(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】方向切替が容易なラチェットレンチ
(51)【国際特許分類】
B25B 13/46 20060101AFI20220613BHJP
【FI】
B25B13/46 C
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021033066
(22)【出願日】2021-03-02
【審査請求日】2021-03-10
(32)【優先日】2020-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】511314186
【氏名又は名称】優鋼機械股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】謝 智慶
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-106147(JP,U)
【文献】登録実用新案第3183496(JP,U)
【文献】特開2011-062791(JP,A)
【文献】米国特許第05230262(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 13/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
方向切替が容易なラチェットレンチであって、
前記ラチェットレンチは、
シャフト、前記シャフトの前端に接続された頭部、前記シャフトが含む前記シャフト後端に形成されたグリップ端、前記頭部中に設けられた収容部、本体の縦方向に沿って前記シャフト中に設けられ、前端が前記収容部に接続された通路、前記シャフトに設けられ、前記通路と連通するスロット、を有する、前記本体と、
前記頭部の収容部中に取り付けられたラチェット及び係止部材と、を含み、
前記ラチェットは前記収容部中で回転することができ、前記係止部材は前記収容部中で移動することができ、前記係止部材の前端面と前記ラチェットの周面は噛合接続され、
前記ラチェットレンチはさらに、前記収容部中に回転可能に取り付けられ、且つ前記係止部材の後方に位置するトグル部材を含み、前記トグル部材は回転時に前記係止部材を連動させて移動せしめ、前記ラチェットレンチはさらに、前記トグル部材と前記係止部材の間に設けられ、その弾性力により前記係止部材に前記ラチェットとの弾性的な噛合接続を保持させる、弾性部材と、
トグル、回転シャフト並びに互いに係合する嵌合接続部材及び嵌合溝を有する方向切替装置と、を含み、
前記回転シャフトは前記本体の通路中に設けられ、前記通路中で回転することができ、
前記回転シャフトの前端は前記トグル部材に面しており、
前記回転シャフトの後端は前記スロット部分に位置しており、
前記トグルは前記スロットから前記回転シャフトと接続され、前記回転シャフトを連動させて時計回り又は反時計回りに回転せしめ、
前記嵌合接続部材及び前記嵌合溝はそれぞれ前記トグル部材の後端面及び前記回転シャフトの前端面に設けられ、前記嵌合接続部材の一端は自由端であり、前記嵌合溝に嵌合接続され、前記回転シャフトは中心軸を有し、前記嵌合接続部材の自由端の中心は前記回転シャフトの中心軸と位置ずれがあり、前記回転シャフトが異なる方向に回転するとき、前記トグル部材を連動させて異なる方向に移動せしめ、前記係止部材が連動して前記収容部の2つの側に移動する、ラチェットレンチ。
【請求項2】
前記嵌合接続部材は直棒形状を呈しており、中心軸を有し、その他端は接続端であり、前記トグル部材の後端面又は前記回転シャフトの前端面に接続され、前記嵌合溝は前記回転シャフトの前端面又は前記トグル部材の後端面に設けられ、前記嵌合溝の縦方向において、前記嵌合接続部材の中心軸は前記回転シャフトの中心軸と位置ずれがある、請求項1に記載のラチェットレンチ。
【請求項3】
前記トグルが前記回転シャフトを連動させて時計回りに回転させるとき、第1位置に位置決めすることができ、前記トグルが前記回転シャフトを連動させて反時計回りに回転させるとき、第2位置に位置決めすることができる、請求項1に記載のラチェットレンチ。
【請求項4】
第1位置決め部、第2位置決め部及び少なくとも1つの弾性位置決め要素が、それぞれ前記通路の周壁及び前記回転シャフトに設けられ、前記トグル及び前記回転シャフトが前記第1位置に位置決めされたとき、前記弾性位置決め要素は前記第1位置決め部と弾性的に結合し、前記トグル及び前記回転シャフトが前記第2位置に位置決めされたとき、前記弾性位置決め要素は前記第2位置決め部と弾性的に結合する、請求項3に記載のラチェットレンチ。
