(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】嵌合式屋根材および嵌合式屋根材の接合構造
(51)【国際特許分類】
E04D 3/362 20060101AFI20220613BHJP
E04D 3/363 20060101ALI20220613BHJP
E04D 3/365 20060101ALI20220613BHJP
E04D 3/35 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
E04D3/362 C
E04D3/363 A
E04D3/365 E
E04D3/35 J
(21)【出願番号】P 2019040933
(22)【出願日】2019-03-06
【審査請求日】2021-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000200323
【氏名又は名称】JFE鋼板株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】特許業務法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】押田 博之
【審査官】荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-231581(JP,A)
【文献】特開2018-123520(JP,A)
【文献】実開昭55-27766(JP,U)
【文献】特開2013-133609(JP,A)
【文献】特開2006-138084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 1/00- 3/40
E04D 13/00-15/07
E04C 2/292
E04B 1/80
E04B 7/22
E04F 13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外皮材と内皮材との間に芯材を挟んでなるサンドイッチ構造を有する矩形状屋根材本体の、それぞれの長辺側の縁部に上ハゼもしくは下ハゼを設けてなる嵌合式屋根材であって、
一方の屋根材本体とこれに隣接させてつなぎ合わせる他方の屋根材本体とをそれぞれの側縁部に設けられている前記下ハゼおよび上ハゼを嵌合させることによって接合してなるその屋根材本体の側端部どうしの間に遊休空間を設け、その遊休空間内に、該屋根材本体の長辺側縁部に沿って形成される、前記下ハゼを形造る側の該屋根材本体外表面を被成している外皮材のその遊端部を延長して断面溝形に一体成形してなる隠し樋を配設したことを特徴とする嵌合式屋根材。
【請求項2】
前記隠し樋は、座面が下地材表面に接していることを特徴とする請求項1に記載した嵌合式屋根材。
【請求項3】
前記隠し樋は、断面溝形の遊端部側に起立堰を有し、その起立堰の延在位置には下地材固定部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載した嵌合式屋根材。
【請求項4】
前記隠し樋は、その一部が上ハゼ側屋根材本体の芯材側端部を欠設して設けられた凹部に収容されるように設けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1に記載した嵌合式屋根材。
【請求項5】
外皮材と内皮材との間に芯材を挟んでなるサンドイッチ構造を有する矩形状屋根材本体の、それぞれの長辺側の縁部に上ハゼもしくは下ハゼを設けてなる嵌合式屋根材の桁方向への接合に当たり、
一方の屋根材本体とこれに隣接させてつなぎ合わせる他方の屋根材本体とをそれぞれの側縁部に設けられている前記下ハゼおよび上ハゼを嵌合させることによって接合してなるその屋根材本体の側端部どうしの間に遊休空間を設け、その遊休空間内に前記下ハゼ側外皮材を延長して形成された断面溝形の隠し樋を介在させて、前記上ハゼと下ハゼとを嵌合させて接合したことを特徴とする嵌合式屋根材の接合構造。
【請求項6】
前記隠し樋は、座面が内皮材と同一レベルにある下地材表面に接していることを特徴とする請求項5に記載した嵌合式屋根材の接合構造。
【請求項7】
前記隠し樋は、断面溝形の遊端部側に起立堰を有し、その起立堰の延在位置には下地材固定部が設けられていることを特徴とする請求項5または6に記載した嵌合式屋根材の接合構造。
【請求項8】
