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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】心電計測装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/346 20210101AFI20220613BHJP
【FI】
A61B5/346
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2018019744
(22)【出願日】2018-02-07
(65)【公開番号】P2019136162
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2021-01-29
(73)【特許権者】
【識別番号】591177749
【氏名又は名称】長岡実業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092956
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 栄男
(74)【代理人】
【識別番号】100101018
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 正
(72)【発明者】
【氏名】永井 隆二
【審査官】▲瀬▼戸井 綾菜
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-261723(JP,A)
【文献】特開2006-61494(JP,A)
【文献】特開2018-11819(JP,A)
【文献】特表2010-538728(JP,A)
【文献】国際公開第2013/114596(WO,A1)
【文献】特開2008-93264(JP,A)
【文献】特開2016-174839(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0265538(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/24-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象に接触された電極からの心電信号を取得し、心電信号に基づいて適切な計測が行われたか否かを判断する適否判断手段と、
適否判断手段による適否判断結果を出力部に出力する適否出力手段と、
適否判断結果に応じ、適切な計測が行われた心電信号の解析出力を解析出力部に出力する解析出力手段と、
を備えた心電計測装置であって、
前記適否判断手段は、判断対象となる判断区間における心電波形の波形特徴値に基づいて、適否を判断するものであり、
前記適否判断手段は、判断対象となる判断区間における心電波形の波形特徴値およびその平均値を算出し、波形特徴値がその平均値に対して所定値以内の範囲内にある拍を適正拍とし、判断区間において適正拍が所定数以上ある場合に、当該判断区間を適正判断区間とすることを特徴とする心電計側装置。
【請求項2】
コンピュータによって心電計測装置を実現するための心電計測プログラムであって、コンピュータを、
計測対象に接触された電極からの心電信号を取得し、心電信号に基づいて適切な計測が行われたか否かを判断する適否判断手段と、
適否判断手段による適否判断結果を出力部に出力する適否出力手段と、
適否判断結果に応じ、適切な計測が行われた心電信号の解析出力を解析出力部に出力する解析出力手段として機能させるための心電計測プログラムにおいて、
前記適否判断手段は、判断対象となる判断区間における心電波形の波形特徴値に基づいて、適否を判断するものであり、
前記適否判断手段は、判断対象となる判断区間における心電波形の波形特徴値およびその平均値を算出し、波形特徴値がその平均値に対して所定値以内の範囲内にある拍を適正拍とし、判断区間において適正拍が所定数以上ある場合に、当該判断区間を適正判断区間とすることを特徴とする心電計側プログラム。
【請求項3】
請求項2のプログラムにおいて、
前記波形特徴値は、少なくともQT間隔を含むことを特徴とするプログラム。
【請求項4】
請求項2または3のプログラムにおいて、
前記適否判断手段は、判断対象となる判断区間における心電波形の基線の変動に基づいて、適否を判断することを特徴とするプログラム。
