(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】ペースト組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 33/10 20060101AFI20220613BHJP
C08F 220/34 20060101ALI20220613BHJP
C08L 1/08 20060101ALI20220613BHJP
H01B 1/20 20060101ALI20220613BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
C08L33/10
C08F220/34
C08L1/08
H01B1/20 A
H01G4/30 201D
H01G4/30 516
(21)【出願番号】P 2018149212
(22)【出願日】2018-08-08
【審査請求日】2021-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100097504
【氏名又は名称】青木 純雄
(72)【発明者】
【氏名】田中 将啓
(72)【発明者】
【氏名】長澤 敦
(72)【発明者】
【氏名】山田 明宏
【審査官】谷合 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-111658(JP,A)
【文献】特開2006-032141(JP,A)
【文献】特開2004-256749(JP,A)
【文献】特開2017-190404(JP,A)
【文献】特開2001-232617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 33/10
C08F 220/34
C08L 1/08
H01B 1/20
H01G 4/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリルポリマー(A)と、エチルセルロース(B)を含んでなる
積層セラミックスコンデンサ用導電ペースト組成物であって、
前記(メタ)アクリルポリマー(A)は、下記式(1)で示される第3級アミノ基含有モノマー(a-1)と、下記式(2)で示されるモノマー(a-2)を構成単位とし、前記第3級アミノ基含有モノマー(a-1)のモル比が5~
38モル%であり、前記モノマー(a-2)のモル比が
62~95モル%であり、
前記モノマー(aー2)がノルマルブチルメタクリレートを含み、ノルマルブチルメタクリレートのモル比が62~85モル%であり、前記(メタ)アクリルポリマー(A)の重量平均分子量が3000~50000であり、
前記(メタ)アクリルポリマー(A)の質量の前記エチルセルロース(B)の質量に対する比率((A)/(B))が10/90~50/50であることを特徴とする、
積層セラミックスコンデンサ用導電ペースト組成物。
【化1】
(式(1)中、
R
1は水素原子またはメチル基を示し、
R
2は炭素数1~3のアルキレン基を示し、
R
3、R
4はそれぞれ独立して炭素数1~3のアルキル基を示す。)
【化2】
(式(2)中、
R
5は水素原子またはメチル基を示し、
R
6は炭素数1~5のアルキル基を示す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱分解性に優れており、エチルセルロースとの相溶性が良好な(メタ)アクリルポリマーを含んでなるペースト組成物に関するものである。このペースト組成物は、例えば積層セラミックコンデンサの導電ペーストとして用いたとき、良好な印刷特性を示し、さらにセラミックグリーンシートに対して良好な接着性を発揮する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサなどの電子部品の内部電極層の形成や太陽電池の導電層の形成などに用いる金属ペーストは、主に、ニッケルや銅などの金属粉体と溶媒、バインダー樹脂からなり、スクリーン印刷などの方法により、シート上に印刷される。特許文献1に示されるように、従来バインダー樹脂としては、印刷適性の高いエチルセルロースが使用されている。近年、電子機器の小型化、高性能化に伴い、積層セラミックコンデンサの小型化・大容量化が求められてきている。
【0003】
積層セラミックコンデンサの小型化・大容量化は、その構成部品であるセラミックグリーンシート、および導電層を薄層化するとともに、多層化することにより実現することができる。しかし、薄層化にあたっては、焼成時のわずかな加熱残分により生じる欠陥が、絶縁性の低下や回路の断線を引き起こす。また多層化にあたっては、熱圧着の際に接着性の低さによる積層ずれや層間の剥がれが生じるという課題があった。
【0004】
