(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】処理装置
(51)【国際特許分類】
A23N 7/00 20060101AFI20220613BHJP
A23N 12/02 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
A23N7/00 B
A23N12/02 N
(21)【出願番号】P 2020044886
(22)【出願日】2020-03-16
【審査請求日】2020-11-26
(73)【特許権者】
【識別番号】591100563
【氏名又は名称】栃木県
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 功一
(72)【発明者】
【氏名】柿木 泰成
【審査官】比嘉 貴大
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-016129(JP,A)
【文献】特開2004-041102(JP,A)
【文献】特開2011-000542(JP,A)
【文献】特開2002-205019(JP,A)
【文献】特開2012-122739(JP,A)
【文献】特開2006-230206(JP,A)
【文献】特開平03-063013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23N 7/00
A23N 12/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理の対象である植物を搬送する搬送部と、
前記搬送部を搬送される前記植物の処理部位に向けて圧縮ガスを吐出するガス吐出部と、
前記処理部位の画像を取得する撮像部と、
前記ガス吐出部
および前記撮像部を支持しつつ前記ガス吐出部
および前記撮像部を任意の方向に動作させる動作部と、
前記撮像部で取得した前記画像に基づいて、前記処理部位に対する前記動作部の動作を制御する制御部と、を備
え、
前記ガス吐出部および前記撮像部は、前記制御部からの指示に基づいて、前記搬送部による前記植物の搬送に追従して移動することを特徴とする処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、
予め登録された前記処理部位に関する色彩パターンAと、前記撮像部で取得した前記画像から生成される色彩パターンBと、の照合結果に基づいて、前記動作部の動作を制御する、請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、予め登録された前記処理部位に関する色彩パターンAと、前記撮像部で取得した前記画像から生成される色彩パターンBと、の照合結果に基づいて、前記ガス吐出部からの前記圧縮ガスの吐出の開始および吐出の停止を制御する、請求項1または請求項2に記載の処理装置。
【請求項4】
前記搬送部は、搬入側から搬出側まで前記植物を載せて搬送するコンベアベルトを備え、
前記ガス吐出部は、前記コンベアベルトに載せられた前記植物の前記処理部位に向けて前記圧縮ガスを吐出する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の処理装置。
【請求項5】
前記コンベアベルトは、複数の前記植物を前記搬入側から前記搬出側まで連続的に搬送し、
前記ガス吐出部は、先行する前記植物について前記圧縮ガスを吐出して前記処理を終えると、
先行する前記植物よりも上流側を搬送される、後続の前記植物に向けて移動するとともに、前記圧縮ガスを吐出する、請求項4に記載の処理装置。
【請求項6】
前記コンベアベルトは、前記植物を載せる面に、前記処理部位に含まれる色と異なる色が施されている、
請求項4または請求項5に記載の処理装置。
【請求項7】
前記コンベアベルトは、前記植物を載せる面に、前記植物の位置ずれに対する抵抗要素が施されている、
請求項4から請求項6のいずれかに記載の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、葉菜類、例えばニラ、ネギの根本に付いている不要な葉や汚れを除去するのに好適な植物の処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