【請求項5】
請求項4のプログラムにおいて、
前記適否判断手段は、前記基線の変動のレベルに応じて、適正度を判断することを特徴とするプログラム。
【請求項6】
請求項2~5のいずれかのプログラムにおいて、
前記適否出力手段は、適否もしくは適否のレベルを画面上に表示することを特徴とするプログラム。
【請求項7】
請求項2~6のいずれかのプログラムにおいて、
前記適否出力手段は、適否もしくは適否のレベルを音として出力することを特徴とするプログラム。
【請求項8】
請求項2~7のいずれかのプログラムにおいて、
前記解析出力手段は、少なくとも、適正判断区間の心電波形を出力することを特徴とするプログラム。
【請求項9】
請求項2~8のいずれかのプログラムにおいて、
前記解析出力手段は、適正判断区間の心電波形に基づいて、少なくとも、所見を出力することを特徴とするプログラム。
【請求項10】
請求項2~9のいずれかのプログラムにおいて、
前記解析出力手段は、適正判断区間の適正拍の心電波形に基づいて、少なくとも、当該心電波形の平均波形を算出して出力することを特徴とするプログラム。
【請求項11】
請求項2~10のいずれかのプログラムにおいて、
前記解析出力手段は、前記適否判断手段によって適正であると判断された前記適正判断区間のうち最も適正度の高い適正判断区間の心電波形について、自動的に解析結果の出力を行うことを特徴とするプログラム。
【請求項12】
請求項2~10のいずれかのプログラムにおいて、
前記解析出力手段は、出力された適否判断結果を見た操作者の指示によって、前記適否判断手段によって適正であると判断された前記適正判断区間のうち最も適正度の高い適正判断区間について解析結果の出力を行うことを特徴とするプログラム。
【請求項13】
請求項2~12のいずれかのプログラムにおいて、
前記計測対象は人または動物であることを特徴とするプログラム。
【請求項14】
請求項2~13のいずれかのプログラムにおいて、
前記心電信号は複数誘導含まれており、
前記適否出力手段は、各誘導についての適否のレベルのうち最も低い適否のレベルを前記適正判断区間の適否のレベルとすることを特徴とするプログラム。
【請求項15】
計測対象に接触された電極からの心電信号を取得し、判断対象となる複数拍を含む判断区間における心電波形の各拍の波形特徴値に基づいて、各拍の心電波形が適正か否かを判断し、前記判断区間において適正と判断された拍の数に基づいて、前記判断期間の心電波形が適正であるか否かを判断する波形特徴適否判断手段と、
前記波形特徴適否判断手段によって適正であると判断された心電波形について、基線の変動量に応じて、安定性のレベルを判断する安定性適否判断手段と、
を備えた心電計測装置。
【請求項16】
コンピュータによって心電計測装置を実現するための心電プログラムであって、コンピュータを、
計測対象に接触された電極からの心電信号を取得し、判断対象となる複数拍を含む判断区間における心電波形の各拍の波形特徴値に基づいて、各拍の心電波形が適正か否かを判断し、前記判断区間において適正と判断された拍の数に基づいて、前記判断期間の心電波形が適正であるか否かを判断する波形特徴適否判断手段と、
前記波形特徴適否判断手段によって適正であると判断された心電波形について、基線の変動量に応じて、安定性のレベルを判断する安定性適否判断手段として機能させるための心電プログラム。
【請求項17】
計測対象に接触された電極からの複数誘導の心電信号を取得し、誘導ごとに判断対象となる判断区間における心電波形の波形特徴値を算出し、前記判断区間の全誘導が波形特徴値が平均値に対して所定値以内の範囲内にある拍を適正拍とし、判断区間のうち所定数以上が適正拍である場合に、当該判断区間の全誘導の心電波形を適正判断区間とする波形形状適否判断手段と、
前記適正判断区間における各誘導の基線変動に基づいて所定レベルの波形安定性を算出する安定性適否判断手段と、
計測開始から適正判断区間が見いだされず、あるいは所定レベルよりも高い波形安定性を持つ適正判断区間が見いだされない場合には、不適正の旨を出力し、所定段階よりも高い波形安定性を持つ適正判断区間が見いだされた場合、これら適正判断区間のうち最も高い波形安定性に応じた適切度を出力する適否出力手段と、
適否出力手段の出力を認識した操作者によって解析出力操作が入力される開始受付手段と、
