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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】繊維処理剤
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/263 20060101AFI20220613BHJP
   D06M 15/27 20060101ALI20220613BHJP
   D06M 15/333 20060101ALI20220613BHJP
   D06M 15/347 20060101ALI20220613BHJP
   D06M 15/53 20060101ALI20220613BHJP
   D06M 101/06 20060101ALN20220613BHJP
   D06M 101/32 20060101ALN20220613BHJP
【FI】
D06M15/263
D06M15/27
D06M15/333
D06M15/347
D06M15/53
D06M101:06
D06M101:32
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2016247991
(22)【出願日】2016-12-21
(65)【公開番号】P2018100465
(43)【公開日】2018-06-28
【審査請求日】2019-09-05
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 郁雄
(72)【発明者】
【氏名】川田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】高松 雄輝
【審査官】鈴木 祐里絵
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-002884(JP,A)
【文献】特開2001-348780(JP,A)
【文献】特開2003-027088(JP,A)
【文献】特表2014-503630(JP,A)
【文献】特開2010-222382(JP,A)
【文献】特開2011-032608(JP,A)
【文献】特開2000-154475(JP,A)
【文献】特開2016-084564(JP,A)
【文献】特開2005-133231(JP,A)
【文献】特開平03-185184(JP,A)
【文献】特開昭57-154457(JP,A)
【文献】特開平05-098572(JP,A)
【文献】特開昭47-033192(JP,A)
【文献】特開昭61-152605(JP,A)
【文献】国際公開第2014/156709(WO,A1)
【文献】特開2014-159660(JP,A)
【文献】特開2009-228181(JP,A)
【文献】松浦良平,界面活性高分子 そのコロイド化学を中心にして,高分子,1959年,第8巻,第3号,p143~146
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M13/00-15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1);
【化1】
(式中、R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、又は、メチル基を表す。Rは、水素原子、又は、炭素数1~30の炭化水素基を表す。(AO)は、同一又は異なって、オキシアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、2~50の数である。yは、0~2の数を表す。zは、0又は1を表す。)で表される(ポリ)アルキレングリコール系単量体(A)由来の構造単位(a)と不飽和カルボン酸系単量体(B)由来の構造単位(b)とを有する共重合体と架橋剤とを含み、
該共重合体は重量平均分子量が20,000~200,000であり、
該(ポリ)アルキレングリコール系単量体(A)におけるポリアルキレングリコール中のオキシアルキレン基は、80モル%以上がオキシエチレン基であり、
該不飽和カルボン酸系単量体(B)は、下記式(2);
【化2】
(式中、R、R、Rは、同一又は異なって、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、-(CHp1COOM(-(CHp1COOMは、-COOM又はその他の-(CHp1COOMと無水物を形成していてもよい)、-(CHp2(CO)q1-O-R、又は、-(CHp3CONR10を表す。p1、p2、p3は、同一又は異なって、0~2の整数を表し、q1は、0又は1を表す。M及びMは、同一又は異なって、水素原子、一価金属原子、二価金属原子、三価金属原子、第4級アンモニウム基、又は、有機アミン基を表す。R、R、R10は、同一又は異なって、水素原子、又は、炭素数1~30の炭化水素基を表す。)で表される化合物であり、
該架橋剤は、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、フェニレンジアミン、オキサゾリン基含有ポリマー、ブタンジオール、トリレンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネートからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする繊維処理剤(但し、クロルヘキシジンまたはその塩、ポリアマイドポリアミン鎖を有するもの、並びに、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキサイドの付加モル数22モル)とメタクリル酸との共重合体(質量比8:2、重量平均分子量:25000)、及び、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキサイドの付加モル数22モル)とメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキサイドの付加モル数45モル)とメタクリル酸との共重合体(質量比2:5:3、重量平均分子量:28000)の少なくともいずれかを含むものを除く)。