【請求項5】
前記第1位置決め部及び前記第2位置決め部は前記通路の周壁に設けられ、直径孔が前記回転シャフトの径方向に沿って前記回転シャフトに設けられ、前記弾性位置決め要素は前記直径孔中に取り付けられ、弾性的に前記直径孔に移入するか又は前記回転シャフトから突出することができる、請求項4に記載のラチェットレンチ。
【請求項6】
前記スロットは前記シャフトの円周に沿って前記シャフトに設けられ、前記グリップ端又は非前記グリップ端に位置する部分を含み、接続部材が前記スロットを穿伸しており、その2つの端はそれぞれ前記トグル及び前記回転シャフトに接続される、請求項1に記載のラチェットレンチ。
【請求項7】
前記トグルは環形状を呈しており、シャフトに周設される、請求項6に記載のラチェットレンチ。
【請求項8】
前記頭部の上面又は底面に収容部と連通する開口が設けられ、カバーが前記開口を密閉しており、軸部及び枢設孔がそれぞれ前記トグル部材の一端及び前記カバーに設けられ、前記軸部は前記枢設孔中に枢設される、請求項1に記載のラチェットレンチ。
【請求項9】
グリップが前記シャフトの後端に設けられ、前記スロットは前記シャフト後端と前記グリップ前端の間に設けられる、請求項1に記載のラチェットレンチ。
【請求項10】
前記シャフトの周面に環状溝が設けられており、前記トグルの一端縁が前記環状溝中に延び入っている、請求項7に記載のラチェットレンチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレンチに関し、具体的には方向の切り替えが容易なラチェットレンチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
双方向に回転可能なラチェットレンチは、方向切替レバーを有し、切替レバーは2つの位置の間で切り替えることができ、これによりラチェットレンチのラチェットの回転方向が変わるものである。
【0003】
従来のラチェットレンチの切替レバーはレンチの頭部に設けられており、レンチのグリップとかなりの距離があり、ラチェットレンチの回転方向を変えたいとき、使用者は一方の手でグリップを握り、もう一方の手で切替レバーを操作することになり、片手でラチェットレンチの回転方向を片手で切り替えることは難しく、両手での操作が求められていた。
【0004】
さらに、狭い空間で作業する場合には、レンチの頭部が狭い空間中に深く入って(使用者から離れて)螺合部材と結合することになる。空間が狭いため、頭部まで狭い空間に手を入れることが難しく、ラチェットレンチのラチェットの回転方向を切り替えたいときには、レンチの頭部を工作物から離し、レンチを狭い空間から出して回転方向を切り替えてから、再びレンチを狭い空間に延ばし入れて、頭部を螺合部材と結合させなければならず、言い換えると、レンチが狭い空間から出ていない状況ではラチェットレンチの回転方向を切り替えることができないということであり、使用において不便が生じていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述の欠点を解決することを意図しており、方向を切り替える方向切替装置を有し、方向切替装置をレンチのシャフト内に設け且つ一部をシャフト外に露出させることで作業に利便性が提供される、ラチェットレンチを提供することを主な目的としている。
【0006】
本発明のもう一つの目的は、方向切替装置がややラチェットレンチのグリップ端寄りになっており、使用者がラチェットレンチのラチェットの回転方向を片手で切り替えられるようにした、上述のラチェットレンチを提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、狭い空間中でラチェットレンチの回転方向を簡単に切り替えることができる、方向切替が容易なラチェットレンチを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明が提供する方向切替が容易なラチェットレンチは、
シャフト及びシャフトの前端に接続された頭部、頭部中に設けられた収容部、本体の縦方向に沿ってシャフト中に設けられ、前端が収容部に接続された通路、シャフトに設けられ、通路と連通するスロット、を有する、本体と、
頭部の収容部中に取り付けられたラチェット及び係止部材と、を含み、係止部材の前端面とラチェットの周面は噛合接続され、
ラチェットレンチはさらに、収容部中に回転可能に取り付けられ、且つ係止部材の後方に位置し、回転時に係止部材を連動させて移動せしめるトグル部材と、
