(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】車両用のトリム材
(51)【国際特許分類】
B60J 10/16 20160101AFI20220613BHJP
B60J 10/84 20160101ALI20220613BHJP
B60J 10/32 20160101ALI20220613BHJP
【FI】
B60J10/16
B60J10/84
B60J10/32
(21)【出願番号】P 2019010774
(22)【出願日】2019-01-25
【審査請求日】2021-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000219705
【氏名又は名称】東海興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098420
【氏名又は名称】加古 宗男
(72)【発明者】
【氏名】引地 真司
(72)【発明者】
【氏名】西脇 弘行
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-215149(JP,A)
【文献】特開2011-178199(JP,A)
【文献】特開2002-316537(JP,A)
【文献】特開2013-129392(JP,A)
【文献】特表平07-504378(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 10/16
B60J 10/84
B60J 10/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー材料で長尺状に形成され、車体の開口部の周縁と前記開口部を開閉する開閉部材との間に配置される車両用のトリム材において、
車外側と車内側の両側壁部及び前記両側壁部をつなぐ頂壁部を有する取付部と、
前記取付部に前記両側壁部に跨がって埋設された芯材と、
前記取付部の車外側と車内側の少なくとも一方の側壁部の内側面から突出する保持リップと
を備え、
前記取付部の前記両側壁部間の隙間に、前記車体の開口部の周縁に沿って設けられたフランジが挿入されて前記保持リップが前記フランジに当接することで前記取付部が前記フランジに取り付けられ、
前記取付部及び前記保持リップは、発泡したポリマー材料で形成され、
前記取付部の前記両側壁部の先端部のうち、少なくとも一方の側壁部の先端部は、発泡していないポリマー材料で形成された被覆部で覆われ
、
前記被覆部は、前記保持リップが形成された前記側壁部の先端部から当該保持リップのうちの前記フランジに当接する部分までの領域の表面を覆うように形成されていることを特徴とする車両用のトリム材。
【請求項2】
前記取付部及び前記保持リップは、少なくともマイクロカプセルが混合されて発泡したポリマー材料で形成されていることを特徴とする請求項
1に記載の車両用のトリム材。
【請求項3】
前記取付部及び前記保持リップは、マイクロカプセルと化学発泡剤の両方が混合されて発泡したポリマー材料で形成されていることを特徴とする請求項
2に記載の車両用のトリム材。
【請求項4】
前記被覆部は、比重が1.15から1.35までの範囲内の発泡していないポリマー材料で形成されていることを特徴とする請求項1乃至
3のいずれかに記載の車両用のトリム材。
【請求項5】
前記発泡したポリマー材料の発泡倍率は1.3以上2.0以下であることを特徴とする請求項1乃至
4のいずれかに記載の車両用のトリム材。
【請求項6】
前記被覆部は、前記側壁部の先端部からその両側面のうちの前記芯材の先端を越えた位置までの領域を覆うように形成されていることを特徴とする請求項1乃至