【請求項2】
下記式(1);
【化3】
(式中、R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、又は、メチル基を表す。Rは、炭素数1~30の炭化水素基を表す。(AO)は、同一又は異なって、オキシアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、2~50の数である。yは、0~2の数を表す。zは、0又は1を表す。)で表される(ポリ)アルキレングリコール系単量体(A)由来の構造単位(a)と不飽和カルボン酸系単量体(B)由来の構造単位(b)とを有する共重合体と架橋剤とを含み、
該共重合体は重量平均分子量が20,000~200,000であり、
該(ポリ)アルキレングリコール系単量体(A)におけるポリアルキレングリコール中のオキシアルキレン基は、80モル%以上がオキシエチレン基であり、
該不飽和カルボン酸系単量体(B)は、下記式(2);
【化4】
(式中、R、R、Rは、同一又は異なって、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、-(CHp1COOM(-(CHp1COOMは、-COOM又はその他の-(CHp1COOMと無水物を形成していてもよい)、-(CHp2(CO)q1-O-R、又は、-(CHp3CONR10を表す。p1、p2、p3は、同一又は異なって、0~2の整数を表し、q1は、0又は1を表す。M及びMは、同一又は異なって、水素原子、一価金属原子、二価金属原子、三価金属原子、第4級アンモニウム基、又は、有機アミン基を表す。R、R、R10は、同一又は異なって、水素原子、又は、炭素数1~30の炭化水素基を表す。)で表される化合物であることを特徴とする繊維処理剤(但し、クロルヘキシジンまたはその塩、ポリアマイドポリアミン鎖を有するもの、並びに、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキサイドの付加モル数22モル)とメタクリル酸との共重合体(質量比8:2、重量平均分子量:25000)、及び、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキサイドの付加モル数22モル)とメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキサイドの付加モル数45モル)とメタクリル酸との共重合体(質量比2:5:3、重量平均分子量:28000)の少なくともいずれかを含むものを除く)。
【請求項3】
前記共重合体は、スルホン酸(塩)基を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の繊維処理剤。
【請求項4】
前記繊維処理剤は、セルロース繊維及び/又はポリエステル繊維に用いられることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の繊維処理剤。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の繊維処理剤で処理されてなるセルロース繊維及び/又はポリエステル繊維。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維処理剤に関する。より詳しくは、ポリエステル等の繊維に好適に用いられる繊維処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者の衛生・快適性志向から、繊維に吸湿性、抗菌・防臭性、保温性、発熱性、柔軟性等の機能を付与することが求められ、種々の技術が開発されている。例えば、合成繊維に対して機能性を付与する方法としては、繊維化の工程の段階で機能性成分を練り込む技術が開発されている。繊維化工程後の糸や織物の段階で機能性を付与する方法も開発されており、このような方法は、合成繊維、天然繊維等の繊維の種類を問わず適用することができ、特許文献1には、繊維に繊維処理剤をコーティングすることによって風合い等を付与する技術が開示されている。また、特許文献2、3には、カルボキシル基含有重合体(A)及び多価オキサゾリン化合物(B)を用いたセルロース系基材加工用樹脂組成物が開示されている。特許文献4には、多価アルコール、及びポリカルボン酸を含有する繊維処理剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-280652号公報
【文献】特開2000-129144号公報
【文献】特開2000-119968号公報
【文献】特開2016-79530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のとおり、種々の繊維処理剤が開示されているが、従来の繊維処理剤は吸湿性と風合い(手触り、肌触り)との両立の点で充分ではなく、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、繊維に対し充分な吸湿性を付与し、かつ、繊維の風合いを向上させることができる繊維処理剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、繊維処理剤について種々検討したところ、(ポリ)アルキレングリコール系単量体由来の構造単位とカルボン酸系単量体由来の構造単位とを有する共重合体が、繊維に充分な吸湿性を付与し、かつ、繊維の風合いを向上させることができることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0007】
すなわち本発明は、下記式(1);
【0008】
【化1】
(式中、R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、又は、メチル基を表す。Rは、水素原子、又は、炭素数1~30の炭化水素基を表す。(AO)は、同一又は異なって、オキシアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1~300の数である。yは、0~2の数を表す。zは、0又は1を表す。)で表される(ポリ)アルキレングリコール系単量体(A)由来の構造単位(a)と不飽和カルボン酸系単量体(B)由来の構造単位(b)とを有する共重合体を含む繊維処理剤である。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0009】
