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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】電線皮剥工具
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/12 20060101AFI20220613BHJP
   B26B 27/00 20060101ALI20220613BHJP
   B26D 3/00 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
H02G1/12 026
B26B27/00 G
B26D3/00 603Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018120141
(22)【出願日】2018-06-25
(65)【公開番号】P2020005346
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000207311
【氏名又は名称】大東電材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147706
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 裕司
(72)【発明者】
【氏名】大久保 和典
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-250597(JP,A)
【文献】特開2013-192430(JP,A)
【文献】特開2012-244889(JP,A)
【文献】実公平6-2414(JP,Y2)
【文献】特開平11-98639(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26B 1/00-11/00
23/00-29/06
B26D 3/00-3/30
H02G 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の絶縁被覆を剥ぎ取って芯線を露出させる切削刃を有しており、前記切削刃の中心軸が前記電線の長手方向に直交する第1方向と、前記長手方向に対して斜めになる第2方向との間を回動可能に設けられた切削刃部材と、
前記切削刃部材を前記第2方向に向けて付勢する切削刃付勢部材と、
前記切削刃付勢部材の付勢力に抗して前記切削刃部材の回動を規制する回動規制部、および、前記電線に当接する電線当接部を有しているコントロールブロックとを備えており、
前記切削刃が前記絶縁被覆の剥ぎ取りを開始するときにおいて、前記電線の前記絶縁被覆に前記電線当接部が当接した状態にある前記コントロールブロックが前記回動規制部で前記切削刃部材の回動を規制することにより、前記切削刃の中心軸が前記電線の前記長手方向に直交する向きになっており、
前記絶縁被覆の剥ぎ取りが進んで、前記電線当接部が前記芯線の表面に近づいたとき、前記回動規制部による規制が解けて、前記切削刃付勢部材の付勢力によって前記切削刃部材が前記第1方向から前記第2方向に向けて回動する
電線皮剥工具。
【請求項2】
前記コントロールブロックは、一端部に前記回動規制部を有しており、他端部に前記電線当接部を有しており、さらに、中央部を中心として回動するようになっており、
前記電線当接部が前記電線の中心軸に近づく方向に前記コントロールブロックが回動するように付勢するコントロールブロック付勢部材をさらに備えており、
前記絶縁被覆の剥ぎ取りが進んでいくと、前記コントロールブロック付勢部材の付勢力によって前記電線当接部が前記芯線の表面に近づくようになっている
請求項1に記載の電線皮剥工具。
【請求項3】
前記コントロールブロックは、前記電線の径方向に直線的に移動するようになっており、
前記電線当接部が前記電線の中心軸に近づく方向に前記コントロールブロックが移動するように付勢する付勢部材をさらに備えており、
前記絶縁被覆の剥ぎ取りが進んでいくと、前記付勢部材の付勢力によって前記電線当接部が前記芯線の表面に近づくようになっている
請求項1に記載の電線皮剥工具。
【請求項4】
前記回動規制部における前記切削刃部材に向かう面は、前記切削刃部材に当接するとともに前記切削刃部材の回動方向に対して傾斜する傾斜面となっており、前記電線当接部が前記電線の中心軸から離間する方向に前記コントロールブロックが動くと、前記傾斜面が前記切削刃付勢部材の付勢力に抗して前記切削刃部材を前記第1方向に向けて回動させるようになっていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電線皮剥工具。
【請求項5】
内側に前記電線を収容するとともに、前記電線の中心軸を中心として回転する電線収容部材をさらに備えており、
少なくとも前記切削刃付勢部材および前記コントロールブロックは、前記電線収容部材とともに回転することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の電線皮剥工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の中間部における一定長の絶縁被覆を剥離除去するために用いられる電線皮剥工具に関する。
【背景技術】
【0002】