前記隠し樋は、その一部が上ハゼ側屋根材本体の芯材側端部を欠設して設けられた凹部に収容されるように設けられていることを特徴とする請求項5~7のいずれか1に記載した嵌合式屋根材の接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般住宅や事務所、マンション、福祉施設、リゾート施設等の屋根に使用される、縦葺きを好適例とする嵌合式屋根材、とくに、断熱材等を芯材としてこれを外皮材と内皮材とで狭持したサンドイッチタイプの嵌合式屋根材と、この嵌合式屋根材を用いる接合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
芯材を外皮材と内皮材とで狭持したサンドイッチタイプの屋根材は、一枚ものの長尺金属板を成形して使う立平葺き屋根材に比べ、断熱性能が高く、軽量でありながら強い強度、耐久性、消音性を有し、近年、その需要が増加する傾向にある。
【0003】
かかる嵌合式屋根材は、とくに縦葺き用のものとしては、従来、一方の屋根材の長辺側の端部に設けられた上ハゼを、他方の屋根材の長辺側の端部に設けられた下ハゼに嵌合させることにより、隣接する屋根材どうしを桁方向につなぎ合わせるとともに、屋根材の水上側となる短辺側端部に設けられた上継手と、水下側となる短辺側に設けられた下継手を相互に連携させることにより、屋根材どうしを梁間方向につなぎ合わせる方法が開発されている(特許文献1、2)。
【0004】
ところで、この種の屋根材は、例えば、上ハゼおよび下ハゼを使っての縦葺きのための嵌合式屋根材の場合、とくに
図7(a)、(b)に示すように、下ハゼと上ハゼとの嵌合突部における隙間に止水材Sを介在させて防水性を付与したものが提案されている。このような構成にすることによって、従来は、上ハゼと下ハゼとの接合部分から屋内に侵入する雨水を防ぐようにしているのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-180719号公報
【文献】特開2016-205120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のような防水対策の採用だけでは、激しい豪雨によって軒先付近で水かさが増し雨漏りを起こす場合や、豪雪地帯で施工された屋根に見られる融雪水による“すが洩れ”、(即ち屋根上の融雪水が軒先の氷堤(ダム)によって蓄積し雨漏れとなる現象)が発生する場合においては、漏水対策は万全ではないという課題があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、屋根材どうしの継ぎ目から不可避に浸入する雨水を屋内へ漏水させることなく確実に屋外に排水できるようにしてなるサンドイッチタイプの嵌合式屋根材、およびその嵌合式屋根材を用いる接合構造を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題に鑑み、かつ上記目的を実現するために鋭意検討した結果、発明者らは、第一に、外皮材と内皮材との間に芯材を挟んでなるサンドイッチ構造を有する矩形状屋根材本体の、それぞれの長辺側の縁部に上ハゼもしくは下ハゼを設けてなる嵌合式屋根材であって、
一方の屋根材本体とこれに隣接させてつなぎ合わせる他方の屋根材本体とをそれぞれの側縁部に設けられている前記下ハゼおよび上ハゼを嵌合させることによって接合してなるその屋根材本体の側端部どうしの間に遊休空間を設け、その遊休空間内に、該屋根材本体の長辺側縁部に沿って形成される、前記下ハゼを形造る側の該屋根材本体外表面を被成している外皮材のその遊端部を延長して断面溝形に一体成形してなる隠し樋を配設したことを特徴とする嵌合式屋根材を要旨構成とする本発明を開発した。
【0009】
本発明は、第2に、外皮材と内皮材との間に芯材を挟んでなるサンドイッチ構造を有する矩形状屋根材本体の、それぞれの長辺側の縁部に上ハゼもしくは下ハゼを設けてなる嵌合式屋根材の桁方向への接合に当たり、
一方の屋根材本体とこれに隣接させてつなぎ合わせる他方の屋根材本体とをそれぞれの側縁部に設けられている前記下ハゼおよび上ハゼを嵌合させることによって接合してなるその屋根材本体の側端部どうしの間に遊休空間を設け、その遊休空間内に前記下ハゼ側外皮材を延長して形成された断面溝形の隠し樋を介在させて、前記上ハゼと下ハゼとを嵌合させて接合したことを特徴とする嵌合式屋根材の接合構造を提案する。
【0010】
上記の構成からなる本発明に係る嵌合式屋根材ならびに嵌合式屋根材の接合構造においては、さらに、
