IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アイチコーポレーションの特許一覧

<>
  • 特許-高所作業車の安全装置 図1
  • 特許-高所作業車の安全装置 図2
  • 特許-高所作業車の安全装置 図3
  • 特許-高所作業車の安全装置 図4
  • 特許-高所作業車の安全装置 図5
  • 特許-高所作業車の安全装置 図6
  • 特許-高所作業車の安全装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】高所作業車の安全装置
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/24 20060101AFI20220613BHJP
   B66F 9/06 20060101ALI20220613BHJP
   B66F 11/04 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
B66F9/24 H
B66F9/06 L
B66F11/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018024342
(22)【出願日】2018-02-14
(65)【公開番号】P2019137541
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2020-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000116644
【氏名又は名称】株式会社アイチコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(72)【発明者】
【氏名】大葉 孝明
(72)【発明者】
【氏名】八鍬 政和
(72)【発明者】
【氏名】金澤 隆雄
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-281296(JP,A)
【文献】特開2001-180900(JP,A)
【文献】特開平10-297886(JP,A)
【文献】特開2003-321196(JP,A)
【文献】特開2001-348200(JP,A)
【文献】特開平10-167698(JP,A)
【文献】特開2001-206698(JP,A)
【文献】特開2001-097700(JP,A)
【文献】特開2012-096859(JP,A)
【文献】米国特許第04456093(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/00 - 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能な車体と、
前記車体に対して旋回、起伏および伸縮作動が自在に設けられたブームと、
前記ブームを旋回、起伏および伸縮作動させるブームアクチュエータと、
前記ブームの先端部に旋回自在に支持された作業台と、
前記作業台を前記ブームに対して旋回作動させる作業台アクチュエータとを備える高所作業車の安全装置において、
前記ブームアクチュエータおよび前記作業台アクチュエータにより作動されて変化する前記ブームおよび前記作業台の前記車体の位置を基準として表される作動位置を検出する作動位置検出手段と、
前記車体の側方における所定設定位置に略垂直に延びる垂直規制面を設定する規制面設定手段と、
前記作動位置検出手段により検出された前記ブームおよび前記作業台の前記作動位置に基づいて、前記高所作業車が位置する路面から所定高さ位置までは、前記作業台の外側部が前記垂直規制面を超えて前記車体の側方外方に移動する前記ブームアクチュエータおよび前記作業台アクチュエータの作動を規制し、前記所定高さ位置よりも上方位置では、前記ブームの先端部が前記垂直規制面を超えて前記車体の側方外方に移動する前記ブームアクチュエータの作動を規制する一方、前記作業台の外側部が前記垂直規制面を超えて前記車体の側方外方に移動する前記作業台アクチュエータの作動を許容するアクチュエータ制御手段とを備えることを特徴とする高所作業車の安全装置。
【請求項2】
前記車体に設けられ、前記車体の側方に張り出した状態で下方に伸長して前記車体を支持可能なジャッキ装置を備え、
前記規制面設定手段は、前記ジャッキ装置の前記車体側方への張り出し量に応じて前記垂直規制面を設定することを特徴とする請求項1に記載の高所作業車の安全装置。
【請求項3】
前記規制面設定手段は、作業者による操作入力により前記垂直規制面を任意に設定可能に構成されることを特徴とする請求項1に記載の高所作業車の安全装置。
【請求項4】