配電設備の工事を行うにあたり、部分的な停電を行うためにバイパス工事や接地工事が行われることがある。その際、バイパスや接地の経路を形成するために電線の中間部における絶縁被覆を剥ぎ取り、導体である芯線を露出させて、そこにバイパス器具や接地器具を接続する作業を活線状態のままで実施することが求められる。
【0003】
このような求めに応じるため、作業者が電線等に直接触れることなく、電線の中間部で絶縁被覆を螺旋状に切削して剥ぎ取ることのできる電線皮剥工具が開発されている(例えば、特許文献1から3)。そして、所定の工事が終了した後は、芯線が露出した箇所にプラスチック製の絶縁カバーを装着することで復旧が図られる。
【0004】
特許文献1から3に開示された電線皮剥工具は、ともに電線の中間部の絶縁被覆を螺旋状に剥ぐための切削刃を電線の長手方向に対して回転移動させることで絶縁被覆を剥ぎ取るようになっている。
【0005】
また、工事の対象となる電線に電線皮剥工具を着脱する際には、電線皮剥工具を開口させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実公平6-2414号公報
【文献】特開平11-98639号公報
【文献】特開2013-192430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の電線皮剥工具は上述のように螺旋状に絶縁被覆を剥いでいくことから、絶縁被覆の皮剥を始める箇所である「切削刃の切り込み開始箇所」から電線の長手方向に対して斜めに進んで行く。このため、電線の中心軸に直交するとともにこの「切削刃の切り込み開始箇所」を含む平面で見たときの全周にわたって絶縁被覆を剥ぎ取ることができないことから絶縁被覆の剥ぎ残りが生じてしまい、工事終了後の復旧時に芯線露出箇所に絶縁カバー等を装着する際にこの絶縁被覆の剥ぎ残りが邪魔になって当該絶縁カバー等の固定が確実に行うことができないおそれが生じるという問題があった。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、切削刃の切り込み開始箇所を含み電線の中心軸に直交する平面で見たときの全周にわたって絶縁被覆を剥ぎ取ることができ、絶縁被覆の剥ぎ残りが生じるのを回避できる電線皮剥工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一局面によれば、
電線の絶縁被覆を剥ぎ取って芯線を露出させる切削刃を有しており、前記切削刃の中心軸が前記電線の長手方向に直交する第1方向と、前記長手方向に対して斜めになる第2方向との間を回動可能に設けられた切削刃部材と、
前記切削刃部材を前記第2方向に向けて付勢する切削刃付勢部材と、
前記切削刃付勢部材の付勢力に抗して前記切削刃部材の回動を規制する回動規制部、および、前記電線に当接する電線当接部を有しているコントロールブロックとを備えており、
前記切削刃が前記絶縁被覆の剥ぎ取りを開始するときにおいて、前記電線の前記絶縁被覆に前記電線当接部が当接した状態にある前記コントロールブロックが前記回動規制部で前記切削刃部材の回動を規制することにより、前記切削刃の中心軸が前記電線の前記長手方向に直交する向きになっており、
前記絶縁被覆の剥ぎ取りが進んで、前記電線当接部が前記芯線の表面に近づいたとき、前記回動規制部による規制が解けて、前記切削刃付勢部材の付勢力によって前記切削刃部材が前記第1方向から前記第2方向に向けて回動する
電線皮剥工具が提供される。
【0010】
好適には、前記コントロールブロックは、一端部に前記回動規制部を有しており、他端部に前記電線当接部を有しており、さらに、中央部を中心として回動するようになっており、
前記電線当接部が前記電線の中心軸に近づく方向に前記コントロールブロックが回動するように付勢するコントロールブロック付勢部材をさらに備えており、
前記絶縁被覆の剥ぎ取りが進んでいくと、前記コントロールブロック付勢部材の付勢力によって前記電線当接部が前記芯線の表面に近づくようになっている。
【0011】
好適には、前記コントロールブロックは、前記電線の径方向に直線的に移動するようになっており、
前記電線当接部が前記電線の中心軸に近づく方向に前記コントロールブロックが移動するように付勢する付勢部材をさらに備えており、
前記絶縁被覆の剥ぎ取りが進んでいくと、前記付勢部材の付勢力によって前記電線当接部が前記芯線の表面に近づくようになっている。
【0012】
好適には、前記回動規制部における前記切削刃部材に向かう面は、前記切削刃部材に当接するとともに前記切削刃部材の回動方向に対して傾斜する傾斜面となっており、前記電線当接部が前記電線の中心軸から離間する方向に前記コントロールブロックが動くと、前記傾斜面が前記切削刃付勢部材の付勢力に抗して前記切削刃部材を前記第1方向に向けて回動させるようになっている。
【0013】
好適には、
内側に前記電線を収容するとともに、前記電線の中心軸を中心として回転する電線収容部材をさらに備えており、
少なくとも前記切削刃付勢部材および前記コントロールブロックは、前記電線収容部材とともに回転する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、切削刃の切り込み箇所で絶縁被覆を全周にわたって剥ぎ取ることができ、絶縁被覆の剥ぎ残りが生じるのを回避できる電線皮剥工具を提供できた。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明が適用された電線皮剥工具100を開いた状態を示す斜視図である。
