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  • 特許-二酸化塩素ガス燻蒸キット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】二酸化塩素ガス燻蒸キット
(51)【国際特許分類】
   C01B 11/02 20060101AFI20220613BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20220613BHJP
   A01N 59/08 20060101ALI20220613BHJP
   A01N 25/18 20060101ALI20220613BHJP
   A61L 2/20 20060101ALI20220613BHJP
   A61L 9/03 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
C01B11/02 F
A01P3/00
A01N59/08 A
A01N25/18 103B
A61L2/20
A61L9/03
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021172460
(22)【出願日】2021-10-21
【審査請求日】2021-11-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517272725
【氏名又は名称】株式会社CLO2 Lab
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】安部 幸治
(72)【発明者】
【氏名】芦辺 成矢
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 康一
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-227320(JP,A)
【文献】特開2018-035016(JP,A)
【文献】特開2000-287601(JP,A)
【文献】特開2013-146240(JP,A)
【文献】特開2014-239725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00
A61L 2/00
C01B 11/00
A01N
A01M
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水に溶解したときに二酸化塩素ガスを発生させる薬剤と、水反応型の発熱剤とが封入されており、底面に水の流入孔と天面に二酸化塩素ガスを含む蒸気の噴出孔が形成されている缶容器と、
防湿性および耐熱性を有し、缶容器を密封状態で収容するとともに使用時に上部が開封可能な袋体と、を備え、
前記薬剤の配合成分が、亜塩素酸塩と、低吸湿性の酸性剤と、ハロゲン系酸化剤の粉剤と、を含み、
前記発熱剤は、金属粉体を主成分として含み、該金属粉体が水透過性の包装材に充填されており、
前記袋体を開封して上部から注水することで、前記流入孔から前記缶容器の内部に水が流入し、前記缶容器の中で前記薬剤が水に溶解し、前記酸性剤によって酸性条件となってその酸性条件下で前記亜塩素酸塩と前記ハロゲン系酸化剤とが反応して前記二酸化塩素ガスが発生するとともに、前記包装材を透過した水と前記金属粉体とが反応して生じる熱によって高温蒸気が発生し、発生した前記二酸化塩素ガスが前記高温蒸気と共に前記噴出孔から放散される二酸化塩素ガス燻蒸キット。
【請求項2】
前記薬剤の配合成分が、発泡剤をさらに含む請求項に記載の二酸化塩素ガス燻蒸キット。
【請求項3】
使用時に、前記袋体が自立可能である請求項1又は2に記載の二酸化塩素ガス燻蒸キット。
【請求項4】
使用時に、前記袋体が汲み入れた水を溜める容器として利用可能である請求項1~のいずれか一項に記載の二酸化塩素ガス燻蒸キット。
【請求項5】
前記袋体が、遮光性を有し、外装材を兼用する請求項1~のいずれか一項に記載の二酸化塩素ガス燻蒸キット。
【請求項6】
前記袋体の上部に、開閉自在なチャック部を備える請求項1~のいずれか一項に記載の二酸化塩素ガス燻蒸キット。
【請求項7】
前記袋体に、使用時に水を汲み入れるための汲入容器が封入されている請求項1~のいずれか一項に記載の二酸化塩素ガス燻蒸キット。
【請求項8】
