(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】伸縮ブーム
(51)【国際特許分類】
B66F 9/06 20060101AFI20220613BHJP
B66F 11/04 20060101ALI20220613BHJP
B66C 23/693 20060101ALI20220613BHJP
E02F 3/39 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
B66F9/06 L
B66F11/04
B66C23/693 L
E02F3/39
(21)【出願番号】P 2017202815
(22)【出願日】2017-10-19
【審査請求日】2020-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000116644
【氏名又は名称】株式会社アイチコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100097984
【氏名又は名称】川野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【氏名又は名称】並木 敏章
(72)【発明者】
【氏名】落合 健二
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 裕也
(72)【発明者】
【氏名】山崎 章浩
(72)【発明者】
【氏名】飯野 智
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-001289(JP,A)
【文献】実公平06-046943(JP,Y2)
【文献】特開昭49-108759(JP,A)
【文献】中国実用新案第204281125(CN,U)
【文献】米国特許第04506480(US,A)
【文献】実公平01-044548(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/00-11/04
B66C 19/00-23/94
E02F 3/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空状に形成された第1ブームと、
中空状に形成されて、前記第1ブーム内に挿入されて前記第1ブームに対して伸縮動自在に設けられる第2ブームと、
前記第2ブーム内に挿入されて前記第2ブームに対して伸縮動自在に設けられる第3ブームと、
前記第1ブームに対して前記第2ブームを伸縮動させる伸縮シリンダと、
前記伸縮シリンダによる前記第1ブームに対する前記第2ブームの伸縮動に応じて、前記第2ブームに対して前記第3ブームを伸縮動させる伸縮機構とを備え、
基端側から先端側へ向かって順に、第1ブーム、第2ブームおよび第3ブームが入れ子式に組み合わされて構成される伸縮ブームであって、
前記伸縮機構は、前記第2ブームの内面側に設けられるベース部材と、前記ベース部材に回転自在に設けられるシーブと
、中間部が前記シーブに掛け回される線材と、
前記第2ブームの外面側から取り付けられる固定部材を有して前記ベース部材を前記第2ブーム
の内面側に固定する固定手段とを
備え、
前記固定手段は、前記シーブの回転中心に対して前記第2ブームの先端側にオフセットした位置に設けられていることを特徴とする伸縮ブーム。
【請求項2】
前記伸縮機構は、前記ベース部材に固定されて前記シーブを回転自在に支持する回転軸部材を備え
、
前記回転軸部材と前記固定部材とが別体で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の伸縮ブーム。
【請求項3】
前記第2ブームの先端側の内面には、前記第2ブームに対する前記第3ブームの伸縮動を案内する一対の案内部材が前記伸縮方向および前記シーブの回転中心軸方向と略直交する方向に所定の間隔をおいて設けられており、
前記固定手段は、前記一対の案内部材の間に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の伸縮ブーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高所作業車などの車体上に備えられた伸縮ブームに関する。
