(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】携帯型非接触生体信号検出装置、運転者モニター装置、入場者スクリーニング・システム、及び家庭用ヘルスケアシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/11 20060101AFI20220613BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20220613BHJP
A61B 5/01 20060101ALI20220613BHJP
A61B 5/02 20060101ALI20220613BHJP
A61B 5/0245 20060101ALI20220613BHJP
A61B 5/113 20060101ALI20220613BHJP
A61B 5/1171 20160101ALI20220613BHJP
【FI】
A61B5/11 110
A61B5/00 102B
A61B5/01 350
A61B5/02 H
A61B5/02 310Z
A61B5/0245 C
A61B5/113
A61B5/1171 200
(21)【出願番号】P 2022518849
(86)(22)【出願日】2021-10-08
(86)【国際出願番号】 JP2021037446
【審査請求日】2022-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2020171293
(32)【優先日】2020-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509006691
【氏名又は名称】サクラテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108947
【氏名又は名称】涌井 謙一
(74)【代理人】
【識別番号】100117086
【氏名又は名称】山本 典弘
(74)【代理人】
【識別番号】100124383
【氏名又は名称】鈴木 一永
(74)【代理人】
【識別番号】100173392
【氏名又は名称】工藤 貴宏
(74)【代理人】
【識別番号】100189290
【氏名又は名称】三井 直人
(72)【発明者】
【氏名】酒井 文則
(72)【発明者】
【氏名】青木 泰
(72)【発明者】
【氏名】牧本 三夫
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-157000(JP,A)
【文献】特開2015-119770(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0178838(US,A1)
【文献】松本景子, 對馬肩吾, 米澤真也,バイタルセンサの研究開発,日本無線技報,No.70,日本,2019年,p.12-15
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/03
A61B 5/05-5/0507
A61B 5/08
A61B 5/11-5/1171
G01S 13/00-13/48
G01V 3/12
G01N 22/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面にMIMOレーダの平面アンテナが配備されているアンテナ部と、前面に表示パネルを備えている表示部とを備えていて、前記平面アンテナと前記表示パネルとが前記前面の前方方向を向いている状態から、前記平面アンテナが前記表示パネルに対向する前記表示部の背面の方向に向くように、前記アンテナ部が前記表示部に対して、あるいは、前記表示部が前記アンテナ部に対して回転可能に組み合わされていて、
前記前面の前方側における生体信号及び、前記前面に対向する前記背面の方向側における生体信号を検出する
携帯型非接触生体信号検出装置。
【請求項2】
前記MIMOレーダの電波放射方向における、前記生体信号の検出が行われる生体の動きを検知する振動センサを具備している請求項1記載の携帯型非接触生体信号検出装置。
【請求項3】
前記振動センサで検知した振動についての信号レベルが前記表示パネルに表示される請求項2記載の携帯型非接触生体信号検出装置。
【請求項4】
前記振動センサで検知した振動についての信号に基づいて前記生体信号の検出が行われる請求項2又は3記載の携帯型非接触生体信号検出装置。
【請求項5】
前記振動センサで検知した振動についての信号に基づいて前記検出された生体信号の修正及び/又は補正が行われる請求項2又は3記載の携帯型非接触生体信号検出装置。
【請求項6】
前記アンテナ部に前記MIMOレーダの電波放射方向に赤外線が放射される赤外線放射温度計が配備されている請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の携帯型非接触生体信号検出装置。
【請求項7】
前記アンテナ部に前記MIMOレーダの電波放射方向を撮影する可視光カメラが配備されている請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の携帯型非接触生体信号検出装置。
【請求項8】
前記アンテナ部に前記MIMOレーダの電波放射方向に赤外線が放射される赤外線放射温度計と、前記MIMOレーダの電波放射方向を撮影する可視光カメラとが配備されていて、生体信号として、呼吸、心拍、体温、脈波速度が検出される請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の携帯型非接触生体信号検出装置。
【請求項9】
生体情報として複数の脈波情報を得て、これに基づき脈波速度を検出し、その脈波情報より血圧を推定する請求項8記載の携帯型非接触生体信号検出装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の携帯型非接触生体信号検出装置を測定者が手で持って被測定者の前記生体信号を検出する際に検出される前記生体信号に与える前記携帯型非接触生体信号検出装置の振動による影響を抑圧する補正機構を備えている請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の携帯型非接触生体信号検出装置。
【請求項11】
前記補正機構は、前記
被測定者から反射して戻ってくる信号から前記被測定者の振動波形を抽出すると共に、前記被測定者の近傍に位置していて位置が固定されている固定物から反射して戻ってくる信号
から前記固定物の振動波形を抽出し、前記被測定者の振動波形測定値及び前記固定物の振動波形測定値から前記被測定者の振動波形測定値に含まれている前記手の振動を求める変換係数である手振れ抑圧係数を算出することで前記振動による影響を抑圧する機構である請求項10記載の携帯型非接触生体信号検出装置。
【請求項12】
移動車両の運転者席に配備されている請求項1~請求項9のいずれか一項に記載の携帯型非接触生体信号検出装置によって前記移動車両の運転者の運転時の状態を監視する運転者モニター装置。