収穫したニラやネギを出荷するにあたって、一般に、その根本に付いている枯れた葉などの不要葉や汚れを、除去する作業が行われる。この調整と称される作業は、手作業で行われることもあれば、調整装置で行われることもある。
【0003】
例えば、特許文献1には、圧縮空気を用いて調整を行う装置が開示されている。特許文献1の装置は、上下に対向して圧縮空気を吐出する一対のノズルが配置される。このノズルは、円筒形の外筒と、外筒の内部に配置され、内部に圧縮空気が供給され、外筒の内部で回転する円筒形の内筒とを有する。外筒には、側壁を貫通する複数の噴射口が軸線方向に沿って形成される。内筒には、噴射口と略同じ配置の圧縮空気通過口が、側壁を貫通して少なくとも1箇所設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-187925号公報
【文献】特許第4961555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の調整装置は、上下に対向して配置される一対のノズルから圧縮空気が供給される。しかも、特許文献1の調整装置は、ノズルの軸線方向に形成された複数の吐出口から圧縮空気が供給される。したがって、特許文献1の調整装置は、圧縮空気の使用量が少なくない。また、特許文献1は、広範囲にわたって圧縮空気が供給される中を葉菜類が通過するので、相当の量の圧縮空気が調整に関わらないで終わる。したがって、特許文献1の調整装置は、供給する圧縮空気の量に見合った調整作業が行われているとは言い難い。
【0006】
そこで本発明は、消費する圧縮空気の量を抑えつつ、野菜類の調整を含む植物の処理を効率よくできる処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の処理装置は、処理の対象である植物を搬送する搬送部と、搬送部を搬送される植物の処理部位に向けて圧縮ガスを吐出するガス吐出部と、処理部位の画像を取得する撮像部と、ガス吐出部を支持しつつガス吐出部を任意の方向に動作させる動作部と、撮像部で取得した画像に基づいて、処理部位に対する動作部の動作を制御する制御部と、を備える。
【0008】
本発明に係る制御部は、好ましくは、予め登録された処理部位に関する色彩パターンAと、撮像部で取得した画像から生成される色彩パターンBと、の照合結果に基づいて、動作部の動作を制御する。
【0009】
本発明に係る制御部は、好ましくは、予め登録された処理部位に関する色彩パターンAと、撮像部で取得した画像から生成される色彩パターンBと、の照合結果に基づいて、ガス吐出部からの圧縮ガスの吐出の開始および吐出の停止を制御する。
【0010】
本発明に係る搬送部は、好ましくは、搬入側から搬出側まで植物を載せて搬送するコンベアベルトを備え、ガス吐出部は、コンベアベルトに載せられた植物の処理部位に向けて圧縮ガスを吐出する。
【0011】
本発明に係るコンベアベルトは、好ましくは、複数の植物を搬入側から搬出側まで連続的に搬送し、ガス吐出部は、先行する植物について圧縮ガスを吐出して処理を終えると、先行する植物よりも上流側を搬送される、後続の植物に向けて移動するとともに、圧縮ガスを吐出する。
【0012】
本発明に係るコンベアベルトは、好ましくは、植物を載せる面に、処理部位に含まれる色と異なる色が施されている。
【0013】
本発明に係るコンベアベルトは、好ましくは、植物を載せる面に、植物の位置ずれに対する抵抗要素が設けられている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、処理する植物に対してノズルが相対的な移動をしながら圧縮ガスを吐出する。しかも、本発明によれば、取得した画像を参照することにより圧縮ガスを当てるべき野菜上の処理部位を捕捉する。したがって、本発明によれば、ノズルが仮に一つしかないとしても、圧縮ガスを必要な処理部位に向けて吐出できるので、消費する圧縮空気の量を抑えつつ、植物類の処理作業、例えばニラに対するそぐりの効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る野菜の処理装置の概略構成を示す図である。
【
図2】
図1の処理装置の制御部の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図1の処理装置における準備手順の工程を示すフローチャートである。
【
図4】
図1の処理装置における実手順の工程を示すフローチャートである。
【
図5】