<共重合体>
本発明の繊維処理剤は、(ポリ)アルキレングリコール系単量体(A)由来の構造単位(a)と不飽和カルボン酸系単量体(B)由来の構造単位(b)とを有する共重合体を含むものである。上記共重合体は、構造単位(a)由来の(ポリ)アルキレングリコール鎖と構造単位(b)由来のカルボキシル基とを有し、これらの親水性基により、本発明の繊維処理剤は、繊維に対して吸湿性を付与することができる。また、共重合体は上記(ポリ)アルキレングリコール鎖を側鎖に有し、好適な大きさの側鎖を有することにより、共重合体のガラス転移温度(Tg)が充分に低くなる。このような共重合体を含む本発明の繊維処理剤は、繊維に対して柔軟性を付与することができ、繊維の風合いを向上させることができる。
【0010】
上記(ポリ)アルキレングリコール系単量体(A)(以下、単量体(A)ともいう)は、上記式(1)で表される化合物である。
上記式(1)におけるR、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、又は、メチル基である。好ましくはR、Rが水素原子であって、Rが水素原子、又は、メチル基である。
上記式(1)におけるRは、水素原子、又は、炭素数1~30の炭化水素基である。
としては、炭素数1~30の炭化水素基が好ましく、この場合、構造単位(a)由来の(ポリ)アルキレングリコール鎖と構造単位(b)由来のカルボキシル基とが縮合反応しないため、共重合体における自己架橋反応が抑制される。自己架橋反応が抑制されることにより、共重合体は柔軟性がより向上するため、このような共重合体を含む繊維処理剤は、繊維の風合いをより向上させることができる。
炭素数1~30の炭化水素基としては、炭素数1~30の脂肪族アルキル基、炭素数3~30の脂環式アルキル基、炭素数2~30のアルケニル基、炭素数2~30のアルキニル基、炭素数6~30のフェニル基、アルキルフェニルキ基、フェニルアルキル基、(アルキル)フェニル基で置換されたフェニル基、ナフチル基等のベンゼン環を有する芳香族基等が挙げられる。上記炭素数1~30の炭化水素基の炭素数としては、1~22が好ましく、1~18がより好ましく、1~12が更に好ましく、1~4が特に好ましい。上記炭素数1~30の炭化水素基としては、脂肪族アルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等が挙げられる。
【0011】
上記式(1)中、AOは、「同一又は異なって、」オキシアルキレン基を表すが、これは、ポリアルキレングリコール中にn個存在するAOのオキシアルキレン基が全て同一であってもよく、異なっていてもよいことを意味する。
上記式(1)中、AOで表されるオキシアルキレン基は、アルキレンオキシド付加物であり、このようなアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、1-ブテンオキシド、2-ブテンオキシド、スチレンオキシド等の炭素数2~8のアルキレンオキシドが挙げられる。より好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等の炭素数2~4のアルキレンオキシドであり、更に好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシドである。
また、上記ポリアルキレングリコールが、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド等の中から選ばれる任意の2種類以上のアルキレンオキシド付加物である場合、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの形態であってもよい。ポリアルキレングリコール中のオキシアルキレン基として、オキシエチレン基を必須成分として有することが好ましく、50モル%以上がオキシエチレン基であることがより好ましい。50モル%以上がオキシエチレン基であれば、ポリアルキレングリコールの親水性がより向上し、吸湿性がより向上する。80モル%以上がオキシエチレン基であることが更に好ましく、90モル%以上が特に好ましく、最も好ましくは100モル%である。
【0012】
上記式(1)中、nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1~300である。好ましくは2~100であり、より好ましくは4~100であり、更に好ましくは4~50であり、特に好ましくは4~25であり、最も好ましくは8~25である。
上記nが1~300であれば、単量体(A)の側鎖の大きさがより好適な範囲となり、共重合体の柔軟性がより向上するため、このような共重合体を含む繊維処理剤は、繊維の風合いをより向上させることができる。
上記nが1~12であれば、単量体(A)は液体となるため、取り扱いに優れ、共重合体の生産性がより向上する。
また、上記nが4以上であれば、Rが水素原子であっても、ポリアルキレングリコール鎖が充分に長くなるため、カルボキシル基との自己架橋反応がより充分に抑制され、共重合体の柔軟性がより向上することになる。
上記式(1)中、yは、0~2の数を表し、zは、0又は1を表すが、zが0の場合には、yは1又は2であることが好ましい。
上記zが1の場合には、yは0であることが好ましい。
【0013】
上記(ポリ)アルキレングリコール系単量体(A)は、ホモポリマーとしたときのガラス転移温度(Tg)が-70~0℃であることが好ましい。上記Tgが好ましい範囲である単量体(A)由来の構造単位を有することにより、共重合体の柔軟性がより向上し、このような共重合体を含む繊維処理剤は、繊維の風合いをより向上させることができる。
上記Tgとしてより好ましくは-65~-10℃であり、更に好ましくは-65~-20℃である。ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)は、既に得られている知見に基づいて決定することができ、示差走査熱量計により測定することもできる。