前記汲入容器が、紙製であり、封筒型に折り畳まれて前記袋体に封入されている請求項に記載の二酸化塩素ガス燻蒸キット。
【請求項9】
水に溶解したときに二酸化塩素ガスを発生させる薬剤と、水反応型の発熱剤とが封入されており、底面に水の流入孔と天面に二酸化塩素ガスを含む蒸気の噴出孔が形成されている缶容器と、
防湿性および耐熱性を有し、缶容器を密封状態で収容するとともに使用時に上部が開封可能な袋体と、
前記袋体に封入された、使用時に水を汲み入れるための汲入容器と、を備え、
前記汲入容器が、紙製であり、封筒型に折り畳まれて前記袋体に封入されている二酸化塩素ガス燻蒸キット。
【請求項10】
水に溶解したときに二酸化塩素ガスを発生させる薬剤と、水反応型の発熱剤とが封入されており、底面に水の流入孔と天面に二酸化塩素ガスを含む蒸気の噴出孔が形成されている缶容器と、
防湿性および耐熱性を有し、缶容器を密封状態で収容するとともに使用時に上部が開封可能な袋体と、を備え、
前記薬剤の配合成分が、亜塩素酸塩と、低吸湿性の酸性剤と、ハロゲン系酸化剤の粉剤と、を含み、
前記発熱剤は、金属粉体を主成分として含み、該金属粉体が水透過性の包装材に充填されている二酸化塩素ガス燻蒸キットを用い、
前記袋体を開封して上部から注水し、
前記流入孔から前記缶容器の内部に水を流入させて、前記缶容器の中で前記薬剤を水に溶解させ、
前記酸性剤によって酸性条件としてその酸性条件下で前記亜塩素酸塩と前記ハロゲン系酸化剤とを反応させて前記二酸化塩素ガスを発生させるとともに、前記包装材を透過した水と前記金属粉体とが反応して生じる熱によって高温蒸気を発生させ、
発生した前記二酸化塩素ガスを前記高温蒸気と共に前記噴出孔から放散させる、二酸化塩素ガスによる燻蒸方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内を二酸化塩素ガスで燻蒸する二酸化塩素ガス燻蒸キットに関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化塩素は強い酸化力を有しており、その酸化作用によって除菌したり悪臭成分を分解したりすることが知られている。このため、二酸化塩素は、除菌剤、脱臭剤、防カビ剤、又は漂白剤等、広い用途で使用されている。これらの用途で室内を燻蒸する場合には室内を無人状態とした上で高濃度の二酸化塩素ガスが用いられる。
【0003】
室内燻蒸のために使用される従来の二酸化塩素ガス発生装置としては、例えば、以下の特許文献1に示されるようなものが挙げられる。この装置は、二酸化塩素ガスが生成される生成容器の他に、該生成容器を加熱して二酸化塩素ガスの発生を促進させる加熱装置を備えており、電源に接続して使用するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-178017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の二酸化塩素ガス発生装置は、特定の場所に据え置いて使用することが前提となっており、様々な場所に移動して使えるようには設計されていない。そのため、ポータビリティ(可搬性)に乏しく、様々な場所や場面で使用することのできる二酸化塩素ガス発生装置が望まれている。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、ポータビリティ(可搬性)が高く、様々な場所や場面で使用可能な二酸化塩素ガス燻蒸キットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る二酸化塩素ガス燻蒸キットの特徴は、
水に溶解したときに二酸化塩素ガスを発生させる薬剤と、水反応型の発熱剤とが封入されており、底面に水の流入孔が形成されているとともに天面に二酸化塩素ガスを含む蒸気の噴出孔が形成されている缶容器と、防湿性および耐熱性を有し、缶容器を密封状態で収容するとともに使用時に上部を開封袋体と、を備える点にある。
【0008】
本構成によれば、使用時に上部を開封し、袋体を容器代わりにして水を注入することで、缶容器の底面の流入孔から内部に水が供給される。これにより、薬剤が水に溶解して二酸化塩素ガスが発生し、さらに水と反応した発熱剤による熱の作用によって二酸化塩素ガスの発生がより一層促されるとともに高温蒸気の噴出によって室内への拡散が促される。従って、従来の二酸化塩素ガス発生装置とは異なり、加熱装置や電源等を必要とせずに高濃度の二酸化塩素ガスを発生させることができるため、ポータビリティ(可搬性)が高く、様々な場所や場面で使用することができる。