【背景技術】
【0002】
高所作業車は、一般的に、車体上に起伏動、伸縮動および旋回動可能に設けられた伸縮ブームの先端部に作業者搭乗用の作業台を有して構成され、該作業台に搭乗した作業者が該作業台に備えられた操作装置を操作することにより、伸縮ブームを作動させて作業台を所望の高所位置へ移動させて作業を行うことができるようになっている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
上記特許文献に記載の伸縮ブームは、基端ブーム、中間ブーム、先端ブームが入れ子式に組み合わされた三段伸縮式のブームとして構成されている。この伸縮ブームには、基端ブームに対して中間ブームを伸縮動させる伸縮シリンダと、この中間ブームの伸縮動に連動して中間ブームに対して先端ブームを伸縮動させる伸縮機構とが備えられている。伸縮機構は、伸長機構部と縮小機構部とからなり、それぞれの機構部が中間ブームに回転自在に設けられたシーブにワイヤを掛け回し、該ワイヤを基端ブームと先端ブームとにそれぞれ接続する構成となっており、上記伸縮シリンダの伸縮動をシーブを介してワイヤに伝達することで、先端ブームを中間ブームに対して伸縮動させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献に記載の伸縮ブームにおいて、伸長機構部のシーブ取付構造は、シーブの回転軸となるシーブピンを中間ブームの側壁に直接固定する構成となっている。このとき、シーブピンの一部が中間ブームの側壁外方に出っ張ってしまうため、中間ブームをこの出っ張り部分以上に基端ブーム内に収納することができず、伸縮ブームの縮小時において基端ブームに対する中間ブームの突出量(飛び出し量)がその分だけ増大し、全縮状態における伸縮ブームの全長を小さく抑えることができないという課題がある。なお、上記の中間ブームの突出量を低減させるため、シーブを更に中間ブームの先端側に移設することが考えられるが、中間ブームの最先端部に先端ブームの伸縮動を案内するためのスライダが複数配設されるため、シーブを移設するとスライダに干渉してしまい、シーブの配設スペースを確保できないという問題がある。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、全縮状態におけるブームの全長を小さく抑えることができる伸縮ブームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る伸縮ブームは、中空状に形成された第1ブームと、中空状に形成されて、前記第1ブーム内に挿入されて前記第1ブームに対して伸縮動自在に設けられる第2ブームと、前記第2ブーム内に挿入されて前記第2ブームに対して伸縮動自在に設けられる第3ブームと、前記第1ブームに対して前記第2ブームを伸縮動させる伸縮シリンダと、前記伸縮シリンダによる前記第1ブームに対する前記第2ブームの伸縮動に応じて、前記第2ブームに対して前記第3ブームを伸縮動させる伸縮機構とを備え、基端側から先端側へ向かって順に、第1ブーム、第2ブームおよび第3ブームが入れ子式に組み合わされて構成される伸縮ブームであって、前記伸縮機構は、前記第2ブームの内面側に設けられるベース部材と、前記ベース部材に回転自在に設けられるシーブと、中間部が前記シーブに掛け回される線材と、前記第2ブームの外面側から取り付けられる固定部材を有して前記ベース部材を前記第2ブームの内面側に固定する固定手段とを有し、前記固定手段は、前記シーブの回転中心に対して前記第2ブームの先端側にオフセットした位置に設けられていることを特徴とする。
【0008】
なお、上記構成の伸縮ブームにおいて、前記伸縮機構は、前記ベース部材に固定されて前記シーブを回転自在に支持する回転軸部材を備え、前記回転軸部材と前記固定部材とが別体で構成されていることが好ましい。
【0009】