図1の処理装置における準備手順および実手順の流れを取得する画像とともに示す図である。
【
図6】
図1の処理装置における実手順で取得する画像を示す図である。
【
図7】
図1の処理装置における準備手順で取得する他の画像を示す図である。
【
図8】
図1の処理装置を用いてニラのそぐりを行う手順における、撮像された元画像と元画像から抽出される画像との一例を示す図である。
【
図9】
図1の処理装置を用いてニラのそぐりを行う手順における、撮像された元画像と元画像から抽出される画像との他の例を示す図である。
【
図10】
図1の処理装置におけるノズルの追跡動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態についてニラのそぐり作業を例にして説明する。
本実施形態に係る処理装置1は、連続的に搬送されるニラVに対してガス吐出部としてのノズル10が相対的な動作をしながら圧縮空気を吐出する。しかも、処理装置1によれば、デジタルカメラ31で撮像した画像を認識することにより圧縮空気を吐出すべきニラVのそぐり対象部分を捕捉する。したがって、処理装置1によれば、ノズル10が一つであっても、圧縮空気をニラVの必要な位置に吐出できるので、消費する圧縮空気の量を抑えつつ、そぐりに代表される野菜類の処理ができる。
【0017】
[処理装置1の全体構成:
図1参照]
処理装置1は、
図1に示すように、圧縮空気を吐出するノズル10と、ノズル10から吐出される圧縮空気をノズル10に供給する供給部20と、圧縮空気が吐出されるニラVのそぐり対象部分の画像を取得する撮像部30と、を備える。また、処理装置1は、ノズル10および撮像部30を保持するとともに、ノズル10および撮像部30を動作させる動作部40と、処理の対象となるニラVを搬送する搬送部50と、を備える。加えて、処理装置1は、供給部20、撮像部30、動作部40および搬送部50の動作を制御する制御部60を備えている。
【0018】
処理装置1は、制御部60による供給部20、撮像部30、動作部40および搬送部50の動作を制御しながら、概略、以下のようにしてそぐりを行う。
搬送部50で連続的に搬送されてくるニラVのそぐり対象部分に向けてノズル10から圧縮空気を吐出する。撮像部30で取得されたそぐり対象部分の画像に基づいて、そぐりが必要な部位にノズル10からの圧縮空気が当たるように、動作部40がノズル10を動作させる。このノズル10の動作は、搬送部50によるニラVの搬送による移動も考慮して行われる。以下、処理装置1の各要素について説明した後に、処理装置1によるニラVのそぐり動作をより具体的に説明する。
【0019】
[ノズル10:
図1参照]
処理装置1のノズル10には、図示を省略するが、内部を圧縮空気が流れる流路が形成される筒状の形態をなす簡易な構造を適用できる。このノズル10は、先細りとされる先端に吐出口が形成され、この吐出口からニラVのそぐり対象部分に向けて圧縮空気が吐出される。処理装置1は、
図1に示すように、最小の構成として一つのノズル10を備えていれば、高い効率でそぐりを行うことができる。
ノズル10は、動作部40に保持されており、動作部40によりそぐりを行うのに適した位置に動作される。この動作の過程においても、ノズル10からニラVに向けて圧縮空気が吐出される。なお、本実施形態において、動作とは、ノズル10などの直線的または曲線的な移動に加えて、ノズル10の向きを変えることを含む。
【0020】
[供給部20:
図1参照]
供給部20は、制御部60からの指示に基づいて、圧縮空気をノズル10に供給する。
供給部20は、圧縮機21と、圧縮機21で生成される圧縮空気をノズル10まで送り届ける流路が内部に形成される配管23と、を備える。また、供給部20は、配管23の流路を開閉する開閉弁25と、開閉弁25よりも配管23の下流側に設けられる減圧弁27と、開閉弁25と制御部60を繋ぐ信号線29と、を備える。なお、供給部20において、上流および下流は、圧縮空気が流れる向きを基準にして定められる。また、供給部20において、圧縮ガスとして例示されるのは圧縮空気であるが、例えば酸化が許容されないような場合には、圧縮された窒素ガスなどの不活性ガスを圧縮ガスとして用いることができる。
【0021】
処理装置1においてニラVのそぐりを行っている際には、開いている開閉弁25を通って圧縮空気はノズル10に供給される。圧縮空気はその途中で減圧弁27を通ることで所定の圧力に減圧される。これにより、圧縮空気はノズル10から、例えば200~300kPaの範囲の安定した圧力の圧縮空気が吐出される。