【0009】
さらに本構成によれば、缶容器の底面の流入孔を介して内部に水が供給されるため、水はその全量が直ちに薬剤及び発熱剤と反応するのではなく、缶容器内に徐々に流入して反応を生じさせることとなるため、二酸化塩素ガスの発生が穏やかに進む。また、缶の底面から流入した水が発熱剤に徐々に吸収されるため、薬剤の崩壊のために必要な水量が確保される。さらに、缶容器内部に流入していない水は缶容器の外側に留まり、その水が冷却効果をもたらして過剰な水蒸気の発生に伴う水の消費が抑えられ、二酸化塩素ガスの生成反応に必要な薬剤を溶解させるに足る水量が確保される。
【0010】
本発明に係る二酸化塩素ガス燻蒸キットにおいては、前記薬剤の配合成分が、亜塩素酸塩と、低吸湿性の酸性剤と、ハロゲン系酸化剤の粉剤と、を含むと好適である。
【0011】
本構成によれば、袋体に汲み入れられた水が、酸性剤によって酸性条件となり、この酸性条件下で亜塩素酸塩の粉剤とハロゲン系酸化剤の粉剤が水中で溶解して反応することにより二酸化塩素ガスが効率良く発生する。酸性剤は低吸湿性であるため、保存安定性に優れる。
【0012】
本発明に係る二酸化塩素ガス燻蒸キットにおいては、前記薬剤の配合成分が、発泡剤をさらに含むと好適である。
【0013】
本構成によれば、薬剤の崩壊を促して各成分が水に溶けやすくなる。
【0014】
本発明に係る二酸化塩素ガス燻蒸キットにおいては、前記発熱剤は、金属粉体を主成分として含み、該金属粉体が水透過性の包装材に充填されていると好適である。
【0015】
本構成によれば、主成分が生石灰のみからなる発熱剤と比べて急激な温度上昇を招来せず、二酸化塩素ガスの急激な発生を抑えることができるとともに、生石灰の水中への分散が起こり難くなるため、二酸化塩素ガス発生の阻害要因となるアルカリ分の流出が抑止される。
【0016】
本発明に係る二酸化塩素ガス燻蒸キットにおいては、使用時に、前記袋体が自立可能であると好適である。
【0017】
本構成によれば、使用時においては缶容器が起立姿勢に維持されるため、流入孔から水が流入し易くなり、結果として、薬剤の反応が安定化して二酸化塩素ガスの安定的な発生が可能となる。
【0018】
本発明に係る二酸化塩素ガス燻蒸キットにおいては、使用時に、前記袋体が汲み入れた水を溜める容器として利用可能であると好適である。
【0019】
本構成によれば、缶容器を収容するとともに水を汲み入れるための容器を別途準備する必要がなく、袋体に水を汲み入れるだけで使用できるので、利便性が良い。
【0020】
本発明に係る二酸化塩素ガス燻蒸キットにおいては、前記袋体が、遮光性を有し、外装材を兼用すると好適である。
【0021】
本構成によれば、本発明に係る二酸化塩素ガス燻蒸キットをそのまま流通させることができ、省資源化にもつながる。
【0022】
本発明に係る二酸化塩素ガス燻蒸キットにおいては、前記袋体の上部に、開閉自在なチャック部を備えると好適である。
【0023】
本構成によれば、密封状態と開封状態とを簡単に切り替えることが可能となる。さらに、使用後はチャック部を密閉するだけで廃棄可能となり、廃棄後の水の侵入が防止されるため、残存する発熱剤等と水との反応を防ぐことで水素ガス等の発生を防止することができる。
【0024】
本発明に係る二酸化塩素ガス燻蒸キットにおいては、前記袋体に、使用時に水を汲み入れるための汲入容器が封入されていると好適である。
【0025】
本構成によれば、袋体に所定量の水を簡単に供給することができて利便性が良い。
【0026】
本発明に係る二酸化塩素ガス燻蒸キットにおいては、前記汲入容器が、紙製であり、封筒型に折り畳まれて前記袋体に封入されていると好適である。
【0027】
本構成のごとく、汲入容器を紙製とすることによって、規定水量となる寸法に低コストで自在に寸法設定することができ、プラスチック製等とは異なり、サイズ違いの準備が簡単なものとなる。さらに、コンパクトに折り畳んで袋体に同梱可能であり、廃棄物となる際に環境にも優しい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】二酸化塩素ガス燻蒸キットの外観斜視図である。
図2】二酸化塩素ガス燻蒸キットの構成内容を示す説明図である。