図2】本発明が適用された電線皮剥工具100を電線Lに取り付けた(閉じた)状態を示す斜視図である。
図3】本発明が適用された電線皮剥工具100の分解斜視図である。
図4】皮剥機構200におけるメイン機構202を示す斜視図である。
図5】皮剥機構200におけるメイン機構202を示す分解斜視図である。
図6】電線皮剥工具100を開いた状態を示すメイン機構202の正面図である。
図7】電線皮剥工具100を開いた状態を示すメイン機構202の平面図である。
図8】VII-VII矢視による断面図である。
図9】電線皮剥工具100を閉じつつある状態を示す皮剥機構200の正面図である。
図10】電線皮剥工具100を閉じつつある状態を示す皮剥機構200の平面図である。
図11】X-X矢視による断面図である。
図12】電線皮剥工具100を閉じた状態を示す皮剥機構200の正面図である。
図13】電線皮剥工具100を閉じた状態を示す皮剥機構200の平面図である。
図14】電線皮剥工具100を閉じた状態を示す皮剥機構200の斜視図である。
図15】皮剥開始からほぼ1回転した状態を示す皮剥機構200の正面図である。
図16】皮剥開始からほぼ1回転した状態を示す皮剥機構200の平面図である。
図17】皮剥開始からほぼ1回転した状態を示す皮剥機構200の斜視図である。
図18】変形例に係るメイン機構202の斜視図である。
図19】変形例に係るメイン機構202の斜視図である。
図20】変形例に係るメイン機構202のコントロールブロック300を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(電線皮剥工具100の構成)
図1から図3は、本発明が適用された実施形態に係る電線皮剥工具100を示す。なお、図1は、電線皮剥工具100を開いた状態を示す斜視図である。また、図2は、電線Lを所定の位置に収容して電線皮剥工具100を閉じた状態を示す斜視図である。さらに、図3は、電線皮剥工具100の分解斜視図である。この電線皮剥工具100は、大略、開閉回転機構110と、この開閉回転機構110に取り付けられた皮剥機構200とを備えている。
【0017】
なお、本明細書全体を通して、電線の内部にある通電部材を芯線Sといい、当該芯線Sの外側を覆う絶縁部材を絶縁被覆Hという。さらに、絶縁被覆Hによって覆われた芯線Sの全体を被覆電線Lあるいは単に電線Lという。
【0018】
開閉回転機構110は、作業者が操作棒Bを用いて操作することにより、電線Lを挟んで皮剥機構200を開閉するとともに、当該皮剥機構200を回転させて電線Lから絶縁被覆Hを剥離除去するための機構である。
【0019】
図3を用いてこの開閉回転機構110について簡単に説明する。本実施形態に係る開閉回転機構110は、大略、回転ベース部材112と、回転駆動部材114と、切欠リング部材116と、保持部材118と、開閉筒状部材120と、開閉ガイド部材122と、外側切欠リング部材123とを備えている。
【0020】
回転ベース部材112は、操作棒Bを回転させることによって共に回転する傘歯車124をさらに有している。
【0021】
回転駆動部材114は、その周縁に傘歯車124に噛み合う歯車126を有しており、操作棒Bの回転によって傘歯車124が回転することにより、回転駆動部材114も回転するようになっている。また、回転駆動部材114は、第1部材128および第2部材130で半割り状に形成されている。さらに、第1部材128の保持部材118に向かう側面からは、円盤状のカムフォロワ132が突設されている。
【0022】
切欠リング部材116は、略「C」字状の部材である。また、この切欠リング部材116は、回転駆動部材114の第2部材130に取り付けられている。
【0023】
保持部材118は、回転駆動部材114や切欠リング部材116等を所定の位置で保持するための断面略「C」字状の部材であり、下端部が回転ベース部材112の側面に4つの保持部材固定ネジ134で固定されている。また、保持部材118は、保持部材カバー119と共に使用され、回転駆動部材114、切欠リング部材116、開閉筒状部材120、および、開閉ガイド部材122が保持部材118と保持部材カバー119との間の空間に収容される。
【0024】
開閉筒状部材120は、略円筒状の部材であり、第1円筒部材136と、第2円筒部材138と、第1円筒部材136の一端部と第2円筒部材138の一端部とを互いに軸支する軸支ピン140とで構成されている。これにより、第1円筒部材136および第2円筒部材138は、軸支ピン140を中心として開閉可能になっている。
【0025】
また、開閉筒状部材120の第1円筒部材136は、回転駆動部材114の第1部材128に取り付けられており、第2円筒部材138は、第2部材130に取り付けられている。
【0026】
開閉ガイド部材122は、係止フック142と、複合フック144とを備えている。係止フック142は、保持部材カバー119における保持部材118に向かう側面において揺動自在に取り付けられており、その下端に保持部材側フック146が形成されている。
【0027】