これらの課題を解決するため、熱分解性と接着性に優れたバインダー樹脂が求められている。従来導電ペースのバインダー樹脂としてはエチルセルロースが汎用的に使われている。しかしエチルセルロースは熱分解性が高くなく、焼成時に炭素残分が残りやすく、これにより電極層に欠陥が生じやすい。またエチルセルロースを使用した導電ペーストは、シートへの接着性が高くなく、熱圧着時に積層ずれや層間の剥がれが生じるという課題があった。
【0005】
上記課題を解決すべく、様々な手法が検討されている。例えば特許文献2に示されるように、各種アクリル酸エステルを重合したアクリル樹脂を用いることが検討されている。アクリル樹脂はエチルセルロースよりも熱分解性や接着性に優れるが、一方で印刷適性が低く、印刷時ににじみや糸曳きが生じるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-85651
【文献】特開2006-160791
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、エチルセルロースとの相溶性が良好な(メタ)アクリルポリマーを混合することで、熱分解性に優れ、良好な印刷特性を示し、セラミックグリーンシートへの良好な接着性を示すペースト組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、第3級アミノ基を含むモノマーを一定量用いて合成された(メタ)アクリルポリマーは、エチルセルロースと比較して熱分解性が高く、さらにエチルセルロースとの相溶性が良好であることが判明した。さらに、(メタ)アクリルポリマーとエチルセルロースを混合して得られる導電ペーストが良好な印刷性、セラミックグリーンシートへの良好な接着性を示すことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下に示す通りである。
(1) (メタ)アクリルポリマー(A)と、エチルセルロース(B)を含んでなる
積層セラミックスコンデンサ用導電ペースト組成物であって、
前記(メタ)アクリルポリマー(A)は、下記式(1)で示される第3級アミノ基含有モノマー(a-1)と、下記式(2)で示されるモノマー(a-2)を構成単位とし、前記第3級アミノ基含有モノマー(a-1)のモル比が5~
38モル%であり、前記モノマー(a-2)のモル比が
62~95モル%であり、
前記モノマー(aー2)がノルマルブチルメタクリレートを含み、ノルマルブチルメタクリレートのモル比が62~85モル%であり、前記(メタ)アクリルポリマー(A)の重量平均分子量が3000~50000であり、
前記(メタ)アクリルポリマー(A)の質量の前記エチルセルロース(B)の質量に対する比率((A)/(B))が10/90~50/50であることを特徴とする、
積層セラミックスコンデンサ用導電ペースト組成物。
【化1】
(式(1)中、
R
1は水素原子またはメチル基を示し、
R
2は炭素数1~3のアルキレン基を示し、
R
3、R
4はそれぞれ独立して炭素数1~3のアルキル基を示す。)
【化2】
(式(2)中、
R
5は水素原子またはメチル基を示し、
R
6は炭素数1~5のアルキル基を示す。)
【発明の効果】
【0010】
本発明の(メタ)アクリルポリマー(A)は、熱分解性およびエチルセルロース(B)との相溶性に優れる。そのため、これらをバインダー樹脂として用い、金属や金属酸化物の微粒子、および種々の有機溶剤と配合することで均一なペーストを作製することができる。ペーストの中でも、特に金属ペーストは、印刷適正、およびセラミックグリーンシートへの接着性が高いために、精度の高い導電層を形成することができる。さらに、焼成時の残存カーボン分を少なくすることができ、欠陥の起こりにくい導電層を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について、より具体的に記述する。
【0012】
〔モノマー(a-1)〕
本発明におけるモノマー(a-1)は、下記式(1)で示される第3級アミノ基を有するモノマーである。
【化1】
【0013】
一般式(1)において、R1は水素原子またはメチル基であり、重合のしやすさの観点からメチル基が好ましい。
R2は炭素数1~3のアルキレン基であり、重合のしやすさと、エチルセルロース(B)との相溶性の観点から、炭素数1~2のアルキレン基が好ましい。
R3、R4は、それぞれ独立して炭素数1~3のアルキル基であり、エチルセルロース(B)との相溶性を高くする観点から、R3、R4ともにメチル基またはエチル基であることが好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
【0014】