また、上記構成の伸縮ブームにおいて、前記第2ブームの先端側の内面には、前記第2ブームに対する前記第3ブームの伸縮動を案内する一対の案内部材が前記伸縮方向および前記シーブの回転中心軸方向と略直交する方向に所定の間隔をおいて設けられており、前記固定手段は、前記一対の案内部材の間に配置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る伸縮ブームによれば、シーブ取付構造の固定手段がシーブの回転中心に対して第2ブームの先端側にオフセットした位置に設けられているため、そのオフセット量の分だけ、伸縮ブームを全縮状態(最も縮小させた状態)としたときの第1ブームに対する第2ブームの突出量(飛び出し量)を縮小させることが可能となる。従って、当該全縮状態での伸縮ブームの長さを短小化することが可能となり、ひいては車両全体の小型化を図ることができる。一方、全縮状態での伸縮ブームの長さを従来と同一としながらも、第1ブームの長さを従来よりも上記オフセット量の分だけ延長することも可能であり(上記オフセット量の分だけ延長しても両ブームは干渉しないため)、その場合には、第1ブームに対して第2ブームを伸長させたときのラップ長(両ブームが重なる部分)を増大させることができ、それによれば第1ブームの外面と第2ブームの内面との間に配された案内部材(第1ブームの先端側内面に配された案内部材、および、第2ブームの後端側外面に配された案内部材)に作用する負荷反力(荷重)を軽減させることが可能となる。
【0011】
また、上記構成の伸縮ブームにおいて、従来は回転軸部材および固定部材として兼用していた単一のシーブピンを、第1シーブピン(回転軸部材)と第2シーブピン(固定部材)とで別体として構成したことで、シーブ(第1シーブピン)は従来の取付位置のままで、固定部材(第2シーブピン)のみを第2ブームの先端側にオフセットして一対の案内部材の間に配置することができるため、第2ブームの先端開口付近の限られたスペースを有効に活用して、シーブ取付構造を効率良くレイアウトすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係る伸縮ブームを備えた高所作業車の側面図である。
【
図2】上記伸縮ブームに備えられた伸縮機構を説明するための模式図である。
【
図3】上記伸縮ブームを構成する中間ブーム(スライダが取り付けられた状態)を先端側から見た斜視図である。
【
図4】上記中間ブーム(スライダが取り外された状態)を先端側から見た斜視図である。
【
図5】上記中間ブームに備えられたシーブ取付構造の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。
図1に本実施形態に係る伸縮ブーム30を備えた高所作業車1を示しており、まず、この図を参照して高所
作業車1の全体構成について概要説明する。
【0014】
高所作業車1は、走行用のタイヤ車輪11を備えて運転キャブ12から走行運転操作が可能なトラック式車両の車体10と、この車体10上に設けられた旋回台20と、この旋回台20から上方に延びて設けられた支柱21の上部にフートピン22を介して基端部が支持された伸縮ブーム30と、この伸縮ブーム30の先端部に取り付けられた作業者搭乗用の作業台40とを有して構成される。
【0015】
旋回台20は、車体10の後部に上下軸回り360度回動自在に取り付けられている。車体10の内部には旋回モータ23が設けられており、この旋回モータ23を回転駆動させることにより、図示しないギヤを介して旋回台20を水平旋回動させることができる。
【0016】
伸縮ブーム30は、旋回台20側から順に、基端ブーム31、中間ブーム32及び先端ブーム33が入れ子式に組み立てられた構成を有しており、その内部に設けられた伸縮シリンダ38の伸縮駆動により、基端ブーム31に対して中間ブーム32及び先端ブーム33を相対的に移動させて、伸縮ブーム30を軸方向に伸縮動させることができる。また、基端ブーム31と旋回台20の支柱21との間には起伏シリンダ24が跨設されており、この起伏シリンダ24を伸縮駆動させることにより伸縮ブーム30全体を上下面内で起伏動させることができる。
【0017】