複合フック144は、開閉筒状部材120の第1円筒部材136において揺動自在に取り付けられている。また、複合フック144の下端には開閉筒状部材120の第2円筒部材138に取り付けられた係合ピン148(図1および図2を参照)と係合する係合フック150が形成されており、この係合フック150の反対側には係止フック142の保持部材側フック146と係合する保持部材係合フック152が形成されている。なお、複合フック144に形成された係合フック150と保持部材係合フック152とは、互いに反対向きに形成されている。
【0028】
外側切欠リング部材123は、保持部材118の外側(切欠リング部材116等が配置された側とは反対側)に配置される断面略「C」字状の部材であり、切欠リング部材116の側面に対して4つの切欠リング部材固定ネジ154で固定されている。
【0029】
このような開閉回転機構110の動作を簡単に説明する。図2に示すように開閉回転機構110を閉じた状態において、操作棒Bを回転させて回転駆動部材114を図2における時計回りに回転させると、複合フック144の係合フック150が係合ピン148と係合した状態が維持されるので、各部材は、閉じた状態を維持したまま回転する。
【0030】
次に、操作棒Bを逆回転させて回転駆動部材114を図2における反時計回りに回転させる。すると、複合フック144の保持部材係合フック152が係止フック142の保持部材側フック146と係合する。さらに操作棒Bの逆回転を続けると、開閉筒状部材120の第1円筒部材136およびこれと略一体に取り付けられた部材は図中反時計回りを続けようとするが、係止フック142に係止された複合フック144が取り付けられた第1円筒部材136およびこれと略一体に取り付けられた部材は反時計回りを続けることができず、開閉筒状部材120の第2円筒部材138およびこれと略一体に取り付けられた部材に押されるようにして複合フック144を介して係止フック142を外側へ押し出していく。これにより、開閉筒状部材120における軸支ピン140を中心にして、第1円筒部材136およびこれと略一体に取り付けられた部材がそれぞれ対応する部材(例えば、回転駆動部材114における第1部材128に対応する第2部材130)から離間していき、開閉回転機構110が開いた状態となる(図1参照)。なお、第1円筒部材136およびこれと略一体に取り付けられた部材がそれぞれ対応する部材から離間していくときの方向は、保持部材118における回転駆動部材114の第1部材128に向かう側面に形成されたガイド溝(図示せず)にカムフォロワ132がガイドされることで決められる。
【0031】
開閉回転機構110が開いた状態から操作棒Bを正回転させると、係止フック142を外側へ押し出していた開閉筒状部材120の第1円筒部材136が再び第2円筒部材138に近づいていき、複合フック144が係止フック142との係合状態を解消して再び係合ピン148と係合する。これにより、最初に説明したように、開閉回転機構110を閉じた状態で回転させることができる。そして、この回転により、開閉筒状部材120に取り付けられた皮剥機構200も電線Lの中心軸CLを中心として回転し、電線Lの絶縁被覆Hを剥離除去する。
【0032】
皮剥機構200は、上述した開閉回転機構110(より具体的には、開閉筒状部材120)に取り付けられており、自身が回転することによって電線Lから絶縁被覆Hを剥離除去する機構である。
【0033】
この皮剥機構200は、大略、メイン機構202と、サポート部材204とで構成されている。
【0034】
まず、メイン機構202について図4および図5を用いて詳細に説明する。なお、図4は、図1および図2に描かれたメイン機構202を電線Lの長手方向軸を中心として約180°回転させた状態を示す斜視図である。また、図5は、図4の状態におけるメイン機構202の分解斜視図である。
【0035】
メイン機構202は、大略、電線収容部材210と、ベース部材212と、C型部材214と、切削刃部材216と、コントロールブロック218とを有している。
【0036】
電線収容部材210は、所定位置にセットされた電線Lの長手方向に沿って延びる部材であり、C字状の断面形状を有している。また、電線収容部材210は、その内側が電線Lを収容する電線収容部220となっている。
【0037】
ベース部材212は、電線収容部材210における一方の側面に取り付けられた部材であり、本実施形態では、電線収容部材210の端面に取り付けられた第1ベース部材222と、この第1ベース部材222に対して一体に形成された第2ベース部材224とで構成されている。なお、第1ベース部材222と第2ベース部材224とは、本実施形態のように一体に形成されてもよいし、別体であってもよい。
【0038】
第1ベース部材222は、円の約90°分程度の略C字状の断面形状を有する部材であり、内面の形状が電線収容部材210の内面とほぼ面一となるように形成されている。
【0039】
第2ベース部材224は、円の約90°分程度の略C字状の断面形状を有する部材であり、第1ベース部材222と組み合わされることによってちょうど電線収容部材210の断面形状と同程度のC字状となる。また、第2ベース部材224は、切削刃部材216が回動可能に取り付けられる切削刃部材取付面226を有している。
【0040】
