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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】操船支援装置
(51)【国際特許分類】
   B63H 25/04 20060101AFI20220613BHJP
   B63H 25/02 20060101ALI20220613BHJP
   B63B 79/40 20200101ALI20220613BHJP
【FI】
B63H25/04 G
B63H25/02 Z
B63B79/40
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018151919
(22)【出願日】2018-08-10
(65)【公開番号】P2020026208
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】曲渕 正敏
(72)【発明者】
【氏名】川口 卓
(72)【発明者】
【氏名】中島 修一
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-002040(JP,A)
【文献】特開2007-230455(JP,A)
【文献】特開2011-128943(JP,A)
【文献】特開2015-186956(JP,A)
【文献】特開2001-291200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 25/00-25/52
B63B 49/00,79/40
G01C 21/20-21/22
G01S 13/91-13/92,15/88-15/96
G05D 1/00- 1/12
G08G 3/00- 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接岸または離岸のために船舶に行われる操船の支援を行う操船支援装置であって、
前記接岸または前記離岸の対象となる埠頭もしくは係留点に対する前記船舶の姿勢Aと、前記船舶の速度Vと、前記船舶に与えられる推進力Fとを機械学習し、前記機械学習の対象の全てまたは一部の組み合わせの順列として、所定数N(≧1)の前記操船の形態を求める学習手段と、
前記操船の形態の内、前記姿勢A、前記速度V、前記推進力Fのそれぞれのカレント値Ac、Vc、Fcとの相関が既定の閾値を超える特定の操船の形態を識別し、前記特定の操船の形態に対する前記カレント値Ac、Vc、Fcの偏差を求める偏差生成手段と
を備えたことを特徴とする操船支援装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の操船支援装置において、
前記操船の過程で発せられた声、または前記操船にかかわる人員の挙動の特徴に基づいて前記操船の形態に反映されるべき事項を認識する認識手段を備え、
前記付加情報Iaには、
前記事項が含まれる
ことを特徴とする操船支援装置。
【請求項5】
請求項4に記載の操船支援装置において、
前記認識手段は、
前記声のパターンおよび特徴に基づいて前記事項の重要度を併せて認識し、
前記付加情報Iaには、
前記重要度が含まれる
ことを特徴とする操船支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埠頭や係留点に対する接岸または離岸の過程で船舶に対して行われるべき操船を支援する操船支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所望の埠頭や係留点に対して接岸したり離岸する過程では、例えば、以下に列記する第一ないし第七の従来例による操船が行われていた。
[第一の従来例]
GPSで自船の位置が計測され、その位置を監視しつつ目標の緯度経度に対する自船の自動・無人誘導が行われる。
【0003】
[第二の従来例]
距離測定手段(例えば、レーダ)によって計測された距離が補助情報として活用されることによって、自船の誘導が行われる。
[第三の従来例]
ブリッジから見えない死角部分の状況を見張る見張り員が配置され、無線などにより状況をブリッジに伝えながら自船の誘導が行われる。
【0004】
[第四の従来例]
後述する特許文献4、5に開示されるアラウンドビューモニタによって表示される静止画像(または動画像)を目視しながら操船が行われる。このようなアラウンドビューモニタは、接岸や離岸の過程で生じる光学的な死角の発生を極力抑えるために、回転するレーダアンテナに取り付けられたカメラによって得られる複数の静止画像(または動画像)を合成する機能を有する。
【0005】
[第五の従来例]
所望の埠頭や係留点に特化したアルゴリズムに基づいて操船が行われる。
[第六の従来例]
上述した死角の範囲、あるいは目視による判別が困難な状況や環境が発生し難い条件下であっても操船が行われる。
【0006】
[第七の従来例]
このような死角を幾分なりとも緩和するために、2台のカメラによって目標物を特定しつつ操船が行われる。
なお、本発明に関連性がある先行技術としては、以下に列記する特許文献1ないし特許文献5がある。
【0007】
(1) 特許文献1
