IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 学校法人 東洋大学の特許一覧

<>
  • 特許-果実袋 図1
  • 特許-果実袋 図2
  • 特許-果実袋 図3
  • 特許-果実袋 図4
  • 特許-果実袋 図5
  • 特許-果実袋 図6
  • 特許-果実袋 図7
  • 特許-果実袋 図8
  • 特許-果実袋 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】果実袋
(51)【国際特許分類】
   A01G 13/02 20060101AFI20220613BHJP
   B65D 30/20 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
A01G13/02 101A
B65D30/20 H
B65D30/20 M
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017085626
(22)【出願日】2017-04-24
(65)【公開番号】P2018183071
(43)【公開日】2018-11-22
【審査請求日】2020-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】501061319
【氏名又は名称】学校法人 東洋大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100206999
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 綾夏
(74)【代理人】
【識別番号】100192773
【弁理士】
【氏名又は名称】土屋 亮
(72)【発明者】
【氏名】望月 修
(72)【発明者】
【氏名】松本 浩乃
(72)【発明者】
【氏名】窪田 佳寛
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-023751(JP,U)
【文献】韓国登録実用新案第20-0476848(KR,Y1)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0045035(KR,A)
【文献】特開2016-029904(JP,A)
【文献】登録実用新案第3200959(JP,U)
【文献】実公平06-047254(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 11/00 - 15/00
B65D 30/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に果実を収容する果実袋であって、
前記果実の周囲を水平方向から囲む胴部を有し上側に開口する袋本体を備え、
前記胴部には、折線状の山折り部と折線状の谷折り部とが設けられ
山折り部と折線状の谷折り部とは、水平方向に沿って延び、上下方向に沿って交互に並ぶ、果実袋。
【請求項2】
前記胴部の上側において袋本体の開口を閉じための紐部を備えた、請求項1に記載の果実袋。
【請求項3】
前記胴部は、上下方向から見て略円形である、
請求項1又は2に記載の果実袋。
【請求項4】
前記山折り部および前記谷折り部は、周方向に沿って一様に延びている、請求項1~3の何れか一項に記載の果実袋。
【請求項5】
前記胴部に、ミウラ折りによって前記山折り部と谷折り部とが設けられている、請求項1~3の何れか一項に記載の果実袋。
【請求項6】
谷折り部の直径に対する山折り部同士の距離の比は、1/10以上、2/10以下とする、請求項1~4の何れか一項に記載の果実袋。
【請求項7】
谷折り部の直径に対する山折り部と谷折り部との径方向に沿う距離の比は、0.87/10以上、1.73/10以下とする、請求項1~4の何れか一項に記載の果実袋。
【請求項8】
前記袋本体は、前記胴部の下側に位置し前記胴部の下側の開口を覆う円形の底部を有する、
請求項1~7の何れか一項に記載の果実袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は果実袋に関する。
【背景技術】
【0002】
果実栽培では、病害虫、日光および風雨から果実を守る目的で、果実に果実袋が掛けられる。一方で、果実袋を掛けられた果実は、風に対する抵抗係数が大きくなり、落下の要因となることが指摘されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】松本浩乃,窪田佳寛,大石正行,望月修,リンゴの袋掛けと強風落下との関係,日本機械学会論文集,vol.82(2016), No.833, DOI: 10.1299/transjsme.15-00389, (2016),pp.1-8.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
