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特許7086423短繊維用処理剤、短繊維用処理剤の水性液、短繊維の処理方法、短繊維の製造方法、及び短繊維
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】短繊維用処理剤、短繊維用処理剤の水性液、短繊維の処理方法、短繊維の製造方法、及び短繊維
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/188 20060101AFI20220613BHJP
   D06M 15/53 20060101ALI20220613BHJP
   D06M 101/32 20060101ALN20220613BHJP
【FI】
D06M13/188
D06M15/53
D06M101:32
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021114220
(22)【出願日】2021-07-09
【審査請求日】2021-07-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】金子 一輝
(72)【発明者】
【氏名】高山 義弘
(72)【発明者】
【氏名】岡田 智八
(72)【発明者】
【氏名】藤井 裕子
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-081367(JP,A)
【文献】特開昭57-128267(JP,A)
【文献】特開2016-199812(JP,A)
【文献】特表平09-510513(JP,A)
【文献】特開2020-103403(JP,A)
【文献】特開2001-164464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 13/00- 15/715
C11D 1/00- 19/00
C10M 101/00-177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機リン酸エステル化合物を実質的に含まない短繊維用処理剤であって、下記の脂肪酸類(A)、及び非イオン界面活性剤(B)を含有し、
前記脂肪酸類(A)及び前記非イオン界面活性剤(B)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記脂肪酸類(A)を0.001質量部以上10質量部以下、及び前記非イオン界面活性剤(B)を90質量部以上99.999質量部以下の割合で含有し、
前記非イオン界面活性剤(B)の全質量に対して、下記の非イオン界面活性剤(B1)を、少なくとも50質量%以上含有することを特徴とする短繊維用処理剤。
脂肪酸類(A):炭素数1~6の脂肪酸、炭素数1~6のヒドロキシ脂肪酸、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも一つ。
非イオン界面活性剤(B1):一価又は二価のアルコール1モルに対し炭素数2~4のアルキレンオキシドを3~30モルの割合で付加させた化合物。
【請求項2】
ICP発光分析法により検出されるリン量が2000ppm以下である請求項1に記載の短繊維用処理剤。
【請求項3】
前記脂肪酸類(A)が、炭素数1~4の脂肪酸、分子中に一つのヒドロキシ基を有する炭素数1~4のヒドロキシ脂肪酸、及びこれらのアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも1つである請求項1又は2に記載の短繊維処理剤。
【請求項4】
前記短繊維が、ポリエステル短繊維である請求項1~のいずれか一項に記載の短繊維用処理剤。
【請求項5】
前記短繊維が、紡績糸製造用のものである請求項1~のいずれか一項に記載の短繊維用処理剤。
【請求項6】
前記短繊維用処理剤が、紡糸延伸工程で用いられるものである請求項1~のいずれか一項に記載の短繊維用処理剤。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載の短繊維用処理剤、及び水を含有することを特徴とする短繊維用処理剤の水性液。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載の短繊維用処理剤と水とを混合した短繊維用処理剤の水性液を、短繊維に付与することを特徴とする短繊維の処理方法。
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項に記載の短繊維用処理剤と水とを混合した短繊維用処理剤の水性液を、紡糸延伸工程において、短繊維に付与することを特徴とする短繊維の製造方法。
【請求項10】
請求項1~のいずれか一項に記載の短繊維用処理剤が付着していることを特徴とする短繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短繊維用処理剤、短繊維用処理剤の水性液、短繊維の処理方法、短繊維の製造方法、及び短繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば合成繊維の紡糸延伸工程や仕上げ工程において、繊維の摩擦を低減させる観点から、繊維の表面に繊維用処理剤を付着させる処理が行われることがある。
従来、特許文献1~4に開示の繊維用油剤が知られている。
【0003】
特許文献1は、アルキルリン酸エステルのカリウム塩と、炭素数8~18のアルキル基を有するアルキルアミン類あるいは置換アルキルアミン類にエチレンオキシドを付加した化合物のリン酸中和物とを配合してなる繊維用油剤について開示する。
【0004】
特許文献2は、有機リン酸エステル塩と、オキシアルキレンポリマーとを含有する繊維用油剤について開示する。