「船舶の着岸を支援するための装置であって、前記船舶から着岸候補箇所までの距離を測定する距離測定手段と、この距離測定手段を制御して、前記着岸候補箇所付近の少なくとも3つの測定点について、前記船舶からの距離を測定させる距離測定制御手段と、この距離測定制御手段による制御によって前記距離測定手段によって測定された前記船舶から前記少なくとも3つの測定点までの距離を用いて、前記着岸候補箇所の形状を評価する形状評価手段と、前記形状評価手段による評価結果に基づいて、前記着岸候補箇所が前記船舶の着岸に適しているかどうかを判断する着岸適否判断手段とを含み、前記形状評価手段は、前記少なくとも3つの測定点の位置情報を演算する位置情報演算手段と、この位置情報演算手段によって演算された前記少なくとも3つの測定点の位置情報に対して線形回帰処理を行うことにより回帰直線および回帰誤差を求める回帰処理演算手段とを含み、前記着岸適否判断手段は、前記回帰誤差が所定の閾値を超える場合に前記着岸候補箇所が着岸に適さないと判断し、前記回帰誤差が前記閾値以下の場合に前記着岸候補箇所が着岸に適すると判断する」ことによって、「小型の船舶の着岸を効果的に支援することができる」点に特徴がある着岸支援装置。
【0008】
(2) 特許文献2
「地上の接岸目標物を含む接岸エリアの画像を撮像する、船舶に搭載された少なくとも2台の撮像手段と、前記撮像手段により撮像された画像を表示する表示手段と、一方の撮像手段により撮像され表示された画像上から前記接岸目標物となる画像を領域指定し、当該画像を標本画像とする標本画像設定手段と、前記設定された標本画像を基に他方の撮像手段で撮像された画像から前記標本画像と同一若しくは近似する画像を第2標本画像として他方の撮像手段で特定し、該画像を接岸目標物と認識する特定認識手段と、一方の撮像手段で設定された標本画像と他の撮像手段で特定された第2標本画像とを接岸目標物とし、接岸移動する船舶上から前記各々の撮像手段で追従認識させる追従認識手段と、接岸目標物追従認識に向けて回動する撮像手段の回動角度から前記接岸目標物までの距離を導出する距離導出手段とを有する」ことによって、「船舶側に搭載されたいわゆる接岸自動システムのみによっていかなる港湾であろうと、すなわち港湾側に従来の計測装置が設置されていないときであっても安全かつ迅速にかつ自動的に接岸させることができ、かつ船舶に設置する際のコストが比較的安価にし得る」点に特徴がある船舶自動接岸システム。
【0009】
(3) 特許文献3
「車両の周囲の状況を撮像するために、該車両に搭載された広角領域撮影手段と、該広角領域撮影手段により撮像される物体までの距離を測定するために、該車両に搭載された距離測定手段とを複数組そなえ、該広角領域撮影手段からの画像情報と該距離測定手段からの距離情報とに基づいて撮像された物体を立体的に仮想する立体仮想手段と、該立体仮想手段からの情報に基づいて該車両の周辺をコンピュータグラフィックスによって鳥瞰図に変換する画像変換手段と、該画像変換手段により得られた該鳥瞰図を表示する画像表示手段とが設けられている」ことによって、「初心者であっても容易に車庫入れ操作や縦列駐車等を行なうことができる」点に特徴がある車両用周辺認識補助装置。
【0010】
(4) 特許文献4
「レーダのアンテナに取り付けられたカメラによって撮像された画像を取り込む画像取得手段と、前記撮像された画像に、前記アンテナの回動、もしくは前記レーダの振る舞いに同期したサンプリング、蓄積、抽出、重畳、合成の処理の全てまたは一部を施し、前記レーダによって生成される指示画像に対応する画像を生成する画像生成手段とを備える」ことによって、「大幅な構成の複雑化やコストの増加を伴うことなく、レーダによる目標探知と目視の限界との何れもが補完され、もしくは大幅に軽減可能である」点に特徴がある画像生成装置。
【0011】
(5) 特許文献5
「回転し、または振り動き得る部材に取り付けられたカメラによって撮像された画像を取り込む画像取得手段と、前記撮像された画像に、サンプリング、蓄積、抽出、重畳、合成の処理の内、前記部材の姿勢、または前記部材の回転軸に対する回転角に適応した全てまたは一部を施し、前記レーダによって生成される指示画像に対応する画像を生成する画像生成手段とを備える」ことによって、「大幅な構成の複雑化やコストの増加を伴うことなく、従来行われることがなくあるいは困難であった画像による観測や監視を可能とする」点に特徴がある画像生成装置。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特許第5000244号公報
【文献】特開2005-180949号公報
【文献】特開平07-017328号公報
【文献】特開2016-080698号公報
【文献】特開2016-082586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、上述した第一ないし第三の従来例および第七の従来例では、接岸や離岸の過程で自船が漁具などの障害物にぶつかる可能性があった。
また、第一ないし第四の従来例および第七の従来例では、操船者が初めて寄港した港における接岸や離岸は、特に操船の経験やスキルで左右され、かつ必ずしも円滑には行われなかった。
【0014】
さらに、第五の従来例では、寄港先の港に複数の埠頭や係留設備(以下、総称として「接岸点」という。)がある場合には、これらの内、所望の1つの的確な選定が制約条件となり、しかも、全ての接岸点に対して共通のアルゴリズムを適用することができない場合が多かった。
【0015】