処理装置1においてニラVのそぐりを停止する際には、開閉弁25が閉じられる。ニラVのそぐりを再開するには、開閉弁25が開かれる。開閉弁25の開閉動作は、制御部60の指示により行われる。
【0022】
[撮像部30:
図1参照]
次に、撮像部30は、圧縮空気が吐出されるニラVのそぐり対象部分の画像を撮影する。この撮影は、処理装置1においてニラVのそぐりが行われている最中に継続して行われる。つまり、撮像部30で撮影された画像はいわゆる動画であり、動画を構成する画像データは制御部60に逐次送られる。制御部60は送られてくる画像を処理した結果に基づいて、動作部40を介してノズル10および撮像部30を移動させる。
【0023】
撮像部30は、具体的にはデジタルカメラ31と、デジタルカメラ31と制御部60を電気的に繋ぐ信号線33と、を備えている。デジタルカメラ31は、例えば固体撮像素子としてCCDイメージセンサ(Charge Coupled Device Image Sensor)、CMOSイメージセンサ(Complementary Metal Oxide Semiconductor image sensor)を備えるものを用いることができる。なお、後述するニラVの画像は、例えば解像度が640×480(ピクセル)、フレームレートが30Hzのデジタルカメラで撮影される。
デジタルカメラ31は、制御部60の指示に従ってそぐり対象部分を撮影し、撮影された画像は信号線33を通って制御部60に送られる。
【0024】
[動作部40:
図1参照]
動作部40は、ノズル10およびデジタルカメラ31を保持するとともに、ノズル10およびデジタルカメラ31を移動、または向きを変えさせる。この移動および向きを変えるといった動きの全体を動作と称している。
動作部40は、マニュピレータ41と、マニュピレータ41に支持されるとともにノズル10およびデジタルカメラ31を保持するハンド43と、マニュピレータ41と制御部60を接続する信号線45と、を備える。
【0025】
マニュピレータ41は、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の三次元の動作ができることが求められるが、その具体的な種類は問われない。例えば、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向のそれぞれに駆動される可動体を組み合わせた直動式のマニュピレータを用いることができる。また、回転関節あるいは直動関節で接続されるリンクを備えるマニュピレータを用いることができる。マニュピレータ41は、例えば移動範囲が定まっていることがあり、この場合には移動の始点から終点までかけてそぐりを終えると、始点まで戻って次のそぐりを行うことができる。
動作部40は、制御部60からの指示に基づいてそぐりが行われるニラVの搬送およびそぐりの進行に追従して、ノズル10およびデジタルカメラ31を移動させる。
【0026】
[搬送部50:
図1参照]
搬送部50は、処理の対象となるニラVが搬入される位置(IN)から処理済みのニラVが搬出される位置(OUT)までニラVを搬送する。搬送部50においてニラVが搬入されかつ搬出されるまでに搬送される経路を搬送路という。ニラVが搬送路を搬送される過程で、ノズル10から圧縮空気をそぐり対象部分に向けて吐出することで、そぐりが行われる。
【0027】
搬送部50として、コンベア式の搬送装置が適用され、無限循環帯であるコンベアベルト51と、コンベアベルト51が掛け回される駆動プーリ53および従動プーリ55と、駆動プーリ53を回転駆動させる電動モータ57と、電動モータ57と制御部60を繋ぐ信号線59と、を備える。
制御部60の指示にしたがって電動モータ57が所定の回転速度で回転されることにより駆動プーリ53が回転駆動されることにより、コンベアベルト51が所定速度で走行する。これに伴ってコンベアベルト51に載せられるニラVは所定速度で搬送路を搬送される。所定速度は、例えば3~10cm/sec.とされる。
コンベアベルト51は、白色を含むニラVの根本と色彩上の違いを明らかにするために、ニラVを載せて搬送する面は、白色以外の色、例えば青色を呈することが好ましい。
【0028】
[制御部60:
図2,
図3,
図4参照]