特許文献3は、アルキルリン酸エステルカリウム塩と、パラフィンワックスと、カチオン型界面活性剤を含有する繊維用油剤について開示する。
【0005】
特許文献4は、アルキルリン酸エステルカリウム塩と、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとを含有する繊維用油剤について開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭60-224867号公報
【文献】特開平3-174067号公報
【文献】特開平6-108361号公報
【文献】特開2008-063713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、短繊維用処理剤が付着した短繊維の湿潤時の摩擦特性のさらなる向上と、短繊維用処理剤の耐熱性のさらなる向上とが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための短繊維用処理剤は、有機リン酸エステル化合物を実質的に含まない短繊維用処理剤であって、下記の脂肪酸類(A)、及び非イオン界面活性剤(B)を含有し、前記脂肪酸類(A)及び前記非イオン界面活性剤(B)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記脂肪酸類(A)を0.001質量部以上10質量部以下、及び前記非イオン界面活性剤(B)を90質量部以上99.999質量部以下の割合で含有し、前記非イオン界面活性剤(B)の全質量に対して、下記の非イオン界面活性剤(B1)を、少なくとも50質量%以上含有することを要旨とする。
【0009】
脂肪酸類(A):炭素数1~6の脂肪酸、炭素数1~6のヒドロキシ脂肪酸、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも一つ。
非イオン界面活性剤(B1):一価又は二価のアルコール1モルに対し炭素数2~4のアルキレンオキシドを3~30モルの割合で付加させた化合物。
【0010】
上記短繊維用処理剤は、ICP発光分析法により検出されるリン量が2000ppm以下であることが好ましい。
上記短繊維用処理剤は、前記脂肪酸類(A)が、炭素数1~4の脂肪酸、分子中に一つのヒドロキシ基を有する炭素数1~4のヒドロキシ脂肪酸、及びこれらのアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0011】
上記短繊維用処理剤は、前記短繊維が、ポリエステル短繊維であることが好ましい。
上記短繊維用処理剤は、前記短繊維が、紡績糸製造用のものであることが好ましい。
上記短繊維用処理剤は、前記短繊維用処理剤が、紡糸延伸工程で用いられるものであることが好ましい。
【0012】
上記課題を解決するための短繊維用処理剤の水性液は、前記短繊維用処理剤、及び水を含有することを要旨とする。
上記課題を解決するための短繊維の処理方法は、前記短繊維用処理剤と水とを混合した短繊維用処理剤の水性液を、短繊維に付与することを要旨とする。
【0013】
上記課題を解決するための短繊維の製造方法は、前記短繊維用処理剤と水とを混合した短繊維用処理剤の水性液を、紡糸延伸工程において、短繊維に付与することを要旨とする。
【0014】
上記課題を解決するための短繊維は、前記短繊維用処理剤が付着していることを要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
短繊維用処理剤が付着した短繊維の湿潤時の摩擦特性を向上させることができるとともに、短繊維用処理剤の耐熱性が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
本発明に係る短繊維用処理剤(以下、単に処理剤ともいう。)を具体化した第1実施形態について説明する。
【0017】
本実施形態の処理剤は、下記の脂肪酸類(A)、及び非イオン界面活性剤(B)を含有し、前記脂肪酸類(A)及び前記非イオン界面活性剤(B)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記脂肪酸類(A)を0.001質量部以上10質量部以下、及び前記非イオン界面活性剤(B)を90質量部以上99.999質量部以下の割合で含有し、前記非イオン界面活性剤(B)の全質量に対して、下記の非イオン界面活性剤(B1)を、少なくとも50質量%以上含有する。
【0018】
脂肪酸類(A):炭素数1~6の脂肪酸、炭素数1~6のヒドロキシ脂肪酸、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも一つ。
非イオン界面活性剤(B1):一価又は二価のアルコール1モルに対し炭素数2~4のアルキレンオキシドを3~30モルの割合で付加させた化合物。
【0019】
(脂肪酸類(A))
脂肪酸類(A)は、炭素数1~6の脂肪酸、炭素数1~6のヒドロキシ脂肪酸、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも一つである。
【0020】
脂肪酸類(A)が上記化合物であることにより、処理剤が付着した短繊維における湿潤時の摩擦を低減することができる。言い換えれば、湿潤時の摩擦特性を向上させることができる。また、処理剤の耐熱性を向上させることができる。
【0021】
脂肪酸類(A)を構成する炭素数1~6の脂肪酸は、公知のものが適宜挙げられ、飽和脂肪酸であっても、不飽和脂肪酸であってもよい。また、直鎖状のものであっても、分岐鎖構造を有するものであってもよい。また、一価脂肪酸であっても、二価脂肪酸であってもよい。
【0022】
炭素数1~6の脂肪酸の具体例としては、例えばメタン酸、エタン酸(酢酸)、ブタン酸、プロパン酸(プロピオン酸)、ペンタン酸、ヘキサン酸、ブタン二酸(コハク酸)等が挙げられる。