(1)前記隠し樋は、座面が下地材表面に接していること、
(2)前記隠し樋は、断面溝形の遊端部側に起立堰を有し、その起立堰の延在位置には下地材固定部が設けられていること、
(3)前記隠し樋は、その一部が上ハゼ側屋根材本体の芯材側端部を欠設して設けられた凹部に収容されるように設けられていること、
が課題解決のための具体的手段として好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、縦葺きのための嵌合式屋根材どうしの接合部にあえて遊休空間を設けて前述した隠し樋を介在させることにより、施工後の屋根がたとえ予期できないような豪雨等に曝されてその接合部分において大きな浸透圧を受けたり、すが洩れが生じたりするような場合でも、接合部分からたとえ雨水が浸入したような場合に、その水を円滑にかつ完全に屋外に排水することで、屋内に洩れるのを防ぐことができるように工夫してなる強固な嵌合式屋根材と、それの接合構造とを、屋根材の断熱性等の特性を損なうことなしに提供することができる。
【0012】
また、本発明によれば、隠し樋の流水容積を大きくすることができるので、溢流したり途中漏水を招くようなことがなく、屋外の軒下樋への完全な排水が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】(a)、(b)は本発明に係る嵌合式屋根材について梁間方向から見た異なる実施形態を示す端面図である。
【
図3】本発明に係る嵌合式屋根材の接合構造を示す端面図である。
【
図4】
図1に示した嵌合式屋根材の短辺部どうしを梁間方向につなぎ合わせる様子を示す斜視図である。
【
図5】
図1に示した嵌合式屋根材の長辺部どうしを桁方向につなぎ合わせる様子を示す斜視図である。
【
図6】本発明に係る嵌合式屋根材の複数個をつなぎ合わせる状況を示す斜視図である。
【
図7】(a)、(b)は従来の嵌合式屋根材とそのつなぎ合わせ状況を示す端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明をより具体的に説明する。
図1は、本発明に係る嵌合式屋根材の概観斜視図であり、
図2(a)、(b)は、
図1に示した嵌合式屋根材の実施形態での梁間方向から見たときの端面図であり、
図3は、嵌合式屋根材の長辺部どうしを桁方向に接合した様子を示す端面図であり、
図4は、嵌合式屋根材の短辺部どうしを梁間方向につなぎ合わせる様子を示す斜視図であり、そして
図5は、本発明にかかる嵌合式屋根材の長辺部どうしを桁方向につなぎ合わせる様子をそれぞれ示した図である。
【0015】
本発明に係る嵌合式屋根材は、矩形状本体の長辺側に形成される雌雄ハゼ形状と、短辺側に形成される継手形状の違いを除いて略同じ構成からなるものを用い、これらを梁間方向ならびに桁方向につなぎ合わせて縦葺き屋根とすることを前提としており、その特徴とする構成は、本来は密接させるべき隣接配置する一対の屋根材の長辺側の相互間に、あえて遊休空間を設けてそこに隠し樋を配置するようにしたことにある。以下にその構成の詳細を説明する。
【0016】
本発明において、前記屋根材の本体部分(屋根材本体)は、矩形状サンドイッチパネルを用いることを前提としており、例えば芯材を挟む両面、即ち、外皮材としては、厚さ0.2~1.0mm程度の亜鉛めっき鋼板、アルミニウム亜鉛合金めっき鋼板、銅板、アルミニウム板、ステンレス鋼板あるいは、それらの塗装または被覆鋼板等が用いられる。また、内皮材としては、前記外皮材と同一素材でもよいが、表面にアルミニウム箔を貼着したクラフト紙などを用いることができる。そして、前記芯材としては、厚さ40~50mm程度のグラスウールやロックウールなどの無機材料のほか、ウレタンフォームやフェノールフォーム、ポリイソシアヌレートフォームなどの発泡性プラスチックあるいは鉱物繊維系断熱材が用いられる。
【0017】
図1~
図6における符号1は、屋根材本体である。この屋根材本体1は、梁間方向に沿って延伸する一対の長辺部と、これら長辺部を挟んで桁方向に沿って延伸する一対の短辺部によって区画された、全体として矩形状をなす輪郭形状を有している。
【0018】
また、図示の符号2は、屋根材本体1の長辺縁部1aに一体に連設されているものであって、桁方向の一方に隣接配置する別の屋根材の下ハゼに嵌合させて屋根材どうしを接合するための上ハゼである。
【0019】