C型部材214は、ベース部材212における、電線収容部材210に取り付けられた側面とは反対側の側面に取り付けられた部材であり、電線収容部材210とほぼ同じC字状の断面形状を有している。なお、本実施形態の場合、C型部材214は、3本のネジ228,230,232でベース部材212に取り付けられており、このうち、ネジ228,230によって第2ベース部材224に取り付けられ、ネジ232によって第1ベース部材222に取り付けられている。また、ネジ232は、後述するように、コントロールブロック218が回動するための回動軸の役割を有している。さらに、ネジ232の先端部は、第1ベース部材222に形成されたネジ挿設穴233に挿設されている。
【0041】
切削刃部材216は、被覆電線Lから絶縁被覆Hを剥離して芯線Sを露出させる部材であり、その一端部に切削刃234が形成されているとともに、略中央部に当該切削刃部材216を第2ベース部材224の切削刃部材取付面226に対して回動可能に取り付ける回動ピン235が挿通される回動ピン用孔236が形成されている。
【0042】
また、切削刃部材216とC型部材214との間には、当該切削刃部材216における切削刃234が形成された一端部をC型部材214から離間する方向に付勢する切削刃付勢部材240が配設されている。本実施形態では、切削刃付勢部材240として巻バネが使用されているが、これに限定されるものではない。
【0043】
さらに、切削刃234の形状は、当該切削刃234の中心軸CSを中心とした円弧状に形成されているが、これに限定されるものではなく、例えば彫刻刀の切り出し刃のように直線状の形状であってもよい。
【0044】
また、第2ベース部材224の切削刃部材取付面226には、回動ピン235の先端部が挿設される回動ピン挿設穴237が形成されているとともに、切削刃234がC型部材214から離間する方向への切削刃部材216の回動を規制する回動規制突部238が突設されている。
【0045】
コントロールブロック218は、切削刃部材216の回動を制御するための部材である。当該コントロールブロック218の一端部は、切削刃部材216の側面に接触して当該切削刃部材216の回動を規制する回動規制部242となっている。また、コントロールブロック218の中央部には、ネジ232が挿通される軸挿通孔244が形成されている。さらに、コントロールブロック218の他端部は、電線Lの表面に当接する電線当接部246となっている。これにより、コントロールブロック218は、軸挿通孔244を中心として回動可能になっている。なお、本実施形態では、ネジ232にカラー248が被せられている。つまり、このカラー248は、ネジ232と軸挿通孔244との間に配設されている。
【0046】
また、コントロールブロック218とC型部材214との間には、当該コントロールブロック218の他端部である電線当接部246を所定位置にセットされた電線Lに向けて付勢するコントロールブロック付勢部材250が配設されている。なお、本実施形態では、コントロールブロック付勢部材250としてねじりバネが使用されているが、これに限定されるものではない。
【0047】
さらに、コントロールブロック付勢部材250によって付勢されたコントロールブロック218の一端部である回動規制部242が不所望に切削刃部材216から離間し過ぎること、および、当該コントロールブロック218の他端部である電線当接部246が被覆電線Lの中心軸CLに近づき過ぎて当該被覆電線Lの芯線Sに当接することを規制するコントロールブロック規制部材252が第1ベース部材222の側面から突設されている。
【0048】
また、コントロールブロック218の一端部に形成された回動規制部242における切削刃部材216に向かう面は、切削刃234が形成された切削刃部材216の一端部に当接し、切削刃部材216の回動方向に対して傾斜する傾斜面254となっている。コントロールブロック218がコントロールブロック付勢部材250からの付勢力に抗して回動すると、当該傾斜面254が切削刃部材216に近づいて当接する。そして、さらにコントロールブロック218が同じ方向に回動していくと、傾斜面254に押された切削刃部材216の切削刃234を含む一端部が切削刃付勢部材240からの付勢力に抗してC型部材214に向けて回動するようになっている。
【0049】
なお、本実施形態では、傾斜面254に当接するライナー256が切削刃部材216に取り付けられている。また、このライナー256は、留めピン258によって切削刃部材216の側面に取り付けられている。
【0050】
コントロールブロック218と切削刃部材216との位置関係について、さらに説明すると、コントロールブロック218が回動して回動規制部242が切削刃部材216の一端部をC型部材214の方向に回動させ終わった状態のとき、切削刃部材216における切削刃234の中心軸CSは電線Lの長手方向にほぼ直交する向きになっている。
【0051】
また、コントロールブロック218の電線当接部246は、電線Lの長手方向に直交する向きになった切削刃234の中心軸CSを含む仮想平面にある。つまり、この状態における切削刃234の中心軸CS上に電線当接部246が位置している。
【0052】
また、コントロールブロック218の他端部にある電線当接部246が電線皮剥工具100に正しくセットされた電線Lの表面(より詳しく言えば、絶縁被覆Hの表面)に当接した状態になっているとき、一端部にある回動規制部242が切削刃部材216の一端部をC型部材214の方向に回動させ終わった状態となっている。
【0053】