【0023】
脂肪酸類(A)を構成する炭素数1~6のヒドロキシ脂肪酸は、公知のものが適宜挙げられ、飽和ヒドロキシ脂肪酸であっても、不飽和ヒドロキシ脂肪酸であってもよい。また、直鎖状のものであっても、分岐鎖構造を有するものであってもよい。また、一価ヒドロキシ脂肪酸であっても、二価ヒドロキシ脂肪酸であってもよい。
【0024】
炭素数1~6のヒドロキシ脂肪酸の具体例としては、例えばヒドロキシエタン酸、ヒドロキシプロパン酸(乳酸)、ヒドロキシブタン酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシヘキサン酸、クエン酸、2,3-ジヒドロキシブタン二酸(酒石酸)等が挙げられる。
【0025】
上記脂肪酸類(A)を構成する塩は、公知のものが適宜挙げられるが、金属塩であることが好ましい。金属塩としては、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が挙げられる。これらの中でも、アルカリ金属塩であることがより好ましい。
【0026】
アルカリ金属塩を構成するアルカリ金属としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられる。
アルカリ土類金属を構成するアルカリ土類金属としては、例えばカルシウム、マグネシウム、ベリリウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。
【0027】
上記脂肪酸類(A)が、炭素数1~4の脂肪酸、分子中に一つのヒドロキシ基を有する炭素数1~4のヒドロキシ脂肪酸、及びこれらのアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。脂肪酸類(A)が上記化合物であることにより、処理剤の耐熱性をより向上させることができる。
【0028】
また、脂肪酸類(A)が炭素数1~4の脂肪酸のアルカリ金属塩、又は分子中に一つのヒドロキシ基を有する炭素数1~4のヒドロキシ脂肪酸のアルカリ金属塩であることにより、湿潤時の摩擦特性をより向上させることができる。
【0029】
これらの脂肪酸類(A)は、一種類の脂肪酸類(A)を単独で使用してもよいし、二種類以上の脂肪酸類(A)を適宜組み合わせて使用してもよい。
(非イオン界面活性剤(B))
非イオン界面活性剤(B)としては、例えばアルコール類又はカルボン酸類にアルキレンオキサイドを付加させた化合物、カルボン酸類と多価アルコールとのエステル化合物にアルキレンオキサイドを付加させたエーテル・エステル化合物等が挙げられる。以下、これらの化合物を(ポリ)オキシアルキレン誘導体ともいう。
【0030】
上記アルコール類又はカルボン酸類としては、直鎖状又は分岐鎖を有する脂肪族系のアルコール類又はカルボン酸類であってもよく、芳香族系のアルコール類又はカルボン酸類であってもよい。また、飽和のアルコール類又はカルボン酸類であっても、不飽和のアルコール類又はカルボン酸類であってもよい。また、一価又は二価以上のアルコール類又はカルボン酸類であってもよい。
【0031】
非イオン界面活性剤(B)は、非イオン界面活性剤(B)の全質量に対して、下記の非イオン界面活性剤(B1)を、少なくとも50質量%以上含有することが好ましい。
非イオン界面活性剤(B1):一価又は二価のアルコール1モルに対し炭素数2~4のアルキレンオキシドを3~30モルの割合で付加させた化合物。
【0032】
非イオン界面活性剤(B)が上記非イオン界面活性剤(B1)を50質量%以上含有することにより、処理剤の濡れ性をより向上させることができる。
上記炭素数2~4のアルキレンオキサイドの具体例としては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が挙げられる。
【0033】
アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中におけるアルコール化合物又はカルボン酸化合物1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。
アルキレンオキサイドは、一種類のアルキレンオキサイドを単独で使用してもよいし、又は二種類以上のアルキレンオキサイドを適宜組み合わせて使用してもよい。アルキレンオキサイドが二種類以上適用される場合、それらの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
【0034】
非イオン界面活性剤(B)である(ポリ)オキシアルキレン誘導体の具体例としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルケニルエステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテルと無機酸との塩、及びポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテルと無機酸との塩等が挙げられる。
【0035】
これらの(ポリ)オキシアルキレン誘導体は、一種類の(ポリ)オキシアルキレン誘導体を単独で使用してもよいし、又は二種類以上の(ポリ)オキシアルキレン誘導体を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0036】
処理剤は、有機リン酸エステル化合物を実質的に含まない。ここで、実質的に含まないとは、有機リン酸エステル化合物を不純物レベルで含む態様を許容することを意味するものとする。不純物レベルの含有量は、例えば処理剤をICP発光分析法により測定した際に検出されるリン量、言い換えれば、P元素の濃度が2000ppm以下であることが好ましく、1000ppm以下であることがより好ましい。
