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特許7086437ショウガ加工物の製造方法、及びショウガ加工物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】ショウガ加工物の製造方法、及びショウガ加工物
(51)【国際特許分類】
   A23L 19/00 20160101AFI20220613BHJP
   A23L 27/10 20160101ALI20220613BHJP
   A23K 10/30 20160101ALI20220613BHJP
【FI】
A23L19/00 A
A23L27/10 C
A23K10/30
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021564596
(86)(22)【出願日】2021-07-02
(86)【国際出願番号】 JP2021025195
【審査請求日】2021-10-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519380451
【氏名又は名称】KRAFT株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】特許業務法人森特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蓮井 一策
(72)【発明者】
【氏名】蓮井 雄太
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/047881(WO,A1)
【文献】特開2017-035073(JP,A)
【文献】特開2012-249553(JP,A)
【文献】特開2017-012122(JP,A)
【文献】特開2017-141199(JP,A)
【文献】特開2018-027937(JP,A)
【文献】特開2018-068249(JP,A)
【文献】特開2019-108283(JP,A)
【文献】特開2019-208480(JP,A)
【文献】森山洋憲, 藤田竜,高知野菜先気蕗援食品の量産化を臨指した研究開発, 新規ショウガペーストの開発,高知県工業技術センター報告,2011年,No.42,p.7-12
【文献】朝稲香太朗, 庄野巧, 反町公子,千葉県内産在来種ショウガに含まれる機能性成分等の調査と加工品の開発,千葉県産業支援技術研究所研究報告,2018年,No.16,p.8-12
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 19/00-19/20
A23L 27/10
A23K 10/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2~5mmの薄切りにした生ショウガの乾燥物を、240~280℃の温度で40~120秒間加熱し、その後、1回目の加熱で加熱したショウガの乾燥物を冷却せずに、290~350℃の温度で40~120秒間加熱する工程を有するショウガ加工物の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法で得られた乾燥状態のショウガ加工物を、
蓬の発酵液と、ビタミン類及びミネラル分からなる群より選ばれる1種以上の成分と、乳酸菌、酵母菌、光合成細菌、放線菌、麹菌、枯草菌、及び納豆菌のうちいずれか一種以上の菌とを含有する液体に浸漬する工程を有する請求項1に記載のショウガ加工物の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法で製造されたショウガ加工物を動物に摂取させる工程を含む動物の飼育方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、ショウガ加工物の製造方法、及びショウガ加工物に関する。
【背景技術】
【0002】
ショウガは、ショウガ科ショウガ属の多年草である。その根茎部分は、香辛料として食材、又は生薬として利用される。
【0003】
ショウガには、以下の特許文献1に示すように、ジンゲロールやショウガオールが含まれることが知られている。特許文献1の方法では、120~250℃の温度範囲で6分間から60分間にわたって1回湿熱加熱することにより、ショウガオールをジンゲロールよりも多く含有するショウガ加工物を製造する。
【0004】
また、ショウガを利用した加工物として、特許文献2の技術が知られている。特許文献2又は特許文献3には、蓬の発酵液をショウガに付与したものには魚の腸管における絨毛の生育を促進する効果があることが記載されている。また、特許文献3には、乳酸菌と酵母菌と光合成細菌と放射菌と麹菌と枯草菌と納豆菌の何れか1種類以上の発酵菌によって蓬を発酵させた蓬発酵液を生姜に付与してなる蓬発酵生姜を主材とする増重材を与えると、鶏の体重が増えることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5885153号公報
【文献】特許第5099378号公報
【文献】特許第4466969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の方法は、ショウガに含まれるショウガオールの含量のみを重要視して、ジンゲロールの含量に比して、ショウガオールをより多く含有させるものであった。