先端ブーム33の先端部には、ブームヘッド34が取り付けられている。このブームヘッド34には、垂直ポスト36が揺動ピン35を介して上下方向に揺動自在に枢支されている。垂直ポスト36は、先端ブーム33との間に配設されたレベリング装置(図示しない)により揺動制御が行われ、伸縮ブーム30の起伏の如何に拘らずこの垂直ポスト36が常時垂直姿勢に保持される構成となっている。
【0018】
作業台40は、作業者が搭乗する略箱状形状の作業台本体41と、この作業台本体41から外方へ突出して設けられた作業台ブラケット42とを有して構成される。作業台ブラケット42は、垂直ポスト36の上端部に回動自在に取り付けられている。作業台ブラケット42の内部には首振りモータ43が設けられており、この首振りモータ43を回転駆動させることにより、作業台40全体を垂直ポスト36まわりに首振り動(水平旋回動)させることができる。ここで、垂直ポスト36は、上述のように常時垂直姿勢が保たれるため、結果として作業台40の床面は伸縮ブーム30の起伏角度によらず常時水平に保持される。また、作業台40には、これに搭乗した作業者が操作する上部操作装置44が設けられている。そのため、作業台40に搭乗した作業者は、上部操作装置44を操作することにより、起伏シリンダ24の伸縮作動、伸縮シリンダ38の伸縮作動、旋回モータ23の回転作動、及び首振りモータ43の回転作動などの各操作を行うことができる。
【0019】
車体10の前後左右には、伸縮ブーム30等を用いて高所作業を行うときに車両を安定支持させるための4つのアウトリガジャッキ13が設けられている。各アウトリガジャッキ13は、上下方向に延びるアウタージャッキ13aと、このアウタージャッキ13a内に設けられて上下方向に伸縮自在なインナージャッキ13bと、インナージャッキ13bの下端部に揺動自在に取り付けられたジャッキパッド13cとを有して構成される。各アウトリガジャッキ13は、その内部に設けられたジャッキシリンダ(図示せず)を駆動させて下方に伸長させることで車体10を持ち上げ支持し、これにより車両を安定させた状態とする。なお、車体10には、各アウトリガジャッキ13の作動操作を行うためのジャッキ操作装置14が設けられている。
【0020】
次に、本実施形態に係る伸縮ブーム30の構造について、
図2を追加参照して詳しく説明する。
【0021】
伸縮ブーム30は、支柱21の上部に枢結される基端ブーム31と、基端ブーム31内に伸縮動自在に挿入された中間ブーム32と、中間ブーム32内に伸縮動自在に挿入された先端ブーム33とが入れ子式に組み合わされて構成される。各ブーム31,32,33は中空空間を有した矩形筒状に形成されており、これらの部材の内部を軸方向に連通する中空空間内には、上記の伸縮シリンダ38と、この伸縮シリンダ38に連動作動する一対の伸縮機構50とが配設されている。
【0022】
伸縮シリンダ38は、シリンダチューブ38aとピストンロッド38bとが軸方向に相対移動可能に組み付けられて構成されている。この伸縮シリンダ38は、シリンダチューブ38aの端部が中間ブーム32の基端部に支軸39aを介して枢結され、ピストンロッド38bの端部が基端ブーム31の基端部に支軸39bを介して枢結されている。この伸縮シリンダ38を油圧駆動させることで、中間ブーム32を基端ブーム31に対して伸縮動させることができる。
【0023】
伸縮機構50は、伸縮シリンダ38による基端ブーム31に対する中間ブーム32の伸縮動に連動して、先端ブーム33を中間ブーム32に対して伸縮動させるものである。この伸縮機構50は、先端ブーム33を中間ブーム32に対して伸長させる伸長機構部51と、先端ブーム33を中間ブーム32に対して縮小させる縮小機構部55とを有する。
【0024】
伸長機構部51は、中間ブーム32の先端内側に回転自在に設けられる伸シーブ52と、この伸シーブ52に掛け回される伸ワイヤ53とを有して構成される。伸ワイヤ53は、一端部が基端ブーム31の後端側に形成された第1伸ワイヤ接続部54aに接続され、他端部が先端ブーム33の後端側に形成された第2伸ワイヤ接続部54bに接続される。なお、本実施形態では、伸シーブ52の取付構造(シーブ取付構造)に特徴があり、それについては後述する。
【0025】