一方、コントロールブロック218の電線当接部246が電線Lの芯線Sの表面に当接した状態になっているとき(つまり、電線当接部246がより電線Lの中心軸CLに近づいた状態になっているとき)、電線Lの中心から絶縁被覆Hの表面までの距離に比べて芯線Sの表面までの距離は短く、さらに、コントロールブロック218はコントロールブロック付勢部材250によって電線当接部246が電線Lに向けて付勢されていることから、当該コントロールブロック218は、他端部が電線Lの中心により近く、逆に、一端部の回動規制部242が電線Lの中心から離間する方向に回動する。
【0054】
この状態で、回動規制部242は切削刃部材216から離れて当該切削刃部材216の回動規制を解除した状態となる。これにより、切削刃部材216は切削刃付勢部材240からの付勢力によってその一端部がC型部材214から最も離間した状態となり、一端部に形成された切削刃234の中心軸CSは、電線Lの中心軸CLに対して所定の切削角(90°よりも小さい角度)となる。なお、この切削角は、切削刃部材216の回動中心位置(回動ピン235の中心)と、切削刃部材取付面226に設けられた回動規制突部238との位置関係によって決められる。
【0055】
図1および図2に戻り、サポート部材204は、開閉回転機構110の開閉に伴ってメイン機構202の電線収容部220を開閉する部材であり、電線収容部220を閉じたときにメイン機構202と組み合わされて、内部に当該電線収容部220を有する筒状の皮剥機構200を構成するようになっている。
【0056】
(実施形態に係る電線皮剥工具100の動作)
次に上述した電線皮剥工具100を用いて電線Lの絶縁被覆Hを剥ぐ動作について説明する。最初に、作業者が操作棒Bを逆回転させることによって電線皮剥工具100の開閉回転機構110を作動させ、電線皮剥工具100を開く。この状態において、図6から図8に示すように、皮剥機構200は、コントロールブロック218がコントロールブロック付勢部材250からの付勢力によって回動し、電線Lがセットされた時の中心軸CLに最も近づく位置まで電線当接部246が移動した状態になっている。なお、この状態は、コントロールブロック218がコントロールブロック規制部材252に当て止まることにより保持されている。また、この状態において、コントロールブロック218の回動規制部242は切削刃部材216から外れているので、当該切削刃部材216の切削刃234はC型部材214から最も離間した位置まで回動した状態になっており、当該切削刃234の中心軸CSは電線Lがセットされた時の中心軸CLに対して所定の切削角を形成している。なお、この状態は、切削刃部材216が回動規制突部238に当て止まることにより保持されている。
【0057】
然る後、開いた電線皮剥工具100を電線Lにあてがい、電線収容部材210の内側に電線Lを嵌め込んでいく。このとき、図9から図11に示すように、電線当接部246がコントロールブロック付勢部材250の付勢力に抗して電線Lの中心軸CLから離間する方向に回動する。
【0058】
すると、電線当接部246とは反対側に形成された回動規制部242の傾斜面254が切削刃部材216における切削刃234が形成された一端部に当接し、電線当接部246が中心軸CLから離間する方向に回動するにつれて、当該傾斜面254が切削刃付勢部材240の付勢力に抗して切削刃部材216の一端部をC型部材214に向けて回動させていく。
【0059】
さらに電線Lを嵌め込んでいき、かつ、作業者が操作棒Bを正回転させることによって電線皮剥工具100の開閉回転機構110を作動させると、図12から図14に示すように、電線皮剥工具100が閉じられ、電線収容部材210の内側における電線収容部220の所定位置に電線Lがセットされた状態となる。このとき、切削刃234の中心軸CSが電線Lの長手方向に対して直交する向きとなり、かつ、当該切削刃234の先端部が被覆電線Lの絶縁被覆Hに切り込んだ状態となっている。
【0060】
この状態から、作業者がさらに操作棒Bを正回転させると、電線皮剥工具100の開閉回転機構110が回転し、これに伴って皮剥機構200全体も電線Lの中心軸CLを中心として回転する。
【0061】
すると、被覆電線Lの絶縁被覆Hに切り込んでいた切削刃234が電線Lの中心軸CLを中心して回転しながら絶縁被覆Hを剥ぎ取っていく。このとき、上述のように切削刃部材216の一端部がコントロールブロック218によってC型部材214に近接するように移動させられており、切削刃234の中心軸CSが電線Lの長手方向に対して直交する向きになっていることから、切削刃234は、電線Lの長手方向に対して直交する向きで絶縁被覆Hを剥ぎ取る。
【0062】
皮剥機構200の回転が進み、ほぼ一回転すると、図15から図17に示すように、コントロールブロック218の電線当接部246が絶縁被覆Hの剥ぎ取り開始位置に到達して芯線Sに近づき、コントロールブロック付勢部材250に付勢されて電線当接部246が電線Lの中心軸CLに近づく方向に回動する。このとき、電線当接部246が露出した芯線Sの表面に当接する寸前まで近づいた状態で、コントロールブロック規制部材252により、コントロールブロック218の回動が止められる。もちろん、コントロールブロック規制部材252とは別の仕組みでコントロールブロック218の回動を止めるようにしてもよい。例えば、コントロールブロック218における軸挿通孔244と、カラー248とが互いに係合することで、所定の位置でコントロールブロック218の回動を止めることが考えられる。