トグル、回転シャフト並びに互いに係合する嵌合接続部材及び嵌合溝を有する方向切替装置と、を含み、
回転シャフトは本体の通路中に設けられ、通路中で回転することができ、その前端はトグル部材に面しており、その後端はスロットに達しており、
トグルはスロットから回転シャフトと接続され、回転シャフトを連動させて回転せしめ、
嵌合接続部材及び嵌合溝はそれぞれトグル部材の後端面及び回転シャフトの前端面に設けられ、嵌合接続部材の自由端は嵌合溝に嵌合接続され、嵌合接続部材の自由端の中心は回転シャフトの中心軸と位置ずれがあり、回転シャフトが異なる方向に回転するとき、トグル部材を連動させて異なる方向に移動せしめ、係止部材が連動して収容部の2つの側に移動し、係止部材を異なる位置でラチェットに噛合接続させる。
【発明の効果】
【0009】
方向切替装置のトグルは、ラチェットレンチのグリップ端か又はその近くに位置しており、使用者がレンチを握るとき、片手(レンチを握る手)でトグルを回してラチェットの回転方向を制御することができる。さらに、狭い空間中でレンチの回転方向を切り替えるのにも適している。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明の目的、特徴及び達成される効果は、下記の好ましい実施例の説明及び図面から理解することができる。
【0011】
【
図1】本発明の好ましい第1実施例におけるラチェットレンチの斜視図である。
【
図3】
図2のレンチの分解斜視図であり、ラチェット、係止部材及びカバープレートは図示していない。
【
図5】
図4の部分拡大図であり、レンチ前端の構造を示している。
【
図6】
図4の部分拡大図であり、レンチ後端の構造を示している。
【
図9】
図8の9-9断面部分の断面図であり、回転シャフト、トグル部材及び係止部材のみを示している。
【
図10】
図7と概ね同じであり、方向切替装置が第1位置決め部に位置決めされていることを示している。
【
図11】
図9と概ね同じであり、回転シャフトの時計回り回転を示している。
【
図12】
図8と概ね同じであり、トグル部材が係止部材を頭部の右側へ移動させていることを示している。
【
図13】
図7と概ね同じであり、方向切替装置が第2位置決め部に位置決めされていることを示している。
【
図14】
図9と概ね同じであり、回転シャフトの反時計回り回転を示している。
【
図15】
図8と概ね同じであり、トグル部材が係止部材を頭部の左側へ移動させていることを示している。
【
図16】本発明のラチェットレンチにおける好ましい第2実施例の縦方向断面図である。
【
図18】
図17の18-18断面部分の断面図であり、回転シャフト、トグル部材及び係止部材のみを示している。
【
図19】
図18と概ね同じであり、回転シャフトの時計回り回転を示している。
【
図20】
図17と概ね同じであり、トグル部材が係止部材を頭部の右側へ移動させていることを示している。
【
図21】
図18と概ね同じであり、回転シャフトの反時計回り回転を示している。
【
図22】
図17と概ね同じであり、トグル部材が係止部材を頭部の左側へ移動させていることを示している。
【
図23】本発明の好ましい第3実施例におけるラチェットレンチの部分分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0012】
図1~
図3を参照して、本発明の好ましい第1実施例が提供する方向切替が容易なラチェットレンチ10は、本体20、ラチェット30、係止部材35、トグル部材40及び方向切替装置50を有し、そのうち、ラチェットの回転方向の切り替えに用いられる方向切替装置のトグルは、使用者が操作しやすいよう、レンチのグリップ端か又はレンチのグリップ端の近くに設けられている。本発明の好ましい実施例における具体的な構造及び操作方法について、以下で詳述する。
【0013】
本体20は、シャフト21及び頭部22を有し、頭部22はシャフト21の前端に設けられている。シャフト21の後端はグリップ端を有するが、好適には、シャフトはシャフト21の後端に設けられたグリップ23を有し、グリップ23によってグリップ端を形成する。収容部24は、頭部22に設けられて、ラチェット30及び係止部材35を収容するのに用いられ、頭部22の上面又は底面に開口221が設けられるが、本実施例では、上述の開口221は頭部22の底面に設けられ、収容部と連通しており、収容部24の底側を開いた状態にさせている。縦方向の通路26は、
図4の通り、本体20の縦方向に沿ってシャフト21中に設けられ、通路26の前端は収容部24に接続され、その後端はシャフト21のグリップ端(グリップ23)に達している。スロット27は、
