~15が好ましく、6~12がさらに好ましい。脂肪酸金属塩としては、オクチル酸ニオブ、オクチル酸タンタル、オクチル酸タングステンが好ましい。チタン化合物:金属化合物のモル比は、担体粉末の導電率を高めるべく、適宜決定されるが、例えば、0.8:0.2~0.99:0.01が好ましい。
【0036】
原料溶液23a中において、チタン化合物は、非水溶媒中に溶解又は分散されることが好ましい。非水溶媒としては、ターペンを代表とする有機溶媒が挙げられる。原料溶液23a中に水分が含まれていると、脂肪酸チタンが加水分解されて劣化する場合がある。脂肪酸チタンの加水分解を防ぐべく、原料溶液23aは、水の含有量が100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがさらに好ましい。脂肪酸チタンの加水分解を防ぐことによって酸化チタンのルチル相の割合を高めることができる。
【0037】
外筒13と原料流通筒23の間には、原料溶液23aのミスト化に用いられるミスト化ガス13aが流通される。ミスト化ガス13aと原料溶液23aを原料供給部3の先端から一緒に噴出させると、原料溶液23aがミスト化される。原料溶液23aのミスト23bは、火炎7中に噴霧され、原料溶液23a中のチタン化合物が火炎7中で熱分解反応して結晶子120が鎖状に融着結合されて構成された鎖状部を有する担体微粒子150の集合体である担体粉末が生成される。ミスト化ガス13aは、一例では、酸素である。
【0038】
反応筒4は、回収器5とガス貯留部6の間に設けられている。反応筒4内に火炎7が形成される。回収器5にはフィルタ5aと、ガス排出部5bが設けられている。ガス排出部5bには陰圧が加えられる。このため、回収器5及び反応筒4内にガス排出部5bに向かう気流が生成される。
【0039】
ガス貯留部6は、筒状であり、冷却ガス導入部6aと、スリット6bを備える。冷却ガス導入部6aから冷却ガス6gがガス貯留部6内に導入される。冷却ガス導入部6aは、ガス貯留部6の内周壁6cの接線に沿った方向に向けられているので、冷却ガス導入部6aを通じてガス貯留部6内に導入された冷却ガス6gは、内周壁6cに沿って旋回する。ガス貯留部6の中央にはバーナー挿通孔6dが設けられている。バーナー挿通孔6dにはバーナー2が挿通される。スリット6bは、バーナー挿通孔6dに隣接した位置に、バーナー挿通孔6dを取り囲むように設けられている。このため、バーナー挿通孔6dにバーナー2を挿通させた状態では、スリット6bは、バーナー2を取り囲むように設けられる。ガス貯留部6内の冷却ガス6gは、ガス排出部5bに加えられた陰圧によって駆動されて、スリット6bから反応筒4に向けて排出される。冷却ガス6gは、生成された酸化チタンを冷却可能なものであればよく、不活性ガスが好ましく、例えば空気である。冷却ガス6gの流速は、バーナーガス2aの流速の2倍以上が好ましい。冷却ガス6gの流速の上限は、特に規定されないが、例えば、バーナーガス2aの流速の1000倍である。冷却ガス6gの流速/バーナーガス2aの流速は、例えば2~1000であり、具体的には例えば、2、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、100、200、500、1000であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。なお、本実施形態では、ガス排出部5bに陰圧を加えて冷却ガス6gを流しているが、冷却ガス導入部6aに陽圧を加えて冷却ガス6gを流すようにしてもよい。
【0040】
特許文献1では、ガス貯留部6が設けられておらず、バーナーと反応筒の隙間から外気が反応筒に直接流入している。このために、反応筒内において外気が乱流になって、ミスト,結晶子、及び担体微粒子が撹乱されてしまうために、これらが火炎によって十分加熱されずに、準安定相であるアナタース相の割合が多い酸化チタンが生成されていた。一方、本発明では、スリット6bを通じて火炎7の周囲に冷却ガス6gを供給しているので、冷却ガス6gが層流になって火炎7の周囲を流れる。このために、ミスト23b,結晶子120、及び担体微粒子150が冷却ガス6gによって撹乱されず、火炎7に沿って移動しながら火炎7によって十分に加熱されて反応が進むので、担体微粒子150中の酸化チタンのルチル相の割合が高められる。また、担体微粒子150が火炎7から出た後は担体微粒子150が冷却ガス6gによって即座に冷却されるので、鎖状部を有する構造が維持される。冷却された担体微粒子150は、フィルタ5aによって捕捉されて回収される。