【0014】
上記単量体(A)として具体的には、エチレングリコール(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート;メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールの付加モル数1~300のアルコキシ(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート;ビニルアルコール、アリルアルコール、メタリルアルコール、3-メチル-3-ブテン-1-オール、3-メチル-2-ブテン-1-オール、2-メチル-3-ブテン-1-オール、2-メチル-2-ブテン-1-オール等の炭素数2~8の不飽和アルコールにアルキレンオキサイドを1~300モル付加させた化合物及びこれらの末端疎水変性物等が挙げられる。これらの中でも、炭素数1~4のアルコキシ基を有するアルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート;アリルアルコール、メタリルアルコール、3-メチル-3-ブテン-1-オールにアルキレンオキサイドを付加させたものが好ましい。より好ましくはエトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートである。
【0015】
上記不飽和カルボン酸系単量体(B)は、カルボキシル基とエチレン性不飽和炭化水素基(不飽和基)を有するものであれば、特に制限されないが、下記式(2);
【0016】
【化2】
【0017】
(式中、R、R、Rは、同一又は異なって、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、-(CHp1COOM(-(CHp1COOMは、-COOM又はその他の-(CHp1COOMと無水物を形成していてもよい)、-(CHp2(CO)q1-O-R、又は、-(CHp3CONR10を表す。p1、p2、p3は、同一又は異なって、0~2の整数を表し、q1は、0又は1を表す。M及びMは、同一又は異なって、水素原子、一価金属原子、二価金属原子、三価金属原子、第4級アンモニウム基、又は、有機アミン基を表す。R、R、R10は、同一又は異なって、水素原子、又は、炭素数1~30の炭化水素基を表す。)で表される化合物であることが好ましい。
【0018】
上記R、R、Rにおける炭素数1~10のアルキル基の炭素数として、好ましくは1~8であり、より好ましくは1~4である。炭素数1~10のアルキル基として好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基であり、特に好ましくはメチル基である。
上記R、R、Rのうち少なくとも1つが水素原子であることが好ましく、より好ましくは少なくとも2つが水素原子である。
上記R、R、R10における炭素数1~30の炭化水素基としては、炭素数1~30の脂肪族アルキル基、炭素数3~20の脂環式アルキル基、炭素数2~30のアルケニル基、炭素数2~30のアルキニル基、炭素数6~30のアリール基等が挙げられる。
上記M及びMにおける一価金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子等が挙げられる。二価金属原子としては、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属原子等が挙げられる。三価金属原子としては、アルミニウム、鉄等が挙げられる。また、有機アミン基としては、例えば、エタノールアミン基、ジエタノールアミン基、トリエタノールアミン基等のアルカノールアミン基や、トリエチルアミン基等が挙げられる。
上記M及びMとしては、水素原子又はアルカリ金属原子が好ましい。
【0019】
上記不飽和カルボン酸系単量体(B)として具体的には、下記の不飽和モノカルボン酸系単量体や不飽和ジカルボン酸系単量体が挙げられる。
不飽和モノカルボン酸系単量体としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、チグリン酸、3-メチルクロトン酸、2-メチル-2-ペンテン酸、α-ヒドロキシアクリル酸等;これらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩;下記不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数1~22のアルコール又は炭素数2~4のグリコールとのハーフエステル;不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数1~22のアミンとのハーフアミド等が挙げられる。
不飽和ジカルボン酸系単量体としては、分子内に不飽和基を1つとカルボアニオンを形成しうる基を2つとを有する単量体であればよく、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、フマル酸等や、それらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩及び有機アミン塩等、それらの無水物が挙げられる。
上記不飽和カルボン酸系単量体(B)としては、(メタ)アクリル酸(塩)、マレイン酸(塩)又は無水マレイン酸が好ましい。重合性向上の観点から、より好ましくは(メタ)アクリル酸(塩)である。すなわち、上記共重合体が(メタ)アクリル酸(塩)由来の構造単位を有する繊維処理剤は、本発明の好ましい形態の1つである。不飽和カルボン酸系単量体(B)として最も好ましくはアクリル酸(塩)である。
【0020】
上記繊維処理剤に含まれる共重合体は、スルホン酸(塩)基を有するものであることが好ましい。
本発明の繊維処理剤は、上記共重合体がスルホン酸(塩)基を有することにより、繊維に対してより充分な吸湿性を付与することができる。