【0037】
有機リン酸エステル化合物を実質的に含まないことにより、処理剤を用いて短繊維を製造した際の廃液処理をより容易に行うことが可能になる。
有機リン酸エステル化合物としては、例えばアルキルリン酸エステル、アルケニルリン酸エステル、ポリオキシアルキレン基を有するアルキルリン酸エステル又はアルケニルリン酸エステル、それらの塩等が挙げられる。アルキルリン酸エステルを構成するアルキル基、又はアルケニルリン酸エステルを構成するアルケニル基は、特に制限はなく、例えば、直鎖状であっても、分岐鎖構造を有するものでもよい。また、分岐鎖構造における分岐位置は、特に制限はなく、例えば、α位が分岐したものであってもよいし、β位が分岐したものであってもよい。
【0038】
アルキル基又はアルケニル基の炭素数は、特に限定されないが、例えば炭素数1~30のものが挙げられる。
アルキル基の具体例としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、イコシル基、イソブチル基、イソペンチル基、イソヘキシル基、イソヘプチル基、イソオクチル基、イソデシル基、イソウンデシル基、イソドデシル基、イソトリデシル基、イソテトラデシル基、イソペンタデシル基、イソヘキサデシル基、イソヘプタデシル基、イソオクタデシル基、イソイコシル基等が挙げられる。
【0039】
アルケニル基の具体例としては、例えばブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、イコセニル基、イソブテニル基、イソペンテニル基、イソヘキセニル基、イソヘプテニル基、イソオクテニル基、イソノネニル基、イソデセニル基、イソウンデセニル基、イソドデセニル基、イソトリデセニル基、イソテトラデセニル基、イソペンタデセニル基、イソヘキサデセニル基、イソヘプタデセニル基、イソオクタデセニル基、イソイコセニル基等が挙げられる。
【0040】
有機リン酸エステル化合物を構成するリン酸は、特に制限はなく、オルトリン酸であってもよいし、二リン酸等のポリリン酸であってもよい。
有機リン酸エステル化合物として有機リン酸エステル塩が含有されている場合、塩としては、例えばリン酸エステルアミン塩、リン酸エステル金属塩等が挙げられる。
【0041】
金属塩としては、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が挙げられる。アルカリ金属塩を構成するアルカリ金属の具体例としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられる。アルカリ土類金属塩を構成するアルカリ土類金属としては、第2族元素に該当する金属、例えばカルシウム、マグネシウム、ベリリウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。
【0042】
アミン塩を構成するアミンは、一級アミン、二級アミン、及び三級アミンのいずれであってもよい。アミン塩を構成するアミンの具体例としては、例えば、(1)メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N-N-ジイソプロピルエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2-メチルブチルアミン、トリブチルアミン、オクチルアミン、ジメチルラウリルアミン等の脂肪族アミン、(2)アニリン、N-メチルベンジルアミン、ピリジン、モルホリン、ピペラジン、これらの誘導体等の芳香族アミン類又は複素環アミン、(3)モノエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジブチルエタノールアミン、ブチルジエタノールアミン、オクチルジエタノールアミン、ラウリルジエタノールアミン等のアルカノールアミン、(4)ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステアリルアミノエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、(5)アンモニア等が挙げられる。
【0043】
アルキレンオキサイド鎖を付加した有機リン酸エステル化合物が含有されている場合、炭素数2~4のアルキレンオキサイドが挙げられる。アルキレンオキサイドの具体例としては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が挙げられる。アルキレンオキサイドの付加モル数の下限は、適宜設定されるが、例えば0.1モル以上である。かかる付加モル数の上限は、適宜設定されるが、例えば50モル以下である。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における脂肪族アルコール化合物1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。
【0044】
アルキレンオキサイドは、一種類のアルキレンオキサイドを単独で使用したものでもよいし、又は二種類以上のアルキレンオキサイドを適宜組み合わせて使用したものでもよい。アルキレンオキサイドが二種類以上適用されたものである場合、それらの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
【0045】
(含有量)
処理剤中において、脂肪酸類(A)、及び非イオン界面活性剤(B)の含有割合の合計を100質量%とすると、脂肪酸類(A)を0.001質量部以上10質量部以下、及び非イオン界面活性剤(B)を90質量部以上99.999質量部以下の割合で含有することが好ましい。
【0046】