前記開始受付手段によって操作者の解析出力操作が入力されると、前記波形安定性の最も高い適正判断区間の全誘導の心電波形を出力し、当該心電波形に基づいて算出した所見を出力し、当該適正判断区間の適正拍の心電波形に基づいて平均化された平均心電波形を出力し、当該平均心電波形の平均波形を出力する解析出力手段と、
を備えた心電計測装置。
【請求項18】
コンピュータによって心電計測装置を実現するための心電計プログラムであって、コンピュータを、
計測対象に接触された電極からの複数誘導の心電信号を取得し、各誘導ごとに判断対象となる判断区間における心電波形の波形特徴値を算出し、前記判断区間の全誘導が波形特徴値が平均値に対して所定値以内の範囲内にある拍を適正拍とし、判断区間のうち所定数以上が適正拍である場合に、当該判断区間の全誘導の心電波形を適正判断区間とする波形形状適否判断手段と、
前記適正判断区間における各誘導の基線変動に基づいて所定レベルの波形安定性を算出する安定性適否判断手段と、
計測開始から適正判断区間が見いだされず、あるいは所定レベルよりも高い波形安定性を持つ適正判断区間が見いだされない場合には、不適正の旨を出力し、所定段階よりも高い波形安定性を持つ適正判断区間が見いだされた場合、これら適正判断区間のうち最も高い波形安定性に応じた適切度を出力する適否出力手段と、
適否出力手段の出力を認識した操作者によって開始操作が入力される開始受付手段と、
前記開始受付手段によって操作者の解析出力操作が入力されると、前記波形安定性の最も高い適正判断区間の全誘導の心電波形を出力し、当該心電波形に基づいて算出した所見を出力し、当該適正判断区間の適正拍の心電波形に基づいて平均化された平均心電波形を出力し、当該平均心電波形の平均波形を出力する解析出力手段として機能させるための心電計測プログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は心電計測装置に関し、特にその適切な計測が行われた区間における解析に関するものである。
【背景技術】
【0002】
心電図を計測する場合には、安静にしており体動の影響なく計測したデータを用いることが重要である。人においてもそうであるが、動物の心電図を計測する場合にも、取得した心電図が解析に適したものであるかどうかが重要である。
【0003】
たとえば、特許文献1には、電極の接触状況による抵抗値の変化を検出して,計測に適した抵抗値があるかどうかを判断する装置が開示されている。計測に適しない抵抗値であれば、メッセージを報知して無駄な解析を行うことがないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許6033644
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような従来技術では、電極が適切に装着されていながらも体動などによって計測波形が不適切である場合を見いだすことはできなかった。
【0006】
また、いずれの区間の心電図が解析のためにより好ましいものであるかを判断する基準が示されないため、最も好ましい区間の心電図を用いることができなかった。
【0007】
さらに、測定開始から現在までにより好ましい心電図があったとしても、現在の心電図を解析対象とするしかなかった。
【0008】
この発明は、上記のような問題の少なくとも一つを解決し、適切な心電図に基づいて解析を行うことのできる心電計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、この発明の独立して適用可能な特徴を列挙する。
【0010】
(1)(2)この発明に係る心電計測装置は、計測対象に接触された電極からの心電信号を取得し、心電信号に基づいて適切な計測が行われたか否かを判断する適否判断手段と、適否判断手段による適否判断結果を出力部に出力する適否出力手段と、適否判断結果に応じ、適切な計測が行われた心電信号の解析出力を解析出力部に出力する解析出力手段と備えている。
【0011】
したがって、適切に計測された心電信号に基づく解析を行うことができる。
【0012】
(3)この発明に係る心電計測装置は、適否判断手段が、判断対象となる判断区間における心電波形の基線の変動に基づいて、適否を判断することを特徴としている。
【0013】
したがって、計測された心電波形の安定性に基づいて適否を判断することができる。