【請求項13】
多数人が通行する通行部に請求項8記載の携帯型非接触生体信号検出装置を配備し、前記通行部を通行する多数人の中から有病者あるいは不健康者を抽出する入場者スクリーニング・システム。
【請求項14】
請求項1~請求項11のいずれか一項に記載の携帯型非接触生体信号検出装置を用いて、家庭内で居住者が生体情報を自分自身で測定し、記録して健康管理する家庭用ヘルスケアシステム。
【請求項15】
請求項8記載の携帯型非接触生体信号検出装置を用いて、前記可視光カメラで得られる画像情報で顔認識するとともに、体温、呼吸、心拍の生体情報を検出して監視する入退出・入出門管理システム。
【請求項16】
請求項1~請求項11のいずれか一項に記載の携帯型非接触生体信号検出装置を用いて、動物園や動物病院で動物の生体情報を検出する動物の健康状態モニター装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型で、携帯可能な非接触式の生体信号検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触で体温、心拍数、呼吸数、血圧などの生体情報を検出する装置は病院や介護施設などの業務だけでなく、個人の日常的な健康管理、ドライバーの運転状体モニター、あるいは密集、密接、密閉状況の発生しやすいイベント会場や交通機関での有病者のスクリーニングなどにおいても極めて重要で、その普及が期待されている。
【0003】
非接触で体温計測するには赤外線放射温度計で容易に行える。心拍数や呼吸数は可視光カメラやレーダセンサで非接触計測が可能である。血圧の推定手法もレーダセンサを用いて非接触に行えることが知られている。以下の特許文献にもこれらの手法が開示されている。
【0004】
特許文献1には、耳孔において放射温度計で体温を検出し、外耳道と手のひらの電位差から心電波形を測定して心拍数を検出する手法が開示されている。小型で携帯型であるが、心電波形の測定に接触電極が必要で心拍数の検出は非接触型とは言えず、また呼吸数を検出する機能はない。
【0005】
特許文献2には、生体信号を検出しかつ監視する、病院に設置する乳児保育器の例が開示されている。赤外線センサ、可視光カメラ、マイクロホンを具備して、赤外線センサで体温、可視光カメラで呼吸、心拍、皮膚血流、またマイクロホンで乳児の発生音を検出するシステムである。すべてのセンサは保育器内に個別に固定され、非接触計測は可能であるが据え置き型での利用形態となっている。
【0006】
特許文献3は据え置き型の非接触センサで、体温、呼吸数、心拍数を測定して有病体を検出する手法を開示している。温度検出はサーモグラフィー、呼吸数と心拍数はそれぞれ異なる2個のマイクロ波センサを用いている。非接触検出であるが装置が大きく据え置き型の利用形態となっている。
【0007】
以上述べたように、非接触生体信号計測は検出する生体信号ごとにいろいろその手法が開示され、実用化もされているが、携帯型で体温、心拍数、呼吸数、血圧をすべて計測可能な一体化装置は利便性が期待されているものの技術的な課題も多く、実用化して普及する段階にはまだ至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2000-217792号公報
【文献】特表2004-537335 号公報
【文献】特開2009-172176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
小型で、携帯可能な、非接触式の生体信号検出装置であって、非接触生体信号検出装置の前方にいる生体あるいは、非接触生体信号検出装置の後方にいる生体のいずれからでも生体情報検出可能にした非接触生体信号検出装置を提供する。
【0010】
非接触で体温、呼吸数、心拍数、血圧などの生体情報を取得することはいろいろな面で重要であり、その装置が携帯可能となると利便性が大幅に向上するとともに、新しい応用も期待できるが、まだ実用化されていない。
【0011】
非接触で体温を検出する方法は赤外線放射温度計が適用でき小型携帯型が実用化されている。非接触で呼吸数、心拍数検出するにはレーダセンサを適用する手法が優れている。しかし、小型携帯型にするには課題も多く、多機能な携帯型生体信号検出装置を実用化するには、レーダセンサの小型携帯化と装置の振動対策が重要な解決課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
MIMOレーダを利用した小型で、携帯可能な、非接触式の生体信号検出装置である。非接触生体信号検出装置の前方あるいは、後方のいずれへもMIMOレーダの電波放射を可能にして、非接触生体信号検出装置の前方にいる生体あるいは、非接触生体信号検出装置の後方にいる生体のいずれからでも生体情報検出可能にした非接触生体信号検出装置。
【0013】
レーダセンサに赤外線放射温度器、可視光カメラなどを搭載した、小型で携帯可能な非接触生体信号検出装置である。
【0014】
小型で携帯可能な1台の非接触生体信号検出装置で呼吸、心拍、体温などの生体信号を簡便に取得可能にした。
【0015】
レーダセンサとして平面アンテナを有する小型MIMOレーダを採用した。
【0016】
前面にMIMOレーダの平面アンテナが配備されているアンテナ部と、前面に表示パネルを備えている表示部とを備えていて、前記平面アンテナと前記表示パネルとが前記前面の前方方向を向いている状態から、前記平面アンテナが前記表示パネルに対向する前記表示部の背面の方向に向くように、前記アンテナ部が前記表示部に対して、あるいは、前記表示部が前記アンテナ部に対して回転可能に組み合わされている構成を採用した。
【0017】
前記前面の前方側における生体信号及び、前記前面に対向する前記背面の方向側における生体信号を検出するようにした。
【0018】
生体情報が検出・測定される被測定者だけでなく、生体情報の検出・測定を行う測定者自身の呼吸数、振幅数をも検出可能な携帯型装置を基本構成にした。
【0019】
装置に振動センサを設けて、測定時に生体情報が検出・測定される被測定者の前後方向(レーダ電波の進行方向)の振動情報に基づいて、生体情報の取得あるいは、取得情報の修正や補正を行って装置の振動による検出誤差の低減を可能にする機能を持たせた。
【0020】
平面アンテナと同一面に赤外線放射温度計、可視光カメラを配置することで1台の装置で、体温、呼吸数、心拍数などの生体情報を一括して取得可能な非接触携帯型の生体信号検出装置を実現した。
【0021】
携帯型非接触生体信号検出装置を測定者が手で持って被測定者の生体信号を検出する際に検出される生体信号に与える携帯型非接触生体信号検出装置の振動による影響を抑圧する補正機構を備えている構成にした。
【0022】
上述の補正機構は、携帯型非接触生体信号検出装置を測定者が手に持って測定を行う場合の手持ちの振動を、被測定者の近傍に位置していて位置が固定されている固定物から反射して戻ってくる信号を使い、被測定者から反射して戻ってくる信号に重畳している手持ちの振動を抑圧する機構にすることができる。