【0007】
ショウガオールには、胃や腸の消化活動を活性化させて内蔵の血流量を高めること、代謝を促進する効果があることが知られている。これにより、体温が上昇し、それにより、冷え性が改善したり、免疫力が向上したりするといった効果がある。
【0008】
また、ジンゲロールには、プロスタグランジンの作用を抑制して血管を拡張させて血流を改善する効果があることが知られている。これにより、ショウガオールと同様に血流を改善したり、それによって、体温を上昇させて、冷え性を改善したり、免疫力を向上させたりする効果がある。また、ジンゲロールには、白血球の数を増やして免疫機能を活性化する効果もある。また、ジンゲロールには気管支炎などの炎症を引き起こす細胞を攻撃する効果もある。さらに、ジンゲロールには、抗酸化作用があり、過酸化脂質による血管の老化や遺伝子の損傷や細胞の損傷を抑制する作用もある。
【0009】
上記のように、ショウガオールだけではなく、ジンゲロールにも有用な薬効がある。むしろ、ジンゲロールには、ショウガオールに比して、より多様で有用な薬効がある。ショウガの薬効を引き出すには、単にショウガオールのみの含量を高めるのではなく、ショウガオールとジンゲロールの双方の含量を高めることが必要である。
【0010】
特許文献2又は特許文献3には、ショウガを蓬の発酵液に浸漬等して製造したショウガ加工物には、魚類の腸管における絨毛の増殖を促進する効果があること、鶏の体重を増加せる効果があることが記載されている。しかしながら、特許文献2には、ショウガに含まれるジンゲロール又はショウガオールの含有量を増大させる方法については記載されていない。
【0011】
本発明は、ショウガオールとジンゲロールとの両方を多く含むショウガ加工物の製造方法と、ショウガオールとジンゲロールとの両方を多く含むショウガ加工物と、それを使用した動物の飼育方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
ショウガの乾燥物を、240~280℃の温度で40~120秒間加熱し、その後、1回目の加熱で加熱したショウガの乾燥物を冷却せずに、290~350℃の温度に達するまで昇温して、290~350℃の温度で40~120秒間加熱する工程を有するショウガ加工物の製造方法により、上記の課題を解決する。
【0013】
上記の方法で製造されたショウガ加工物を動物に摂取させる工程を含む動物の飼育方法により、上記の課題を解決する。
【0014】
また、固形物換算で、ショウガオールを1.80~2.80mg/gを含有し、ジンゲロールを、3.8~7.0mg/g含有するショウガ加工物により、上記の課題を解決する。
【0015】
上記の製造方法で得られた乾燥状態のショウガ加工物を、蓬の発酵液と、ビタミン類及びミネラル分からなる群より選ばれる1種以上の成分と、乳酸菌、酵母菌、光合成細菌、放線菌、麹菌、枯草菌、及び納豆菌のうちいずれか一種以上の菌とを含有する液体に浸漬する工程を有するショウガ加工物の製造方法としてもよい。
【0016】
上記の製造方法によれば、蓬の発酵液と、ビタミン類及びミネラル分からなる群より選ばれる一種以上の成分と、乳酸菌、酵母菌、光合成細菌、放線菌、麹菌、枯草菌、及び納豆菌からなる群より選ばれる一種以上の菌とを含有するショウガ加工物が得られる。
【0017】
上記のショウガ加工物は、剤型を固形にすることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ショウガオールとジンゲロールとの両方を多く含むショウガ加工物の製造方法と、ショウガオールとジンゲロールとの両方を多く含むショウガ加工物と、それを使用した動物の飼育方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0020】
本発明は、ショウガ加工物の製造方法である。当該方法は、ショウガの乾燥物を、240~280℃の温度で40~120秒間加熱し、その後、1回目の加熱で加熱したショウガの乾燥物を冷却せずに、290~350℃の温度に達するまで昇温して、290~350℃の温度で40~120秒間加熱する工程を有する。1回目の加熱と2回目の加熱との間には、冷却工程を挟まない。例えば、所定の温度に加熱した第1加熱炉で1回目の加熱を実施し、第1加熱炉で加熱されたショウガを所定の温度に加熱した第2加熱炉に搬送し、第2加熱炉で加熱を実施することができる。搬送は、手作業で行ってもよいし、無限軌道等を利用して自動的に行ってもよい。
【0021】
1回目の加熱は、250~270℃の温度範囲とすることがより好ましく、2回目の加熱は310~330℃の温度範囲とすることが好ましい。1回目の加熱は50~80秒間にすることが好ましく、2回目の加熱は50~80秒間にすることが好ましい。
【0022】
上記のショウガの乾燥物は、生ショウガを乾燥させたものであればよい。乾燥の効率を考慮して、生ショウガを切って単位重量当たりの表面積を大きくして乾燥工程に供してもよい。乾燥工程は、限定されるものではないが、例えば、生ショウガを70~90℃で、6~18時間にわたって乾燥すればよい。乾燥に際しては、公知の装置を利用することができる。例えば、公知の熱風乾燥機を利用してもよいし、オーブンにより乾燥してもよい。
【0023】