図6の通り、シャフト21後端の周面の頂縁部に設けられ、通路26と連通しており、スロット27はグリップ端(グリップ)か、又はグリップ端(グリップ)の近くに位置させることができるが、好適には、スロット27はシャフト後端とグリップ23前端の接続部分の間、例えばグリップ23前端の近くなどに位置させる。
図7を参照して、スロット27はシャフトの円周に沿ってシャフト21に設けられ、その左右2つの端は一定の長さ又は一定の弧長を有している。
図7を参照して、シャフト21の通路26の底側周壁には第1位置決め部261及び第2位置決め部262が設けられており、スロット27に対応している。2つの位置決め部261、262は、シャフトの2つの側に対称に位置させるのが好ましい。凸リング25は、
図3の通り、本体20に凸設され、グリップ23とシャフト21の接続部分に位置している。
【0014】
図5を参照して、ラチェット30及び係止部材35は頭部22の収容部24中に取り付けられ、ラチェット30は収容部24中で回転することができる。係止部材35は収容部24の2つの側に移動することができ、係止部材35の前端面は歯部36を幾らか有し、ラチェット30の周面に設けられた歯部32と噛合接続されている。ラチェット30は角ドライブ33を凸設するか又は多角形スリーブ孔を設けることができ、ラチェット30がこれによりソケット又は螺合部材(ボルト又はナット)を駆動できるようにさせる。カバー28は、頭部22の開口221に覆設され、収容部24を密閉するとともに、ラチェット30及び係止部材35を収容部24中に保持する。カバー28は、ラチェット30の角ドライブ33を突出させるための孔281を有する。
【0015】
収容部24の後側は小凹部241をさらに有している。トグル部材40は小凹部241中に取り付けられ、回転することができる。トグル部材40の底端には円柱状の軸部42が設けられており、カバー28の枢設孔282中に枢設されて、トグル部材40の回転の軸心とされる。トグルカム44は、トグル部材の前端面に凸設され、且つ係止部材35の後端面の凹穴37中に延び入り、トグル部材40の回転時に、トグルカム44を介して係止部材35を連動させて移動せしめる。弾性部材45は、圧縮バネであり、その両端はそれぞれ係止部材35後端面の凹部38及びトグル部材40前端面の挿入穴43に取り付けられ、その弾性力により係止部材35にラチェット30との弾性的な噛合接続を保持させている。
【0016】
方向切替装置50は、トグル52、回転シャフト54並びに互いに係合する嵌合接続部材57及び細長い形状の嵌合溝58を有し、嵌合接続部材57は嵌合溝58中で移動することができる。
【0017】
図4~
図6の通り、回転シャフト54は本体20の通路26中に取り付けられ、通路26中で回転することができる。回転シャフト54の前端はトグル部材40に面しており、その後端はシャフト21のスロット27に達している。直径孔541は、回転シャフト54の径方向に沿って回転シャフトに貫通させて設けられており、直径孔541はシャフト21のスロット27に対応している。
【0018】
トグル52はシャフト上に取り付けられ、且つスロット27から回転シャフト54に接続されており、操作者により切り替えが可能である。トグルは回転シャフト54を連動させて回転せしめ、且つ回転シャフト54を2つの位置に位置決めさせる。具体的には、本実施例のトグル52は円環形状を呈しており、半円形を呈する第1半体521及び第2半体522を有し、2つの半体521、522の両端がフック部524により互いにフック接続されて円形のリング体が形成されている。トグル52はシャフト21の外周に套設され、シャフト上を回転することができ、トグル52の後端縁は凸リング25の環状溝251中に嵌め込まれている。突起したトグル部523は、第1半体521に設けられ、且つシャフト21の頂縁部に位置しており、操作者がトグル部523によりトグル52を動かして回転させるのに都合が良い。接続部材55は、スロット27を穿伸しており、その2つの端は一端がトグル52に接続され、他端が回転シャフト54の直径孔541の一端(頂端)に差し込み接続されており、これによりトグル52を回転シャフト54に接続させている。
【0019】
弾性位置決め要素56は、回転シャフト54の直径孔541の他端(底端)に取り付けられ、弾性的に回転シャフト54の底側の周面に露出するか、又は回転シャフトの直径孔541中に移入することができる。弾性位置決め要素56は、弾性部材561及び玉体562を含み、玉体562は弾性部材561の弾性付勢を受け、回転シャフト54において露出又は移入することができる。
【0020】