【0023】
このような本発明は以下に例示する構成にすることができる。
[1]
前面にMIMOレーダの平面アンテナが配備されているアンテナ部と、前面に表示パネルを備えている表示部とを備えていて、前記平面アンテナと前記表示パネルとが前記前面の前方方向を向いている状態から、前記平面アンテナが前記表示パネルに対向する前記表示部の背面の方向に向くように、前記アンテナ部が前記表示部に対して、あるいは、前記表示部が前記アンテナ部に対して回転可能に組み合わされていて、
前記前面の前方側における生体信号及び、前記前面に対向する前記背面の方向側における生体信号を検出する
携帯型非接触生体信号検出装置。
【0024】
[2]
前記MIMOレーダの電波放射方向における、前記生体信号の検出が行われる生体の動きを検知する振動センサを具備している[1]の携帯型非接触生体信号検出装置。
【0025】
[3]
前記振動センサで検知した振動についての信号レベルが前記表示パネルに表示される[2]の携帯型非接触生体信号検出装置。
【0026】
[4]
前記振動センサで検知した振動についての信号に基づいて前記生体信号の検出が行われる[2]又は[3]の携帯型非接触生体信号検出装置。
【0027】
[5]
前記振動センサで検知した振動についての信号に基づいて前記検出された生体信号の修正及び/又は補正が行われる[2]又は[3]の携帯型非接触生体信号検出装置。
【0028】
[6]
前記アンテナ部に前記MIMOレーダの電波放射方向に赤外線が放射される赤外線放射温度計が配備されている[1]~[5]のいずれかの携帯型非接触生体信号検出装置。
【0029】
[7]
前記アンテナ部に前記MIMOレーダの電波放射方向を撮影する可視光カメラが配備されている[1]~[6]のいずれかの携帯型非接触生体信号検出装置。
【0030】
[8]
前記アンテナ部に前記MIMOレーダの電波放射方向に赤外線が放射される赤外線放射温度計と、前記MIMOレーダの電波放射方向を撮影する可視光カメラとが配備されていて、生体信号として、呼吸、心拍、体温、脈波速度が検出される[1]~[5]のいずれかの携帯型非接触生体信号検出装置。
【0031】
[9]
生体情報として複数の脈波情報を得て、これに基づき脈波速度を検出し、その脈波情報より血圧を推定する[8]の携帯型非接触生体信号検出装置。
【0032】
[10]
[1]~[9]のいずれかの前記携帯型非接触生体信号検出装置を測定者が手で持って被測定者の前記生体信号を検出する際に検出される前記生体信号に与える前記携帯型非接触生体信号検出装置の振動による影響を抑圧する補正機構を備えている[1]~[9]のいずれかの携帯型非接触生体信号検出装置。
【0033】
[11]
前記補正機構は、前記携帯型非接触生体信号検出装置を前記測定者が手に持って測定を行う場合の手持ちの振動を、前記被測定者の近傍に位置していて位置が固定されている固定物から反射して戻ってくる信号を使い、前記被測定者から反射して戻ってくる信号に重畳している手持ちの振動を抑圧する機構である[10]の携帯型非接触生体信号検出装置。
【0034】
[12]
移動車両の運転者席に配備されている[1]~[9]のいずれかの携帯型非接触生体信号検出装置によって前記移動車両の運転者の運転時の状態を監視する運転者モニター装置。
【0035】
[13]
多数人が通行する通行部に[8]の携帯型非接触生体信号検出装置を配備し、前記通行部を通行する多数人の中から有病者あるいは不健康者を抽出する入場者スクリーニング・システム。
【0036】
[14]
[1]~[11]のいずれかの携帯型非接触生体信号検出装置を用いて、家庭内で居住者が生体情報を自分自身で測定し、記録して健康管理する家庭用ヘルスケアシステム。
【0037】
[15]
[8]の携帯型非接触生体信号検出装置を用いて、前記可視光カメラで得られる画像情報で顔認識するとともに、体温、呼吸、心拍の生体情報を検出して監視する入退出・入出門管理システム。
【0038】
[16]
[1]~[11]のいずれかの携帯型非接触生体信号検出装置を用いて、動物園や動物病院で動物の生体情報を検出する動物の健康状態モニター装置。
【発明の効果】
【0039】
MIMOレーダを利用した小型で、携帯可能な、非接触式の生体信号検出装置を提供することができる。非接触生体信号検出装置の前方あるいは、後方のいずれへもMIMOレーダの電波放射を可能にして、非接触生体信号検出装置の前方にいる生体あるいは、非接触生体信号検出装置の後方にいる生体のいずれからでも生体情報検出可能にできる。
【0040】
レーダセンサに赤外線放射温度器、可視光カメラなどを搭載した、小型で携帯可能な非接触生体信号検出装置を提供できる。
【0041】
小型で携帯可能な1台の非接触生体信号検出装置で呼吸、心拍、体温などの生体信号を簡便に取得可能にできる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明に係る携帯型非接触生体信号検出装置の一実施形態を表す斜視図。
【
図2】
図1図示の携帯型非接触生体信号検出装置の回路構成の一例を説明するブロック図。
【
図3】施設、病院などで本発明に係る携帯型非接触生体信号検出装置が使用される一例を説明する図。
【
図4】車両などの運転者による運転状態のモニタリングに本発明に係る携帯型非接触生体信号検出装置が使用される一例を説明する図。
【
図5】顔画像認識と健康チェック機能を有する入退室、等管理システムに本発明に係る携帯型非接触生体信号検出装置が使用される一例を説明する図。
【
図6】イベント会場などの大人数の中からの有病者スクリーニングに本発明に係る携帯型非接触生体信号検出装置が使用される一例を説明する図。
【
図7】自宅、居室内などにおける健康管理モニターに本発明に係る携帯型非接触生体信号検出装置が使用される一例を説明する図。
【
図8】動物園などにおける動物の生体信号検出に本発明に係る携帯型非接触生体信号検出装置が使用される一例を説明する図。
【
図9】本発明に係る携帯型非接触生体信号検出装置の他の実施形態を表す参考写真であって、(a)は平面アンテナと表示パネルとが前面の前方方向を向いている状態を表す参考写真、(b)は
図9(a)の状態からアンテナ部が表示部に対して180度回転し、平面アンテナが表示パネルに対向する表示部の背面の方向に向いている状態を表す参考写真。
【
図10】(a)、(b)は携帯型非接触生体信号検出装置を測定者が手で持って被測定者の生体信号を検出する際に、検出される生体信号に与える携帯型非接触生体信号検出装置の振動による影響を抑圧する補正機構のメカニズムを説明する図。
【
図11】(a)は携帯型非接触生体信号検出装置を測定者が手で持って被測定者の生体信号を検出する際に、検出される生体信号に与える携帯型非接触生体信号検出装置の振動による影響を抑圧する補正機構において、手振れ抑圧係数を算出するまでの処理工程を説明するフロー図、(b)は算出された手振れ抑圧係数を用いて対象物の振動を計算する処理工程を説明するフロー図。