前記アクチュエータ制御手段により前記ブームアクチュエータおよび前記作業台アクチュエータの少なくとも一方の作動が規制されたときに警報作動を行う警報装置を備えることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の高所作業車の安全装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブームの先端部に作業台を備えた高所作業車の安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高所作業車の一例として、運転キャブを前部に有して走行可能なトラック車両をベースに構成され、その車体上に水平旋回可能に設けられた旋回台と、その旋回台に起伏および伸縮可能に設けられたブームと、そのブームの先端部に旋回可能に支持された作業台とを備えた高所作業車が知られている(例えば、特許文献1を参照)。このような高所作業車は、電線工事、道路トンネル内の保守点検作業、橋梁の保守点検作業等の種々の作業現場で用いられている。例えば、トンネル内の保守点検作業に用いられる高所作業車では、ブームを旋回、起伏および伸縮作動させるとともに、作業台をブームに対して旋回作動させることにより、作業台をトンネル内の壁面や天井部の作業対象箇所に近づけて保守点検作業を行うように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001‐97700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなトンネル内の保守点検作業に用いられる高所作業車では、隣の車線を車両が通行している状態で作業を行う場合がある。そのため、ブームおよび作業台が隣の車線にはみ出さないようにブームおよび作業台の作動を制御する構成のものがある。ところで、道路法によって道路を通行できる車両の高さの最高限度が定められている。この最高限度よりも上方位置であれば、作業台がはみ出しても安全上の問題はないが、従来の高所作業車では、隣の車線の上方空間全てにおいてブームおよび作業台がはみ出さないように作動制御される構成であった。そのため、トンネルの天井中央付近の作業が行い難い場合があり、作業効率が悪いという課題があった。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、隣の車線を通行している車両に対する安全性を保ちつつ、作業範囲を極力広くして作業効率を向上させることができる高所作業車の安全装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る高所作業車の安全装置は、走行可能な車体と、前記車体に対して旋回、起伏および伸縮作動が自在に設けられたブームと、前記ブームを旋回、起伏および伸縮作動させるブームアクチュエータ(例えば、実施形態におけるブーム旋回モータ6、ブーム起伏シリンダ25、ブーム伸縮シリンダ26)と、前記ブームの先端部に旋回自在に支持された作業台と、前記作業台を前記ブームに対して旋回作動させる作業台アクチュエータ(例えば、実施形態における作業台旋回モータ36)とを備える。その上で、前記ブームアクチュエータおよび前記作業台アクチュエータにより作動されて変化する前記ブームおよび前記作業台の前記車体の位置を基準として表される作動位置を検出する作動位置検出手段(ブーム旋回角度検出器61、ブーム起伏角度検出器62、ブーム長さ検出器63、作業台旋回角度検出器64、演算処理部51)と、前記車体の側方における所定設定位置に略垂直に延びる垂直規制面を設定する規制面設定手段(例えば、実施形態における規制領域設定部53)と、前記作動位置検出手段により検出された前記ブームおよび前記作業台の前記作動位置に基づいて、前記高所作業車が位置する路面から所定高さ位置までは、前記作業台の外側部が前記垂直規制面を超えて前記車体の側方外方に移動する前記ブームアクチュエータおよび前記作業台アクチュエータの作動を規制し、前記所定高さ位置よりも上方位置では、前記ブームの先端部が前記垂直規制面を超えて前記車体の側方外方に移動する前記ブームアクチュエータの作動を規制する一方、前記作業台の外側部が前記垂直規制面を超えて前記車体の側方外方に移動する前記作業台アクチュエータの作動を許容するアクチュエータ制御手段(例えば、実施形態における作動制御部54)とを備えて構成される。
【0007】
上記構成の高所作業車の安全装置において、前記車体に設けられ、前記車体の側方に張り出した状態で下方に伸長して前記車体を支持可能なジャッキ装置(例えば、実施形態におけるローラージャッキ10)を備え、前記規制面設定手段は、前記ジャッキ装置の前記車体側方への張り出し量に応じて前記垂直規制面を設定するように構成されることが好ましい。
【0008】
上記構成の高所作業車の安全装置において、前記規制面設定手段は、作業者による操作入力により前記垂直規制面を任意に設定可能に構成されることが好ましい。
【0009】