縮小機構部55は、中間ブーム32の後端側に回転自在に設けられる縮シーブ56と、この縮シーブ56に掛け回される縮ワイヤ57とを有して構成される。縮ワイヤ57は、一端部が基端ブーム31の先端側に形成された第1縮ワイヤ接続部58aに接続され、他端部が先端ブーム33の後端側に形成された第2縮ワイヤ接続部58bに接続される。
【0026】
本実施形態の伸縮ブーム30において、伸縮シリンダ38を伸長させると、中間ブーム32が基端ブーム31に対して前方(伸長方向)に移動して、中間ブーム32に設けられた伸シーブ52がこれに巻き掛けられた伸ワイヤ53を前方に向けて押動することで、この伸ワイヤ53の他端部(第2伸ワイヤ接続部54b)に接続された先端ブーム33が引張されて前方へと移動する。このとき、基端ブーム31を基準とする先端ブーム33の相対的な移動量(伸長量)は、動滑車の原理に基づき、基端ブーム31を基準とする中間ブーム32の相対的な移動量(伸長量)の二倍となる。そのため、この伸縮ブーム30の伸長作動においては、中間ブーム32は基端ブーム31に対して、先端ブーム33は中間ブーム32に対して、それぞれ同じ長さ分だけ伸長移動して前方に突出する。
【0027】
一方、伸縮シリンダ38を縮小させると、中間ブーム32が基端ブーム31に対して後方(縮小方向)に移動して、中間ブーム32に設けられた縮シーブ56がこれに巻き掛けられた縮ワイヤ57を後方に向けて押動することで、この縮ワイヤ57の他端部(第2縮ワイヤ接続部58b)に接続された先端ブーム33が引張されて後方へと移動する。このとき、基端ブーム31を基準とする先端ブーム33の相対的な移動量(縮小量)は、動滑車の原理に基づき、基端ブーム31を基準とする中間ブーム32の相対的な移動量(縮小量)の二倍となる。そのため、この伸縮ブーム30の縮小作動においては、中間ブーム32は基端ブーム31に対して、先端ブーム33は中間ブーム32に対して、それぞれ同じ
長さ分だけ縮小移動して後方に格納される。
【0028】
続いて、本実施形態のシーブ取付構造(伸シーブ52の取付構造)について、
図3~
図5を追加参照して詳しく説明する。なお、以下では、説明の便宜上、
図3~
図5に示す矢印方向を基準として、上下、左右、前後方向を規定する。本実施形態においては、上記の三段式のブーム31,32,33のうち、中間ブーム32にシーブ取付構造が適用されている。この中間ブーム32は、左右に対向する一対の側壁321と、左右の側壁321の上端同士を繋ぐ上壁322と、左右の側壁321の下端同士を繋ぐ下壁323とを備え、全体として前後方向に開放された中空空間324を有する矩形筒状に形成されている。
【0029】
シーブ取付構造は、上記の伸シーブ52と、伸シーブ52を回転自在に軸支するブラケット60と、ブラケット60を中間ブーム32の側壁321に固定する固定機構70とを主体に構成されている。
【0030】
ブラケット60は、例えば金属鋼板を用いて平板状に形成されており、後述の固定機構70により中間ブーム32の側壁321の内面側に固定される。ブラケット60には、伸シーブ52の回転軸となる第1シーブピン61が設けられている。
【0031】
第1シーブピン61は、ブラケット60に固設された円筒状の外側回転軸部61aと、この回転軸部61aに不図示のボルトにて同軸的に結合する円筒状の内側回転軸部61bとからなる。各回転軸部61a,61bの外周面は、伸シーブ52の中心孔52aに挿入されて該中心孔52aの内周面に摺接可能に形成されている。伸シーブ52は、両回転軸部61a,61bの鍔部の間に挟み込まれた状態で両方向に回転自在に支持されており、その外周面には上記の伸ワイヤ53が掛け回されるようになっている。この伸シーブ52の上方および下方には、該伸シーブ52に掛け回された伸ワイヤ53の外れ止めとして作用する外れ止め突起62がブラケット60上に固設されている。
【0032】
固定機構70は、ブラケット60に固設された矩形ブロック状のピン保持部71と、ピン保持部71内に挿入される円筒状の第2シーブピン72と、ピン保持部71に凹設された矩形溝71bに係止される板状のプレートナット73と、プレートナット73に螺合して第2シーブピン72をピン保持部71に締結させる複数本の固定ボルト74とを備えて構成される。この固定機構70は、中間ブーム32の側壁321上において、伸シーブ52の回転中心よりも前方側(中間ブーム32の先端側)にオフセットした位置に取り付けられている。