【
図12】携帯型非接触生体信号検出装置を測定者が手で持って被測定者の生体信号を検出する際に、検出される生体信号に与える携帯型非接触生体信号検出装置の振動による影響を抑圧する補正機構で、固定物からの振動波形と、対象物からの振動波形を説明する図。
【
図13】被測定者の複数の部位から取得した振動情報により心拍間隔(RRI)の測定精度を向上させる方式を説明する概念図。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1は本発明に係る携帯型非接触生体信号検出装置101(本明細書、図面において「VSM装置」と表すことがある)の一実施形態を表す斜視図である。
【0044】
この実施形態の携帯型非接触生体信号検出装置101は、アンテナ部110と、表示部130とを備えている。
【0045】
アンテナ部110は、前面にレーダの平面アンテナ112を備えている。表示部130は、前面に液晶表示画面などからなる表示パネル115を備えている。
【0046】
前記レーダとしては高分解能のレーダが採用されていて、この実施形態では、マイクロ波やミリ波帯の小型のMIMO(Multiple Input Multiple Output)方式のレーダが採用されている。以下、本明細書、特許請求の範囲において「MIMO(Multiple Input Multiple Output)方式のレーダ」を「MIMOレーダ」と表すことがある。
【0047】
平面アンテナ112は、MIMOレーダの送信および受信の平面アレーアンテナであり、
図1においては送受信平面アンテナとしている。
【0048】
MIMOレーダの送信および受信の平面アレーアンテナである平面アンテナ112によって電波の送受信を行い、生体信号の検出を行う対象者(すなわち、被測定者)の微小変位を検出して呼吸や心拍の生体情報を検出する。
【0049】
MIMOレーダは少ないアンテナ素子で指向性の優れたアンテナが構成でき、24GHz帯の準ミリ波帯では数cm角の平面アンテナで生体信号の検出が可能であることが実証されている。
【0050】
また、最近の半導体技術の進展によりデバイスの小型化、省電力化が実現できているため、本実施形態のように携帯型に設計してもMIMOレーダを実現可能な性能が得られている。
【0051】
通常の測定では測定者の前方に電波を放射して測定者と異なる被測定者の生体信号を検出するが、アンテナ面を180度回転させると電波は後方(測定者自身の方向)に放射されるため、測定者自身の生体信号を検出することも可能となる。
【0052】
図1図示の状態では、平面アンテナ112と表示パネル115とは、同一の前面の前方方向を向いている。アンテナ部110は、アンテナ回転機構111を介して、表示部130に対して回転可能に組み合わされている。図示の状態から、
図1に矢印で示すように、平面アンテナ112が表示パネル115に対向する表示部130の背面の方向に向くように、アンテナ部110を表示部130に対して180度回転させることが可能になっている。
【0053】
これによって、レーダからの電波放射の方向を180度変更可能にしているものである。
【0054】
図1図示の状態では、携帯型非接触生体信号検出装置101の前面の前方側における生体信号を検出することができるが、
図1に矢印で示すように、アンテナ部110を表示部130に対して180度回転させることで、携帯型非接触生体信号検出装置101の前面に対向する背面の方向側における生体信号を検出することもできる。
【0055】
通常の測定では測定者の前方に電波を放射して測定者と異なる被測定者の生体信号を検出するが、アンテナ面を180度回転させると電波は後方(測定者自身の方向)に放射されるため、測定者自身の生体信号を検出することも可能となる。
【0056】
図1図示の実施形態では、アンテナ部110と表示部130とが図面において上下に配置されていて、アンテナ部110の下端側と、表示部130の上端側との間にアンテナ回転機構111が介装されていた。アンテナ回転機構111の存在によって、アンテナ部110が表示部130に対して180度回転し、
図1図示のように、平面アンテナ112も表示パネル115も前方を向いている状態と、図示していないが、表示パネル115が
図1図示のように前方を向き、平面アンテナ112が背面方向を向いている状態にすることができる。
【0057】
図9は、本発明に係る携帯型非接触生体信号検出装置の他の実施形態を表す参考写真である。
図9(a)では、図中、右側の表示部も、図中、左側のアンテナ部も、それぞれの表示パネル、平面アンテナが前方方向を向いていて、図中、左側のアンテナ部から矢印20で示す方向にMIMOレーダの電波が放射されている。図示されている携帯型非接触生体信号検出装置を手で持って使用している者(測定者)が、図中、右側の表示部の表示パネルに表示される情報を見ながら、自分自身(被測定者)の生体情報を検出できる使用方法になる。
【0058】
この
図9図示の携帯型非接触生体信号検出装置の場合、アンテナ回転機構は、
図9(a)における右側の表示部の左端側と、
図9(a)における左側のアンテナ部の右端側との間に介装されている。
【0059】
そこで、
図9(a)で携帯型非接触生体信号検出装置の背面側に矢印21で示しているように、このアンテナ回転機構が介装されているところを中心にしてアンテナ部を表示部に対して180度回転させ、
図9(b)図示のように、アンテナ部の平面アンテナが、表示パネルに対向する表示部の背面の方向に向いている状態にすることができる。
【0060】
このようにすると、アンテナ部の平面アンテナからは、
図9(b)に矢印22で示す方向にMIMOレーダの電波が放射される。携帯型非接触生体信号検出装置を持っている測定者は、
図9(b)図示のように表示部の表示パネルに表示される情報を見ながら矢印22の方向にいる被測定者の生体情報を検出することが可能になる。
【0061】
この携帯型非接触生体信号検出装置を手で持って操作している測定者(測定を行う者)は、
図9(b)のように、表示部の表示パネルに表示されている情報を見ながら、被測定者に対して、アンテナ部の平面アンテナから、
図9(b)に矢印22で示す方向にMIMOレーダの電波を放射し、被測定者の生体情報を検出することができる。
【0062】
この実施形態の携帯型非接触生体信号検出装置101は、
図9を用いて説明しているように測定を行う者が手に持って測定を行える程度の小型のものである。そこで、送信波が、
図9(a)、(b)に矢印20、22で示す前方だけでなく、後方にも放射されることがある。
【0063】
図9(a)図示のように、測定者がアンテナを手前に向け自分自身を測定する場合であればよいが、
図9(b)図示のようにして矢印22の方向に存在している対象物(被測定者)を測定する場合には、送信波が後方(矢印22の方向の反対側方向)にも放射されると測定者自身の振動を拾うことになる。
【0064】