制御部60は、供給部20の開閉弁25の開閉動作と、動作部40のマニュピレータ41の移動動作と、搬送部50の電動モータ57の回転動作と、を制御する。また、制御部60は、デジタルカメラ31を介して取得するそぐり対象部分の画像と事前に取得されているそぐり部位の画像とを照合することにより、そぐりの進行状況を評価するとともに、マニュピレータ41に必要な動作条件を算出する。開閉弁25の開閉およびマニュピレータ41の動作は、この評価および算出結果に基づいている。以上の機能を発揮する制御部60は、
図2に示すように、送受信部61と、記憶部63と、入力部65と、表示部67と、評価・制御部69と、を構成要素として備える。制御部60は、CPU(Central Processing Unit)、メモリなどを備えるコンピュータ装置から構成される。
【0029】
送受信部61は、開閉弁25の開閉動作、マニュピレータ41の移動動作および電動モータ57の回転動作のための制御信号を、それぞれ信号線29、信号線33および信号線59を介して送る。また、送受信部61は、デジタルカメラ31で撮影された画像を信号線45を通じて受信する。
【0030】
記憶部63は、後述する評価に必要な色彩パターンを記憶する。この色彩パターンは、そぐり作業に先立って行われる準備手順において取得され記憶部63に記憶される。色彩パターンについて詳しくは評価・制御部69のところで説明する。記憶部63は、色彩パターンの他にも種々のデータを記憶することができる。
【0031】
入力部65は、データおよび命令を入力するためのキーボード、マウス、およびライトペン等の入力装置を含む。
表示部67は、モニタ用の液晶その他のディスプレイ装置を含む。このディスプレイ装置は、タッチパネル式のものを用いることもできる。この場合、入力部65と表示部67は外観上は一体を構成する。
【0032】
評価・制御部69は、以下説明する評価手順を実行するためのコンピュータプログラムが組み込まれる。このプログラムは、画像処理機能を中心に位置情報などのデータの入力、記憶、加工、判断および記憶部63へのデータ記憶、保存等を処理するための手順を含んでいる。
また、評価・制御部69は、評価の結果に基づいてそぐりが実行されるように制御値を生成して、送受信部61を介して制御対象である開閉弁25、マニュピレータ41、電動モータ57に指示する。
【0033】
[評価手順]
評価・制御部69における手順は、特許文献2における開示を踏襲する部分があるが、概略を説明すると以下の通りである。なお、
図3および
図4も参照願いたい。
この手順は、準備手順と実手順に区分される。準備作業はニラVのそぐりに先行して行われ、実手順はニラVのそぐりの最中に行われる手順である。
準備手順は、固有色選択工程(
図3 S101)、色要素2元化処理工程(S103)および色彩パターン登録工程(S105)を備える。実手順は、作業域色要素2元化処理工程(
図4 S201)、対象部分位置表示工程(S203)、対象部分マーキング工程(S205)、マーキング優先順位決定工程(S207)および複合選別工程(S209)を備える。以下、準備手順、実手順の順に説明する。
【0034】
[準備手順:固有色選択工程(
図3 S101)]
固有色選択工程においては、ニラVのそぐりが行われる根本(以下、そぐり部位)のデジタル化された全色系のカラー画像のデータを、表示部67に入力して再生し、その再生画像内でそぐり部位に特徴的な色である黄色の部分を所望する固有色として選択する。
この全色系のカラー画像のデータは、そぐりの作業現場での現物のニラVをデジタルカメラで撮影した画像から得てもよいし、すでに撮影されたカラー写真をスキャナで読み込んでデジタル化した画像から得てもよい。
【0035】
[準備手順:色要素2元化処理工程(S103)]
次に、色要素2元化処理工程では、選択された黄色の部分の全色系の色データを基に、コンピュータプログラムにより明暗に関する色要素を除いた二つの色要素の色データに転換させて、二軸座標面でカラー表示可能な色彩空間データAを得る。なお、「A」は実工程で得られる色彩空間データB、色彩パターンBと区別する記号である。
この色彩空間データAは、ニラVの形状を表示すものではなく、2つの色要素を縦横の軸方向とした座標による二軸座標面の形状で示されるデータである。この段階では、ニラVの選択された箇所の周辺部分の色が一部含まれている。
【0036】
[準備手順:色彩パターン登録工程(S105)]