第3級アミノ基を有するモノマー(a-1)としては、例えばN,N-ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N-ジ-エチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N-ジ-n-プロピルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N-ジ-イソプロピルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジ-エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジ-n-プロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジ-イソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジ-エチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジ-n-プロピルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジ-イソプロピルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0015】
上記のように、本発明におけるモノマー(a-1)は、一般式(1)で示される第3級アミノ基を有するモノマーから選ばれる。これらの中でも、セラミックグリーンシートへの接着性を高め、エチルセルロースとの相溶性を良好とする観点から、N,N-ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N-ジ-メチルアミノエチル(メタ)アクリレートを選択することが好ましい。これらのモノマー(a-1)は、1種類のみを選択しても良いし、2種類以上含有しても良い。
【0016】
(メタ)アクリルポリマー(A)のポリマー組成物中に含まれる全モノマーの含有率の合計を100mol%とするとき、モノマー(a-1)の含有率は5~50mol%とする。モノマー(a-1)の含有率が5mol%未満である場合、十分な印刷性と接着性を得ることができない。また、(メタ)アクリルポリマー(A)の粘度が低くなり、ペースト組成物の塗工性が低下し、にじみなどの不具合が発生する恐れがある。このため、モノマー(a-1)の含有率を5mol%以上とするが、10mol%以上が更に好ましい。また、一方、モノマー(a-1)の含有率が50mol%を超える場合、接着性は十分であるものの、(メタ)アクリルポリマー(A)の粘度が高くなり、ペースト組成物の塗工性が低下し、糸曳きなどの不具合が発生する恐れがある。このため、モノマー(a-1)の含有率を50mol%以下とするが、30mol%以下が好ましく、20mol%以下が更に好ましい。
【0017】
〔モノマー(a-2)〕
本発明のモノマー(a-2)としては、下記一般式(2)で示される、(メタ)アクリル酸エステルから1種または2種以上が選ばれる。
【化2】
【0018】
一般式(2)において、R5は水素原子またはメチル基であり、重合のしやすさの観点からメチル基が好ましい。
R6は炭素数1~5のアルキル基であり、熱分解性と印刷性を良好とする観点から、炭素数2~4のアルキル基であることが好ましい。
【0019】
モノマー(a-2)としては、ノルマルブチルメタクリレートを用いる。この他、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ノルマルブチルアクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、熱分解性、印刷性を良好とする観点から、ノルマルブチルアクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレートを選択することが好ましい。
【0020】
ポリマー組成物中の全モノマーの含有率の合計を100mol%とするとき、モノマー(a-2)の含有量は62~95mol%とする。モノマー(a-2)の含有率が62mol%未満である場合、ペースト組成物の粘度が高くなりすぎ、塗工性が低下し、印刷面が粗くなるなどの不具合が発生する恐れがある。このため、モノマー(a-2)の含有量を62モル%以上とするが、70モル%以上であることが好ましく、80mol%以上であることが更に好ましい。また、モノマー(a-2)の含有率が95mol%を超える場合、印刷性は良好であるが、熱分解性が悪くなり、焼成時の炭素残分が多くなる恐れがある。このため、モノマー(a-2)の含有率を95mol%以下とする。
【0021】
〔モノマー(a-3)〕
本発明の(メタ)アクリルポリマー(A)には、上記のモノマー(a-1)、モノマー(a-2)以外にも、発明の効果を阻害しない範囲で、モノマー(a-3)として各種の(メタ)アクリル酸エステルを併用することもできる。
【0022】
モノマー(a-3)としては、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのうち、ペースト組成物の接着性を一層高めることができることから、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
【0023】