上記構成の高所作業車の安全装置において、前記アクチュエータ制御手段により前記ブームアクチュエータおよび前記作業台アクチュエータの少なくとも一方の作動が規制されたときに警報作動を行う警報装置(例えば、実施形態における警報ランプ77、警報ブザー78)を備えて構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る高所作業車の安全装置によれば、高所作業車が位置する路面から所定高さ位置を超えた上方位置では、ブームが車体側方の垂直規制面を超えて外方に移動するブームアクチュエータの作動を規制する一方、作業台が前記垂直規制面を超えて外方に移動する作業台アクチュエータの作動を許容するように構成される。そのため、隣の車線の上方空間において、道路法によって定められた車両の高さの最高限度を超えた上方の安全な空間では、作業台をはみ出させた状態で作業を行うことができる。従って、隣の車線の上方の安全な空間まで作業範囲を拡大させることができ、トンネル内での作業では天井中央付近の作業が行い易くなり、作業効率を向上させることができる。
【0011】
本発明に係る高所作業車の安全装置において、ジャッキ装置の車体側方への張り出し量に応じて前記垂直規制面を設定するように構成されることが好ましい。このような構成とすれば、ジャッキ装置の張り出し量によって垂直規制面の設定位置を変更することができるため、作業現場の状況に合わせ、安全且つ効率的に作業を行うことができる。或いは、作業者による操作入力により前記垂直規制面を任意に設定可能に構成されることが好ましい。このような構成としても、作業現場の状況に合わせ、安全且つ効率的に作業を行うことができる。
【0012】
本発明に係る高所作業車の安全装置において、ブームアクチュエータおよび作業台アクチュエータの少なくとも一方の作動が規制されたときに警報作動を行う警報装置を備えて構成されることが好ましい。このような構成とすれば、作動規制が行われていることを作業者に直ちに知らせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る高所作業車の側面図である。
図2】上記高所作業車の作動制御構成を示すブロック図である。
図3】上記高所作業車のブームおよび作業台が下方位置に位置するときの高所作業車の背面図である。
図4】上記ブームおよび作業台が上方位置に位置するときの高所作業車の背面図である。
図5】上記ブームおよび作業台の作動規制制御を説明するための模式図である。
図6】上記高所作業車を用いた作業の一例であり、ブームおよび作業台が下方位置に位置するときの高所作業車の背面図である。
図7】上記高所作業車を用いた作業の一例であり、ブームおよび作業台が上方位置に位置するときの高所作業車の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。本発明に係る安全装置を備えた高所作業車の一例として、図1に高所作業車1を示している。高所作業車1は、車体2の前部に設けられた運転キャブ2aと、車体2の前後左右にそれぞれ設けられた車輪3とを有するトラック車両をベースに構成されている。
【0015】
車体2の前後左右にはそれぞれローラージャッキ10が設けられている。ローラージャッキ10は、車体2の左右方向に伸縮可能なアウトリガ11(図3を参照)と、アウトリガ11の先端部に設けられた上下方向に伸縮可能なジャッキ12と、ジャッキ12の下端部に回転自在に取り付けられたローラー13とを有して構成される。アウトリガ11は、アウトリガ11内に設けられたアウトリガシリンダ15(図2を参照)により伸縮作動が可能になっている。ジャッキ12は、ジャッキ12内に設けられたジャッキシリンダ16(図2を参照)により伸縮作動が可能になっている。高所作業車1は、アウトリガ11を張り出してローラー13を路面に接地させることにより、後述する作業台40を所望の高所位置に移動させた状態で車両を走行させながら作業を行うことができるように構成されている。ローラージャッキ10は、車体2に設けられたジャッキ操作レバー18(図2を参照)によって作動操作が行われるようになっている。
【0016】
運転キャブ2a後方の車体2上の架装領域の前部には、旋回台5が水平旋回自在に設けられている。旋回台5は、車体2に設けられたブーム旋回モータ6(図2を参照)により車体2に対して水平旋回作動が可能になっている。旋回台5の上部には、枢結ピン7によりブーム20が上下方向に揺動自在(起伏自在)に設けられている。ブーム20は、旋回台5とブーム20の間に跨設されたブーム起伏シリンダ25により旋回台5(車体2)に対して起伏作動が可能になっている。ブーム20は、旋回台5に枢結される基端ブーム21、中間ブーム22および先端ブーム23を入れ子式に組み合わせて伸縮自在に構成され、ブーム20内に設けられたブーム伸縮シリンダ26(図2を参照)により伸縮作動が可能になっている。
【0017】