色要素2元化処理工程で得られる色彩空間データAはそぐりの対象部位の特徴的な色のデータではあるが、この色彩空間データAをさらに2次加工して、次の工程での色彩パターンデータとの比較照合と絞込みができるようにする。そこで色彩パターン登録工程では、色要素2元化処理工程で得られた色彩空間データAを表示部67に表示し、そのカラー画像から、さらに特徴的な黄色部分から濃い黄色を選別し、この濃い黄色を、そぐりの対象部位の色彩パターンAとして記憶部63に記憶させる。
この画像処理は、ブロック状に表示された色彩空間データAの中の最も特徴的な色彩を表すブロックを選択することによって色彩パターンAが決まり、ニラVの不要葉が確実に識別されるようになる。色彩パターンAの具体的な一例が
図5に示されている。
この対象部分の色彩パターンAのデータを準備手順なおいて事前に記憶することにより、次の実作業の現場で得られたそぐり対象部分の色の明暗に関するデータが含まれない色彩空間データBと比較照合が可能になり、不要葉の正確な存在位置の絞込み特定ができるようになる。
以上で準備手順は終了し、以下では実手順を説明する。
【0037】
[実手順:作業域色要素2元化処理工程(
図4 S201)]
作業域色要素2元化処理工程において、実際にそぐり作業の対象となる枯れたまたは枯れかかった葉である不要葉の周辺を含むそぐりの対象部分を全色系のデジタルカラー画像としてデジタルカメラ31で撮影する。制御部60の評価・制御部69が備えるコンピュータプログラムを用いて、その全色系の色データを明暗に関する色要素を除いた二つの色要素の色データBに転換させて二軸座標面でカラー表示可能な色彩空間データBを得る。色彩空間データBは記憶部63に記憶されるとともに、色彩パターンAと同様にして色彩パターンBが生成されるとともに記憶部63に記憶される。色彩パターンBの具体的な一例が
図5に示されている。なお「B」は、準備手順で得られる色彩空間データAなどと区別するためのものである。
【0038】
[実手順:対象部分位置表示工程(S203)]
対象部分位置表示工程では、作業域色要素2次元化処理工程で得られた色彩パターンBの色データBと色彩パターンAの色データAとが照合される。そして、色データAと色データBの両者が合致する部分のみが、そぐりの対象部位である不要葉の存在位置として認識される。両者が合致する不要葉のデータを、表示部67に不要葉の存在位置として表示させる。
つまり、対象部分位置表示工程において、色データAと色データBが合致した部分が不要葉の存在位置として認識され、その部分が表示部67の画像中に表示され、不要葉の存在位置が視認される。照合の結果の具体的な一例が
図5に示されている。
【0039】
[実手順:対象部分マーキング工程(S205)]
対象部分位置表示工程においては、表示部67の画像中にニラVの不要葉を表示するので、作業者は不要葉の存在位置を認識できるが、評価・制御部69が判断するまでの段階にはない。そこで、対象部分マーキング工程では、表示部67の画像中に存在位置が表示された濃い黄色があるニラVに対して、認識すべき画像内の濃い黄色のある部分の大きさに合わせて画面内での囲い範囲を決めておく。そして、対象部分位置表示工程で表示部67の画像中に表示された濃い黄色のある部分の位置データであって特定範囲に存在するものについて自動的にその位置を識別し、その識別位置にマーキング処理する。マーキング処理が施された具体的な一例が
図5に示されている。
【0040】
[実手順:マーキング優先順位決定工程(S207)]
対象部分マーキング工程において、表示部67の画像中に濃い黄色の部分が複数表示されたとき、それぞれの濃い黄色部分に対して、評価・制御部69で優先条件を設定したプログラムにしたがって自動的に優先順にマーキングをする。これによってそぐりの対象が選択される。
【0041】
[実手順:複合選別工程(S209)]
複合選別工程において不要葉と食用に供される葉(食用葉)の部分との認識が行われる。
この複合選別工程の前提として、準備手順の色彩パターン登録工程(S105)および実手順の作業域色要素2元化処理工程(S201)において、食用葉についての色彩パターンA、色データA、色彩パターンAおよび色データBが記憶される。
このように、ニラVに対して色彩パターン、色データを食用葉(ニラ本体部分)の深緑色の部分と不要葉の黄色の部分とを別々に記憶、登録させておく。さらに、その深緑色の色彩パターンデータのラベリングと黄色の色彩パターンデータのラベリングとを行い、実際のそぐり作業において表示部67の画像中にその両方を並列的に同時処理し、同じ画面で表示できるように設定する。くわえて、対象部分位置表示工程で表示部67の画像中に存在位置が表示されたニラVの深緑色と黄色の両者の囲い範囲が一部分重なった部分以外の位置データは捨象する。