ポリマー組成物中の全モノマーの含有率の合計を100mol%とするとき、モノマー(a-3)の含有率は0~40mol%が好ましく、0~20mol%が更に好ましく、0~10mol%がより好ましい。
【0024】
〔(メタ)アクリルポリマー(A)〕
本発明における(メタ)アクリルポリマー(A)は、上述したモノマー(a-1)、(a-2)および必要に応じてモノマー(a-3)を用いて、重合反応を行うことにより得られる。
【0025】
(メタ)アクリルポリマー(A)の製造方法は、特に限定されるものではなく、一般的に知られた重合方法によって製造することが可能である。その中でも、反応熱の除去が容易で、比較的低分子量のポリマーを合成しやすいことから、溶液重合によって製造することが好ましい。一般に、溶液重合は重合槽内に各種モノマー、有機溶剤、開始剤、連鎖移動剤などを仕込み、窒素やアルゴンなどの不活性ガスを導入しながら、適当な温度管理下にて数時間重合反応を進行させることにより行われる。
【0026】
有機溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、アルキレングリコール、アルキレングリコールのモノアセテート、アルキレングリコールのジアセテートなどのグリコール誘導体、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピニルアセテートなどのテルペン系溶剤などを挙げることができる。これらの中でも、重合で用いることから沸点が高い溶剤が好ましく、グリコール誘導体、テルペン系溶剤が好ましい。
【0027】
開始剤としては、例えば2,2‘-アゾビスイソブチロニトリル、2,2‘-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物、t-ブチルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシドなどの有機過酸化物などを1種、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】
連鎖移動剤としては、例えばn-ドデシルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、メルカプト酢酸、チオグリコール酸2-エチルヘキシルなどを1種、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0029】
重合温度としては、使用する有機溶剤や開始剤などによって変動するが、一般的に40~180℃の範囲である。重合温度が上記範囲であることにより、良好に重合反応を進行させることができる。上記範囲を超えると、(メタ)アクリルポリマーの解重合や、着色などの不具合が起こる恐れがある。上記範囲を下回ると、重合反応が十分に進行せず、未反応のモノマーが残存しやすくなる。
【0030】
(メタ)アクリルポリマー(A)の重量平均分子量は、3,000~50,000であり、3,000~30,000であることが好ましく、3,000~10,000であることがより好ましい。上記範囲であることにより、エチルセルロース(B)との相溶性が良好となり、基材への塗工に適した粘度のペーストを得られる。上記範囲を超えると、エチルセルロース(B)との相溶性が低下するために糸曳きが生じやすくなり、印刷性が悪くなる。また、上記範囲を下回ると、相溶性は良好となるが、得られるペーストの粘度が低くなりすぎ、印刷性が悪くなる。
【0031】
〔エチルセルロース(B)〕
本発明においてエチルセルロース(B)は、導電ペースト用バインダー樹脂組成物において、バインダー樹脂として機能する組成物であり、無機粉末を均一に分散させた状態を保持し、ペースト組成物にチキソ性を付与し、良好な印刷特性を発現するものである。
【0032】
エチルセルロースの粘度としては、任意のものを使用することができるが、トルエン80重量%、エタノール20重量%からなる混合溶媒中に5重量%溶解した場合の、25℃における溶液粘度が20~400mPa・sであるものが好ましく、50~300mPa・sであるものが特に好ましく、100~250mPa・sであるものが印刷時に液だれ等を生じることがなく、印刷性が良好である観点から特に好ましい。
【0033】
このようなエチルセルロース(B)の市販品としては、例えばSTD-100(ダウケミカル社製;溶液粘度100mPa・s)、STD-200(ダウケミカル社製;溶液粘度200mPa・s)などを用いることが出来る。
【0034】
(メタ)アクリルポリマー(A)とエチルセルロース(B)の組成比は、質量比で(A)/(B)=10/90~50/50であり、20/80~40/60であることが好ましい。上記範囲内にあることにより、良好な粘度で塗工性に優れたペーストが得られる。
【0035】
本発明のペースト用バインダー樹脂組成物、特に導電ペーストようバインダー樹脂組成物は、上記の(メタ)アクリルポリマー(A)とエチルセルロース(B)以外に、無機粉末(C)、分散剤(D)、有機溶剤(E)を含む。