生のショウガを乾燥させる際には、加熱を伴わない方法により乾燥してもよい。例えば、天日乾燥、風乾、真空乾燥、凍結乾燥、又は真空凍結乾燥等の方法により乾燥してもよい。
【0024】
本発明の方法では、1回目の加熱後、ショウガの乾燥物を冷却せずに、2回目の加熱に移る。このため、乾燥ショウガの加熱に要する時間を短くして、効率的にショウガ加工物を製造することができる。また、上記の温度範囲と加熱時間の範囲で処理することにより、ショウガオールとジンゲロールとの両方の含量が高い値で安定する。
【0025】
乾燥ショウガを加熱する方法は、特に限定されない。例えば、ガスなどの燃料を燃焼させた際の熱を利用してもよいし、電熱線による熱を利用して加熱してもよいし、過熱水蒸気を利用して加熱してもよい。過熱水蒸気を利用する場合は、その圧力は適宜設定すればよい。
【0026】
上記の製造方法により得られたショウガ加工物は、そのまま、すなわち、全粒又は小片のままヒト又は動物に摂取させてもよい。当該ショウガ加工物は、ジンゲロールとショウガオールを、従来品に比して、高濃度に含有している。ショウガ加工物をそのまま摂取しても、血行促進、代謝促進、体温上昇、免疫力増大、及び抗酸化作用による老化防止効果などの効果が得られる。後述するように、ショウガ加工物を粉砕するなどの加工を施したり、食品又は飼料等に添加したりすることにより摂取させてもよい。
【0027】
前記ショウガ加工物は、蓬の発酵液と、ビタミン類及びミネラル分からなる群より選ばれる一種以上の成分と、乳酸菌、酵母菌、光合成細菌、放線菌、麹菌、枯草菌、及び納豆菌からなる群より選ばれる一種以上の菌とを含有する液体に浸漬することが好ましい。前記ショウガ加工物は、乾燥と上記の加熱によって、含水率が低下している。前記液体に浸漬することによって、蓬の発酵液と、ビタミン類及びミネラル分からなる群より選ばれる一種以上の成分と、乳酸菌、酵母菌、光合成細菌、放線菌、麹菌、枯草菌、及び納豆菌からなる群より選ばれる一種以上の菌とがショウガ加工物に効率的に担持される。
【0028】
前記ビタミン類としては、例えば、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンE、又はビタミンKが挙げられる。なお、ビタミンAには前駆体であるβ-カロテンとα-カロテンと、レチノールとを含むものとする。また、ビタミンBには葉酸が含まれる。ビタミンA、及びビタミンCは、免疫力を高める効果がある。特にビタミンAには、喉や鼻の粘膜を保護して、感染症に罹患しにくくなる効果がある。また、ビタミンCにはウィルスに対する抵抗力を高める働きがある。ビタミンBには糖質をエネルギーに変えて体の疲れやだるさを軽減する効果がある。
【0029】
前記ミネラル分としては、例えば、亜鉛、カリウム、カルシウム、鉄、又はマグネシウム等が挙げられる。
【0030】
上記の蓬の発酵液は、蓬と糖類及び/又は塩(塩化ナトリウム)と水とを混合して、発酵することにより製造することができる。発酵の際には、固形分に荷重を掛けたり、撹拌したりしながら、発酵を行ってもよい。水はミネラル分が豊富な鉱水を使用することが好ましい。こうして得た蓬の発酵液を原液として、当該原液に糖類及び/又は塩と水とを混合して、発酵することにより蓬の発酵液を簡単に増産することが可能である。蓬の発酵には手間がかかるため、このようにして量産することにより、製造コストを低減することができる。なお、上記の原液を蓬の発酵液としてそのまま使用してもよい。発酵時の温度は、特に限定されないが、例えば、10~40℃の範囲であり、特に加熱や冷却を伴わない常温とすることが好ましい。蓬の部位は、特に限定されないが、発酵しやすい葉を使用するとよい。発酵期間も特に限定されないが、例えば、1~4日間にすることができる。
【0031】
蓬には、菌が付着しており、上記のように発酵(培養)することにより、菌が増殖する。増殖させる菌の種類は、乳酸菌、酵母菌、光合成細菌、放線菌、麹菌、枯草菌、又は納豆菌である。蓬の発酵液を製造する際には、これらの菌を種菌として接種してもよい。
【0032】
蓬の発酵液には、ミネラル分及び/又はビタミン類を補う目的で、ミネラル分及び/又はビタミン類を添加してもよい。ミネラル分、ビタミン類として、それらを多量に含有する野菜ジュースを添加してもよい。
【0033】
蓬の発酵液は、腐敗を防止する目的で、pHが3.0~4.0となるようにすることが好ましい。蓬を発酵する過程でpHが変動することがある。リンゴ酸などの有機酸、中性の水、又は糖蜜などのアルカリ成分を添加することでpHを上記の範囲にするとよい。
【0034】
蓬の発酵液は、嫌気条件で培養することが好ましい。例えば、培養容器に蓋をするなどして酸素を遮断して培養する。嫌気条件で培養することにより、嫌気性菌を増殖させることができる。腸内は、嫌気性条件である。嫌気性菌を増殖させることで、菌を腸内で生かすことができる。
【0035】
蓬の発酵液と、ビタミン類及びミネラル分からなる群より選ばれる一種以上の成分と、乳酸菌、酵母菌、光合成細菌、放線菌、麹菌、枯草菌、及び納豆菌からなる群より選ばれる一種以上の菌とを含有する液体に対して、ショウガ加工物を浸漬した後には、ショウガ加工物を乾燥させることが好ましい。乾燥は、ビタミン類が分解したり、菌が死滅するのを防止する目的で、-10~50℃の気体をショウガ加工物に供給したり、天日干し、又は日陰干しにより実施するとよい。気体の温度は常温とするのが簡便であり好ましい。