そこで、図示していないが、
図9(b)図示のようにして使用する場合に、アンテナ部と、表示部との間にシールド板を挟み込ませる構造にすることができる。
【0065】
図9(b)図示の状態になっている表示部(
図9(b)の前方側)と、アンテナ部(
図9(b)の後方側)との間にシールド板が挟持されて簡単に固定され、
図9(b)図示の状態から
図9(a)図示の状態に戻すときには、簡単にシールド板を取り外すことができるようにするものである。
【0066】
図示していないが、
図9(b)図示の状態で、表示部(
図9(b)の前方側)と、アンテナ部(
図9(b)の後方側)との間に薄い板状のシールド板が存在していれば、電波の後方(矢印22の方向の反対側方向)への放射を低減させることができる。
【0067】
これによって、
図9(b)図示のようにして矢印22の方向に存在している対象物(被測定者)を測定するときに、送信波が後方にも放射されて測定者自身の振動を拾うことが無いようにすることができる。
【0068】
図2は
図1図示の携帯型非接触生体信号検出装置101の回路構成の一例を説明するブロック図である。
【0069】
携帯型非接触生体信号検出装置101は、スマートフォンなどと同じく、後述する種々の機能を所定のコンピュータプログラムの下で実行するコンピュータ機能を備えているものから構成することができる。
【0070】
図2図示の実施形態では、携帯型非接触生体信号検出装置101は、レーダの信号処理部118、CPU(信号処理、システム制御)119、外部と接続に必要な無線通信部120、電源部121を備えて構成されている。利用形態によっては、記憶装置や予備電源さらに可搬型半固定の状態で利用する場合の取り付け装置などを付属装置として備えることもできる。
【0071】
MIMOレーダの送信および受信の平面アレーアンテナである平面アンテナ112で取得したレーダ信号により、レーダ信号処理部118で、振幅情報、周波数情報を分析し、被測定者の呼吸数、心拍数情報を取得することができる。
【0072】
また、レーダ信号処理部118、CPU(信号処理、システム制御)119で行われる所定の処理により、取得したレーダ信号から脈波速度、血圧などの派生情報の推定を行うことが可能になる。
【0073】
図1図示の実施形態の携帯型非接触生体信号検出装置101では、レーダの電波放射方向における、生体信号の検出が行われる生体(被測定者)の動きを検知する振動センサを具備している構成にすることができる。
【0074】
MIMOレーダを用いて実際に被測定者の呼吸数や心拍数を測定する場合は、レーダ自体を固定して被測定者に向かう電波の進行方向(すなわち、被測定者の前後方向)の微小変位(1mm程度)を検出することが望ましい。また呼吸の周期は3秒前後なので数秒にわたって安定に保持することも要求される。
【0075】
この実施形態のように、測定を行う者が手で持って操作することが可能な携帯型非接触生体信号検出装置101の場合は、レーダ自体も振動することになる。このため、振動対策が極めて重要になる。
【0076】
市販されている可視光カメラにもこの振動(ブレ)防止対策がなされている。ただし、この場合は、被写体に対するカメラの上下および左右方向の振動が問題にされるが、カメラから被写体に向かう方向である前後方向はほとんど問題にされていない。また可視光カメラでは、振動に対する補正時間もレーダの場合に比し極めて短い。
【0077】
したがって可視光カメラに従来から採用されている振動(ブレ)防止対策は、本発明の振動対策に適用できる技術ではない。
【0078】
このため本実施形態では、装置内(特に、アンテナ部110)に、振動センサ116を設けて、レーダの電波放射方向(被測定者の前後方向)の振動レベルを検出することで、レーダの電波放射方向における、生体信号の検出が行われる生体(被測定者)の動きを検知するようにしている。
【0079】
振動センサ116としては、3次元加速度計などを採用することができる。
【0080】
振動センサ116で検知した振動についての信号レベルが表示パネル115に表示されるようにすることができる。あるいは、振動センサ116で検知した振動についての信号レベルが振動インジケータ117で表示されるようにすることもできる。表示パネル115に表示されると共に、振動インジケータ117で表示されるようにすることもできる。
【0081】
振動センサ116で検知した振動についての信号に基づいて生体信号の検出が行われるようにすることができる。また、振動センサ116で検知した振動についての信号に基づいて検出された生体信号の修正及び/又は補正が行われるようにすることもできる。
【0082】
レーダの電波放射方向(被測定者の前後方向)の振動レベルを振動センサ116で検出して測定が可能な状態のときのみ測定を実施するような機能を持たせたり、振動センサ116で得られた振動情報を用いてレーダで得られるそのままの検出情報を補正して、正確な呼吸、心拍情報を抽出するようにするものである。
【0083】
携帯型非接触生体信号検出装置101を測定者が手に持って測定を行う場合の手持ちの振動が対象物の信号に重畳することによる誤差の発生を抑制する機構を携帯型非接触生体信号検出装置101に配備することができる。
【0084】
この機構は、上述した振動センサ116で得られた振動情報を用いてレーダで得られるそのままの検出情報を補正して正確な呼吸・心拍情報を抽出する構成とは別個に携帯型非接触生体信号検出装置101に配備することができる。また、振動センサ116で得られた振動情報を用いてレーダで得られるそのままの検出情報を補正して正確な呼吸・心拍情報を抽出する構成に追加してこの機構を携帯型非接触生体信号検出装置101に配備することもできる。
【0085】
この機構は、携帯型非接触生体信号検出装置101を測定者が手で持って被測定者の生体信号を検出する際に検出される生体信号に与える携帯型非接触生体信号検出装置101の振動による影響を抑圧する補正機構である。
【0086】
携帯型非接触生体信号検出装置101を測定者が手にもって測定を行う場合、手持ちの振動が対象物の信号に重畳することが生じ得る。このようになると測定誤差が生じる。
【0087】
携帯型非接触生体信号検出装置101を測定者が手に持って測定を行う場合の手持ちの振動が対象物の信号に重畳することによる誤差の発生を抑制する機構によりこのような事象が発生することを抑制できる。
【0088】
この機構は、例えば、携帯型非接触生体信号検出装置101を測定者が手に持って測定を行う場合の手持ちの振動を、固定物から反射して戻ってくる信号を使い、被測定者から反射して戻ってくる信号に重畳している手持ちの振動を抑圧する補正機構である。
【0089】
図10、
図11を用いて、この補正機構を説明する。
図10(a)、(b)に「センサー」として表示しているこの実施形態の携帯型非接触生体信号検出装置により、固定物と、
図10(a)、(b)に「対象物」として表示されている被測定者との2カ所を測定箇所に設定する。
【0090】