【0041】
本発明では、担体微粒子150の集合体である担体粉末は、製造装置1を用い、バーナー2の先端に火炎7によって1000℃以上の高温領域を形成し、スリット6bを通じて冷却ガス6gを高温領域の周囲に供給しつつ、この高温領域においてチタン化合物を熱分解反応させることによって製造することができる。高温領域は、火炎7以外にも、プラズマなどによって形成してもよい。
【0042】
4.担持金属触媒100の製造方法
担持金属触媒100の製造方法は、担持工程と、還元工程を備える。
【0043】
<担持工程>
担持工程では、担体粉末に金属微粒子130を担持させる。この担持は、逆ミセル法、コロイド法、含浸法などの手法を用いて行うことができる。コロイド法では、担持工程は、吸着工程と、熱処理工程を備える。
【0044】
吸着工程では、担体粉末に金属コロイド粒子を吸着させる。より具体的には、コロイド法で合成した金属コロイド粒子を水溶液中に分散させた分散液を調製し、前記分散液中に金属コロイド粒子を添加及び混合することで、担体粉末表面に前記コロイド粒子を吸着させる。コロイド粒子を吸着させた担体粉末はろ過と乾燥を経て、分散媒と分離することができる。
【0045】
熱処理工程では、吸着工程の後に、800℃以上で熱処理を行って金属コロイド粒子を金属微粒子130に変化させる。この熱処理は、850、900、又は950℃以上で行うことが好ましい。温度の上限は、特に規定されないが、例えば、1500℃である。この温度は、具体的には例えば、850、900、950、1000、1050、1100、1150、1200、1250、1300、1350、1400、1450、1500℃であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0046】
熱処理時間は、例えば0.1~20時間であり、0.5~5時間が好ましい。この時間は、具体的には例えば、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20時間であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0047】
熱処理は、窒素などの不活性ガス雰囲気下や1~4%の水素を含む不活性ガス雰囲気下で行うことができる。
【0048】
このような高温での熱処理工程を行うことによって、(1)担体粉末中のルチル相の割合が増大するという効果、(2)金属微粒子130が担体微粒子150と強固に融着されるという効果と、(3)コロイド粒子が貴金属と遷移金属の合金のコロイド粒子を含む場合、コロイド粒子中の貴金属の一部が表面に移動して金属微粒子130に貴金属のスキン層が形成されるという効果が奏される。
【0049】
上記(3)の効果が奏される原理は明らかになっていないが、熱処理の際に担体微粒子150のTi原子が金属微粒子130に移動して、金属微粒子130中のTi濃度の高まりに伴って、貴金属原子が合金表面に析出するためではないかと推測される。従来技術では、合金のコアと、貴金属のシェルを有するコア-シェル構造を形成するには、多段階の工程が必要であったが、本発明では、800℃以上で熱処理を行うだけで、コア-シェル構造を形成することができる。このため、遷移金属の溶出が抑制可能である。
【0050】
また、通常のカーボン担体を用いた場合には、800℃以上の熱処理を行うと、金属微粒子130の凝集と粗大化が促進されて、高い触媒活性が得られない。一方、本発明では、熱処理の際に金属微粒子130が担体微粒子150と強固に融着されるので、金属微粒子130の凝集が抑制される。このため、高い触媒活性が発揮される。
【0051】
<還元工程>
還元工程では、熱処理工程の後に、金属微粒子130の還元処理が行われる。還元処理は、水素などの還元性ガスを含む還元性雰囲気下で、熱処理を行うことによって行うことができる。
【0052】
この熱処理の温度は、例えば70~300℃であり、100~200℃が好ましい。この温度は、例えば具体的には例えば、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300℃であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0053】