【0014】
(4)この発明に係る心電計測装置は、適否判断手段が、前記基線変動のレベルに応じて、適正度を判断することを特徴としている。
【0015】
したがって、基線変動のレベルに応じて適正度を判断することができる。
【0016】
(5)この発明に係る心電計測装置は、適否判断手段が、判断対象となる判断区間における心電波形の波形特徴値に基づいて、適否を判断することを特徴としている。
【0017】
したがって、計測した心電波形の波形特徴値に基づいて適否を判断することができる。
【0018】
(6)この発明に係る心電計測装置は、適否判断手段が、判断対象となる判断区間における心電波形の波形特徴値およびその平均値を算出し、波形特徴値がその平均値に対して所定値以内の範囲内にある拍を適正拍とし、判断区間において適正拍が所定数以上ある場合に、当該判断区間を適正判断区間とすることを特徴としている。
【0019】
したがって、平均値より大きくずれない波形がある区間を適正な区間として選択することができる。
【0020】
(7)この発明に係る心電計測装置は、波形特徴値が、少なくともQT間隔を含むであることを特徴としている。
【0021】
したがって、RR間隔およびQT間隔に基づいて解析に適した波形であるかどうかを判断することができる。
【0022】
(8)この発明に係る心電計測装置は、適否出力手段が、適否もしくは適否のレベルを画面上に表示することを特徴としている。
【0023】
したがって、計測した波形が解析に適しているかどうかを容易に知ることができる。
【0024】
(9)この発明に係る心電計測装置は、適否出力手段が、適否もしくは適否のレベルを音として出力することを特徴としている。
【0025】
したがって、画面を見なくとも適否を容易に知ることができる。
【0026】
(10)この発明に係る心電計測装置は、解析出力手段が、少なくとも、適正判断区間の心電波形を出力することを特徴としている。
【0027】
したがって、内容的な解析のために適切な区間の心電波形を容易に得ることができる。
【0028】
(11)この発明に係る心電計測装置は、解析出力手段が、少なくとも、適正判断区間の心電波形に基づいて所見を出力することを特徴としている。
【0029】
したがって、容易に適切な所見を得ることができる。
【0030】
(12)この発明に係る心電計測装置は、解析出力手段が、少なくとも、適正判断区間の適正拍の心電波形に基づいて、当該心電波形の特徴量の平均値を算出して出力することを特徴としている。
【0031】
したがって、平均値に基づいて容易に判断を行うことができる。
【0032】
(13)この発明に係る心電計測装置は、解析出力手段が、前記適否判断手段による適正判断区間のうち最も適正度の高い適正判断区間の心電波形について、自動的に解析結果の出力を行うことを特徴としている。
【0033】
したがって、最も適切な区間の心電波形に基づいて、自動的に解析結果を得ることができる。
【0034】
(14)この発明に係る心電計測装置は、解析出力手段が、出力された適否判断結果を見て、操作者の指示によって、前記適否判断手段による適正判断区間のうち最も適正度の高い適正判断区間について解析結果の出力を行うことを特徴としている
したがって、最も適切な区間の心電波形に基づいて、操作者の操作により解析を開始することができる。
【0035】
(15)この発明に係る心電計測装置は、計測対象が人または動物であることを特徴としている。
【0036】
したがって、動物であっても、体動による影響の少ない心電波形を用いて計測を行うことができる。
【0037】
(16)この発明に係る心電計測装置は、心電信号が複数誘導含まれており、適否出力手段は、各誘導についての適否のうち最も低い適否を当該適正判断区間の適否とすることを特徴としている。
【0038】
したがって、より正確に適否を提示することができる。
【0039】