図10(a)では対象物(被測定者)の近傍に存在していて位置が固定されている壁を固定物にしている。
図10(b)では対象物(被測定者)の近傍に存在していて位置が固定されている檻や柵を固定物にしている。
【0091】
まず、固定物と対象物の位置を携帯型非接触生体信号検出装置に入力する(
図11(a))。例えば、レーダ送受信アンテナ112から放射されたMIMOレーダの電波に対して固定物、対象物からそれぞれ取得したレーダ信号を、レーダ信号処理部118、CPU119等の処理により、これらを携帯型非接触生体信号検出装置の記憶部に記憶させておいて読みだす形式で、固定物と対象物の位置を携帯型非接触生体信号検出装置に入力する構成にすることができる。
【0092】
次にセンサー(携帯型非接触生体信号検出装置)を対象物(被測定者)の方向にcmの単位で振動させる(
図11(a))。例えば、数cm、約10rpm~30rpmの範囲でセンサー(携帯型非接触生体信号検出装置)を対象物(被測定者)の方向に振動させる。
【0093】
これにより、
図11(a)に「MIMOレーダー処理」としている、対象物(被測定者)から反射して戻ってくる信号及び、固定物から反射して戻ってくる信号をそれぞれセンサー(携帯型非接触生体信号検出装置)で処理する。すなわち、レーダ送受信アンテナ112から放射されたMIMOレーダの電波に対してセンサー(携帯型非接触生体信号検出装置)で取得したレーダ信号から、レーダ信号処理部118、CPU119等での処理によって、対象物の振動波形の抽出、固定物の振動波形の抽出を行い、手振れ抑圧係数を算出する(
図11(a))。
【0094】
ここまでの工程が、事前準備の工程となり、測定を行うときには、
図11(a)の工程で算出した手振れ抑圧係数を用いて、
図11(b)に図示した動作フローによって、携帯型非接触生体信号検出装置101を測定者が手で持って被測定者の生体信号を検出する際に検出される生体信号に与える携帯型非接触生体信号検出装置101の振動による影響を抑圧し、より正確な被測定者の振動を測定することができる。
【0095】
図10(a)に図示しているように、センサー(携帯型非接触生体信号検出装置)が対象物から受信する受信信号R
t(t)は、
R
t(t)=x
t(t)×k
1+x
h(t)×k
1 ・・・(1)
である。
【0096】
xt(t)=対象物の振動の時間波形
xh(t)=センサーの振動の時間波形
k1=補正係数
センサー(携帯型非接触生体信号検出装置)が固定物から受信する受信信号Rf(t)は、
Rf(t)=xf(t)×k2+xh(t)×k2 と表される
xf(t)=固定物の振動の時間波形
xh(t)=センサーの振動の時間波形
k2=補正係数
ここで、xf(t)=固定物の振動の時間波形=0であるから
Rf(t)=xf(t)×k2+xh(t)×k2
=xh(t)×k2・・・(2)
となる。
【0097】
そこで、センサー(携帯型非接触生体信号検出装置)の受信信号R(t)は次のように表される
R(t)=Rt(t)+Rf(t)
=(xt(t)×k1+xh(t))×k1+xh(t)×k2・・・(3)
この式において、
xh(t)×k1=対象物の振動波形測定値(IF波形)
xh(t)×k2=固定物の振動波形測定値(IF波形)
である。
【0098】
図12で説明しているように、センサーをcmの単位で対象物(被測定者)の方向に振動させる。例えば、センサーを数cm、約10rpm~30rpmの範囲でセンサーを対象物(被測定者)の方向に振動させると、対象物の振動波形は、センサーの振動波形より十分小さい波形となり無視できる。
【0099】
そこで、
xh(t)×k1+xh(t)×k2×k3=0
となるk3を求めると、
k3=-{xh(t)×k1}÷{xh(t)×k2}・・・・(4)
となる。
【0100】
k3は、固定物の振動波形測定値から対象物の振動波形測定値に含まれている手の振動を求める変換係数、すなわち、手振れ抑圧係数となる。
【0101】
この変換係数k3を用いると、上述した式(4)(センサーの受信信号R(t))は次のように表すことができる
R(t)=xt(t)×k1+{xh(t)×k1+xh(t)×k2×k3}・・・(5)
【0102】
上述したように、xh(t)×k1+xh(t)×k2×k3=0となるk3を求めている(式(4))。そこで、上記の式(4)で求めたk3=-{xh(t)×k1}÷{xh(t)×k2}を用いると、対象物の振動の時間波形に含まれる手の振動を抑制することができる。
【0103】
すなわち、センサー(携帯型非接触生体信号検出装置)の受信信号R(t)を表す式(5)は次のようになる
R(t)=xt(t)×k1+{xh(t)×k1+xh(t)×k2×k3}
=xt(t)×k1+0
=xt(t)×k1
【0104】
このように、上述したk3(手振れ抑圧係数)を算出することで、携帯型非接触生体信号検出装置101を測定者が手で持って被測定者の生体信号を検出する際に検出される生体信号に与える携帯型非接触生体信号検出装置101の振動による影響を抑圧することが可能になる。
【0105】
携帯型非接触生体信号検出装置101を測定者が手で持って被測定者の生体信号を検出する際に検出される生体信号に与える携帯型非接触生体信号検出装置101の振動による影響を抑圧する補正機構は、携帯型非接触生体信号検出装置101に備えられているレーダ信号処理部118、CPU119などによる上述した処理によって実現される。
【0106】
図1図示のように、アンテナ部110にレーダの電波放射方向に赤外線が放射される赤外線放射温度計113が配備されている構成にすることができる。赤外線放射温度計113によって、被測定者の体温を非接触に検出できるように構成するものである。
【0107】
また、
図1図示のように、アンテナ部110にレーダの電波放射方向を撮影する可視光カメラ114が配備されている構成にすることができる。
【0108】
可視光カメラ114で測定対象者(被測定者)の顔画像を表示パネル115に表示したり、この画像情報で生体信号測定時に測定距離、測定部署を確定して測定信号の精度を向上させたり、顔画像認識技術で測定対象者を特定する機能を持たせることも可能となる。
【0109】
さらには、顔における血流の変化も検出可能であるのでこれより脈波情報の取得も可能で、この機能も装置に組み込むことができる。
【0110】
これらによって、一台の携帯型非接触生体信号検出装置101の1台で、呼吸、心拍、体温、脈波速度の生体信号を検出することが可能になる。
【0111】
また、レーダ信号から把握される上述した被測定者の呼吸数、心拍数情報などと、可視光カメラ114で得られる複数の脈波情報より脈波速度を検出し、その脈波情報より血圧を推定することも可能になる。
【0112】
この実施形態の携帯型非接触生体信号検出装置101はMIMOレーダを使用しているので、マイクロ波レーダセンサを用いて、被測定者の人体における異なる複数の部位から、個別に、同時に、連続して振動を取得することができる。
【0113】