【0036】
上記の方法により、例えば、固形のショウガ加工物100g当たりのビタミンA(レチノール活性当量)の含量が150~250μg/100gであるショウガ加工物を得ることができる。また、上記方法により、例えば、α-カロテンの含量が800~940μg/100gであるショウガ加工物を得ることができる。また、上記の方法により、例えば、β-カロテンの含量が1700~2000μg/100gであるショウガ加工物を得ることができる。また、上記の方法により、例えば、総アスコルビン酸の含量が4~12mg/100gであるショウガ加工物を得ることができる。
【0037】
上記の方法により、例えば、固形のショウガ加工物1g当たり1.0×10~9.0×10cfuの乳酸菌数であるショウガ加工物を得ることができる。また、固形のショウガ加工物1g当たり9.0×10~1.0×10cfuの枯草菌数であるショウガ加工物を得ることができる。
【0038】
上記のショウガ加工物の製造方法により、固形物換算で、ショウガオールを1.80~2.80mg/gを含有し、ジンゲロールを、3.8~7.0mg/g含有するショウガ加工物を得ることができる。このショウガ加工物は固形である。そのままヒトや動物に与えてもよいし、ヒト用の飲料、ヒト用の食事、又は魚を含む家畜用の飼料に配合して用いてもよい。ショウガ加工物は粉砕、又は顆粒状にして使用してもよい。粉砕又は顆粒状にしたショウガ加工物は、食品、飲料、飼料、医薬品、医薬部外品に添加しやすい点で好ましい。粉砕又は顆粒状にしたショウガ加工物は、胃酸に強く、腸内で溶解するカプセルに入れてヒトに服用させてもよい。これにより、さらに胃酸の影響を受けにくくなり効果が増大する。なお、ショウガ加工物を粉砕するには、製粉機などの粉砕機を使用してもよい。
【0039】
上記のショウガ加工物は、ショウガオールとジンゲロールとの両方を高濃度に含有する。上述の通り、ショウガオールには、胃や腸の消化活動を活性化させて内蔵の血流量を高めて、代謝を促進する作用がある。また、ジンゲロールには血管を拡張させて血流を向上させる効果、体温を上昇させる効果、免疫力を賦活化する効果、抗炎症効果、抗酸化作用がある。上記のショウガ加工物をヒトに摂取させることによって、免疫力を賦活化し新型コロナウィルス感染症を含む種々の疾病を予防することができる。また、ショウガ加工物を魚、家禽、豚などを含む動物に摂取させることで動物においても疾病を予防することができる。
【0040】
上述の通り、ショウガオールとジンゲロールには体温を上昇させる作用を有する。上記のショウガ加工物は、ショウガオールとジンゲロールを高濃度で含有しており、動物に摂取させることで、動物の身体を内側から温めて、従来は飼育に適した温度域よりも寒冷な環境においても、魚などの動物の飼育が可能になる。これにより、地理的又は気候的な制限により魚の養殖又は家畜の飼育が難しかった地域においても、養殖や家畜の飼育が可能になる。また、冬季の寒波により魚や鶏又は豚などの家畜が死滅するといった被害を軽減することができる。また、魚に関しては、冬季の養殖魚は水温が低いため、餌食いが悪くほとんど成長しない。冬季に上記ショウガ加工物を餌に添加することにより、餌食いがよくなる。冬季にも成長できるので、ショウガ加工物を摂取させていない養殖魚と比較した場合、体重に顕著な差があらわれる。冬季に体重が増加した養殖魚と、冬季に体重が増加しなかった養殖魚とを、比較した場合、たとえ春季、夏季、秋季において飼料の摂取量を増大させたとしても、両者の体重の差は埋まることがない。冬季における体重差が、そのまま季、夏季、秋季に持ち越されて、最終的な体重、すなわち養殖魚の生産量に影響する。
【0041】
免疫細胞は、体温が上昇すると活動が活発化することが知られている。暖房器具などにより外部から身体を温める場合、免疫の賦活効果は限定的である。上記のショウガ加工物の場合は、代謝を促進して体内の糖類、脂肪を燃焼させて、身体の内側から、換言すると身体の芯から、身体を温める。これによる免疫の賦活効果は極めて大きい。
【0042】
上記のショウガ加工物を、蓬の発酵液と、ビタミン類及びミネラル分からなる群より選ばれる一種以上の成分と、乳酸菌、酵母菌、光合成細菌、放線菌、麹菌、枯草菌、及び納豆菌からなる群より選ばれる一種以上の菌とを含有する液体に浸漬したショウガ加工物は、ショウガオールとジンゲロールとの両方を高濃度に含有するだけではなく、蓬の発酵液と、ビタミン類及び/又はミネラル分と菌とがショウガの固形分に担持されている。ビタミン類及び/又はミネラル分と菌とショウガオールとジンゲロールとは、ショウガの繊維に守られているため、胃酸による分解を受けにくく、ショウガ加工物を摂取したヒト又は動物の腸まで完全に分解されることなく到達する。このため、ショウガオール、ジンゲロール、ビタミン類及び/又はミネラル分、菌、蓬の発酵液に含まれる成分が腸内に確実に届く。これにより、腸管内の絨毛の細胞分裂が促進され、絨毛の発達が促進されると共に、ビタミン類及び/又はミネラル分が身体に吸収されやすくなる。また、ショウガ加工物を摂取することによりさらに腸管内の絨毛の発達が促進される。これによっても、ビタミン類及び/又はミネラル分は身体に吸収されやすくなる。ミネラル分やビタミン類は、免疫力の向上に寄与することが知られており、ミネラル分やビタミン類が体内に吸収されやすくなることで、免疫力が向上する。