果実を確実に保護するとともに、果実の落下の要因となり難い果実袋が求められている。本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたもので、風に起因する果実の落下を抑制する果実袋の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の一態様の果実袋は、内部に果実を収容する果実袋であって、前記果実の周囲を水平方向から囲む胴部を有し上側に開口する袋本体を備え、前記胴部には、折線状の山折り部と折線状の谷折り部とが設けられ、山折り部と折線状の谷折り部とは、水平方向に沿って延び、上下方向に沿って交互に並ぶ。
【0006】
上述の果実袋において、前記胴部の上側において袋本体の開口を閉じための紐部を備えた構成としてもよい。
【0007】
上述の果実袋において、前記胴部は、上下方向から見て略円形である構成としてもよい。
【0008】
上述の果実袋において、前記山折り部および前記谷折り部は、周方向に沿って一様に延びている構成としてもよい。
【0009】
上述の果実袋において、前記胴部に、ミウラ折りによって前記山折り部と谷折り部とが設けられている構成としてもよい。
上述の果実袋において、谷折り部の直径に対する山折り部同士の距離の比は、1/10以上、2/10以下とする、構成としてもよい。
上述の果実袋において、谷折り部の直径に対する山折り部と谷折り部との径方向に沿う距離の比は、0.87/10以上、1.73/10以下とする、構成としてもよい。
上述の果実袋において、前記袋本体は、前記胴部の下側に位置し前記胴部の下側の開口を覆う円形の底部を有する、構成としてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、抵抗係数の増加を抑制した果実袋を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態の果実袋の使用例を示す斜視図。
図2】第1実施形態の果実袋の正面図。
図3】第1実施形態の果実袋の側面図。
図4】第1実施形態の果実袋の平面図。
図5】第1実施形態の果実袋の底面図。
図6】第1実施形態の果実袋を折り畳んだ状態を示す正面図。
図7】第2実施形態の果実袋の正面図。
図8】実施例におけるサンプル(d)の写真。
図9】実施例におけるサンプル(a)~(e)の抵抗係数の測定結果。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る果実袋について説明する。以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせる場合がある。また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。
【0013】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の果実袋1の使用例を示す斜視図である。図2図3図4図5は、それぞれ果実袋1の正面図、側面図、平面図、底面図である。また、図6は、果実袋1を折り畳んだ状態を示す正面図である。
【0014】
図1に示すように、鉛直方向と平行であり果実袋1の中心を通過する軸を中心軸Jとする。また、以下の説明においては、Z軸方向の正の側(+Z側,一方側)を「上側」と呼び、Z軸方向の負の側(-Z側,他方側)を「下側」と呼ぶ。なお、本明細書における各方向は、果実袋使用時の姿勢の一例であり、果実袋の姿勢を限定するものではない。また、特に断りのない限り、中心軸Jに平行な方向を単に「軸方向」又は「上下方向」と呼び、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸Jを中心とする周方向、すなわち、中心軸Jの軸周りを単に「周方向」と呼ぶ。
【0015】
果実袋1は、袋本体5と、紐(紐部)2と、を有する。袋本体5は、上側に開口する袋状に形成されている。袋本体5の内部空間には、果実Fが収容される。
【0016】
袋本体5は、紙、不織布、合成樹脂製フィルムなどにより構成されている。袋本体5は、筒状の胴部20と、胴部20の上側に位置し胴部20の上側の開口を覆う集縛部10と、胴部20の下側に位置し胴部20の下側の開口を覆う底部30と、を有する。集縛部10には、紐2が取り付けられている。
【0017】
胴部20は、上下方向(軸方向)に延びる筒形状を有している。胴部20は、上下方向から見て円形である。胴部20は、果実Fの周囲を水平方向から囲む。胴部20は、複数の第1の帯状部21と複数の第2の帯状部22とを有する。第1および第2の帯状部21、22は、上下方向に沿って交互に並ぶ。第1および第2の帯状部21、22は、周方向に沿って延びる。
【0018】