そこで、被測定者の人体における異なる複数の部位から、個別に、同時に、連続して振動を取得し、被測定者の複数個所の振動波形から心拍間隔(RPI)を算出し、特異値を除外する処理を行って測定精度を向上させることができる。
【0114】
CPU119などからなる処理制御部が、被測定者の複数個所の振動波形から心拍間隔(RPI)を算出し、平均値及び標準偏差を計算し、例えば、心拍間隔(RPI)が1σ以上離れた値を除外し、残りの箇所の平均値を算出して測定精度を向上させる処理を行うものである。
【0115】
図13では、被測定者の複数の箇所(頭、胸、太腿、足)から、個別に、同時に、連続して振動を取得している。
図13におけるT1(頭)、T2(胸)、T3(太腿)、T4(足)の平均値:0.8725s、標準偏差:0.1317sであると、1σ以上離れた値を除き、平均値を再計算して心拍間隔(RPI)を求めると心拍間隔(RPI)=0.7966sとなる。
【0116】
これらの計算処理結果などは表示部130に表示させることができる。
【0117】
上述した種々の機能をコンピュータに実行させる所定のコンピュータプログラムにより、レーダ信号処理部118、CPU(信号処理、システム制御)119で所定の処理が実行され、平面アンテナ112で取得したレーダ信号、振動センサ116で取得した振動情報、赤外線放射温度計によって取得した温度情報、可視光カメラ114で取得した画像情報に基づいて、上述の種々の処理が実行され、一台の携帯型非接触生体信号検出装置101で、呼吸、心拍、体温の検出、測定、脈波速度、血圧の推定などが可能になる。
【0118】
なお表示パネル115には、被測定者の画像のほか、測定条件や検出した生体信号のデータの表示する機能を持たせることができる。
【0119】
携帯型非接触生体信号検出装置101の1台で、以上に説明したような呼吸数、心拍数、体温などの基本的な生体情報を取得できることは、測定の利便性を大幅に向上させるだけではなく、安全面においてもまた測定業務の省力化においても寄与するものが大であり、応用面も大幅に拡大可能となる。また業務用ばかりではなく家庭での日常生活におけるヘルスケア面でも利用できるものである。
【0120】
以下に本発明の利用形態をいくつかを例をあげて説明するが、本発明は上述した実施の形態及び、以下に説明する例に限られず、特許請求の範囲の記載から把握される技術的範囲において種々に変更可能である。
【0121】
(施設、病院などでの使用例)
図3は、病院や介護施設などで看護師、介護士などが、上述した実施形態の携帯型非接触生体信号検出装置101を常時携帯して、患者などの健康状態をチェックする際に適用する例である。患者などの胸郭部で呼吸数、心拍数を検出する方法の一例を説明するものである。
【0122】
図3において101は述した実施形態の携帯型非接触生体信号検出装置、200は被測定者、210は看護師、介護士などの測定者、220は顔画像と体温の測定方向、230は胸郭部に向けたレーダ電波の放射方向を示す。
【0123】
このようにして、被測定者200の胸郭部で呼吸数、心拍数を検出することができる。
【0124】
上述した実施形態の携帯型非接触生体信号検出装置101で、非接触にて、体温、呼吸数、心拍数の検出と血圧の推定を行うことができ、安全で簡便な看護や介護の業務を行うことができる。
【0125】
上述した実施形態の携帯型非接触生体信号検出装置101によれば、レーダで胸郭部の変位より心拍信号が計測可能であり、可視光カメラ114で顔の血流変化から脈波情報の検出が可能である。
【0126】
このような人体の二つ部位の信号を比較し相関を検討することで脈波速度が検出できることが知られている。そこで、上述した実施形態の携帯型非接触生体信号検出装置101のコンピュータからなる信号処理部に必要なコンピュータプログラムを搭載しておくことで、脳波速度の検出が可能になる。
【0127】
また、MIMOレーダのマルチビーム機能を生かして胸郭部と頭部の二つの部位の心拍信号を利用して脈波速度の検出することも可能であることも公知であり、この方法を適用することも可能である。
【0128】
脈波速度と最高血圧には相関関係があることが生理学的に知られており、このような手法で脈波速度を検出することで最高血圧の概略値を推定できる。
【0129】
一台の装置でこのような基本的な生体情報が取得できるのは、介護業務において極めて有用性が高い。
【0130】
(車両などの運転者による運転状態のモニタリング)
図4は、上述した実施形態の携帯型非接触生体信号検出装置101の特長を生かしたバスやタクシーなどの運転者、公的交通機関の運転者などの運転状態モニターや居眠り検出器などへの応用例である。
【0131】
移動車両の運転者席に配備されている上述した実施形態の携帯型非接触生体信号検出装置101によって、移動車両の運転者の運転時の状態(例えば、健康状態)を監視する運転者モニター装置として本発明が適用される例である。
【0132】
図4において101は上述した実施形態の携帯型非接触生体信号検出装置、200は被測定者(ドライバー)、220は顔画像と体温の測定方向、230はレーダ電波の放射方向を示し、胸郭部で呼吸数、心拍数を検出する方法を示している。
【0133】
運転者の運転状況モニターにはカメラやレーダ装置など個別のセンサで生体情報を取得する例が知られているが、狭い車内で設置するには設置場所や配線など問題が多い。
【0134】
図4は、上述した実施形態の携帯型非接触生体信号検出装置101を運転席上部に設定した例である。
【0135】
このような小型装置を適用することで、設置場所選定の自由度が高く、体温、呼吸、心拍、あるいは顔の情報などを一括取得することで運転者の運転状況をより正確に迅速に把握でき、居眠り検出なども極めて効果的に検出可能となるために安全面での利用価値は極めて高い。
【0136】
この例では上述した実施形態の携帯型非接触生体信号検出装置101を運転席上部に設定した例を示している。なお、この例では公的な交通機関について説明したが、本発明が自家用車の個々のドライバーの運転モニターにも適用可能であることは言うまでもない。
【0137】
(顔画像認識と健康チェック機能を有する入退室・入出門管理システムへの応用)
図5は、顔画像認識と同時に健康チェック機能を有する入退室・入出門管理システムへの応用例を示すものである。
【0138】
上述した実施形態の携帯型非接触生体信号検出装置101を用いて、可視光カメラ114で得られる画像情報で顔認識するとともに、体温、呼吸、心拍の生体情報を検出して監視する入退室・入出門管理システムである。
【0139】
図5において、101は上述した実施形態の携帯型非接触生体信号検出装置、112は送受信平面アンテナ、113は放射温度計、114は可視光カメラ、115は表示パネルを示す。また図において左側のAは認証/測定中の表示例、右側のBは認証結果および生体信号測定結果の表示例を示している。
【0140】
このような応用の場合、携帯性はあまり重要でないが、非接触で小型化であることが重要で設置場所を選ばす、設置状態の変更も容易である本発明の特長を生かすことができる。