また、第七の従来例では、船舶の側面に対する画像しか得られない可能性があるために、カメラが備えられる船舶が小型船舶ではなく大型船舶である場合には、既述のアラウンドビューモニタのように船舶の全周画像を得るためには、搭載されるべきカメラの数が多くなるという欠点がある。
【0016】
さらに、第一ないし第七の従来例の何れでも、接岸点の近傍の水面に浮遊したり突出する物体およびやその配置、ならびに気象条件は、接岸のために行われるべき操船の形態が一定であることが許容され難く、かつ安全で円滑な接岸が阻まれる要因となっていた。
また、操船の精度や実時間性は、接岸点に好適なアルゴリズムによる操船が可能である場合であっても、処理量の制限等によって必ずしも十分に確保できるとは限らなかった。
【0017】
本発明は、操船のスキルに依存することなく、かつ操船の状況や要員に適した接岸および離岸を精度よく的確に支援できる操船支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
請求項1に記載の発明は、接岸または離岸のために船舶に行われる操船の支援を行う操船支援装置において、学習手段は、前記接岸または前記離岸の対象となる埠頭もしくは係留点に対する前記船舶の姿勢Aと、前記船舶の速度Vと、前記船舶に与えられる推進力Fとを機械学習し、前記機械学習の対象の全てまたは一部の組み合わせの順列として、所定数N(≧1)の前記操船の形態を求める。偏差生成手段は、前記操船の形態の内、前記姿勢A、前記速度V、前記推進力Fのそれぞれのカレント値Ac、Vc、Fcとの相関が既定の閾値を超える特定の操船の形態を識別し、前記特定の操船の形態に対する前記カレント値Ac、Vc、Fcの偏差を求める。
【0019】
すなわち、接岸点に対して接岸または離岸する過程で行われるべき望ましい操船は、該当する船舶の姿勢Aおよび速度Vと、船舶に与えられる推進力Fとの実績に基づく機械学習の下で求められ、その機械学習の結果に対して大きく逸脱することなく再現される。
【0020】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の操船支援装置において、前記機械学習の対象には、前記前記姿勢A、前記速度V、前記推進力Fに併せて、前記操船の形態に影響を及ぼし得る付加情報Iaが含まれる。前記学習手段は、前記付加情報Iaに併せて、前記姿勢A、前記速度V、前記推進力Fの全てまたは一部から構成される組み合わせの順列として前記操船の形態を求める。前記偏差生成手段は、前記操船の形態の内、付加情報Ia、前記姿勢A、前記速度V、前記推進力Fとそれぞれのカレント値Iac、Ac、Vc、Fcとの相関が既定の閾値を超える特定の操船の形態を識別し、前記特定の操船の形態に対する前記カレント値Iac、Ac、Vc、Fcの偏差を求める。
【0021】
すなわち、接岸や離岸のために行われるべき操船の形態は、姿勢A、速度V、推進力Fに併せて、その操船の形態に影響を及ぼし得る付加情報Iaに基づく機械学習の下で柔軟に実現される。
【0022】
請求項3に記載の発明では、請求項1に記載の操船支援装置において、前記機械学習の対象には、前記前記姿勢A、前記速度V、前記推進力Fに併せて、前記操船の形態に影響を及ぼし得る付加情報Iaが含まれる。前記学習手段は、前記付加情報Iaから試行錯誤により特定情報Iを特定し、前記特定情報Iに併せて、前記姿勢A、前記速度V、前記推進力Fの全てまたは一部から構成される組み合わせの順列として前記操船の形態を求める。前記偏差生成手段は、前記操船の形態の内、特定情報I、前記姿勢A、前記速度V、前記推進力Fとそれぞれのカレント値Ic、Ac、Vc、Fcとの相関が既定の閾値を超える特定の操船の形態を識別し、前記特定の操船の形態に対する前記カレント値Ic、Ac、Vc、Fcの偏差を求める。
【0023】
すなわち、接岸や離岸のために行われるべき操船の形態は、姿勢A、速度V、推進力Fだけではなく、その操船の形態に影響を及ぼし得る付加情報Iaの内、試行錯誤の下で選択された特定情報Iに基づく機械学習の下で柔軟に実現される。
【0024】
請求項4に記載の発明では、請求項2または請求項3に記載の操船支援装置において、認識手段は、前記操船の過程で発せられた声、または前記操船にかかわる人員の挙動の特徴に基づいて前記操船の形態に反映されるべき事項を認識する。前記付加情報Iaには、前記事項が含まれる。
【0025】
すなわち、操船の形態に反映されるべき付加情報Iaには、操船の過程で発せられた声、または前記操船にかかわる人員の挙動の特徴によっても意味づけられあるいは優先づけられた情報が組み込まれる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、接岸点の候補の数の如何にかかわらず、接岸点毎に対応した個別のソフトウェアに依存したり、これらのソフトウェアのうちの1つを選定することなく、精度良く円滑に接岸や離岸が実現される。
【0027】
本発明では、船舶の状況や諸条件が変化する状態であっても、上記操船の形態が柔軟に精度よく、かつ好適に維持される。
【0028】
したがって、本発明が適用された船舶は、汎用性が高くかつ簡便な設備により、操船のスキルに左右されることなく、接岸や離岸が安全かつ速やかに実現され、かつ船舶の航行にかかわる人員やコストの削減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の第一および第二の実施形態の構成を示す図である。
図2】接岸の過程における機械学習の対象となるパラメータを示す図である。