【0033】
ピン保持部71には、断面円形状のピン挿入孔71aが左右方向に貫通形成されている。このピン挿入孔71aは、中間ブーム32の側壁321に貫通形成された断面円形状のピン挿入開口321aと位置整合しており、このピン挿入開口321aと協働して左右方向に連続的に延びる円筒状の受容空間(第2シーブピン72を受容するための空間)を形成している。なお、ピン挿入孔71aは、ピン挿入開口321aとほぼ同一の孔径に形成されている。そして、このピン挿入孔71aとピン挿入開口321aとに跨って、固定軸となる第2シーブピン72が挿入される。ここで、ピン保持部71と伸シーブ52とは軸方向(前後方向)にずれて配置されており、ピン保持部71の外周面と伸シーブ52の外周面との間には所定の隙間が形成されている。この所定の隙間を、伸シーブ52と外れ止め突起62との隙間位の大きさに設定することで、ピン保持部71を伸ワイヤ53の外れ止めとして機能させてもよい。
【0034】
第2シーブピン72は、伸シーブ52に掛け回された伸ワイヤ53の張力(換言すれば該張力により取付機構70に作用するせん断力)を受ける部材である。第2シーブピン72は、ピン挿入孔71aに挿入される円筒状のピン本体部72aと、中間ブーム32の側
壁321の外面に係止される円盤状のピン鍔部72bとを有し、全体として左右方向に延びる段付き円筒状に形成されている。第2シーブピン72には、左右方向に貫通された一対のボルト挿通孔72cが形成されており、このボルト挿通孔72cに固定ボルト74が挿通可能になっている。ピン本体部72aの端面は、ピン保持部71のピン挿入孔71aに挿入された状態で矩形溝71bの内面と略面一となる。
【0035】
ナットプレート73は、前後方向に延びる横長の平板状に形成されており、その板厚方向(左右方向)に貫通して固定ボルト74に螺合する一対のネジ孔73aを有している。このナットプレート73に形成された一対のネジ孔73aは、第2シーブピン72に形成された一対のボルト挿通孔72cと同じピッチで配設されている。ナットプレート73は、ピン保持部71に凹設された矩形溝71b内に受容可能に形成されており、第2シーブピン72に挿通された二本の固定ボルトが螺合するようになっている。このように第2シーブピン72とナットプレート73とが固定ボルト74により締結されることで、第2シーブピン72のピン鍔部72bとナットプレート73との間に、中間ブーム32の側壁321とブラケット60とが挟持され、それにより中間ブーム32の側壁321にブラケット60が固定されるようになっている。
【0036】
なお、中間ブーム32の先端開口の近傍には、中間ブーム32に対する先端ブーム33の伸縮動を案内するためのスライダ群が取り付けられている。このスライダ群は、各側壁321の内面側の上下に設けられた側面スライダ81と、上壁322の内面側に設けられた上面スライダ82と、下壁323の内面側に設けられた下面スライダ83とを備えている。各スライダ81~83は、合成樹脂材を用いて前後方向に延びる略直方体状に形成されている。また、各スライダ81~83は、先端ブーム33の外面と摺接可能に形成されており、先端ブーム33の前後移動(直線移動)を案内する。ここで、上下の側面スライダ81の間には、伸シーブ52を取り付ける程の空きスペースは残されていないが、固定機構70を取り付ける程の空きスペースは確保されている。そのため、この上下の側面スライダ81の間に、固定機構70を配置することで、この固定機構70を伸シーブ52の回転中心(第1シーブピン61)に対して中間ブーム32の先端側にオフセットすることが可能となっている。
【0037】
次に、本実施形態におけるシーブ取付構造の作用として、伸シーブ52の取付手順について説明する。なお、この伸シーブ52の取付作業は、中間ブーム32と先端ブーム33とが入れ子式に組み合わされた状態で実施される。
【0038】