【0043】
特許第5099378号公報に記載のように、蓬の発酵液をショウガに付与したショウガ加工物には、魚類の腸管内の絨毛の増殖を促進する作用があることが知られている。ショウガを上記の条件で加熱した後に蓬の発酵液等を含有する上記の液体に浸漬した場合には、乾燥したショウガに、蓬の発酵液と、ビタミン類及びミネラル分からなる群より選ばれる一種以上の成分と、乳酸菌、酵母菌、光合成細菌、放線菌、麹菌、枯草菌、及び納豆菌からなる群より選ばれる一種以上の菌とが多量に担持される。これらの蓬の発酵液等の有効成分により、魚類の腸管内の絨毛の増殖を促進する作用はより一層増強される。
【0044】
免疫細胞が体内で最も集まっている場所は腸であり、腸には人体の免疫の大部分を掌るリンパ球のおよそ6割が腸内に存在するといわれている。上記のようにして製造したショウガ加工物の有効成分は、腸内の免疫系に作用して、免疫力を向上させる。
【0045】
ジンゲロールには血管を拡張する作用がある。また、ショウガオールには代謝を活発化させて免疫細胞を活性化させる作用がある。ジンゲロールとショウガオールの協調的な作用により、ショウガオールにより活性化されたリンパ球や白血球などが、ジンゲロールにより拡張した血管を経て身体の隅々に届きやすくなる。上記のショウガ加工物は、このような作用によっても免疫力を大きく向上させる。その一方で、ショウガ加工物に菌を担持させた場合は、菌は腸内の免疫系に作用して免疫力を向上させる。これらの異なる作用機序による免疫の賦活化作用を併用することでより一層免疫力が上昇する。このようにして免疫力を向上させることによって、感染症を含むさまざまな疾病に罹患しにくくなる。これらの効果はヒトに限定されるものではなく、魚、豚、鶏などの動物においても同様に発揮される。鳥インフルエンザなど家畜における感染症などが家畜の飼育における生産性を大きく低下させるが、上記のショウガ加工物を動物に摂取させることにより、そのような問題の原因となる動物における疾病を予防することができる。
【0046】
上記のようにして製造したショウガ加工物には、上述の通り、腸内の絨毛の生育を促進させる効果がある。このため、上記のショウガ加工物を摂取すれば、成長期のヒト又は動物においては、体重の増大や体調の増大など成長促進効果が得られる。上記のショウガ加工物を魚などの動物に摂取させれば、その成長促進効果によって、魚や家畜からとれる肉の量が増大するので、養殖や飼育の生産性を向上させることができる。また、成長期を過ぎたヒト又は動物においては、ジンゲロール等の有効成分による抗酸化作用により、老化の防止効果が得られる。
【0047】
特許第5099378号、又は特許第4466969号に記載されているように、ショウガを蓬の発酵液に浸漬したものに、成長促進効果があることは、既に知られている。本発明のショウガ加工物は、ジンゲロール、ショウガオールを、高濃度に含有しているため、従来のショウガ加工物に比して、成長促進効果がより増強されている。免疫賦活効果に関しても、同様にショウガに比して、より増強されている。また、ショウガ加工物に、ビタミン類、及び/又はミネラル類、菌類を含有させれば、成長促進効果、免疫賦活効果はさらに増強される。
【0048】
現在、日本国においては、国民医療費が右肩上がりで歯止めがきかず、具体的な解決方法も見いだせていない。ショウガ加工物は、上記のような効果を発揮するため、国民が毎日服用した場合、年間の医療費約40兆円が、1割から4割削減される可能性を秘めている。
【0049】
ショウガ加工物を摂取させる動物又は家畜としては、例えば、鶏、豚、又は魚が挙げられる。
【実施例
【0050】
本発明の実施例を挙げて、説明する。以下に示す実施例は、本発明の限られた例に過ぎず、本発明の技術的範囲は例示した実施例に限定されるものではない。
【0051】
[実施例1]
生ショウガを厚み2mm~5mm程度に薄切りし、熱風乾燥機を使用して70~85℃で12時間乾燥させた。乾燥させたショウガを、公知の過熱水蒸気による焼成機により加熱した。当該焼成機は、ボイラーから供給された熱水蒸気を過熱する第1ヒータを配置した第1加熱室と、ボイラーから供給された熱水蒸気を過熱する第2ヒータを配置した第2加熱室と、第1加熱室及び第2加熱室を連通するように配置された無限軌道(ベルトコンベア)と、第1加熱室と第2加熱室を内蔵する筐体部と有する。第1加熱室の前の区画と、第2加熱室の後の区画では、飽和水蒸気を無限軌道に噴射することで、第1加熱室と第2加熱室の熱が焼成機の外に漏洩しないようにされている。上記の乾燥させたショウガを無限軌道に乗せて、第1加熱室、第2加熱室の順に通過させることで加熱処理を実施した。第1加熱室内の温度は260℃であり、第1加熱室を上記の乾燥ショウガが通過するのに75秒間を要する、第1加熱室内の温度は320℃であり、第2加熱室を上記の乾燥ショウガが通過するのに75秒間を要する。乾燥ショウガは、260℃で75秒間加熱され、そのまま乾燥ショウガを冷却することなく320℃で75秒間加熱する。
【0052】
加熱したショウガを室温の環境下において放熱して、室温に戻した。その後、以下の方法で製造した蓬の発酵液に加熱後のショウガを2日間浸漬した。ショウガを液から引き揚げて液切りし、常温の空気を液切りしたショウガに対して供給して乾燥させた。乾燥させたショウガをフードプロセッサーで粉砕して、実施例1に係るショウガ加工物とした。