5のいずれかにに記載の車両用のトリム材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー材料で長尺状に形成された車両用のトリム材に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車等の車体のドア開口部やトランク開口部等の開口部の周縁に沿って設けられたフランジには、トリム材が装着される。このトリム材は、ポリマー材料の押出成形により横断面略U字形状の取付部を有する形状に形成され、その取付部でフランジを両側から挟むことでフランジに取り付けるようになっている。このようなトリム材は、横断面略U字形状の取付部に補強用の芯材を埋設しておくことで、フランジに取付部を安定して装着できるようにしたものがある。
【0003】
近年、車体に取り付ける部品の軽量化が求められるのに伴い、トリム材も軽量化が求められようになってきている。そこで、特許文献1(特開2015-120366号公報)に記載されているように、トリム材を発泡ポリマー材料(発泡したポリマー材料)で形成してトリム材を軽量化したものがある。発泡ポリマー材料は、非発泡ポリマー材料(発泡していないポリマー材料)と比べて比重が小さく、軽量化に有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、車体に取り付ける部品は、軽量化と共に小型化も要求されるようになってきている。この要求に応じて、例えば、トリム材の両側壁部を短くしてトリム材を小型化する場合、取付部がフランジを挟む力(保持力)を維持できるように、芯材のサイズや保持リップの位置、及び芯材の先端と保持リップの位置関係は、両側壁部を短くしない場合と同等に設定することがある。この場合、横断面略U字形状の取付部の両側壁部に跨がって埋設された横断面略U字形状の芯材の先端を覆う側壁部の先端部の肉厚がより薄くなる。ここで、この側壁部の形成材料である発泡ポリマー材料は、非発泡ポリマー材料と比べて引裂強さが弱いため、トリム材の小型化により芯材の先端を覆う側壁部の先端部の肉厚が薄くなると、側壁部の先端部の引裂強さが益々弱くなって破れやすくなり、芯材の先端が露出する不具合の発生頻度が増加する。
【0006】
また一般に、トリム材は、押出成形により直線状に成形されるが、これを取り付ける車体の開口部周縁のフランジは、開口部の形状に合わせて湾曲しているため、このフランジにトリム材を取り付ける際に、トリム材をフランジの形状に合わせて曲げて取り付けることになる。この際、トリム材を側壁部の先端側を伸ばす方向に曲げると、芯材の先端を覆う側壁部の先端部のうち特に肉厚が薄い部分に負荷がかかるため、その側壁部の先端部が芯材の先端のエッジで比較的容易に引き裂かれてしまい、芯材が露出してしまうことがある。これにより、露出した芯材で被取付体を傷付けたり、作業者が怪我したり、芯材が錆びたりすることがある。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、発泡ポリマー材料により軽量化した車両用のトリム材において、芯材の露出を防止できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、ポリマー材料で長尺状に形成され、車体の開口部の周縁と前記開口部を開閉する開閉部材との間に配置される車両用のトリム材において、車外側と車内側の両側壁部及び前記両側壁部をつなぐ頂壁部を有する取付部と、前記取付部に前記両側壁部に跨がって埋設された芯材と、前記取付部の車外側と車内側の少なくとも一方の側壁部の内側面から突出する保持リップとを備え、前記取付部の前記両側壁部間の隙間に、前記車体の開口部の周縁に沿って設けられたフランジが挿入されて前記保持リップが前記フランジに当接することで前記取付部が前記フランジに取り付けられ、前記取付部及び前記保持リップは、発泡ポリマー材料(発泡したポリマー材料)で形成され、前記取付部の前記両側壁部の先端部のうち、少なくとも一方の側壁部の先端部は、非発泡ポリマー材料(発泡していないポリマー材料)で形成された被覆部で覆われていることを第1の特徴とし、更に、前記被覆部は、前記保持リップが形成された前記側壁部の先端部から当該保持リップのうちの前記フランジに当接する部分までの領域の表面を覆うように形成されていることを第2の特徴とするものである。
【0009】