第1および第2の帯状部21、22は、中心軸Jを中心とする円錐柱の円錐面状に形成されている。第1の帯状部21は、上側から下側に向かって直径を大きくする。したがって、第1の帯状部21は、下端部の直径が上端部の直径より大きい。一方で、第2の帯状部22は、上側から下側に向かって直径を小さくしており、上端部の直径が下端部の直径より大きい。
【0019】
第1の帯状部21の下端部は、その下側に位置する第2の帯状部の上端部と接続されている。また、第2の帯状部22の下端部は、その下側に位置する第1の帯状部の上端部と接続されている。したがって、第1の帯状部21の下端部の直径は、第2の帯状部22の上端部の直径と一致し、第2の帯状部22の下端部の直径は、第1の帯状部21の上端部の直径と一致する。
【0020】
第1の帯状部21と第2の帯状部22との間には、山折り部26又は谷折り部27が位置する。山折り部26は、第1の帯状部21の下端部と第2の帯状部22の上端部との境界に位置する。谷折り部27は、第2の帯状部22の下端部と第1の帯状部21の上端部との境界に位置する。換言すると、山折り部26および谷折り部27は、第1および第2の帯状部21、22を区画する。山折り部26と谷折り部27は、胴部20の上下方向に沿って交互に並ぶ。山折り部26および谷折り部27は、それぞれ周方向に沿って一様に延びている。
【0021】
次に胴部20の作用について説明する。
水平方向に流れる風の中に、果実Fのような障害物を置くとき、障害物の後方(風の下流側)には、カルマン渦が形成される。カルマン渦は、障害物の表面から風が剥離する過程で生じる。このため、果実Fの後方では、圧力が低下して果実が後方に引っ張る応力が生じる。また、カルマン渦は、風の進行方向に対して左右に偏って交互に形成されるため、果実Fは、風の進行方向に対して左右に周期的に揺らされ、果実Fの落下の原因となる。
本実施形態によれば、胴部20に山折り部26および谷折り部27が、上下方向に沿って交互に形成されている。したがって、胴部20の後方には、山折り部26同士の間にそれぞれ形成され上下方向に並ぶ複数のカルマン渦が形成される。すなわち、本実施形態によれば、山折り部26において、カルマン渦を上下方向に分断し、それぞれのカルマン渦を小さくできる。これにより、胴部20の後方の圧力低下を抑制し、果実Fを後方に引っ張る応力および左右に揺らす応力を小さくして果実Fの落下を抑制できる。
また、本実施形態の胴部20は、上下方向から見て円形である。したがって、風が水平面内の如何なる方向から胴部20に当たる場合であっても、上述の効果を奏することができる。
【0022】
谷折り部27の平面視における直径D3は、果実袋1内に収容される果実の収穫時の直径より若干大きく形成される。
また、図2に示すように、隣り合う山折り部26同士の上下方向に沿う距離(すなわちピッチ)D1は、谷折り部27の直径D3の1/10以上、2/10以下とすることが好ましい。すなわち、谷折り部27の直径D3に対する山折り部26同士の距離D1の比(D1/D3)は、1/10以上、2/10以下とすることが好ましい。距離D1を直径D3の1/10以上とすることで、上下方向に沿う山折り部26同士の距離を十分に確保してカルマン渦をより確実に分断できる。また、距離D1を直径D3の2/10以下とすることで、上下方向に沿う山折り部26および谷折り部27の数を十分に確保して、カルマン渦を十分に分断し果実Fの落下をより確実に抑制できる。
また、山折り部26と谷折り部27との径方向に沿う距離D2は、谷折り部27の直径D3の0.87/10以上、1.73/10以下とすることが好ましい。すなわち、谷折り部の直径D3に対する山折り部と谷折り部との径方向に沿う距離D2の比(D2/D3)は、0.87/10以上、1.73/10以下とすることが好ましい。距離D2を直径D3の0.87/10以上とすることで、山折り部26におけるカルマン渦を分断する効果を確実に奏することができる。距離D2を直径D3の1.73/10以下とすることで、胴部20の投影面積が増大することを抑制し、風に対する果実袋1の抵抗係数が大きくなることを抑制できる。
上述の範囲で、距離D1、D2を設けた果実袋1は、山折り部26および谷折り部27において、約60°で折り曲げられている。
【0023】
図6に示すように、胴部20は、上下方向に蛇腹状に折り畳むことができる。より具体的には、胴部20は、山折り部26および谷折り部27において第1の帯状部21と第2の帯状部22とがなす角度を小さくすることで、上下方向の寸法を小さくすることができる。これにより、未使用状態において果実袋1を省スペースで保管することができ、果実袋1の搬送コストを抑制できる。
【0024】
また、果実袋1は、胴部20が上下方向に折り畳まれた状態から、作業者が紐2を掴んで持ちあげられることで、袋本体5の自重により胴部20が開いて図1図5に示す状態となる。したがって、胴部20を開く手順を省略でき、作業を簡素化して作業者の負担を軽減できる。