先端ブーム23の先端部には、作業台ブラケット30が上下方向に揺動自在に設けられ、この作業台ブラケット30上に作業台40が設けられている。先端ブーム23の先端部には、先端ブーム23と略平行に延びるシリンダブラケット31が設けられている。このシリンダブラケット31と作業台ブラケット30の間にレベリングシリンダ35が跨設されている。レベリングシリンダ35は、作業台40に設けられた作業台傾斜検出器からの検出結果に基づいて伸縮作動して作業台ブラケット30を先端ブーム23に対して上下揺動させ、これによりブーム20の起伏角度によらず常に作業台40の床面を水平な状態に保持するように構成されている。
【0018】
作業台40は、作業台ブラケット30上に水平旋回自在に設けられ、作業台ブラケット30に設けられた作業台旋回モータ36(図2を参照)により作業台ブラケット30に対して旋回作動が可能になっている。作業台40は、作業者が搭乗可能な略矩形状の作業床41と、その作業床41の周囲に立設された手摺り42とを有して構成される。作業台40は、作業床41の下面中央部から一方側に寄った位置(偏心した位置)において作業台ブラケット30上に水平旋回自在に支持されている。高所作業車1では、運転キャブ2a
後方の車体2上の架装領域において、ブーム20が後方に延び、そのブーム20の上方において作業台40が前後方向に延びた状態で格納されるように構成されている。
【0019】
作業台40には、作業台40に搭乗した作業者が操作するための作業操作装置70が設けられている。作業操作装置70には、図2に示すように、車体2に対してブーム20(旋回台5)を旋回、起伏および伸縮作動させる作動指令を行うブーム操作レバー71と、作業台ブラケット30に対して作業台40を水平旋回作動させる作動指令を行う作業台旋回操作レバー72とが設けられている。ブーム操作レバー71は、ブーム20の旋回、起伏および伸縮操作をそれぞれ単独で行うことができるようなっている。また、作業操作装置70には、作業台40の移動方向を指令する操作スイッチが設けられており、この操作スイッチによって移動方向を指令してブーム操作レバー71を操作すると、ブーム20の旋回、起伏および伸縮作動を複合的に制御して、作業台40を水平面内で直線移動させる水平移動操作、および垂直面内で直線移動させる垂直移動操作も行うことができるようになっている。
【0020】
ブーム操作レバー71および作業台旋回操作レバー72が操作されると、その操作内容に対応した操作信号が、車体2側に設けられたコントロールユニット50に出力される。そして、コントロールユニット50は、その操作信号に基づいた指令信号を油圧ユニット80に出力するようになっている。また、車体2に設けられたジャッキ操作レバー18が操作されると、その操作内容に対応した操作信号がコントロールユニット50に出力され、コントロールユニット50はその操作信号に基づいた指令信号を油圧ユニット80に出力するようになっている。
【0021】
油圧ユニット80は、作動油を貯留するタンク81と、エンジンもしくは電動モータにより駆動されて所定油圧および流量の作動油を吐出する油圧ポンプ82と、油圧ポンプ82から吐出される作動油を指令信号に基づいた供給方向および供給量で各油圧アクチュエータに供給制御する制御バルブユニット83とを有して構成される。制御バルブユニット83は、ブーム旋回モータ6、ブーム起伏シリンダ25、ブーム伸縮シリンダ26、作業台旋回モータ36、アウトリガシリンダ15およびジャッキシリンダ16のそれぞれに対応した電磁比例制御バルブV1~V6を有して構成されている。油圧ユニット80は、コントロールユニット50からの指令信号に応じて各油圧アクチュエータに供給する作動油の流れを制御して、各油圧アクチュエータの作動を制御するユニットである。
【0022】
コントロールユニット50には、車体2の位置を基準として表されるブーム20および作業台40の作動位置を検出するための位置検出装置60からの検出信号(検出値)が入力されるようになっている。位置検出装置60は、車体2に対するブーム20(旋回台5)の旋回角度を検出するブーム旋回角度検出器61と、車体2に対するブーム20の起伏角度を検出するブーム起伏角度検出器62と、ブーム20の伸縮長を検出するブーム長さ検出器63と、ブーム20(作業台ブラケット30)に対する作業台40の旋回角度を検出する作業台旋回角度検出器64とを有して構成される。ローラージャッキ10には、アウトリガ11の車体2の側方への張り出し量を検出するジャッキ張出量検出器65が設けられており、ジャッキ張出量検出器65の検出値もコントロールユニット50に入力されるようになっている。
【0023】
コントロールユニット50は、演算処理部51と、記憶部52と、規制領域設定部53と、作動制御部54とを有して構成される。記憶部52には、ブーム20、作業台40およびローラージャッキ10の各パーツの外形形状の寸法データが記憶されている。さらに、記憶部52には、道路法によって定められた道路を通行できる車両の高さの最高限度の値(3.8メートル、もしくは4.1メートル)に少し余裕を持たせた高さ規制値SH(図4を参照)が記憶されている。
【0024】