図3】本発明の第一および第二の実施形態において行われる処理のフローチャートである。
図4】本実施形態において機械学習により得られる操船の形態を示す図である。
図5】本実施形態によって行われる操船の支援の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の第一および第二の実施形態の構成を示す図である。
図2は、接岸の過程における機械学習の対象となるパラメータを示す図である。
[第一の実施形態]
図1において、操船の対象となる船舶10に備えられた操作部20には、操船制御部30の対応するポートが接続され、その操船制御部30は、以下の各部に個別に接続されたポートを有する。
【0031】
(1) 船舶10の速度(以下、「船速」という。)Vを計測する船速センサ11の出力
(2) 所望の接岸点である岸壁等の頂端部または側壁に対して、船舶10が移動する方向がなす角度(以下、「進入角」)θを出力する航法装置12の出力
(3) 船舶10の舵13に操舵角φrが与えられる入力
【0032】
(4) 接岸等に際して、船舶10の推進力Fと交差する方向にその船舶10の船側に与えられるべき推力f(船側に対して出力される方向を含むベクトルであってもよい。)の設定値が与えられるべきスラスタ14の入力
(5) 船舶10に備えられたスクリュープロペラ等の推進源15に上記推進力F(船体または船尾から後方に出力される方向を含むベクトルであってもよい。)の設定値が与えられるべき入力
(6) 操船支援装置40の第1ないし第3の出力ポート
【0033】
操船支援装置40は、以下の要素から構成される。
(1) 上述した船速V、進入角θ、推進力Fおよび推力fが入力されるデータ収集部41
(2) データ収集部41のポートに縦属接続された機械学習部42および操船形態記憶部43
【0034】
(3) 操船形態記憶部43のポートに縦属接続され、かつ既述の船速V、進入角θ、推進力Fおよび推力fが個別に入力される3つのポートに併せて、上記操船支援装置40の第1ないし第3の出力ポートに相当する3つの出力ポートを有する偏差算出部44
【0035】
図3は、本発明の第一および第二の実施形態において行われる処理のフローチャートである。
【0036】
以下、図1ないし図3を参照して本発明の一実施形態の動作を説明する。
船舶10が接岸点Pに接岸する関連するパラメータは、図2に示すように以下の通りである。
【0037】
(1) 既述の船速V
(2) その船速Vを与える推進力F
なお、推進力Fには、船舶10の船尾方向に対する方位角が含まれてもよい。
(3) スラスタ14によって船舶10の船側に与えられる推力f
(4) 船舶10が接岸点Pに進入する角度(進入角)θ
【0038】
なお、ここでは、接岸点Pは、簡単のため既定の接岸点であって変化しないものと仮定する。
【0039】
[接岸の過程における各部の基本的な動作]
接岸の過程では、操船支援装置40が稼働していない状態では、操船制御部30は、操船者が操作部20を介して行う操船の下で以下の処理を並行して行う。
(1) 推進源15に対して上記推進力Fを設定する。
(2) スラスタ14に推力f(≧0)を設定する。
(3) 舵13に対して操舵角φr(既述の進入角θが得られる値)を設定する。
【0040】
[接岸の過程における操船支援装置の各部の動作]
操船支援装置40の各部は、船舶10が接岸点Pに接岸する度に、以下の処理を行う。
データ収集部41は、上記船速V、進入角θ、推進力F、推力f、操舵角φrの実績値の組み合わせを取り込み、データベースとして蓄積する(図3ステップS1)。
【0041】
機械学習部42は、そのデータベースに時系列の順に蓄積された組み合わせの列に基づいて機械学習を行うことによって、図4に示すように、この組み合わせの順列として、接岸点Pに対する船舶10の接岸の過程で適用された操船の形態M1、M2、…、MNを求め(図3ステップS2)つつ、操船形態記憶部43にその操船の形態M1、M2、…、MNを格納する(図3ステップS3)。
【0042】
ここに、操船形態記憶部43に格納される操船の形態は、接岸点Pが一定であっても、一般に、船舶10によって実際に行われた代表的な1つまたは複数通りの操船の形態となり得る。
【0043】
偏差算出部44は、以下の処理を行う。
(1) 接岸の過程で操船制御部30によって先行して与えられた(船速V′、進入角θ′、推進力F′、推力f′、操舵角φr′)の組み合わせCp′の列を逐次更新する(図3ステップS4)。
【0044】
(2) 操船形態記憶部43に格納された操船の形態の内、上記組み合わせCp′の列との相関が最大であり、あるいは所定の閾値を超える特定の操船の形態Md(図4に網掛けを付して示す。)を判別する(図3ステップS5)。
【0045】
(3) 上記組み合わせCp′に後続する組み合わせCs′に含まれる(船速Vs′、進入角θs′)を取得する(図3ステップS6)。
(4) 上記特定の操船の形態を示す組み合わせCの列の内、上記組み合わせCs′に対応する組み合わせCsに含まれる(船速Vs、進入角θs)を取得する(図3ステップS7)。
【0046】
(5) 下式で示される船速偏差ΔVs、進入角偏差Δθsを求める(図3ステップS8)。
ΔVs=Vs′-Vs
Δθs=θs′-θs
【0047】