この構成では、トリム材の取付部の両側壁部の先端部のうち、少なくとも一方の側壁部の先端部は、発泡ポリマー材料よりも引裂強さが強い非発泡ポリマー材料で形成された被覆部で覆われているため、少なくとも一方の側壁部の先端部を被覆部で補強することができる。これにより、少なくとも一方の側壁部の先端部が薄肉化されていても、その側壁部の先端部が芯材の先端のエッジで引き裂かれることを非発泡ポリマー材料の被覆部で防止することができ、芯材の露出を防止できる。
【0010】
更に、非発泡ポリマー材料の被覆部は、保持リップが形成された側壁部の先端部から当該保持リップのうちのフランジに当接する部分までの領域の表面を覆うように形成しているため、保持リップの根元部分からフランジに当接する部分までの領域も非発泡ポリマー材料の被覆部で補強できると共に、フランジに対する保持リップの摩擦係数を非発泡ポリマー材料の被覆部によって増大することができる。これにより、フランジに保持リップが当接することによる保持力を増大させることができ、フランジに対するトリム材の取付状態をより安定して保持できる。しかも、側壁部の先端部を覆う非発泡ポリマー材料の被覆部が保持リップのうちのフランジに当接する部分まで延びることで、非発泡ポリマー材料の被覆部による側壁部の先端部の補強効果(引裂防止効果)も増大させることができる。
【0011】
また、請求項2のように、取付部及び保持リップは、少なくともマイクロカプセルが混合されて発泡したポリマー材料で形成しても良い。一般に、マイクロカプセルを混合して発泡させた場合、化学発泡剤のみを発泡させた場合と比べて、比重がより小さい発泡体を容易に得られ、軽量化に有効である反面、引裂強さが弱いという特性がある。請求項3のように、少なくともマイクロカプセルで発泡させた発泡ポリマー材料で形成した側壁部の先端部を非発泡ポリマー材料の被覆部で覆うようにすれば、マイクロカプセルで発泡させた発泡ポリマー材料の利点である軽量化の効果を確保しながら非発泡ポリマー材料の被覆部による補強効果によって側壁部の先端部が芯材の先端のエッジで引き裂かれることを防止でき、トリム材の軽量化と側壁部の先端部の引裂強さ確保という相反する2つの要求を同時に満たすことができる。
【0012】
この場合、請求項3のように、取付部及び保持リップは、マイクロカプセルと化学発泡剤の両方が混合されて発泡したポリマー材料で形成しても良い。マイクロカプセルと化学発泡剤の両方を混合して発泡させた発泡ポリマー材料は、化学発泡剤を混合することによってマイクロカプセルのみを混合して発泡させた発泡ポリマー材料に比べて発泡ポリマー材料の引裂強さの低下を小さくできる。
【0013】
また、請求項4のように、被覆部は、比重が1.15から1.35までの範囲内の非発泡ポリマー材料で形成しても良い。本発明者の実験結果によれば、非発泡ポリマー材料の比重が1.15未満であると、非発泡ポリマー材料の被覆部による補強効果が不足して十分な引裂防止効果を得ることができない。また、非発泡ポリマー材料の比重が1.35よりも大きいと、十分な軽量化の効果が得られない。
【0014】
また、請求項5のように、発泡したポリマー材料の発泡倍率は1.3以上2.0以下であることが望ましい。ここで、発泡倍率とは発泡前の比重を発泡後の比重で割った値であり、発泡倍率が1.3未満だとトリム材を軽量化できない。発泡倍率が2.0より大きいと、トリム材のフランジへの保持力が小さくなる。
【0015】
更に、本発明は、請求項6のように、非発泡ポリマー材料の被覆部は、側壁部の先端部からその両側面のうちの芯材の先端を越えた位置までの領域を覆うように形成しても良い。このようにすれば、側壁部の先端部からその両側面のうちの芯材の先端を越えた位置までの領域を非発泡ポリマー材料の被覆部で補強することができるため、トリム材の成形時に芯材の位置がずれて芯材の先端と側壁部の先端部付近の側面との間の肉厚が薄くなっても、側壁部の先端部付近の側面で破れが生じることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は本発明の一実施例におけるウェザーストリップが装着された自動車の概略構成を示す側面図である。
【
図2】
図2はウェザーストリップをフランジに取り付けた状態を