上記スルホン酸(塩)基は、スルホン酸基又はその塩を意味し、塩としては、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等が挙げられ、より具体的には、金属塩としてはナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属の塩;マグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩等のアルカリ土類金属の塩;アルミニウム塩、鉄塩等の塩が挙げられる。有機アミン塩としては、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩;モノエチルアミン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩等のアルキルアミン塩;モルホリン塩等が挙げられる。これらの中でも、上記効果を充分に発現させるためには、スルホン酸基の塩としてはナトリウム塩、カリウム塩が好ましい。
【0021】
上記共重合体は、スルホン酸(塩)基含有単量体(C)由来の構造単位(c)を有するものであることが好ましい。
上記スルホン酸(塩)基含有単量体(C)(以下、単量体(C)ともいう)は、スルホン酸(塩)基とエチレン性不飽和炭化水素基を有するものであれば、特に制限されず、例えば、2-(メタ)アリルオキシエチレンスルホン酸等の(ポリ)アルキレングリコール含有不飽和スルホン酸、3-(メタ)アリルオキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸、2-(メタ)アリルオキシエチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、p-スチレンスルホン酸、α-メチル-p-スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、ビニルスルファミン酸、(メタ)アリルスルホン酸、イソプレンスルホン酸、4-(アリルオキシ)ベンゼンスルホン酸、1-メチル-2-プロペン-1-スルホン酸、1,1-ジメチル-2-プロペン-1-スルホン酸、3-ブテン-1-スルホン酸、1-ブテン-3-スルホン酸、2-アクリルアミド-1-メチルプロパンスルホン酸、2-アクリルアミドプロパンスルホン酸、2-アクリルアミド-n-ブタンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-フェニルプロパンスルホン酸、2-((メタ)アクリロイルオキシ)エタンスルホン酸等の不飽和スルホン酸及びこれらの塩等が挙げられる。
スルホン酸(塩)基含有単量体(C)としては2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-((メタ)アクリロイルオキシ)エタンスルホン酸等が好ましい。
【0022】
上記共重合体は、(ポリ)アルキレングリコール系単量体(A)、不飽和カルボン酸系単量体(B)及びスルホン酸(塩)基含有単量体(C)以外のその他の単量体(E)由来の構造単位(e)を有していてもよい。
その他の単量体(E)としては、特に制限されないが、例えば、N-ビニルピロリドン等のN-ビニルラクタム系単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸iso-ノニル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、N-モノメチル(メタ)アクリルアミド、N-モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等のN置換若しくは無置換の(メタ)アクリルアミド;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、インデン、ビニルナフタレン、フェニルマレイミド、ビニルアニリン等のビニルアリール単量体;エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソブチレン、オクテン等のアルケン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のカルボン酸ビニル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルエチレンカーボネート及びその誘導体;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール及びこれらの塩またはこれらの4級化物等の不飽和アミン;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体等が挙げられる。
【0023】
上記共重合体は、(ポリ)アルキレングリコール系単量体(A)由来の構造単位(a)の割合が、全構造単位100質量%に対して10~90質量%であることが好ましい。構造単位(a)の割合が上記好ましい割合であれば、繊維に対してより充分な吸湿性を付与し、繊維の風合いをより向上させることができる。構造単位(a)の割合としてより好ましくは15~90質量%であり、更に好ましくは25~75質量%である。
上記共重合体はまた、構造単位(a)の割合が、構造単位(b)100質量%に対して15~400質量%であることが好ましい。構造単位(b)に対する構造単位(a)の割合が上記好ましい範囲であれは、繊維に付与することができる吸湿性と風合いとのバランスがより良好となる。より好ましくは40~250質量%であり、更に好ましくは100~250質量%である。
【0024】
上記共重合体は、不飽和カルボン酸系単量体(B)由来の構造単位(b)の割合が、全構造単位100質量%に対して10~90質量%であることが好ましい。構造単位(b)の割合が上記好ましい割合であれば、繊維に対してより充分な吸湿性を付与することができる。構造単位(b)の割合としてより好ましくは25~75質量%であり、更に好ましくは25~55質量%である。
【0025】
上記共重合体は、スルホン酸(塩)基含有単量体(C)由来の構造単位(c)の割合が、全構造単位100質量%に対して0~50質量%であることが好ましい。構造単位(c)の割合が上記好ましい割合であれば、繊維に対してより充分な吸湿性を付与することができる。構造単位(c)の割合としてより好ましくは0~30質量%であり、更に好ましくは10~30質量%である。
【0026】
上記共重合体は、その他の単量体(E)由来の構造単位(e)の割合が、全構造単位100モル質量%に対して0~30質量%であることが好ましい。より好ましくは0~15質量%であり、最も好ましくは0モル%である。