【0063】
すると、コントロールブロック218の回動規制部242が電線Lの中心軸CLから離間する方向に移動して、切削刃部材216の回動規制が解かれる。これにより、切削刃部材216の一端部が切削刃付勢部材240に付勢されて切削刃234の中心軸CSが電線Lの中心軸CLに対して所定の切削角を形成するまで回動する。
【0064】
然る後、さらに皮剥機構200の回転を進めると、電線Lの中心軸CLに対して切削刃234が垂直ではなく所定の切削角をもって当たるようになっていることから、切削刃234が絶縁被覆Hを剥いでいく際の反力によって皮剥機構200全体、さらには電線皮剥工具100全体が電線Lの中心軸CLに沿って移動していく。
【0065】
これにより、作業者が操作棒Bを正回転させて開閉回転機構110を回転させ続けることで、皮剥機構200は絶縁被覆Hを螺旋状に剥いでいくことになる。そして、所定の長さだけ絶縁被覆Hの剥ぎ取りが完了すると、作業者は操作棒Bを再び逆回転させる。すると、開閉回転機構110によって電線皮剥工具100が開くので、電線Lから電線皮剥工具100を取り外すことができるようになる。ここまでで、電線Lの皮剥ぎ作業が完了する。
【0066】
(実施形態に係る電線皮剥工具100の特徴)
上述した実施形態に係る電線皮剥工具100によれば、電線Lをセットした状態で切削刃234が絶縁被覆Hに切り込んだ「切削刃234の切り込み開始箇所」から皮剥機構200が約1回転するまでの間は、切削刃部材216がコントロールブロック218によって回動規制されており、切削刃234の中心軸CSが電線Lの長手方向(中心軸CL)に対して直交する向きに保持される。これにより、切削刃234の切り込み開始箇所を含み電線Lの中心軸CLに直交する平面で見たときの全周にわたって絶縁被覆Hを剥ぎ取ることができ、絶縁被覆Hの剥ぎ残りが生じるのを回避できる。
【0067】
また、切り込み箇所で一回転した後、コントロールブロック218の規制が解除されて回動した切削刃部材216の中心軸CSが電線Lの中心軸CLに対して所定の切削角を形成することにより切削刃234は螺旋状に皮剥を行うようになっている。
【0068】
さらに、切削刃234は、上述のように、当該切削刃234の中心軸CSを中心とした円弧状や直線状に形成されており、切削刃234が絶縁被覆Hを剥いでいく際の反力によって皮剥機構200全体、さらには電線皮剥工具100全体が電線Lの中心軸CLに沿って移動していく。このため、作業者は単に操作棒Bを正回転させ続けるだけで皮剥作業を続けることができる。
【0069】
(変形例)
(1)
上述した実施形態では、切削刃234は、当該切削刃234の中心軸CSを中心とした円弧状に形成されているが、これに変えて、切削刃234を別の形状としてもよい。
【0070】
(2)
上述した実施形態では、切削刃部材216における切削刃234が形成された一端部がC型部材214に最も近づいた状態で切削刃234の中心軸CSが電線Lの長手方向(中心軸CL)に対して直交する向きとなり、当該一端部がC型部材214から離間したときに電線Lの長手方向(中心軸CL)と所定の角度を有するように設定されているが、これとは逆に、一端部が第1ベース部材222に最も近づいた状態で切削刃234の中心軸CSが電線Lの長手方向(中心軸CL)に対して直交する向きとなり、当該一端部が第1ベース部材222から離間したときに電線Lの長手方向(中心軸CL)と所定の角度を有するように設定してもよい。この場合、切削刃234が絶縁被覆Hを螺旋状に切削していく際に、電線Lに対して皮剥機構200が移動する方向は逆になる。
【0071】
(3)
上述した実施形態におけるコントロールブロック218は、その略中央部に形成された回動ピン用孔236を中心として回動することにより、切削刃部材216の回動を規制する状態から当該規制を解除する状態に移行できるようになっていたが、コントロールブロック218の動きは「回動」に限定されるものではない。このような「回動」に変えて、例えば、図18および図19に示すように、コントロールブロック300を電線Lの中心軸CLに近づく、あるいは遠ざかる方向(図中上下方向)に直線的に移動させることにより、切削刃部材216の回動を規制する状態から当該規制を解除する状態に移行させてもよい。
【0072】
具体的に説明すると、この変形例におけるコントロールブロック300は、第1ベース部材222の図中上面に取り付けられており、当該第1ベース部材222の図中上面から突設されたガイドピン270に沿って図中上下方向に直接的に移動可能になっている。また、コントロールブロック300は、付勢部材272によって、第1ベース部材222に向けて(図中下方に向けて)付勢されている。この付勢部材272は、付勢部材取付ネジ274によって所定の位置に取り付けられている。なお、この変形例において、付勢部材272としてバネが使用されているが、コントロールブロック300を第1ベース部材222に向けて付勢できるものであれば、バネ以外のものを使用することができる。
【0073】
コントロールブロック300は、図20に示すように、大略、本体部302と、当該本体部302の一端から図中下方に延びる電線当接部304と、当該本体部302の他端から図中下方に延びる回動規制部306とを有している。したがい、コントロールブロック300が電線Lの中心軸CLに近づく方向に移動すると、電線当接部304および回動規制部306も同じく電線Lの中心軸CLに近づく方向に移動する。