図3】使用時の二酸化塩素ガス燻蒸キットにおける二酸化塩素ガスの発生状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明に係る二酸化塩素ガス燻蒸キットの実施形態について、図面を参照しながら説明をする。
【0030】
(二酸化塩素ガス燻蒸キット)
図1及び図2に示すように、本実施形態における二酸化塩素ガス燻蒸キット1は、円筒状の缶容器2と、使用時に水を汲み入れるための汲入容器3と、袋体4とを備え、袋体4の中に缶容器2と汲入容器3とが封入されている。
【0031】
缶容器2には、水に溶解したときに二酸化塩素ガスを発生させる薬剤5と、水反応型の発熱剤6とが封入されており、水の流入孔H1が底面21に形成されているとともに、二酸化塩素ガスを含む蒸気の噴出孔H2が天面20に形成されている。
【0032】
薬剤5の配合成分としては、例えば、亜塩素酸塩と、低吸湿性の酸性剤と、ハロゲン系酸化剤の粉剤と、を含む構成が挙げられる。袋体4に汲み入れられた水が、流入孔H1から缶容器2内に流入し、缶容器2内で溶解した酸性剤によって酸性条件となり、この酸性条件下で亜塩素酸塩とハロゲン系酸化剤とが反応することにより二酸化塩素ガスが発生する。
【0033】
使用可能な亜塩素酸塩としては、例えば、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム、亜塩素酸リチウム、亜塩素酸カルシウム等の粉剤が挙げられる。酸性剤は、保管中(使用開始前)に酸性条件となってしまうのを回避できるよう、保存安定性に鑑み低吸湿性であることが好ましい。使用可能な酸性剤としては、例えばコハク酸、マロン酸、フタル酸などが挙げられる。また、使用可能なハロゲン系酸化剤としては、例えばジクロルイソシアヌル酸塩、トリクロルイソシアヌル酸塩、さらし粉などが挙げられる。
【0034】
発熱剤6としては、主成分が生石灰のみからなるものと比べて急激な温度上昇およびアルカリ化を招来しないものが望ましい。そのような発熱剤6としては、例えば、金属粉体を主成分として含み、該金属粉体が水透過性の包装材に充填されているものなどが挙げられる。具体例として、アルミ粉体と生石灰との混合物が水透過性の包装材に充填されている、株式会社協同社製のモーリアンヒートパックなどを使用することができる。
【0035】
薬剤5の配合成分として、炭酸水素ナトリウム等の発泡剤をさらに含むような構成としても良い。発泡剤の作用によって薬剤5の崩壊が促されて各成分が水に溶けやすくなるためである。
【0036】
本実施形態では、缶容器2の底面21の中央部分に流入孔H1が一つだけ形成されていると共に、缶容器2の天面20の中央部分に噴出孔H2が一つだけ形成されているが、この構成に限定されるものではなく、その数や配置については適宜変更して良い。
【0037】
缶容器2の素材については、特に限定されるものではないが、例えば公知のブリキ缶などを使用することができる。
【0038】
袋体4は、防湿性および耐熱性を有し、缶容器2を密封状態で収容するとともに使用時に上部を開封可能に構成されている。
【0039】
本実施形態では、袋体4の上部に、開閉自在なチャック部40が設けられている。これにより、密封状態と開封状態とを簡単に切り替えることが可能となる。さらに、使用後はチャック部40を密閉するだけで廃棄可能となり、廃棄後の水の侵入が防止されるため、残存する発熱剤6等と水との反応を防ぐことで水素ガス等の発生を防止することができる。
【0040】
また、袋体4は、遮光性を有し、外装材と汲み入れた水を溜める容器とを兼用するものであることが望ましい。これにより、本発明に係る二酸化塩素ガス燻蒸キット1をそのまま流通させることができ、低コストであるとともに省資源化にもつながる。そのような袋体4としては、例えば、アルミ箔等の金属シートを備えるものが挙げられる。
【0041】
袋体4は、缶容器2を封入した状態で、自立可能となるように構成されていることが望ましい。これにより、使用時において、缶容器2が起立姿勢に維持されるため、流入孔H1から水が流入し易くなり、結果として、薬剤5の反応が安定化して二酸化塩素ガスの安定的な発生が可能となる。
【0042】
本実施形態における汲入容器3は、紙製であり、封筒型に折り畳まれて袋体4に封入されている。汲入容器3を紙製とすることによって、規定水量となる寸法に低コストで自在に寸法設定することができ、プラスチック製等とは異なり、サイズ違いの準備が簡単で且つ極めて低コストなものとなる。さらに、コンパクトに折り畳んで袋体4に同梱可能であり、廃棄物となる際に環境にも優しい。