(6) 組み合わせCsに含まれる(推進力Fs、推力fs、操舵角φrs)と、組み合わせCs′に含まれる(推進力Fs′、推力fs′、操舵角φrs′)とに対して、下式で示される推進力偏差ΔFs、推力偏差Δfs、操舵角Δφrsを求める(図3ステップS9)。
ΔFs=Fs′-Fs
Δfs=fs′-fs
Δφrs=φrs′-φrs
【0048】
操船制御部30は、後続して推進源15、スラスタ14および舵13に与えられている推進力F′、推力f′、操舵角φr′に、それぞれ上式で示される推進力偏差ΔFs、推力偏差Δfs、操舵角Δφrsに亘る下方修正を施す。
【0049】
すなわち、接岸点Pに対する船舶10の接岸は、以下に列記する状況であっても、偏差算出部44および操船制御部30の連係の下で既述の処理が行われる。
・ 船舶10の操船に影響を及ぼし得る事項や物理量の解明が困難であり、あるいは図られ難い。
・ これらの事項や物理量に、非定常的な変動が伴い得る。
【0050】
したがって、図5上に点線と実践とで対比されるように、操船のスキルに依存することなく、かつ接岸点Pに適応した明示的なプログラムやアルゴリズムに頼ることなく、精度よく的確に接岸が実現される。
【0051】
また、本実施形態によれば、既述の従来例との対比においては、以下に列記する作用効果が達成される。
(1) 第一ないし第三の従来例および第七の従来例では達成されない「障害物との衝突の回避」が可能となる。
【0052】
(2) 第二の従来例では、距離測定手段によって計測される距離にもとづく操船は、タグボートの支援による自船の横付けという最後の操作しかできない。しかし、本実施形態では、岸壁からかなり離れた場所からの自動接岸が可能となる。
(3) 第三の従来例において配置されるべき見張り員の大幅な省人化が可能となる。
【0053】
なお、本実施形態では、接岸点に対する船舶10の横付けを促進する推力fがスラスタ14によって出力されている。
しかし、このような構成に限定されず、例えば、スラスタ14に代えて複数のプロペラが船舶10に備えられ、さらに、これらのプロペラについて、向きが互いに逆に設定され(片方が前進、他方が後進)、かつ回転数(出力)に併せてこれらの向きの組み合わせが可変されることにより、既述の推進力Fおよび推力fが自在に設定される場合にも、本発明は同様に適用可能である。
【0054】
さらに、ヨットやジェット方式のように、帆の推進力や方向を自在に変えられるジェット推進力が使いられる場合には、スラスタやプロペラが備えられない船舶であっても、本発明は同様に適用可能である。
【0055】
また、スラスタ14は船側に備えられたスラスタに限定されず、例えば、スラスタ14に代えて、または併せてバウスラスタ(船首に備えられる。)と、スタン(アフト)スラスタ(船尾に備えられる。)との双方または何れか一方を有すると共に、接岸する方向が船首、船尾および船側の何れであるかに応じて、これらのスラスタが適宜組み合わせられて作動する船舶にも、本発明は同様に適用可能である。
【0056】
[第二の実施形態]
本実施形態と既述の第一の実施形態との構成の相違点は、図1に点線で示す通り以下の点にある。
データ収集部41の特定の入力ポートには音声処理部50の出力が接続され、その音声処理部50の入力には、操舵室等の船室(通信室を含む)、甲板上その他の所定の箇所から音声信号が個別に引き渡される。
【0057】
以下、図1および図2を参照して本実施形態の動作を説明する。
音声処理部50は、上記の音声信号をディジタル信号に変換し、かつパターン認識および意味解析(言語解読を含む。)を施すことにより、既述の操船の形態に反映する可能性がある「付加情報」に変換する。
【0058】
操船支援装置40では、データ収集部41は、船速V、進入角θ、推進力F、推力f、操舵角φrの実績値に併せて、このような「付加情報」を含んで構成される組み合わせを取り込み、データベースとして蓄積する(図3ステップS1′)。
【0059】
機械学習部42は、そのデータベースに時系列の順に蓄積された組み合わせの列に基づいて機械学習を行う(図3ステップS2,S3)。
【0060】
偏差算出部44の各部は、以下の点(1)、(2)を除いて、既述の第一の実施形態と同様の処理(図3ステップS4~9)を行うことによって、推進力偏差ΔFs、推力偏差Δfs、操舵角Δφrsを求める。
【0061】
(1) 上記付加情報にかかわる偏差が突発的に大きな値となった場合には、例えば、以下に列記する何れかの形態で、既述の意味解説や音声解読に則した指令を操船制御部30に与える(図3ステップS10)。
【0062】
・ 音声信号の音量がバースト的に大きくなり、あるいは特定の語の語気が強い場合には、操船制御部30に対して、該当する音声信号の意味に則した操船の指令(例えば、緊急の停船や針路変更等)を優先して速やかに与える。
【0063】
・ 音声信号の周波数成分や波形(またはその変化)が操船の形態に対して何らかの変更の必要性を意味する場合には、操船制御部30に対して、該当する周波数成分や波形(またはその変化)に則した操船の指令(例えば、話者の混乱や心理状態、あるいは話者が位置する場所の環境等の条件に対する即応)を優先して速やかに与える。
【0064】
なお、上述した言葉の意味や音量の大きさだけではなく、例えば、「もう少し右へ」のような言葉が含まれたり複数回反復され、あるいは「もっと」という先頭語が含まれる場合には、1回のパラメータの変更量の不足を補う処理と、該当するパラメータを数倍に設定する処理との何れが行われてもよい。
【0065】