【0027】
上記共重合体は、重量平均分子量が5,000~200,000であることが好ましい。重量平均分子量が5,000以上であれば、繊維処理剤を繊維に用いた場合に、繊維処理剤が水に溶けにくくなり、洗濯耐久性により優れることとなる。
重量平均分子量が200,000以下であれば、本発明の繊維処理剤で処理した繊維の肌触りがより向上することとなる。重量平均分子量としてより好ましくは10,000~150,000であり、更に好ましくは20,000~100,000であり、特に好ましくは20,000~80,000である。
共重合体の重量平均分子量は実施例に記載の方法により測定することができる。
【0028】
<共重合体の製造方法>
本発明の繊維処理剤に含まれる共重合体の製造方法は、特に制限されないが、単量体成分を重合することにより製造することができ、単量体成分の具体例及び好ましい例、並びに、各単量体の好ましい割合は、上述のとおりである。
上記重合体の製造方法は、(ポリ)アルキレングリコール系単量体(A)及び不飽和カルボン酸系単量体(B)を含む単量体成分を重合する工程(以下、「重合工程」ともいう)を含むことが好ましい。
【0029】
上記重合工程における、単量体成分の重合を開始する方法としては、特に制限されないが、例えば、重合開始剤を添加する方法、UVを照射する方法、熱を加える方法、光開始剤存在下に光を照射する方法等が挙げられる。
上記重合工程において、重合開始剤を用いることが好ましい。
上記重合開始剤としては、例えば、過酸化水素;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-メチルプロパン)二塩酸塩等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、ジ-t-ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物;アスコルビン酸と過酸化水素、過硫酸塩と金属塩等の、酸化剤と還元剤とを組み合わせてラジカルを発生させる酸化還元型開始剤等が好適である。これらの重合開始剤のうち、残存単量体が減少する傾向にあることから、過酸化水素、過硫酸塩、アゾ系化合物が好ましく、過硫酸塩が最も好ましい。これらの重合開始剤は、単独で使用されてもよく、2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
上記重合開始剤の使用量としては、全単量体の使用量1モルに対して、好ましくは0.1g以上、15g以下であり、より好ましくは1g~12gである。
【0030】
上記重合工程においては、必要に応じて連鎖移動剤を用いても良い。連鎖移動剤として、具体的には、メルカプトエタノール、メルカプトプロピオン酸等のチオール系連鎖移動剤;四塩化炭素、塩化メチレン等のハロゲン化物;イソプロピルアルコール、グリセリン等の、第2級アルコール;次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム等の次亜リン酸(塩)(これらの水和物を含む);亜リン酸、亜リン酸ナトリウム等の亜リン酸(塩);亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸(塩);亜硫酸水素ナトリウム等の重亜硫酸(塩);亜ジチオン酸ナトリウム等の亜ジチオン酸(塩);ピロ亜硫酸カリウム等のピロ亜硫酸(塩)、過酸化水素などが挙げられる。上記連鎖移動剤として好ましくは、次亜リン酸(塩)、重亜硫酸(塩)、過酸化水素である。上記連鎖移動剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
連鎖移動剤の使用量としては、単量体(全単量体)の使用量1モルに対して、0g以上、20g以下であることが好ましく、0g以上、15g以下であることがより好ましい。
【0031】
上記重合工程において、溶媒を使用する場合、溶媒としては水性溶媒が好ましい。水性溶媒としては、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール(2-プロパノール)、n-ブチルアルコール、ジエチレングリコール等のアルコール類、グリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等が挙げられ、好ましくは水である。
単量体の溶媒への溶解性向上のため、必要に応じて、重合に悪影響を及ぼさない範囲で、任意の適切な有機溶媒を適宜加えてもよい。このような有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等の低級ケトン類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;ジメチルホルムアルデヒド等のアミド類等が挙げられる。これらの溶媒は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
溶媒の使用量としては、単量体100質量%に対して40~300質量%が好ましい。
【0032】
上記重合工程において、重合温度は、特に限定されるものではないが、20℃~110℃であることが好ましく、より好ましくは50~105℃であり、更に好ましくは60~105℃である。
また、反応時間は、上記重合反応が完結するように、反応温度や、単量体成分、重合開始剤、及び、溶媒等の種類(性質)や組み合わせ、使用量等に応じて、適宜設定すればよい。
【0033】
上記共重合体の製造方法は、重合反応後に、共重合体を熟成する工程を含むことが好ましい。熟成工程を行うことにより、残存モノマー量を低減することができる。上記熟成工程における温度は特に制限されないが、60~105℃であることが好ましい。上記熟成工程における熟成時間は特に制限されないが、10分~5時間であることが好ましい。より好ましくは30分~3時間である。
【0034】
重合体の中和率を好適な範囲とするために、単量体の原料の一部として不飽和カルボン酸系単量体(B)、スルホン酸(塩)基含有単量体(C)の塩を用いても、重合中、重合後に中和剤として、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物等を添加してもよい。