【0053】
上記の蓬の発酵液は、次の方法で製造した。生の蓬の葉と糖蜜と塩とを容器に入れて混ぜ合わせて、蓋の上に重しをして室温にて24時間漬け込んだ。その後、漬け込んだ蓬の固形分をザルで漉して固形分を取り除き、液分を回収した。この液分を原液として、原液200gに対して、水200gと、水の質量の1.5質量%相当量の食塩と、水の質量の3質量%相当量の糖蜜とを添加して、室温で1週間発酵して蓬の発酵液を得た。
【0054】
得られた蓬の発酵液の質量を基準として、倍の質量の水と、水の質量の1.5質量%相当量の食塩と、水の質量の3質量%相当量の糖蜜とを添加して、室温で1週間発酵して発酵する作業を複数回繰り返して、1600gの蓬の発酵液を得た。なお、発酵の過程では、pHを測定して、pHが3.0~4.0の範囲になるように管理した。
【0055】
上記のようにして得た蓬の発酵液に対して、市販の野菜ジュースを添加した。この野菜ジュースは、180ml当たり、亜鉛を0.18~0.56mg、カリウムを655mg、カルシウムを125mg、鉄を0.2~1.6mg、マグネシウムを45mg、ビタミンAを430~1350μg、ビタミンCを60~200mg、ビタミンEを1.1~4.7mg、ビタミンKを3~15μg、葉酸を10~113μg、β‐カロテンを4260~11902μg、リコピンを15mg含有する。
【0056】
[比較例1]
生ショウガを厚み2mm~5mm程度に薄切りし、この生ショウガを後述する方法で製造した蓬の発酵液に2日間浸漬して引き上げて、熱風乾燥機を使用して75~90℃で12時間乾燥させた。これをフードプロセッサーで粉砕して、比較例1に係る乾燥ショウガとした。
【0057】
上記の蓬の発酵液は、生の蓬の葉と糖蜜と塩とを容器に入れて混ぜ合わせて、蓋の上に重しをして室温にて24時間漬け込んだ。その後、漬け込んだ蓬の固形分をザルで漉して固形分を取り除き、液分を回収した。これを蓬の発酵液とした。
[比較例2]
乾燥させたショウガを、260℃に設定した過熱水蒸気式の焼成機で600秒間加熱し、加熱したショウガを室温の環境下で放熱して、室温に戻して、これを比較例2に係るショウガ加工物とした。この点以外は、実施例1と同様の方法により、ショウガ加工物を製造した。これをフードプロセッサーで粉砕して、比較例2に係るショウガ加工物とした。
【0058】
[比較例3]
乾燥させたショウガを、300℃に設定した過熱水蒸気式の焼成機で300秒間加熱し、加熱したショウガを室温の環境下で放熱して、室温に戻して、これを比較例3に係るショウガ加工物とした。この点以外は、実施例1と同様の方法により、ショウガ加工物を製造した。これをフードプロセッサーで粉砕して、比較例3に係るショウガ加工物とした。
【0059】
[比較例4]
乾燥させたショウガを、260℃に設定した過熱水蒸気式の焼成機の第1加熱室で150秒間加熱し、ショウガを焼成機の外に取り出すことなく、そのまま320℃に設定した第2加熱室で150秒間加熱した。この点以外は、実施例1の方法と同様の方法により、比較例4に係るショウガ加工物を製造した。これをフードプロセッサーで粉砕して、比較例4に係るショウガ加工物とした。
【0060】
[比較例5]
実施例1の方法で使用したのと同様の乾燥させたショウガを、200℃に設定した過熱水蒸気式の焼成機で720秒間加熱し、いったん焼成機の外にショウガを取り出して、室温に至るまで放熱した。この放熱には長い時間を要した。その後、320℃に設定した過熱水蒸気式の焼成機で120秒間加熱して、比較例5に係るショウガ加工物を製造した。これをフードプロセッサーで粉砕して、比較例5に係るショウガ加工物とした。
【0061】
[HPLCによる分析]
実施例1又は各比較例に係るショウガ加工物又は乾燥ショウガについて、高速液体クロマトグラフ法によって、6‐ジンゲロール、8‐ジンゲロール、10-ジンゲロール、6-ショウガオールの含量(mg/g)求めた。結果を表1に示す。高速液体クロマトグラフ法(HPLC)による分析の条件は、以下の通りである。なお、上記含量は、固形のショウガ加工物1g又は乾燥ショウガ1g当たりに含まれる6-ジンゲロール等の各成分の質量(mg)に換算して示す。
【0062】
・HPLCの測定条件
検出器波長:228nm
カラム:C18 逆相カラム(4.6×150mm、Cosmosil 5C18-MSII、ナカライ製)
移動相:A液-トリフルオロ酢酸を0.05容量%含むように調製した30容量%アセトニトリル溶液
B液-トリフルオロ酢酸を0.05容量%含むように調製した90容量%アセトニトリル溶液
流速:移動相A、移動相Bの合計で毎分1.0mL
カラム恒温槽の温度:40℃
移動相溶液の混合比(グラジエント):
0分から20分においては、A液100%からA液10%に混合比を直線的に変化させる。20分から30分においては、A液10%に維持する。
試料注入量10μL
【0063】
HPLC用の試料の調整は以下の方法により行った。まず、実施例1又は各比較例に係るショウガ加工物の粉末又は乾燥ショウガの粉末に、質量基準で、40倍量のエタノールを添加する。エタノールを添加した各試料に、超音波発生器で20分間超音波を照射する。次いで、各試料を遠心分離機にかけて、濾過用フィルター(親水性PFTE膜、ポアサイズ0.45μm、13mm径)を通過させる。得られた濾過液を高速液体クロマトグラフ分析に供した。