図1のA-A線に沿って示す断面図である。
【
図3】
図3はフランジに取り付ける前のウェザーストリップの状態を示す断面図である。
【
図4】
図4はドア開口部のコーナー部分に沿ってウェザーストリップを曲げて取り付けたときの状態を示すウェザーストリップの一部分の側面図である。
【
図5】
図5は
図4の状態のウェザーストリップに埋設された芯材の状態を示す側面図である。
【
図6】
図6は従来のウェザーストリップの課題である芯材の露出を説明する
図4相当図である。
【
図7】
図7は他の実施例におけるフランジに取り付ける前のウェザーストリップの状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態をウェザーストリップに適用して具体化した一実施例を説明する。
【0018】
図1に示すように、自動車の車体11は、ルーフパネル12やサイドパネル13等の複数のパネルを繋ぎ合わせて構成されている。この車体11のフロントドア開口部14とリアドア開口部15の周縁に沿って設けられたフランジ16(
図3参照)には、それぞれポリマー材料で長尺状に形成されたウェザーストリップ17(トリム材)が取り付けられている。これらのウェザーストリップ17によって、フロントドア開口部14の周縁と当該フロントドア開口部14を閉塞する開閉可能なフロントドア18(開閉部材)との間をシールすると共に、リアドア開口部15の周縁と当該リアドア開口部15を閉塞する開閉可能なリアドア19(開閉部材)との間をシールするようになっている。
【0019】
次に、
図2乃至
図5を用いてウェザーストリップ17の構成を説明する。
図2に示すように、ウェザーストリップ17は、後述する弾性を有するポリマー材料の押出成形により、横断面略U字形状の取付部20と、筒状の中空シール部21とが一体的に形成されている。取付部20は、車外側側壁部23と車内側側壁部24と両側壁部23,24をつなぐ頂壁部25とが一体的に形成され、車外側側壁部23の外側面に中空シール部21が一体的に形成されている。取付部20には、金属板又は樹脂板等で形成された横断面略U字形状の芯材22が複合押出成形により両側壁部23,24に跨がって埋設されている。この芯材22のうちの両側壁部23,24に埋設される部分は、
図5に示すように櫛歯状に形成され、取付部20を長手方向において両側壁部23,24の先端側を伸ばす方向に曲げることができるようになっている。
【0020】
車外側側壁部23の内側面には、車内側側壁部24に向けて突出する突出部26が一体的に形成され、車内側側壁部24の内側面には、車外側側壁部23に向けて突出する保持リップ27が一体的に形成されている。また、頂壁部25又は車内側側壁部24の外側面には、車内側に向けて突出するカバーリップ28が一体的に形成されている。
【0021】
図2に示すように、フロント側及びリア側の各ドア開口部14,15の周縁に沿って設けられたフランジ16に、ウェザーストリップ17の取付部20を被せることで、取付部20の両側壁部23,24間の隙間にフランジ16が挿入されて取付部20がフランジ16に取り付けられる。この際、保持リップ27がフランジ16に当接して弾性変形し、この保持リップ27の弾性反発力でフランジ16を押圧して保持リップ27と突出部26との間にフランジ16を挟んで保持することで、フランジ16にウェザーストリップ17が取り付け固定されて、ウェザーストリップ17がフロント側及びリア側の各ドア開口部14,15の周縁と各ドア18,19との間に配置される。そして、各ドア18,19の閉鎖時に各ドア18,19がそれぞれ中空シール部21に当接して中空シール部21を弾性変形させることで、フランジ16と各ドア18,19との間が中空シール部21でシールされる。
【0022】
本実施例のウェザーストリップ17は、例えば、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)等のポリマー材料で形成されているが、このウェザーストリップ17を形成する材料は、弾性を有するポリマー材料であれば良く、熱可塑性合成樹脂(熱可塑性エストラマーを含む)でも良い。