なお、各成分の含有量の測定方法は、特に制限させないが、例えばイオン成分の含有量の測定方法は、以下の方法を採用することができる。処理剤を105℃で2時間加熱し、不揮発分を得る。この不揮発分中のイオン成分の含有量が500ppm以下となるように純水で十分希釈する。希釈液を用いてイオンクロマトグラフ分析を行う。
【0047】
第1実施形態の短繊維用処理剤の作用及び効果について説明する。
(1-1)第1実施形態の短繊維用処理剤は、所定の脂肪酸類(A)、及び非イオン界面活性剤(B)を含有し、有機リン酸エステル化合物を実質的に含まない。したがって、処理剤が付着した短繊維における湿潤時の摩擦特性を向上させることができる。例えば、短繊維等の製造においてトウシートの延伸工程で用いられる延伸工程用処理剤として適用される場合、繊維金属間摩擦を低減させ、トウを均一な厚さで薄く広げることができる。それにより、生産性、品質性を向上させることができる。また、処理剤の耐熱性が向上する。
【0048】
(1-2)脂肪酸類(A)が、炭素数1~4の脂肪酸、分子中に一つのヒドロキシ基を有する炭素数1~4のヒドロキシ脂肪酸、及びこれらのアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも1つである。脂肪酸類(A)が上記化合物であることにより、処理剤の耐熱性をより向上させることができる。
【0049】
(1-3)非イオン界面活性剤(B)は、非イオン界面活性剤(B)の全質量に対して、下記の非イオン界面活性剤(B1)を、少なくとも50質量%以上含有する。
非イオン界面活性剤(B1):一価又は二価のアルコール1モルに対し炭素数2~4のアルキレンオキシドを3~30モルの割合で付加させた化合物。
【0050】
非イオン界面活性剤(B)が上記非イオン界面活性剤(B1)を50質量%以上含有することにより、処理剤の濡れ性をより向上させることができる。
<第2実施形態>
次に、本発明の短繊維の処理方法、及び本発明の短繊維の製造方法を具体化した第2実施形態を説明する。
【0051】
本実施形態の短繊維の処理方法では、第1実施形態の短繊維用処理剤及び水を含有する短繊維用処理剤の水性液(以下、水性液ともいう)を短繊維に付与することを特徴とする。また、本実施形態の短繊維の製造方法は、上記水性液を、紡糸延伸工程において、短繊維に付与することを特徴とする。
【0052】
水性液は、水に第1実施形態の処理剤を添加して調製することが好ましい。水性液の調製方法は、例えば水に、処理剤を添加し、不揮発分濃度を0.01質量%以上10質量%以下にする方法が用いられる。なお、不揮発分は、対象物を105℃で2時間熱処理して揮発性物質を十分に除去した絶乾物の質量から求められる。
【0053】
水に、処理剤を添加する方法は、公知の方法を適宜採用できるが、下記の工程1及び下記の工程2を経ることが好ましい。かかる方法により、処理剤がエマルション形態の場合、エマルションの安定性をより向上させることができる。
【0054】
工程1は、第1の水に、処理剤を添加し、不揮発分濃度が2質量%超10質量%以下の短繊維用処理剤の水性液の母液を調製する工程である。また、希釈する水の温度は、特に限定されない。
【0055】
さらに、工程1は、第1の水を60~95℃に加温し、処理剤を添加し、撹拌することが好ましい。かかる方法により、処理剤がエマルション形態の場合、エマルションの安定性をより向上させることができる。
【0056】
工程2は、工程1で調製した短繊維用処理剤の水性液の母液に第2の水を添加し、不揮発分濃度が0.01質量%以上2質量%以下の水性液を調製する工程である。
短繊維の処理方法は、上記のように得られた水性液を、短繊維に付与する方法である。また、短繊維の製造方法は、上記のように得られた水性液を、例えば紡糸又は延伸工程、仕上げ工程等において短繊維に付与する方法である。
【0057】
水性液が付与される短繊維の種類は、特に限定されない。短繊維に付与された水性液により、最終的に短繊維用処理剤が短繊維表面を覆い、摩擦特性を向上させるからである。水性液が付与される短繊維としては、合成繊維、天然繊維、再生繊維等が挙げられる。
【0058】
合成繊維の具体例としては、特に制限はなく、例えば(1)ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリトリメチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラート、ポリ乳酸、これらのポリエステル系樹脂を含有して成る複合繊維等のポリエステル系繊維、(2)ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系繊維、(3)ポリアクリル、モダアクリル等のポリアクリル系繊維、(4)ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維等が挙げられる。天然繊維又は再生繊維の具体例としては、例えば木綿繊維、晒し処理された木綿繊維、ビスコースレーヨン繊維、強力レーヨン繊維、高強力レーヨン繊維、高湿潤弾性レーヨン繊維、溶剤紡糸レーヨン繊維、ポリノジック繊維、キュプラ繊維、アセテート繊維等が挙げられる。これらの中で製造工程において、特に繊維間の摩擦特性の付与が必要なポリエステル又はポリオレフィンに適用されることが好ましい。
【0059】
短繊維は、一般にステープルと呼ばれるものが該当し、一般にフィラメントと呼ばれる長繊維を含まないものとする。また、短繊維の長さは、本技術分野において短繊維に該当するものであれば特に限定されないが、例えば100mm以下であることが好ましい。これらの中で、ポリエステル短繊維に適用されることが好ましい。また、短繊維は、紡績糸製造用のものであることが好ましい。
【0060】