こうすることで、食用葉および不要葉に対して誤って識別して取り入れている画像は消去されて食用葉および不要葉の存在位置と範囲が明確になる。
このように得られた食用葉と不要葉の共存状態とその位置データを基づいて、不要葉に向けてノズル10を移動させるとともに圧縮空気を吐出させる。
【0042】
[実作業の実例:
図5~
図10]
次に、実際にそぐり作業を行った結果を
図5~
図10を参照して説明する。
この作業における評価・制御部69における手順の概略は、
図5に示すよう、準備作業で登録されている色彩パターンA(
図7)と実手順で取得、登録される色彩パターンB(
図6)とを照合し、両者が合致する部分が抽出される。合致部分のデータ、つまりそぐりの対象となる不要葉を示す画像データ(
図6 照合結果)は表示部67に表示される。その後、合致部分について、前述したマーキング、ラベリングなどを施すことにより、その寸法、位置が評価される。その結果は、そぐり位置として三次元座標(x,y,z)として認識される。
なお、
図6の色彩パターンBにおいて、コンベアベルト31である背景部分は青色、ニラ本体部分は深緑色を呈している。また、
図6の色彩パターンBにおいてそぐりの対象となる抽出部分、
図6の照合結果(合致部分)は黄色を呈している。
【0043】
評価・制御部69は、ノズル10からそぐり位置(x,y,z)に圧縮空気が吐出されるようにマニュピレータ41の動作を制御するとともに、圧縮機21からノズル10に圧縮空気が供給されるように開閉弁25を開く。そぐりが行われている間、開閉弁25は開いたままとされるが、先行するニラVについてそぐりを終えると、後続のニラVについてそぐりを始めるまで開閉弁25は閉じられる。
【0044】
図8および
図9は、そぐりの実例を示している。
図8および
図9において、元画像と合致部分はともに(A)、(B)、(C)および(D)が時系列を示しており、例えば同じ(A)が付された元画像と合致部分は同じタイミングの画像であることを示している。
【0045】
図8および
図9において、(A)のタイミングは、ノズル10からの圧縮空気の吐出が未だなされていないが、元画像においてそぐりの対象となる不要葉は白色の楕円で囲まれている。
図8および
図9において、合致部分が画像の中央部分に位置したら、評価・制御部69は開閉弁25が開くように指示を発する。
図8の例においては(C)のタイミングが該当し、
図9の例においては(B)のタイミングが該当する。
ノズル10は、画像の中央部分に対応する原点において待ち受けており、圧縮空気の吐出が開始されると、ニラVの搬送による移動およびそぐりの進行にともなうそぐり部位の移動を追跡する。
図9の例において、元画像の(C)のタイミングには不要葉が圧縮空気を受けて触れ回る様子が示されているが、ノズル10は触れ回る不要葉を追跡しながら圧縮空気を不要葉に吐出する。
【0046】
図10に追跡の一例を示している。なお、
図10において、白抜き矢印の向きがニラVの搬送方向および時間の経過を示している。また、
図10の右端の図において、一点鎖線P1はノズル10からの圧縮空気の吐出が始まった位置を示し、これは搬送部50における同じ位置P1を示している。
図10に示すように、ノズル10は位置および傾きを変えながら不要葉を追跡しながら圧縮空気を吐出してそぐりを行う。
なお、
図10において、ノズル10は水平方向の位置および向きが変わる形態を示しているが、向きだけ変わってもよいし、鉛直方向の位置が変わってもよい。
【0047】
そぐりの対象となる不要葉が除去され存在しなくなれば、合致部分がなくなる。したがって、
図8および
図9に示すように、(D)のタイミングにおいて合致部分がなくなり、かつ、元画像からも不要葉は除去されたために映っておらず、そぐりが完了したことが認識される。そうすると評価・制御部69は、ノズル10が原点に復帰するように、マニュピレータ41に移動を指示する。
【0048】
[効 果]
以下、処理装置1が奏する効果を説明する。
処理装置1は、一つの吐出孔を有するノズル10が、不要葉を追跡しながらそぐりを行うことができるので、むだのないように圧縮空気を不要葉に吐出させることができる。