【0036】
〔無機粉末(C)〕
無機粉末(C)としては、金属粉末、金属酸化物粉末、ガラス粉末、セラミック粉末などが挙げられる。
【0037】
金属粉末としては、例えばニッケル、チタン、パラジウム、白金、金、銀、銅、鉄、アルミニウム、タングステンなどの金属や、それらの合金などからなる粉末が挙げられる。
金属酸化物粉末としては、例えばスズドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)などが挙げられる。
【0038】
ガラス粉末としては、例えば酸化ビスマスガラス、ケイ酸塩ガラス、鉛ガラス、亜鉛ガラス、ボロンガラスなどが挙げられる。
セラミック粉末としては、例えばアルミナ、ジルコニア、チタニア、チタン酸バリウム、窒化アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素などが挙げられる。
これらの無機粉末は単独で用いても良いし、2種類以上を混合して用いても良い。
【0039】
〔分散剤(D)〕
分散剤(D)としては、例えば脂肪酸、脂肪族アミン、脂肪族アミノ酸などが挙げられる。
【0040】
上記脂肪酸としては特に限定されず、例えば、ベヘニン酸、ステアリン酸、ラウリン酸などの飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸などの不飽和脂肪酸などが挙げられる。
上記脂肪族アミンとしては特に限定されず、例えば、ラウリルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミンなどが挙げられる。
上記脂肪族アミノ酸としては特に限定されず、例えば、ステアリルサルコシン、オレオイルサルコシン、ラウロイルサルコシンなどが挙げられる。
これらの分散剤は単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いても良い。
【0041】
〔有機溶剤(E)〕
本発明で用いる有機溶剤(E)は、導電性ペーストの粘度を低減し、塗布しやすい適度な粘度とするために用いられる。有機溶剤(E)は、焼成後に残渣が残らず、(メタ)アクリルポリマー(A)とエチルセルロース(B)を良好に溶解し、混合させることができればよい。
【0042】
有機溶剤(E)としては、例えばメンタン、リモネン、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピニルアセテート、ブチルカルビトールアセテート、ベンジルグリコール、フェニルプロピレングリコール、などの沸点が150℃以上であるものが、印刷性の観点から好適に挙げられる。これらは単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
これらの中でも、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピニルアセテート、ブチルカルビトールアセテートを用いることが好ましい。これらの溶剤は、本発明の(メタ)アクリルポリマーおよびエチルセルロースの溶解性に優れており、ペースト組成物の調製に適している。その一方、セラミックグリーンシートの製造に用いられるポリビニルブチラールなどの樹脂は溶解しにくいため、セラミックグリーンシート上にペースト組成物を印刷するために適している。
【0043】
ポリマー組成物における(メタ)アクリルポリマー(A)、エチルセルロース(B)、無機粉末(C)、分散剤(D)および有機溶剤(E)の含有量の合計を100質量部としたとき、各成分の含有量は以下であることが特に好ましい。
(メタ)アクリルポリマー(A)の質量とエチルセルロース(B)の質量の合計:
好ましくは1~10質量部(特に好ましくは1~5質量部)
無機粉末(C):
好ましくは30~70質量部(特に好ましくは40~60質量部)
分散剤(D):
好ましくは0.1~1.0質量部(特に好ましくは0.3~0.8質量部)
有機溶剤(E):
好ましくは30~60質量部(特に好ましくは40~50質量部)
【0044】
本発明のペースト組成物の調整方法としては、特に限定されないが、(メタ)アクリルポリマー(A)、エチルセルロース(B)、無機粉末(C)、分散剤(D)および有機溶剤(E)を公知の混合方法、例えば3本ロールなどを用いて混錬し、調整すればよい。
【0045】
また、本発明のペースト組成物をセラミックグリーンシート上に印刷する方法としては特に限定されないが、例えばスクリーン印刷、ダイコート印刷、オフセット印刷、グラビア印刷などの方法により印刷することができる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明をさらに詳細な実施例に基づき説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0047】
(合成例1)