演算処理部51は、記憶部52に記憶されているブーム20の外形形状の寸法データと、ブーム旋回角度検出器61、ブーム起伏角度検出器62およびブーム長さ検出器63から入力される検出値(車体2に対するブーム20の旋回角度および起伏角度、ブーム20の伸縮長)とに基づいて、車体2の位置を基準として表されるブーム20の先端部(作業台ブラケット30)の位置を演算処理して求めるように構成されている。さらに、演算処理部51は、演算処理して求めたブーム20の先端部の位置と、作業台旋回角度検出器64から入力される検出値(ブーム20に対する作業台40の旋回角度)と、記憶部52に記憶されている作業台40の外形形状の寸法データとに基づいて、車体2の位置を基準として表される作業台40の外形端部の位置を演算処理して求めるように構成されている。
【0025】
規制領域設定部53は、ジャッキ張出量検出器65から入力される検出値(アウトリガ11の車体2の側方への張り出し量)と、記憶部52に記憶されているローラージャッキ10(アウトリガ11およびジャッキ12)の外形形状の寸法データとに基づいて、図3に示すように、車体2の側方におけるジャッキ12の外側面から所定距離を置いた設定位置に、略垂直に延びる垂直規制面SVを設定するように構成されている。垂直規制面SVは、車体2の側方において前後方向にも延びた面である。規制領域設定部53は、前後のローラージャッキ10がそれぞれ車体2の側方に張り出されているときには、張り出し量が大きい方のローラージャッキ10におけるジャッキ12の外側面から所定距離を置いた設定位置に垂直規制面SVを設定するようになっている。
【0026】
なお、図3では、車体2の右側方のみに垂直規制面SVが設定されているが、車体2の左側方にも同様に垂直規制面SVが設定されるようになっている。また、ローラージャッキ10が車体2から張り出されていない状態であっても、張り出されていないジャッキ12の外側面から所定距離を置いた設定位置に垂直規制面SVを設定するようにしてもよい。さらに、ジャッキ12の外側面から設定位置までの距離は適宜変更可能であり、ジャッキ12の外側面の位置を設定位置として垂直規制面SVを設定するようにしてもよい。
【0027】
作動制御部54は、ブーム操作レバー71および作業台旋回操作レバー72が操作されて、その操作内容に対応した操作信号が入力されると、その操作信号と、演算処理部51により求められたブーム20の先端部の位置および作業台40の外形端部の位置と、規制領域設定部51により設定された垂直規制面SVと、記憶部52に記憶されている高さ規制値SH(道路を通行可能な車両の高さの最高限度から少し余裕を持たせた高さ)とに基づいて、ブーム20および作業台40を作動させる油圧アクチュエータの作動制御を行うように構成されている。作動制御部54による各油圧アクチュエータの作動制御について以下に説明する。
【0028】
作動制御部54は、ブーム操作レバー71および作業台旋回操作レバー72が操作されて、その操作内容に対応した操作信号が入力されると、基本的には、その操作信号に基づいた指令信号を制御バルブユニット83に出力してブーム旋回モータ6、ブーム起伏シリンダ25、ブーム伸縮シリンダ26および作業台旋回モータ36への作動油の供給方向および供給量を制御し、操作レバー71,72の操作内容に応じたブーム20の旋回、起伏および伸縮作動、並びに作業台40の旋回作動を行わせるようになっている。このとき、演算処理部51では、このように作動されて変化するブーム20の先端部の位置および作業台40の外形端部の位置(車体2の位置を基準として表される位置)が常に演算処理されて求められている。
【0029】
作動制御部54は、先ず、演算処理部51により求められたブーム20の先端部の高さ位置と、記憶部52に記憶されている高さ規制値SHとを比較して、ブーム20の先端部の高さ位置が高さ規制値SHを超えているか否かを判定する。なお、高さ規制値SHは上
記のように路面からの高さの値であるのに対し、演算処理部51により求められたブーム20の先端部の位置は、車体2の位置を基準として表される位置である。そのため、ブーム20の先端部の高さ位置が、高さ規制値SHと同じ基準である路面からの高さの値となるように補正して比較される。
【0030】
そして、作動制御部54は、演算処理部51により求められたブーム20の先端部の高さ位置が高さ規制値SH以下であると判定した場合には、図3および図5に示すように、演算処理部51により求められた作業台40の外形端部の位置と、規制領域設定部53により設定された垂直規制面SVの設定位置とを比較して、作業台40の外形端部が垂直規制面SVを超えて外方に移動しようとした時点で、作業台40の外形端部を垂直規制面SVの外方に移動させるブーム旋回モータ6、ブーム起伏シリンダ25、ブーム伸縮シリンダ26および作業台旋回モータ36の作動を規制する(作動油の供給を停止させる制御を行う)ようになっている。ただし、作業台40の外形端部を垂直規制面SVよりも車体2側に移動させる各油圧アクチュエータの作動は許容されて作動可能である。
【0031】