まず始めに、伸シーブ52の外周面に伸ワイヤ53を掛け回す。次いで、伸シーブ52の中心孔52aに外側回転軸部61aおよび内側回転軸部61bを左右から挿入して、両回転軸部61a,61bを不図示のボルトで締結することで、この第1シーブピン61(61a,61b)を介して伸シーブ52をブラケット60に取り付ける。続いて、このブラケット60を中間ブーム32の内面と先端ブーム33の外面との隙間から挿入して、中間ブーム32の側壁321に宛がう。そして、ノックボルト63を左右外方から側壁321の貫通孔に挿入した後、更にブラケット60の貫通孔にも挿入してナット64に螺合させることで、このノックボルト63を用いてブラケット60を側壁321に仮止めする(位置決めする)。次いで、ブラケット60をノックボルト63回りに上下に揺動させて、ブラケット60に形成されたピン挿入孔71aと中間ブーム32の側壁321に形成されたピン挿入開口321aとを位置合わせする。
【0039】
続いて、第2シーブピン72を左右外方から側壁321のピン挿入開口321aに挿入した後、更にピン保持部71のピン挿入孔71aにも挿入する。このように第2シーブピン72を挿入した後、ナットプレート73を中間ブーム32の内面と先端ブーム33の外面との隙間から挿入して、ピン保持部71の矩形溝71bに係止させる。こうしてナット
プレート73を矩形溝71bに係止させた状態で、固定ボルト74をバネ座金75および平座金76を通して第2シーブピン72のボルト挿通孔72cに挿入してナットプレート73に螺合させることで、第2シーブピン72のピン鍔部72bとナットプレート73との間に、中間ブーム32の側壁321およびブラケット60を挟み込んで両者を固定する。それにより、伸シーブ52が中間ブーム32の側壁321にブラケット60を介して取り付けられ、中間ブーム32の先端開口付近の所定位置に配置される。
【0040】
ここで、固定機構70の構成要素のうち、第2シーブピン72の鍔部72bと固定ボルト74の頭部は、中間ブーム32の側壁321よりも外側に出っ張ってしまう。しかしながら、この固定機構70は、伸シーブ52の取付位置(回転中心)よりも前方側にオフセットした位置に取り付けられるため、そのオフセット量の分だけ、伸縮ブーム30を全縮状態(最も縮小させた状態)としたときの基端ブーム31に対する中間ブーム32の突出量(飛び出し量)を縮小させることができる。また、このように固定機構70が中間ブーム32の先端開口付近に配置されるため、該先端開口部から中間ブーム32の内面と先端ブーム33の外面との隙間に手指を挿入して、この固定機構70の取付作業を容易に行うことが可能となる(作業性が向上する)。
【0041】
こうして伸シーブ52を中間ブーム32に取り付けた後、この中間ブーム32の先端開口部に上下左右のスライダ81~83をボルト(図示せず)にて取り付ける。また、図示省略するが、中間ブーム32の最先端部には、中間ブーム32の内面と先端ブーム33の外面との隙間に異物等が侵入するのを防止するためのスイーパが取り付けられる。それにより、伸縮ブーム30の安全且つ確実な伸縮動が確保される。
【0042】
なお、上記のノックボルト63は、中間ブーム32に対するブラケット60の位置決め用として機能するだけでなく、ブラケット60の回り止め(回転阻止手段)としても機能する。すなわち、第2シーブピン72のみでブラケット60を固定した場合、伸ワイヤ53の張力等を受けて、ブラケット60が第2シーブピン72を中心に供回りしてしまうおそれがあるが、ノックボルト63もブラケット60に締結して二点で固定することで、ブラケット60が回り止めされる。但し、基本的に伸ワイヤ53の張力はほぼ軸方向(前後方向)に作用するため、伸シーブ52の軸心と第2シーブピン72の軸心とを同一の高さ位置に設定しておけば、回り止めは不要である。
【0043】