撹拌機、温度計、滴下ロート、冷却器及び窒素導入管を取り付けた2Lセパラブルフラスコに、ジヒドロターピネオール455.7gを仕込み、フラスコ内を窒素で置換した後、反応容器内を75℃まで昇温した。ついで、ノルマルブチルメタクリレート353.7g、メタクリル酸メチル6.4g、ノルマルブチルアクリレート20.4g、ジメチルアミノエチルメタクリレート75.2gの混合溶液を、滴下ロートを用いて3時間かけて滴下した。モノマー溶液の滴下と並行して、開始剤として、2,2‘-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(製品名:V-65(和光純薬工業(株)製))88.7gを、計9回に等量に分けて20分おきにフラスコ内に仕込んだ。モノマー溶液の滴下が終了してから、さらに3時間熟成し、ポリマー(A-1)を得た。
【0048】
(合成例2)
撹拌機、温度計、滴下ロート、冷却器及び窒素導入管を取り付けた2Lセパラブルフラスコに、ジヒドロターピネオール456.3gを仕込み、フラスコ内を窒素で置換した後、反応容器内を75℃まで昇温した。ついで、ノルマルブチルメタクリレート330.3g、メタクリル酸メチル18.8g、ノルマルブチルアクリレート20.1g、ジエチルアミノエチルメタクリレート87.1gの混合溶液を、滴下ロートを用いて3時間かけて滴下した。モノマー溶液の滴下と並行して、開始剤として、2,2‘-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(製品名:V-65(和光純薬工業(株)製))87.3gを、計9回に等量に分けて20分おきにフラスコ内に仕込んだ。モノマー溶液の滴下が終了してから、さらに3時間熟成し、ポリマー(A-2)を得た。
【0049】
(合成例3)
撹拌機、温度計、滴下ロート、冷却器及び窒素導入管を取り付けた2Lセパラブルフラスコに、ジヒドロターピネオール453.9gを仕込み、フラスコ内を窒素で置換した後、反応容器内を75℃まで昇温した。ついで、ノルマルブチルメタクリレート292.1g、メタクリル酸メチル49.7g、ノルマルブチルアクリレート34.0g、ジメチルアミノエチルメタクリレート78.1gの混合溶液を、滴下ロートを用いて3時間かけて滴下した。モノマー溶液の滴下と並行して、開始剤として、2,2‘-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(製品名:V-65(和光純薬工業(株)製))92.2gを、計9回に等量に分けて20分おきにフラスコ内に仕込んだ。モノマー溶液の滴下が終了してから、さらに3時間熟成し、ポリマー(A-3)を得た。
【0050】
(合成例4)
撹拌機、温度計、滴下ロート、冷却器及び窒素導入管を取り付けた2Lセパラブルフラスコに、ジヒドロターピネオール456.9gを仕込み、フラスコ内を窒素で置換した後、反応容器内を75℃まで昇温した。ついで、ノルマルブチルメタクリレート286.3g、メタクリル酸メチル12.4g、ノルマルブチルアクリレート23.8g、ジメチルアミノエチルメタクリレート73.0g、2-ヒドロキシメタクリレート61.4gの混合溶液を、滴下ロートを用いて3時間かけて滴下した。モノマー溶液の滴下と並行して、開始剤として、2,2‘-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(製品名:V-65(和光純薬工業(株)製))86.2gを、計9回に等量に分けて20分おきにフラスコ内に仕込んだ。モノマー溶液の滴下が終了してから、さらに3時間熟成し、ポリマー(A-4)を得た。
【0051】
(合成例5)
撹拌機、温度計、滴下ロート、冷却器及び窒素導入管を取り付けた2Lセパラブルフラスコに、ジヒドロターピネオール487.2gを仕込み、フラスコ内を窒素で置換した後、反応容器内を75℃まで昇温した。ついで、ノルマルブチルメタクリレート367.5g、メタクリル酸メチル20.7g、ノルマルブチルアクリレート17.7g、ジメチルアミノエチルメタクリレート81.3gの混合溶液を、滴下ロートを用いて3時間かけて滴下した。モノマー溶液の滴下と並行して、開始剤として、2,2‘-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(製品名:V-65(和光純薬工業(株)製))25.7gを、計3回に等量に分けて60分おきにフラスコ内に仕込んだ。モノマー溶液の滴下が終了してから、さらに3時間熟成し、ポリマー(A-5)を得た。
【0052】
(合成例6)
撹拌機、温度計、滴下ロート、冷却器及び窒素導入管を取り付けた2Lセパラブルフラスコに、ジヒドロターピネオール455.1gを仕込み、フラスコ内を窒素で置換した後、反応容器内を75℃まで昇温した。ついで、ノルマルブチルメタクリレート307.3g、メタクリル酸メチル9.7g、ノルマルブチルアクリレート62.0g、ジメチルアミノエチルメタクリレート76.1gの混合溶液を、滴下ロートを用いて3時間かけて滴下した。モノマー溶液の滴下と並行して、開始剤として、2,2‘-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(製品名:V-65(和光純薬工業(株)製))89.7gを、計9回に等量に分けて20分おきにフラスコ内に仕込んだ。モノマー溶液の滴下が終了してから、さらに3時間熟成し、ポリマー(A-6)を得た。