この熱処理の時間は、例えば0.01~20時間であり、0.1~5時間が好ましい。この時間は、具体的には例えば、0.01、0.05、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20時間であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0054】
還元性ガスが水素である場合、その濃度は、例えば0.1~100体積%であり、0.2~10体積%が好ましく、0.5~3体積%がさらに好ましい。この濃度は、具体的には例えば、0.1、0.2、0.5、1、1.5、2、2.5、3、10、100体積%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0055】
担持工程での熱処理後の金属微粒子130は、酸化された状態になっている場合があり、その場合、金属微粒子130が触媒活性を示さない場合がある。この場合、金属微粒子130の還元を行うことによってその触媒活性を高めることができる。
【実施例
【0056】
以下に示す方法で担持金属触媒を製造し、各種評価を行った。
【0057】
1.担持金属触媒100の製造
<実施例1>
(担体粉末の製造)
図8図11に示す製造装置1を用いて、担体粉末の製造を行った。バーナーガス2aとしては、酸素5L/分、プロパンガス1L/分を混合したガスを用い、このガスに着火してバーナー2の先端に1600℃以上の火炎(化学炎)7を形成した。原料溶液23aとしては、オクチル酸チタンおよびオクチル酸タングステンをモル比で0.95:0.05の割合でミネラルスプリットターペンに混合し、溶解させたものを用いた。ミスト化ガス13aとしては、酸素を用いた。9L/分のミスト化ガス13aと、3g/分の原料溶液23aを混合し、スプレーノズル(アトマイザー)である原料供給部3の先端から火炎中心部分に噴霧し、燃焼させ、担体微粒子150の集合体である担体粉末を生成させた。その際、ガス排出部5bを負圧にすることによって、スリット6bから空気を170L/分の流量で吸引することで、生成した担体粉末を回収器5(フィルタ5a付き)に回収した。原料供給部3は、二重管構造(全長322.3mm)からなり外筒13から酸素ガス、原料流通筒23には原料溶液23aが供給され、原料流通筒23先端にはフルイドノズル、エアノズルがあり、そこで、原料溶液23aをミスト23bにした。担体粉末の回収量は60分間の運転で10g以上であった。
【0058】
(金属微粒子130の担持及び還元)
図12の手順に従い、金属微粒子130を担体粉末に担持させた。
【0059】
まず、塩化白金酸六水和物水溶液0.57mLを38mlの超純水に溶解させ、更に炭酸ナトリウム1.76gを加え撹拌した(図12のステップS1)。
【0060】
その溶液を150mlの水で希釈し、NaOHを用いて溶液のpHを5に調整した。その後、過酸化水素を25ml加え、NaOHでpHを5に再調整した。更にCoCl溶液(CoCl (関東化学製)/15mL超純水)を2mL/分で滴下して撹拌した(図12のステップS2)。
【0061】
その分散液に15mLの超純水に0.50gの担体粉末を分散させた分散液を加え(図12のステップS3)、90℃にて3時間撹拌した(図12のステップS4)。室温まで冷却した後、濾過及び超純水及びアルコールでの洗浄を行い、80℃にて一晩乾燥した後、窒素中で950℃で2時間の熱処理行って金属微粒子130を担体粉末に担持させ、その後、1%水素中で150℃で2時間の熱処理を行って金属微粒子130を還元した(図12のステップS5)。以上の工程によって、金属微粒子130が担体粉末に担持された担持金属触媒100が得られた。
【0062】
<実施例2>
1%水素中での熱処理時間を2時間から10分に変更した以外は、実施例1と同様の方法で担持金属触媒100を製造した。
【0063】
<実施例3>
図12のステップS2において、CoCl溶液を添加しなかった以外は、実施例1と同様の方法で担持金属触媒100を製造した。
【0064】
<比較例1>
比較例1として、市販の電極触媒(白金微粒子がカーボン担体に担持された触媒)(型式:TEC10E50E、田中貴金属工業株式会社製)を用いた。
【0065】
2.各種評価
<BET比表面積>
実施例1の担体粉末について、BETによる比表面積を測定したところ、27m/gであった。
【0066】
<XRDパターン>