(17)(18)この発明にかかる心電計測装置は、計測対象に接触された電極からの複数誘導の心電信号を取得し、誘導ごとに判断対象となる判断区間における心電波形の波形特徴値を算出し、前記判断区間の全誘導が波形特徴値が平均値に対して所定値以内の範囲内にある拍を適正拍とし、判断区間のうち所定数以上が適正拍である場合に、当該判断区間の全誘導の心電波形を適正判断区間とする波形形状適否判断手段と、前記適正判断区間における各誘導の基線変動に基づいて所定レベルの波形安定性を算出する安定性適否判断手段と、計測開始から適正判断区間が見いだされず、あるいは所定レベルよりも高い波形安定性を持つ適正判断区間が見いだされない場合には、不適正の旨を出力し、所定段階よりも高い波形安定性を持つ適正判断区間が見いだされた場合、これら適正判断区間のうち最も高い波形安定性に応じた適切度を出力する適否出力手段と、適否出力手段の出力を認識した操作者によって解析出力操作が入力される解析出力受付手段と、前記開始受付手段によって操作者の解析出力操作が入力されると、前記安定性の最も高い適正判断区間の全誘導の心電波形を出力し、当該心電波形に基づいて算出した所見を出力し、当該適正判断区間の適正拍の心電波形に基づいて平均化された平均心電波形を出力し、当該平均心電波形の平均波形を出力する解析出力手段とを備えている。
【0040】
したがって、操作者が適切度を確認した上で、適切な区間の心電信号に基づく解析を出力することができる。
【0041】
この発明において、「適否判断手段」は、実施形態においては、ステップS6、S10がこれに対応する。
【0042】
「適否出力手段」は、実施形態においては、ステップS11がこれに対応する。
【0043】
「解析出力手段」は、実施形態においては、ステップS21~S26がこれに対応する。
【0044】
「解析」とは、心電波形に基づいて所定の演算処理を行うことだけでなく、適切な心電波形を所見などのために表示することを含む概念である。
【0045】
「プログラム」とは、CPUにより直接実行可能なプログラムだけでなく、ソース形式のプログラム、圧縮処理がされたプログラム、暗号化されたプログラム等を含む概念である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】この発明の一実施形態による心電計測装置の機能ブロック図である。
図2】計測時の犬20の状態を示す図である。
図3】ハードウエア構成を示す図である。
図4】心電計測プログラム52のフローチャートである。
図5】心電計測プログラム52のフローチャートである。
図6】取得した心電波形の例である。
図7】心電波形の特徴量を示す図である。
図8】適切性の判断と安定性の判断の基準を示す図である。
図9】安定性の評価基準である。
図10】判断区間とその判断内容を示す図である。
図11】画面表示例である。
図12】レポート表示のフローチャートである。
図13】レポート表示画面の例である。
図14】人体への電極取り付け例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
1.全体構成
図1に、この発明の一実施形態による心電計測装置の機能ブロック図を示す。電極1、1・・・は、測定対象である例えば犬に装着される。適否判断手段16は、電極1、1・・・からの心電波形を受けて、心電波形に基づいて、適切な計測が行われたかどうかを判断する。
【0048】
この実施形態では、適否判断手段16は、波形形状適否判断手段2、安定性適否判断手段4を備えている。波形形状適否判断手段2は、判断対象となる判断区間における心電波形の波形特徴値を算出する。判断区間は、所定数の拍や所定時間として特定することができる。
【0049】
判断区間の波形特徴量の平均値を算出し、この平均値から所定値以内の波形特徴値を持つ心電波形の拍を適正拍とする。判断区間内における個別拍の数が所定数以下の判断区間を不適正とし、所定数を超える判断区間を適正判断区間とする。
【0050】
安定性適否判断手段4は、適正判断区間の適正拍の心電波形について、各拍の基線の変動量を算出する。各拍の基線の変動量に応じて、各適正拍に安定性のレベルを付与する。安定性のレベルには、不適切な安定性、適切な安定性のレベルが含まれる。この実施形態では、適正判断区間に含まれる適正拍の基線変動量の平均によって、当該適正判断区間の安定性を判断している。なお、適正拍のうち最も低い安定性の拍の安定性を当該適正判断区間の安定性とするようにしてもよい。
【0051】
適否出力手段6は、計測開始から現在までに、適正判断区間がなければ不適切の旨の出力を適否出力部8から出力する。また、適正判断区間がある場合、各適正判断区間のうち最も高い安定性のレベルを適否出力部8から出力する。適否出力部8としては、表示するディスプレイや告知を行うスピーカなどを用いることができる。
【0052】