【0035】
<繊維処理剤>
本発明の繊維処理剤における上記共重合体の含有割合は、特に制限されないが、繊維処理剤100質量%に対して5~50質量%であることが好ましい。より好ましくは10~40質量%であり、更に好ましくは10~30質量%であり、特に好ましくは10~20質量%である。
【0036】
<コーティング剤>
本発明の繊維処理剤は、繊維に留まらず、各種のプラスチック、金属、コンクリート、木材、紙などの材料の表面へのコーティング剤としても用いることができる。
このようなコーティング剤、すなわち、下記式(1);
【0037】
【化3】
【0038】
(式中、R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、又は、メチル基を表す。Rは、水素原子、又は、炭素数1~30の炭化水素基を表す。(AO)は、同一又は異なって、オキシアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1~300の数である。yは、0~2の数を表す。zは、0又は1を表す。)で表される(ポリ)アルキレングリコール系単量体(A)由来の構造単位(a)と不飽和カルボン酸系単量体(B)由来の構造単位(b)とを有する共重合体を含むコーティング剤もまた本発明の1つである。
上記コーティング剤に含まれる好ましい共重合体は、本発明の繊維処理剤に含まれる好ましい共重合体と同様である。
【0039】
上記プラスチックとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリル、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体、トリアセチルセルロース、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどの樹脂成形物およびフィルム等が挙げられる。上記金属としては、鉄、アルミニウム、鋼板、ティンフリースチール板、ブリキ板、ポリエチレンテレフタレートフィルムラミネート鋼板等が挙げられる。本発明のコーティング剤は、材料(基材)の表面に反応点がなくても、共重合体の自己架橋反応、及び/又は、後述する架橋剤を含む場合には共重合体と架橋剤との架橋反応等の複数の化合物の架橋反応によって、各種材料の表面に皮膜を形成することができる。
【0040】
<架橋剤>
本発明の繊維処理剤は、架橋剤を含んでいてもよい。
上記繊維処理剤が架橋剤を含むものである場合、このような繊維処理剤を繊維に処理することにより、繊維上で架橋構造を形成し、繊維処理剤が繊維により充分に固定化されるため、洗濯耐久性が向上する。
上記架橋剤としては、共重合体が有するカルボキシル基及び/又はその他の反応性官能基と反応して架橋構造を形成する限り特に制限されない。
上記共重合体が有するその他の反応性官能基としては、特に制限されないが、スルホン酸基及びこのエステルや塩;アミノ基、水酸基等が挙げられる。
上記架橋剤としては、特に制限されないが、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、フェニレンジアミン、ジエタノールアミン、オキサゾリン基含有ポリマー(株式会社日本触媒製 エポクロス)、ブタンジオール、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0041】
本発明の繊維処理剤は、架橋剤が有する反応性官能基の割合が、上記共重合体が有するカルボキシル基又はその塩100モル%に対して0~50モル%であることが好ましい。より好ましくは0~30モル%であり、更に好ましくは0~20モル%である。
【0042】
<繊維処理剤を用いた繊維の処理方法>
本発明の繊維処理剤を用いた繊維の処理方法は、特に制限されないが、繊維に繊維処理剤を固定化する工程を含むものであることが好ましい。すなわち、本発明は、繊維に繊維処理剤を固定化する工程を含む繊維処理方法でもある。上記繊維処理方法としては、繊維生地を乾燥させる工程(予備乾燥工程)と、乾燥した繊維生地を繊維処理剤の水溶液に浸漬させる工程(浸漬工程)と、繊維生地を脱水する工程(脱水工程)と、繊維生地に繊維処理剤を固定化する工程(固定化工程)とを含むことがより好ましい。
【0043】
上記予備乾燥工程の温度及び時間は特に制限されないが、8~150℃で1~180分間行うことが好ましい。
上記繊維処理剤の水溶液の繊維処理剤の濃度は、特に制限されないが、1~15質量%であることが好ましい。
上記浸漬工程における浸漬時間は、1~30分間が好ましい。
上記脱水工程においては、例えば、脱水機、マングルを用いて脱水を行うことが好ましい。
【0044】
上記処理方法は、脱水工程と固定化工程との間に中乾燥工程を行ってもよい。中乾燥工程は、8~150℃において、1~180分間行うことが好ましい。
上記固定化工程は、例えば、繊維生地がセルロース繊維である場合、好ましくは100~160℃において、1~30分間行うことが好ましい。繊維生地がポリエステル繊維等の合成繊維である場合、100~220℃において、1~30分間行うことが好ましい。
【0045】
本発明の繊維処理剤で処理する繊維としては特に制限されないが、ポリエステルやナイロン等の合成繊維や、キュプラ等の再生セルロース繊維、綿等の天然セルロース繊維等のセルロース繊維等が挙げられる。
本発明の繊維処理剤は、セルロース繊維及び/又はポリエステル繊維に用いられることが好ましい。
このような本発明の繊維処理剤で処理されてなるセルロース繊維及び/又はポリエステル繊維もまた、本発明の1つである。
【発明の効果】
【0046】
本発明の繊維処理剤は、上述の構成よりなり、繊維に対して、充分な吸湿性を付与し、かつ、繊維の風合いを向上させることができるため、ポリエステル等の繊維に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0048】
<重量平均分子量の測定条件(GPC)>
装置:東ソー社製HLC-8320GPC
検出器:RI
カラム:東ソー社製α-2500、α-m
カラム温度:40℃
流速:0.5ml/min.