この上ハゼ2は、長辺縁部1aから立ち上がる傾斜側板2aと、この傾斜側板2aの上端に係止顎部t1を介してつながるとともに、桁方向に隣接配置する別の屋根材の下ハゼに嵌合可能な内部空間を有する先細り形状をなすドーム型の頭部2bと、この頭部2bに係止顎部t2を経て垂下、保持され、傾斜側板2aとの相互間にて下開き開口を形成する傾斜側板2cとから構成されている。この上ハゼ2はまた、頭部2bの側壁に長辺縁部1aに沿って延伸する凹部を設けることが可能である。このような構成とすることにより、桁方向に隣接配置する別の屋根材の下ハゼに嵌合させた際に、その相互間で面接触するのを避けて雨水等の侵入を防止することができるようにしてもよい。
【0020】
一方、図示の符号3は、屋根材本体1の長辺縁部1bに一体に連設されているものであって、桁方向に隣接配置する別の屋根材の上ハゼ2に嵌合させて屋根材どうしを接続するための下ハゼである。
【0021】
この下ハゼ3は、長辺縁部1bから垂直に立ち上がる側板3aと、この側板3aの上端に係止顎部t3を介してつながるとともに、桁方向に隣接配置する他の屋根材の上ハゼ2に嵌合可能な先細り形状をなすドーム型の頭部3bと、この頭部3bに係止顎部t4を介して該屋根材本体(芯材)の側端面に沿って下方に垂下形成された溝壁板3cが設けられ、上記側板3aとの相互間に形成される開口を通じて芯材と同一の断熱材等が充填される。
【0022】
なお、前記係止顎部t1と前記係止顎部t2とは互いに逆向きに突出していて、両者でもって嵌合させたハゼの抜けを防止する。また、係止顎部t3と係止顎部t4とは、上記の係止顎部t1、係止顎部t2と同様に、相互に逆向きになっており、両者でもって嵌合させるハゼどうしの抜けを防止する。
【0023】
なお、図示の符号4は、屋根材本体1の水上側となる短辺部1cに設けられる既知の各種構造が付与される下継手である。この下継手4は、屋根材本体1の外表面よりも低い段差を介してつながり、かつ、水上側に隣接配置する他の屋根材の短辺部1dの下側において重ね合わさるものである。上記段差は、水上側に隣接配置する他の屋根材の短辺部を重ね合わせた際に、平坦な表面が形成されるように設定される。また、この下継手4の幅寸法は、水上側に隣接配置する他の屋根材とのつなぎ合わせに際して相互に確実に重ね合わせることができるように、水上側に隣接配置する他の屋根材の屋根材本体の幅寸法(実際には上継手の幅寸法)よりも若干広くなっている。
【0024】
また、図示の符号5は、屋根材本体1のもう一方の短辺部1dに設けられた上継手(屋根の水下側に配置される)である。この上継手5は、屋根材本体1と面一状態でつながるように、水下側に隣接配置する他の屋根材の短縁部(下継手に相当する部分)の上側に重ね合わさるものである。
【0025】
次に、図示の符号6は、屋根材本体1の厚み方向の中央部を占める芯材であり、7は、芯材6の下地材(野地板、母屋等)側を支える内皮材であり、そして、図示の符号8は、屋根材本体1の外表面、即ち芯材6の外表面を覆う外皮材である。なお、内皮材7としては、例えば表面にアルミ箔が付けられたクラフト紙あるいは屋根材本体と同等の材質、厚さからなるものなどが用いられる。
【0026】
前記上ハゼ2および下ハゼ3の嵌合に際し、この両者の頭部2a、2bに生じる隙間部分には、
図7に示すようなガスケットGやパッキン等を介在させて防水性を付与してもよく、この場合においても本発明にしたがう後述する隠し樋10はもちろん有効に機能するものである。
【0027】
さて、本発明の特徴的な構成は、前述したように、前記梁間方向に沿って延伸する一対の長辺縁部1a、1bと、桁方向に延伸する一対の短辺部1c、1dとによって区画された輪郭形状を有する屋根材本体1と、各長辺縁部1a、1bそれぞれに沿って一体に連設された上ハゼ2、下ハゼ3とを備え、該各短辺部1c、1dを、該屋根材本体の水下側、水上側にそれぞれ隣接配置する他の屋根材の短辺部1c、1dに重ね合わせて屋根材どうしを梁間方向へ接続する一方、各長辺縁部1a、1bに設けた前記上ハゼ2、下ハゼ3を、桁方向に隣接配置する別の屋根材の下ハゼ3、上ハゼ2にそれぞれ嵌合させて屋根材どうしを桁方向へ接続することにより、建築構造物の屋根を葺きあげる嵌合式屋根材において、
その隣接配置される屋根材本体1の長辺側の突き合わせるべき側端部どうしの間に、あえて遊休空間9を設けて、外からは見えないように設けられたその遊休空間9内に、該屋根材本体1の各長辺縁部1a、1bに沿わせて隠し樋10を配設したことにある。
【0028】