【0043】
ただし、汲入容器3は必ずしも紙製である必要はなく、水を汲み入れることができるものであれば特に限定されるものではない。尚、汲入容器3は、水を計量することができるように構成されていることが望ましく、例えば、汲入容器3内の所定のレベルまで水を汲んだときの水量(規定水量)が、必要な量の二酸化塩素ガスを発生させるために要する最小限の水量となるように設定しても良い。
【0044】
(二酸化塩素ガス燻蒸キットの使用方法)
図3に示すように、先ず袋体4のチャック部40を開封状態として、中から汲入容器3を取り出す。そして、袋体4を所定の場所に配置して自立させる。このとき、袋体4の中の缶容器2が起立姿勢をとるようにする。
【0045】
次いで、汲入容器3を使用して、チャック部40の開口部分から、所定量の水Wを袋体4の中に注ぎ入れる。
【0046】
注ぎ込まれた水Wは、缶容器2の底面21の流入孔H1を介して内部に流入して、薬剤5と発熱剤6に接触する。
【0047】
水Wは薬剤5を溶かし、酸性剤によって酸性条件となる。そして、この酸性条件下で亜塩素酸塩とハロゲン系酸化剤とが水W中で反応することにより二酸化塩素ガスGが発生する。またこれと同時に水Wは発熱剤6とも反応する。発熱剤6が水Wと反応して発熱することで、二酸化塩素ガスGの発生を促進すると共に、発生した二酸化塩素ガスGを高温の蒸気と共に缶容器2の噴出孔H2を介して室内に放散させる。
【0048】
本実施形態においては、缶容器2の底面21の流入孔H1を介して内部に水Wが供給されるため、流入した水Wは、缶容器2の所定のレベルまで到達すると流入が一旦止まり、薬剤5及び発熱剤6の一部と反応する。そして、反応して水位が下がると水Wが補充されることになる。即ち、水Wはその全量が直ちに缶容器2内に流入することがないことから、発熱剤6に直ちに多量の水が吸水されるために生じる、薬剤5の崩壊に必要な水が不足するという現象が起こらない。尚、発熱剤6については、薬剤5より重量比においておよそ10倍以上多く存在する場合もあるが、本実施形態によれば薬剤5の崩壊に必要な水が不足するという現象は生じない。したがって、燻蒸の間、薬剤5の全量を二酸化塩素ガスGとして発生させるに必要な水量が確保される。
【0049】
また、缶容器2の内部に流入していない水Wは缶容器2の外側に留まり、その水Wが冷却効果をもたらして蒸気発生量が抑制されて水の消費量が減少するため、薬剤5の全量から二酸化塩素ガスGを発生させるに必要な系内の水量が確保される。
【0050】
〔その他の実施形態〕
上述の実施形態においては、利便性のために、使用時に水を汲み入れるための汲入容器を予め袋体に封入しておく構成が示されているが、この構成に限定されるものでなく、袋体に所定量の水を供給することができる手段が他にあれば、必ずしも汲入容器を入れておく必要はない。
【0051】
尚、上述のように図面を参照しつつ本発明を説明したが、本発明は当該図面の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係る二酸化塩素ガス燻蒸キットは、例えば除菌剤、脱臭剤、防カビ剤、又は漂白剤等の用途で室内を燻蒸する場合に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 二酸化塩素ガス燻蒸キット
2 缶容器
20 天面
21 底面
3 汲入容器
4 袋体
40 チャック部
5 薬剤
6 発熱剤
H1 流入孔
H2 噴出孔
W 水
G 二酸化塩素ガス

【要約】
【課題】ポータビリティ(可搬性)が高く、様々な場所や場面で使用可能な二酸化塩素ガス燻蒸キットを提供すること。
【解決手段】水に溶解したときに二酸化塩素ガスを発生させる薬剤5と、水反応型の発熱剤6とが封入されており、底面21に水の流入孔H1が形成されており、使用時に規定量の水を袋体4内に注ぎ入れると、缶容器2の底面から水が流入し、同流入した水が、二酸化塩素ガスを発生させる薬剤5を溶解させる目的と、発熱剤6を発熱させる目的と、を同時に達成する構造であることおよび、天面20に二酸化塩素ガスを含む蒸気の噴出孔H2が形成されている缶容器2と、防湿性および耐熱性を有し、缶容器2を密封状態で収容するとともに使用時に上部を開封可能な袋体4と、を備える。
【選択図】図2
図1
図2
図3