操作者は、この適否出力部8の出力を参照して、開始受付手段10に解析出力の開始を指令する。たとえば、画面上の解析出力開始ボタンをクリックする。
【0053】
解析出力手段12は、最も適正であった適正判断区間の心電波形を選択して解析出力部14に出力する。操作者は、この出力により解析を行う。また、この実施形態では、解析出力手段12は、当該適正判断区間の心電波形に基づいてミネソタコードなどに準拠した所見を算出して出力する。また、適正判断区間の心電波形のうちの個別拍のみによる平均心電波形およびその波形特徴量を算出して出力する。
【0054】
以上のようにして、解析のために適切な判断区間があるかどうか、さらにその適正レベルはいかほどであるかを知ることができ、計測開始からの最も適正レベルの高い判断区間の心電波形に基づいて解析を行うことができる。
【0055】
2.ハードウエア構成
図2に犬の心電波形を計測するための電極の例を示す。この例では、右前脚用電極RA、左前足用電極LA、右後足用電極RLD、左後足用電極LLの4つの電極を設けている。測定時には、図2に示すように、犬20がこれら電極の上に脚を乗せるようにしている。
【0056】
図3に、心電計測装置のハードウエア構成を示す。CPU30には、A/D変換器36、メモリ38、ディスプレイ40、スピーカ42、ハードディスク44、DVD-ROMドライブ46、マウス/キーボード48が接続されている。
【0057】
A/D変換器36は、増幅アンプ34を介して、電極RA、LA、RLD、LLからの心電波形を取り込み、ディジタルデータに変換する。ディスプレイ40は適否出力や解析結果を表示するものである。スピーカ42は、適否出力を音声として出力するものである。
【0058】
ハードディスク44には、オペレーティングシステム50、心電計測プログラム52が記録されている。心電計測プログラム52は、オペレーティングシステム50と協働してその機能を発揮するものである。これらプログラムは、DVD-ROM50に記録されていたものを、DVD-ROMドライブ46を介して、ハードディスク44にインストールしたものである。
【0059】
3.心電計測処理
図4図5にこの発明の一実施形態による心電計測プログラム52のフローチャートを示す。CPU30は、A/D変換器36から心電波形を取り込んでハードディスク44に記録する(ステップS1)。この実施形態では、足に接触させた4つの電極RA、LA、RLD、LLによって、6つの誘導波形(I、II、III、aVR、aVL、aVF)を心電波形として取り込むようにしている。なお、電極数を増やしてより多くの誘導(たとえば12誘導)を取り込んでもよいし、電極数を減らしてより少ない誘導(たとえば1誘導)を取り込むようにしてもよい。
【0060】
図6に、取り込まれた6誘導を示す。CPU30は、図11に示すように、取り込んだ6誘導の波形をディスプレイ40に表示する。さらに、取り込んだ心電波形につき、波形形状に基づいて一拍を認識する(ステップS2)。さらに、前回の適正判断処理を行ってから一拍経過したかを判断する(ステップS3)。一拍が経過したと判断すれば、CPU30は、各誘導ごとに判断区間の最新の心電波形について特徴量を算出する(ステップS4)。この実施形態では、QTc、ST、RS、T、RR間隔、QT間隔などを算出するようにしている。CPU30は、算出した特徴量を記録する。
【0061】
図7に、記録された特徴量の例を示す。最上段が認識した拍数である。認識した順に連続番号を付している。なお、図7では、誘導Iについてのみ示しているが他の誘導についても同様に記録される。
【0062】
次に、CPU30は、最新の拍から10秒間前(所定秒間)までの特徴量の平均値を、各誘導ごとに算出する(ステップS5)。たとえば、誘導Iについて、図7の右側に示すように10秒間の特徴量の平均値が算出される。他の誘導についても同じように算出が行われる。
【0063】
CPU30は、算出した平均値との差を算出することにより、それぞれの拍において安定した計測が行われたかどうかを判断する。具体的には、図8に示すRR間隔、QT間隔が平均値から大きく離れていないかどうか(適正拍かどうか)を判断するようにしている(ステップS6)。以下詳細な処理を説明する。
【0064】