【0053】
(合成例7)
撹拌機、温度計、滴下ロート、冷却器及び窒素導入管を取り付けた2Lセパラブルフラスコに、ジヒドロターピネオール455.6gを仕込み、フラスコ内を窒素で置換した後、反応容器内を75℃まで昇温した。ついで、ノルマルブチルメタクリレート281.4g、メタクリル酸メチル16.0g、ノルマルブチルアクリレート32.7g、ジメチルアミノエチルメタクリレート125.5gの混合溶液を、滴下ロートを用いて3時間かけて滴下した。モノマー溶液の滴下と並行して、開始剤として、2,2‘-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(製品名:V-65(和光純薬工業(株)製))88.8gを、計9回に等量に分けて20分おきにフラスコ内に仕込んだ。モノマー溶液の滴下が終了してから、さらに3時間熟成し、ポリマー(A-7)を得た。
【0054】
(合成例8)
撹拌機、温度計、滴下ロート、冷却器及び窒素導入管を取り付けた2Lセパラブルフラスコに、ジヒドロターピネオール455.3gを仕込み、フラスコ内を窒素で置換した後、反応容器内を75℃まで昇温した。ついで、ノルマルブチルメタクリレート388.7g、メタクリル酸メチル9.6g、ノルマルブチルアクリレート16.5g、ジメチルアミノエチルメタクリレート40.4gの混合溶液を、滴下ロートを用いて3時間かけて滴下した。モノマー溶液の滴下と並行して、開始剤として、2,2‘-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(製品名:V-65(和光純薬工業(株)製))89.5gを、計9回に等量に分けて20分おきにフラスコ内に仕込んだ。モノマー溶液の滴下が終了してから、さらに3時間熟成し、ポリマー(A-8)を得た。
【0055】
(比較合成例1)
撹拌機、温度計、滴下ロート、冷却器及び窒素導入管を取り付けた2Lセパラブルフラスコに、ジヒドロターピネオール454.4gを仕込み、フラスコ内を窒素で置換した後、反応容器内を75℃まで昇温した。ついで、ノルマルブチルメタクリレート391.7g、メタクリル酸メチル26.2g、ノルマルブチルアクリレート21.0g、ジメチルアミノエチルメタクリレート15.5gの混合溶液を、滴下ロートを用いて3時間かけて滴下した。モノマー溶液の滴下と並行して、開始剤として、2,2‘-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(製品名:V-65(和光純薬工業(株)製))91.2gを、計9回に等量に分けて20分おきにフラスコ内に仕込んだ。モノマー溶液の滴下が終了してから、さらに3時間熟成し、ポリマー(A’-1)を得た。
【0056】
(比較合成例2)
撹拌機、温度計、滴下ロート、冷却器及び窒素導入管を取り付けた2Lセパラブルフラスコに、ジヒドロターピネオール457.5gを仕込み、フラスコ内を窒素で置換した後、反応容器内を75℃まで昇温した。ついで、ノルマルブチルメタクリレート143.4g、メタクリル酸メチル6.1g、ノルマルブチルアクリレート19.6g、ジメチルアミノエチルメタクリレート288.3gの混合溶液を、滴下ロートを用いて3時間かけて滴下した。モノマー溶液の滴下と並行して、開始剤として、2,2‘-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(製品名:V-65(和光純薬工業(株)製))85.0gを、計9回に等量に分けて20分おきにフラスコ内に仕込んだ。モノマー溶液の滴下が終了してから、さらに3時間熟成し、ポリマー(A’-2)を得た。
【0057】
(比較合成例3)
撹拌機、温度計、滴下ロート、冷却器及び窒素導入管を取り付けた2Lセパラブルフラスコに、ジヒドロターピネオール454.3gを仕込み、フラスコ内を窒素で置換した後、反応容器内を75℃まで昇温した。ついで、ノルマルブチルメタクリレート233.8g、メタクリル酸メチル16.4g、ノルマルブチルアクリレート126.5g、ジメチルアミノエチルメタクリレート77.5gの混合溶液を、滴下ロートを用いて3時間かけて滴下した。モノマー溶液の滴下と並行して、開始剤として、2,2‘-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(製品名:V-65(和光純薬工業(株)製))91.5gを、計9回に等量に分けて20分おきにフラスコ内に仕込んだ。モノマー溶液の滴下が終了してから、さらに3時間熟成し、ポリマー(A’-3)を得た。
【0058】
〔重量平均分子量〕