その隠し樋10の構成としては、芯材6の前記遊休空間9に面する下ハゼ3側の芯材側端面を覆う前記外皮材8を延長して一連に折曲形成したもの、例えば断面が溝形とくに角底を形造るように一体成形したものが推奨される。
【0029】
即ち、
図1~5に示すように、屋根材本体1の長辺側端部を被う外皮材8を延長して、その延長した部分を底面(座面)が屋根材本体底面に一致する内皮材7と同一レベルの下地材表面に接するようにかつ断面がたとえば角溝形となるように折曲形成し、かつ好ましくは溝形の一方の側壁となる側の遊端部に、起立堰10aを立設し、その起立堰10aのさらにその延在部分にはネジ止めする下地材固定部10bを座面が同一レベルとなるように一連に形成したものが好適である。
【0030】
なお、この隠し樋10は、桁方向に隣接配置される隣り合う屋根材本体1どうしの両側端面の間にあって、外部から見えないように形成されている前記遊休空間9内に位置しており、その大部分とくに前記起立堰10aやネジ止めする下地材固定部10bは下ハゼ3側屋根材本体1の側端面(即ち、外皮材8の垂直壁)と、前記上ハゼ2側の屋根材本体1の側端部の一部を切り欠いて形成された凹部11に収まるように設けられる。
【0031】
また、この隠し樋10の別の実施形態としては、前記下ハゼ3側の屋根材本体1の接続側の側端面を構成している側板3aの下方延伸部を、
図2(b)に示すように、鉛直でなく斜め外側に傾斜させたものとすることにより、屋根材の働き幅が変化したときに隙間が生じて、芯材6による断熱性能が低下したり、施工性が阻害されたりすることがないようにすることが好ましい。この場合、前記隠し樋10は、前記外皮材8を側板3aに沿って形成するとともに、基本的には前述した角溝形を基本とする形状に一体成形されることは、前述した基本形と同じである。
【0032】
次に、
図4は、本発明にしたがう嵌合式屋根材を用いて屋根葺き接合する模様を例示するものであり、水下側、水上側にそれぞれ隣接配置する一対の嵌合式屋根材の短辺部1c、1dどうしを梁間方向につなぎ合わせる模様を示した図である。
また、
図5は、本発明にしたがう一対の嵌合式屋根材を桁方向に隣接配置するために、一対の嵌合式屋根材の長辺側どうしを上ハゼ2、下ハゼ3を介してつなぎ合わせる模様の一部分について示した図である。
【0033】
そして、
図6は、本発明にしたがう嵌合式屋根材を複数枚用いて建築構造物の屋根を葺きあげる場合の一例を部分的に示した図である(芯材6、内皮材7の図示は省略)。
【0034】
この
図6において、屋根材接合のための手順としては、まず、野地板に二次防水紙のアスファルトルーフィングを敷設し、屋根材の働き幅に合わせて割付け墨出しを行い、軒先に軒先水切りを取付けたのち(図示せず)、屋根の「けらば」の軒から墨出しに合わせて一列・一段目の屋根材を設置し、その屋根材の下ハゼ3、下継手4をそれぞれに所定間隔でもってビスをねじ込むか、あるいは釘等を打ち付けて野地板、母屋等に固定する。
【0035】
次に、一列・二段目の屋根材(隣接配置する他の屋根材)を、既に固定された一列・一段目の水上側(棟側)に配置して屋根材どうしを接合する。一列・一段目の屋根材と一列・二段目の屋根材とを接合するには、一列・二段目の屋根材の上継手5を、一列・一段目の屋根材の下継手4に重ね合わせるべく、上継手5のハゼ2、3をそれぞれ、下継手4側のそれぞれのハゼ2、3に嵌合させればよい。上記の接合作業は、屋根の棟に達するまで繰り返し行ない(梁間方向の接合)、一列目の接合作業を終えたならば、二列目の屋根材についても、同様の作業を繰返して二列目以降の屋根材の接合作業を一列目の屋根材と同様にして屋根の棟に達するまで繰返す。
【0036】
この作業に当たって重要なことは、梁間方向につなげる前記隠し樋が面一状態で順次に接続されて、軒先の雨樋に排水できるように接合していくことが重要である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明によれば、前述した実施形態に係る嵌合式屋根材のみならず、遊休空間を形成できる嵌合式屋根材であればいずれのタイプの屋根材にも適用が可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 屋根材本体
1a 長辺縁部
1b 長辺縁部
1c 短辺部
1d 短辺部
2 上ハゼ
2a 傾斜側板
2b 頭部
2c 傾斜側板
3 下ハゼ
3a 側板
3b 頭部
3c 溝壁板
4 下継手
5 上継手
6 芯材
7 内皮材
8 外皮材
9 遊休空間
10 隠し樋
10a 起立堰
10b 下地材固定部
11 凹部