以上、本実施形態に係る伸縮ブーム30によれば、シーブ取付構造の固定機構が伸シーブ52の回転中心に対して中間ブーム32の先端側にオフセットした位置に設けられているため、そのオフセット量の分だけ、伸縮ブーム30を全縮状態(最も縮小させた状態)としたときの基端ブーム31に対する中間ブーム32の突出量(飛び出し量)を縮小させることが可能となる。従って、当該全縮状態での伸縮ブーム30の長さを短小化することが可能となり、ひいては車両全体の小型化を図ることができる。一方、全縮状態での伸縮ブーム30の長さを従来と同一としながらも、基端ブーム31の長さを従来よりも上記オフセット量の分だけ延長することも可能であり(上記オフセット量の分だけ延長しても両ブームは干渉しないため)、その場合には、基端ブーム31に対して中間ブーム32を伸長させたときのラップ長(両ブームが重なる部分)を増大させることができ、それによれば基端ブーム31の外面と中間ブーム32の内面との間に配されたスライダ(基端ブーム31の先端側内面に配されたスライダ、および、中間ブーム32の後端側外面に配されたスライダ)に作用する負荷反力(荷重)を軽減させることが可能となる。
【0044】
また、従来は回転軸および固定軸として兼用していた単一のシーブピンを、第1シーブピン(回転軸)61と第2シーブピン(固定軸)72とで別体として構成したことで、伸シーブ52(第1シーブピン61)は従来の取付位置のままで、固定機構70(第2シーブピン72)のみを中間ブーム32の先端側にオフセットして一対のスライダ81の間に
配置することができるため、中間ブーム32の先端開口付近の限られたスペースを有効に活用して、シーブ取付構造を効率良くレイアウトすることが可能となる。
【0045】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば適宜改良可能である。
【0046】
上記実施形態では、伸縮ブーム30を第1ブーム(基端ブーム31)、第2ブーム(中間ブーム32)、第3ブーム(先端ブーム33)からなる三段伸縮式として構成したが、四段以上の多段伸縮式として構成してもよい。例えば、基端側から先端側に向かって順に、第1ブーム、第2ブーム、第3ブーム、第4ブームからなる四段伸縮式の伸縮ブームとして構成した場合に、第2ブームおよび第3ブームの少なくとも一方にシーブ取付構造を適用してもよい。すなわち、複数段のブームのうち、最先端側のブームと最基端側のブームとを除く、その中間に配される全てのブームにシーブ取付構造は適用可能である。
【0047】
また、上記実施形態では、シーブ取付構造の対象シーブとして伸シーブ52を適用した場合を例示して説明したが、この構成に限定されるものではなく、シーブ取付構造の対象シーブとして縮シーブ56を適用してもよい。
【0048】
上記実施形態では、伸シーブ52が軸支されたブラケット60を第2シーブピン72にて中間ブーム32に固定し、伸シーブ52に巻き掛けられた伸ワイヤ53の張力を第2シーブピン72で受ける構成を例示して説明したが、この構成に限定されるものではなく、第2シーブピン72の代わりに、他の固定手段を用いてブラケット60を固定するものであってもよい。なお、第2シーブピン72の断面形状は円形に限定されるものではなく、例えば矩形状やカム形状など他の形状を採用してもよい。
【0049】
上記実施形態では、伸縮ブーム式の作業車として、伸縮ブームの先端部に作業者搭乗用の作業台を備えた高所作業車を例示して説明したが、この構成に限定されるものではなく、例えば、伸縮ブームの先端部に懸吊装置を備えたクレーン車や、伸縮ブームの先端部にアースオーガ装置を備えた穴掘り建柱車、伸縮ブームの先端部に設けられた作業台上にて走行操作およびブーム操作等が可能な自走式高所作業車、伸縮ブームを備えて道路走行および軌道走行が可能な軌陸車等の他の作業車に適用してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 高所作業車
30 伸縮ブーム
31 基端ブーム(第1ブーム)
32 中間ブーム(第2ブーム)
33 先端ブーム(第3ブーム)
39 伸縮シリンダ
40 作業台
50 伸縮機構
51 伸長機構部
52 伸シーブ(シーブ)
53 伸ワイヤ(線材)
55 縮小機構部
60 ブラケット(ベース部材)
61 第1シーブピン(回転軸部材)
70 固定機構(固定手段)
71 ピン保持部
72 第2シーブピン(固定部材)
73 ナットプレート
74 固定ボルト
81 側面スライダ(案内部材)
82 上面スライダ(案内部材)
83 下面スライダ(案内部材)
321 側壁
322 上壁
323 下壁
324 中空空間