【0023】
このウェザーストリップ17の取付部20、保持リップ27、中空シール部21、突出部26及びカバーリップ28は、少なくともマイクロカプセルが混合されて発泡したポリマー材料、より好ましくはマイクロカプセルと化学発泡剤の両方が混合されて発泡したポリマー材料で形成されている。マイクロカプセルと化学発泡剤(例えば4-4’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド:OBSH)の両方を混合する場合は、マイクロカプセルと化学発泡剤とを例えば2:1の割合で混合すると良い。
【0024】
本実施例では、エチレン・プロピレン・ジエンゴムにマイクロカプセルと化学発泡剤とを2:1の割合で混合して発泡させて、発泡倍率が1.3~2.0の範囲内となる発泡ポリマー材料でウェザーストリップ17を形成すると、ウェザーストリップ17の比重が0.6~0.9の範囲内に収まり、ウェザーストリップ17を軽量化することができる。
【0025】
より好ましくは、ウェザーストリップ17のうち中空シール部21は、取付部20等よりも比重が小さい発泡ポリマー材料、例えば比重が0.6の発泡ポリマー材料で形成して、中空シール部21の変形容易性を取付部20等よりも高めてシール性を高めるようにすると良い。ウェザーストリップ17のうちの中空シール部21以外の部分である取付部20、保持リップ27、突出部26及びカバーリップ28は、中空シール部21よりも比重が大きい発泡ポリマー材料、例えば比重が0.75の発泡ポリマー材料で形成して、中空シール部21よりも弾性力(保持力)を大きくするようにすると良い。また、取付部20、保持リップ27、突出部26及びカバーリップ28の発泡倍率は1.6である。この発泡倍率は1.20(発泡前の比重)/0.75(発泡後の比重)により求められる。一般的には、この発泡倍率は1.3以上2.0以下であることが望ましい。発泡倍率が1.3未満だとウェザーストリップ17を軽量化できない。発泡倍率が2.0より大きいと、ウェザーストリップ17のフランジ16への保持力が小さくなる。
【0026】
更に、ウェザーストリップ17の取付部20の両側壁部23,24の先端部のうち、車内側側壁部24の先端部は、それを形成する発泡ポリマー材料よりも引裂強さが強い非発泡ポリマー材料(発泡していないポリマー材料)で形成された被覆部41で覆われている。車外側側壁部23の先端部には、発泡したポリマー材料(比重0.6)で突片部42が一体的に形成されている。中空シール部21の外面は、保持リップ27を覆う被覆部41と同様に、非発泡ポリマー材料で形成された被覆部43で覆われている。被覆部41,43と突片部42は、ウェザーストリップ17を押出成形する際に取付部20、保持リップ27及び中空シール部21等と一体的に共押出成形されている。
【0027】
被覆部41,43は、比重が1.15から1.35までの範囲内の非発泡ポリマー材料で形成すると良い。本発明者の実験結果によれば、非発泡ポリマー材料の比重が1.15未満であると、非発泡ポリマー材料の被覆部41,43による補強効果が不足して十分な引裂防止効果を得ることができない。また、非発泡ポリマー材料の比重が1.35よりも大きいと、十分な軽量化の効果が得られない。本実施例では、被覆部41,43を形成する非発泡ポリマー材料の比重は、例えば1.35であり、取付部20や保持リップ27等を形成する発泡ポリマー材料と比べて、発泡していない分、比重が大きい。
【0028】
被覆部41,43を形成する非発泡ポリマー材料は、取付部20や保持リップ27等を形成する発泡ポリマー材料と比べて、発泡していない分、引裂強さが強い。例えば、取付部20や保持リップ27等を形成する発泡ポリマー材料の引裂強さが170N/cm(比重が0.75の場合)であるのに対して、被覆部41,43を形成する非発泡ポリマー材料の引裂強さは225N/cm(比重が1.35の場合)である。
【0029】
本実施例では、
図2に示すように、保持リップ27が形成された車内側側壁部24の先端部を覆う被覆部41は、当該車内側側壁部24の先端部から保持リップ27のうちのフランジ16に当接する部分までの領域