【0074】
本体部302は、略矩形状の板材であり、その中央部には、ガイドピン270が挿設されるガイドピン挿設孔308、および、付勢部材取付ネジ274が挿設される付勢部材取付ネジ挿設孔310が形成されている。
【0075】
電線当接部304は、その先端(図中下端)が電線Lに当接するようになっている。
【0076】
回動規制部306は、その先端部(図中下端部)が本体部302から離間する方向に曲げられた形状をしており、この曲げられた部分における図中上面が切削刃部材216の回動方向に対して傾斜する傾斜面312となっている。コントロールブロック300が付勢部材272からの付勢力に抗して第1ベース部材222から離間する方向に移動すると、当該傾斜面312が切削刃部材216の側方下部に近づいて当接する。そして、コントロールブロック300がさらに第1ベース部材222から離間する方向に移動すると、傾斜面312に押された切削刃部材216の切削刃234を含む一端部が切削刃付勢部材240からの付勢力に抗して、電線Lの長手方向に直交する向きに回動する。
【0077】
図18および図19に戻り、この変形例における電線皮剥工具100の動作について簡単に説明する。電線収容部材210の内側の所定位置に電線Lがセットされた状態において、コントロールブロック300の電線当接部304は電線Lの絶縁被覆Hによって押し上げられ、付勢部材272に抗して第1ベース部材222から離間した状態にある。これに伴い、回動規制部306の傾斜面312に押された切削刃部材216の切削刃234を含む一端が電線Lの長手方向に直交する向き回動した状態になっている。
【0078】
然る後、作業者が操作棒Bを正回転させることによって電線皮剥工具100の開閉回転機構110が回転し、これに伴って皮剥機構200全体も電線Lの中心軸CLを中心として回転すると、被覆電線Lの絶縁被覆Hに切り込んでいた切削刃234が電線Lの中心軸CLを中心して回転しながら絶縁被覆Hを剥ぎ取っていく。このとき、上述のように切削刃234が電線Lの長手方向に対して直交する向きになっていることから、切削刃234は、電線Lの長手方向に対して直交する向きで絶縁被覆Hを剥ぎ取る。
【0079】
皮剥機構200の回転が進み、ほぼ一回転すると、コントロールブロック300の電線当接部304が絶縁被覆Hの剥ぎ取り開始位置に到達して芯線Sに近づき、付勢部材272に付勢されたコントロールブロック300がガイドピン270に沿って第1ベース部材222に近接する方向に直線的に移動する。コントロールブロック300がこのように移動すると、回動規制部306も切削刃部材216よりも図中下方に移動する。これにより、切削刃部材216を押していた傾斜面312が離れていくので、切削刃部材216の一端部が切削刃付勢部材240に付勢されて切削刃234の中心軸CSが電線Lの中心軸CLに対して所定の切削角を形成するまで回動する。
【0080】
然る後、さらに皮剥機構200の回転を進めると、電線Lの中心軸CLに対して切削刃234が垂直ではなく所定の切削角をもって当たるようになっていることから、切削刃234が絶縁被覆Hを剥いでいく際の反力によって皮剥機構200全体、さらには電線皮剥工具100全体が電線Lの中心軸CLに沿って移動していく。
【0081】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0082】
100…電線皮剥工具
110…開閉回転機構、112…回転ベース部材、114…回転駆動部材、116…切欠リング部材、118…保持部材、119…保持部材カバー、120…開閉筒状部材、122…開閉ガイド部材、123…外側切欠リング部材、124…傘歯車、126…歯車、128…第1部材、130…第2部材、132…カムフォロワ、134…保持部材固定ネジ、136…第1円筒部材、138…第2円筒部材、140…軸支ピン、142…係止フック、144…複合フック、146…保持部材側フック、148…係合ピン、150…係合フック、152…保持部材係合フック、154…切欠リング部材固定ネジ
200…皮剥機構、202…メイン機構、204…サポート部材
210…電線収容部材、212…ベース部材、214…C型部材、216…切削刃部材、218…コントロールブロック、220…電線収容部、222…第1ベース部材、224…第2ベース部材、226…切削刃部材取付面、228…ネジ、230…ネジ、232…ネジ、233…ネジ挿設穴、234…切削刃、235…回動ピン、236…回動ピン用孔、237…回動ピン挿設穴、238…回動規制突部、240…切削刃付勢部材、242…回動規制部、244…軸挿通孔、246…電線当接部、248…カラー、250…コントロールブロック付勢部材、252…コントロールブロック規制部材、254…傾斜面、256…ライナー、258…留めピン
270…ガイドピン、272…付勢部材、274…付勢部材取付ネジ
300…コントロールブロック、302…本体部、304…電線当接部、306…回動規制部、308…ガイドピン挿設孔、310…付勢部材取付ネジ挿設孔、312…傾斜面、
L…電線(被覆電線)、S…芯線、H…絶縁被覆
CL…(電線Lの)中心軸、CS…(切削刃234の)中心軸
B…操作棒
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図20