水性液を短繊維に付着させる割合に特に制限はないが、水性液を短繊維に対し、最終的に固形分が0.1質量%以上3質量%以下の割合となるよう付着させることが好ましい。かかる構成により、各成分による効能を有効に発揮できる。また、水性液を付着させる方法は、特に制限はなく、短繊維の種類、形態、用途等により公知の方法、例えばローラー給油法、計量ポンプを用いたガイド給油法、浸漬給油法、スプレー給油法等を採用できる。
【0061】
水性液が付与された短繊維は、公知の方法を用いて乾燥処理してもよい。乾燥処理により水等の溶媒が揮発され、処理剤中に含有される成分が付着している短繊維が得られる。
第2実施形態の短繊維の処理方法の作用及び効果について説明する。本実施形態では、第1実施形態の効果に加えて、以下の効果を有する。
【0062】
(2-1)本実施形態の短繊維の処理方法における水性液の調製方法は、例えば水に、処理剤を添加し、不揮発分濃度を0.01質量%以上10質量%以下にする方法が用いられる。したがって、処理剤がエマルション形態の場合、エマルションの安定性を向上できる。また、予め調製された処理剤を水に混合することにより、付与形態である水性液を調製できるため、使用時に試薬から調合する方法に比べて水性液を簡易に調製できる。
【0063】
(2-2)また、水に、処理剤を添加し、不揮発分濃度が2質量%超10質量%以下の短繊維用処理剤の水性液の母液を調製する工程を経る場合、エマルションの安定性をより向上させることができる。それにより、成分の短繊維への均一な付着性を低下させることがなく、各成分による効能を有効に発揮できる。
【0064】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
・上記実施形態の各処理剤又は水性液には、本発明の効果を阻害しない範囲内において、処理剤又は水性液の品質保持のため、その他の溶媒、安定化剤、制電剤、つなぎ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の通常処理剤等に用いられる成分をさらに配合してもよい。
【0065】
・(ポリ)オキシアルキレン誘導体において、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルのうち、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルは、環境特性の観点から短繊維用処理剤中において、少量であることが好ましい。具体的には短繊維用処理剤中において、1質量%以下であることが好ましく、実質的に含まないことがより好ましい。実質的に含まないとは、別途、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルを配合させることはしないという意味であり、各原料中に不純物等として含まれる少量のポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルまで除外するものではない。上記実施形態の短繊維用処理剤の構成により、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルが少量である短繊維用処理剤であっても、脂肪酸類(A)により摩擦特性を向上できる。
【0066】
・上記実施形態の短繊維の処理方法における水性液の調製方法について、水性液を調整する前記工程1及び工程2から選ばれる任意の工程において、さらにシリコーン組成物を加えることが、短繊維製造時の消泡性、繊維の紡績性能向上等の観点から好ましい。シリコーン組成物の具体例としては、特に限定されないが、例えばポリジメチルシロキサン、ポリオキシエチレン変性シリコーン等が好ましい。シリコーン組成物を加える工程としては、水性液の安定性の観点から、工程2がより好ましい。
【0067】
・本実施形態の処理剤は、単独で処理剤として用いられるものであるが、この態様に限定されない。例えば、使用時に他の処理剤と混合して用いられるものであってもよい。他の処理剤を第1処理剤とし、本実施形態の処理剤を第2処理剤としてもよい。第1処理剤としては、例えば上記有機リン酸エステル化合物を含有するものであってもよい。第1処理剤と第2処理剤のいずれか一方又は両方に、上記脂肪酸類(A)を含有してもよい。
【実施例
【0068】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。なお、以下の実施例及び比較例において、特に限定のない限り、部は質量部を、%は質量%を意味する。
【0069】
試験区分1(処理剤の調製)
処理剤は、表1、2に示される各成分を使用し、下記調製方法により調製した。
脂肪酸類(A)は、表1に示されるA-1~A-8、a-1、a-2を使用した。
【0070】
脂肪酸類(A)の種類、炭素数、ヒドロキシ基の数を、表1の「脂肪酸類(A)」欄、「炭素数」欄、「ヒドロキシ基の数」欄にそれぞれ示す。
【0071】
【表1】
(実施例1)
表2に示されるように、酢酸カリウム(A-1)0.1部、ポリオキシエチレン(10モル)ラウリルエーテル(B-1)99.9部となるように各成分を秤量した。これらを撹拌し、混合して、実施例1の処理剤を調製した。
【0072】
(実施例2~38、参考例39~50、比較例1~3)
実施例2~38、参考例39~50、比較例1~3の処理剤は、実施例1の処理剤と同様にして各成分を表2に示した割合で含むように調製した。
【0073】
脂肪酸類(A)の種類と含有量、非イオン界面活性剤(B)の種類と含有量を、表2の「脂肪酸類(A)」欄、「非イオン界面活性剤(B)」欄にそれぞれ示す。
【0074】
【表2】
表2に記載する非イオン界面活性剤(B)の詳細は以下のとおりである。
【0075】
(非イオン界面活性剤(B))
B-1:ポリオキシエチレン(10モル)ラウリルエーテル
B-2:ポリオキシエチレン(8モル)オレイルエーテル
B-3:ポリオキシエチレン(10モル)C12-13アルコール/α-ドデシルアミノ-ω-ヒドキシ(ポリオキシエチレン)(10モル)=70/30