【0064】
検量線は、6‐ジンゲロール(LKT LaboratorieのG3252)、8‐ジンゲロール(LKT LaboratorieのG3253)、10-ジンゲロール(LKT LaboratorieのG3254)、又は6-ショウガオール(Cayman Chemical Companyの11901)に対して、質量基準で、40倍量の99.5%エタノールを添加して超音波処理を行った。20分間発酵して、上清を採取して検量線作成用の試料とした。当該試料を用いて、検量線を作成した。
【0065】
【表1】
【0066】
表1の結果から明らかなように、実施例1の製造方法により得られたショウガ加工物は、6-ジンゲロール、8-ジンゲロール、及び10-ジンゲロールの含量を合わせると、5.4mg/gものジンゲロールを含有しており、2.35mg/gもの6-ショウガオールを含有している。
【0067】
一方、比較例2ないし比較例4のショウガ加工物では、実施例1のショウガ加工物に比して、ジンゲロールの含量が明らかに少なかった。比較例5のショウガ加工物では、ジンゲロールの含量及び6-ショウガオールの含量は共に良好であるが、1回目の加熱と2回目の加熱の間に、室温に至るまで放冷するための時間が必要であり、製造の効率において劣るものであった。
【0068】
[ビタミン含量の分析]
上記の方法により製造した蓬発酵液で処理した実施例1に係るショウガ加工物について、以下の方法によりHPLC法により、固形のショウガ加工物100g当たりに含まれるα-カロテンの含量(μg/100g)、β-カロテンの含量(μg/100g)の含量を分析した。
【0069】
・HPLCの測定条件
測定機器:LC-20AD(株式会社島津製作所)
検出器:紫外可視吸光光度計SPD-20AV(株式会社島津製作所)(455nm)
カラム:Interteil ODS-4 5μm(直径4.6mm、長さ250mm、ジーエルサイエンス株式会社)
移動相:アセトニトリル:メタノール:テトラヒドロフラン:酢酸=55:40:5:0.1の混液であり、0.05g/Lのdl-α-トコフェロールを含有する液体を使用
流速:1.5mL/分
カラムの温度:40℃
【0070】
HPLC用の試料の調整は以下の方法により行った。まず、上記の方法により得た蓬発酵液で処理した実施例1に係るショウガ加工物の粉末1gに、ピロガロール2gと、水5mlと、ヘキサン:アセトン:エタノール:トルエン=10:7:6:7の混合液40mlと、エタノール20mLとを加えて15分間震とうする。エタノールで100mLにして、超音波を10分間照射する。その後、暗所で一晩放置する。こうして得た抽出液から10mLを採取し、これに600g/L水酸化カリウム溶液2mLを加えて70℃の水浴中で30分間加熱する。加熱後の液体に10g/L水酸化カリウム溶液20mLと、ヘキサン:2-プロパノール:酢酸エステル=9:1.5:1の混液14mL加えて、5分間振とうする。その後、1500rpmで5分間遠心分離して、有機溶媒層を採取する。採取した有機溶媒層に、ヘキサン:2-プロパノール:酢酸エステル=9:1.5:1の混液14mL加えて、5分間振とうし、1500rpmで5分間遠心分離して、有機溶媒層を採取する操作を2回繰り返して、抽出を計3回行う。その後、溶媒をエバポレーターにより除去し、エタノールを所定量加えてこれを高速液体クロマトグラフ分析に供した。
【0071】
検量線は、α-カロテン(富士フィルム和光純薬株式会社、035-17981)、β-カロテン(富士フィルム和光純薬株式会社、032-17991)を使用して検量線を作成した。
【0072】
また、上記のショウガ加工物について、HPCLによる分析値を使用して、固形のショウガ加工物100g当たりに含まれる、ビタミンA(レチノール活性当量)(μg/100g)と、総アスコルビン酸(総ビタミンC)とを求めた。結果を表2に示す。なお、レチノール活性当量については、以下の式により、算出した。また、総アスコルビン酸については、ヒドラジンで誘導体化した後測定した。
レチノール活性当量(μg/100g)=1/12×β-カロテン(μg/100g)+1/24×α-カロテン(μg/100g)
【0073】
上記の蓬の発酵液に付け込んだ実施例1に係る固形のショウガ加工物100gに含まれるα-カロテンの含量(μg/100g)とβ-カロテンの含量(μg/100g)とレチノール活性当量(μg/100g)を表2に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
生のショウガ100g当たりに含まれる、α-カロテンは1μg程度であり、β-カロテンは4μg程度であり、レチノール活性当量は0μg程度が一般的である。表2の結果から明らかなように、実施例1の方法で製造したショウガ加工物を蓬の発酵液に浸漬したものでは、生のショウガに比して、ビタミンA、α-カロテン、β-カロテンの含量が飛躍的に向上していることがわかる。実施例1の方法で製造したショウガ加工物は、所定の温度と時間で加熱した後に、蓬の発酵液に浸漬しているため、発酵液に含まれるα-カロテン等の成分が効率よく固形分であるショウガに担持されたものと推測される。なお、α-カロテン等と同様に、亜鉛、カリウム、カルシウム、鉄、マグネシウム、ビタミンE、ビタミンK、葉酸、及びリコピンについても、生のショウガを上記の発酵液に浸漬した場合に比して、より多量に含有している。