嵌合接続部材57及び嵌合溝58は、それぞれトグル部材40の後端面及び回転シャフト54の前端面に設けられ、且つ互いに嵌合接続されている。
図5及び
図8を参照して、本実施例では、嵌合接続部材57は直棒形状を呈しており、その前端(接続端)はトグル部材40の後端面に差し込んで設けられ、嵌合溝58は回転シャフト54の前端面に設けられ、その縦方向はレンチの上、底方向に位置しており、嵌合接続部材57の後端(自由端)は嵌合溝58中に嵌め込まれている。また、
図5を参照して、嵌合接続部材57及び回転シャフト54は中心軸C、Dを有しており、嵌合溝58の縦方向において、嵌合接続部材57の中心軸Cと回転シャフト54の中心軸Dとは位置ずれがあり、即ち、嵌合接続部材57の自由端の中心は回転シャフトの中心軸Dと位置ずれがある。このため、嵌合接続部材57と回転シャフト54の係合により、回転シャフト54が回転すると、トグル部材40を連動させて時計回り又は反時計回りに回転せしめる。
【0021】
以下は、本発明のラチェットレンチ10の方向切替操作及び作動関係について説明するが、以下で述べる時計回り、反時計回り及び左・右方向は、各図面の方向を基準としている。
図10を参照して、トグル部523からトグル52を右方向へ回すとき、トグル52が右へ移動し且つ回転シャフト54を連動させて通路26中で時計回りに回転させ、位置決め要素56の玉体562が第1位置決め部261に弾性的に引っ掛かり、トグル52及び回転シャフト54が第1位置に位置決めされる。
図11及び
図12を参照して、このとき、嵌合溝58に時計回りの角変位が生じて、嵌合接続部材57が連動して片側に移動し、これによりトグル部材40を連動させて時計回りに角変位させ、
図12に示す通り、トグル部材40のトグルカム44が係止部材35を駆動して収容部の右側へ移動させ、係止部材35を収容部24の右側壁面に当接させる。ここで、レンチ10を時計回りに回したとき、係止部材35とラチェット30が噛合接続を保持しているため、ラチェット30を連動させて時計回りに同期回転せしめる。逆に、レンチ10を反時計回りに回したとき、係止部材35はラチェット30の外周を跳動し、レンチ10がラチェット30を連動させて同期回転させることはできない。
【0022】
図13を参照して、トグル52を左方向へ回すとき、トグル52が回転シャフト54を連動させて通路26中で反時計回りに回転させ、位置決め要素56の玉体562が第1位置決め部261を離れて第2位置決め部262に弾性的に引っ掛かり、トグル52及び回転シャフト54が第2位置に位置決めされる。
図14及び
図15を参照して、このとき、嵌合溝58に反時計回りの角変位が生じて、嵌合接続部材57が連動してもう一方の側に移動し、これによりトグル部材40を連動させて反時計回りに角変位させ、
図15に示す通り、トグル部材40のトグルカム44が係止部材35を駆動して収容部の左側へ移動させ、係止部材35を収容部24の左側壁面に当接させる。ここで、レンチ10を反時計回りに回したとき、係止部材35とラチェット30は噛合接続を保持しており、ラチェット30を連動させて反時計回りに同期回転せしめる。逆に、レンチ10を時計回りに回したとき、係止部材35はラチェット30の外周を跳動し、レンチ10がラチェット30を連動させて一緒に回転させることはできない。
【実施例2】
【0023】
図16~
図18は、本発明のラチェットレンチ10'の好ましい第2実施例であり、同様に、本体20、ラチェット30、係止部材35、トグル部材40、弾性部材45、方向切替装置50、嵌合接続部材57及び嵌合溝58を含み、同一要素には同じ符号をそのまま使用しており、要素の構造的特徴については好ましい第1実施例の説明を参照できるため、ここでは説明を省略する。本実施例の図面には方向切替装置のトグルを図示していないが、トグルに関する構造は好ましい第1実施例で示したものと同じである。
【0024】
好ましい本実施例と好ましい第1実施例の違いとして、嵌合接続部材57の後端は回転シャフト54の前端面に差し込んで設けられ、嵌合溝58はトグル部材40の後端面に設けられており、57、58の両者は互いに嵌合接続されている。
【0025】
以下は、ラチェットレンチ10'の操作方法及び作動関係について説明するが、以下で述べる時計回り、反時計回り及び左・右方向は、各図面の方向を基準としている。
図19を参照して、方向切替装置50のトグルを右に回転させて、回転シャフト54を通路26中で時計回りに回転させ、第1位置に位置決めする。