その一方、作動制御部54は、演算処理部51により求められたブーム20の先端部の高さ位置が高さ規制値SHよりも上方位置であると判定した場合には、図4および図5に示すように、演算処理部51により求められたブーム20の先端部の位置と、規制領域設定部53により設定された垂直規制面SVの設定位置とを比較して、ブーム20の先端部が垂直規制面SVを超えて外方に移動しようとした時点で、ブーム20の先端部を垂直規制面SVの外方に移動させるブーム旋回モータ6、ブーム起伏シリンダ25およびブーム伸縮シリンダ26の作動を規制する(作動油の供給を停止させる制御を行う)ようになっている。このとき、ブーム20の先端部に対して作業台40を旋回作動させる作業台旋回モータ36の作動は許容されて作動可能になっている。高さ規制値SHよりも上方空間では、ブーム20の先端部に対して作業台40を旋回作動させて、作業台40の外形端部を垂直規制面SVを超えた外方の移動させることが可能になっている。また、ブーム20の先端部を垂直規制面SVよりも車体2側に移動させる各油圧アクチュエータの作動は許容されて作動可能である。
【0032】
作動制御部54は、上記のようにブーム旋回モータ6、ブーム起伏シリンダ25、ブーム伸縮シリンダ26および作業台旋回モータ36のいずれかの作動を規制したときに、警報信号を作業操作装置70に設けられた警報ランプ77および警報ブザー78に出力し、警報ランプ77を発光表示させるとともに警報ブザー78から警報音を発生させて、作動規制が行われている旨を作業者に報知するようになっている。
【0033】
作業操作装置70には、作動制御部54による上記作動規制を無効にして垂直規制面SVを外方に超えるブーム20および作業台40の移動を可能な状態とするための規制解除スイッチ73が設けられている。さらに、作業操作装置70には、規制領域設定部53により設定された垂直規制面SVの設定位置、および記憶部52に記憶されている高さ規制値SHを変更させるための規制領域入力部74が設けられている。作業者は規制領域入力部74を操作することにより、垂直規制面SVの設定位置および高さ規制値SHを任意に設定変更することができるようになっている。
【0034】
このように構成された高所作業車1では、例えば、図6および図7に示すようにトンネル内で点検作業を行う場合に、作業台40を比較的低い位置(ブーム20の先端部を高さ規制値SHよりも低い位置)に移動させた状態で作業を行うときには、図6に示すように、作業台40の外形端部(もちろんブーム20の先端部も)が垂直規制面SVを超えて隣の車線にはみ出すことを確実に防止することができる。その一方、作業台40を比較的高い位置(ブーム20の先端部を高さ規制値SHよりも高い位置)に移動させた状態で作業を行うときには、図7に示すように、ブーム20の先端部が垂直規制面SVを超えて隣の
車線にはみ出すことを確実に防止しつつ、隣の車線上における高さ規制値SHよりも上方の空間では、作業台40をブーム20に対して旋回させて作業台40を位置させることができる。ここで、高さ規定値SHとして、道路法によって定められた車両の高さの最高限度から少し余裕を持たせた値を設定しておけば、隣の車線の他の車両Tが通行している状態であっても、トンネルの天井中央付近の作業を安全に行うことができる。このように隣の車線の上方空間における安全な空間まで作業範囲を拡大することができ、作業効率を向上させることができる。
【0035】
これまで本発明に係る実施形態について説明してきたが、本発明の範囲は上述の実施形態に示したものに限定されない。例えば、上述の実施形態では、作業台40が作業床41の下面中央部から一方側に寄った位置(偏心した位置)において作業台ブラケット30上に支持されているが、作業床41の下面中央部において作業台ブラケット30上に支持された構成であってもよい。また、上述の実施形態では、ブーム20が直線的に伸縮作動する構成であるが、屈伸型のブームを備える高所作業車においても本願発明を適用して同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0036】
1 高所作業車
2 車体
6 ブーム旋回モータ(ブームアクチュエータ)
10 ローラージャッキ(ジャッキ装置)
20 ブーム
25 ブーム起伏シリンダ(ブームアクチュエータ)
26 ブーム伸縮シリンダ(ブームアクチュエータ)
36 作業台旋回モータ(作業台アクチュエータ)
40 作業台
50 コントロールユニット
51 演算処理部(作動位置検出手段)
53 規制領域設定部(規制面設定手段)
54 作動制御部(アクチュエータ制御部)
61 ブーム旋回角度検出器(作動位置検出手段)
62 ブーム起伏角度検出器(作動位置検出手段)
63 ブーム長さ検出器(作動位置検出手段)
64 作業台旋回角度検出器(作動位置検出手段)
77 警報ランプ(警報装置)
78 警報ブザー(警報装置)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7