したがって、処理装置1によれば、消費する圧縮空気の量を抑えつつ、そぐりを行うことができる。特に、処理装置1は、色データAと色データBとの合致部分の有無により、開閉弁25の開閉動作を制御できるので、必要最小限の期間だけ圧縮空気を吐出できるので、この観点からも圧縮空気の消費量を抑えることができる。また、処理装置1を構成する要素も簡素であり、装置全体としてのコストを抑えることができる。
【0049】
また、処理装置1は、色データAと色データBとの合致部分を参照することにより、ノズル10からの圧縮空気をそぐりが必要な不要葉を追跡できる。
したがって、処理装置1によれば、不要葉を残さずにそぐりを終えることができる。しかも、色データAと色データBとの合致部分の有無により、そぐりの開始および終了を特定できるので、先行するそぐりと後続のそぐりを安定して繰り返すことができる。
【0050】
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【0051】
[処理対象・処理作業]
処理装置1は、ニラを例にして説明したが、本発明の処理装置はニラ以外の野菜、その他の植物に広く適用され得る。例えば、ネギ、ホウレンソウ、小松菜などの葉茎菜類、ゴボウ、ニンジンなどの根菜類などを本発明の処理装置による処理対象にすることができる。
また、処理装置1は、そぐりを例にして説明したが、本発明の処理装置が行う処理の作業に制限はなく、そぐり以外の作業に適用され得る。例えば、農産物、花類などの根元、窪みなどに付着する土、害虫など、商品として取り除くことが要求される物を排除するのに本発明の処理装置を用いることができる。
【0052】
[そぐり効率の向上]
以上説明した実施形態においては、一台の搬送部50に対し、一対のノズル10およびデジタルカメラ31を設ける例を説明したが、本発明はこれに限らない。一台の搬送部50に対し、複数対のノズル10およびデジタルカメラ31を設けることにより、単位時間当たりにそぐりを行うことができるニラの本数を増やすことができる。
【0053】
[コンベアベルト51の走行速度]
以上説明した実施形態においては、コンベアベルト51は一定の速度で走行することを前提としているが、本発明はこれに限らず、速度を変えてコンベアベルト51を走行させることができる。例えば、ニラVのそぐりを行っている最中は一定の速度VL1でコンベアベルト51を走行させるが、先行するニラVのそぐりを終えて後続のニラVに対峙するまでは速度VL1よりも速い速度VL2でコンベアベルト51を走行させることができる。
【0054】
[ニラVの位置ずれ防止]
前述したように、そぐりが行われている最中に、ニラVはコンベアベルト51に載せられているだけで足り、ニラVを固定する部材は基本的には必要ない。しかし、ニラVの根元に200~300kPa程度の圧縮空気が噴射されるため、そぐり対象となっているニラVが位置ずれを起こすこともある。本発明は、ノズル10がそぐり対象部分を追跡するので、ニラVが位置ずれを起こしても対応できる場合がほとんどであるが、位置ずれの量によってはノズル10が追跡できないこともあり得る。そこで、ニラVの位置ずれを抑えるために、コンベアベルト51のニラVが載せられる面にニラVの動きを規制する抵抗要素を設けることが好ましい。抵抗要素としては、所定間隔を隔てて設けられる突起物、ニラVの一部または全部を収容する窪みなどが掲げられる。これら抵抗要素は、ニラVを固定するものである必要はないので、作業の負担を増やすことがない。
【0055】
[圧縮ガス]
圧縮ガスは、空気に限らず不活性ガスなどの他の気体を含むことを先に述べたが、本発明における圧縮ガスこの圧縮ガスの中に微小量の液体を含むことができる。この液体としては、例えば害虫を取り除くことを目的とする場合には液状の薬剤が掲げられる。
また、本発明において圧縮ガスの流体形態は層流および乱流の両者を含み、処理の対象によって層流または乱流が選択されるのが好ましい。
【符号の説明】
【0056】
1 処理装置
10 ノズル
20 供給部
21 圧縮機
23 配管
25 開閉弁
27 減圧弁
29 信号線
30 撮像部
31 デジタルカメラ
33 信号線
40 動作部
41 マニュピレータ
43 ハンド
45 信号線
50 搬送部
51 コンベアベルト
53 駆動プーリ
55 従動プーリ
57 電動モータ
59 信号線
60 制御部
61 送受信部
63 記憶部
65 入力部
67 表示部
69 評価・制御部
A,B 色彩パターン