ここに、話者とは、タグボートの船長、水先案内人、ポートオフィサーだけではなく、国際VHSを介して行われる通話の相手も該当する。
【0066】
または、上記バースト的な音量の増加、語気の強弱、話者の混乱や心理状態、あるいは話者が位置する場所の環境等は、話者のスキルや経験等の属性、あるいは行動などの反映の下で判別されてもよい。
【0067】
(2) 上記「付加情報」は、機械学習の下で操船の形態に反映された場合には、上述した処理ではなく、その機械学習の結果として得られた操船の実現に適用されてもよい。
したがって、本実施形態によれば、接岸や離岸を実現する操船は、その操船に付帯して生じ得るさまざまな事象に柔軟に適した形態で実現される。
【0068】
なお、上述した各実施形態は、接岸だけではなく、離岸の過程における操船についても、同様に適用可能である。
【0069】
また、上述した各実施形態の構成は図1に示すものに限定されず、既述の処理と実質的に同じ処理が実現されるならば、機能分散や負荷分散の形態は如何なるものであってもよい。
【0070】
さらに、これらの処理の一部は、船舶10には備えられないサーバや専用のハードウェアとのネットワークを介した連係の下で行われてもよい。
【0071】
また、既述の進入角θは、例えば、以下に列記する条件下では、接岸点に対する船舶10の相対的な姿勢で代替されてもよい。
・ 埠頭や係留点の水面下における側壁が非鉛直であり、あるいは凹部や凸部を有する。
・ 水面に大きな起伏があり、しかも、水量が少ないために、船舶10と埠頭や係留点とに挟まれた領域の水面が水平と見なし得ない。
・ 船舶10の船体の底部や側部が上記水面に対して大きく傾斜している。
【0072】
さらに、本発明は、以下の何れの場合にも、同様に適用可能である。
・ 船舶10にスラスタ14が備えられない。
・ スラスタ14によって船舶10に与えられる推力fの方向が変化し得る。
【0073】
また、上述した各実施形態では、埠頭や係留点に対する船舶10の相対位置Lが機械学習の対象に付加されることによって、既述の特定の操船の形態Mdに基づく接岸の過程でその相対位置Lの偏差ΔLの圧縮が速やかに図られてもよい。
【0074】
さらに、このような場合には、既述の下方修正に適用されるべき推進力偏差ΔFs、推力偏差Δfs、操舵角Δφrsは、フィードバック制御方式に限らず、フィードフォワード方式に基づいて算出されてもよい。
【0075】
また、上述した各実施形態では、船舶10の推進源15としてスクリュープロペラが備えられてもよい。このような場合には、推進力Fがその船舶10の船体または船尾から後方に出力される方向として、そのスクリュープロペラの回転方向Rが適用されてもよい。
【0076】
さらに、本発明は、上述した各実施形態では、船舶10にスラスタ14が備えられず、かつそのスラスタ14によって出力されるべき推力が推進源15によって補われる場合にも、同様に適用可能である。
【0077】
また、上述した各実施形態では、埠頭や係留点が予め特定されているが、本発明はこのような場合に限定されず、例えば、以下に列記する何れの形態で所望の埠頭や係留点が識別されてもよい。
【0078】
・ 既述の特許文献4、5に開示されたアラウンドビューモニタによって得られた画像との相関に基づく識別
・ 海図上における船舶10の位置(無線航法、衛星航法、自律航法の何れかによって得られてもよい。)を基準として行われる識別
【0079】
さらに、上述した各実施形態では、データベースとして蓄積され、かつ機械学習の対象となるべき情報は、既述の船速V、進入角θ、推進力F、推力f、操舵角φrの実績値の組み合わせに限定されず、このような組み合わせには、接岸や離岸のために行われる操船の形態に何らかの影響を及ぼし得るならば、例えば、以下に列記するように如何なる情報が「付加情報」として含まれてもよい。
【0080】
[機械学習に際して参照され得る付加情報]
(1) 埠頭や係留点に対する船舶10の姿勢
上記「進入角θ」はその一形態であるが、所定の座標系による所望の物理量(の組み合わせ)として与えられてもよい。
(2) 船舶10が移動する方向(前進/後進)
【0081】
(3) 以下に例示するように、接岸や離岸の過程における操船の形態の制約となる事項
a) 障害物の相対的な位置(方向や距離)
b) 他の船舶の相対的な位置(方位角や距離)
c) 接岸や離岸の対象となる岸壁が船舶10に対して位置する方向(右側/左側)
d) 漁業構造物(生けす、養殖場所等)や浅瀬の相対的な位置
【0082】
e) 操船者のスキル(操船経験年数、海事免許等級(海技士、船舶操縦士、…))
f) 喫水の深さ(停船距離等のように積載重量に応じて停船しやすさに影響する。)
g) 船舶10に対する海流の相対的な方向や速さ
h) 波の高さ(高潮の大きさ)
【0083】
i) 船型(単胴船(モノハル)、双胴船(カタマラン)、三胴船(トリマラン)、その他 水中翼船など)
j) 船底の形状(キール式、ブラケット式、引上式、ラウンドハル、ハードチャイン、シャローV、シャローアーチ、フラットハル)
k) 船首の形状(球状船首、斧形船首、LEADGEバウ、X-バウ、スプーン型船首、二重曲率船首、傾斜船首、クリッパー型船首、バーティカルバウ、ダンブルホーム、衝角船首)
l) 船(体)の材質(鉄、チタン、アルミ、FRP、CFRP、木造など)
【0084】
m) 風の強さ(船舶10が引きずられるような強い風か否か?)