実施例1の担体粉末、実施例1及び2の担持金属触媒100についてXRDパターンを測定した。その結果を図13に示す。図13に示すように、アナタース相に起因するピークA(2θ=25.16度)とルチル相に起因するピークR(2θ=27.24度)のピーク強度を参照すると、3つのサンプル全てにおいて、アナタース相/ルチル相の比が0.2以下になっていることが分かる。また、実施例1の担体粉末では、アナタース相に起因するピークAがわずかに確認されるのに対し、実施例1及び2の担持金属触媒100では、ピークAは全く確認されなかった。この結果は、金属微粒子130を担持する際の熱処理によってアナタース相がルチル相に変化したことを意味している。
【0067】
<TEM画像による解析>
実施例1及び2の担持金属触媒100についてTEM画像を図6A及び図6Cに示す。また、図6A及び図6Cに示す担持金属触媒100のTEM画像に写っている全ての金属微粒子130の外接円の直径を測定し、その算術平均によって金属微粒子130を算出した。実施例1では、金属微粒子130の平均粒子径が6.9nmであり、標準偏差値が1.9nmであった。一方、実施例2では、平均粒子径が5.75nmであり、標準偏差値が1.3nmであった。実施例3及び比較例1についても同様に平均粒子径を測定した。その結果を表1に示す。
【0068】
<Pt担持量、触媒の電気化学的活性表面積、質量活性、比活性の測定>
実施例1~3及び比較例1について、Pt担持量、触媒の電気化学的活性表面積、質量活性、比活性の測定を行った。これらの測定は、ICP-MS及び回転ディスク電極法によって行った。これらの結果を表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
<加速耐久試験>
実施例1の担持金属触媒100について加速耐久試験を行って、電気化学的活性表面積(ECA)の変化を観察した。加速耐久試験は、回転ディスク電極を用い、燃料電池実用化推進協議会(FCCJ)にて推奨する加速耐久試験法(2011年度版)よって行った。その結果を図14に示す。図14に示すように、5000サイクルの試験を行っても、電気化学的活性表面積がほとんど変化しなかった。
【0071】
図6A図15AのTEM画像の比較、及び図15Bの試験前後の金属微粒子130の粒子径分布を参照すると、加速耐久試験の前後で金属微粒子130の分布がほとんど変化しなかったことが分かる。
【0072】
<Ptスキン層の確認>
図16Aは、実施例1の担持金属触媒100の拡大図であり、図16Bは、図16A中の金属微粒子130について矢印Xに沿って分析したSTEM-EDXのライン分析の結果を示すグラフである。図16Bを参照すると、金属微粒子130の表面に近い部位にはCo及びTiが存在せず、ほぼPtのみで構成されていることが分かる。この結果は、熱処理工程によって金属微粒子130にPtスキン層が形成されたことを示している。また、この結果は、スキン層よりもコアにTiが多く固溶されていることを示している。
【0073】
<ルチル型酸化チタンでは、アナタース型酸化チタンよりも導電率が高くなりやすい点の確認>
図17は、ルチル相/アナタース相の割合(R/A Ratio)と導電率の関係を示すグラフである。ルチル相/アナタース相の割合が異なる酸化チタンは、熱処理温度が変えることによって行った。図17を参照すると、ルチル相の割合の増大に伴って、導電率が上昇することが分かる。
【符号の説明】
【0074】
1:製造装置、2:バーナー、2a:バーナーガス、3:原料供給部、4:反応筒、5:回収器、5a:フィルタ、5b:ガス排出部、6:ガス貯留部、6a:冷却ガス導入部、6b:スリット、6c:内周壁、6d:バーナー挿通孔、6g:冷却ガス、7:火炎、13:外筒、13a:ミスト化ガス、23:原料流通筒、23a:原料溶液、23b:ミスト、100:担持金属触媒、110:空隙、120:結晶子、130:金属微粒子、150:担体微粒子、160:分枝、200:固体高分子形燃料電池、201:アノード、202:カソード、203:負荷、210A:アノード側ガス拡散層、210K:カソード側ガス拡散層、220A:触媒層、220A:アノード側触媒層、220K:カソード側触媒層、230:電解質膜、A:アナタース相に起因するピーク、R:ルチル相に起因するピーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17