【0141】
この応用例では顔画像認識はネットワークを介して外部データベースと顔画像の照合を行うシステムを想定している。このようなシステムに構成することで、個々人の生体情報や健康状態を日常的に継続して管理することが必要となる病院や介護施設、食品を取扱う事業所などで安全性の高い入退室、入出門管理が可能となる。
【0142】
(イベント会場などの大人数の中から有病者スクリーニングへの適用例)
図6図は、イベント会場や競技場などのように多数の人々が集っているところで、有病者をスクリーニングするシステムへの応用例を説明するものである。
【0143】
多数人が通行する通行部に上述した実施形態の携帯型非接触生体信号検出装置101を配備し、前記通行部を通行する多数人の中から有病者あるいは不健康者を抽出する入場者スクリーニング・システムである。
【0144】
図6において、101は上述した実施形態の携帯型非接触生体信号検出装置、300は携帯型非接触生体信号検出装置取り付け装置(設置台)、310は可搬型の三脚、320aおよび320bは、入場者(被測定者)を示している。
【0145】
新型コロナウィルス(covid-19)感染に見られるように、感染の疑いのある人を正確に検出するには、従来行われている体温だけでなく、呼吸や心拍などの生体信号の検出も同時に行って総合的にチェックすることが望ましい。
【0146】
そのためには本発明の小型で可搬型の非接触式の携帯型非接触生体信号検出装置101を適用することで実現可能となる。
【0147】
図6の例では、大型施設での多人数スクリーニングを行う場合、三脚など可搬型の取り付け装置に予備電源、通信装置なども用意し、設置場所や設置台数を適宜選択して長時間連続測定を可能する例を示している。
【0148】
(自宅、居室内などにおける適用例)
図7は、家庭内における日常的な健康管理モニターへの応用例である。
【0149】
上述した実施形態の携帯型非接触生体信号検出装置101を用いて、家庭内で居住者が生体情報を自分自身で測定し、記録して健康管理する家庭用ヘルスケアシステムである。
【0150】
図7において101は上述した実施形態の携帯型非接触生体信号検出装置、200は測定対象者(被測定者、この場合は測定者自身)、220は顔画像の撮影方向、230はレーダ電波の胸郭に向けたビーム方向を示す。
【0151】
家庭内で、体温、心拍、血圧などを日常的に計測して健康管理を行うことはよく行われるが、それぞれ複数のセンサを用いて計測することがほとんどである。
【0152】
本発明の携帯型の非接触式の携帯型非接触生体信号検出装置101を用いることで、どこでも場所を選ばず自分自身で測定可能で、かつ一括して生体情報が得られることが可能となり、利便性が向上するとともに、手間がかからないことから継続的な健康管理に寄与できることになる。
【0153】
この例では居間のソファに座りながら、アンテナ面を180度回転させ自分自身で測定する例であるが、トイレでも洗面所などでも場所を選ばず測定を実施することは可能である。
【0154】
また、室内でヨガや気功などの動作の緩やかなトレーニングを行う場合なども、本発明の携帯型VSMを三脚などに取り付けて生体信号を常時モニターしながらトレーニングを行うことで効果的にトレーニングを実施することが可能となる。
【0155】
以上は自分自身で生体信号を測定する場合であるが、アンテナを通常の状態にして親が子供の健康状態をチェックする場合など、自分以外のほかの人の生体信号を測定し、日常的に家庭用ヘルスケア機器として利用できることはいうまでもない。
【0156】
(動物園などにおける動物の生体信号検出への適用例)
上述した実施形態の携帯型非接触生体信号検出装置101を用いて、動物園や動物病院で動物の生体情報を検出する動物の健康状態モニター装置としての実施形態を説明する。
【0157】
図8は、動物園などにおける動物の生体信号検出への応用例である。
【0158】
図8において101は上述した実施形態の携帯型非接触生体信号検出装置、310は携帯型非接触生体信号検出装置101を取り付ける可搬型の三脚、330は測定対象となる動物、340は檻を示す。
【0159】
動物園や動物病院において動物の生体信号を計測することは、健康状態をチェックするだけではなく、動物の生態を研究する上でも重要なデータとなる。ただ、危害を加える危険な動物も扱うことも多いから、飼育員などの測定者は安全な場所から非接触で計測することが必須の条件となる。
【0160】
本発明の非接触、携帯型という特長を生かすことで、安全にかつ容易に動物の生態信号計測が可能となる。
図8の例では携帯型非接触生体信号検出装置101を三脚に取り付け、測定する動物の近く(図のように檻の外でもよい)に設置して計測する例を示す。
【0161】
人間の場合と同じように、動物の顔から体温(赤外線放射温度計)や血流変化(可視光カメラ)の情報が得られ、レーダで呼吸や心拍の情報が売ることができる。動物の場合、体表面が毛深く覆われる測定対象も多いが、電波には影響がほとんどないのでレーダの測定も問題なく行うことができ、呼吸数、心拍数あるいは脈波速度などの基本的な生体情報を得ることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0162】
一体型生体信号検出器装置は小型、携帯型のものとしては、まだ実用化されていない。本発明によって上述したように、これを実現することで、病院や介護施設における従事者の利便性の向上、安全性の拡大、業務負荷の軽減に寄与するだけでなく、生体信号の情報が必要となる多様な業務や日常の健康管理において利用が大幅に拡大する。
【0163】
本発明により、非接触携帯型の体温、呼吸数、心拍数の検出や血圧の推定などが可能な一体型生体信号検出器装置が実現できると、病院や介護施設における従事者の利便性の向上、安全性の拡大、検査業務負荷の軽減に寄与するだけでなく、生体信号の情報が必要となる応用面での利用が大幅に拡大する。
【0164】
例えば、非接触、携帯、一体化同時計測の特長を生かして、ドライバーの運転時の状態(例えば、健康状態)をモニターしたり、オフィスや工場での入退室や入出門時での健康チェック、密集、密接、密閉状況の発生しやすいイベント会場や交通機関での有病者や不健康者のスクリーニング、さらには測定者自身の生体信号も検出可能であることより家庭での日常的なヘルスケヤなどにも幅広い応用が可能である。
【要約】
前面にMIMOレーダの平面アンテナが配備されているアンテナ部と、前面に表示パネルを備えている表示部とを備えていて、前記平面アンテナと前記表示パネルとが前記前面の前方方向を向いている状態から、前記平面アンテナが前記表示パネルに対向する前記表示部の背面の方向に向くように、前記アンテナ部が前記表示部に対して、あるいは、前記表示部が前記アンテナ部に対して回転可能に組み合わされていて、前記前面の前方側における生体信号及び、前記前面に対向する前記背面の方向側における生体信号を検出する携帯型非接触生体信号検出装置。