n) トリム角(スクリューの角度)
o) スクリューの数
p) 操船者や通信相手(VHF船舶無線等を介する)の言動(挙動)や状況
例えば、「言動が焦っている」、「体調不良で体温が高い」、「停船を求めている」など、
定常時と大きく乖離している。
【0085】
さらに、上述した各実施形態では、機械学習は、以下に列記するアルゴリズムの如何なる組み合わせに基づいて行われてもよい。
(1) ミニバッチ学習法
学習データを細かな単位に区分することにより、繰り返し学習を行う。
(2) 勾配降下法
収集されたデータからランダムにデータを取り出し、そのデータで学習することにより、誤差を小さく抑える。
【0086】
(3) ホールドアウト法
学習用のデータに、その学習の結果として得られた操船の形態の評価(検定)に用いられるデータを含めない。
(4) アクティブラーニング法
機械学習を行うことによって操船の形態を求めつつ、実際行われた操船の過程で行われた補正の実績が反映した機械学習(追加学習)を並行して行う。
【0087】
(5) 過学習防止法
同じ学習用データによる機械学習を過度に繰り返すことによる弊害(過学習)を回避し、あるいは抑制する。
(6) バンディットアルゴリズム
機械学習の結果に影響を及ぼし得るデータの追加や取捨選択を試行錯誤により行う。
(7) K-means(Random Forest)
属性や性質が近いデータをグループ化(クラスタリング)しつつ、機械学習に適用する。
【0088】
また、上述した各実施形態では、船速V、進入角θ、推進力F、推力f、操舵角φr等のような離散値として与えられるデータに基づいて機械学習が行われている。
【0089】
しかし、これらのデータは、例えば、XML形式でタグ付けされたテキストベースの情報として与えられてもよく、このような場合には、機械学習は、以下に示すアルゴリズムの如何なる組み合わせに基づいて行われてもよい。
【0090】
(1) SVM(Support Vector Machine)
教師あり学習に基づいてパターン認識を行うことにより、学習対象の分類や回帰を実現する。
(2) 決定木学習
所望の状態に到達し、あるいは特定の事象が発生するまでの経過を紐解く。
【0091】
(3) ナイーブベイズ
上記テキストベースの情報を確率的に(ベイズの定理に基づいて)分類することにより、機械学習の対象とし、あるいは機械学習の結果を仕分けする。
(4) トピックモデル
上記テキストベースに多く含まれるトピックを抽出し、機械学習の対象とする。
【0092】
(5) ロジスティック回帰
二値もしくは割合として与えられる「物事の発生確率」を分析するために使用され、線形回帰に比べてデータの分類を安定に評価できる。
【0093】
さらに、上述した各実施形態では、機械学習に既述の多様なアルゴリズムが適用可能であるため、埠頭や係留点の属性と、船舶10の構成、機能および性能と、接岸や離岸のために行われる操船に影響を及ぼし得る環境や条件の何れの多様性にも適応可能となる。
【0094】
しかも、機械学習の対象となる情報の組み合わせとして識別可能な潜在的な事象や状態を判別し、かつ操船の形態に対する反映が可能となるため、未知のリスクを併せて回避することも可能となる。
【0095】
また、上述した各実施形態では、機械学習の下で得られた操船の形態との相関に基づいて、接岸や離岸に好適な操船の形態が求められている。
しかし、本発明は、このような構成に限定されず、操船の形態が劣化し得る要因を「付加情報」の候補として積極的・多面的・自律的に探索する手段が備えられることによって、このような要因との因果関係を解消する人工頭脳に進化させることも可能である。
【0096】
また、本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の範囲において多様な実施形態の構成が可能であり、構成要素の全てまたは一部に如何なる改良が施されてもよい。
【0097】
以下、上述した実施形態に開示された発明の内、「特許請求の欄」に盛り込まなかった発明を「特許請求の範囲」、「課題を解決するための手段」、「発明の効果」の各欄に準じた様式で列記する。
【0098】
[1] 請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の操船支援装置において、
前記学習手段は、
所定の頻度またはインターバルで前記機械学習の対象にかかわる追加学習を行う
ことを特徴とする操船支援装置。
【0099】
このような構成の操船支援装置では、請求項1または請求項2に記載の操船支援装置において、前記学習手段は、所定の頻度またはインターバルで前記機械学習の対象にかかわる追加学習を行う。
【0100】
すなわち、接岸や離岸のために行われるべき操船の形態は、該当する船舶やその状態の実績が反復して適用される機械学習の下で得られる。
したがって、操船が円滑に精度よく実現され、かつ航行の効率や信頼性が向上する。
【0101】
[2] 上記[1]に記載の操船支援装置において、
学習手段は、
過学習防止アルゴリズムに基づいて前記機械学習を行う
ことを特徴とする操船支援装置。
【0102】
このような構成の操船支援装置では、上記[1]に記載の操船支援装置において、学習手段は、過学習防止アルゴリズムに基づいて前記機械学習を行う。
【0103】
すなわち、該当する船舶やその状態の実績が機械学習に過度に反復して適用されることが回避され、操船の形態が良好に保たれる。
したがって、接岸や離岸のために行われるべき操船の形態の精度および信頼性が高められ、かつ安定に維持される。
【0104】
[3] 請求項1、上記[1]、[2]の何れか1項に記載の操船支援装置において、