【0025】
集縛部10は、袋本体5において胴部20の上側に位置し、胴部20の上端から上側に延びる。集縛部10の上端は、上側に開口している。集縛部10の上端部には、周方向に沿って形成された紐通し部11が設けられている。紐通し部11の内部には、紐2が挿入される。紐通し部11には、少なくとも1か所の通し口11aが設けられている。
【0026】
紐2は、集縛部10の紐通し部11に挿通されている。紐2の両端部は、通し口11aから外側に引き出されている。紐2の両端部は、紐通し部11の外側において、結ばれていてもよい。紐2は、繊維からなるものに限定されない。例えば、紐2が針金で構成されていてもよい。
【0027】
作業者が紐2の両端部を引っ張ることで、紐2の大部分は、通し口11aから引き出され、紐通し部11が絞られる。これにより、紐2は、胴部20の上部において袋本体5の開口を閉じる。また、紐2は、図1に示すように、果実Fが生る樹木の枝Bに結ばれることが好ましい。この場合には、果実Fが枝Bから離れた場合であっても、袋本体5内で受け止められて果実Fが地面に落下することを抑制できる。
【0028】
<第2実施形態>
図7は、第2実施形態の果実袋101を示す正面図である。第2実施形態の果実袋101は、上述の実施形態と比較して胴部120の構造が異なる。なお、上述の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0029】
果実袋101は、袋本体105と、紐(紐部)2と、を有する。袋本体105は、筒状の胴部120と、胴部120の上側に位置し胴部120の上側の開口を覆う集縛部10と、胴部120の下側に位置し胴部120の下側の開口を覆う底部30と、を有する。
【0030】
胴部120は、上下方向(軸方向)に延びる筒形状を有している。胴部120は、上下方向から見て円形である。胴部120には、ミウラ折り(登録商標)によって山折り部126と谷折り部127とが形成されている。ミウラ折りは、3次元的に形成された折り目構造である。ミウラ折りにより形成された胴部120は、皺を生じることなく上下方向に折り畳むことができる。
【0031】
山折り部126および谷折り部127は、上下方向に沿って交互に並んでいる。また、複数の山折り部126は、周方向に沿って並んでいる。胴部120の周囲を通過する風は、周方向に沿って並ぶ山折り部126において剥離する。したがって、本実施形態の胴部120の周囲では風の剥離が周方向の全体で生じる。このため、胴部120の後方(風の下流側)ではカルマン渦が形成され難い。これにより、果実Fに加わる風に起因する負荷を低減して、果実Fの落下を抑制できる。
【0032】
以上に、本発明の様々な実施形態を説明したが、各実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【実施例
【0033】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0034】
本発明の効果を確認する目的で、サンプル(a)、(b)、(c)、(d)、(e)を用意し、定常流化における抵抗力の測定しその結果を基に各サンプルの抵抗係数を算出した。
以下、各サンプルについて、説明する。
【0035】
サンプル(a)は、樹脂材料から構成される円柱である。円柱の直径は、60mmであり、高さは60mmである。
サンプル(b)は、サンプル(a)の円柱の外周面に果実袋用の紙を巻き付けた構成を有する。
サンプル(c)は、サンプル(a)の円柱の外周面に皺を付けた果実袋用の紙を巻き付けた構成を有する。
サンプル(d)は、サンプル(a)の円柱の外周面にミウラ折りを施した果実袋用の紙を巻き付けた構成を有する。サンプル(d)は、上述の第2実施形態の構成を満たす。サンプル(d)の写真を図8に示す。
サンプル(e)は、サンプル(a)の円柱の外周面に上下方向に沿って等間隔に交互に並ぶ山折り部と谷折り部とが設けられた果実袋用の紙を巻き付けた構成を有する。サンプル(e)の山折り部および谷折り部は、周方向に沿って一様に延びている。サンプル(e)は、6個の山折り部と、その間に位置する5個の谷折り部を有する。サンプル(e)は、第1実施形態の構成を満たす。
【0036】
図9に、サンプル(a)~(e)の抵抗係数の算出結果を示す。
図9に示すように、第1実施形態に対応するサンプル(e)および第2実施形態に対応するサンプル(d)において、大幅に抵抗係数を低減できることが確認された。
【符号の説明】
【0037】
1,101…果実袋、2…紐(紐部)、5,105…袋本体、20,120…胴部、26,126…山折り部、27,127…谷折り部、F…果実
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9