B-4:ポリオキシエチレン(15モル)C12-13アルコール/α-ドデシルアミノ-ω-ヒドキシ(ポリオキシエチレン)(10モル)=50/50
B-5:ポリオキシエチレン(5モル)オレイルエーテル/α-ドデシルアミノ-ω-ヒドキシ(ポリオキシエチレン)(10モル)=70/30
B-6:ポリオキシエチレン(15モル)C12-13アルコール/(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)(n+m=8、nはオキシエチレン単位の数、mはオキシプロピレン単位の数、以下同様)C12-13アルコール=70/30
B-7:ポリオキシエチレン(10モル)C12-13アルコール/(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)(n+m=8)C12-13アルコール=50/50
B-8:ポリオキシエチレン(15モル)C12-13アルコール/(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)(n+m=10)ステアリルエーテル=50/50
B-9:(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)(n+m=10)C12-13アルコール/α-ドデシル-ω-ヒドロキシ(ポリオキシエチレン)(15モル)/ステアリルアミン(ポリオキシエチレン)(7モル)=50/30/20
B-10:α-トリデシル-ω-ヒドロキシ(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)(n+m=8)/α-ドデシルアミノ-ω-ヒドキシ(ポリオキシエチレン)(15モル)=65/35
B-11:ポリオキシエチレン(10モル)ステアリルエーテル/(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)(n+m=12)C11-14アルコール/α-ドデシルアミノ-ω-ヒドキシ(ポリオキシエチレン)(15モル)=20/40/40
B-12:α-トリデシル-ω-ヒドロキシ(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)(n+m=14)/α-ドデシルアミノ-ω-ヒドキシ(ポリオキシエチレン)(4モル)/α-ドデシルアミノ-ω-ヒドキシ(ポリオキシエチレン)(10モル)=60/20/20
B-13:α-ドデシル-ω-ヒドロキシ(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)(n+m=10)/ポリオキシエチレン(3モル)C12-14アルコール/α-ドデシルアミノ-ω-ヒドキシ(ポリオキシエチレン)(10モル)/ステアリルアミン(ポリオキシエチレン)(5モル)=50/10/30/10
B-14:ポリオキシエチレン(10モル)C12-13アルコール/(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)(n+m=8)C12-13アルコール/α-ドデシルアミノ-ω-ヒドキシ(ポリオキシエチレン)(10モル)=30/30/40
B-15:ポリオキシエチレン(6モル)デシルエーテル/(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)(n+m=8)トリデシルエーテル/α-ドデシルアミノ-ω-ヒドキシ(ポリオキシエチレン)(15モル)=40/20/40
B-16:ポリオキシエチレン(9モル)ラウリルエーテル/(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)(n+m=7)デシルエーテル/α-ドデシルアミノ-ω-ヒドキシ(ポリオキシエチレン)(10モル)=20/30/50
B-17:ポリオキシエチレン(9モル)ラウリルエーテル/(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)(n+m=7)デシルエーテル/(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)(n+m=8)C12-13アルコール/α-ドデシルアミノ-ω-ヒドキシ(ポリオキシエチレン)(10モル)=20/30/5/45
B-18:ポリオキシエチレン(10モル)C11-14アルコール/(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)(n+m=7)C12-13アルコール/α-ドデシルアミノ-ω-ヒドキシ(ポリオキシエチレン)(15モル)/ヤシ脂肪酸-ポリオキシエチレン(7モル)=30/30/30/10
B-19:ポリオキシエチレン(9モル)ラウリルエーテル/ポリオキシエチレン(10モル)ドデシルアミンエーテルと燐酸の塩=90/10
B-20:ポリオキシエチレン(10モル)C12-13アルコール/(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)(n+m=8)C12-13アルコール/ポリオキシエチレン(10モル)ドデシルアミンエーテルと燐酸の塩=45/45/10
B-21:ポリオキシエチレン(10モル)C12-13アルコール/α-ドデシルアミノ-ω-ヒドキシ(ポリオキシエチレン)(10モル)=40/60
B-22:α-トリデシル-ω-ヒドロキシ(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)(n+m=8)/α-ドデシルアミノ-ω-ヒドキシ(ポリオキシエチレン)(15モル)=35/65