の表面を覆うように形成されている。車内側側壁部24の先端部は、芯材22の先端を覆う肉厚t(
図3参照)が0.5~2.2mmの範囲内となるように形成されている。この範囲内の肉厚であれば、車内側側壁部24の側壁部の先端部の薄肉化の要求を十分に満たしながら、非発泡ポリマー材料の被覆部41によって車内側側壁部24の先端部の引裂防止効果も確保することができる。
【0030】
従来は、両側壁部23,24の先端部が非発泡ポリマー材料の被覆部で覆われていないため、
図6に示すように、ウェザーストリップ51の組付時にウェザーストリップ51を両側壁部23,24の先端側を伸ばす方向に曲げると、芯材22の先端を覆う側壁部24の先端部のうち特に肉厚が薄い部分に負荷がかかるため、側壁部24の先端部が芯材22の先端のエッジで比較的容易に引き裂かれてしまい、芯材22が露出してしまうことがあった。
【0031】
これに対し、本実施例では、ウェザーストリップ17の取付部20の車内側側壁部24の先端部は、発泡ポリマー材料よりも引裂強さが強い非発泡ポリマー材料で形成された被覆部41で覆われているため、取付部20の車内側側壁部24の先端部を被覆部41で補強することができる。これにより、取付部20の車内側側壁部24の先端部が薄肉化されていても、その車内側側壁部24の先端部が芯材22の先端のエッジで引き裂かれることを非発泡ポリマー材料の被覆部41で防止することができ、芯材22の露出を防止できる。
【0032】
但し、本発明は、取付部20の車内側側壁部24の先端部のみを非発泡ポリマー材料の被覆部41で覆う構成に限定されず、両側壁部23,24の先端部を非発泡ポリマー材料の被覆部で覆ったり、車外側側壁部23の先端部のみを非発泡ポリマー材料の被覆部で覆うようにしても良い。また、両側壁部23,24のうちのどちらか一方の側壁部の先端部のみを非発泡ポリマー材料の被覆部で覆う場合は、芯材22の先端を覆う肉厚が薄い方の側壁部の先端部のみを非発泡ポリマー材料の被覆部で覆うようにすると良い。
【0033】
また、本実施例では、保持リップ27が形成された車内側側壁部24の先端部を覆う被覆部41は、当該車内側側壁部24の先端部から保持リップ27のうちのフランジ16に当接する部分までの領域の表面を覆うように形成されているため、保持リップ27の根元部分からフランジ16に当接する部分までの領域も非発泡ポリマー材料の被覆部41で補強できると共に、フランジ16に対する保持リップ27の摩擦係数を非発泡ポリマー材料の被覆部41によって増大することができる。これにより、フランジ16に保持リップ27が当接することによる保持力を増大させることができ、フランジ16に対するウェザーストリップ17の取付状態をより安定して保持できる。しかも、車内側側壁部24の先端部を覆う非発泡ポリマー材料の被覆部41が保持リップ27のうちのフランジ16に当接する部分まで延びることで、非発泡ポリマー材料の被覆部41による車内側側壁部24の先端部の補強効果(引裂防止効果)も増大させることができる。
【0034】
一般に、ポリマー材料は、マイクロカプセルを混合して発泡させた場合、化学発泡剤のみを発泡させた場合と比べて、比重がより小さい発泡体を容易に得られ、軽量化に有効である反面、引裂強さが弱いという特性がある。本実施例のように、少なくともマイクロカプセルで発泡させた発泡ポリマー材料で形成した車内側側壁部24の先端部を非発泡ポリマー材料の被覆部41で覆うようにすれば、マイクロカプセルで発泡させた発泡ポリマー材料の利点である軽量化の効果を確保しながら非発泡ポリマー材料の被覆部41による補強効果によって車内側側壁部24の先端部が芯材22の先端のエッジで引き裂かれることを防止でき、ウェザーストリップ17の軽量化と車内側側壁部24の先端部の引裂強さ確保という相反する2つの要求を同時に満たすことができる。
【0035】
但し、本発明は、ウェザーストリップ17の取付部20等を、化学発泡剤のみを混合して発泡させた発泡ポリマー材料で形成した構成としても良く、この場合でも、本発明の所期の目的(芯材22の露出防止)を達成できる。