まず、CPU30は、10秒間の拍のうち、6つの誘導全てについて、RR間隔が平均値から100msecの範囲内に収まっている拍を選択する。さらに、選択した拍のうち、6つの誘導全てについて、QT間隔が平均値から50msecの範囲内に収まっている拍を選択し、これを適正拍とする。
【0065】
次に、CPU30は、10秒間の中に適正泊が5拍以上あるかどうかを判断する(ステップS7)。適正泊が4拍以下の場合、この10秒間の心電図は適正に計測されたものではない(たとえば、犬の体動が激しかった)と判断する。
【0066】
適正泊が5拍以上の場合、CPU30は、平均値との乖離の大きい拍(適正拍でないもの)も含めてこの10秒間全体の心電図を適正判断区間とする(ステップS8)。
【0067】
CPU30は、適正判断区間中の各適正拍について基線変動の平均値を算出する(ステップS9)。この実施形態では、0mVの基線位置が最も安定しているものとし、これに対する基線位置の変動が大きいほど不安定であると判断するようにしている。
【0068】
たとえば、図8に示すようにPbの値を基線位置とし、この基線位置を同時に基線位置変動値として用いるようにしている。なお、その他の方法にて基線を算出するようにしてもよい。このようにして算出した各適正拍の基線変動値の平均値を算出する。
【0069】
さらに、この基線変動値の平均値を全ての誘導について算出し、これをさらに平均する。このようにして平均基線変動値を算出する。
【0070】
次に、CPU30は、算出した平均基線変動値に基づいて、当該適正判断区間における波形の安定性を算出する(ステップS10)。この実施形態では、図9に示すような基準に従って判断している。平均基線変動値の絶対値が1mVを超える場合には不安定であると判断し、その絶対値に応じ、0.2mV以下まで、4つのレベルにて判断している。レベル4が最も安定しているとの判断である。
【0071】
以上のようにして、今回の適正判断区間について安定性のレベルを算出して決定することができる。
【0072】
次に、CPU30は、計測開始から今までの各適正判断区間について、最も安定性の高いレベルを選択する。図10に、判断区間D1~D5と、それぞれが適正判断区間にあたるかどうかと、安定レベルについての判断結果例を示す。
【0073】
判断区間は、新たな1周期が認識されるごとに、10秒間(約10周期)の新たな判断区間(拍の重複あり)が設定される。CPU30は、計測開始からいままでの適正判断区間について、最も高い安定性のレベルを選択する。図10の例であれば、判断区間D2の安定レベル2が選択されることになる。CPU30は、選択した安定レベルに対応するインジケータを画面に表示する(ステップS11)。
【0074】
図11に、適否出力部であるディスプレイ40に表示されたインジケータの例を示す。画面中央の波形表示部56には、計測した最新の各誘導の波形が表示されている。画面右には、レポート表示ボタン50、再計測ボタン52、タイトルに戻るボタン54が表示されている。レポート表示ボタン50の上に、インジケータ70が表示されている。CPU30は、インジケータ70を、ステップS11にて選択した安定レベルに応じた色にて表示するようにしている。
【0075】
この実施形態では、レベル1は「緑」、レベル2は「黄緑」、レベル3は「黄」。レベル4は「橙」、不安定(あるいは適正判断区間なし)は「赤」にて表示するようにしている。したがって、使用者は、このインジケータ70の色を見て、計測開始からの最高の安定レベルを知ることができる。
【0076】
次に、CPU30は、ステップS1に戻って処理を繰り返す。これによって、次々と判断区間の安定性が判断され記録されるとともに、最も高い安定レベルがインジケータ70の色として示されることになる。
【0077】
次に、マウスなどにより操作者がレポート表示ボタン50を押下すると、CPU30はレポート表示処理を行う。なお、この実施形態では、少なくともレベル1に達していないとレポート表示ボタン50は有効に操作できないようになっている。図12に、レポート表示処理のフローチャートを示す。
【0078】
レポート表示ボタン50が押下されると、CPU30は、最適区間の波形データ(及び算出済みの特徴量)を取得する(ステップS21)。すなわち、最も安定性レベルの高かった判断区間のデータをハードディスク44から取得する。
【0079】
次に、取得した判断区間の適正波形を図形的に平均した平均波形(波形の特徴を示す各点を平均化して求めた波形)を取得する(ステップS22)。