【0076】
[菌数]
上記の蓬の発酵液に浸漬した実施例1に係るショウガ加工物と、比較のために後述する方法で製造した比較例6に係るショウガ加工物について、芽胞数、乳酸菌、枯草菌、及び放線菌、それぞれの菌数を求めた。芽胞数及び菌数は、ショウガ加工物1g当たりの菌数(colony forming unit:cfu)である。
【0077】
芽胞数の測定は、標準寒天平板培養法により測定した。培養前に、各ショウガ加工物を沸騰水中で10分間加熱した。培養条件は、55℃、2日間とした。乳酸菌の菌数の測定は、MRS寒天平板嫌気培養法により測定した。培養条件は、嫌気条件下で30℃にて3日間とした。枯草菌については平板塗抹培養法により測定した。培養前に、各ショウガ加工物を60℃の水中において20分間煮沸した。培養条件は、30℃にて2日間とした。放線菌については、アルブミン寒天平板培養法により測定した。培養条件は、30℃にて14日間とした。培養に際しては、粉末の各ショウガ加工物10gを滅菌水に10倍希釈となるように懸濁して、これを固体培地にスプレッドした。実施例1に係るショウガ加工物と、比較例6に係るショウガ加工物、それぞれの菌数を表3に示す。
【0078】
比較例6に係るショウガ加工物は、次の方法により製造した。生ショウガを厚み2mm~5mm程度に薄切りする。薄切りにした生のショウガを、上記の比較例1と同様の方法で製造した蓬の発酵液に浸漬し、室温で2日間漬け込む。漬け込んだショウガを引き上げて液切りをして、これを75~90℃の熱風で乾燥させた。乾燥させたショウガをフードプロセッサーで粉砕して粉末化する。
【0079】
【表3】
【0080】
表3の結果から明らかなように、実施例1の方法で製造したショウガ加工物を蓬の発酵液に浸漬したものでは、比較例6の方法で製造したショウガ加工物に比して、乳酸菌、枯草菌の各菌数が飛躍的に向上していることがわかる。実施例1の方法で製造したショウガ加工物は、所定の温度と時間で加熱した後に、蓬の発酵液に浸漬しているため、発酵液に含まれる乳酸菌と枯草菌とが効率よく固形分であるショウガに担持されたものと推測される。
【0081】
[ヒトへの効果]
上記の実施例1に係る方法で製造したショウガ加工物を上記の蓬の発酵液に浸漬したものを4カ月間にわたって服用した。内視鏡により回腸末端部を観察した。その結果、服用前は均一な高さであった絨毛に変化が見られた。具体的には、服用後においては、絨毛の高さが高低の不揃いになり絨毛の表面積が増大していた。また、服用後においては、回腸末端部の腸管の粘膜固有層にリンパ球の浸潤が認められた。
【0082】
腸管内の絨毛が不均一化すると、絨毛の表面積が増大する。これにより腸内細菌が腸管内にとどまりやすくなる。腸内細菌は免疫力に密接に関与するといわれている。絨毛の高さが不揃いになることにより、腸内細菌叢の状態がよくなり免疫力が向上する効果が得られる。リンパ球の浸潤は免疫反応が強く起こっている場所で認められる。すなわち、実施例1に係るショウガ加工物を服用することにより、回腸末端部において免疫反応が活性化していることがわかった。
【0083】
特許第5099378号公報に記載のように、ショウガを蓬の発酵液に浸漬したものには、魚類の腸管における絨毛の増殖を促進する効果があることが知られている。また、上述の通り、ショウガオールには、血流の促進効果、代謝の促進効果、体温を上昇させる効果、及び免疫力賦活効果がある。また、ジンゲロールには、血流促進効果、免疫賦活効果、抗炎症効果、及び抗酸化作用がある。
【0084】
蓬の発酵液に浸漬するショウガとして、ジンゲロールとショウガオールの含量が増加した実施例1に係るショウガ加工物を利用することにより、それを摂取した動物において、健康な状態を維持し、成長促進効果をさらに増強することができる。また、ヒトに対して、上記のジンゲロールとショウガオールの含量が増加したショウガ加工物を摂取させることにより、感染症に罹患しにくくなり、健康な状態を維持することができる。
【0085】
上述のように、蓬の発酵液に浸漬した実施例1に係るショウガ加工物においては、ジンゲロール及びショウガオールに加えて、ビタミンA、α‐カロテン、β‐カロテン、アスコルビン酸等の各種のビタミン類やミネラル分の含量も増加しており、乳酸菌、枯草菌、放線菌などの生きた菌を含有している。これを摂取した動物においては、免疫力が増強して健康な状態を維持し、成長促進効果をさらに増強することができる。ヒトに対しては、免疫力を増強し風邪、新型コロナウィルス感染症、インフルエンザなどの感染症に罹患しにくくなる。

【要約】
【課題】
ショウガオールとジンゲロールとの両方を多く含むショウガ加工物の製造方法と、ショウガオールとジンゲロールとの両方を多く含むショウガ加工物と、それを使用した動物の飼育方法を提供する。
【解決手段】
ショウガの乾燥物を、240~280℃の温度で40~120秒間加熱し、その後、1回目の加熱で加熱したショウガの乾燥物を冷却せずに、290~350℃の温度に達するまで昇温して、290~350℃の温度で40~120秒間加熱する工程を有するショウガ加工物の製造方法と、その製造方法で製造されたショウガ加工物を動物に摂取させる工程を含む動物の飼育方法と、固形物換算で、ショウガオールを1.80~2.80mg/gを含有し、ジンゲロールを、3.8~7.0mg/g含有するショウガ加工物である。
【選択図】なし