【0036】
また、本実施例では、取付部20の車外側側壁部23の外側面に、発泡ポリマー材料で中空シール部21を形成し、この中空シール部21の外面を、非発泡ポリマー材料で形成された被覆部43で覆うようにしたので、中空シール部21が摩耗しやすい発泡ポリマー材料で形成されている場合でも、中空シール部21の摩耗を非発泡ポリマー材料の被覆部43によって防止できる。尚、この中空シール部21の外面を覆う被覆部43を形成する非発泡ポリマー材料は車内側側壁部24の先端部を覆う被覆部41を形成する非発泡ポリマー材料と同じ材料としても良く異なる材料としても良い。
【0037】
また、車外側側壁部23の先端部を非発泡ポリマー材料の被覆部で覆う構成とする場合は、車外側側壁部23の先端部を覆う非発泡ポリマー材料の被覆部と中空シール部21の外面を覆う非発泡ポリマー材料の被覆部43とを連続して形成しても良い。或は、車外側側壁部23の先端部の突片部42を非発泡ポリマー材料で形成して、この突片部42と中空シール部21の外面を覆う非発泡ポリマー材料の被覆部43とを連続して形成しても良い。このようにすれば、車外側側壁部23の先端部を覆う非発泡ポリマー材料の被覆部や突片部42による車外側側壁部23の先端部の補強効果(引裂防止効果)を増大させることができる。また、車外側側壁部23の先端部の突片部42を非発泡ポリマー材料で形成する構成を採用すれば、ウェザーストリップ17を押出成形するときに、突片部42と被覆部43を同じ成形型内で連続して成形できるため、生産性が良い。
【0038】
本発明は、
図7に示す他の実施例のように、車内側側壁部24の先端部を覆う非発泡ポリマー材料の被覆部41は、車内側側壁部24の先端部からその両側面のうちの芯材22の先端を越えた位置までの領域を覆うように形成しても良い。このようにすれば、車内側側壁部24の先端部からその両側面のうちの芯材22の先端を越えた位置までの領域を非発泡ポリマー材料の被覆部41で補強することができるため、ウェザーストリップ17の成形時に芯材22の位置がずれて芯材22の先端と車内側側壁部24の先端部付近の側面との間の肉厚が薄くなっても、車内側側壁部24の先端部付近の側面で破れが生じることを防止できる。
【0039】
尚、上記実施例では、車内側側壁部に保持リップを設けたウェザーストリップに本発明を適用したが、これに限定されず、例えば、車外側側壁部に保持リップを設けたウェザーストリップや、車内側側壁部と車外側側壁部の両方に保持リップを設けたウェザーストリップに本発明を適用しても良い。
【0040】
また、上記実施例では、フロントドア開口部やリアドア開口部の周縁に沿って設けられたフランジに取り付けられるウェザーストリップに本発明を適用したが、これに限定されず、例えば、バックドア開口部、トランク開口部等、車体の種々の開口部の周縁に沿って設けられたフランジに取り付けられるウェザーストリップに本発明を適用しても良い。
【0041】
また、上記実施例では、取付部の側壁部に筒状の中空シール部を一体的に設けたトリム材(ウェザーストリップ)に本発明を適用したが、これに限定されず、例えば、取付部の頂壁部に筒状の中空シール部を一体的に設けたトリム材や、取付部に中空部を有しない非中空シール部を一体的に設けたトリム材に本発明を適用したり、或は、シール部(中空シール部や非中空シール部)を備えていないトリム材に本発明を適用しても良い。
【0042】
その他、本発明は、トリム材の各部(取付部、シール部、保持リップ、突出部等)の形状や芯材の形状や保持リップの数等を適宜変更しても良い等、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。
【符号の説明】
【0043】
11…車体、14…フロントドア開口部、15…リアドア開口部、16…フランジ、17…ウェザーストリップ(トリム材)、18…フロントドア(開閉部材)、19…リアドア(開閉部材)、20…取付部、21…中空シール部、23…車外側側壁部、24…車内側側壁部、25…頂壁部、27…保持リップ、41…被覆部、42…突片部、43…被覆部