【0080】
さらに、適正判断区間の全波形に基づいて、ミネソタコードなどに準拠した所見を取得する(ステップS23)。
【0081】
CPU30は、上記算出した平均波形、元の心電波形、ミネソタコードなどに準拠した所見を含むレポート画面表示する(ステップS24、S25、S26)。なお、この実施形態では、各判断区間について予め平均波形、所見などを算出して記録している。したがって、レポート表示ボタン50が押下されると、記録されているこれらの波形や所見等を読み出してレポート画面として表示する。
【0082】
なお、レポート表示ボタン50が押下されてから、最適区間の平均波形、所見などを算出して表示するようにしてもよい。
【0083】
図13に、解析出力部であるディスプレイ40に表示されたレポート画面の例を示す。図13においては空欄となっているが、ミネソタコード等に準拠した所見が有る場合、ミネソタコード表示欄62に表示がなされる。平均波形は、算出した平均波形を表示したものである。医師または獣医師などは、この波形を見て所見の参考とすることができる。詳しい波形を見る場合には、右側の切り出し波形を見て行う。印刷ボタン60をクリックすると、CPU30はレポートの印刷を行う。
【0084】
以上のように、この実施形態によれば、リアルタイムに計測している際に、最も安定した判断区間の安定度を、色によって表示するようにしている。したがって、操作者は容易にレポートの表示を行うべきかどうかを判断することができる。
【0085】
4.その他
(1)上記実施形態では、色によって安定度を表示している。しかし、数値によって示してもよい。また、音や振動によって安定度を出力するようにしてもよい。この場合、安定度に応じて音の音色や音程を変えたり、振動周波数を変えるようにする。さらに、色による表示と音等との双方を出力するようにしてもよい。
【0086】
(2)上記実施形態では、操作者の操作によって解析を開始してレポートを表示するようにしている。しかし、予め設定した所定レベルの安定度を超える判断区間が見いだされると自動的に解析を行ってレポートを表示するようにしてもよい。
【0087】
(3)上記実施形態では、インジケータ70を設けて、これに安定性に応じた色を表示するようにしている。しかし、画面全体の色をインジケータとして利用するようにしてもよい。また、レポートボタン50を安定性に応じた色にて表示し、レポートボタン50をインジケータとして兼用するようにしてもよい。
【0088】
(4)上記実施形態では、犬の心電図を計測する場合について説明したが、猫など他の動物の心電図を計測する場合にも適用することができる。また、動物だけでなく、人(特に幼児や挙動の安定しない人など)の心電図を計測する場合にも用いることができる。
【0089】
人の計測を行う場合、図14に示すように、右手首、左手首、右足首、左足首にそれぞれ電極を装着するようにすればよい。なお、より少ない電極を装着してもよいし、12誘導を取得するためより多くの電極を装着するようにしてもよい。
【0090】
(5)上記実施形態では、足に電極を接触させて計測を行うようにしている。しかし、他の部位に電極を接触させて計測を行ってもよく、この場合にも本発明を適用することができる。
【0091】
(6)上記実施形態では、適切な区間の心電波形をCPU30が内容的な解析を行い、解析結果を出力するようにしている。しかし、適切な区間の心電波形を表示(印刷)して、操作者が内容的な解析を行うようにしてもよい。後者の場合、適切な区間の心電波形を表示すること自体も解析である。
【0092】
(7)上記実施形態では、ローカルのコンピュータにて処理を行うようにしている。しかし、計測した心電波形をインターネットなどを介してサーバに送信し、サーバ側にて表示画面(図11図13)を生成し、ローカルのコンピュータにて表示するようにしてもよい。この場合、サーバに心電計測プログラム52が記録されるので、ローカルのコンピュータには、ブラウザプログラムがあればよい。
【0093】
(8)上記実施形態では、適正拍かどうかの判断を行うための波形特徴量としてRR間隔、QT間隔を用いている。しかし、QT間隔のみ、RR間隔のみを用いるようにしてもよい。また、その他の波形特徴量を単独で、あるいは組み合わせて用いるようにしてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14