前記学習手段は、
前記カレント値Ac、Vc、Fcの組み合わせの一部を前記機械学習の対象から除外し、前記一部に基づいて前記所定数N(≧1)の操船の形態の採否を評価する
ことを特徴とする操船支援装置。
【0105】
このような構成の操船支援装置では、請求項1、、上記[1]、[2]の何れか1項に記載の操船支援装置において、前記学習手段は、前記カレント値Ac、Vc、Fcの組み合わせの一部を前記機械学習の対象から除外し、前記一部に基づいて前記所定数N(≧1)の操船の形態の採否を評価する。
【0106】
すなわち、機械学習は、該当する船舶やその状態の実績の組み合わせの全てではなく、一部を除いた組み合わせに基づいて行われ、しかも、この一部の組み合わせに基づく検証の下で行われる。
したがって、接岸や離岸のために行われるべき操船の形態の精度および信頼性が高められ、かつ安定に維持される。
【0107】
[4] 請求項2または請求項3に記載の操船支援装置において、
前記学習手段は、
前記カレント値Ic、Ac、Vc、Fcの組み合わせの一部を前記機械学習の対象から除外し、前記一部に基づいて前記所定数N(≧1)の操船の形態の採否を評価する
ことを特徴とする操船支援装置。
【0108】
このような構成の操船支援装置では、請求項2または請求項3に記載の操船支援装置において、前記学習手段は、前記カレント値Ic、Ac、Vc、Fcの組み合わせの一部を前記機械学習の対象から除外し、前記一部に基づいて前記所定数N(≧1)の操船の形態の採否を評価する。
【0109】
すなわち、機械学習は、該当する船舶やその状態の実績の組み合わせの全てではなく、一部を除いた組み合わせに基づいて行われ、しかも、この一部の組み合わせに基づく検証の下で行われる。
したがって、接岸や離岸のために行われるべき操船の形態の精度および信頼性が高められ、かつ安定に維持される。
【0110】
[5] 請求項1~5、上記[1]~[4]の何れか1項に記載の操船支援装置において、
前記船舶に備えられたアラウンドビューモニタが撮らえた特定の画像として、前記船舶による前記接岸または前記離岸の実績がある接岸点を記憶する記憶手段と、
前記特定の画像と、前記アラウンドビューモニタが撮らえた画像との相関に基づいて、前記接岸または前記離岸の対象となる接岸点を識別する接岸点識別手段と
を備えたことを特徴とする操船支援装置。
【0111】
このような構成の操船支援装置では、記憶手段は、前記船舶に備えられたアラウンドビューモニタが撮らえた特定の画像として、前記船舶による前記接岸または前記離岸の実績がある接岸点を記憶する。接岸点識別手段は、前記特定の画像と、前記アラウンドビューモニタが撮らえた画像との相関に基づいて、前記接岸または前記離岸の対象となる接岸点を識別する。
【0112】
すなわち、接岸点は、該当する船舶に備えられたアラウンドビューモニタが与える画像との相関検定の下で特定される。
なお、このような相関検定は、例えば、記憶手段に記憶された特定の画像と、アラウンドビューモニタが撮らえた画像との間に撮影場所の大きな相違がある場合にも相関性を判別できる処理である。
【0113】
また、本発明は、記憶手段に記憶された特定の画像に代えて、インタネット等を介してデータベース等から取得した画像が用いられる場合にも、同様に適用可能である。
したがって、前記接岸または前記離岸のために行われる操船の支援は、コストが大幅に増加することなく実現される。
【0114】
[6] 請求項1~5、上記[1]~[4]の何れか1項に記載の操船支援装置において、
前記船舶に備えられた航法系が与えた位置P~P(n≧1)として、前記船舶による前記接岸または前記離岸の実績がある接岸点を記憶する記憶手段と、
前記船舶の位置と前記位置P~Pとの相関に基づいて、前記接岸または前記離岸の対象となる接岸点を識別する接岸点識別手段と
を備えたことを特徴とする操船支援装置。
【0115】
このような構成の操船支援装置では、記憶手段は、前記船舶に備えられた航法系が与えた位置P~P(n≧1)として、前記船舶による前記接岸または前記離岸の実績がある接岸点を記憶する。接岸点識別手段は、前記船舶の位置と前記位置P~Pとの相関に基づいて、前記接岸または前記離岸の対象となる接岸点を識別する。
【0116】
すなわち、接岸点は、該当する船舶に備えられた航法系によって行われるジオコーディングの下で特定される。
したがって、前記接岸または前記離岸のために行われる操船の支援は、コストが大幅に増加することなく実現される。
【0117】
[7] 請求項1~5、上記[1]~[4]の何れか1項に記載の操船支援装置において、
前記船舶が接岸しあるいは離岸し得る接岸点の位置P~P(n≧1)を予め記憶する記憶手段と、
前記船舶の位置と前記位置P~Pとの相関に基づいて、前記接岸または前記離岸の対象となる接岸点を識別する接岸点識別手段と
を備えたことを特徴とする操船支援装置。
【0118】
このような構成の操船支援装置では、記憶手段は、前記船舶が接岸しあるいは離岸し得る接岸点の位置P~P(n≧1)を予め記憶する。接岸点識別手段は、前記船舶の位置と前記位置P~Pとの相関に基づいて、前記接岸または前記離岸の対象となる接岸点を識別する。
【0119】
すなわち、接岸点は、該当する船舶の位置に基づいて特定される。
したがって、前記接岸または前記離岸のために行われる操船の支援は、コストが大幅に増加することなく実現される。
【符号の説明】
【0120】
10 船舶
11 船速センサ
12 航法装置
13 舵
14 スラスタ
15 推進源
20 操作部
30 操船制御部
40 操船支援装置
41 データ収集部
42 機械学習部
43 操船形態記憶部
44 偏差算出部
図1
図2
図3
図4
図5