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件により、合成例、比較合成例にて得られたポリマーの重量平均分子量を求めた。
装置:東ソー(株)社製、HLC-8220
カラム:shodex社製、KF-805L
標準物質:ポリスチレン
溶離液:THF(テトラヒドロフラン)
流量:1.0ml/min
カラム温度:40℃
検出器:RI(示差屈折率検出器)
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
なお、表中の略語は以下の通りである。
DMAEM:ジメチルアミノエチルメタクリレート(共栄社化学製ライトエステルDM)
DEAEM:ジエチルアミノエチルメタクリレート(共栄社化学製ライトエステルDE)
nBMA:ノルマルブチルメタクリレート(三菱ガス化学製nBMA)
nBA:ノルマルブチルアクリレート(日本触媒製)
MMA:メタクリル酸メチル(三菱ガス化学製MMA)
HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート(日本触媒製HEMA)
【0063】
(実施例1~10、比較例1~6)
表4、表5に示す各組成のモノマー組成物を用意し、各特性を測定した。
【0064】
【0065】
【0066】
なお、表中の略語は以下の通りである。
STD-200:エトセル STD-200(ダウ・ケミカル社製)
【0067】
以下、評価方法を示す。
〔グリーンシートの調製〕
チタン酸バリウム粉末(堺化学製:BT-03)100重量部に対し、カルボン酸系分散剤を0.8重量部、トルエン18重量部、エタノール18重量部、粒径1mmのジルコニアボール100重量部をボールミルに入れ、8時間混合後、ポリビニルブチラール(積水化学工業製:エスレックBM-2)8重量部、トルエン10重量部、エタノール重量部を加えさらに12時間混合したのち、ジルコニアボールをろ別し、セラミックスラリーを調製した。そして、セラミックスラリーをドクターブレード法によってキャリアシートであるPETフィルム上に厚さ5μmのシート状に塗布後、90℃、10分間乾燥させ、グリーンシートを作製した。
【0068】
〔導電性ペーストの調整〕
Ni粉(JFEミネラル製:NFP201S)100重量部に対して、N-オレオイルサルコシンを1重量部、合成例で得たポリマーとエチルセルロースの混合物を3重量部、ジヒドロターピネオールを90重量部加えた。これらの混合物を遊星式混練機にて攪拌後、3本ロールにて混練しNiペーストを得た。
【0069】
〔熱分解性〕
ポリマー5mgをアルミパンにいれ、TG/DTAにて、空気雰囲気下、昇温速度10℃/分で500℃まで昇温した。測定前後のサンプルの残存量の変化から残存率を算出し、熱分解性を測定した。
残存率(%) = 測定後の重量/測定前の重量 ×100
◎: 1.0%未満
○: 1.0%以上、2.0%未満
△: 2.0%以上、3.0%未満
×: 3.0%以上
【0070】
〔表面粗さ〕
1608サイズ用パターンを用いて、得られたNiペーストをグリーンシート上にスクリーン法にて印刷し、90℃で10分間乾燥後、表面粗さ計を用いて表面粗さを測定し、測定値の算術平均粗さ(μm)を求めた。
◎: 0.045未満
○: 0.045以上、0.050未満
△: 0.050以上、0.060未満
×: 0.060以上
【0071】
〔接着強度〕
1608サイズ用パターンを用いて、得られたNiペーストをグリーンシート上にスクリーン法にて印刷し、90℃で10分間乾燥後、その上にさらにグリーンシートを重ね、50℃、100kg/cm2、5秒の条件にて圧着させた。引張り試験機にて180度剥離試験を実施し、剥離に要する力を測定した。(単位:gf/cm)
◎: 30.0以上
○: 28.0以上、30.0未満
△: 26.0以上、28.0未満
×: 26.0未満
【0072】
実施例1~10に示す通り、本発明で得られるペースト用バインダー樹脂組成物を用いて、作製された導電性ペーストは、熱分解性、表面粗さ、接着強度のいずれの評価項目においても良好な評価を示した。
【0073】
一方、比較例1は、ポリマー(A)中の(a-1)成分の含有量が規定の範囲よりも少ないため、エチルセルロース(B)との相溶性が不十分であり、表面粗さが大きくなった。また、セラミックグリーンシートに対する接着性も不十分であった。
比較例2は、ポリマー(A)中の(a-1)成分の含有量が規定の範囲よりも多いため、エチルセルロース(B)との相溶性が不十分であり、表面粗さが大きくなった。
比較例3は、ポリマー(A)中の(a-2)成分の含有量が規定の範囲よりも多いため、熱分解性が不十分であった。
比較例4は、ポリマー(A)を使用していないため、熱分解性と接着強度が不十分であった。
比較例5は、ポリマー(A)の質量のエチルセルロース(B)の質量に対する比率が規定の範囲を超えているため、表面粗さが大きくなった。
比較例6は、エチルセルロース(B)を使用していないため、印刷に適した粘度のペーストが得られておらず、表面粗さが大きくなった。