検量線:ジーエルサイエンス(クラボウ社製)POLYACRYLIC ACID STANDARD
溶離液:0.1N酢酸ナトリウム/アセトニトリル=3/1(質量比)
【0049】
<重合体水溶液の固形分測定方法>
重合反応が終了した時点での重合溶液1gを1gの脱イオン水で希釈して130℃で60分間乾燥させ、その蒸発残分を測定して、以下の計算式より求めた。
固形分(%)=〔乾燥後の蒸発残分(g)/乾燥前の重合溶液の質量(g)〕×100
【0050】
<再生セルロース生地の繊維処理剤による繊維処理>
10cm四方の再生セルロース(キュプラ)試験布を用意し、130℃、60分間の予備乾燥を行い、試験布の質量(X)を測定した。10質量%濃度に調整した繊維処理剤に試験布を浸漬し、試験布に残る繊維処理剤水溶液の量が試験布に対して150±10%となるように脱水を行い、130℃で15分間乾燥させて繊維処理剤を固定化させた。その後、試験布を1回洗濯した後に130℃で60分間乾燥して質量(Y)を測定した。
洗濯後における試験布に対して固定化された繊維処理剤の割合は以下の計算式より算出した。
固定化量(%)=〔(Y/X)-1〕×100
【0051】
<ポリエステル生地の繊維処理剤による繊維処理>
10cm四方のポリエステル試験布を用意し、130℃、60分間の予備乾燥を行い、試験布の質量(X)を測定した。10質量%濃度に調整した繊維処理剤に試験布を浸漬し、試験布に残る繊維処理剤水溶液の量が布に対して100±10%となるように脱水を行い、130℃で5分間乾燥した後に、さらに190℃で1分間乾燥してさせて繊維処理剤を固定化させた。その後、試験布を1回洗濯した後に130℃で60分間乾燥して質量(Y)を測定した。
洗濯後における試験布に対して固定化された繊維処理剤の割合は以下の計算式より算出した。
固定化量(%)=〔(Y/X)-1〕×100
【0052】
<吸湿性評価>
繊維処理した試験布を105℃で2時間乾燥し、質量(M)を測定した。続いて、試験布を秤量瓶に入れ、30℃、相対湿度90%の恒温槽にて保管し、24時間後に取り出して、吸湿後の質量(N)を測定した。吸湿率は以下の計算式で計算した。
吸湿率(吸水率)(%)=〔(N-M)/M〕×100
なお、繊維処理していない布の吸水率は以下の結果であった。
再生セルロース;11.0%
ポリエステル;0.5%
【0053】
<風合い評価>
繊維処理した試験布について、触感により以下の基準にて評価した。
対照は、未処理の布を一回洗濯したものとした。
5:対照よりも非常に柔らかい
4:対照よりもかなり柔らかい
3:対照よりも柔らかい
2:対照と同じ
1:対照よりも柔らかくない
【0054】
<実施例1>
還流冷却管、攪拌機を備えた容量500mLのガラス製セパラブルフラスコに脱イオン水100部を仕込み、攪拌下80℃に昇温した後、メタクリル酸(以下、MAAと略す。)30部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(EO鎖の平均付加モル数2モル、以下PGM-2EOと略す)70部、48%水酸化ナトリウム(以下48%NaOHと略す)10.4部、10%過硫酸ナトリウム水溶液(以下、10%NaPSと略す。)19.3部、10%次亜リン酸ナトリウム・1水和物水溶液(以下、10%SHPと略す。)16.5部をそれぞれ別の滴下口より滴下した。それぞれの滴下時間は、MAAが180分間、PGM-2EOが180分間、48%NaOHが180分間、10%NaPSが210分間、10%SHPが210分間とした。なお、滴下開始はすべて同時とした。10%NaPS滴下終了までの間、温度は80℃を維持した。さらに同温度を10%NaPS滴下終了後30分間にわたって維持して熟成して重合を完結させ、重合体1の水溶液を得た。重合体1の水溶液の固形分濃度は43.2質量%、重量平均分子量は71000であった。
次に、得られた重合体1の水溶液に含まれるカルボキシル基に対して5mol%となるようにオキサゾリン基を有する架橋剤であるエポクロスWS-300(株式会社日本触媒製、オキサゾリン基含有アクリル系重合体、オキサゾリン基量:7.7mmol/g、重量平均分子量:12×10、以下、「WS-300」とも称する。)を加え、さらに脱イオン水を用いて固形分濃度を10質量%に調整し、繊維処理剤(1)を得た。これを用いて、再生セルロース生地及び、ポリエステル生地への繊維処理を行い、吸湿性評価、風合い評価を行った。結果を表1に示した。
【0055】
<実施例2~17及び比較例1、2>
表1及び2に示す処方により、実施例2~17及び比較例1、2の重合体を合成した。これらの重合体に対して、実施例1と同様に、重合体が有するカルボキシル基に対して5mol%となるようにエポクロスWS-300を加え、さらに脱イオン水で固形分濃度を10質量%に調整し、繊維処理剤を得た。これらを用いて、再生セルロース生地、及び、ポリエステル生地への繊維処理を行い、吸湿性評価、風合い評価を行った。結果を表1及び2に示した。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
表1及び2に、略号を用いて記載した化合物は以下のとおりである。
PGM-2EO:メトキシポリエチレングリコール(平均EO付加数2)メタクリレート、Tg=-26℃
PGM-4EO:メトキシポリエチレングリコール(平均EO付加数4)メタクリレート、Tg=-59℃
PGM-9EO:メトキシポリエチレングリコール(平均EO付加数9)メタクリレート、Tg=-60℃
PGM-23EO:メトキシポリエチレングリコール(平均EO付加数23)メタクリレート、Tg=-52℃
PG-8EO:ポリエチレングリコール(平均EO付加数8)メタクリレート、Tg=-65℃
PGM-9EO-A:メトキシポリエチレングリコール(平均EO付加数9)アクリレート、Tg=-58℃
PG-10EO-A:ポリエチレングリコール(平均EO付加数10)アクリレート、Tg=-64℃
AMPS50%水溶液:2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸50%水溶液