図20を参照して、このとき、嵌合接続部材57が片側に移動し、嵌合溝58を介してトグル部材40を連動させて時計回りに回転させ、トグル部材40のトグルカム44が係止部材35を連動させて右側へ移動させ、係止部材35を収容部24の右側壁面に当接させる。このとき、レンチ10'は時計回りにおいてのみラチェット30を連動させて一緒に回転することができ、半時計回りにおいては、レンチ10'がラチェット30を連動させて一緒に回転することはできない。
【0026】
図21を参照して、方向切替装置50のトグルを左に回転させて、回転シャフト54を連動させて通路26中で反時計回りに回転させ、第2位置に位置決めする。
図21及び
図22を参照して、このとき、嵌合接続部材57がもう一方の側に移動し、嵌合溝58を介してトグル部材40を連動させて反時計回りに回転させ、トグル部材40のトグルカム44が係止部材35を連動させて左側へ移動させ、収容部24の左側壁面に当接させる。このとき、レンチ10'は反時計回りにおいてのみラチェット30を連動させて一緒に回転することができ、時計回りにおいては、レンチ10'がラチェット30を連動させて一緒に回転することはできない。
【実施例3】
【0027】
図23~
図25は、本発明のラチェットレンチ10''の好ましい第3実施例であり、同様に、本体20、ラチェット30、係止部材35、トグル部材40、弾性部材45、方向切替装置50、嵌合接続部材57及び嵌合溝58を含み、同一要素には同じ符号をそのまま使用しており、要素の構造的特徴については好ましい第1実施例の説明を参照できるため、ここでは説明を省略する。
【0028】
好ましい本実施例と好ましい第1実施例の違いとして、回転シャフト54の前端には外径が比較的小さな突出部542と、距離を保った2つのリブを有し、2つのリブが突出部542とサンドイッチ的な接続を呈し、ピン544により貫通接合されて固定された、U字形を呈する連結部材543と、が設けられている。連結部材543と突出部542の間の隙間は嵌合溝58を形成している。嵌合接続部材57の後端(自由端)は嵌合溝58中に嵌合接続されている。
図24に示す通り、嵌合接続部材57の後端(自由端)と回転シャフト54の中心軸Dには位置ずれがある。
【0029】
好ましい本実施例のレンチ10''の操作方法は好ましい第1実施例と同じく、トグル52を回すと回転シャフト54を連動させて回転せしめ、嵌合溝58と嵌合接続部材57との係合関係によりトグル部材40を連動させて回転させ、これにより係止部材35を右又は左に移動させて、レンチ10''のラチェット30の単方向回転の方向を変える。
【0030】
本発明は、使用者が方向切替装置を操作しやすいよう、方向切替装置の操作部分をシャフト21上に設けている。
図1の好ましい実施例の方向切替装置50のトグル52はレンチのグリップ端(グリップ)に近く、操作者はグリップ23を握る手でトグル52を回せばラチェット30の回転方向を変えることができ、ラチェットの回転方向を片手で制御し得るため、操作するのに便利である。
【0031】
また、方向切替装置のトグルがグリップ部分又はグリップの近くに位置しているため、狭い空間において使用する場合に、レンチの頭部22と螺合部材(ボルト又はナット)が結合を保持する状態下で、使用者はそのままトグル52を回してラチェットの回転方向を切り替え、すぐさまレンチを操作することができる。レンチを狭い空間から出して回転方向を切り替えてから、再びレンチを狭い空間に延ばし入れて、頭部を螺合部材と結合させなければならないという従来の欠点が解決される。従って、本発明のレンチは狭い空間中でラチェットの回転方向を簡単に切り替えることができ、操作効率が向上する。
【0032】
上述の実施例は本発明の特徴の説明に過ぎず、限定するものではなく、本発明の等価的修正はすべて本発明の保護範囲に属すると解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0033】
10、10'、10'' ラチェットレンチ
20 本体
21 シャフト
22 頭部
221 開口
23 グリップ
24 収容部
241 小凹部
25 凸リング
26 通路
261 第1位置決め部
262 第2位置決め部
27 スロット
28 カバー
281 孔
282 枢設孔
30 ラチェット
33 角ドライブ
35 係止部材
36 歯部
38 凹部
40 トグル部材
42 軸部
43 挿入穴
44 トグルカム
45 弾性部材
50 方向切替装置
52 トグル
521 第1半体
522 第2半体
523 トグル部
524 フック部
54 回転シャフト
541 直径孔
55 接続部材
56 弾性位置決め要素
561 弾性部材
562 玉体
57 嵌合接続部材
58 嵌合溝
C、D 中心軸