B-23:ポリオキシエチレン(3モル)C12-14アルコール/ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン(n+m=20)硬化ひまし油=30/70
B-24:α-ドデシル-ω-ヒドキシ(ポリオキシエチレン)(7モル)/ポリオキシエチレン(10モル)オレイルエステル=20/80
B-25:(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)(n+m=35)C12-13アルコール/α-ドデシルアミノ-ω-ヒドキシ(ポリオキシエチレン)(18モル)=30/70
B-26:ポリオキシエチレン(7モル)ラウリルエーテル/ポリオキシエチレン(10モル)オレイルエステル=10/90
B-27:ポリオキシエチレン(10モル)ラウリルエーテル/ヤシ脂肪酸-ポリオキシエチレン(10モル)/ドデシルスルホン酸ナトリウム=10/80/10
B-28:α-デシル-ω-ヒドロキシ(ポリオキシエチレン)(6モル)/ヤシ脂肪酸-ポリオキシエチレン(10モル)/ポリオキシエチレン(15モル)ドデシルアミンエーテルと燐酸の塩=30/60/10
B-29:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン(n+m=20)硬化ひまし油/ドデシルスルホン酸ナトリウム=90/10
B-30:ポリオキシエチレン(10モル)ドデシルアミンエーテルと燐酸の塩
試験区分2(処理剤の水性液の調製)
試験区分1で調製した処理剤を、約70℃に加温したイオン交換水に撹拌下で加えた。完全に溶解させて、処理剤の5%水性液を調製した。
【0076】
試験区分3(評価)
実施例1~38、参考例39~50及び比較例1~3の処理剤について、処理剤のリン含有量、処理剤を付着させた繊維の湿潤時摩擦特性、処理剤の濡れ性、及び処理剤の耐熱性を評価した。各試験の手順について以下に示す。また、試験結果を表2の「リン含有量(3段階評価)」欄、「性能」欄にそれぞれ示す。
【0077】
(処理剤のリン含有量)
試験区分1で調製した処理剤を0.1g量り取り、蒸留水で希釈して全量を100gとした。この希釈液を、ICP発光分析法により測定した。濃度既知の市販の標準サンプルとの強度値を比較することにより、処理剤中に含まれるリン含有量としてのP元素濃度を求めた。下記の3段階の基準で評価した。
【0078】
・リン含有量の評価基準
○○○:リン含有量≦1000ppm
○○:1000ppm<リン含有量≦2000ppm
○:2000ppm<リン含有量
(湿潤時摩擦特性)
試験区分2で調製した処理剤の5%水性液を、約25℃のイオン交換水で希釈し、0.35%水性液を調製した。調製した0.35%水性液80mLを、縦60mm×横230mm×高さ20mmの金属製のバッドに入れた。
【0079】
縦30mm×横90mm×高さ45mmで、重さ1kgの矩形板状の重りを用意した。この重りの底面に、両面テープを用いて、底面と同じサイズのポリエステルスパンボンド不織布を貼り付けた。上記の0.35%水性液が入ったバッドに、不織布を貼り付けた底面側が下側となるように重りを置いた。
【0080】
最大荷重容量が50Nであるロードセルを備えた引張試験機(島津製作所(株)製、オートグラフ型式AGS-X)を用いて、20℃×60%RHの雰囲気下、水平速度100mm/minの条件で重りを引っ張る引張試験を行った。下記の基準で評価した。
【0081】
なお、上記の方法によって、湿潤時の繊維と金属との摩擦特性を評価した。具体的には、上記の方法によって、紡糸工程や延伸工程における、繊維と金属製ローラーとの摩擦特性を評価した。上記摩擦特性の評価は、0.35%水性液を調製してから12時間以内に行った。
【0082】
・湿潤時摩擦特性の評価基準
◎(良好):脂肪酸類(A)を含まない比較例1の0.35%水性液を用いて測定した摩擦Nと、各例の0.35%水性液を用いて測定した摩擦Mとの比であるM/N比が、0.98以下である場合
○(可):上記M/N比が、0.98より大きく、0.99以下である場合
×(不可):上記M/N比が、0.99より大きい場合
(処理剤の濡れ性)
処理剤の付与されていないポリエチレンテレフタレート製の短繊維で作製された不織布を用意した。上記湿潤時摩擦特性の評価で調製した0.35%水性液5μLを不織布に滴下し、完全に浸透するまでの時間を計測した。下記の基準で評価した。
【0083】
・処理剤の濡れ性の評価基準
◎(良好):150秒未満で浸透した場合
○(可):150秒以上180秒未満で浸透した場合
×(不可):180秒以上で浸透した場合
(処理剤の耐熱性)
各実施例、参考例及び比較例に記載の短繊維用処理剤を、乾燥後質量が約2gとなるように量り取り、105℃で水分を乾燥させた。乾燥後の質量を測定し、初期質量とした。さらに、200℃で15時間加熱し、この時の残渣率(%)(加熱後の質量/初期質量)を測定した。下記の基準で評価した。
【0084】
◎(良好):残渣率が35%未満の場合
○(可):残渣率が35%以上50%未満の場合
×(不可):残渣率が50%以上の場合
本発明の短繊維用処理剤は、有機リン酸エステル化合物を実質的に含んでいなかった。また、本発明の短繊維用処理剤は、短繊維用処理剤が付着した短繊維における湿潤時の摩擦特性を向上させることができる。また、短繊維用処理剤の濡れ性と耐熱性とを向上させることができる。
【要約】
【課題】短繊維用処理剤が付着した短繊維の湿潤時の摩擦特性を向上させるとともに、短繊維用処理剤の耐熱性を向上させる。
【解決手段】短繊維用処理剤は、有機リン酸エステル化合物を実質的に含まない。下記の脂肪酸類(A)、及び非イオン界面活性剤(B)を含有する。
脂肪酸類(A):炭素数1~6の脂肪酸、炭素数1~6のヒドロキシ脂肪酸、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも一つ。
【選択図】なし